電子装置
【課題】良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置を提供する。
【解決手段】コネクタ20が実装された回路基板10、上ケース50、および下ケース30を有してなり、上ケース50と下ケース30を組み付けた状態で構成される筐体のコネクタ用開口部60を介して、コネクタ20のハウジング21の一部を筐体の外部に露出させつつ、ハウジング21の残りの部分と回路基板10を筐体の内部に収容し、筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材41a,41bによって封止されてなる電子装置であって、環状に塗布されたシール材41a,41bの塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、シール材41a,41bがX字状に交わる重なり部LCが構成されてなる電子装置100とする。
【解決手段】コネクタ20が実装された回路基板10、上ケース50、および下ケース30を有してなり、上ケース50と下ケース30を組み付けた状態で構成される筐体のコネクタ用開口部60を介して、コネクタ20のハウジング21の一部を筐体の外部に露出させつつ、ハウジング21の残りの部分と回路基板10を筐体の内部に収容し、筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材41a,41bによって封止されてなる電子装置であって、環状に塗布されたシール材41a,41bの塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、シール材41a,41bがX字状に交わる重なり部LCが構成されてなる電子装置100とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置が、例えば、特開2001−85858号公報(特許文献1)と特開2009−123558号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
上記特許文献に開示されている電子制御装置は、いずれも、筐体を構成する上ケースの周縁部と下ケースの周縁部の対向部位間、回路基板に実装されたコネクタのハウジングと前記上ケースの周縁部との対向部位間、および前記ハウジングと前記下ケースの周縁部との対向部位間に、シール材がそれぞれ介在されている。そして、前記回路基板が収容された筐体の内部空間が防水空間とされ、回路基板に実装された前記コネクタの一部が外部に露出される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−85858号公報
【特許文献2】特開2009−123558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12は、上記特許文献と同様の従来の電子装置90について、シール材の塗布の一例を示した図である。図12(a)は、コネクタ20が実装された回路基板10を下ケース30へ組み付けた後の上面図で、下ケース30の周縁部とコネクタ20のハウジング21へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。塗布は2回に分けて行われ、丸印が塗布の開始点であり、それぞれ太い一点鎖線と二点鎖線で示した経路を通って、三角印が塗布の終了点となる。図12(b)は、シール材40a,40bを塗布した後のコネクタ側から見た正面図である。また、図12(c)と図12(d)は、それぞれ、図12(a)におけるA−AおよびB−Bでの断面図で、シール材40a,40bを塗布した後の重なり(ラップ)部LA,LBの様子を拡大して示した図である。
【0006】
図12に示す従来の電子装置90では、上記したように、シール材の塗布が2回に分けて行われ、シール材40aとシール材40bが、下ケース30の周縁部とハウジング21へ塗布されている。
【0007】
すなわち、図12(a)に示したように、最初にシール材40aを、白丸で示した開始点から、一点鎖線で示した経路を通って、白三角で示した終了点まで塗布する。次に、シール材40bを、黒丸で示した開始点から、二点鎖線で示した経路を通って、黒三角で示した終了点まで塗布する。上記シール材40a,40bの塗布は、それぞれ、下ケース30に設けられた溝30sとハウジング21に設けられた溝21sに沿って行われ、シール材40aとシール材40bの塗布の開始点近くおよび終了点近くにおいて、5〜10mmの重なり部LA,LBができるように塗布されている。
【0008】
図12(b)に示すように、コネクタ20の周囲は正面から見ると略台形になっており、ハウジング21は、左斜面と右斜面、およびそれらを連結する上面と下面から構成されている。上記したようにシール材の塗布を2回に分けて行う理由は、ハウジング21の斜面を下側から上側へ塗布する必要があるためで、逆に上側から下側へ塗布するとシール材が斜面に沿って滑り落ち、シール材の塗布形状が不安定になるためである。従って、ハウジング21の左斜面と右斜面のそれぞれにおいて下側から上側へシール材を塗布するには、上記したように2回に分けたシール材の塗布が必要で、この場合には図12(c),(d)に示すように、開始点と終了点の2箇所の重なり部LA,LBが形成される。
【0009】
一方、重なり部LA,LBが形成されるシール材の塗布の開始点や終了点においては、一般的に塗布量が安定せず、開始点では塗布量不足となり易く、終了点では塗布停止後の残量で糸状に尾を引く不具合が発生し易い。シール材の塗布量が少ない場合には、重なり部においてシール材同士の接触面積を確保できず、シール性が保証できなくなる。前述した5〜10mmのラップ距離は、シール材同士の十分な接触面積を確保するための設定である。しかしながら、この場合には逆に重なり部LA,LBでの塗布量が他の部位に比べ2倍となるため、重なり部LA,LBの周りでシール材が筐体の外部へはみ出したり、筐体の内部の意図しない部位へ付着したりする不具合が発生し易くなる。
【0010】
そこで本発明は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、コネクタが実装された回路基板に対して、前記コネクタの実装面側に配置される上ケースと、前記コネクタの実装面の裏面側に配置される下ケースを有しており、前記上ケースと下ケースを組み付けた状態で構成される筐体のコネクタ用開口部を介して、前記コネクタのハウジングの一部を前記筐体の外部に露出させつつ、前記ハウジングの残りの部分と前記回路基板を前記筐体の内部に収容し、前記筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材によって封止されてなる電子装置であって、前記環状に塗布されたシール材の塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、該シール材がX字状に交わる重なり部が構成されてなることを特徴としている。
【0012】
上記電子装置は、コネクタが実装された回路基板を上ケースと下ケースで構成される筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材によって封止されてなる電子装置である。また、上記電子装置における環状に塗布されたシール材は、塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、該シール材がX字状に交わる重なり(ラップ)部が構成されている。
【0013】
重なり部が形成されるシール材の塗布の開始点や終了点においては、一般的に塗布装置の吐出量が安定せず、開始点では塗布量不足となり易く、終了点では塗布停止後の残量で糸状に尾を引く不具合が発生し易い。従来の電子装置における環状に塗布されたシール材では、同方向に積層した重なり部やT字状に交わる重なり部が用いられてきた。従って、例えば従来のT字状に交わる重なり部において、シール材の塗布量が少ない場合には、シール材同士の接触面積を確保できず、シール性が保証できなくなる。また、重なり部における面積あたりのシール材の量は、他の部位に較べ、2倍となる。このため、従来の同方向に積層した重なり部において、シール材同士の十分な接触面積を確保するためにラップ距離を大きく設定した場合には、重なり部の周りでシール材が筐体の外部へはみ出したり、筐体の内部の意図しない部位へ付着したりする不具合が発生し易くなる。
【0014】
これに対して、上記電子装置における環状に塗布されたシール材では、X字状に交わる重なり部が用いられている。X字状に交わる重なり部は、従来のT字状に交わる重なり部と異なり、塗布量の不安定な塗布の開始点または終了点を外して、安定した塗布量が得られる部分で線状に塗布しているシール材を交差させ、封止のために環状にするものである。このように塗布量が安定しているX字状に交わる重なり部を採用することで、従来のT字状に交わる重なり部に較べて、より確実なシール性を確保することができる。また、従来の同方向に積層した重なり部と比較しても、上記電子装置で用いられているX字状に交わる重なり部は、重なり部での重なり面積が小さいため、より少ないシール材の量で、同等のシール性を確保することができる。このため、従来の同方向に積層した重なり部と比較して、余分なシール材によるはみ出し不具合も抑制することができる。
【0015】
以上のようにして、上記電子装置は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置とすることができる。
【0016】
上記電子装置は、例えば請求項2に記載のように、前記環状に塗布されたシール材が、前記上ケースの周縁部と前記下ケースの周縁部の対向部位間、前記コネクタ用開口部を構成する上ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間、および前記コネクタ用開口部を構成する下ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間に配置された、連結する2つの環状に塗布されたシール材であり、前記重なり部が、前記上ケースの周縁部と前記ハウジングの上面の対向部位間に配置されてなる構成であってよい。
【0017】
上記構成によれば、コネクタのハウジングの一部を筐体の外部に露出させつつ、ハウジングの残りの部分と回路基板を筐体の内部に収容する当該電子装置を、コネクタのハウジングの周囲で環状に塗布されたシール材、およびそれに連結する上ケースの周縁部と下ケースの周縁部で環状に塗布されたシール材によって、他のシール手段を用いることなく、完全に封止することができる。
【0018】
また、上記構成においては、シール材がX字状に交わる重なり部を、平坦で比較的広い面積が確保されているコネクタのハウジングの上面に配置している。このため、重なり部におけるシール材の交わり角度の設定自由度や、X字状に交わる重なり部の中心からの塗布の開始点や終了点の突き出し長さの設定自由度が高く、最適設計が可能となる。
【0019】
また、上記構成の場合には、例えば請求項3に記載のように、前記連結する2つの環状に塗布されたシール材における一方の環状に塗布されたシール材が、前記上ケースの周縁部と前記下ケースの周縁部の対向部位間、および前記コネクタ用開口部を構成する上ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間に配置されたシール材であり、前記一方の環状に塗布されたシール材が、前記下ケースの周縁部における所定位置を塗布の開始点とし、下ケースの周縁部と前記ハウジングの一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部を過ぎた所定位置を終了点とする第1塗布と、前記下ケースの周縁部における別の所定位置を塗布の開始点とし、前記第1塗布の開始点近くで該第1塗布のシール材と重なり、下ケースの周縁部と前記ハウジングのもう一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部を過ぎた別の所定位置を終了点とする第2塗布とによって、環状に配置されてなる構成であってよい。
