説明

電子機器用試験箱

【課題】ガラス板にITO膜を膜厚に形成した場合や、ガラス板の両面にITO膜を形成した場合であっても、試験箱本体の内部の電子機器を良好に視認することができる視認性の高い電子機器用試験箱を提供する。
【解決手段】電子機器Pが内部に入れられると共に、外部からの電波の遮蔽性を有する試験箱本体10と、当該試験箱本体10の一部を構成する扉12に形成され、電波の遮蔽性および可視光に対する透過性を有するガラス板21が設けられた窓20と、を備える電子機器用試験箱1であって、試験箱本体10は、その内周面に取り付けられた電波吸収体30と、当該電波吸収体30の表面に固定された明色の絶縁層(樹脂膜40)と、試験箱本体10の内部に設けられたLED照明と、をさらに備え、ガラス板21は板ガラス211の両面に透明酸化物半導体の薄膜が形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の電子機器に対する試験を行う電子機器用試験箱に係り、さらに詳細には、電波の遮蔽性を維持しつつ、内部の視認性を高めた電子機器用試験箱に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話等の電子機器は、製造後や修理後に正常に動作・機能するか否かについて、無線電波による無線接続試験(以下、試験という)を行う場合がある。従来、このような試験は、正確な受信能力の試験を行うために、外来電波が遮断された電波無響室(電波暗室)と称される大型の特殊な部屋や、シールドボックス(電波遮蔽箱)と称される箱の内部で行われていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属製の筺体の内側に電波吸収構造が設けられた試験箱本体と、試験箱本体の正面側に固定された2本の手挿入用導波管と、片面にITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜を形成したガラス板が設けられた窓とを主に備えた電子機器用試験箱が開示されている。このような電子機器用試験箱は、試験員が試験箱本体の内部の電子機器を視認しながら、手で直接操作して試験を行うことができるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−153841号公報(段落0044〜0052、図1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の電子機器の高性能化により、外来電波を確実に遮蔽することができる電波の遮蔽性に優れた電子機器用試験箱の必要性が高まっている。そして、電子機器用試験箱(試験箱本体)の電波の遮蔽性を高めるため、窓に設けられたガラス板に電波の遮蔽性(反射性)を有するITO膜を膜厚に形成する必要性や、ガラス板の両面にITO膜を形成する必要性が生じている。
【0006】
ガラス板にITO膜を膜厚に形成したり、ガラス板の両面にITO膜を形成したりすることで、ガラス板の電波の遮蔽性(反射性)が高まるので、試験箱本体の電波の遮蔽性を高めることが可能となる。しかしながら、このようなガラス板は、可視光に対する透過性が低下するので、試験箱本体の内部が暗くなり、窓本来の役割である視認性が低下して、試験箱本体の内部の電子機器が視認しにくくなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく、ガラス板にITO膜を膜厚に形成した場合や、ガラス板の両面にITO膜を形成した場合であっても、試験箱本体の内部の電子機器を良好に視認することができる視認性の高い電子機器用試験箱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る電子機器用試験箱は、電子機器が内部に入れられると共に、外部からの電波の遮蔽性を有する試験箱本体と、当該試験箱本体に形成され、電波の遮蔽性および可視光に対する透過性を有するガラス板が設けられた窓と、を備える電子機器用試験箱であって、前記試験箱本体は、その内周面に取り付けられた電波吸収体と、当該電波吸収体の表面に固定された明色の絶縁層と、前記試験箱本体の内部に設けられたLED照明と、をさらに備え、前記ガラス板は、板ガラスの両面に透明酸化物半導体の薄膜が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
このような電子機器用試験箱によれば、電波吸収体の表面に固定された明色の絶縁層により試験箱本体の内部が明るくなるので、ガラス板にITO膜を膜厚に形成したり、ガラス板の両面にITO膜を形成したりすることによって、ガラス板の可視光に対する透過性が低下した場合であっても、試験箱本体の内部の電子機器を良好に視認することができる。
なお、本発明において、明色とは、マンセル表色系(Munsell color system、JIS Z8721)に規定されている明度が8.0〜10.0の範囲にある色をいう。
また、本発明において、絶縁層とは、体積抵抗値が10Ωcm以上の材質からなる層をいう。絶縁層はその厚さによって、絶縁板または絶縁膜と呼ばれるが、絶縁板または絶縁膜の厚さの境界(閾値)は明確ではない。したがって、本願発明において、絶縁層は、絶縁板および絶縁膜の両方を含むものとする。絶縁板の具体例として、例えば、樹脂板、セラミックス板、硝子板、厚紙等が挙げられる。絶縁膜の具体例として、例えば、樹脂膜、紙等が挙げられる。
【0010】
また、このような電子機器用試験箱によれば、試験箱本体の内周面に電波吸収体を備えるので、試験中に、例えば、電子機器のアンテナや測定用アンテナ等から放射される電波を効果的に吸収することができる。これにより、電波の共振現象を防止して、電子機器の試験を精密に行うことができる。
なお、電波の共振現象とは、電波の遮蔽性を有する試験箱本体の内部で電波が放射されたとき、試験箱本体の内部の壁面で電波が反射を繰り返して干渉を起こす現象をいう。
さらに、このような電子機器用試験箱によれば、試験箱本体の内部を照らすことで、試験箱本体の内部をさらに明るくすることができるので、試験箱本体の内部の電子機器をより良好に視認することができ、照明をLEDランプとすることで、点滅時にノイズがほとんど発生しないので、電子機器の試験を精密に行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、絶縁層が明色の顔料を含む樹脂からなることを特徴とする。
【0012】
このような電子機器用試験箱によれば、絶縁層を明色の顔料を含む樹脂製とすることで、明色を呈する樹脂だけではなく、例えば、透明樹脂等であっても、明色の顔料を含ませることで使用することが可能となり、絶縁層の原料となる樹脂を幅広く選択することができる。さらに、耐久性、堅牢性に優れているため、ねじ孔等を穿設することが可能となり、試験箱内部に設置されたコネクタ(接栓)や治具等を係止するための基板として使用することができる。
【0013】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、前記絶縁層が発泡樹脂からなることを特徴とする。
【0014】
このような電子機器用試験箱によれば、ガラス板にITO膜を膜厚に形成したりガラス板の両面にITO膜を形成したりすることによって、ガラス板の可視光に対する透過性が低下した場合であっても、電波吸収体の表面に固定された発泡樹脂により試験箱本体の内部が明るくなるので、試験箱本体の内部の電子機器を良好に視認することができる。すなわち、発泡樹脂は、内部に気泡を含むため、外部からの可視光が乱反射され、無色透明樹脂を基材とする場合、一般的に白色となる。よって、視認性に有効である。また、発泡スチロール等の樹脂板であれば、加工および取扱いが容易であるといった作用効果を得られる。さらに、絶縁層として発泡樹脂を使用することにより、原料コストの低減を図ることが可能となる。さらに、発泡樹脂は、軽量で且つ切断が容易であり、加工および取扱いを容易に行うことができるとともに、施工性も優れているため試験箱の製造コストも低くすることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、前記絶縁層が明色の染料を含む紙または明色の顔料が印刷された紙からなることを特徴とする。
