説明

電子時計

【課題】実際の時刻と指針が示す時刻との差を一定に維持することができる電子時計を提供することを課題とする。
【解決手段】電子時計は、駆動源と、秒針が固定され、前記駆動源からの動力を受けて回転する秒針車と、前記秒針車からの動力を受けて回転する接続車と、分針及び時針の位置を調整するための調整車と、前記分針が固定され、前記接続車にスリップ可能に連結され、前記調整車からの動力が伝達される歯部を備え、前記調整車から動力を受けた場合には前記接続車に対してスリップして回転する分針筒と、基準信号源からの基準信号に基づいて経過時間を計時する内部時計と、時刻情報を含む標準電波を受信する受信部と、前記駆動源に駆動パルスを出力すると共に、前記標準電波の1秒間隔のパルス信号の立ち上がるタイミングと前記駆動パルスの出力タイミングとが同期するように修正する制御部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、標準電波に基づいて時刻を修正する電波修正時計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−296374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、時計の使用地域における実際の時刻よりも指針を進めた又は遅らせた状態で時計を使用する場合がある。例えば、実際の時刻よりも指針が示す時刻を数分程度進めて使用する場合や、海外の時刻に合わせて使用する場合がある。このような場合、従来の電波修正時計であれば、最終的には指針の位置は標準電波に含まれる時刻情報と合致するように修正されてしまう。このため、電波修正時計はこのような使用態様には適していない。
【0005】
電波修正時計ではない一般的な時計においては、上記のような使用は可能である。しかしながら、一般の時計では、時計自身の誤差により、使用期間が経過するにつれて実際の時刻と指針が示す時刻とのずれを一定に維持できなくなる。
【0006】
そこで本発明は、実際の時刻と指針が示す時刻との差を一定に維持することができる電子時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、駆動源と、秒針が固定され、前記駆動源からの動力を受けて回転する秒針車と、前記秒針車からの動力を受けて回転する接続車と、分針及び時針の位置を調整するための調整車と、前記分針が固定され、前記接続車にスリップ可能に連結され、前記調整車からの動力が伝達される歯部を備え、前記調整車から動力を受けた場合には前記接続車に対してスリップして回転する分針筒と、基準信号源からの基準信号に基づいて経過時間を計時する内部時計と、時刻情報を含む標準電波を受信する受信部と、前記駆動源に駆動パルスを出力すると共に、前記標準電波の1秒間隔のパルス信号の立ち上がるタイミングと前記駆動パルスの出力タイミングとが同期するように修正する制御部と、を備えた電子時計によって達成できる。
【0008】
標準電波の秒信号に一致するように駆動パルスの出力タイミングが修正されるので、実際の時刻と指針が示す時刻との差を一定に維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
実際の時刻と指針が示す時刻との差を一定に維持することができる電波修正時計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例に係るアナログ式の電子時計の構成図である。
【図2】図2は、電子時計のムーブメントの断面図である。
【図3】図3Aは、分針車、分針筒の正面図であり、図3Bは、図3AのA−A断面図である。
【図4】図4A、4Bは、標準電波の秒信号と駆動パルスとのタイミングチャートである。
【図5】図5A、5Bは、標準電波の秒信号と駆動パルスとのタイミングチャートである。
【図6】図6は、電源が投入直後の秒針の修正処理の一例を示したフローチャートである。
【図7】図7は、2回目以降に標準電波を受信した時の秒針の修正処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施例に係るアナログ式の電子時計Cの構成図である。電子時計Cは、アナログ時計部A、制御回路Bを有している。アナログ時計部Aは、詳しくは後述するが、時刻を表示するための指針、指針を駆動するための輪列、輪列を駆動するための駆動源であるモータ、分針、時針の位置を調整するための調整車100、等を含む。指針には、時針HH、分針MH、秒針SHが含まれる。