【0020】
該構成では、前述した連結する2つの環状に塗布されたシール材のうち、上記一方の環状のシール材についての塗布が、第1塗布と第2塗布の2回に分けて行われる。また、第1塗布と第2塗布は、いずれも、下ケースの周縁部を塗布の開始点とし、コネクタのハウジングの側面から上面へ至る経路を通って、重なり部を過ぎた位置で終了する。これによれば、第1塗布と第2塗布は、いずれも、ハウジングの側面を下側から上側へ塗布することになり、ハウジングの側面を上側から下側へ塗布した場合に発生し易いシール材の側面に沿った滑り落ちを抑制することができる。
【0021】
また、上記構成の場合には、シール材の塗布状態を安定化するために、請求項4に記載のように、前記下ケースの周縁部および前記ハウジングの表面に、前記シール材の塗布をガイドする所定幅の溝が形成されてなることが好ましい。
【0022】
さらに、この場合には請求項5に記載のように、前記シール材の重なり部を配置する位置において、前記所定幅の溝がX字状に交わり、前記溝の交わり部における側壁が、前記所定幅の単純な交わり位置より外に遠ざけられて、交わり溝拡大部が形成されてなることが好ましい。
【0023】
シール材の重なり部においては、面積当たりのシール材の塗布量が、他の部位に較べて2倍となる。上記交わり溝拡大部は、下ケースの周縁部およびハウジングの表面に形成された溝にシール材が塗布された状態で上ケースが組み付けられた時、面積当たり2倍の塗布量となっている重なり部のシール材の受け皿として機能し、該シール材の意図しない部位へのはみ出しを防止することができる。
【0024】
上記電子装置においては、請求項6に記載のように、前記シール材の塗布時において、前記重なり部の近くにおける塗布の開始点または終了点が、重なり部の中心から前記シール材の線幅より遠い位置に設定されてなることが好ましい。これによれば、重なり部の中心から線幅より近い位置に塗布の開始点または終了点がある場合に較べて、確実なシール性の確保が保証されるようになる。
【0025】
また、上記電子装置においては、請求項7に記載のように、前記シール材の塗布時において、前記重なり部におけるシール材の鋭角側の交わり角度が、20度以上に設定されてなることが好ましい。これによれば、上記交わり角度がより小さな角度に設定されている場合に較べて、重なり部を構成しているシール材の量が必要以上に多くならない。このため、シール材の意図しない部位へのはみ出しを、より確実に抑制できるようになる。
【0026】
以上のようにして、上記電子装置は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置とすることができる。
【0027】
従って、上記電子装置は、請求項8に記載のように、過酷な環境下で使用され、確実な防水性が必要とされる、車載用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る電子装置100について、シール材を除いた各構成部品を分解して示した斜視図である。
【図2】図1に示す下ケース30とコネクタ20が実装された回路基板10の組み付け状態を示した上面図で、下ケース30の周縁部とハウジング21の表面へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。
【図3】図2に示した電子装置100と同様の電子装置101について、シール材の塗布に関する別の例を示した図である。(a)は、下ケース30とコネクタ20が実装された回路基板10の組み付け状態を示した上面図で、下ケース30の周縁部とコネクタ20のハウジング21へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。(b)は、シール材42a,42bを塗布した後のコネクタ側から見た正面図である。また、(c)と(d)は、それぞれ、(a)におけるD−DおよびC−Cでの断面図で、シール材42a,42bを塗布した後の重なり(ラップ)部LD,LCの様子を拡大して示した図である。
【図4】電子装置100の製造方法を示した製造工程別の上面図で、最初に行うシール材41cの塗布で、下ケース30におけるコネクタ用開口部60の周りの溝30t内への塗布を示す図である。(a)は、白丸で示した塗布の開始点、太い破線で示した塗布の経路、および白三角で示した塗布の終了点を示す図であり、(b)は、塗布後のシール材41cの状態を示す図である。
【図5】次に行う回路基板10の組み付けを示す図で、(a)は、下ケース30への回路基板10の組み付け後の状態を示した上面図であり、(b)は、(a)におけるE−E断面でのコネクタ20の下部の状態を拡大して示した図である。
【図6】次に行うシール材41aの塗布(第1塗布)を示す図で、(a)は、白丸で示した塗布の開始点、太い一点鎖線で示した塗布の経路、および白三角で示した塗布の終了点を示す図であり、(b)は、塗布後のシール材41aの状態を示す図である。
【図7】次に行うシール材41bの塗布(第2塗布)を示す図で、(a)は、黒丸で示した塗布の開始点、太い二点鎖線で示した塗布の経路、および黒三角で示した塗布の終了点を示す図であり、(b)は、塗布後のシール材41bの状態を示す図である。
【図8】次に行う上ケース50の組み付けを示す図で、(a)は、上ケース50を下ケース30へ組み付けた後の状態を示した上面図である。また、(b)は、(a)におけるF−F断面の状態を拡大して示した図であり、(c)は、(a)におけるG−G断面でのコネクタ20の上部の状態を拡大して示した図である。
【図9】図1〜図3に示した溝21tの交わり部21txについてのより好ましい形態を示した図で、(a)は、溝Tの交わり部Txの周りを示した上面図であり、(b)は、(a)の溝T内へシール材Sa,Sbを塗布した状態を示した図である。また、(c)は、上ケースの組み付けによって、(b)のシール材Sa,Sbが押し付けられた状態を示した図である。
【図10】シール材Sa,SbのX字状の重なり部Lx1の周りを示した上面図で、シール材Sa,Sbの塗布時における線幅Wsa,Wsbと重なり部Lx1の中心からの突き出し長さDsa,Dsbを示した図である。
【図11】シール材Sa,SbのX字状の重なり部Lx2の周りを示した上面図で、シール材Sa,Sbの塗布時における重なり部Lx2での鋭角側の交わり角度Kxを示した図である。
【図12】従来の電子装置90について、シール材の塗布の一例を示した図である。(a)は、コネクタ20が実装された回路基板10を下ケース30へ組み付けた後の上面図で、下ケース30の周縁部とコネクタ20のハウジング21へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。(b)は、シール材40a,40bを塗布した後のコネクタ側から見た正面図である。また、(c)と(d)は、それぞれ、(a)におけるA−AおよびB−Bでの断面図で、シール材40a,40bを塗布した後の重なり(ラップ)部LA,LBの様子を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る電子装置の実施形態を、図に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る電子装置100について、シール材を除いた各構成部品を分解して示した斜視図である。尚、図1に示す電子装置100において、図12に示した電子装置90と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0031】
図1に示す電子装置100は、コネクタ20が実装された回路基板10に対して、コネクタ20の実装面側に配置される上ケース50と、コネクタ20の実装面の裏面側に配置される下ケース30を有している。電子装置100は、上ケース50と下ケース30を組み付けた状態で構成される筐体のコネクタ用開口部60を介して、コネクタ20のハウジング21の一部を前記筐体の外部に露出させつつ、ハウジング21の残りの部分と回路基板10を前記筐体の内部に収容する。そして、前記筐体の内部の空間が、図2以降で詳述するように、図示していない環状に塗布されたシール材によって封止される。
【0032】
尚、下ケース30の周縁部およびコネクタ20のハウジング21の表面(上面と側面)には、それぞれ、前記シール材の塗布をガイドする所定幅の溝30tと所定幅の溝21tが形成されている。また、ハウジング21の上面には、所定幅の溝21tがX字状に交わる、交わり部21txが形成されている。これらの溝30t,21tおよび交わり部21txを形成しておくことによって、後述する下ケース30とハウジング21へのシール材の塗布状態を、安定化することができる。また、上ケース50においては、上記溝30t,21tと対応する位置において、下ケース30とハウジング21の上面に向う凸部50aが形成されている。これによって、下ケース30とハウジング21に対して上ケース50を組み付ける際に、溝30t,21t内に塗布されているシール材を上記凸部50aで押し付けることで、より確実なシール性を得ることができる。
【0033】
図2は、図1に示す下ケース30とコネクタ20が実装された回路基板10の組み付け状態を示した上面図で、下ケース30の周縁部とハウジング21の表面へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。尚、図2に示す電子装置100の上面図は、図12(a)に示した電子装置90の上面図と対応しており、180°回転して示されている。図2に示す電子装置100の上面図において、図12(a)に示した電子装置90の上面図と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0034】
環状に行うシール材の塗布は、下ケース30の周縁部に形成された溝30tとコネクタ20のハウジング21の表面に形成された溝21tに沿って、第1塗布と第2塗布の2回に分けて行われる。丸印が塗布の開始点であり、それぞれ太い一点鎖線と二点鎖線で示した経路を通って、三角印が塗布の終了点となる。
【0035】
図2の電子装置100におけるシール材の塗布は、図12(a)の電子装置90におけるシール材40a,40bの塗布と同様に、最初にシール材41aを、白丸で示した開始点から、一点鎖線で示した経路を通って、白三角で示した終了点まで塗布する(第1塗布)。次に、シール材41bを、黒丸で示した開始点から、二点鎖線で示した経路を通って、黒三角で示した終了点まで塗布する(第2塗布)。図2に示すシール材41aとシール材41bの塗布の開始点近くにおいては、図12(a)に示したシール材40a,40bの塗布の開始点近くと同様で、シール材41a,41bが同方向に積層した5〜10mmの重なり部LAができるように塗布される。
【0036】
一方、図12(a)に示したシール材40a,40bの塗布では、塗布の終了点の近くにおいても、シール材40a,40bが同方向に積層した5〜10mmの重なり部LBができるように塗布されていた。これに対して、図2の電子装置100におけるシール材41a,41bの塗布は、図12(a)に示したシール材40a,40bの塗布と異なり、環状に塗布されるシール材41a,41bの塗布の終了点近くにおいて、該シール材41a,41bがX字状に交わる重なり部LCが構成される。
【0037】
図3は、図2に示した電子装置100と同様の電子装置101について、シール材の塗布に関する別の例を示した図である。図3(a)は、下ケース30とコネクタ20が実装された回路基板10の組み付け状態を示した上面図で、下ケース30の周縁部とコネクタ20のハウジング21へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。環状に行うシール材の塗布は、第1塗布と第2塗布の塗布は2回に分けて行われ、丸印が塗布の開始点であり、それぞれ太い一点鎖線と二点鎖線で示した経路を通って、三角印が塗布の終了点となる。