【0016】
このような電子機器用試験箱によれば、請求項1と同様の作用効果の他に、軽量かつ切断が容易な紙を用いたことで、加工および取扱いが容易であるといった作用効果を得られる。また、絶縁層として紙を使用することにより、原料コストの低減を図ることが可能となり、さらに、軽量で且つ切断が容易であり、加工および取扱いを容易に行うことができるとともに、施工性も優れているため試験箱の製造コストも低くすることが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、顔料が白色顔料あるいは蛍光顔料であることを特徴とする。
【0018】
このような電子機器用試験箱によれば、顔料を、白色顔料あるいは蛍光顔料とすることで、試験箱本体の内部を好適に明るくすることができるので、試験箱本体の内部の電子機器を良好に視認することができる。
なお、本発明において、蛍光顔料とは、紫外線を照射することにより電子が励起され、この電子が基底状態に戻る際に特定波長の可視光を発する顔料である。
【0019】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、前記絶縁層が明色のセラミックスもしくは硝子からなることを特徴とする。
【0020】
ここで、セラミックスは、石英や酸化アルミニウム、炭化珪素など前記の範囲内にある明度のものを使用することが可能である。硝子については、その表面が光を拡散させるスリガラスのような性質を持つものは、特に視認性という点において利点を備える。このような電子機器用試験箱によれば、セラミックスまたは硝子を使用することで、強度・耐久性・耐候性に優れ、製造段階において、明度を上げるための染料を使用しない絶縁層を提供することが可能である。
【0021】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、電波吸収体がλ/4型電波吸収体であることを特徴とする。
【0022】
このような電子機器用試験箱によれば、電波吸収体を、構造が簡単で、設計が容易なλ/4型電波吸収体とすることで、試験箱本体の内部で放射される電波の波長λに応じて、最適な電波吸収能を持つ電波吸収体を設計することができるので、試験箱本体の内部で放射される電波をより効果的に吸収することができる。これにより、電波の共振現象を効果的に防止して、電子機器の試験を精密に行うことができる。
【0023】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、絶縁層がλ/4型電波吸収体の保護膜を兼ねることを特徴とする。
【0024】
このような電子機器用試験箱によれば、絶縁層がλ/4型電波吸収体の保護膜を兼ねるので、λ/4型電波吸収体の保護膜の表面に、さらに明色の絶縁層を固定する必要がなくなり、試験箱本体の構造を簡略化することができると共に、材料コストや製造コストを抑えることができる。
【0025】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、透明酸化物半導体の薄膜がITO膜であり、板ガラスの両面に抵抗値が2Ω/□以下となるITO膜が形成されたことを特徴とする。
【0026】
このような電子機器用試験箱によれば、ガラス板の可視光に対する透過性が低下した場合であっても、試験箱本体の内部の電子機器を良好に視認することができる。
【0027】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、板ガラスの両面に、さらに透明樹脂の保護膜が形成されたことを特徴とする。
【0028】
このような電子機器用試験箱によれば、薄膜を剥落や削剥等から保護することができるので、薄膜が剥落した部分からの電波の侵入を防止することができる。
【0029】
また、本発明に係る電子機器用試験箱は、絶縁層が電波吸収体の表面にピンまたはネジで固定されることを特徴とする。
【0030】
このような電子機器用試験箱によれば、絶縁層を電波吸収体の表面にピンまたはネジで固定するので、電波吸収体の表面抵抗値を変化させることがないため、電波吸収体の性能を十分に発揮させることができる。
なお、絶縁層を電波吸収体の表面に接着剤で固定すると、電波吸収体の表面抵抗値が変化してしまい、本来電波を透過させるはずの電波吸収体の表面において電波の反射が起こり、吸収することができなくなるので好ましくない。しかしながら、例えば熱可塑性接着剤、熱硬化性接着剤や光硬化性接着剤などの絶縁性に優れた接着剤を使用すれば、電波反射を抑えることが可能である。また、接着方法についても、例えばスポットで絶縁膜を接着するなどの工夫を施して、接着面積を最小限に抑えれば、電波吸収体の電波吸収特性を殆んど損なうことなく絶縁膜を電波吸収体の表面に固定することが可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ガラス板にITO膜を膜厚に形成した場合や、ガラス板の両面にITO膜を形成した場合であっても、試験箱本体の内部の電子機器を良好に視認することができる視認性の高い電子機器用試験箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る電子機器用試験箱の一実施形態を示す一部断面部分を含む正面図である。
【図2】図1に示す電子機器用試験箱のII−II断面図である。
【図3】本発明に係る電子機器用試験箱の一実施形態を示す縦断面図である。
【図4】図1に示す電子機器用試験箱のIV−IV断面図である。
【図5】(a)乃至(c)はガラス板の構造例を示す断面図である。
【図6】(a)はλ/4型電波吸収体の構造を示す断面図であり、(b)は樹脂膜が保護膜を兼ねるλ/4型電波吸収体の構造を示す断面図である。
【図7】(a)はハニカムフィルタを示す斜視図であり、(b)はメッシュフィルタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。図1は電子機器用試験箱を示す一部断面部分を含む正面図である。
図1に示すように、電子機器用試験箱1は、電子機器Pが内部に入れられると共に、外部からの電波の遮蔽性を有する試験箱本体10と、当該試験箱本体10の一部を構成する扉12に形成され、電波の遮蔽性および可視光に対する透過性を有するガラス板21が設けられた窓20とを主に備え、試験箱本体10の内部に電波吸収体30と、当該電波吸収体30の表面に固定された明色の絶縁層を構成する樹脂層(樹脂膜40または樹脂板)とをさらに備えている。ここで、絶縁層とは、体積抵抗値が10Ωcm以上の材質からなる樹脂膜40または樹脂板をいう。
【0034】
図2は図1のII−II断面図であり、図3は電子機器用試験箱の縦断面図であり、図4は図1のIV−IV断面図である。
図2乃至4に示すように、試験箱本体10は、金属製の筐体11と、筐体11の正面側にヒンジHを介して取り付けられた開閉自在の扉12とから主に構成され、扉12の正面視右側(図1参照)には、電波の遮蔽性および可視光に対する透過性を有するガラス板21が設けられた窓20が形成されている。
【0035】
さらに、試験箱本体10は、その内周面に取り付けられた電波吸収体30と、電波吸収体30の表面に固定された樹脂膜40と、上壁に設けられたLEDランプ50と、側壁に設けられたアンテナ60と、背面に設けられたEMIダクト70と、金属製のハニカムフィルタ80と、電子機器Pが固定される取付ユニット90とを備えている。
【0036】
