説明

電子機器の静電気放電対策構造

【課題】電子機器の電源ボタンの部分の静電耐圧を上げることを目的とする。
【解決手段】電源ボタン11は、電源ボタン本体11aと、四角の帯形状のフランジ部11bとを有し、このフランジ部11bのX2側に電源ボタン本体11aの周面に沿う溝部11cが形成してある形状である。フロントパネル12は、その開口12aの縁に沿って、X1方向に突き出た、四角枠形状の囲いリブ部12bを有する形状である。溝部11cと囲いリブ部12bとが嵌合しており、隙間15は長い距離L2を有し、静電耐圧は高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器の静電気放電対策構造に係り、特に電子機器のフロントパネルの操作部材の部分における静電気放電対策構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来の電子機器の電源ボタンの付近の構造を示す。1は電源ボタン、2はフロントパネル、3はプリント回路基板、4は電源スイッチである。電源ボタン1及びフロントパネル2は共に合成樹脂製であり、電気絶縁性である。プリント回路基板には他の電子部品も実装してある。
【0003】
電源ボタン1は、フロントパネル2の開口2aに嵌合しており、操作者が手の指先で電源ボタン1を押すと、電源ボタン1がX1方向に変位して、突起部1bが電源スイッチ4を押し、電源スイッチ4が作動される構成である。電源ボタン1とフロントパネル2の開口2aとの間には、隙間5が極く狭いものであるけれども必ず存在する。図示の便宜上、隙間5は誇張して広く示してある。
【0004】
例えば操作者が過度に帯電している場合には、操作者が手の指先で電源ボタン1を押す操作を行ったときに、場合によっては、隙間5を通って、操作者が手の指先とプリント回路基板3との間で放電が起きて、電源スイッチ4を痛めてしまうことがある。
【0005】
そこで、従来は、電源ボタン1のフランジ部1aが所定の幅W1を有する構成とすることによって、開口2aから電源ボタン1の周面を辿ってフランジ部1aの端にまで至る経路をL字形状とし、経路の距離L1を稼いで、静電耐圧を高くしている。
【0006】
従来の静電気放電対策構造は、ESD(electrostatic discharge)試験を行ったところ、静電耐圧は約15kVであった。
【0007】
近年では電子機器の信頼性の向上のために、静電耐圧を更に高める要求がある。
【特許文献1】特開2000−323295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電源ボタン1のフランジ部1aの幅W1を広くして、沿面距離L1を稼ぐと、静電耐圧は更に高くなる。しかし、電子機器の外形形状からして、電源ボタン1のフランジ部1aの幅W1を広くする程度には限度がある。
【0009】
また、プリント回路基板3に避雷針のような部品(図示せず)を設け、この部品に静電気放電が落ちるようにして、静電気放電対策構造としたものもある。しかし、この場合には、部品点数が増えてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決した電子機器の静電気放電対策構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電気絶縁性であるパネルと、電気絶縁性であり、前記パネルの開口に嵌合してある操作部材とを有する電子機器において、
前記操作部材は、操作部本体と、該操作部本体より張り出ているフランジ部とを有し、且つ前記フランジ部のうち前記パネルに対向する面に、操作部本体の周囲に沿う溝部が形成してあり、
前記パネルは、その裏面に、前記開口の縁に沿う囲いリブ部を有し、
前記操作部材は、その操作部本体が前記パネルの囲いリブ部の内側に嵌合しており、且つ、その溝部が前記パネルの囲いリブ部に嵌合している構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フランジ部に溝部が形成してあり、パネルに囲いリブ部が形成してあり、溝部が囲いリブ部に嵌合していることによって、溝部の内面に沿う長さが隙間の長さに加算され、静電耐圧が上る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1になる電子機器の静電気放電対策構造10を示す。図2はフロントパネル12と電源ボタン11とを分解して示す。図3は、電源ボタン11及びフロントパネル12の輪郭(実線で示す)を図6の従来の電源ボタン1及びフロントパネル2の輪郭(二点鎖線で示す)に重ね合わせて示す。
【0015】
11は押し操作される電源ボタン、12はフロントパネル、13はプリント回路基板、14は電源スイッチである。電源ボタン11及びフロントパネル12は共に合成樹脂製であり、電気絶縁性である。プリント回路基板13は、フロントパネル12の裏面側にフロントパネル12に接近して配置してある。電源スイッチ14は、プリント回路基板13に実装してあり、電源ボタン11の裏側に位置している。X1は電源スイッチ14を押す方向である。プリント回路基板13とフロントパネル12との間の距離Qは従来と同じである。
【0016】
電源ボタン11は、フロントパネル12の開口12aに嵌合しており、操作者が手の指先で電源ボタン11を押すと、電源ボタン1がX1方向に変位して、電源スイッチ14を押し、電源スイッチ14が作動される。電源ボタン11とフロントパネル12の開口12aとの間には、僅かの隙間15が必ず存在する。図示の便宜上、隙間15は誇張して広く示してある。
【0017】
電源ボタン11は、X2側から見て四角形状であり、略四角柱形状の電源ボタン本体11aと、この電源ボタン本体11aのX1端より周囲に張り出た四角の帯形状のフランジ部11bとを有し、このフランジ部11bのX2側に電源ボタン本体11aの周面に沿う溝部11cが形成してある形状である。上記フランジ部11bの厚さt1は従来の電源ボタン1のフランジ部1aと突起部1b(図6参照)とを合わせた厚さである。張り出し幅W1は、従来の電源ボタン1のフランジ部1aの幅と同じである。11dは外側壁部であり、フランジ部11bの周囲の部分であり、溝部11cの外側を形成しており、枠形状である。