【0038】
図3(b)は、シール材42a,42bを塗布した後のコネクタ側から見た正面図である。また、図3(c)と図3(d)は、それぞれ、図3(a)におけるD−DおよびC−Cでの断面図で、シール材42a,42bを塗布した後の重なり(ラップ)部LD,LCの様子を拡大して示した図である。尚、図3に示す電子装置101の各図は、図12に示した電子装置90の各図と対応している。また、図3に示す電子装置100において、図12および図2に示した電子装置90,100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0039】
図3の電子装置101におけるシール材42a,42bの塗布においても、図2の電子装置100におけるシール材41a,41bの塗布と同様に、環状に塗布されるシール材42a,42bの塗布の終了点近くにおいて、該シール材42a,42bがX字状に交わる重なり部LCが構成されている。
【0040】
図3の電子装置101においては、最初にシール材42aを、三叉路となっている溝30uの交点の白丸で示した開始点から、一点鎖線で示した経路を通って、白三角で示した終了点まで塗布する。次に、シール材42bを、黒丸で示した開始点から、白丸で示したシール材42aの開始点の上を通る二点鎖線で示した経路を通り、黒三角で示した終了点まで塗布する。上記シール材42a,42bの塗布は、それぞれ、下ケース30に設けられた溝30uとハウジング21に設けられた溝21uに沿って行われ、シール材42aとシール材42bの塗布の開始点近くにおいてT字状に交わる重なり部LDができるように塗布されており、シール材42aとシール材42bの塗布の終了点近くにおいて、X字状に交わる重なり部LCができるように塗布されている。
【0041】
図3(b)に示すように、コネクタ20の周囲は正面から見ると略台形になっており、ハウジング21は、左斜面と右斜面、およびそれらを連結する上面と下面から構成されている。上記したようにシール材の塗布を2回に分けて行う理由は、ハウジング21の斜面を下側から上側へ塗布する必要があるためで、逆に上側から下側へ塗布するとシール材が斜面に沿って滑り落ち、シール材の塗布形状が不安定になるためである。従って、ハウジング21の左斜面と右斜面のそれぞれにおいて下側から上側へシール材を塗布するには、上記したように2回に分けたシール材の塗布が必要で、この場合には図3(c),(d)に示すように、開始点近くでT字状に交わる重なり部LDと終了点近くでX字状に交わる重なり部LCが形成される。
【0042】
図4〜図8は、図1と図2に示した電子装置100について、その製造方法を示した製造工程別の上面図である。
【0043】
図4は、最初に行うシール材41cの塗布で、下ケース30におけるコネクタ用開口部60の周りの溝30t内への塗布を示す図である。図4(a)は、白丸で示した塗布の開始点、太い破線で示した塗布の経路、および白三角で示した塗布の終了点を示す図であり、図4(b)は、塗布後のシール材41cの状態を示す図である。
【0044】
図5は、次に行う回路基板10の組み付けを示す図で、図4(b)のシール材41cが塗布された下ケース30に対して、コネクタ20が実装された回路基板10を組み付ける。図5(a)は、下ケース30への回路基板10の組み付け後の状態を示した上面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるE−E断面でのコネクタ20の下部の状態を拡大して示した図である。
【0045】
図5(a)に示すように、シール材41cは、下ケース30へ回路基板10を組み付けた状態で、塗布の開始点近くの端部と終了点近くの端部が回路基板10の下から露出するように塗布されている。図5(b)に示すように、コネクタ20の下に位置する下ケース30の溝30t内に塗布されたシール材41cは、下ケース30へ回路基板10を組み付けることによって、ハウジング21に形成された凸部21aによって押し付けられ、確実なシール性が得られるようになっている。
【0046】
図6は、次に行うシール材41aの塗布(第1塗布)を示す図である。図6(a)は、白丸で示した塗布の開始点、太い一点鎖線で示した塗布の経路、および白三角で示した塗布の終了点を示す図であり、図6(b)は、塗布後のシール材41aの状態を示す図である。
【0047】
図6に示す第1塗布は、下ケース30の周縁部に形成されている溝30tの白丸で示した所定位置を塗布の開始点とし、回路基板10の下から露出する先に塗布されたシール材41cの端部と連結する。第1塗布は、さらにコネクタ20のハウジング21の側面から上面へ至る表面に形成された所定幅の溝21tの経路を通って、ハウジング21の上面中央における溝21tの交わり部21txを通り過ぎ、白三角で示した所定位置を塗布の終了点とする。
【0048】
図7は、次に行うシール材41bの塗布(第2塗布)を示す図である。図7(a)は、黒丸で示した塗布の開始点、太い二点鎖線で示した塗布の経路、および黒三角で示した塗布の終了点を示す図であり、図7(b)は、塗布後のシール材41bの状態を示す図である。
【0049】
図7に示す第2塗布は、下ケース30の溝30tに先に塗布されたシール材41aの端部と重なる黒丸で示した所定位置を塗布の開始点とし、シール材41a,41bが同方向に所定の長さだけ積層した重なり部LAを形成するようにして、シール材41aの第1塗布とは逆向きに、下ケース30の周縁部に形成されている溝30tに沿って塗布していく。第2塗布は、図7(a)の左下で、回路基板10の下から露出する先に塗布されたシール材41cの端部と連結する。さらに、第2塗布は、コネクタ20のハウジング21における第1塗布とは逆の側面から上面へ至る表面に形成された所定幅の溝21tの経路を通って、ハウジング21の上面中央で溝21tの交わり部21txに先に塗布されているシール材41aとX字状に交わる重なり部LCを形成し、交わり部21txを過ぎた黒三角で示した所定位置を塗布の終了点とする。
【0050】
図8は、次に行う上ケース50の組み付けを示す図で、図7(b)のシール材41a,41bが塗布された下ケース30およびハウジング21に対して、上ケース50を組み付ける。図8(a)は、上ケース50を下ケース30へ組み付けた後の状態を示した上面図である。また、図8(b)は、図8(a)におけるF−F断面の状態を拡大して示した図であり、図8(c)は、図8(a)におけるG−G断面でのコネクタ20の上部の状態を拡大して示した図である。
【0051】
図8(b)と図8(c)に示すように、下ケース30の溝30t内およびハウジング21の溝21t内に塗布されたシール材41a,41bは、下ケース30へ上ケース50を組み付けることによって、上ケース50に形成された凸部50aによって押し付けられ、確実なシール性が得られるようになっている。
【0052】
以上で、図1と図2に示した電子装置100の製造が完了する。尚、図3に示した電子装置101についても、図4〜図8に示した製造工程で同様に製造できることは言うまでもない。
【0053】
以上のようにして、図1〜図8で例示した電子装置100,101は、どちらも、コネクタ20が実装された回路基板10を上ケース50と下ケース30で構成される筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材41a,41bによって封止されてなる電子装置である。また、上記電子装置100,101における環状に塗布されたシール材41a,41bは、塗布の終了点の近くにおいて、該シール材41a,41bがX字状に交わる重なり(ラップ)部LCが構成されている。
【0054】
尚、図1〜図8の例では、2回に分けた塗布でコネクタ20のハウジング21の左斜面と右斜面をそれぞれ下側から上側へ塗布し、シール材41a,41bの塗布形状を安定化する必要性から、塗布の終了点近くにおいてX字状に交わる重なり(ラップ)部LCが構成されている。しかしながら、シール材を塗布するノズルを走査しながら塗布するのではなく、例えばノズルの位置を固定して下ケース30を走査しながらシール材を塗布していく場合には、ハウジング21の左斜面と右斜面をそれぞれ下側から上側へ塗布するといった制限はなくなる。従って、図1〜図8の例とは逆向きにシール材を塗布して、塗布の開始点近くにおいてX字状に交わる重なり(ラップ)部を構成するようにしてもよい。また、この場合には塗布を2回に分ける必要もないため、1回の塗布でシール材を環状に形成し、塗布の開始点と終了点の近くでX字状に交わる重なり(ラップ)部が構成されるようにしてもよい。
【0055】
さらに、図1〜図8の例では、下ケース30とハウジング21の溝30t,21t内にシール材41a,41bを塗布していた。しかしながら、シール材の塗布位置はノズルの走査で制御できるため、シール材のはみ出し等が問題とならない場合には、下ケース30やハウジング21に溝を形成せず、平坦な表面にシール材を環状に塗布して、該シール材がX字状に交わる重なり部を構成するようにしてもよい。
【0056】
以上のように、本発明に係る電子装置においては、環状に塗布されたシール材の塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、該シール材がX字状に交わる重なり部が構成されていればよい。
【0057】
また、図1〜図8の電子装置100,101の例では、ハウジング21の上面において、2回に分けたシール材41a,41bの塗布の終了点近くにおけるX字状の重なり(ラップ)部LCが構成されていた。しかしながら、シール材41a,41bの塗布の開始点近くにおいて下ケース30に形成される電子装置100の同方向に積層した重なり部LAおよび電子装置101のT字状の重なり部LDについても、下ケース30の周縁部における余裕のある位置において、X字状の重なり部とすることがより好ましい。
【0058】
重なり部が形成されるシール材の塗布の開始点や終了点においては、一般的に塗布装置の吐出量が安定せず、開始点では塗布量不足となり易く、終了点では塗布停止後の残量で糸状に尾を引く不具合が発生し易い。図12に示した電子装置90のように、従来の電子装置における環状に塗布されたシール材では、同方向に積層した重なり部やT字状に交わる重なり部が用いられてきた。従って、例えば従来のT字状に交わる重なり部において、シール材の塗布量が少ない場合には、シール材同士の接触面積を確保できず、シール性が保証できなくなる。また、重なり部における面積あたりのシール材の量は、他の部位に較べ、2倍となる。このため、従来の同方向に積層した重なり部において、シール材同士の十分な接触面積を確保するためにラップ距離を大きく設定した場合には、重なり部の周りでシール材が筐体の外部へはみ出したり、筐体の内部の意図しない部位へ付着したりする不具合が発生し易くなる。
【0059】
これに対して、図1〜図8の電子装置100,101における環状に塗布されたシール材41a,41bでは、ハウジング21の上面において、X字状に交わる重なり部LCが用いられている。X字状に交わる重なり部は、従来のT字状に交わる重なり部と異なり、塗布量の不安定な塗布の開始点または終了点を外して、安定した塗布量が得られる部分で線状に塗布しているシール材LCを交差させ、封止のために環状にするものである。このように塗布量が安定しているX字状に交わる重なり部LCを採用することで、従来のT字状に交わる重なり部に較べて、より確実なシール性を確保することができる。また、従来の同方向に積層した重なり部と比較しても、上記電子装置100,101でハウジング21の上面において用いられているX字状に交わる重なり部LCは、重なり部LCでの重なり面積が小さいため、より少ないシール材の量で、同等のシール性を確保することができる。このため、従来の同方向に積層した重なり部と比較して、余分なシール材によるはみ出し不具合も抑制することができる。
【0060】
