説明

電子機器収納箱

【課題】ケース本体とカバーとを結合させる際に、同時にケース本体とカバーとを導通させることができる電子機器収納箱を提供する。
【解決手段】電子機器収納箱1は、前面が開口したケース本体3と、カバー前蓋10およびカバー前蓋10の外周から後方に延びるカバー周壁11により形成されたカバー2とで構成される。固定用ねじ14が、カバー下壁11bに開口した挿通穴12に下方から挿通され、導電性の固定用金具15の固定用穴17に螺合される。ケース本体3の開口面を形成する端縁にガイド片7が、カバー周壁11の内周に重複するように形成される。ケース本体3とカバー2との結合時に、下ガイド片7bに開口した切欠部9に固定用ねじ14が挿入される。固定用ねじ14の螺合時、固定用金具15の下面に突設されたケース導通用エッジ19およびカバー導通用エッジ18がケース本体3およびカバー2に食い込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース本体およびカバーで構成され、その内部に電子機器を収納する電子機器収納箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、一面が開口した導電性のケース本体、およびケース本体の開口面の全面を覆うようにケース本体と結合する導電性のカバーを備え、その内部に電子機器を収納する電子機器収納箱が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、電子機器の高精度・高機能化に伴い、電子機器の放射する電磁波による他の電子機器への影響が問題になっている。そのため、上記の電子機器収納箱では、ケース本体とカバーとを導通させて電子機器収納箱を等電位化し、電子機器収納箱を電磁シールドとして使用している。これにより、電子機器収納箱の外部からの電磁波の侵入と、電子機器収納箱の内部の電子機器が放射する電磁波の外部への漏洩とを抑制する。
【0004】
特許文献1では、ケース本体とカバーとを導通させるために、電子機器収納箱の内部にリード線を設けている。しかし、リード線を別途設けるためには、電子機器収納箱の内部にリード線を配線するための部品の追加やリード線を収納する空間の確保が必要となる。他にも、ケース本体とカバーとの結合時、ケース本体とカバーとの間へのリード線の挟込みなどにより、リード線に障害が発生する虞がある。
【0005】
そのため、リード線を別途設けることなくケース本体とカバーとを導通させる手段が必要となる。その一手段として、ケース本体とカバーとを結合するねじ止め部分を利用する技術がある。
【0006】
この電子機器収納箱においては、ケース本体にはカバーと結合するためのねじ取付け部が設けられている。また、カバーにはねじ取付け部に対応する箇所に挿通穴が設けられており、カバーは挿通穴がねじ取付け部を外側から覆うようにケース本体と結合される。ケース本体とカバーとを位置固定した状態で、導電性の固定用ねじをカバーの外側から挿通穴に挿通しケース本体のねじ取付け部に取り付けることにより、ケース本体とカバーとを結合する。これにより、ケース本体とカバーの両当接面もしくは固定ねじを通じてケース本体とカバーとは導通する。
【0007】
しかし、電子機器収納箱の外観を向上させるために、ケース本体の表面およびカバーの表面は塗装される。一般に塗膜は絶縁性を有するので、ケース本体の表面およびカバーの表面は絶縁性の塗膜により導通性を有さなくなる。そのため、ケース本体とカバーの両当接面を通じてケース本体とカバーとは導通しない。また、ケース本体およびカバーは固定ねじとの当接部分においても導電性を有さないので、固定ねじを通じてもケース本体とカバーとは導通しない。
【0008】
一方で、上記の塗装が施されている場合であっても、結合部分を通じてケース本体とカバーとを導通させるために、固定用ねじに代えて共に導電性の座金組込みボルトおよびナットを使用する技術がある。座金はカバーとの当接方向に歯を持つ歯付き座金を使用し、ナットはケース本体との当接方向に歯を持つ歯付きナットを使用する。この座金組込みボルトをカバーの挿通穴およびケース本体のねじ取付け部に挿通しナットと締結させることにより、ケース本体とカバーとを結合する。
【0009】