【0012】
制御回路Bは、アナログ時計部Aの動作全体を制御する。制御回路Bには、発振回路1、分周回路2、受信部3、制御部5、内部時計6等を含む。制御回路Bは、例えばICや各種電気部品が実装された回路構成である。発振回路1には、例えば水晶振動子などの図示しない基準信号源が接続されている。発振回路1は、基準信号源を高周波発信させ、この高周波発振により発生する発振信号を分周回路2に出力する。内部時計6は、内部カウンタを有している。内部カウンタは、それぞれ、時カウンタ、分カウンタ、秒カウンタを有している。内部時計6は、16Hzの信号をカウントし、1Hzの信号を発生させる分周回路2からのパルス信号を取得することにより秒カウンタのカウンタ値を1秒ずつカウントアップする。
【0013】
制御部5は、受信部3、不図示のアンテナを介して、時刻情報を含む標準電波を受信する。制御部5は、詳しくは後述するが受信した標準電波の秒に関する情報に基づいて、秒針SH、分針MH、時針HHの位置を制御する。標準時刻電波信号は、1bit/秒で1分間を1フレームとして1分毎に送信されており、このフレーム内の矩形パルスのパルス幅を利用した分・時・1月1日からの積算日の情報が含まれている。送信されるデータには、Pコードと称するポジションマーカーが含まれており、このPコードは、1フレーム中に複数ヶ所現れるが、59秒、0秒の時にのみPコードが続けて現れる。従って制御部5は標準電波にPコードが2回続けて現れたことを検出することで正分位置(0秒)を認識することができる。具体的にはPコードのパルス幅は200msであり、制御部5はパルス幅200msの矩形パルスを2回受信したことを検出した場合、2回目の矩形パルスの立ち上がりを正分位置(0秒)として認識する。なお、標準電波に含まれる1秒毎に出力される信号を本実施形態では秒信号と呼称し、連続するPコードのうち、2回目に現れるPコード信号(0秒信号)を正分位置信号として説明する。
【0014】
電子時計Cには、運針停止スイッチ9が設けられている。運針停止スイッチ9は、例えば時計の背面側等に設けられている。運針停止スイッチ9がオンになると、制御部5は、後述するモータへの駆動パルスの出力を停止する。また、運針停止スイッチ9がオフの場合には、制御部5はモータへ駆動パルスを出力して運針を行なう。
【0015】
図2は、電子時計Cのムーブメントの断面図である。背面板10と正面板12との間には、ムーブメントが配置されている。ムーブメントは、駆動源であるモータ20と、モータ20の動力を指針に伝達する輪列とを含む。正面板12側に文字板が配置される。モータ20は、回転可能に支持されたロータ21、ロータ21に固定された回転軸22、回転軸22に形成されたピニオンギア23、を有している。
【0016】
ピニオンギア23は、歯車30の歯部31に噛合っている。歯車30は、歯部31と、歯部31よりもピッチ円径の小さい歯部32とが形成されている。歯部32は、秒針車40の歯部41に噛合っている。秒針車40の正面板側には軸部45が形成されている。軸部45の先端に不図示の秒針SHが固定される。また、秒針車40の背面側には歯部42が形成されている。歯部42のピッチ円径は、歯部41のピッチ円径よりも小さい。歯部42は、歯車50の歯部51と噛合っている。歯車50は、歯部51よりもピッチ円径の小さい歯部52が形成されている。歯部52は、分針車60の歯部61と噛合っている。
【0017】
分針車60には、分針筒70がスリップ可能に連結されている。分針筒70は筒状である。分針筒70の内部には軸部45が貫通している。分針筒70の先端には、不図示の分針MHが固定される。分針筒70には歯部72が形成されている。歯部72は、歯車80の歯部81が噛合っている。歯車80は、歯部81よりのピッチ円径の小さい歯部82が形成されている。歯部82は、時針車90の歯部91に噛合っている。時針車90の先端には、不図示の時針HHが固定されている。このように、モータ20からの動力は、減速されて秒針SH、分針MH、時針HHに伝達される。
【0018】