筐体11は、図2乃至4に示すように、複数の金属製のパネル11aを骨格となるフレーム(図示せず)に溶接して、正面側が開口した略直方体の箱状に形成されている。筐体11は、金属性のパネル11aおよびフレーム(図示せず)から形成されているので、所定の剛性を有し、その耐久性が高められていると共に、外部からの電波の遮蔽性を有している。また、複数のパネル11aとフレーム(図示せず)とが、溶接によって接合されているので、筐体11の密閉性、すなわち、電波の遮蔽性が高められている。
【0037】
パネル11aおよびフレーム(図示せず)を形成する金属は、本発明では特に限定されず、純金属(例えば、アルミニウム、スチール、銅等)だけでなく合金(例えば、アルミニウム合金、ステンレス等)であってもよい。なお、パネル11aやフレーム(図示せず)を、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成した場合、所望の剛性を維持しつつ、筐体11の軽量化を図ることができる。また、アルミニウムやアルミニウム合金は独特の光沢を有するので、筐体11は美観に優れたものとなる。
【0038】
扉12は、図2に示すように、金属製のパネル12aから形成され、このパネル12aの正面視右側(図1参照)には窓20が設けられている。パネル12aは、筐体11の側面にヒンジHを介して回動自在に取り付けられており、扉12が適宜開閉可能な構成となっている。なお、パネル12aを形成する金属は、本発明では特に限定されず、純金属(例えば、アルミニウム、スチール、銅等)だけでなく合金(例えば、アルミニウム合金、ステンレス等)であってもよい。
【0039】
扉12を閉じた際の筐体11(パネル11a)と扉12(パネル12a)との当接部分には、電波の遮蔽性を有する枠状のパッキンS(例えば、導電性ゴムパッキン等)が設けられている。これにより、扉12を閉じた際の試験箱本体10の電波の遮蔽性を好適に維持することができる。
【0040】
図2,4に示すように、窓20は、可視光に対する透過性を有する矩形状のガラス板21を備えている。これにより、電子機器Pの試験を行いながら、窓20(ガラス板21)を介して、外部から試験箱本体10の内部を視認することができるので、例えば、電波を受信したことによる電子機器Pの着信ランプの点灯の有無等を確認することができる。
【0041】
また、ガラス板21は、窓20(ガラス板21)を介しての電波の往来を防止するため、電波の反射性(遮断性)を有している。これにより、試験箱本体10の電波の遮蔽性を好適に維持することができる。
【0042】
このようなガラス板21は、少なくとも片面に透明酸化物半導体の薄膜を形成することで実現することができる。透明酸化物半導体は、透明性と導電性の両方を兼ね備えた半導体材料であり、具体例として、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ等が挙げられる。なお、透明酸化物半導体の薄膜の形成は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の公知の方法によって行うことができる。
【0043】
このような透明酸化物半導体のうち、酸化インジウムスズ(以下、ITOという)や酸化亜鉛を使用することが望ましい。特にITOは、低抵抗であると共に、可視光透過性および耐久性が高く、成膜およびパターニングが容易なので好適に使用することができる。
以下に、板ガラスの表面にITO膜を形成したガラス板21の構造の具体例について簡単に説明する。
【0044】
図5(a)乃至(c)はガラス板の構造例を示す断面図である。
図5(a)に示すガラス板21Aは、板ガラス211の片面にITO膜212を形成したものである。なお、ITO膜212の抵抗値は、2Ω/□以下、例えば、1〜2Ω/□であることが望ましい(後記するガラス板21Bおよび21Cについても同様とする)。
【0045】
図5(b)に示すガラス板21Bは、板ガラス211の両面にITO膜212,212を形成したものである。板ガラス211の両面にITO膜212,212を形成すると、ガラス板21Bの抵抗値は、抵抗を並列接続した場合と同じ値となる。すなわち、板ガラス211の両面に1Ω/□のITO膜212,212を形成した場合、ガラス板21Bの抵抗値は0.5Ω/□となる。なお、板ガラス211の両面に抵抗値が2Ω/□以下となるITO膜212,212を形成することにより、周波数1.2〜2.4GHzの電波の遮蔽性能を60dB以上とすることができる。
【0046】
前記したガラス板21A,21Bによれば、高い電波の遮蔽性能を実現することができる。ところで、板ガラス211の表面にITO膜を厚く形成して、その抵抗値を小さくするには一定の限界が存在する。そこで、さらに高い電波の遮蔽性能が要求される場合には、図5(c)に示すガラス板21Cを使用することが望ましい。ガラス板21Cは、ガラス板21A(ガラス板21AのITO膜212が形成されていない面)とガラス板21Bとを張り合わせたものである。
【0047】
以上のようなガラス板21は、波長400〜700nmの可視光の透過率が50%以上であることが望ましい。これによれば、試験箱本体10の内部の電子機器Pを好適に視認することが可能となる。
また、ガラス板21は、周波数1.2〜2.4GHzの電波の遮蔽性能が50dB以上であることが望ましい。ここで、周波数1.2〜2.4GHzの帯域は、電子機器用試験箱1の試験対象である電子機器Pとして最も使用頻度の高い携帯電話(第2世代および第3世代)の周波数帯と略等しい。したがって、これによれば、電子機器P(特に携帯電話)の周波数帯の電波を好適に遮蔽することが可能となる。
【0048】
ガラス板21の表面(両面)のうち、少なくとも透明酸化物半導体の薄膜が形成された面には、さらに透明樹脂の保護膜(図示せず)を形成することが望ましい。これによれば、透明酸化物半導体の薄膜を剥落や削剥等から保護することができるので、例えば、透明酸化物半導体の薄膜が剥落した部分からの電波の侵入を防止することができ、試験箱本体10の電波の遮蔽性を好適に維持することができる。このような透明樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)等が挙げられる。
【0049】
ガラス板21は、図2,4に示すように、フレーム12bによって固定されている。フレーム12bは、金属製の枠部材であり、ガラス板21の周縁部を覆うように、パネル12aに溶接等によって固定されている。なお、フレーム12bを形成する金属は、本発明では特に限定されず、純金属(例えば、アルミニウム、スチール、銅等)だけでなく合金(例えば、アルミニウム合金、ステンレス等)であってもよい。
【0050】
ガラス板21とフレーム12bとの当接部分には、電波の遮蔽性を有する枠状のパッキン(図示せず)(例えば、導電性ゴムパッキン等)が設けられている。これにより、窓20(ガラス板21)の周縁部分における電波の遮蔽性を確保することができるので、試験箱本体10の電波の遮蔽性を好適に維持することができる。
【0051】
なお、電子機器Pやアンテナ60等から放射される電波が窓20(ガラス板21)に直接照射されると、電波が窓20(ガラス板21)の表面で反射して電波の共振現象が発生するので、窓20は、電子機器Pやアンテナ60等から放射される電波ができるだけ照射しない位置に設けることが望ましい。
【0052】
電波吸収体30は、電波を吸収する公知の一方式(λ/4型)に基づく構造で、図2乃至4に示すように、試験箱本体10(筐体11および扉12)の内面を覆うように形成されており、電子機器Pやアンテナ60等から放射された電波を試験箱本体10の内面で反射させずに擬似的に吸収するものである。すなわち、電波吸収体30は、電子機器Pやアンテナ60等から放射された電波が、試験箱本体10の内面で反射した電波と共振することを防止するものである。
【0053】
図6はλ/4型電波吸収体の構造を示す断面図である。
電波吸収体30は、図6(a)に示すように、パネル11a(またはパネル12a)の表面(内周面)に配置されるスペーサ31と、さらにその表面に配置され、電波の一部を透過させる機能を有する抵抗膜シート32と、さらにその表面に配置され抵抗膜シート32を保護する保護膜33とを備えて構成されている。