上記のケース本体とカバーとの結合時、座金の歯がカバーの挿通穴周縁の塗装を剥がすことにより、座金とカバーの導電性を有する部分とが当接する。また、ナットの歯がケース本体のねじ取付け部周縁の塗装を剥がすことにより、ナットとケース本体の導電性を有する部分とが当接する。これにより、座金組込みボルトおよびナットを通じてケース本体とカバーとを導通させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭61−134085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記の技術ではカバーの外側面において挿通穴周縁の塗装が剥がれたり、傷がついたりするため、電子機器収納箱の外観を損なうなどの問題がある。
【0012】
本発明は、上記の事由に鑑みて為されたものであって、外観を損なうことなく、ケース本体とカバーとの結合時にケース本体とカバーとを導通させることができる電子機器収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電子機器収納箱は、一面に開口面を有する筐体であって、開口面を形成する端縁から延びるガイド片を有するケース本体と、ケース本体の開口面を覆うカバー前蓋とガイド片に重複するカバー周壁とを一体に備えるカバーと、カバー周壁およびガイド片に外側から挿通される固定用ねじと、固定用ねじが螺合する板状の固定用金具とを有し、固定用金具には、カバー周壁およびガイド片と対向する面からケース導通用エッジおよびカバー導通用エッジが突出しており、固定用ねじの締付けに伴って、ケース導通用エッジがガイド片に食い込むとともにカバー導通用エッジがカバー周壁に食い込むことにより、固定用金具を通じてケース本体とカバーとを導通させることを特徴とする。
【0014】
この電子機器収納箱において、カバー周壁とガイド片との一方は、他方の内側に重複するとともに固定用ねじが挿通される箇所において端縁が開放した切欠部が形成され、固定用金具における切欠部の導入部位には、カバー周壁とガイド片との他方との対向面から離れながら延びるテーパ片が一体に設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、電子機器収納箱の外観を損なうことなく、ケース本体とカバーとの結合時にケース本体とカバーとを導通させるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の電子機器収納箱の分解斜視図である。
【図2】同上の電子機器収納箱の斜視図である。
【図3】同上のカバーの要部分解斜視図である。
【図4】同上のカバーの側部の要部断面図である。
【図5】(a)は同上のカバーとケース本体との結合前の要部断面図、(b)は同上のカバーとケース本体との結合時の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
以下では、図2の上下方向を上下方向とし、電子機器収納箱1のカバー2のある面を前面として説明する。
【0018】
本実施形態の電子機器収納箱1は、図1に示すように、前面が開口したケース本体3と、ケース本体3の開口した前面を覆うようにケース本体3と結合するカバー2とで構成される。ケース本体3の表面およびカバー2の表面は、絶縁性を有する塗料により塗装が施されている。本実施形態のカバー2には、電子機器収納箱1に収納した電子機器を操作するための操作窓4が設けられている。
【0019】
ケース本体3は前面以外の面を囲う矩形筐体であり、上下左右方向を囲うケース周板5と後方を塞ぐ図示しない後板とで構成される。ケース周板5は、上部であるケース上板5aと下部であるケース下板5bと左右両側部であるケース側板5cとで構成される。図1はケース本体3の内部にボックス6を配設した状態を示しており、ボックス6の内部には図示しない電子機器が収納されている。
【0020】
図1に示すように、ケース本体3にはケース周板5の前端縁から前方に延びるガイド片7が備えられている。ガイド片7は、上部である上ガイド片7aと下部である下ガイド片7bと左右両側部である側ガイド片7cとで構成される。上ガイド片7aには、係止穴8が左右の2箇所に設けられている。また、下ガイド片7bには、前方に開放されたU字状の切欠部9が左右の2箇所に設けられている。切欠部9は、上下方向に貫設されている。
【0021】
カバー2は、後面が矩形状に開口した薄箱状に形成されており、カバー2の前面を形成するカバー前蓋10と、カバー前蓋10の外周に沿って後方に形成されたカバー周壁11とで構成される。カバー周壁11は、上部であるカバー上壁11aと下部であるカバー下壁11bと左右両側部であるカバー側壁11cとで構成される。