以上のようにして、図1〜図8に例示した電子装置100,101は、コネクタ20が実装された回路基板10を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材41a,41bによって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置となっている。
【0061】
また、図1〜図8に例示した電子装置100,101は、連結する2つの環状に塗布されたシール材41a〜41cで構成されている。一つの環状部は、図2と図3で詳述した第1塗布と第2塗布による、下ケース30の周縁部の溝30tとハウジング21の溝21tに沿って形成されたシール材41a,41bによる環状部である。また、もう一つの環状部は、図4で最初に塗布したシール材41cと上記第1塗布と第2塗布によりハウジング21の溝21tに沿って形成されたシール材41a,41bによる、コネクタ20のハウジング21の周りにおける環状部である。従って、言い換えれば、図1〜図8に例示した電子装置100,101は、環状に塗布されたシール材41a〜41cが、上ケース50の周縁部と下ケース30の周縁部の対向部位間、コネクタ用開口部60を構成する上ケース50の周縁部とハウジング21の表面の対向部位間、およびコネクタ用開口部60を構成する下ケース30の周縁部とハウジング21の表面の対向部位間に配置された、連結する2つの環状に塗布されたシール材であり、シール材41a,41bがX字状に交わる重なり部LCが、上ケース50の周縁部とハウジング21の上面の対向部位間に配置された構成となっている。
【0062】
上記構成によれば、コネクタ20のハウジング21の一部を筐体の外部に露出させつつ、ハウジング21の残りの部分と回路基板10を筐体の内部に収容する当該電子装置100,101を、コネクタ20のハウジング21の周囲で環状に塗布されたシール材41a〜41c、およびそれに連結する上ケース50の周縁部と下ケース30の周縁部で環状に塗布されたシール材41a,41bによって、他のシール手段を用いることなく、完全に封止することができる。
【0063】
また、上記構成においては、シール材41a,41bがX字状に交わる重なり部LCを、平坦で比較的広い面積が確保されているコネクタ20のハウジング21の上面に配置している。このため、重なり部LCにおけるシール材41a,41bの交わり角度の設定自由度や、X字状に交わる重なり部LCの中心からの塗布の開始点や終了点の突き出し長さの設定自由度が高く、最適設計が可能となる。
【0064】
しかしながらこれに限らず、例えば上ケース50に設けられた開口部とコネクタ20のハウジング21の周りをOリングで封止し、上ケース50と下ケース30の周縁部だけを、X字状に交わる重なり部を有したシール材で封止する構成とすることも可能である。
【0065】
また、上記構成の場合には、図2と図3で詳述したように、連結する2つの環状に塗布されたシール材における一方の環状に塗布されたシール材が、上ケース50の周縁部と下ケース30の周縁部の対向部位間、およびコネクタ用開口部60を構成する上ケース50の周縁部とハウジング21の表面の対向部位間に配置されたシール材41a,41bであり、前記一方の環状に塗布されたシール材41a,41bが、下ケース30の周縁部における所定位置を塗布の開始点とし、下ケース30の周縁部とハウジング21の一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部LCを過ぎた所定位置を終了点とする第1塗布と、下ケース30の周縁部における別の所定位置を塗布の開始点とし、前記第1塗布の開始点近くで該第1塗布のシール材41aと重なり、下ケース30の周縁部とハウジング21のもう一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部LCを過ぎた別の所定位置を終了点とする第2塗布とによって、環状に配置されてなる構成であってよい。
【0066】
該構成では、前述した連結する2つの環状に塗布されたシール材41a〜41cのうち、上記一方の環状のシール材41a,41bについての塗布が、第1塗布と第2塗布の2回に分けて行われる。また、第1塗布と第2塗布は、いずれも、下ケース30の周縁部を塗布の開始点とし、コネクタ20のハウジング21の側面から上面へ至る経路を通って、重なり部LCを過ぎた位置で終了する。これによれば、第1塗布と第2塗布は、いずれも、ハウジング21の側面を下側から上側へ塗布することになり、ハウジング21の側面を上側から下側へ塗布した場合に発生し易いシール材の側面に沿った滑り落ちを抑制することができる。
【0067】
しかしながらこれに限らず、前述したように、シール材を塗布するノズルを走査しながら塗布するのではなく、例えばノズルの位置を固定して下ケース30を走査しながらシール材を塗布していく場合には、ハウジング21の側面を下側から上側へ塗布するといった上記の制限はなくなる。
【0068】
次に、本願発明の電子装置におけるシール材のX字状の重なり部について、好ましい形態の詳細を説明する。
【0069】
図9は、図1〜図3に示した溝21tの交わり部21txについて、より好ましい形態を示した図である。図9(a)は、溝Tの交わり部Txの周りを示した上面図であり、図9(b)は、図9(a)の溝T内へシール材Sa,Sbを塗布した状態を示した図である。また、図9(c)は、上ケースの組み付けによって、図9(b)のシール材Sa,Sbが押し付けられた状態を示した図である。
【0070】
図9(a)は、シール材の塗布をガイドする所定幅Wtの溝Tと、シール材の重なり部を配置する位置において該溝TがX字状に交わる、交わり部Txを示している。該溝Tの交わり部Txにおいては、側壁が点線で示した所定幅Wtの単純な交わり位置より外に遠ざけられて、交わり溝拡大部Txaが形成されている。
【0071】
図9(b)に示すシール材Sa,SbのX字状の重なり部Lxにおいては、面積当たりのシール材の塗布量が、他の部位に較べて2倍となる。上記交わり溝拡大部Txaは、下ケースの周縁部およびハウジングの表面に形成された溝にシール材が塗布された状態で図9(c)に示すように上ケースが組み付けられた時、面積当たり2倍の塗布量となっている重なり部Lxのシール材の受け皿として機能し、該シール材の意図しない部位へのはみ出しを防止することができる。
【0072】
図10は、シール材Sa,SbのX字状の重なり部Lx1の周りを示した上面図で、シール材Sa,Sbの塗布時における線幅Wsa,Wsbと重なり部Lx1の中心からの突き出し長さDsa,Dsbを示した図である。
【0073】
本発明に係る電子装置においては、図10に示すシール材Sa,Sbの塗布時において、重なり部Lx1の近くにおける塗布の開始点または終了点(シール材Sa,Sbの端部)が、重なり部Lx1の中心からシール材Sa,Sbの線幅Wsa,Wsbより遠い位置に設定されてなることが好ましい。すなわち、図10に示すシール材Sa,Sbの塗布時における突き出し長さDsa,Dsbが、線幅Wsa,Wsbより長くなるように設定する。これによれば、重なり部Lx1の中心から線幅Wsa,Wsbより近い位置に塗布の開始点または終了点がある場合に較べて、確実なシール性の確保が保証されるようになる。
【0074】
図11は、シール材Sa,SbのX字状の重なり部Lx2の周りを示した上面図で、シール材Sa,Sbの塗布時における重なり部Lx2での鋭角側の交わり角度Kxを示した図である。
【0075】
本発明に係る電子装置においては、図11に示すシール材Sa,Sbの塗布時において、重なり部Lx2におけるシール材Sa,Sbの鋭角側の交わり角度Kxが、20度以上に設定されてなることが好ましい。これによれば、上記交わり角度Kxがより小さな角度に設定されている場合に較べて、X字状の重なり部Lx2を構成しているシール材Sa,Sbの量が必要以上に多くならない。このため、シール材Sa,Sbの意図しない部位へのはみ出しを、より確実に抑制できるようになる。
【0076】
以上のようにして、上記した本発明に係る電子装置は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置とすることができる。
【0077】
従って、上記電子装置は、過酷な環境下で使用され、確実な防水性が必要とされる、車載用として好適である。
【符号の説明】
【0078】
90,100,101 電子装置
10 回路基板
20 コネクタ
21 ハウジング
21s,21t,21u 溝
21tx 交わり部
30 下ケース
30s,30t,30u 溝
50 上ケース
40a,40b,41a〜41c,42a,42b,Sa,Sb
LA〜LD,Lx,Lx1,Lx2 重なり部
T 溝
Tx 交わり部
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置が、例えば、特開2001−85858号公報(特許文献1)と特開2009−123558号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
上記特許文献に開示されている電子制御装置は、いずれも、筐体を構成する上ケースの周縁部と下ケースの周縁部の対向部位間、回路基板に実装されたコネクタのハウジングと前記上ケースの周縁部との対向部位間、および前記ハウジングと前記下ケースの周縁部との対向部位間に、シール材がそれぞれ介在されている。そして、前記回路基板が収容された筐体の内部空間が防水空間とされ、回路基板に実装された前記コネクタの一部が外部に露出される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−85858号公報
【特許文献2】特開2009−123558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12は、上記特許文献と同様の従来の電子装置90について、シール材の塗布の一例を示した図である。図12(a)は、コネクタ20が実装された回路基板10を下ケース30へ組み付けた後の上面図で、下ケース30の周縁部とコネクタ20のハウジング21へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。塗布は2回に分けて行われ、丸印が塗布の開始点であり、それぞれ太い一点鎖線と二点鎖線で示した経路を通って、三角印が塗布の終了点となる。図12(b)は、シール材40a,40bを塗布した後のコネクタ側から見た正面図である。また、図12(c)と図12(d)は、それぞれ、図12(a)におけるA−AおよびB−Bでの断面図で、シール材40a,40bを塗布した後の重なり(ラップ)部LA,LBの様子を拡大して示した図である。
【0006】
図12に示す従来の電子装置90では、上記したように、シール材の塗布が2回に分けて行われ、シール材40aとシール材40bが、下ケース30の周縁部とハウジング21へ塗布されている。
【0007】
すなわち、図12(a)に示したように、最初にシール材40aを、白丸で示した開始点から、一点鎖線で示した経路を通って、白三角で示した終了点まで塗布する。次に、シール材40bを、黒丸で示した開始点から、二点鎖線で示した経路を通って、黒三角で示した終了点まで塗布する。上記シール材40a,40bの塗布は、それぞれ、下ケース30に設けられた溝30sとハウジング21に設けられた溝21sに沿って行われ、シール材40aとシール材40bの塗布の開始点近くおよび終了点近くにおいて、5〜10mmの重なり部LA,LBができるように塗布されている。
【0008】
図12(b)に示すように、コネクタ20の周囲は正面から見ると略台形になっており、ハウジング21は、左斜面と右斜面、およびそれらを連結する上面と下面から構成されている。上記したようにシール材の塗布を2回に分けて行う理由は、ハウジング21の斜面を下側から上側へ塗布する必要があるためで、逆に上側から下側へ塗布するとシール材が斜面に沿って滑り落ち、シール材の塗布形状が不安定になるためである。従って、ハウジング21の左斜面と右斜面のそれぞれにおいて下側から上側へシール材を塗布するには、上記したように2回に分けたシール材の塗布が必要で、この場合には図12(c),(d)に示すように、開始点と終了点の2箇所の重なり部LA,LBが形成される。