また、歯車80の歯部81は、手動により分針MH、時針HHを秒針SHから独立して修正するための調整車100の歯部101に噛合っている。ユーザが手動で調整車100を回転させることにより、分針MH、時針HHの位置を調整することができる。具体的には、調整車100を回転させると、歯車80が回転する。歯車80の歯部82は時針車90の歯部91と噛合っているため、時針車90が回転して時針HHが回転する。また、歯車80の歯部81は分針筒70の歯部72と噛合っているため、分針筒70が回転し分針MHが回転する。この際、分針筒70は分針車60に対してスリップするようにして回転する。詳しくは以下で説明する。
【0019】
図3Aは、分針車60、分針筒70の正面図であり、図3Bは、図3AのA−A断面図である。図3Aに示すように、分針車60は、外周に歯部61が形成された環状部63、環状部63から分針車60の中心側に向けて突出した2つの支持部65、を有している。分針筒70には、周囲に溝部75が形成されている。2つの支持部65は、分針筒70を挟むようにして溝部75に係合している。分針車60と分針筒70とが相対的に回転するのに必要なトルクをスリップトルクとする。分針車60と分針筒70は、通常スリップすることなく分針MMおよび時針HH運針できるが、ユーザの手動操作により調整車100が回転されたときには秒針SHの運針を妨げることなくスリップする程度のスリップトルクが得られるように係合している。
【0020】
調整車100をユーザが回転させようとしていない場合には、モータ20の回転動力により分針車60が回転し、分針車60の支持部65が分針筒70を挟んでいるため分針筒70は分針車60と共に回転する。また、分針筒70の回転に伴い、歯車80を介して時針車90が回転する。一方、ユーザが調整車100を回転させようとした場合に分針筒70には、上述のスリップトルクよりも大きなトルクが伝えられるため、モータ20からの動力により分針車60が回転している場合であっても、調整車100の回転が分針筒70に伝達されて、分針車60に対してスリップして分針筒70が回転する。この間においても、モータ20は回転しつづけるので、秒針SHは回転を継続する。従って、時針HH、分針MHを手動により調整している間でも、秒針SHは正常に回転し続ける。すなわち時針HH、分針MHは手動により秒針SHに対して独立して調整することが可能である。
【0021】
次に、本実施例の電子時計Cが実行する秒針SHの修正処理について説明する。制御部5は、駆動パルスの出力のタイミングを標準電波に含まれる秒信号の立ち上がりのタイミングに一致させることによって、秒針SHの位置を修正する。また、受信した標準電波の秒信号の±0.5秒の範囲内で出力される駆動パルスが修正される。換言すれば秒針SHの運針タイミングを修正する。
【0022】
図4A〜5Bは、標準電波の秒信号と駆動パルスとのタイミングチャートである。尚、図4A〜5Bには、理解を容易にするために標準電波の秒信号を基準として0秒〜10秒まで秒毎の目盛を記載している。
【0023】
図4Aは、駆動パルスの修正が行なわれる前のタイミングチャートである。標準電波には、1秒毎に立ち上がる秒信号が含まれている。図4Aには、駆動パルスP0を基準として1秒毎に出力されているとともに、標準電波の秒信号に対してα秒(0秒<α秒<0.5秒)遅れて駆動パルスが出力されている場合を例示している。具体的には、秒信号E1に対して駆動パルスP1がα秒遅れて出力されており、同様に、駆動パルスP2、P3も、それぞれ秒信号E2、E3に対してα秒遅れて出力されている。
【0024】
図4Bは、駆動パルスが修正された際のタイミングチャートである。受信部3が正分位置信号E1を受信した場合に、制御部5は、正分位置信号E1の直前に出力した駆動パルス(駆動パルスP0)の立ち上がりタイミングから正分位置信号E1の立ち上がりタイミングまでの時間Δtを計測する。ここでは説明の便宜上、図4A、図4Bでは、正分位置信号E1の立ち下がりタイミングに正分位置信号E1が検出されるものとする。例えば、制御部5は、図示しないタイマにより、秒信号のパルス幅(図4におけるβ)を検出し、パルス幅が200msのものが2回連続して検出された場合に、2回目に検出された秒信号を正分位置信号E1として特定し、正分位置信号E1の立ち下がりタイミングを検出タイミングとして特定し、この検出タイミングから遡って正分位置信号E1の立ち上がりタイミングを特定する。
【0025】