【0054】
スペーサ31は、電子機器Pやアンテナ60等から放射された電波の波長をλとした場合、抵抗膜シート32とパネル11a(またはパネル12a)との間隔をλ/4に設定するためものであり、λ/4の厚みDを有している。スペーサ31は、電波の透過性を有していればどのような材料から形成してもよく、例えば、発泡スチロール等から形成することができる。なお、スペーサ31を発泡スチロールから形成した場合、その厚みDを容易に調整することができる。
【0055】
抵抗膜シート32は、その表面抵抗値が自由空間のインピーダンス(376.7Ω)に略等しくなるように調整された薄いシートである。このような抵抗膜シート32としては、例えば、炭素導電性塗料を適宜なベースシートに塗布したものや、ITO膜の抵抗値を調整して成膜したもの等を使用することができる。
【0056】
保護膜33は、抵抗膜シート32の表面に積層されており、抵抗膜シート32の表面を保護している。このような保護膜33は、例えば、PET、PC、ポリアセタール(POM)、PVC、PE等から形成することができる。
【0057】
ここで、図6(a)を参照して、電波吸収体30による電波吸収のメカニズムについて説明する。なお、ここでは、説明を簡単にするため、電子機器Pやアンテナ60等から放射された電波W1が、保護膜33の垂直方向から入射した場合について説明する。
【0058】
保護膜33を通過した電波W1(波長λ)のうち、抵抗膜シート32を透過するものを電波W2とし、抵抗膜シート32で反射するものを電波W3とする。抵抗膜シート32を透過した電波W2は、スペーサ31の内部を進んだ後、パネル11a(またはパネル12a)で反射して電波W4となる。電波W3、W4の位相は、抵抗膜シート32、パネル11a(またはパネル12a)での反射の際にそれぞれ反転する。
【0059】
パネル11a(またはパネル12a)で反射し、抵抗膜シート32に到達した電波W4は、抵抗膜シート32で反射した電波W3に対して、スペーサ31の厚みDの2倍、すなわち、「λ/4×2=λ/2」進んでいるので、電波W3の位相と電波W4の位相とが反転することになる。これにより、電波W3と電波W4とは相互に打ち消し合い、その結果として、抵抗膜シート32に入射した電波W1は擬似的に吸収されるようになっている。
【0060】
なお、このような電波吸収体30において、抵抗膜シート32とパネル11a(またはパネル12a)との間隔をλ/4に設定することができるのであれば、λ/4の厚みDを有するスペーサ31は備えなくてもよい。ただし、抵抗膜シート32とパネル11a(またはパネル12a)との間は電波が透過可能である必要がある。
【0061】
このような電波吸収体30を備えることで、電子機器PのアンテナPa(図3参照)やアンテナ60等から放射される電波を効果的に吸収することができるので、電波の共振現象を防止して、電子機器Pの試験を精密に行うことができる。
【0062】
また、電波吸収体30を、構造が簡単で、設計が容易なλ/4型電波吸収体とすることで、試験箱本体10の内部で放射される電波の波長λに応じて、最適な電波吸収能を持つ電波吸収体30を設計することができるので、試験箱本体10の内部で放射される電波をより効果的に吸収することができる。
【0063】
図2乃至4に示すように、樹脂膜40は、電波吸収体30の表面(保護膜33の表面。図6(a)参照)を覆うように形成されている。樹脂膜40を形成する樹脂は、明色を呈すると共に、電波を透過させる樹脂であれば特に限定されるものではない。このような樹脂膜40を備えることで、試験箱本体10の内部が明るくなるので、試験箱本体10の内部の電子機器Pを良好に視認することができる。
【0064】
ここで、明色とは、マンセル表色系(JIS Z8721)に規定されている明度が8.0〜10.0の範囲にある色をいう。具体的には、例えば、白色、黄色、薄黄色、水色、薄緑色、黄緑色、橙色、薄橙色等を挙げることができる。特に、マンセル表色系に規定されている明度に関しては、8.5〜10.0の範囲にある色が望ましく、9.0〜10.0の範囲にある色がより望ましい。
【0065】
なお、電波吸収体30の表面に明色の塗料を単純に塗布することは好ましくない。すなわち、電波吸収体30の表面に塗料を塗ると、塗料に含まれる成分や水分等によって、電波吸収体30の表面抵抗値が変化してしまい、自由空間のインピーダンス(376.7Ω)と一致しなくなる。これにより、本来電波を透過させるはずの電波吸収体30の表面において電波の反射が起こり、試験箱本体10の内部で電波の共振現象が発生するので好ましくない。
しかしながら、ポリウレタン系の樹脂系塗料、ポリエステル系の樹脂系塗料やワニス系塗料などの絶縁性に優れた塗料を用いれば、電波の反射を抑えることが可能である。
【0066】
樹脂膜40を形成する樹脂としては、明色を呈する樹脂として、例えば、テフロン(登録商標)、PVC、PE、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、PET、POM、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)等を使用することができる。
【0067】
また、それ自体は明色を呈しない樹脂であっても、明色の顔料を含むことで明色を呈するようになる樹脂であれば使用することができる。明色の顔料としては、例えば、二酸化チタン(白色)、硫酸バリウム(白色)、酸化鉄(黄色)、黄鉛(黄色)、群青(青色)、紺青(青色)等を挙げることができ、これらを二つ以上混合して使用してもよい。このような顔料を含むことで使用することができる樹脂としては、例えば、PVC、PE、PP、PS、PET、POM、PC、PA、PPE、PI等を挙げることができる。
【0068】
これによれば、明色を呈する樹脂だけではなく、例えば、透明樹脂等であっても、明色の顔料を含ませることで使用することが可能となるので、樹脂膜40の原料となる樹脂を幅広く選択することができる。
【0069】
なお、前記した明色を呈する樹脂や明色の顔料を含む樹脂のうち、白色(例えば、マンセル表色系に規定されている明度が9.5であるもの)を呈する樹脂または白色顔料を含む樹脂を使用することが望ましい。これによれば、試験箱本体10の内部を好適に明るくすることができるので、試験箱本体10の内部の電子機器Pを良好に視認することができる。さらに、顔料は白色顔料以外に蛍光顔料であってもよい。蛍光顔料は、紫外線を照射することにより電子が励起され、この電子が基底状態に戻る際に特定波長の可視光を発する顔料である。蛍光顔料のうち無機蛍光顔料として、例えば、硫化亜鉛、珪酸亜鉛、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。このように蛍光顔料を用いることによって、明度が増して、試験箱本体10の内部の視認性を高めることができる。
【0070】
このような樹脂膜40は、電波吸収体30の表面にピンやネジ等で固定されている(図示せず)。ここで、樹脂膜40を電波吸収体30の表面に接着剤で固定すると、接着剤に含まれる成分や水分等によって、電波吸収体30の表面に塗料を塗布した場合と同様に、電波吸収体30の表面抵抗値が変化してしまい、本来電波を透過させるはずの電波吸収体30の表面において電波の反射が起こり、試験箱本体10の内部で電波の共振現象が発生するので好ましくない。
しかしながら、この電波の共振現象は、例えば熱可塑性接着剤、熱硬化性接着剤や光硬化性接着剤などの絶縁性に優れた接着剤を使用したり、また接着方法について、例えばスポットで絶縁膜を接着するなどの工夫を施して接着面積を最小限に抑えたりするようにすれば、電波反射を抑えることができ、電波吸収体の電波吸収特性を殆んど損なうことなく絶縁膜を電波吸収体の表面に固定することが可能である。
【0071】
