説明

電子膨張弁

【課題】冷媒入口から冷媒とともにゴミが流入しても流入口を安定的に閉成することができる電子膨張弁を提供すること。
【解決手段】冷媒入口と冷媒出口とが設けられた弁本体31と、冷媒入口よりも小径であって冷媒出口に連通する小径流路341を有する弁座34と、常態においては弁座前後における冷媒の圧力差及び円板バネ35に付勢されて弁座34に当接することで小径流路341の流入口341aを閉成し、自身に磁力が作用する場合には前記圧力差による押付力及び円板バネ35の付勢力に抗して弁座34から離隔する方向に向けて移動して流入口341aを開成するアーマチュア32とを備えた電子膨張弁30において、弁座34において流入口341aの周囲を囲繞する態様で配設され、かつ上端面342aがアーマチュア32との接触部位となる環状壁部材342を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子膨張弁に関し、より詳細には、自動販売機等の冷凍サイクルを構成する電子膨張弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルを構成する電子膨張弁としては、ステッピングモータを使用して膨張通路の開度を変更して冷媒の膨張度を調整するものが知られているが、かかる電子膨張弁では、ステッピングモータを用いるために高価なものでコストの増大化を招来する虞れがある。そこで、膨張通路の入口を電磁弁にて開閉することにより冷媒の膨張度を調整する安価なパルス駆動形膨張弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなパルス駆動形膨張弁(電子膨張弁)は、冷媒入口と冷媒出口とが設けられた弁本体と、弁本体の内部に配設され、かつ冷媒入口よりも小径であって冷媒出口に連通する小径流路を有する弁座と、弁本体の内部で弁座に対して近接離反する態様で移動可能に配設され、常態においては弁座の小径流路前後における冷媒の高低圧力差及びコイルスプリングの付勢力により自身の下面が弁座の上面に当接することで小径流路の流入口を閉成する一方、自身に磁力が作用する場合には、上記圧力差及びコイルスプリングの付勢力に抗して弁座から離隔する方向に向けて移動して流入口を開成するアーマチュアとを備えている。そして、所定のデューティー比にてアーマチュアに磁力を作用させることにより小径流路の流入口を開閉して、冷媒入口を通じて流入した冷媒を小径流路で断熱膨張させて冷媒出口を通じて流出させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−1352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような電子膨張弁では、弁座の小径流路前後における冷媒の高低圧力差及びコイルスプリングの付勢力によりアーマチュアの下面が弁座の上面に当接することで小径流路の流入口を閉成していたため、すなわちアーマチュアの下面と弁座の上面とが面接触することで小径流路の流入口を閉成してシールしていたために、冷媒入口から冷媒とともに流入したゴミが弁座の上面に停滞してしまうとアーマチュアと弁座とが面接触を良好に行えずに、流入口を閉成できず、シールが損なわれるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、冷媒入口から冷媒とともにゴミが流入しても流入口を安定的に閉成することができる電子膨張弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電子膨張弁は、冷媒入口と冷媒出口とが設けられた弁本体と、前記弁本体の内部に配設され、かつ前記冷媒入口よりも小径であって前記冷媒出口に連通する小径流路を有する弁座と、前記弁本体の内部で前記弁座に対して近接離反する態様で移動可能に配設され、常態においては弁座前後における冷媒の高低圧力差及び付勢手段により弁座に当接することで前記小径流路の流入口を閉成する一方、自身に磁力が作用する場合には、前記冷媒の高低圧力差及び付勢手段に抗して前記弁座から離隔する方向に向けて移動して前記流入口を開成するアーマチュアとを備え、所定のデューティー比にて磁力を作用させることにより前記アーマチュアを移動させることで前記小径流路の流入口を開閉して、前記冷媒入口を通じて流入した冷媒を前記小径流路で断熱膨張させて前記冷媒出口を通じて流出させる電子膨張弁において、前記弁座及び前記アーマチュアの少なくとも一方に配設され、かつ前記小径流路の流入口の閉成時における互いの接触面積を小さくする接触面積低減部材を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る電子膨張弁は、上述した請求項1において、前記接触面積低減部材は、前記弁座において前記流入口の周囲を囲繞する態様で配設され、かつ自身の端面が前記アーマチュアとの接触部位となる環状壁部材であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る電子膨張弁は、上述した請求項2において、前記環状壁部材の内径は、前記小径流路の内径に略等しいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子膨張弁によれば、弁座及びアーマチュアの少なくとも一方に配設された接触面積低減部材が、小径流路の流入口の閉成時における互いの接触面積を小さくするので、これにより、従来のようにアーマチュアの下面と弁座の上面とが面接触する場合に比して、冷媒入口から冷媒とともに流入したゴミが弁座の上面に停滞してしまっても流入口を良好に閉成することができる。