なお、上述のように説明の便宜上、図4A、図4Bでは、正分位置信号E1の立ち下がりタイミングに正分位置信号E1が検出されるものとするが、これに限らず、正分位置信号E1の立ち上がりを検出してさらにパルスE2の立ち下がりを検出した場合に正分位置信号E1を検出できたものとしてもよく、さらに後続のパルスE3の立ち下がりを検出したことをもって、正分位置信号E1を検出できたものとしてもよい。
【0026】
制御部5は、タイマにより秒カウンタのカウントアップのタイミングを特定し、正分位置信号E1の立ち上がりタイミングと直近の秒カウンタのカウントアップのタイミングとの差からΔtを求める。
【0027】
このときの計測結果が0.5秒よりも大きかった場合、秒カウンタのカウントアップ(駆動パルスの立ち上がり)のタイミングが秒信号の立ち上がりに対してα秒遅れていると判定する。制御部5は、秒カウンタのカウントアップのタイミングが秒信号の立ち上がりに対して遅れている場合、直前の秒カウンタのカウントアップのタイミングからΔt秒経過したタイミングに秒カウンタのカウントアップをさせる。すなわち図4Bにおいて、駆動パルスP1の立ち上がりのタイミングと同期したカウントアップタイミングからΔt秒経過したタイミングで秒カウンタのカウントアップを行うこととなる。
【0028】
制御部5は、これと同期して駆動パルスP2´を出力させるとともに、分周回路2をリセットして初期値からカウントをさせる。これにより、以降、秒カウンタは秒信号と同期してカウントアップし、秒信号と同期して駆動パルスP3´・・・が出力されることとなる。このように制御部5は、駆動パルスを修正すると共に、内部時計6の秒カウンタのカウントアップのタイミングも標準電波の秒信号に一致するように修正する。
【0029】
このようにすると、正分位置信号E1からα秒遅れて出力された駆動パルスP1が正分位置信号E1と同時に出力される駆動パルスP1´に修正されて出力されたものとみなすことができる。尚、駆動パルスP1´は、あくまで、正分位置信号E1の受信後に出力される駆動パルスP2´、P3´の基準となる仮想の信号であり、実際には出力されない。
【0030】
次に上述のΔtが0.5秒よりも小さい場合の処理について説明する。なお、説明の便宜上、図5A、図4Bでも、正分位置信号E1の立ち下がりタイミングに正分位置信号E1が検出されるものとし、制御部5は、図示しないタイマにより、秒信号のパルス幅(図5におけるβ)を検出し、パルス幅が200msのものが2回連続して検出された場合に、2回目に検出された秒信号を正分位置信号E1として特定し、正分位置信号E1の立ち下がりタイミングを検出タイミングとして特定し、この検出タイミングから遡って正分位置信号E1の立ち上がりタイミングを特定する。
【0031】
図5Aは、駆動パルスの修正が行なわれる前のタイミングチャートである。図5Aには、駆動パルスP0を基準として1秒毎に出力されているとともに、標準電波の秒信号に対して駆動パルスがα秒(0秒<α秒<0.5秒)進んで駆動パルスが出力されている場合を例示している。具体的には、正分位置信号E1に対して駆動パルスP1がα秒進んで出力されており、同様に、駆動パルスP2、P3も、それぞれ秒信号E2、E3に対して進んで出力されている。
【0032】
図5Bは、駆動パルスが修正された際のタイミングチャートである。受信部3が正分位置信号E1を受信した場合に、制御部5は最後に出力した駆動パルス(駆動パルスP1)の立ち上がりタイミングから正分位置信号E1の立ち上がりタイミングまでの時間Δt(この場合Δt=α)を計測する。このときの計測結果が0.5秒よりも小さかった場合、駆動パルスの出力タイミングが正分位置信号E1に対してα秒だけ進んでいると判定し、運針停止を行うことを決定する。そこで、制御部5は駆動パルスP1の1秒後に駆動パルスP2を出力するのではなく、秒信号E2の立ち上がりと同期するように駆動パルスP1の立ち上がりから1+α秒後に駆動パルスP2´を出力する。また、駆動パルスP2´にひき続いて出力される駆動パルスP3´・・・を駆動パルスP2´を基準として1秒毎に出力する。このようにすると、正分位置信号E1を受信する直前に出力された駆動パルスP1が正分位置信号E1と同時に出力される駆動パルスP1´´に修正されて出力されたものとみなすことができる。尚、駆動パルスP1´´は、あくまで、正分位置信号E1の受信後に出力される駆動パルスP2´、P3´の基準となる仮想の信号であり、実際には出力されない。この場合、駆動パルスP1が出力された後に正分位置信号E1が出力されるので、正分位置信号E1出力後での駆動パルスの出力タイミングが修正される。このように駆動パルスの出力が修正されることにより、秒針SHの駆動タイミングも標準電波の秒信号の立ち上がりと一致する。尚、この場合においても、制御部5は、内部時計6の秒カウンタのカウントアップのタイミングも標準電波の秒信号に一致するように修正する。