【0009】
一方、重なり部LA,LBが形成されるシール材の塗布の開始点や終了点においては、一般的に塗布量が安定せず、開始点では塗布量不足となり易く、終了点では塗布停止後の残量で糸状に尾を引く不具合が発生し易い。シール材の塗布量が少ない場合には、重なり部においてシール材同士の接触面積を確保できず、シール性が保証できなくなる。前述した5〜10mmのラップ距離は、シール材同士の十分な接触面積を確保するための設定である。しかしながら、この場合には逆に重なり部LA,LBでの塗布量が他の部位に比べ2倍となるため、重なり部LA,LBの周りでシール材が筐体の外部へはみ出したり、筐体の内部の意図しない部位へ付着したりする不具合が発生し易くなる。
【0010】
そこで本発明は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、コネクタが実装された回路基板に対して、前記コネクタの実装面側に配置される上ケースと、前記コネクタの実装面の裏面側に配置される下ケースを有しており、前記上ケースと下ケースを組み付けた状態で構成される筐体のコネクタ用開口部を介して、前記コネクタのハウジングの一部を前記筐体の外部に露出させつつ、前記ハウジングの残りの部分と前記回路基板を前記筐体の内部に収容し、前記筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材によって封止されてなる電子装置であって、前記環状に塗布されたシール材の塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、該シール材がX字状に交わる重なり部が構成されてなることを特徴としている。
【0012】
上記電子装置は、コネクタが実装された回路基板を上ケースと下ケースで構成される筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材によって封止されてなる電子装置である。また、上記電子装置における環状に塗布されたシール材は、塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、該シール材がX字状に交わる重なり(ラップ)部が構成されている。
【0013】
重なり部が形成されるシール材の塗布の開始点や終了点においては、一般的に塗布装置の吐出量が安定せず、開始点では塗布量不足となり易く、終了点では塗布停止後の残量で糸状に尾を引く不具合が発生し易い。従来の電子装置における環状に塗布されたシール材では、同方向に積層した重なり部やT字状に交わる重なり部が用いられてきた。従って、例えば従来のT字状に交わる重なり部において、シール材の塗布量が少ない場合には、シール材同士の接触面積を確保できず、シール性が保証できなくなる。また、重なり部における面積あたりのシール材の量は、他の部位に較べ、2倍となる。このため、従来の同方向に積層した重なり部において、シール材同士の十分な接触面積を確保するためにラップ距離を大きく設定した場合には、重なり部の周りでシール材が筐体の外部へはみ出したり、筐体の内部の意図しない部位へ付着したりする不具合が発生し易くなる。
【0014】
これに対して、上記電子装置における環状に塗布されたシール材では、X字状に交わる重なり部が用いられている。X字状に交わる重なり部は、従来のT字状に交わる重なり部と異なり、塗布量の不安定な塗布の開始点または終了点を外して、安定した塗布量が得られる部分で線状に塗布しているシール材を交差させ、封止のために環状にするものである。このように塗布量が安定しているX字状に交わる重なり部を採用することで、従来のT字状に交わる重なり部に較べて、より確実なシール性を確保することができる。また、従来の同方向に積層した重なり部と比較しても、上記電子装置で用いられているX字状に交わる重なり部は、重なり部での重なり面積が小さいため、より少ないシール材の量で、同等のシール性を確保することができる。このため、従来の同方向に積層した重なり部と比較して、余分なシール材によるはみ出し不具合も抑制することができる。
【0015】
以上のようにして、上記電子装置は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置とすることができる。
【0016】
上記電子装置は、例えば請求項2に記載のように、前記環状に塗布されたシール材が、前記上ケースの周縁部と前記下ケースの周縁部の対向部位間、前記コネクタ用開口部を構成する上ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間、および前記コネクタ用開口部を構成する下ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間に配置された、連結する2つの環状に塗布されたシール材であり、前記重なり部が、前記上ケースの周縁部と前記ハウジングの上面の対向部位間に配置されてなる構成であってよい。
【0017】
上記構成によれば、コネクタのハウジングの一部を筐体の外部に露出させつつ、ハウジングの残りの部分と回路基板を筐体の内部に収容する当該電子装置を、コネクタのハウジングの周囲で環状に塗布されたシール材、およびそれに連結する上ケースの周縁部と下ケースの周縁部で環状に塗布されたシール材によって、他のシール手段を用いることなく、完全に封止することができる。
【0018】
また、上記構成においては、シール材がX字状に交わる重なり部を、平坦で比較的広い面積が確保されているコネクタのハウジングの上面に配置している。このため、重なり部におけるシール材の交わり角度の設定自由度や、X字状に交わる重なり部の中心からの塗布の開始点や終了点の突き出し長さの設定自由度が高く、最適設計が可能となる。
【0019】
また、上記構成の場合には、例えば請求項3に記載のように、前記連結する2つの環状に塗布されたシール材における一方の環状に塗布されたシール材が、前記上ケースの周縁部と前記下ケースの周縁部の対向部位間、および前記コネクタ用開口部を構成する上ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間に配置されたシール材であり、前記一方の環状に塗布されたシール材が、前記下ケースの周縁部における所定位置を塗布の開始点とし、下ケースの周縁部と前記ハウジングの一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部を過ぎた所定位置を終了点とする第1塗布と、前記下ケースの周縁部における別の所定位置を塗布の開始点とし、前記第1塗布の開始点近くで該第1塗布のシール材と重なり、下ケースの周縁部と前記ハウジングのもう一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部を過ぎた別の所定位置を終了点とする第2塗布とによって、環状に配置されてなる構成であってよい。
【0020】
該構成では、前述した連結する2つの環状に塗布されたシール材のうち、上記一方の環状のシール材についての塗布が、第1塗布と第2塗布の2回に分けて行われる。また、第1塗布と第2塗布は、いずれも、下ケースの周縁部を塗布の開始点とし、コネクタのハウジングの側面から上面へ至る経路を通って、重なり部を過ぎた位置で終了する。これによれば、第1塗布と第2塗布は、いずれも、ハウジングの側面を下側から上側へ塗布することになり、ハウジングの側面を上側から下側へ塗布した場合に発生し易いシール材の側面に沿った滑り落ちを抑制することができる。
【0021】
また、上記構成の場合には、シール材の塗布状態を安定化するために、請求項4に記載のように、前記下ケースの周縁部および前記ハウジングの表面に、前記シール材の塗布をガイドする所定幅の溝が形成されてなることが好ましい。
【0022】
さらに、この場合には請求項5に記載のように、前記シール材の重なり部を配置する位置において、前記所定幅の溝がX字状に交わり、前記溝の交わり部における側壁が、前記所定幅の単純な交わり位置より外に遠ざけられて、交わり溝拡大部が形成されてなることが好ましい。
【0023】
シール材の重なり部においては、面積当たりのシール材の塗布量が、他の部位に較べて2倍となる。上記交わり溝拡大部は、下ケースの周縁部およびハウジングの表面に形成された溝にシール材が塗布された状態で上ケースが組み付けられた時、面積当たり2倍の塗布量となっている重なり部のシール材の受け皿として機能し、該シール材の意図しない部位へのはみ出しを防止することができる。
【0024】
上記電子装置においては、請求項6に記載のように、前記シール材の塗布時において、前記重なり部の近くにおける塗布の開始点または終了点が、重なり部の中心から前記シール材の線幅より遠い位置に設定されてなることが好ましい。これによれば、重なり部の中心から線幅より近い位置に塗布の開始点または終了点がある場合に較べて、確実なシール性の確保が保証されるようになる。
【0025】
また、上記電子装置においては、請求項7に記載のように、前記シール材の塗布時において、前記重なり部におけるシール材の鋭角側の交わり角度が、20度以上に設定されてなることが好ましい。これによれば、上記交わり角度がより小さな角度に設定されている場合に較べて、重なり部を構成しているシール材の量が必要以上に多くならない。このため、シール材の意図しない部位へのはみ出しを、より確実に抑制できるようになる。
【0026】
以上のようにして、上記電子装置は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置とすることができる。
【0027】
従って、上記電子装置は、請求項8に記載のように、過酷な環境下で使用され、確実な防水性が必要とされる、車載用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る電子装置100について、シール材を除いた各構成部品を分解して示した斜視図である。
【図2】図1に示す下ケース30とコネクタ20が実装された回路基板10の組み付け状態を示した上面図で、下ケース30の周縁部とハウジング21の表面へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。
【図3】図2に示した電子装置100と同様の電子装置101について、シール材の塗布に関する別の例を示した図である。(a)は、下ケース30とコネクタ20が実装された回路基板10の組み付け状態を示した上面図で、下ケース30の周縁部とコネクタ20のハウジング21へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。(b)は、シール材42a,42bを塗布した後のコネクタ側から見た正面図である。また、(c)と(d)は、それぞれ、(a)におけるD−DおよびC−Cでの断面図で、シール材42a,42bを塗布した後の重なり(ラップ)部LD,LCの様子を拡大して示した図である。
【図4】電子装置100の製造方法を示した製造工程別の上面図で、最初に行うシール材41cの塗布で、下ケース30におけるコネクタ用開口部60の周りの溝30t内への塗布を示す図である。(a)は、白丸で示した塗布の開始点、太い破線で示した塗布の経路、および白三角で示した塗布の終了点を示す図であり、(b)は、塗布後のシール材41cの状態を示す図である。
【図5】次に行う回路基板10の組み付けを示す図で、(a)は、下ケース30への回路基板10の組み付け後の状態を示した上面図であり、(b)は、(a)におけるE−E断面でのコネクタ20の下部の状態を拡大して示した図である。
【図6】次に行うシール材41aの塗布(第1塗布)を示す図で、(a)は、白丸で示した塗布の開始点、太い一点鎖線で示した塗布の経路、および白三角で示した塗布の終了点を示す図であり、(b)は、塗布後のシール材41aの状態を示す図である。
