説明

電子機器の静電気対策構造

【課題】電子部品を内蔵するプラスティック製の筐体と、帯電した指等で押下される可能性のある押ボタンと、を有する電子機器に対する静電気対策構造を提供する。
【解決手段】C1で示すように、導電性樹脂の押ボタン121は金属製のカッター122に電気的に接続され、C2で示すように、カッター122は金属製のフレーム123に電気的に接続され、C3及びC4で示すように、フレーム123は金属製の接続プレート124を介して、或いは、直接的に、アース電位の銅箔125dに電気的に接続される。したがって、押ボタン121が押下されたときに指等から伝わってくる静電気を、上記経路を経由させて、最終的に銅箔125d、すなわち、アースに逃がすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の静電気対策構造に関し、特に、帯電した指等で押下される可能性のある押ボタンを有する電子機器の静電気対策構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等においては、押ボタンを有する種々の電子機器が搭載されている。図7は、この種の電子機器のひとつとしてディジタルタコグラフを示す正面図である。なお、このようなディジタルタコグラフは、下記特許文献1に詳細にも示されている。
【0003】
図7に示すように、ディジタルタコグラフ(運行情報収集装置)91は、周知のように、正面壁93において、運転者に対応したデータカードを挿入するスリット912、913、収集した情報等の各種情報を表示する表示部94、保持条片918を有する印字部916、そして、各種設定や印字用紙補充時に押下される押ボタン群95〜98、919〜923が配置されている。
【0004】
例えば、フロントローディング式の印字部916に印字用紙を補充する時に、押ボタン923が押下されると、印字部916が図面中手前方向にイジェクトされる。そして、印字用紙の補充が可能になる。他の押ボタン群が押下されたときにはそれに応じた処理が行われる。
【0005】
ところが、周知のように、冬場等においては人は静電気を蓄積すなわち帯電することが多い。このような状況において、指等で押ボタン群95〜98、919〜923が押下されると、蓄積された静電気が押ボタン群95〜98、919〜923を介して放電され、当該電子機器に含まれる電子部品を静電破壊させたり、或いは、誤動作を発生させたりする可能性がある。
【0006】
そこで、下記特許文献2では、押ボタンに蓄積された静電気を金属製の筐体に逃がすことによって、上記静電破壊や誤動作を防止するというアイディアが提案されている。
【特許文献1】特開2001−229422号公報
【特許文献2】特開2004−319106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、電子機器の筐体は、コスト面や軽量化等の観点から、或いは、十分な強度を有するプラスティックが開発されたこと等の理由から、金属製からプラスティック製に代替される傾向にある。そうすると、静電気を金属製の筐体に逃がすことができなくなってくる。
【0008】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、電子部品を内蔵するプラスティック製の筐体と、帯電した指等で押下される可能性のある押ボタンと、を有する電子機器に対する静電気対策構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の電子機器の静電気対策構造は、電子部品を内蔵するプラスティック製の筐体と、アース部を有する配線板と、前記筐体の前面から外部に露出するように設けられた押しボタンと、を備えた電子機器の静電気対策構造であって、前記押しボタンを導電性材料で形成すると共に、前記押しボタンを押下すると、前記押しボタンと前記アース部とが該電子機器の本来の機能に必要な導電性の金属部材を介して電気的に接続されるようにした、ことを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、プラスティック製の筐体と、アース部を有する配線板と、筐体の前面から外部に露出するように設けられた押しボタンと、を備えた電子機器に対して、押しボタンを導電性材料で形成すると共に、押しボタンとアース部とを該電子機器の本来の機能に必要な導電性の金属部材を介して電気的に接続可能にしている。
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の電子機器の静電気対策構造は、請求項1記載の電子機器の静電気対策構造において、前記電子部品は、印字装置であって、前記金属部材として、前記押ボタンに電気的に接続され、前記筐体の前面に配置されて印字用紙をカットするためのカッターと、前記カッターに電気的に接続され、該カッターの背面側に配置されて該カッター及び前記印字用紙の送り機構等を保持するフレームと、が利用される、ことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、本来必要な、印字用紙をカットするためのカッターと、該カッター及び印字用紙の送り機構等を保持するフレームと、を利用することによって、プラスティック製の筐体で形成された印字装置に対しても、静電気を確実に逃がすことができる。