【0018】
また、フランジ部11bより一対の板ばね部11eが延びており、各板ばね部11eは取り付け部11fにつながっている。
【0019】
フロントパネル12は、その開口12aの縁に沿って、X1方向に突き出た、四角枠形状の囲いリブ部12bを有する形状である。
【0020】
電源ボタン11の溝部11cと、フロントパネル12の囲いリブ部12bとは、嵌合し合う関係にある。
【0021】
この電源ボタン11は、取り付け部11fをフロントパネル12の裏面に固定されて取り付けてあり、図1に示すように、その電源ボタン本体11aが開口12a及び囲いリブ部12bの内側に嵌合し、且つ、電源ボタン11の溝部11cがフロントパネル12の囲いリブ部12bと嵌合して、即ち、フロントパネル12の囲いリブ部12bが電源ボタン11の溝部11cに入り込んだ状態で、フロントパネル12の裏面側に配置してある。電源ボタン11は、これと一体の板ばね部11eによってX2方向に付勢されている。
【0022】
ここで、図1中、拡大して示す図を参照して、前記の隙間15の経路について見てみる。隙間15は、開口12aの縁を起点A1として、X1方向に、溝部11dの底の点A2まで延在し、この点A2で向きをX2方向に代えて、外側壁部11dと囲いリブ部12bとの間をX2方向に延在して、外側壁部11dの上端の点A3で終わる。この隙間15は、L字形状ではなくて、略U字形状であり、距離L2を有する。フロントパネル12の囲いリブ部12bが電源ボタン11の溝部11cに入り込んでいるため、電源ボタン11の上記の溝部11cの内面に沿う部分が沿面距離に含まれることになる。
【0023】
これによって、電子機器の静電気放電対策構造10は、電源ボタン11のX2方向から見た場合のサイズを特別に大きくすることなく、上記の隙間15の距離L2は従来の距離L1に比較して長くなる。
【0024】
ESD試験を行ったところ、静電耐圧は従来よりも5kVも高くなって約20kVであった。
【0025】
よって、電子機器の静電気放電対策構造10によれば、電源ボタン11のサイズを特別に大きくすることなく、しかも、避雷針のような特別の部品を設ける等してプリント回路基板13をアースの強化等の特別の改造をすることなくして、静電耐圧を高めることが出来る。
【実施例2】
【0026】
図4及び図5は本発明の実施例1になる電子機器の静電気放電対策構造10Aを示す。この電子機器の静電気放電対策構造10Aは、図1及び図2に示す前記の電子機器の静電気放電対策構造10とは、電源ボタン11Aの形状が相違する。電源ボタン11Aは、フランジ部11bの先端、即ち、外側壁部11dの先端より外側に張り出た張り出し部11gを有する。張り出し部11gは、フロントパネル12の裏面に対向する。
【0027】
よって、隙間15Aは、開口12aの縁を起点A1として、点A2を経由して、点A3に至った後、更に延びて、張り出し部11gの端の点A4で終わる。この隙間15Aの距離L3は上記の実施例1の電子機器の静電気放電対策構造10の隙間15の距離L2に比較して長くなる。よって、電子機器の静電気放電対策構造10Aの静電耐圧は、更に高くなる。
【0028】
上記の電子機器の静電気放電対策構造10,10Aは、電源ボタン11,11A以外の押し操作ボタン、回す操作ノブ等の部分にも同様に適用可能である。
【0029】
特許請求の範囲において、操作部材は、電源ボタン11,11Aが対応する。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1になる電子機器の静電気放電対策構造の断面図である。
【図2】図1中、フロントパネルと電源ボタンとを分解して示す斜視図である。
【図3】図1中の電源ボタン及びフロントパネルの輪郭を図6中の電源ボタン及びフロントパネルの輪郭に重ね合わせて示す図である。
【図4】本発明の実施例2になる電子機器の静電気放電対策構造の断面図である。
【図5】図4中、フロントパネルと電源ボタンとを分解して示す斜視図である。
【図6】従来の電子機器の電源ボタンの付近の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
10、10A 電子機器の静電気放電対策構造
11、11A 電源ボタン
11a 電源ボタン本体
11b フランジ部
11c 溝部
11d 外側壁部
11g 張り出し部
12 フロントパネル
12a 開口
12b 囲いリブ部
13 プリント回路基板
14 電源スイッチ
15,15A 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性であるパネルと、電気絶縁性であり、前記パネルの開口に嵌合してある操作部材とを有する電子機器において、
前記操作部材は、操作部本体と、該操作部本体より張り出ているフランジ部とを有し、且つ前記フランジ部のうち前記パネルに対向する面に、操作部本体の周囲に沿う溝部が形成してあり、
前記パネルは、その裏面に、前記開口の縁に沿う囲いリブ部を有し、
前記操作部材は、その操作部本体が前記パネルの囲いリブ部の内側に嵌合しており、且つ、その溝部が前記パネルの囲いリブ部に嵌合している構成としたことを特徴とする電子機器の静電気放電対策構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器の静電気放電対策構造において、
前記操作部材は、前記フランジ部のうち、前記パネルに対向する面より更に外側に張り出す張り出し部を有し、
前記張り出し部は、前記パネルの裏面に対向する構成としたことを特徴とする電子機器の静電気放電対策構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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