従って、冷媒入口から冷媒とともにゴミが流入しても流入口を安定的に閉成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である電子膨張弁が適用された冷凍サイクルの回路構成を示す説明図である。
【図2】図2は、図1に示した電子膨張弁の構成を示す縦断面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2に示した電子膨張弁の要部を拡大して示す説明用断面図である。
【図5】図5は、図2に示した電子膨張弁の開成状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る電子膨張弁の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態である電子膨張弁が適用された冷凍サイクルの回路構成を示す説明図である。ここで例示する冷凍サイクルは、例えば缶飲料やペットボトル入り飲料等の販売を行う自動販売機を構成するもので、内部に冷媒(例えばR134a)が封入されて、圧縮機10、庫外熱交換器20及び庫内熱交換器40を冷媒配管50にて順次接続して構成してある。
【0014】
圧縮機10は、図には明示しないが、自動販売機の機械室に配設してある。機械室は、自動販売機本体である本体キャビネットの内部であって複数の商品収容庫1,2,3と区画され、かつ商品収容庫1,2,3の下方側の室である。この圧縮機10は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態(高温高圧冷媒)にして吐出口より吐出するものである。
【0015】
庫外熱交換器20は、圧縮機10と同様に機械室に配設してある。この庫外熱交換器20は、圧縮機10で圧縮された冷媒が通過する場合には、該冷媒を凝縮させるものである。
【0016】
庫内熱交換器40は、複数(図示の例では3つ)設けてあり、各商品収容庫1,2,3の内部に配設してある。これら庫内熱交換器40と庫外熱交換器20とを接続する冷媒配管50は、その途中の分岐点P1で3つに分岐して、右側の商品収容庫1に配設された庫内熱交換器40の入口側に、中央の商品収容庫2に配設された庫内熱交換器40の入口側に、左側の商品収容庫3の内部に配設された庫内熱交換器40の入口側にそれぞれ接続してある。
【0017】
また、この冷媒配管50においては、分岐点P1から各庫内熱交換器40に至る途中に電子膨張弁30が設けてある。電子膨張弁30は、図示せぬコントローラから与えられる指令に応じて開度を調整することができる流量可変のものであり、全閉状態となることも可能である。かかる電子膨張弁30は、通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。この電子膨張弁30の構成について後述する。
【0018】
上記庫内熱交換器40の出口側に接続された冷媒配管50は、途中の合流点P2で合流し、アキュムレータ60を介して圧縮機10に接続している。ここでアキュムレータ60は、通過する冷媒が気液混合冷媒である場合に、液相冷媒を貯留して気相冷媒を通過させる気液分離手段である。尚、図1中の符号F1及びF2は、それぞれ庫内送風ファン及び庫外送風ファンである。
【0019】
以上のような構成を有する冷凍サイクルにおいては、圧縮機10で圧縮された冷媒は、庫外熱交換器20に至り、該庫外熱交換器20を通過中に周囲空気(外気)に放熱して凝縮する。庫外熱交換器20で凝縮した冷媒(気液二相冷媒)は、分岐点P1で3つに分岐した後、電子膨張弁30でそれぞれ断熱膨張し、各庫内熱交換器40に至り、各庫内熱交換器40で蒸発して商品収容庫1,2,3の内部空気から熱を奪い、該内部空気を冷却する。冷却された内部空気は、各庫内送風ファンF1の駆動により内部を循環し、これにより各商品収容庫1,2,3に収容された商品は、循環する内部空気に冷却される。各庫内熱交換器40で蒸発した冷媒は、合流点P2で合流した後、圧縮機10に吸引され、圧縮機10に圧縮されて上述した循環を繰り返すことになる。
【0020】
上記電子膨張弁30の構造について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、図1に示した電子膨張弁の構成を示す縦断面図であり、図3は、図2のA−A線断面図である。ここで例示する電子膨張弁30は、弁本体31と、アーマチュア32と、ソレノイド33とを備えて構成してある。