【図7】次に行うシール材41bの塗布(第2塗布)を示す図で、(a)は、黒丸で示した塗布の開始点、太い二点鎖線で示した塗布の経路、および黒三角で示した塗布の終了点を示す図であり、(b)は、塗布後のシール材41bの状態を示す図である。
【図8】次に行う上ケース50の組み付けを示す図で、(a)は、上ケース50を下ケース30へ組み付けた後の状態を示した上面図である。また、(b)は、(a)におけるF−F断面の状態を拡大して示した図であり、(c)は、(a)におけるG−G断面でのコネクタ20の上部の状態を拡大して示した図である。
【図9】図1〜図3に示した溝21tの交わり部21txについてのより好ましい形態を示した図で、(a)は、溝Tの交わり部Txの周りを示した上面図であり、(b)は、(a)の溝T内へシール材Sa,Sbを塗布した状態を示した図である。また、(c)は、上ケースの組み付けによって、(b)のシール材Sa,Sbが押し付けられた状態を示した図である。
【図10】シール材Sa,SbのX字状の重なり部Lx1の周りを示した上面図で、シール材Sa,Sbの塗布時における線幅Wsa,Wsbと重なり部Lx1の中心からの突き出し長さDsa,Dsbを示した図である。
【図11】シール材Sa,SbのX字状の重なり部Lx2の周りを示した上面図で、シール材Sa,Sbの塗布時における重なり部Lx2での鋭角側の交わり角度Kxを示した図である。
【図12】従来の電子装置90について、シール材の塗布の一例を示した図である。(a)は、コネクタ20が実装された回路基板10を下ケース30へ組み付けた後の上面図で、下ケース30の周縁部とコネクタ20のハウジング21へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。(b)は、シール材40a,40bを塗布した後のコネクタ側から見た正面図である。また、(c)と(d)は、それぞれ、(a)におけるA−AおよびB−Bでの断面図で、シール材40a,40bを塗布した後の重なり(ラップ)部LA,LBの様子を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る電子装置の実施形態を、図に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る電子装置100について、シール材を除いた各構成部品を分解して示した斜視図である。尚、図1に示す電子装置100において、図12に示した電子装置90と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0031】
図1に示す電子装置100は、コネクタ20が実装された回路基板10に対して、コネクタ20の実装面側に配置される上ケース50と、コネクタ20の実装面の裏面側に配置される下ケース30を有している。電子装置100は、上ケース50と下ケース30を組み付けた状態で構成される筐体のコネクタ用開口部60を介して、コネクタ20のハウジング21の一部を前記筐体の外部に露出させつつ、ハウジング21の残りの部分と回路基板10を前記筐体の内部に収容する。そして、前記筐体の内部の空間が、図2以降で詳述するように、図示していない環状に塗布されたシール材によって封止される。
【0032】
尚、下ケース30の周縁部およびコネクタ20のハウジング21の表面(上面と側面)には、それぞれ、前記シール材の塗布をガイドする所定幅の溝30tと所定幅の溝21tが形成されている。また、ハウジング21の上面には、所定幅の溝21tがX字状に交わる、交わり部21txが形成されている。これらの溝30t,21tおよび交わり部21txを形成しておくことによって、後述する下ケース30とハウジング21へのシール材の塗布状態を、安定化することができる。また、上ケース50においては、上記溝30t,21tと対応する位置において、下ケース30とハウジング21の上面に向う凸部50aが形成されている。これによって、下ケース30とハウジング21に対して上ケース50を組み付ける際に、溝30t,21t内に塗布されているシール材を上記凸部50aで押し付けることで、より確実なシール性を得ることができる。
【0033】
図2は、図1に示す下ケース30とコネクタ20が実装された回路基板10の組み付け状態を示した上面図で、下ケース30の周縁部とハウジング21の表面へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。尚、図2に示す電子装置100の上面図は、図12(a)に示した電子装置90の上面図と対応しており、180°回転して示されている。図2に示す電子装置100の上面図において、図12(a)に示した電子装置90の上面図と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0034】
環状に行うシール材の塗布は、下ケース30の周縁部に形成された溝30tとコネクタ20のハウジング21の表面に形成された溝21tに沿って、第1塗布と第2塗布の2回に分けて行われる。丸印が塗布の開始点であり、それぞれ太い一点鎖線と二点鎖線で示した経路を通って、三角印が塗布の終了点となる。
【0035】
図2の電子装置100におけるシール材の塗布は、図12(a)の電子装置90におけるシール材40a,40bの塗布と同様に、最初にシール材41aを、白丸で示した開始点から、一点鎖線で示した経路を通って、白三角で示した終了点まで塗布する(第1塗布)。次に、シール材41bを、黒丸で示した開始点から、二点鎖線で示した経路を通って、黒三角で示した終了点まで塗布する(第2塗布)。図2に示すシール材41aとシール材41bの塗布の開始点近くにおいては、図12(a)に示したシール材40a,40bの塗布の開始点近くと同様で、シール材41a,41bが同方向に積層した5〜10mmの重なり部LAができるように塗布される。
【0036】
一方、図12(a)に示したシール材40a,40bの塗布では、塗布の終了点の近くにおいても、シール材40a,40bが同方向に積層した5〜10mmの重なり部LBができるように塗布されていた。これに対して、図2の電子装置100におけるシール材41a,41bの塗布は、図12(a)に示したシール材40a,40bの塗布と異なり、環状に塗布されるシール材41a,41bの塗布の終了点近くにおいて、該シール材41a,41bがX字状に交わる重なり部LCが構成される。
【0037】
図3は、図2に示した電子装置100と同様の電子装置101について、シール材の塗布に関する別の例を示した図である。図3(a)は、下ケース30とコネクタ20が実装された回路基板10の組み付け状態を示した上面図で、下ケース30の周縁部とコネクタ20のハウジング21へシール材を環状に塗布する順序を示した図である。環状に行うシール材の塗布は、第1塗布と第2塗布の塗布は2回に分けて行われ、丸印が塗布の開始点であり、それぞれ太い一点鎖線と二点鎖線で示した経路を通って、三角印が塗布の終了点となる。
【0038】
図3(b)は、シール材42a,42bを塗布した後のコネクタ側から見た正面図である。また、図3(c)と図3(d)は、それぞれ、図3(a)におけるD−DおよびC−Cでの断面図で、シール材42a,42bを塗布した後の重なり(ラップ)部LD,LCの様子を拡大して示した図である。尚、図3に示す電子装置101の各図は、図12に示した電子装置90の各図と対応している。また、図3に示す電子装置100において、図12および図2に示した電子装置90,100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0039】
図3の電子装置101におけるシール材42a,42bの塗布においても、図2の電子装置100におけるシール材41a,41bの塗布と同様に、環状に塗布されるシール材42a,42bの塗布の終了点近くにおいて、該シール材42a,42bがX字状に交わる重なり部LCが構成されている。
【0040】
図3の電子装置101においては、最初にシール材42aを、三叉路となっている溝30uの交点の白丸で示した開始点から、一点鎖線で示した経路を通って、白三角で示した終了点まで塗布する。次に、シール材42bを、黒丸で示した開始点から、白丸で示したシール材42aの開始点の上を通る二点鎖線で示した経路を通り、黒三角で示した終了点まで塗布する。上記シール材42a,42bの塗布は、それぞれ、下ケース30に設けられた溝30uとハウジング21に設けられた溝21uに沿って行われ、シール材42aとシール材42bの塗布の開始点近くにおいてT字状に交わる重なり部LDができるように塗布されており、シール材42aとシール材42bの塗布の終了点近くにおいて、X字状に交わる重なり部LCができるように塗布されている。
【0041】
図3(b)に示すように、コネクタ20の周囲は正面から見ると略台形になっており、ハウジング21は、左斜面と右斜面、およびそれらを連結する上面と下面から構成されている。上記したようにシール材の塗布を2回に分けて行う理由は、ハウジング21の斜面を下側から上側へ塗布する必要があるためで、逆に上側から下側へ塗布するとシール材が斜面に沿って滑り落ち、シール材の塗布形状が不安定になるためである。従って、ハウジング21の左斜面と右斜面のそれぞれにおいて下側から上側へシール材を塗布するには、上記したように2回に分けたシール材の塗布が必要で、この場合には図3(c),(d)に示すように、開始点近くでT字状に交わる重なり部LDと終了点近くでX字状に交わる重なり部LCが形成される。
【0042】
図4〜図8は、図1と図2に示した電子装置100について、その製造方法を示した製造工程別の上面図である。
【0043】
図4は、最初に行うシール材41cの塗布で、下ケース30におけるコネクタ用開口部60の周りの溝30t内への塗布を示す図である。図4(a)は、白丸で示した塗布の開始点、太い破線で示した塗布の経路、および白三角で示した塗布の終了点を示す図であり、図4(b)は、塗布後のシール材41cの状態を示す図である。
【0044】
図5は、次に行う回路基板10の組み付けを示す図で、図4(b)のシール材41cが塗布された下ケース30に対して、コネクタ20が実装された回路基板10を組み付ける。図5(a)は、下ケース30への回路基板10の組み付け後の状態を示した上面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるE−E断面でのコネクタ20の下部の状態を拡大して示した図である。
【0045】
図5(a)に示すように、シール材41cは、下ケース30へ回路基板10を組み付けた状態で、塗布の開始点近くの端部と終了点近くの端部が回路基板10の下から露出するように塗布されている。図5(b)に示すように、コネクタ20の下に位置する下ケース30の溝30t内に塗布されたシール材41cは、下ケース30へ回路基板10を組み付けることによって、ハウジング21に形成された凸部21aによって押し付けられ、確実なシール性が得られるようになっている。
【0046】
図6は、次に行うシール材41aの塗布(第1塗布)を示す図である。図6(a)は、白丸で示した塗布の開始点、太い一点鎖線で示した塗布の経路、および白三角で示した塗布の終了点を示す図であり、図6(b)は、塗布後のシール材41aの状態を示す図である。
【0047】
図6に示す第1塗布は、下ケース30の周縁部に形成されている溝30tの白丸で示した所定位置を塗布の開始点とし、回路基板10の下から露出する先に塗布されたシール材41cの端部と連結する。第1塗布は、さらにコネクタ20のハウジング21の側面から上面へ至る表面に形成された所定幅の溝21tの経路を通って、ハウジング21の上面中央における溝21tの交わり部21txを通り過ぎ、白三角で示した所定位置を塗布の終了点とする。
【0048】
図7は、次に行うシール材41bの塗布(第2塗布)を示す図である。図7(a)は、黒丸で示した塗布の開始点、太い二点鎖線で示した塗布の経路、および黒三角で示した塗布の終了点を示す図であり、図7(b)は、塗布後のシール材41bの状態を示す図である。
【0049】