【0033】
図4A〜5Bに示したように、制御部5は、標準電波の秒信号の立ち上がりのタイミングを基準として−0.5秒<α<0.5秒の範囲内でずれた出力パルスを、標準電波の秒信号の立ち上がりタイミングと一致するように修正する。
【0034】
なお、仮にα=0.5秒であった場合には、上記の処理のうちいずれの方法を用いるかを予め決定しておき、その決定に基づいて修正処理を行う。
【0035】
また、制御部5は、所定周期毎に標準電波の秒信号の受信を試みる。例えば、3時間毎に標準電波の秒信号の受信を試みる。これにより、標準電波の秒信号に対する駆動パルスの出力のタイミングのずれが修正され、この結果秒針SHのずれが修正される。
【0036】
例えば、わざと時計の時刻を実際の時刻に対して進めたり、遅らせたりして使用する場合がある。このような場合に、電波修正時計では勝手に時刻が標準電波により送信される、その地域の実際の時刻に修正されてしまう。また、電波修正時計ではない通常の時計では、使用期間が経過するにつれて、水晶振動子の誤差等により、実際の時刻と指針が示す時刻との差がずれてくる。
【0037】
本実施例の電子時計Cでは、分針MHや時針HHを、秒針SHとは独立して修正することが可能である。このため、わざと分針MHや時針HHの位置を実際の時刻に対して進めたり、遅らせたりして使用できる。また、分針車60と分針筒70とが所定のスリップトルクで係合しているので、分針MHや時針HHの位置合わせは、秒針を停止させるなどの操作を要せずに任意のタイミングで行うことが可能であり、位置合わせが容易である。また、継続使用により駆動パルスの出力タイミングが標準電波の秒信号に対してずれたとしても、受信部3が標準電波の秒信号を受信することにより、制御部5は再度駆動パルスの出力タイミングを修正する。これにより、標準電波の秒信号に対する駆動パルスの誤差が累積しない。このため、実際の時刻に対して指針が示す時刻をずらして設定したような場合であっても、実際の時刻と指針を示す時刻との差を一定に維持することができる。
【0038】
また、本実施例の電子時計Cは、分針MHや時針HH及び秒針SHの位置と、標準時刻から得られる時刻情報とを合致させるような修正は行わない。このため、従来の電波修正時計のように分針MHや時針HHの位置を検出するための機構を必要としない。このため、本実施例の電子時計は部品点数が削減されていると共に低コストが達成されている。
【0039】
また、上述したように、調整車100により分針MH、時針HHを手動で調整する場合、分針MHおよび時針HHは秒針SHとは独立して調整することができる。また、分針MHおよび時針HHが調整されている間も、秒針SHの駆動は停止されずに継続される。このため、秒針SHの位置の精度を維持しつつ分針MH、時針HHの位置を調整できる。
【0040】
図6は、電源投入直後の秒針SHの修正処理の一例を示したフローチャートである。図6に示すように、電池等の装着により電子時計Cに電源が投入されると(ステップS1)、制御部5は内部時計6のカウンタをスタートさせ(ステップS2)、モータ20に駆動パルスを出力して通常運針を開始する(ステップS3)。制御部5は運針停止スイッチ9がオンであるか否かを判定し、オンであった場合には運針を停止させる。そこで次に、制御部5は運針停止スイッチ9がオフからオンに切り替わったか否かを判定する(ステップS4)。運針停止スイッチ9がオフからオンに切り替わっていない場合には、制御部5は、再度本ステップS4を実行する。運針停止スイッチ9がオフからオンに切り替わった場合には、制御部5は内部時計6のカウンタを停止し(ステップS5)、駆動パルスの出力を停止して運針を停止する(ステップS6)。
【0041】