【0021】
弁本体31は、弁体上部311及び弁体下部312から構成された筐体である。弁体上部311は、強磁性体材料から形成された円柱部材であり、流入部3111、吸引部3112、上部縦孔3113及び横孔3114を有している。流入部3111は、弁体上部311の上側部位に設けてあり、分岐点P1を介して庫外熱交換器20に連結された冷媒配管50の端部の挿入を許容するものである。吸引部3112は、例えば継鉄のようなものであり、磁力が作用する場合にアーマチュア32を吸引するものである。上部縦孔3113は、弁体上部311の中心軸に沿って延在しており、流入部3111に挿入された冷媒配管50に連通するものである。この上部縦孔3113と冷媒配管50との連通個所が冷媒入口を構成する。横孔3114は、上部縦孔3113の下端部において該上部縦孔3113に連通しつつ水平方向に沿って延在するもので、弁本体内部31aに通じるものである。
【0022】
弁体下部312は、弁体上部311と同様に強磁性体材料から形成された円柱部材である。この弁体下部312は、スペーサ313を介して弁体上部311との間に内部空間を画成し、非磁性体材料から形成された円筒部材である弁体側部314を介して弁体上部311と互いの中心軸が同一直線上となる態様で係合している。
【0023】
このような弁体下部312は、流出部3121、弁座34及び下部縦孔3122を有している。流出部3121は、弁体下部312の下側部位に設けてあり、庫内熱交換器40に連結された冷媒配管50の端部の挿入を許容するものである。
【0024】
弁座34は、流出部3121よりも上方域に画成された空間3123に配設されている。この弁座34は、非磁性体材料から形成された円柱部材であり、上下方向に沿って延在する小径流路341が形成してある。この小径流路341は、冷媒入口、すなわち上部縦孔3113や冷媒配管50の内径よりも小径となる流路であり、弁座34の上面及び下面に開口を形成している。ここで弁座34の上面側の開口が冷媒の流入口341aとなり、下面側の開口が冷媒の流出口341bとなる。
【0025】
このような弁座34においては、その上面に環状壁部材342が配設してある。環状壁部材342は、小径流路341の流入口341aを囲繞する態様で上方に向けて突出して設けられ、詳細は後述するが、自身の上端面342aがアーマチュア32との接触部位となるものである。ここで環状壁部材342の弁座34の上面からの突出高さは、冷凍サイクルに進入可能なゴミよりも大きくなるよう0.1mm以上の大きさにしてあり、環状壁部材342の内径dは、小径流路341の内径D(例えば0.6〜1.0mm)に略等しい大きさにしてある。
【0026】
ここで、本実施の形態において冷媒とともに進入可能なゴミは、銅パイプのロウ付け時にできた銅の酸化物か水酸化物の薄膜片を指し、100〜200μm以下の大きさのものである。
【0027】
下部縦孔3122は、弁体下部312の中心軸に沿って延在しており、上端が弁座34の小径流路341に連通するとともに、下端が流出部3121に挿入された冷媒配管50に連通するものである。この下部縦孔3122と冷媒配管50との連通個所が冷媒出口を構成しており、かかる下部縦孔3122により弁座34の小径流路341は、冷媒出口に連通する。
【0028】
アーマチュア32は、強磁性体材料から形成されるものであり、3つの異なる外径を有する3段構造の円柱部材である。このアーマチュア32は、吸着部321と側部322と弁体323とを有している。吸着部321は、最上位の部位であり平坦な上端面を有している。側部322は、最大径を有する部位であり、弁本体31の弁体下部312により画成される収納空間との間で十分な隙間を保持している。弁体323は、最下位の部位であり平坦な下端面を有している。
【0029】
このようなアーマチュア32は、側部322の上端面に円板バネ(付勢手段)35がカシメにより固定されている。円板バネ35は、円板状の本体部351の周縁がピン36を介して弁体下部312に固定されている。このような円板バネ35は、図3に示すように、その中心にアーマチュア32の吸着部321を挿通させて係合するための中心孔352を有しているとともに、等ピッチで渦巻き状に形成されたスリット353を有している。このスリット353は、本体部351に4個所等ピッチで形成されているので、円板バネ35は、軸方向(上下方向)の直進性が高く、かつ径方向への剛性が高いものである。また、アーマチュア32の側部322の周面には、冷媒の通路となる溝3221が形成してある。
【0030】
かかる円板バネ35の復元力によりアーマチュア32は、弁座34に近接する方向に向けて常時付勢されており、自身の弁体323の下端面が弁座34の環状壁部材342の上端面342aに当接して流入口341aを閉成することになる。そして、アーマチュア32が円板バネ35に付勢されて弁体323の下端面が弁座34の環状壁部材342の上端面342aに当接する場合には、吸着部321の上端面と、弁体上部311の吸引部3112の下面との間には間隙が形成される。