本実施形態では、樹脂膜40は、電波吸収体30の表面にピンやネジ等で固定される。これによれば、電波吸収体30の表面抵抗値を変化させることがないため、電波吸収体30の性能を十分に発揮させることができる。なお、ピンやネジ等を金属製とした場合、その頭部で電波が反射する場合があるので、ピンやネジ等の頭部に電波吸収性を有する電波吸収シートを取り付けたり、ピンやネジを絶縁性の材料(例えば、樹脂等)で形成したりすることが望ましい。
【0072】
樹脂膜40は、前記した電波吸収体30の保護膜33(図6(a)参照)を兼ねてもよい。すなわち、電波吸収体30は、図6(b)に示すように、パネル11a(またはパネル12a)の表面(内周面)に配置されるスペーサ31と、さらにその表面に配置される抵抗膜シート32と、さらにその表面に配置され抵抗膜シート32を保護すると共に、明色を呈する樹脂膜40とを備える構成であってもよい。これによれば、電波吸収体30の保護膜33の表面に、さらに樹脂膜40を固定する必要がなくなり、試験箱本体10の構造を簡略化することができると共に、材料コストや製造コストを抑えることができる。
【0073】
LED(Light Emitting Diode)ランプ50は、試験箱本体10の内部を照らすための照明であり、図3,4に示すように、筐体11の上壁に設けられている。これによれば、例えば、電子機器Pを試験する間、試験箱本体10の内部を照らすことで、さらに明るくすることができるので、試験箱本体10の内部の電子機器Pをより良好に視認することができる。
【0074】
LEDランプ50は、蛍光灯と異なり、点滅時におけるノイズがほとんど発生しないため、電子機器Pの試験を精密に行うことが可能となるので、試験箱本体10の内部を照らす照明として好適に用いることができる。
【0075】
なお、LEDランプ50の設置位置や個数、配置等は適宜設定することができ、本実施形態の構成に限定されるものではない。また、試験箱本体10の内部を照らす照明は、LEDランプに限定されず、例えば、ハロゲンランプや白熱灯等であってもよい。
【0076】
アンテナ60は、電子機器Pとの間で電波を授受するためのアンテナであり、図2乃至4に示すように、筐体11の側壁に固定されたコネクタ61に、アンテナ用導波管62を介して設けられている。アンテナ60には、ケーブル(図示せず)の一端が接続されており、このケーブル(図示せず)は、アンテナ用導波管62を介して試験箱本体10の外部に引き出され、その他端が電波送受信ユニット(図示せず)に接続されている。
【0077】
電波送受信ユニット(図示せず)は、アンテナ60に電波を放射させたり、その電波の周波数帯域や出力等を制御したり、アンテナ60が受信した電子機器Pからの電波を測定したりする機能を有する。
【0078】
コネクタ61は、アンテナ用導波管62を固定するためのものであり、筐体11の側壁に固定した状態で設けられている。このようなコネクタ61を緩めてアンテナ用導波管62を回動させ、アンテナ60の向きを変えた後、コネクタ61を締めてアンテナ用導波管62を再び固定することで、アンテナ60の向きを変えることができるようになっている。
【0079】
これにより、アンテナ60から放射される電波の偏波面と、電子機器PのアンテナPa(図3参照)から放射される電波の偏波面とが、平行または垂直となるようにアンテナ60の軸を回転調整することができる。
なお、偏波面とは、電磁波において電界の波の振動する面をいい、これが一定の平面状にある電磁波を直線偏波という。通常のアンテナから放射される電波は直線偏波である。
【0080】
コネクタ61は、図2,4に示すように、その左右(水平方向)に別(予備)のコネクタ61’を設けてもよい。これにより、所望の位置にアンテナ用導波管62を付け替えることができるので、所望の位置にアンテナ60を配置することができる。なお、このようなコネクタ61’は、コネクタ61の上下(垂直方向)に設けてもよいし、コネクタ61の左右上下に二つ以上設けてもよい。
【0081】
アンテナ用導波管62は、円筒状かつL字状に屈曲した、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から形成された金属製の導波管であり、電波の遮蔽性を有している。このアンテナ用導波管62は、試験箱本体10の外部と内部とを連通しており、その中空部(内部)には、アンテナ60に接続されたケーブル(図示せず)が配線されている。また、アンテナ用導波管62の先端部には、矩形状のグランドプレート63が固定されている。なお、アンテナ用導波管62の断面は、円形に限定されず、例えば、多角形であってもよい。
【0082】
アンテナ用導波管62の仕様は、その内部を伝搬させない電波の波長に基づいて設定されている。具体的には、アンテナ用導波管62の内径および長さは、所定波長よりも長い波長の電波が、その内部を伝搬しないように設定されている。これにより、試験箱本体10の電波の遮蔽性を好適に維持することができる。
【0083】
なお、一般に導波管は、その開口部の形状と寸法(長さ)が同一であれば、導波管が長くなるほど、電波の遮蔽性能が高くなる。また、導波管の開口部の形状にも依存するが、開口部の面積が小さくなるほど、導波管が遮蔽できる電波の限界周波数(所定の周波数)が高くなる。
【0084】
また、一般にアンテナを金属物体に近接して設置すると金属物体に渦電流が流れて電波の再放射等が起こり、供試体に対して適切に放射された電波に干渉して影響を与えることがある。そこで、図4に示すように、アンテナ60の近傍の筐体11の側壁に磁性体シート64を設けることが望ましい(アンテナ60は、磁性体シート64と電子機器Pとの間に位置することになる)。これにより、前記したような渦電流による電波の再放射等の影響を低減することができる。
【0085】
EMI(Electro Magnetic Interference:電磁妨害または電磁干渉)ダクト70は、電磁妨害を防止すると共に、電子機器P等に接続されるケーブル101(図2参照)を筐体11の外部から内部に挿通するダクトであり、図4に示すように、絶縁抵抗性を有するガスケット71を介して、筐体11の背面に固定されている。
【0086】
これにより、EMIダクト70を介して、試験箱本体10の外部から内部にケーブル101を配線することができると共に、ダクトの導波管としての作用(所定波長より長い波長の電波を伝搬させない)によってケーブル101の挿通部分から侵入しようとする電波を遮蔽することができるので、試験箱本体10の電波の遮蔽性を好適に維持することができる。
【0087】
また、図2に示すように、ケーブル101の所定長さ(例えば、100mm以上)が、EMIダクト70の内部を通るように、ケーブル101を配線することによって、電磁妨害を好適に防止することができる。
【0088】
なお、ケーブル101には、図2に示すように、EMIダクト70の内部を通る部分および所定の前後部分の外周面にケーブル101の内部を導通するノイズを吸収するノイズ吸収体102が被覆されている。具体的には、例えば、ルミディオン(登録商標)(東洋サービス株式会社)等のEMIテープが、ケーブル101に所定の長さ(例えば、300mm以上)で巻回されている。これにより、ケーブル101からのノイズの輻射と伝搬を抑制することができるので、電子機器Pで授受される電波を試験ユニット100で高精度に制御・測定することができる。
【0089】
このようなEMIダクト70は、ダイカスト製であり、図4に示すように、ケーブル101が通る側(筐体11の側)に複数の凹溝72が形成されている。この凹溝72にケーブル101を通すことによって、EMIダクト70の内部でケーブル101が上下方向に移動することを防止すると共に、ケーブル101を整列させることができる。また、EMIダクト70に複数のケーブル101を通した場合、各ケーブル間の空間が凹溝72の側壁部(金属)によって埋められるので、試験箱本体10の電波の遮蔽性を好適に維持することができる。さらに、各ケーブルを平行に配線することができるので、例えば、各ケーブルに一様に接触するアース等を取付ける場合には、その取付けが容易となる。