次に、制御部5は、運針停止スイッチ9がオンからオフに切り替わったか否かを判定する(ステップS7)。切り替わっていない場合には、制御部5は再度ステップS7の処理を実行する。切り替わった場合には、制御部5は内部時計6のカウンタのカウントアップを再開して(ステップS8)、通常運針を再開する(ステップS9)。
【0042】
次に制御部5が、標準電波の秒信号の受信に成功したか否かを判定する(ステップS10)。否定判定の場合には、再度ステップS10の処理を実行する。標準電波の秒信号を受信した場合には、上述した方法により制御部5は駆動パルスの立ち上がりタイミングと標準電波の秒信号の立ち上がりタイミングとを同期させる。また、上述のように内部時計6は、分周回路2からのパルス信号を取得することにより秒カウンタのカウンタ値を1秒ずつカウントアップしている。そのため駆動パルスの立ち上がりタイミングが標準電波の秒信号の立ち上がりタイミングに同期されることで、内部時計6の秒カウンタにおける秒の繰り上げタイミングも標準電波の秒信号の立ち上がりタイミングに同期される(ステップ11)。このように電源投入直後の秒針SHの修正処理によって、標準電波の秒針号の±0.5秒の範囲内で検出されるパルス信号の立ち上がりタイミングと秒信号の立ち上がりタイミングとの差が無くなるように修正される。
【0043】
次に、制御部5は通常運針を継続する(ステップS12)。尚、標準電波の受信に成功した場合には、制御部5は、内部時計6のカウンタの値をクリアする。
【0044】
図7は、2回目以降に標準電波を受信した時の秒針SHの修正処理のフローチャートである。制御部5は、通常運針継続中に(ステップS21)、電源投入時から2回目以降の標準電波の受信が成功したか否かを判定する(ステップS22)。否定判定の場合には、再度ステップ22の処理を実行する。
【0045】
肯定判定の場合には、制御部5は、前回標準電波を受信してから今回標準電波を受信するまでの経過時間と、前記経過時間内での内部時計6の計時時間との差分Nを計算する(ステップS23)。経過時間は、前回受信した標準電波の時刻情報と今回受信した標準電波の時刻情報とから算出できる。尚、前回受信した標準電波の時刻情報は、上述したようにメモリに記憶されている。また、前回標準電波を受信した時からの経過時間を内部時計6の内部カウンタが計時している。このため、実際の経過時間に対する、前回受信した時から今回受信した時までの経過時間内での内部時計6の内部カウンタの増加分(計時時間)から内部時計6の内部カウンタによる経時時間と標準電波の時刻情報との差分を計算できる。尚、制御部5は、今回受信した標準電波の時刻情報をメモリに記憶させる。次回標準電波を受信した場合に、同様の方法により駆動パルスの修正を行なうためである。
【0046】
制御部5は、Nがゼロより大きいか否かを判定する(ステップS24)。Nがゼロより大きい場合、即ち内部時計6のカウンタの値が実際の経過時間よりも進んでいた場合には、制御部5は運針を停止してN秒後に運針を開始する(ステップS25)。これにより、前回標準電波を受信してから今回受信に至るまでの間の秒針SHのずれを修正することができる。次に、制御部5は、内部時計6の内部カウンタの値をクリアする(ステップS26)。これにより、前回標準電波を受信してから今回受信に至るまでの間の内部時計6の内部カウンタの誤差が修正されるとともに秒カウンタの繰り上げタイミングも秒信号の立ち上がりタイミングに合致させることができる。その後、制御部5は再び通常運針を開始する(ステップS27)。
【0047】
ステップS24において否定判定の場合、制御部5は、Nがゼロより小さいか否かを判定する(ステップS28)。Nがゼロより小さい場合、即ち内部時計6のカウンタが実際の経過時間よりも遅れていた場合には、制御部5はN回駆動パルスを出力して秒針SHを早送りさせる。これにより、前回標準電波を受信してから今回受信に至るまでの間の秒針SHの遅れを修正することができる。次に、制御部5は、内部時計6の内部カウンタの値をクリアする(ステップS26)。これにより前回標準電波を受信してから今回受信に至るまでの間の内部時計6の内部カウンタの誤差が修正されるとともに秒カウンタの繰り上げタイミングも秒針号の立ち上がりタイミングに合致させることができる。その後、制御部5は再び通常運針を開始する(ステップS27)。
【0048】
ステップS28において否定判定した結果、誤差Nがゼロの場合、内部時計6の内部カウンタの値だけをクリアする(ステップS26)。そして、制御部5は通常運針を継続する(ステップS27)。このようにして、秒針SHのずれが累積されることを防止できる。