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の電子機器の静電気対策構造は、請求項2記載の電子機器の静電気対策構造において、前記カッターは、前記押ボタンの形状に対応して切り欠かれて形成された押ボタン保持部を有し、前記押ボタン保持部を介して、前記押ボタンと前記カッターとが電気的に接続される、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、カッターは押ボタンの形状に対応して切り欠かれて形成された切欠部を有し、該切欠部を介して、押ボタンとカッターとが電気的に接続される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、プラスティック製の筐体と、アース部を有する配線板と、筐体の前面から外部に露出するように設けられた押しボタンと、を備えた電子機器に対して、押しボタンを導電性材料で形成すると共に、押しボタンとアース部とを該電子機器の本来の機能に必要な導電性の金属部材を介して電気的に接続可能にしている。したがって、プラスティック製の筐体で形成された電子機器に対しても、該電子機器の本来の機能に必要な導電性の金属部材を介して、静電気を確実に逃がすことができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、本来必要な、印字用紙をカットするためのカッターと、該カッター及び印字用紙の送り機構等を保持するフレームと、を利用することによって、プラスティック製の筐体で形成された印字装置に対しても、静電気を確実に逃がすことができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、カッターは押ボタンの形状に対応して切り欠かれて形成された切欠部を有し、該切欠部を介して、押ボタンとカッターとが電気的に接続される。したがって、この切欠部によって、容易にカッターが押ボタンに対して電気的に接続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る電子機器の外径について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。図2(A)、図2(B)、図2(C)及び図2(D)は、本発明の一実施形態に係る電子機器の背面図、上面図、正面図及び側面図である。
【0019】
図1及び図2(A)〜図2(D)に示すように、本発明の一実施形態に係る電子機器は、例えば、ディジタルタコグラフ(運行情報収集装置)等に接続可能な車載用の印字装置1である。印字装置1は箱形をしており、プラスティック製の本体ケース11、印字部12及びフロントカバー13から基本構成されている。
【0020】
本体ケース11には、正面からみて左側部に、印字部12を収容する印字部収容12hが形成されている。印字部収容12hの最奥部には、印字部12を正面側に押し出すための一対のスプリング127が取り付けられている。補足すると、スプリング127は、収容状態にある印字部12に対して、押ボタン121が矢印方向に押下されたとき、この矢印方向と垂直方向に印字部12をロックしていたロック爪(不図示)が解除されると同時に、印字部12を正面側に押し出す。なお、正面からみて、本体ケース11の右側部には、パワースイッチ131を含むスイッチ群、及びブザーや外部機器コネクタ132等に接続される電子部品が収容されている。
【0021】
印字部12は、正面図に示すように、本体ケース11の左側部を占有する。印字部12は、本体ケース11の印字部収容12hに対応した形状をしており、ガイド12gを介して、印字部収容12h内をスライド可能である。印字部12の正面壁には、横長の用紙出力窓12kが設けられると共に印字部12のイジェクト用の押ボタン121が配置されている。正面壁の背面には、ノコギリ刃が用紙出力窓12kからのぞくように、印字用紙をカットするカッター122が取り付けられている。
【0022】
印字部12の中央部には、ロール型の印字用紙(不図示)を収容可能に曲線状に窪んだ印字用紙収容部126が形成されている。また、その左右には、ロール保持部126rが設けられている。なお、印字部12を構成する枠体は、基本的にプラスティック製である。
【0023】
フロントカバー13は、本体ケース11に取り付けられ、印字装置1のフロント部を構成するカバーである。フロントカバー13は、正面からみて左側部は印字部12に対応した窓状になっており、右側部は、パワースイッチ131を含むスイッチ群、及びブザーや外部機器コネクタ132等が配置されている。
【0024】
そして、上述したように、収容状態にある印字部12に対して、押ボタン121が図1中矢印方向に押下されると、この矢印方向と垂直方向に印字部12をロックしていたロック爪が解除されると同時に、印字部12が正面側に押し出されて、印字用紙の交換や補充が可能になる。交換や補充の作業が終了すると、印字部12の正面壁が矢印と同方向に押されて、最奥部まで押しきられると上記ロック爪が印字部12をロックする。
【0025】
なお、図2(B)に示すように、本体ケース11の上面には、製造番号等を記したラベルが貼られており、図2(C)に示すように、本体ケース11の背面には、電源線や信号線等が接続されるコネクタ部111が設けられている。
【0026】
続いて、図3及び図4〜図6を用いて、図1及び図2の印字装置1において、本発明に関連する要部の構造について説明する。図3は、本発明の電子機器の静電気対策構造の一実施形態に係る図1の要部分解斜視図である。補足すると、図3は、図1の印字部12において印字用紙収容部126より前方側(正面側)の分解斜視図である。図4、図5及び図6はそれぞれ、図1の印字装置における印字部及びその周りの上面図、正面図及び下面図である。なお、図3及び図4〜図6において、図1、図2と共通する部分には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
図3及び図4〜図6に示すように、印字部12における前方側は、押ボタン121、カッター122、フレーム123、接続プレート124及び配線板125を含んで構成される。