【0031】
ソレノイド33は、弁本体31に対して磁力を作用させるためのもので、鉄芯331とコイル332とにより構成してある。このようなソレノイド33は、固定金具37a,37bを介して弁本体31の側方に取り付けてある。より詳細に説明すると、ソレノイド33の上部及び下部には、固定金具37a,37bの貫通孔(図示せず)を貫通するネジ部(図示せず)を有し、固定金具37a,37bを貫通したネジ部をナット333にて締め付けることによりソレノイド33は固定金具37a,37bに固定される。この固定金具37a,37bは、強磁性体材料から形成された平板部材であり、平面両端が半円状に形成されており、弁本体31の弁体上部311及び弁体下部312にもネジにて固定されている。これにより、ソレノイド33は、固定金具37a,37bを介して弁本体31の側方に取り付けられることになる。
【0032】
ソレノイド33を通電させることによりコイル332より発生する磁束は、鉄芯331、固定金具37a、弁体下部312、アーマチュア32、弁体上部311、固定金具37bから鉄芯331に戻る磁気回路を流れることになり、これにより弁本体31に磁力を作用させることになる。
【0033】
そして、ソレノイド33の通電により上記磁気回路に磁束が流れることにより、アーマチュア32は、吸引部3112に吸引されることとなり、図5に示すように、アーマチュア32は、円板バネ35の付勢力に抗して弁座34から離隔する方向、すなわち上方向に向けて移動し、アーマチュア32の吸着部321は吸引部3112に吸着して、弁体323と弁座34(環状壁部材342)との間に間隙が形成される。つまり、アーマチュア32は、弁本体31の内部において弁座34に対して近接離反する態様で移動可能に配設され、常態においては弁座34の小径流路341の流入口341a前後における冷媒(凝縮冷媒)の高低圧力差及び円板バネ35の付勢力によって弁座34(環状壁部材342)に当接することで小径流路341の流入口341aを閉成する一方、ソレノイド33の通電により自身に磁力が作用する場合には、上記冷媒の高低圧力差による押付力及び円板バネ35の付勢力に抗して弁座34(環状壁部材342)から離隔する方向に向けて移動して流入口341aを開成するものである。
【0034】
このように弁体323と弁座34(環状壁部材342)との間に間隙が形成された場合において、流入部3111に挿入された冷媒配管50から流入する冷媒(凝縮冷媒)は、図5中の矢印に示すように、上部縦孔3113、横孔3114、弁本体内部31a、円板バネ35のスリット353、アーマチュア32の溝3221を経由して間隙に進入し、流入口341aから小径流路341に流入して断熱膨張され、気液二相冷媒になる。気液二相冷媒は、流出口341bから下部縦孔3122を経由して流出部3121に挿入された冷媒配管50に至り、該冷媒配管50を通過して庫内熱交換器40に供給されることになる。
【0035】
ここでソレノイド33の通電タイミングについて説明する。ソレノイド33の通電は、コントローラから与えられるパルス信号に応じて行われる。コントローラは、各庫内熱交換器40の入口近傍に配設した温度センサ(図示せず)の検知温度により、各電子膨張弁30をパルス駆動制御して冷媒流量及び庫内熱交換器40での蒸発温度を制御するものである。具体的には、一定のサイクル時間(例えば10秒間)毎にデューティー比(サイクル時間に対するオン時間の割合)を0〜100%の範囲でパルス信号を与え、電子膨張弁30の内部のアーマチュア32を移動させることにより、庫内熱交換器40の蒸発温度を所望の温度に制御する。
【0036】
これにより、電子膨張弁30は、所定のデューティー比にて磁力を作用させることによりアーマチュア32を移動させることで小径流路341の流入口341aを開閉して、冷媒入口を通じて流入した冷媒を小径流路341で断熱膨張させて冷媒出口を通じて流出させることになる。
【0037】
以上説明したような本実施の形態である電子膨張弁30においては、弁座34の上面に配設された環状壁部材342が、小径流路341の流入口341aの周囲を囲繞し、かつ自身の上端面342aがアーマチュア32(弁体323)との接触部位となるので、小径流路341の流入口341aの閉成時における互いの接触面積を小さくすることができる。これにより、従来のようにアーマチュア32の下面と弁座34の上面とが面接触する場合に比して、冷媒入口から冷媒とともに流入したゴミが弁座34の上面に停滞してしまっても流入口341aを良好に閉成することができる。従って、冷媒入口から冷媒とともにゴミが流入しても流入口341aを安定的に閉成することができる。
【0038】
特に、環状壁部材342の突出高さが、冷凍サイクルに進入可能なゴミよりも大きくなるようにしてあるので、ゴミが環状壁部材342を超えて小径流路341に流入することを抑制し、これにより小径流路341での冷媒詰まり等の不具合の発生を防止することができる。
【0039】