【0090】
ハニカムフィルタ80は、試験箱本体10の外部と内部とを連通すると共に、試験箱本体10の外部から侵入しようとする電波を遮蔽する給排気用のフィルタであり、図4に示すように、絶縁抵抗性を有するガスケット81を介して、筐体11の背面に固定されている。図7(a)はハニカムフィルタを示す斜視図である。
【0091】
さらに説明すると、ハニカムフィルタ80は、図7(a)に示すように、正面視正六角形状の複数の細孔82を有する金属製(例えば、アルミニウム製、アルミニウム合金製等)のハニカム体として形成され、この複数の細孔82を介して、試験箱本体10の外部と内部との空気の流通を確保し、例えば、電子機器P等から放射される熱を排気することができるようになっている。なお、細孔82の形状は、正六角形に限定されず、例えば、円形や四角形等であってもよい。
【0092】
また、細孔82は、導波管としての機能を備える周壁83に取り囲まれているので、所定波長より長い波長の電波を伝搬させないため、試験箱本体10の外部から侵入しようとする電波を効果的に遮蔽することができる。なお、筐体11(試験箱本体10)の背面に形成される貫通孔11b(図4参照)の開口径、ハニカムフィルタ80の長さ(周壁83からなる導波管の長さ)、および、細孔82の開口径(正六角形の対向する二辺間の距離)は、ハニカムフィルタ80の内部を伝搬させない電波の波長に基づいて設定される。
【0093】
なお、前記したハニカムフィルタ80の代わりに、図7(b)に示すようなメッシュフィルタ85を備える構成としてもよい。図7(b)はメッシュフィルタを示す斜視図である。
【0094】
メッシュフィルタ85は、試験箱本体10の外部と内部とを連通すると共に、試験箱本体10の外部から侵入しようとする電波を遮蔽する給排気用のフィルタであり、ハニカムフィルタと同様に、絶縁抵抗性を有するガスケットを介して、筐体11の背面に固定される(図4参照)。
【0095】
メッシュフィルタ85は、金属製(例えば、アルミニウム製、アルミニウム合金製等)のメッシュが複数重ねられたメッシュ積層体であり、このメッシュを介して、試験箱本体10の外部と内部との空気の流通を確保し、例えば、電子機器P等から放射される熱を排気することができるようになっている。また、金属製のメッシュ積層体の内部では、電波の回折損失が起こるので、試験箱本体10の外部から侵入しようとする電波を効果的に遮蔽することができる。
【0096】
取付ユニット90は、電子機器Pを筐体11の内部に固定するためのユニットであり、図2,3に示すように、筐体11の底面全面を覆うように設けられた固定板91と、この固定板91の上に着脱自在に固定されて電子機器Pを保持・固定する保持固定治具92とから構成されている。
【0097】
固定板91は、図2に示すように、平面視矩形状の板材であり、保持固定治具92を固定するための複数のボルト孔91aが形成されている。ボルト孔91aは、保持固定治具92の固定位置を所望の位置に変えられるように、筐体11の正面視左右方向に並列して複数設けられている。なお、固定板91の上には電波吸収性を有する電波吸収シートを設けてもよいし、固定板91を電波吸収性を有する部材で形成してもよい。
【0098】
保持固定治具92は、図3に示すように、側面視L字状の部材であり、底部にボルトBを螺入するためのボルト孔92aが形成されている。このボルト孔92aを介して、固定板91のボルト孔91aにボルトBが螺入されることで、保持固定治具92が固定板91に固定される。保持固定治具92には、取付板93と固定具94が取り付けられている。
【0099】
取付板93は、長尺状の板材(図2参照)で、保持固定治具92に固定されている。また、固定具94は、電子機器Pを保持する部材で、電子機器Pを挿通して保持する挿通部94aが形成されている。この固定具94は、取付板93に着脱自在に取り付けられており、所望に応じて、電子機器Pの取付方向や取付位置を変えることができるようになっている。
【0100】
試験ユニット100(図2参照)は、電子機器Pで授受される電波を制御・測定するユニット、すなわち、電子機器Pの電波の受信状態を検出して電子機器Pが正常に動作しているか否かを判定すると共に、電子機器Pに各種の指示を送信して動作をさせることができるユニットである。
【0101】
このような試験ユニット100は、ケーブル101を介して試験対象である電子機器Pに接続可能となっている。具体的には、ケーブル101の一端が試験ユニット100に接続され、他端が、EMIダクト70を介して、試験箱本体10の内部に引き出され、電子機器Pに接続されている。なお、ケーブル101の他端には、電子機器Pに着脱自在に接続するためのコネクタ(図示せず)が設けられている。
【0102】
次に、以上のように構成される電子機器用試験箱1の動作を説明しつつ、本発明の一実施形態に係る電子機器試験方法について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0103】
まず、図2に示すように、扉12を開き、電子機器Pを筐体11(試験箱本体10)の内部に入れ、取付ユニット90の固定具94に形成された挿通部94a(図3参照)に挿通して、筐体11(試験箱本体10)の内部に固定する。次に、ケーブル101のコネクタ(図示せず)を電子機器Pに接続した後、扉12を閉める。
【0104】
そして、例えば、試験開始スイッチ(図示せず)等をONにすることで、電波送受信ユニット(図示せず)からアンテナ60に電気信号が送信され、アンテナ60から電波が放射される。電子機器Pの動作の試験は、アンテナ60から電波を放射しながら、電子機器Pの電波の受信状態を試験ユニット100(図2参照)で検出することで行われる。試験ユニット100では、電子機器Pの電波の受信状態を検出して電子機器Pが正常に動作しているか否かを判定する。
【0105】
この時、前記した電波送受信ユニット(図示せず)を操作することによって、アンテナ60から放射される電波の強度や周波数帯域等を変化させて試験を行うことができる。
【0106】
正常状態であると判定されたら、扉12を開いてアンテナ60の向きを変えた後に、扉12を閉めて異なる偏波面(水平波および垂直波)について試験を行うこともできる。
また、正常状態であると判定されたら、扉12を開いて保持固定治具92の位置を変えて固定板91に固定し、アンテナ60との距離を変えて、電子機器Pが電波を正常に受信できるか否かの試験を行うこともできる。
【0107】
以上のような電子機器Pの試験の様子は、窓20(ガラス板21)を介して、外部から試験箱本体10の内部を視認することができるので、例えば、電波を受信したことによる電子機器Pの着信ランプの点灯の有無等を確認することができる。ここで、本発明に係る電子機器用試験箱1は、電波吸収体30の表面に固定された明色の樹脂膜40により試験箱本体10の内部が明るくなるので、ガラス板21の可視光に対する透過性が低下した場合であっても、試験箱本体10の内部の電子機器Pを良好に視認することができる。さらに、電子機器用試験箱1は、LEDランプ50により試験箱本体10の内部を照らすことができるので、前記した樹脂膜40の効果と併せて試験箱本体10の内部の電子機器Pをより良好に視認することができる。
【0108】
なお、電子機器PのアンテナPa(図3参照)とアンテナ60との距離は、電子機器Pやアンテナ60から放射される電波の波長λ以上となるように設定することが望ましく、2λ以上となるように設定するとさらに望ましい。これにより、遠方電磁界の領域に電子機器PのアンテナPaを配置することが可能となり、電界強度が安定する位置で電子機器Pの試験を行うことができるので、電子機器Pの試験を精密に行うことができる。
ここで、遠方電磁界の領域とは、波動インピーダンスが空間の波動インピーダンスZに等しくなる領域のことを意味する。アンテナ60から放射される電波はこの領域において平面波に近い伝搬をする。