図7に示す第2塗布は、下ケース30の溝30tに先に塗布されたシール材41aの端部と重なる黒丸で示した所定位置を塗布の開始点とし、シール材41a,41bが同方向に所定の長さだけ積層した重なり部LAを形成するようにして、シール材41aの第1塗布とは逆向きに、下ケース30の周縁部に形成されている溝30tに沿って塗布していく。第2塗布は、図7(a)の左下で、回路基板10の下から露出する先に塗布されたシール材41cの端部と連結する。さらに、第2塗布は、コネクタ20のハウジング21における第1塗布とは逆の側面から上面へ至る表面に形成された所定幅の溝21tの経路を通って、ハウジング21の上面中央で溝21tの交わり部21txに先に塗布されているシール材41aとX字状に交わる重なり部LCを形成し、交わり部21txを過ぎた黒三角で示した所定位置を塗布の終了点とする。
【0050】
図8は、次に行う上ケース50の組み付けを示す図で、図7(b)のシール材41a,41bが塗布された下ケース30およびハウジング21に対して、上ケース50を組み付ける。図8(a)は、上ケース50を下ケース30へ組み付けた後の状態を示した上面図である。また、図8(b)は、図8(a)におけるF−F断面の状態を拡大して示した図であり、図8(c)は、図8(a)におけるG−G断面でのコネクタ20の上部の状態を拡大して示した図である。
【0051】
図8(b)と図8(c)に示すように、下ケース30の溝30t内およびハウジング21の溝21t内に塗布されたシール材41a,41bは、下ケース30へ上ケース50を組み付けることによって、上ケース50に形成された凸部50aによって押し付けられ、確実なシール性が得られるようになっている。
【0052】
以上で、図1と図2に示した電子装置100の製造が完了する。尚、図3に示した電子装置101についても、図4〜図8に示した製造工程で同様に製造できることは言うまでもない。
【0053】
以上のようにして、図1〜図8で例示した電子装置100,101は、どちらも、コネクタ20が実装された回路基板10を上ケース50と下ケース30で構成される筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材41a,41bによって封止されてなる電子装置である。また、上記電子装置100,101における環状に塗布されたシール材41a,41bは、塗布の終了点の近くにおいて、該シール材41a,41bがX字状に交わる重なり(ラップ)部LCが構成されている。
【0054】
尚、図1〜図8の例では、2回に分けた塗布でコネクタ20のハウジング21の左斜面と右斜面をそれぞれ下側から上側へ塗布し、シール材41a,41bの塗布形状を安定化する必要性から、塗布の終了点近くにおいてX字状に交わる重なり(ラップ)部LCが構成されている。しかしながら、シール材を塗布するノズルを走査しながら塗布するのではなく、例えばノズルの位置を固定して下ケース30を走査しながらシール材を塗布していく場合には、ハウジング21の左斜面と右斜面をそれぞれ下側から上側へ塗布するといった制限はなくなる。従って、図1〜図8の例とは逆向きにシール材を塗布して、塗布の開始点近くにおいてX字状に交わる重なり(ラップ)部を構成するようにしてもよい。また、この場合には塗布を2回に分ける必要もないため、1回の塗布でシール材を環状に形成し、塗布の開始点と終了点の近くでX字状に交わる重なり(ラップ)部が構成されるようにしてもよい。
【0055】
さらに、図1〜図8の例では、下ケース30とハウジング21の溝30t,21t内にシール材41a,41bを塗布していた。しかしながら、シール材の塗布位置はノズルの走査で制御できるため、シール材のはみ出し等が問題とならない場合には、下ケース30やハウジング21に溝を形成せず、平坦な表面にシール材を環状に塗布して、該シール材がX字状に交わる重なり部を構成するようにしてもよい。
【0056】
以上のように、本発明に係る電子装置においては、環状に塗布されたシール材の塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、該シール材がX字状に交わる重なり部が構成されていればよい。
【0057】
また、図1〜図8の電子装置100,101の例では、ハウジング21の上面において、2回に分けたシール材41a,41bの塗布の終了点近くにおけるX字状の重なり(ラップ)部LCが構成されていた。しかしながら、シール材41a,41bの塗布の開始点近くにおいて下ケース30に形成される電子装置100の同方向に積層した重なり部LAおよび電子装置101のT字状の重なり部LDについても、下ケース30の周縁部における余裕のある位置において、X字状の重なり部とすることがより好ましい。
【0058】
重なり部が形成されるシール材の塗布の開始点や終了点においては、一般的に塗布装置の吐出量が安定せず、開始点では塗布量不足となり易く、終了点では塗布停止後の残量で糸状に尾を引く不具合が発生し易い。図12に示した電子装置90のように、従来の電子装置における環状に塗布されたシール材では、同方向に積層した重なり部やT字状に交わる重なり部が用いられてきた。従って、例えば従来のT字状に交わる重なり部において、シール材の塗布量が少ない場合には、シール材同士の接触面積を確保できず、シール性が保証できなくなる。また、重なり部における面積あたりのシール材の量は、他の部位に較べ、2倍となる。このため、従来の同方向に積層した重なり部において、シール材同士の十分な接触面積を確保するためにラップ距離を大きく設定した場合には、重なり部の周りでシール材が筐体の外部へはみ出したり、筐体の内部の意図しない部位へ付着したりする不具合が発生し易くなる。
【0059】
これに対して、図1〜図8の電子装置100,101における環状に塗布されたシール材41a,41bでは、ハウジング21の上面において、X字状に交わる重なり部LCが用いられている。X字状に交わる重なり部は、従来のT字状に交わる重なり部と異なり、塗布量の不安定な塗布の開始点または終了点を外して、安定した塗布量が得られる部分で線状に塗布しているシール材LCを交差させ、封止のために環状にするものである。このように塗布量が安定しているX字状に交わる重なり部LCを採用することで、従来のT字状に交わる重なり部に較べて、より確実なシール性を確保することができる。また、従来の同方向に積層した重なり部と比較しても、上記電子装置100,101でハウジング21の上面において用いられているX字状に交わる重なり部LCは、重なり部LCでの重なり面積が小さいため、より少ないシール材の量で、同等のシール性を確保することができる。このため、従来の同方向に積層した重なり部と比較して、余分なシール材によるはみ出し不具合も抑制することができる。
【0060】
以上のようにして、図1〜図8に例示した電子装置100,101は、コネクタ20が実装された回路基板10を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材41a,41bによって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置となっている。
【0061】
また、図1〜図8に例示した電子装置100,101は、連結する2つの環状に塗布されたシール材41a〜41cで構成されている。一つの環状部は、図2と図3で詳述した第1塗布と第2塗布による、下ケース30の周縁部の溝30tとハウジング21の溝21tに沿って形成されたシール材41a,41bによる環状部である。また、もう一つの環状部は、図4で最初に塗布したシール材41cと上記第1塗布と第2塗布によりハウジング21の溝21tに沿って形成されたシール材41a,41bによる、コネクタ20のハウジング21の周りにおける環状部である。従って、言い換えれば、図1〜図8に例示した電子装置100,101は、環状に塗布されたシール材41a〜41cが、上ケース50の周縁部と下ケース30の周縁部の対向部位間、コネクタ用開口部60を構成する上ケース50の周縁部とハウジング21の表面の対向部位間、およびコネクタ用開口部60を構成する下ケース30の周縁部とハウジング21の表面の対向部位間に配置された、連結する2つの環状に塗布されたシール材であり、シール材41a,41bがX字状に交わる重なり部LCが、上ケース50の周縁部とハウジング21の上面の対向部位間に配置された構成となっている。
【0062】
上記構成によれば、コネクタ20のハウジング21の一部を筐体の外部に露出させつつ、ハウジング21の残りの部分と回路基板10を筐体の内部に収容する当該電子装置100,101を、コネクタ20のハウジング21の周囲で環状に塗布されたシール材41a〜41c、およびそれに連結する上ケース50の周縁部と下ケース30の周縁部で環状に塗布されたシール材41a,41bによって、他のシール手段を用いることなく、完全に封止することができる。
【0063】
また、上記構成においては、シール材41a,41bがX字状に交わる重なり部LCを、平坦で比較的広い面積が確保されているコネクタ20のハウジング21の上面に配置している。このため、重なり部LCにおけるシール材41a,41bの交わり角度の設定自由度や、X字状に交わる重なり部LCの中心からの塗布の開始点や終了点の突き出し長さの設定自由度が高く、最適設計が可能となる。
【0064】
しかしながらこれに限らず、例えば上ケース50に設けられた開口部とコネクタ20のハウジング21の周りをOリングで封止し、上ケース50と下ケース30の周縁部だけを、X字状に交わる重なり部を有したシール材で封止する構成とすることも可能である。
【0065】
また、上記構成の場合には、図2と図3で詳述したように、連結する2つの環状に塗布されたシール材における一方の環状に塗布されたシール材が、上ケース50の周縁部と下ケース30の周縁部の対向部位間、およびコネクタ用開口部60を構成する上ケース50の周縁部とハウジング21の表面の対向部位間に配置されたシール材41a,41bであり、前記一方の環状に塗布されたシール材41a,41bが、下ケース30の周縁部における所定位置を塗布の開始点とし、下ケース30の周縁部とハウジング21の一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部LCを過ぎた所定位置を終了点とする第1塗布と、下ケース30の周縁部における別の所定位置を塗布の開始点とし、前記第1塗布の開始点近くで該第1塗布のシール材41aと重なり、下ケース30の周縁部とハウジング21のもう一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部LCを過ぎた別の所定位置を終了点とする第2塗布とによって、環状に配置されてなる構成であってよい。
【0066】
該構成では、前述した連結する2つの環状に塗布されたシール材41a〜41cのうち、上記一方の環状のシール材41a,41bについての塗布が、第1塗布と第2塗布の2回に分けて行われる。また、第1塗布と第2塗布は、いずれも、下ケース30の周縁部を塗布の開始点とし、コネクタ20のハウジング21の側面から上面へ至る経路を通って、重なり部LCを過ぎた位置で終了する。これによれば、第1塗布と第2塗布は、いずれも、ハウジング21の側面を下側から上側へ塗布することになり、ハウジング21の側面を上側から下側へ塗布した場合に発生し易いシール材の側面に沿った滑り落ちを抑制することができる。
【0067】
しかしながらこれに限らず、前述したように、シール材を塗布するノズルを走査しながら塗布するのではなく、例えばノズルの位置を固定して下ケース30を走査しながらシール材を塗布していく場合には、ハウジング21の側面を下側から上側へ塗布するといった上記の制限はなくなる。
【0068】
次に、本願発明の電子装置におけるシール材のX字状の重なり部について、好ましい形態の詳細を説明する。
【0069】
図9は、図1〜図3に示した溝21tの交わり部21txについて、より好ましい形態を示した図である。図9(a)は、溝Tの交わり部Txの周りを示した上面図であり、図9(b)は、図9(a)の溝T内へシール材Sa,Sbを塗布した状態を示した図である。また、図9(c)は、上ケースの組み付けによって、図9(b)のシール材Sa,Sbが押し付けられた状態を示した図である。