また上記電子膨張弁30によれば、環状壁部材342の内径dが小径流路341の内径D(例えば0.6〜1.0mm)に略等しい大きさにしてあるので、アーマチュア32の吸引力を必要最小限の大きさにすることができ、これによりソレノイド33の小型化、ひいては弁全体の小型化を図ることができる。
【0040】
このことについて詳述する。アーマチュア32の吸引力F′は、電子膨張弁30の内部を流れる冷媒の高低圧力差によりアーマチュア32を弁座34(環状壁部材342)に押し付ける押付力Fよりも大きいことが必要である。この押付力Fは、冷媒の高低圧力差ΔPとアーマチュア32により閉成される冷媒流路の断面積Aとの積により求められる(F=ΔP・A)。
【0041】
そこで、環状壁部材342の内径を小径流路341の内径と同じ大きさにすることにより、環状壁部材342により構成される冷媒流路の断面積が小径流路341の断面積と同じ大きさにすることができ、これにより押付力Fを最小限の大きさにすることができる。この結果、アーマチュア32の吸引力F′を必要最小限の大きさにすることができ、上述のようにソレノイド33の小型化、ひいては弁全体の小型化を図ることができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0043】
上述した実施の形態では、弁座34の上面に設けた環状壁部材342の内径dは、小径流路341の内径Dと略等しい大きさを有していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、環状壁部材の内径は、小径流路の内径よりも大きくても構わない。この構成によっても冷媒入口から冷媒とともにゴミが流入しても流入口を安定的に閉成することができる。
【0044】
また、上述した実施の形態では、弁座34の上面に設けた環状壁部材342は1つであったが、本発明においては、環状壁部材を二重以上となるように設けてもよい。
【0045】
また、上述した実施の形態では、環状壁部材342を接触面積低減部材の一例として説明したが、本発明においては、接触面積低減部材は、弁座だけでなくアーマチュアに設けてもよく、その形態は環状である必要ない。つまり弁座の上面から隆起する態様で設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明に係る電子膨張弁は、自動販売機等の冷凍サイクルに有用である。
【符号の説明】
【0047】
30 電子膨張弁
31 弁本体
31a 弁本体内部
311 弁体上部
3111 流入部
3112 吸引部
3113 上部縦孔
3114 横孔
312 弁体下部
3121 流出部
3122 下部縦孔
313 スペーサ
314 弁体側部
32 アーマチュア
321 吸着部
322 側部
323 弁体
33 ソレノイド
331 鉄芯
332 コイル
34 弁座
341 小径流路
341a 流入口
341b 流出口
342 環状壁部材
342a 上端面
35 円板バネ(付勢手段)
351 本体部
352 中心孔
353 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒入口と冷媒出口とが設けられた弁本体と、
前記弁本体の内部に配設され、かつ前記冷媒入口よりも小径であって前記冷媒出口に連通する小径流路を有する弁座と、
前記弁本体の内部で前記弁座に対して近接離反する態様で移動可能に配設され、常態においては弁座前後における冷媒の高低圧力差及び付勢手段により弁座に当接することで前記小径流路の流入口を閉成する一方、自身に磁力が作用する場合には、前記冷媒の高低圧力差及び付勢手段に抗して前記弁座から離隔する方向に向けて移動して前記流入口を開成するアーマチュアと
を備え、所定のデューティー比にて磁力を作用させることにより前記アーマチュアを移動させることで前記小径流路の流入口を開閉して、前記冷媒入口を通じて流入した冷媒を前記小径流路で断熱膨張させて前記冷媒出口を通じて流出させる電子膨張弁において、
前記弁座及び前記アーマチュアの少なくとも一方に配設され、かつ前記小径流路の流入口の閉成時における互いの接触面積を小さくする接触面積低減部材を備えたことを特徴とする電子膨張弁。
【請求項2】
前記接触面積低減部材は、前記弁座において前記流入口の周囲を囲繞する態様で配設され、かつ自身の端面が前記アーマチュアとの接触部位となる環状壁部材であることを特徴とする請求項1に記載の電子膨張弁。
【請求項3】
前記環状壁部材の内径は、前記小径流路の内径に略等しいことを特徴とする請求項2に記載の電子膨張弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−21745(P2012−21745A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161543(P2010−161543)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)