以上が、電子機器用試験箱1の一連の動作および電子機器試験方法である。
【0109】
以上のような電子機器用試験箱1によれば、試験箱本体10の内部の電波吸収体30の表面に樹脂膜40を備えるので、例えば、ガラス板21にITO膜を膜厚に形成したり、ガラス板21の両面にITO膜を形成したりすることによって、ガラス板21の可視光に対する透過性が低下した場合であっても、試験箱本体10の内部が明るくなるので、試験箱本体10の内部の電子機器を良好に視認することができる。
【0110】
また、電子機器用試験箱1によれば、試験箱本体10の内部に電波吸収体30を備えるので、試験中に、例えば、電子機器PのアンテナPaやアンテナ60等から放射される電波を効果的に吸収することができるため、試験箱本体10の内部における電波の共振現象を防止して、電子機器Pの試験を精密に行うことができる。
【0111】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であり、例えば、以下のような変更が可能である。
【0112】
樹脂膜40を、発泡樹脂にて構成してもよい。このようにすれば、ガラス板にITO膜を膜厚に形成したりガラス板の両面にITO膜を形成したりすることによって、ガラス板の可視光に対する透過性が低下した場合であっても、電波吸収体の表面に固定された発泡樹脂により試験箱本体の内部が明るくなるので、試験箱本体の内部の電子機器を良好に視認することができる。すなわち、発泡樹脂は、内部に気泡を含むため、外部からの可視光が乱反射され、無色透明樹脂を基材とする場合、一般的に白色となる。よって、視認性に有効である。また、発泡スチロール等の樹脂板であれば、加工および取扱いが容易であるといった作用効果を得られる。さらに、絶縁層として発泡樹脂を使用することにより、原料コストの低減を図ることが可能となる。さらに、発泡樹脂は、軽量で且つ切断が容易であり、加工および取扱いを容易に行うことができるとともに、施工性も優れているため試験箱の製造コストも低くすることが可能となる。
【0113】
また、前記した実施形態では、絶縁層を樹脂膜40にて構成しているが、これに限定されるものではない。絶縁層は、明色の染料を含む紙または明色の顔料が印刷された紙にて構成してもよい。紙は、和紙や洋紙などが用いられる。紙の主成分は、セルロースなどの植物性繊維から構成されている。染料や顔料は、前記した実施形態と同様に、マンセル表色系(JIS Z8721)に規定されている明度が8.0〜10.0の範囲にある色のものを用いる。具体的には、例えば、白色、黄色、薄黄色、水色、薄緑色、黄緑色、橙色、薄橙色等を挙げることができる。特に、マンセル表色系に規定されている明度に関しては、8.5〜10.0の範囲にある色が望ましく、9.0〜10.0の範囲にある色がより望ましい。明色の染料は、植物性染料が用いられ、紙に染み込ませることで着色されている。なお、染料には、アントラキノン(Anthraquinon)系の合成染料を使用してもよい。明色の顔料は、紙の表面に印刷されて、明色の紙が形成される。蛍光顔料のうち無機蛍光顔料として、例えば、硫化亜鉛、珪酸亜鉛、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム、燐酸カルシウム等が使用可能である。
【0114】
絶縁層は、電波吸収体の表面との間に隙間のないように設けるのが好ましい。したがって、紙は、所定の厚さを有する厚紙にて構成するのがよい。また、紙は、電波吸収体の表面にピンやネジ等で固定される。なお、熱可塑性接着剤、熱硬化性接着剤や光硬化性接着剤などの絶縁性に優れた接着剤を使用したり、スポットで絶縁膜を接着するなどの工夫を施して接着面積を最小限に抑えたりするようにすれば、紙を電波吸収体の表面に接着剤で固定してもよい。このようにすれば、電波反射を抑えることができ、電波吸収体の電波吸収特性を殆んど損なうことなく絶縁層を電波吸収体の表面に固定することが可能である。なお、紙からなる絶縁膜も、樹脂膜40と同様に、保護膜33の表面に設けてもよいし、保護膜33を兼ねてもよい。
【0115】
このように、絶縁層を、明色の染料を含む紙または明色の顔料が印刷された紙にて構成した場合にも、前記した実施形態と同様の作用効果を得られる。また、軽量かつ切断が容易な紙を用いたことによって、加工および取扱いを容易に行うことができる。
【0116】
また、絶縁層は、樹脂膜や紙以外にも、所定の絶縁効果を備えていれば、石膏ボード、タイル等のセラミックスあるいは硝子にて構成してもよい。セラミックス原料の具体例として、例えば、酸化アルミニウム(サファイア)、石英(水晶)、酸化珪素(シリコンカーバイト)、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらの原料と助剤、添加剤を所定の配合率で配合して混合した後に、水を加えてバインダーとともに混練し、成形機にて成型して乾燥後、高温で焼結してセラミックス板を製造する。硝子板は、珪砂、ソーダ灰、石灰石、硼砂、水酸化アルミニウム等の粉体混合物をガス炉に挿入して1550℃で溶解し、この液体状の硝子をフロートバスという長細い通路で溶けた錫の上に流して冷却することで製造される。これに特定の遷移金属元素を添加して、特定の波長の光だけを吸収させる色硝子や、表面粗度を高くして、硝子表面において太陽光を散乱させる、いわゆるスリガラスとしたものも、絶縁層となる絶縁板に含むものとする。
【0117】
前記した実施形態では、電子機器Pとして携帯電話を図示して説明したが、本発明の試験対象となる電子機器Pは、携帯電話に限定されるものではない。例えば、携帯電話と同様に電波の授受を行うPDA(Personal Digital Assistance)や無線LAN(Local Area Network)機能を備えるノート型のパーソナルコンピュータ等であってもよい。また、外部電波の影響を受けることが好ましくない精密測定機器や医療機器等であってもよい。さらに、外部に所定値以上の電波を放射することが好ましくない家電機器や医療機器等であってもよい。なお、この場合、取付ユニット90の形状やサイズ等、または、取付ユニット90を備えるか否かについては、試験対象である電子機器に応じて適宜設定されることはいうまでもない。
【0118】
前記した実施形態では、複数の金属製のパネル11aを、骨格となるフレーム(図示せず)に溶接して筐体11を形成しているが、これに限定されず、例えば、複数の金属製のパネルをボルト等によって組み付けて形成する組立・分解可能な構成としてもよい。なお、このような構成の場合、複数の金属製のパネルの隙間に電波の遮蔽性を有する充填材を介在させることが望ましい。これにより、筐体(試験箱本体)の電波の遮蔽性を良好に維持することができる。電波の遮蔽性を有する充填材としては、例えば、上下面の少なくとも一方が絶縁層(例えば、紙、接着層を兼ねる粘着テープ等)で絶縁された抵抗損失体(例えば、カーボン抵抗シート、金属薄膜抵抗シート、熱線遮断フィルム等)を有する電磁遮蔽接合用シート体を使用することができる。具体的には、例えば、ルミディオン(登録商標)IR(東洋サービス株式会社)等を使用することができる。
【0119】
前記した実施形態では、筐体11を金属製とすることで、電波の遮蔽性や剛性等を高める構成としたが、これに限定されず、例えば、電波の遮蔽性を有する板材で筐体を形成してもよい。
【0120】
前記した実施形態では、図1,2,4に示すように、扉12に窓20が設けられている構成としたが、これに限定されず、試験箱本体10に窓20を設ける構成としてもよい。また、扉や窓はそれぞれ複数設けてもよい。さらに、試験箱本体に扉を設けずに、窓を適宜開閉可能な構成として電子機器等の出し入れを行ってもよい。
【0121】