【0028】
押ボタン121は、導電性樹脂、例えば、カーボンと樹脂の混合物で形成されている。押ボタン121は、先端部が楕円柱凸状になっていると共に、スプリング121sを内蔵している。なお、スプリング121sは、上述した印字部12のロックに作用するものであり、本発明の主旨には関係しない。
【0029】
カッター122は、押ボタン121の先端部を除いて、押ボタン121の前方側に配置される。カッター122は、導電性の金属板で成形され、その下部には押ボタン121の先端部の形状に対応して切り欠かれた押ボタン保持部122rが形成され、その上部には印字用紙をカットするためのノコギリ刃122cが形成されている。また、その側端部には、フレーム123との接触を容易にするための折り曲げ片122tが設けられている。
【0030】
フレーム123は、導電性の金属板で成形され、カッター122の背面側に配置される。フレーム123には、印字用紙送り用のモータ123mやギア、モータ123m用の電力や制御信号を伝送するFPC123fが組み付けられている。フレーム123と、配線板125とは、導電性の金属板で成形された接続プレート124で電気接続される。但し、フレーム123に接続プレート124と同等の機能を果たす部位を一体形成してもよい。
【0031】
配線板125には、各種電子部品や、上記FPC123fが接続されるFPC受部125c、FPC受部125cと他部位を電気的に接続するフラットケーブル125f、アース電位の銅箔125d(請求項のアース部に対応)、銅箔125dをアースに落とすフラットケーブル125g等が実装されている。
【0032】
このような印字部12における前方側の構成において、図3のC1で示すように、導電性樹脂の押ボタン121は金属製のカッター122に電気的に接続され、C2で示すように、カッター122は金属製のフレーム123に電気的に接続され、C3及びC4で示すように、フレーム123は金属製の接続プレート124を介して、或いは、直接的に、アース電位の銅箔125dに電気的に接続される。したがって、押ボタン121が押下されたときに指等から伝わってくる静電気を、上記経路を経由させて、最終的に銅箔125d、すなわち、アース部に逃がすことができる。
【0033】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、電子機器の本来の機能に必要な導電性の金属部材、例えば、印字装置1の場合には押ボタン121やカッター122、フレーム123等を利用することによって、プラスティック製の筐体で形成された電子機器に対しても、静電気を確実に逃がすことができる。
【0034】
なお、押しボタンは導電性材料としては導電性樹脂が好ましいが、導電性金属であってもよい。また、押ボタン121のみならず、スイッチ群131に対しても本発明の静電気対策構造を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。
【図2】図2(A)、図2(B)、図2(C)及び図2(D)は、本発明の一実施形態に係る電子機器の背面図、上面図、正面図及び側面図である。
【図3】本発明の静電気対策構造の一実施形態に係る図1の要部分解斜視図である。
【図4】図1の印字装置における印字部及びその周りの上面図である。
【図5】図1の印字装置における印字部及びその周りの正面図である。
【図6】図1の印字装置における印字部及びその周りの下面図である。
【図7】この種の電子機器のひとつとしてディジタルタコグラフを示す正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 印字装置
11 本体ケース
12 印字部
13 フロントカバー
121 押ボタン
122 カッター
123 フレーム
124 接続プレート
125 配線板
125d 銅箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を内蔵するプラスティック製の筐体と、
アース部を有する配線板と、
前記筐体の前面から外部に露出するように設けられた押しボタンと、
を備えた電子機器の静電気対策構造であって、
前記押しボタンを導電性材料で形成すると共に、前記押しボタンを押下すると、前記押しボタンと前記アース部とが該電子機器の本来の機能に必要な導電性の金属部材を介して電気的に接続されるようにした、
ことを特徴とする電子機器の静電気対策構造。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器の静電気対策構造において、
前記電子部品は、印字装置であって、
前記金属部材として、
前記押ボタンに電気的に接続され、前記筐体の前面に配置されて印字用紙をカットするためのカッターと、
前記カッターに電気的に接続され、該カッターの背面側に配置されて該カッター及び前記印字用紙の送り機構等を保持するフレームと、が利用される、
ことを特徴とする電子機器の静電気対策構造。
【請求項3】
請求項2記載の電子機器の静電気対策構造において、
前記カッターは、前記押ボタンの形状に対応して切り欠かれて形成された押ボタン保持部を有し、
前記押ボタン保持部を介して、前記押ボタンと前記カッターとが電気的に接続される、
ことを特徴とする電子機器の静電気対策構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−4998(P2007−4998A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180278(P2005−180278)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】