【0049】
なお、2回目以降に標準電波を受信した時は、電源投入直後の秒針SHの修正処理によって正分位置信号E1と駆動パルスの同期が完了しているので、例えば正分位置信号E1と駆動パルスの出力タイミングのずれが10秒程度と大きい場合であっても内部時計6の内部カウンタを基に補正することが可能であるため、時計自身のずれがある程度大きくなるまで、例えば、ユーザが違和感をおぼえない範囲で、秒針SHの修正処理を行わずに済ますことができる。従って消費電流を抑えることができる。
【0050】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0051】
運針停止スイッチ9は、オンオフにより輪列を強制的に停止させるストッパのようなものであってもよい。
【0052】
本実施形態において、2回目以降に標準電波を受信した時の秒針SHの修正処理は、内部時計6の内部カウンタが経時する経過時間と標準電波の時刻情報との差分を基に行っていたが、これに限られず、2回目以降に標準電波を受信した際も、電源投入直後の秒針SHの修正処理と同様に、最新の駆動パルスの立ち上がりタイミングから秒信号E1の立ち上がりタイミングまでの時間Δtに基づいて、その差が無くなるように修正をしてもよい。
【0053】
このような構成によれば、内部カウンタを持たなくてよいので、電子時計Cをより安価に構成することができる。従って、より安価で、低消費電流でありながら、時刻と指針が示す時刻との差を一定に維持することができる電子時計を提供できる。
【0054】
ただし、この場合、時計自身のずれによって合致していた駆動パルスと標準電波の秒信号とが±0.5秒以上ずれてしまうと、その駆動パルスと標準電波の秒信号とを再び合致させることができなくなってしまい、秒針SHのずれが累積してしまうという問題があるが、この問題は時計自身のずれが±0.5秒以上になる前の所定のタイミングで毎回標準電波を受信するようにすることで解決できる。
【符号の説明】
【0055】
A アナログ時計部
B 制御回路
C 電子時計
5 制御部
9 運針停止スイッチ
20 モータ
60 分針車
70 分針筒
100 調整車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
秒針が固定され、前記駆動源からの動力を受けて回転する秒針車と、
前記秒針車からの動力を受けて回転する接続車と、
分針及び時針の位置を調整するための調整車と、
前記分針が固定され、前記接続車にスリップ可能に連結され、前記調整車からの動力が伝達される歯部を備え、前記調整車から動力を受けた場合には前記接続車に対してスリップして回転する分針筒と、
基準信号源からの基準信号に基づいて経過時間を計時する内部時計と、
時刻情報を含む標準電波を受信する受信部と、
前記駆動源に駆動パルスを出力すると共に、前記標準電波の1秒間隔のパルス信号の立ち上がるタイミングと前記駆動パルスの出力タイミングとが同期するように修正する制御部と、を備えた電子時計。
【請求項2】
前記制御部は、前記受信部が前回標準電波を受信してから今回受信するに至るまでの経過時間と、前記経過時間に前記内部時計が計時した経過時間との差分に基づいて、前記駆動パルスの出力を制御する、請求項1の電子時計。
【請求項3】
前記秒針、分針、時針の運針を停止すると共に前記内部時計の計時を停止する運針停止スイッチを有している、請求項1又は2の電子時計。
【請求項4】
前記制御部は、前記運針停止スイッチから運針の停止を解除する信号を受信した時、前記内部時計の計時時刻のカウントアップのタイミングと前記駆動パルスの出力のタイミングとを一致させて前記内部時計の計時と前記駆動パルスの出力とを再開する、請求項3の電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189340(P2012−189340A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50838(P2011−50838)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(396004970)セイコークロック株式会社 (44)
【Fターム(参考)】