【0022】
カバー上壁11aには、図示しない係止爪が2箇所において内向きに突設されている。係止爪は、ケース本体3とカバー2との結合時に、上ガイド片7aの係止穴8に挿入し、引っ掛けられる。また、カバー下壁11bには挿通穴12(図3参照)が左右の2箇所に貫設されている。挿通穴12は、ケース本体3とカバー2との結合時に、それぞれ対応する切欠部9と左右方向に重複する。
【0023】
図2に示すように、ケース本体3とカバー2との結合時においては、ケース周板5の外面とカバー周壁11の外面とは面一になる。ガイド片7は、図2の状態においてカバー周壁11の内周と重複するように、ケース周板5の前端縁から前方に延びている。ガイド片7はケース周板5の前端縁の外周よりも内側に形成されるため、ケース周板5の前端縁において、ケース周板5の外周とガイド片7との間には段差(以下、段差部13とする。)が生じる。
【0024】
ケース本体3とカバー2との結合時、カバー周壁11の内周はガイド片7と重複するので、ガイド片7はカバー2をケース本体3との結合位置まで導くガイドとして機能する。ケース本体3とカバー2との結合は、カバー周壁11の後端縁を段差部13と当接する位置においてなされる。ガイド片7の前後方向の幅は、カバー周壁11の前後方向の幅より短く形成されている。
【0025】
図3に示すように、カバー下壁11bの挿通穴12と下ガイド片7bの切欠部9とによる固定には、固定用ねじ14と固定用金具15と抜け止めリング16とを用いる。
【0026】
固定用金具15は、金属板を用いて矩形状に形成されている。固定用金具15には、固定用ねじ14を取り付けるための固定用穴17が設けられている。固定用穴17の中心から固定用金具15の前端までの距離は、挿通穴12の中心からカバー前蓋10までの距離と略等しい。
【0027】
図4に示すように、固定用金具15の前端の下面には、カバー導通用エッジ18が突設されている。また、固定用金具15の下面には、固定用穴17とカバー導通用エッジ18と前後方向の間に、ケース導通用エッジ19が突設されている。ケース導通用エッジ19の突設寸法は、カバー導通用エッジ18の突設寸法よりも下ガイド片7bの厚み分程度短い。固定用金具15の後端部にはカバー下壁11bとの間隔を広げながら後方へ延伸されたテーパ片20が設けられている。
【0028】
抜け止めリング16は、その外径が固定用穴17の直径より大きく、固定用ねじ14のねじ先部分に取り付けられる。固定用ねじ14を固定用穴17に挿通した状態において抜け止めリング16を固定用ねじ14に取り付けることにより、固定用ねじ14は固定用穴17から抜けなくなり、固定用金具15から取り外すことができなくなる。抜け止めリング16としては、EリングやCリングを用いることができる。
【0029】
図5(a)に示すように、ケース本体3とカバー2との結合前、固定用ねじ14は、カバー下壁11bの下方から挿通穴12に挿通され、固定用金具15の固定用穴17に螺合している。固定用金具15の前端はカバー前蓋10と対向し、カバー導通用エッジ18はカバー下壁11bと対向している。また、固定用ねじ14には抜け止めリング16が取り付けられているから、固定用ねじ14を緩めてもカバー下壁11bの挿通穴12から抜けることはなく、カバー2からの固定用ねじ14の脱落が防止されている。
【0030】
次に、本実施形態のケース本体3とカバー2との結合の手順について説明する。
【0031】
ケース本体3とカバー2とを結合する時、カバー周壁11がガイド片7によって案内され、カバー上壁11aに形成されている係止爪(図示せず)が上ガイド片7aの係止穴8に挿入され、引っ掛けられる。この時、カバー周壁11の後端縁と段差部13とが当接する(図2参照)。
【0032】
そして、カバー下壁11bと固定用金具15との間に下ガイド片7bが挿入され、下ガイド片7bの切欠部9には固定用ねじ14が挿入される。ここで、固定用金具15の後端に設けられたテーパ片20が、カバー下壁11bに対して上方向へ開放した形状を有しているので、下ガイド片7bをカバー下壁11bと固定用金具15との間へ導く差込みガイドとして機能する。そのため、固定用ねじ14が十分に緩められていない場合であっても、下ガイド片7bをカバー下壁11bと固定用金具15との間へ挿入することが可能となる。