【0070】
図9(a)は、シール材の塗布をガイドする所定幅Wtの溝Tと、シール材の重なり部を配置する位置において該溝TがX字状に交わる、交わり部Txを示している。該溝Tの交わり部Txにおいては、側壁が点線で示した所定幅Wtの単純な交わり位置より外に遠ざけられて、交わり溝拡大部Txaが形成されている。
【0071】
図9(b)に示すシール材Sa,SbのX字状の重なり部Lxにおいては、面積当たりのシール材の塗布量が、他の部位に較べて2倍となる。上記交わり溝拡大部Txaは、下ケースの周縁部およびハウジングの表面に形成された溝にシール材が塗布された状態で図9(c)に示すように上ケースが組み付けられた時、面積当たり2倍の塗布量となっている重なり部Lxのシール材の受け皿として機能し、該シール材の意図しない部位へのはみ出しを防止することができる。
【0072】
図10は、シール材Sa,SbのX字状の重なり部Lx1の周りを示した上面図で、シール材Sa,Sbの塗布時における線幅Wsa,Wsbと重なり部Lx1の中心からの突き出し長さDsa,Dsbを示した図である。
【0073】
本発明に係る電子装置においては、図10に示すシール材Sa,Sbの塗布時において、重なり部Lx1の近くにおける塗布の開始点または終了点(シール材Sa,Sbの端部)が、重なり部Lx1の中心からシール材Sa,Sbの線幅Wsa,Wsbより遠い位置に設定されてなることが好ましい。すなわち、図10に示すシール材Sa,Sbの塗布時における突き出し長さDsa,Dsbが、線幅Wsa,Wsbより長くなるように設定する。これによれば、重なり部Lx1の中心から線幅Wsa,Wsbより近い位置に塗布の開始点または終了点がある場合に較べて、確実なシール性の確保が保証されるようになる。
【0074】
図11は、シール材Sa,SbのX字状の重なり部Lx2の周りを示した上面図で、シール材Sa,Sbの塗布時における重なり部Lx2での鋭角側の交わり角度Kxを示した図である。
【0075】
本発明に係る電子装置においては、図11に示すシール材Sa,Sbの塗布時において、重なり部Lx2におけるシール材Sa,Sbの鋭角側の交わり角度Kxが、20度以上に設定されてなることが好ましい。これによれば、上記交わり角度Kxがより小さな角度に設定されている場合に較べて、X字状の重なり部Lx2を構成しているシール材Sa,Sbの量が必要以上に多くならない。このため、シール材Sa,Sbの意図しない部位へのはみ出しを、より確実に抑制できるようになる。
【0076】
以上のようにして、上記した本発明に係る電子装置は、コネクタが実装された回路基板を筐体の内部に収容し、該筐体の内部の空間がシール材によって封止されてなる電子装置であって、良好なシール性を確保すると共に、シール材のはみ出し不具合を抑制可能な電子装置とすることができる。
【0077】
従って、上記電子装置は、過酷な環境下で使用され、確実な防水性が必要とされる、車載用として好適である。
【符号の説明】
【0078】
90,100,101 電子装置
10 回路基板
20 コネクタ
21 ハウジング
21s,21t,21u 溝
21tx 交わり部
30 下ケース
30s,30t,30u 溝
50 上ケース
40a,40b,41a〜41c,42a,42b,Sa,Sb
LA〜LD,Lx,Lx1,Lx2 重なり部
T 溝
Tx 交わり部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタが実装された回路基板に対して、前記コネクタの実装面側に配置される上ケースと、前記コネクタの実装面の裏面側に配置される下ケースを有しており、
前記上ケースと下ケースを組み付けた状態で構成される筐体のコネクタ用開口部を介して、前記コネクタのハウジングの一部を前記筐体の外部に露出させつつ、前記ハウジングの残りの部分と前記回路基板を前記筐体の内部に収容し、
前記筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材によって封止されてなる電子装置であって、
前記環状に塗布されたシール材の塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、該シール材がX字状に交わる重なり部が構成されてなることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記環状に塗布されたシール材が、
前記上ケースの周縁部と前記下ケースの周縁部の対向部位間、前記コネクタ用開口部を構成する上ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間、および前記コネクタ用開口部を構成する下ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間に配置された、連結する2つの環状に塗布されたシール材であり、
前記重なり部が、前記上ケースの周縁部と前記ハウジングの上面の対向部位間に配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記連結する2つの環状に塗布されたシール材における一方の環状に塗布されたシール材が、
前記上ケースの周縁部と前記下ケースの周縁部の対向部位間、および前記コネクタ用開口部を構成する上ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間に配置されたシール材であり、
前記一方の環状に塗布されたシール材が、
前記下ケースの周縁部における所定位置を塗布の開始点とし、下ケースの周縁部と前記ハウジングの一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部を過ぎた所定位置を終了点とする第1塗布と、前記下ケースの周縁部における別の所定位置を塗布の開始点とし、前記第1塗布の開始点近くで該第1塗布のシール材と重なり、下ケースの周縁部と前記ハウジングのもう一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部を過ぎた別の所定位置を終了点とする第2塗布とによって、環状に配置されてなることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記下ケースの周縁部および前記ハウジングの表面に、
前記シール材の塗布をガイドする所定幅の溝が形成されてなることを特徴とする請求項2または3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記シール材の重なり部を配置する位置において、
前記所定幅の溝がX字状に交わり、
前記溝の交わり部における側壁が、前記所定幅の単純な交わり位置より外に拡げられて、交わり溝拡大部が形成されてなることを特徴とする請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記シール材の塗布時において、
前記重なり部の近くにおける塗布の開始点または終了点が、重なり部の中心から前記シール材の線幅より遠い位置に設定されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記シール材の塗布時において、
前記重なり部におけるシール材の交わり角度の鋭角側が、20度以上に設定されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項8】
前記電子装置が、車載用であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項1】
コネクタが実装された回路基板に対して、前記コネクタの実装面側に配置される上ケースと、前記コネクタの実装面の裏面側に配置される下ケースを有しており、
前記上ケースと下ケースを組み付けた状態で構成される筐体のコネクタ用開口部を介して、前記コネクタのハウジングの一部を前記筐体の外部に露出させつつ、前記ハウジングの残りの部分と前記回路基板を前記筐体の内部に収容し、
前記筐体の内部の空間が、環状に塗布されたシール材によって封止されてなる電子装置であって、
前記環状に塗布されたシール材の塗布の開始点または終了点の少なくとも一方の近くにおいて、該シール材がX字状に交わる重なり部が構成されてなることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記環状に塗布されたシール材が、
前記上ケースの周縁部と前記下ケースの周縁部の対向部位間、前記コネクタ用開口部を構成する上ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間、および前記コネクタ用開口部を構成する下ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間に配置された、連結する2つの環状に塗布されたシール材であり、
前記重なり部が、前記上ケースの周縁部と前記ハウジングの上面の対向部位間に配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記連結する2つの環状に塗布されたシール材における一方の環状に塗布されたシール材が、
前記上ケースの周縁部と前記下ケースの周縁部の対向部位間、および前記コネクタ用開口部を構成する上ケースの周縁部と前記ハウジングの表面の対向部位間に配置されたシール材であり、
前記一方の環状に塗布されたシール材が、
前記下ケースの周縁部における所定位置を塗布の開始点とし、下ケースの周縁部と前記ハウジングの一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部を過ぎた所定位置を終了点とする第1塗布と、前記下ケースの周縁部における別の所定位置を塗布の開始点とし、前記第1塗布の開始点近くで該第1塗布のシール材と重なり、下ケースの周縁部と前記ハウジングのもう一方の側面から上面へ至る経路を通って、前記重なり部を過ぎた別の所定位置を終了点とする第2塗布とによって、環状に配置されてなることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記下ケースの周縁部および前記ハウジングの表面に、
前記シール材の塗布をガイドする所定幅の溝が形成されてなることを特徴とする請求項2または3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記シール材の重なり部を配置する位置において、
前記所定幅の溝がX字状に交わり、
前記溝の交わり部における側壁が、前記所定幅の単純な交わり位置より外に拡げられて、交わり溝拡大部が形成されてなることを特徴とする請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記シール材の塗布時において、
前記重なり部の近くにおける塗布の開始点または終了点が、重なり部の中心から前記シール材の線幅より遠い位置に設定されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記シール材の塗布時において、
前記重なり部におけるシール材の交わり角度の鋭角側が、20度以上に設定されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項8】
前記電子装置が、車載用であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−89878(P2013−89878A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231059(P2011−231059)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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