前記した実施形態では、電波吸収体30を、λ/4型電波吸収体としたが、これに限定されず、内部で放射される電波の特性に応じて、公知の電波吸収体を広く使用することができる。例えば、抵抗性電波吸収体、誘電性電波吸収体、磁性電波吸収体、そしてこれらを組み合せた電波吸収体等のいずれであっても使用することができ、さらに、単層型、多層型のいずれであってもよい。
【0122】
具体的には、例えば、(1)パネル11a(またはパネル12a)の側から順に、抵抗膜シート(インピーダンス1088Ω)、スペーサ(38mm)、抵抗膜シート(インピーダンス280Ω)、スペーサ(38mm)、保護膜(アルミニウム板(箔))を備える二種の電波(880MHz周辺および2050MHz周辺)を吸収可能な電波吸収体、(2)カーボン粉末や酸化チタン等の化合物から形成される誘電性電波吸収シート、(3)フェライトやカルボニル鉄等の化合物から形成される磁性電波吸収シート、(4)ポリウレタン等の樹脂と磁性体との複合体から形成される電波吸収シート、(5)磁性体と抵抗体とを貼り合わせた電波吸収体(例えば、ルミディオン(登録商標)(東洋サービス株式会社))等のいずれであっても使用することができる。
【0123】
なお、電波吸収体30の表面は平坦であること(平板型)が望ましい。これによれば、例えば、波型や山型、四角錐型等の電波吸収体を備える場合と比較して、樹脂膜40を容易に形成することができる。また、試験箱本体10の内部(容積)を大きくしたり、試験箱本体10のサイズを小さくしたりすることができる。
【0124】
前記した実施形態では、アンテナ60の回転調整は、コネクタ61を緩めてアンテナ用導波管62を回動させ、アンテナ60の向きを変えた後、コネクタ61を締めてアンテナ用導波管62(アンテナ60)を再び固定するという手動で行う構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、公知の動力機構や制御機構等を組み合せて、機械的に行う構成としてもよい。
【0125】
前記した実施形態では、試験箱本体10(筐体11)の背面に給排気用のハニカムフィルタ80(またはメッシュフィルタ85)を備える構成としたが、給排気用のフィルタは、これらに限定されるものではない。例えば、試験箱本体(筐体)の背面に、所定波長よりも長い電波を伝搬させない導波管として機能するように内径および長さ(パネル厚)を設定(設計)した複数の微細な貫通孔を形成した構成としてもよい。また、このような複数の微細な貫通孔を備えるプレートを、試験箱(筐体)の背面に形成される貫通孔(図4参照)に取付枠および絶縁抵抗性を有するガスケットを介して試験箱本体10の内側から固定する構成としてもよい。
【0126】
前記した実施形態では、試験箱本体10(筐体11)の背面に一つの給排気用のフィルタ(ハニカムフィルタ80またはメッシュフィルタ85)を備える構成としたが、これに限定されず、例えば、吸気用と排気用の少なくとも二つのフィルタを備える構成としてもよい。この場合、全て同種のフィルタを使用してもよいし、異種のフィルタを組み合せて使用してもよい。また、排気用のフィルタまたは試験箱(筐体)の背面に形成される排気用の貫通孔に、排気ファン(図示せず)を取り付けてもよい。
【0127】
前記した実施形態では、固定具94が取付板93に着脱自在に取り付けられる構成としたが、これに限定されず、固定具が取付板に回動自在に取り付けられる構成としてもよい。この場合、固定具の回転調整は機械的に行う構成としてもよい。
【0128】
前記した実施形態では、保持固定治具92が固定板91に形成された複数のボルト孔91aとボルトBとによって段階的に移動可能な構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、保持固定治具が固定板に設けたレールに沿って無段階で移動可能な構成としてもよい。これによれば、アンテナと保持固定治具(電子機器)との距離を簡単に調整することができる。
【0129】
前記した実施形態では、アンテナ60から電子機器Pに電波を放射して、電子機器Pが正常に電波を受信できるか否かを試験ユニット100で判定する電子機器試験方法について説明したが、電子機器試験方法はこれに限定されるものではない。例えば、試験ユニット100から電子機器Pに各種の指示を送信して電子機器P(アンテナPa。図3参照)からアンテナ60に電波を送信させ、アンテナ60が受信した電波を電波送受信ユニット(図示せず)で測定して電子機器Pが正常に動作しているか否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0130】
1 電子機器用試験箱
10 試験箱本体
20 窓
21 ガラス板
30 電波吸収体(λ/4型電波吸収体)
33 保護膜
40 樹脂膜(絶縁層)
50 LEDランプ(照明)
P 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器が内部に入れられると共に、外部からの電波の遮蔽性を有する試験箱本体と、
当該試験箱本体に形成され、電波の遮蔽性および可視光に対する透過性を有するガラス板が設けられた窓と、を備える電子機器用試験箱であって、
前記試験箱本体は、その内周面に取り付けられた電波吸収体と、当該電波吸収体の表面に固定された明色の絶縁層と、前記試験箱本体の内部に設けられたLED照明と、をさらに備え、
前記ガラス板は、板ガラスの両面に透明酸化物半導体の薄膜が形成されてなる
ことを特徴とする電子機器用試験箱。
【請求項2】
前記絶縁層は、明色の顔料を含む樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用試験箱。
【請求項3】
前記絶縁層は、発泡樹脂からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器用試験箱。
【請求項4】
前記絶縁層は、明色の染料を含む紙または明色の顔料が印刷された紙からなることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用試験箱。
【請求項5】
前記絶縁層は、明色のセラミックスもしくは硝子からなることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用試験箱。
【請求項6】
前記顔料は、白色顔料あるいは蛍光顔料であることを特徴とする請求項2または請求項4に記載の電子機器用試験箱。
【請求項7】
前記電波吸収体は、λ/4型電波吸収体であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電子機器用試験箱。
【請求項8】
前記絶縁層は、前記λ/4型電波吸収体の保護膜を兼ねることを特徴とする請求項7に記載の電子機器用試験箱。
【請求項9】
前記透明酸化物半導体の薄膜がITO膜であり、前記板ガラスの両面に抵抗値が2Ω/□以下となるITO膜が形成されたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電子機器用試験箱。
【請求項10】
前記板ガラスの両面に、さらに透明樹脂の保護膜が形成されたことを特徴とする請求項請求項9に記載の電子機器用試験箱。
【請求項11】
前記絶縁層は、前記電波吸収体の表面にピンまたはネジで固定されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電子機器用試験箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−194195(P2012−194195A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156286(P2012−156286)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【分割の表示】特願2007−266547(P2007−266547)の分割
【原出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)