【0033】
固定用ねじ14が切欠部9の後端に当接する時、図4に示すように、下ガイド片7bの前端はケース導通用エッジ19とカバー導通用エッジ18との間まで到達する。ただし、下ガイド片7bの前後方向の幅はカバー下壁11bの前後方向の幅より短いので、カバー導通用エッジ18の下方まで到達することはない。これにより、ケース本体3とカバー2とを結合する時、ケース導通用エッジ19は下ガイド片7bと当接し、カバー導通用エッジ18はカバー下壁11bと当接することになる。
【0034】
上記の手順により、カバー上壁11aに形成された係止爪が上ガイド片7aの係止穴8に係合され、カバー下壁11bと固定用金具15との間に下ガイド片7bが挿入され、下ガイド片7bの切欠部9には固定用ねじ14が挿入している。この状態において、固定用ねじ14を固定用金具15の固定用穴17に螺合し固定することにより、ケース本体3とカバー2とが結合する。
【0035】
図4に示すように、固定用金具15の前端がカバー前蓋10に近接しているので、固定用金具15は固定用穴17を中心とした回転方向への移動は規制されている。このため、固定用金具15の固定用穴17に固定用ねじ14を螺合する時、固定用金具15はカバー前蓋10の当接面により固定され、固定用ねじ14を回しても共回りすることはない。そのため、固定用ねじ14を回すことにより、固定用金具15の固定用穴17へ固定用ねじ14を螺合することが可能となる。
【0036】
固定用ねじ14を螺合した時、図5(b)に示すように、ケース導通用エッジ19が下ガイド片7b内面の塗膜を剥がして下ガイド片7bに食い込み、カバー導通用エッジ18がカバー下壁11bの内面の塗膜を剥がしてカバー下壁11bに食い込む。これにより、固定用金具15はケース本体3の導電性部分およびカバー2の導電性部分に当接する。
【0037】
その結果、固定用金具15はケース本体3およびカバー2と導通するため、固定用金具15を通じてケース本体3とカバー2とは導通する。また、ケース導通用エッジ19およびカバー導通用エッジ18が塗膜を剥がす箇所は、ケース本体3およびカバー2の内面であり、ケース本体3およびカバー2の外面の塗膜を剥がしたり、傷をつけたりする虞はない。
【符号の説明】
【0038】
1 電子機器収納箱
2 カバー
3 ケース本体
7 ガイド片
9 切欠部
10 カバー前蓋
11 カバー周壁
14 固定用ねじ
15 固定用金具
18 カバー導通用エッジ
19 ケース導通用エッジ
20 テーパ片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に開口面を有する筐体であって、前記開口面を形成する端縁から延びるガイド片を有するケース本体と、前記ケース本体の開口面を覆うカバー前蓋と前記ガイド片に重複するカバー周壁とを一体に備えるカバーと、前記カバー周壁および前記ガイド片に外側から挿通される固定用ねじと、前記固定用ねじが螺合する板状の固定用金具とを有し、前記固定用金具には、前記カバー周壁および前記ガイド片と対向する面からケース導通用エッジおよびカバー導通用エッジが突出しており、前記固定用ねじの締付けに伴って、前記ケース導通用エッジが前記ガイド片に食い込むとともに前記カバー導通用エッジが前記カバー周壁に食い込むことにより、前記固定用金具を通じて前記ケース本体と前記カバーとを導通させることを特徴とする電子機器収納箱。
【請求項2】
前記カバー周壁と前記ガイド片との一方は、他方の内側に重複するとともに前記固定用ねじが挿通される箇所において端縁が開放した切欠部が形成され、前記固定用金具における前記切欠部の導入部位には、前記カバー周壁と前記ガイド片との他方との対向面から離れながら延びるテーパ片が一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子機器収納箱。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−74421(P2012−74421A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216171(P2010−216171)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(505155012)パナソニックエコソリューションズ電路株式会社 (140)
【Fターム(参考)】