説明

電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システム

【課題】 これまで,テレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽など,音源を保存せず,利用者もしくは視聴者が聞き流している状況下にある音源にアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの音源に対する様々な情報を埋め込み配信することはできなかった.
【解決手段】 本発明では、テレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽などの音源に対して電子透かし情報として正位相と逆位相の電子透かし情報音源を生成し,ステレオ音楽の音源の左右に各々正位相と逆位相の電子透かし情報音源を埋め込むことで,電子透かし情報音源を聞こえづらくしつつ音楽などの音源へ埋め込み配信する.また,配信された電子透かし情報が埋め込まれた音源からの電子透かし情報の認識および表示は,テレビや携帯帯電話など身近にあるハードウェアを僅かに改修するのみで実現する手段を提案する.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオ音源の中に電子透かし情報を組み込むことで、当該ステレオ音源に関するアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社など様々な情報を,利用者が簡単に取り出せる仕組みを構築するものである.
【背景技術】
【0002】
従来、音源の中にアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの音源に対する様々な情報を埋め込み配信する場合,専用の音楽フォーマットを利用して行われていた.そのフォーマットは,一般的にヘッダーと呼ばれるデータの先頭部分に音源情報とは独立して音源のアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの音源に対する様々な情報を埋め込む部分が存在する.
【0003】
そのため音源の利用者が音源に埋め込まれたアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの音源に対する様々な情報を抽出するためには,当該音源情報を保存すると共に,保存した音源情報からヘッダーに埋め込まれた情報を抽出する専用のハードウェアやソフトウェアを備えた装置を用いなければならなかった.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえ,テレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽など,音源を保存せず,利用者もしくは視聴者が聞き流している状況下にある音源にアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの音源に対する様々な情報を埋め込み配信することはできなかった.
【0005】
そのため利用者もしくは視聴者は,テレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽など,音源を保存せず聞き流している状況下にある音源に対して,好感を持つ楽曲の音源であっても,その楽曲のアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの情報を得ることは困難であった.
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムに係わる第1の手段として、
電子透かし情報を音源へエンコードする手段であって,
電子透かし情報を入力する電子透かし情報入力手段と,
入力された電子透かし情報を音源へと変換し音源透かし情報を生成すると共に,生成した音源透かし情報と逆位相の音源である逆位相透かし情報を生成する音源エンコーダ手段を用いることで,
電子透かし情報を音源へ変換した正位相透かし音源を生成すると共に,生成した正位相透かし音源と逆の位相を持つ逆位相透かし音源を同時にセットで生成する電子透かし音源生成手段を採用する。
【0007】
電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムに係わる第2の手段として、
第1の手段として採用した電子透かし音源生成手段にて生成した電子透かし情報の音源およびその逆位相の音源を,
テレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽のステレオ音源の左右の音源へ,
ステレオ音源の右音源に正位相透かし音源を埋め込んだ場合にはステレオ音源の左音源に逆位相透かし音源を埋め込み,
ステレオ音源の右音源に逆位相透かし音源を埋め込んだ場合にはステレオ音源の左音源に正位相透かし音源を埋め込み,
ステレオ音源の左右を同時に聞けば埋め込まれた電子透かし情報の音源が人間の耳にとって聞こえづらくなるステレオ音源を生成する電子透かし音源埋込手段を採用する。
【0008】
電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムに係わる第3の手段として、
音源入力手段を有し,
音源入力手段から第2の手段として採用した電子透かし音源埋込手段にて,第1の手段として採用した電子透かし音源生成手段を埋め込まれたステレオ音源の右音源もしくは左音源を入力し,
入力した右音源もしくは左音源から電子透かし音源の正位相音源もしくは逆位相音源を識別する電子透かし音源識別手段を有し,
電子透かし音源識別手段で識別した電子透かし音源から電子透かし情報に埋め込まれた情報をデコードする電子透かし音源解読手段を採用する.
【0009】
電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムに係わる第3の手段として、
第1の手段として採用した電子透かし音源生成手段と,
第2の手段として採用した電子透かし音源埋込手段と,
第3の手段として採用した電子透かし音源解読手段を用いることで,
テレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽のステレオ音源に,アーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの音源に対する様々な情報を埋め込み配信することを可能とする電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムを採用する.
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1の手段である電子透かし音源生成手段を実現するためには、文字情報の各文字に関してそれを表す音の周波数,音の長さや音調などを個々に決定し,その個々の文字を組み合わせることで実現可能であり,技術的には既存のモデムにおける通信音と基本的に同じものであり課題はない.
【0011】
また本発明では,電子透かし音源として正位相の音源と,この正位相音源と相反する逆位相の音源も同時にセットで生成するが,逆位相の音源は正位相を逆転した音源を生成するのみなので,技術的課題はない.
【0012】
本発明の第2の手段である電子透かし音源埋込手段を実現するためには、通常の楽曲音楽のステレオ音源の左右の音源に,本発明の第1の手段である電子透かし音源生成手段で生成した正位相及び逆位相の電子透かし音源を,ステレオ音源の右音源に正位相透かし音源を埋め込んだ場合にはステレオ音源の左音源に逆位相透かし音源を,ステレオ音源の右音源に逆位相透かし音源を埋め込んだ場合にはステレオ音源の左音源に正位相透かし音源を,同タイミングとなるように埋め込めばよいのみなので,技術的な課題はない.
【0013】
本発明の第3の手段である電子透かし音源解読手段を実現するためには、音源の入力手段と,入力された音源の周波数,音の長さや音調などを識別する機能があれば電子透かし情報部分の音源を抽出する手段,抽出した電子透かし情報部分の音源をデコードする手段は,第1の手段で採用した電子透かし音源生成手段が用いた文字情報の各文字に関してそれを表す音の周波数,音の長さや音調などを個々に決定した対応情報を活用すれば容易に実現可能なことであり技術的な課題はない.
【0014】
さらに,本発明の第3の手段である電子透かし音源解読手段で解読した電子透かし情報に含まれる情報を可視化し利用者もしくは視聴者に伝えるためには,前記の通り音源の入力手段,電子透かし情報部分の音源を抽出する手段,抽出した電子透かし情報部分の音源をデコードする手段と共に,解読した電子透かし情報に含まれる情報を表示する手段を有するハードウェアを実現すればじつげんかのうである.
【0015】
実施例で詳しく示すが,例えば現在の携帯電話などは,音源の入力手段も備え電子透かし情報部分の音源を抽出する手段,抽出した電子透かし情報部分の音源をデコードする手段を実現するための演算装置も備え,更には情報を表示する手段も備え,大半の人が所有するハードウェアであるので,本発明の第3の手段を実現するハードウェアとしてはうってつけである.
【実施例】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係わる電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムの実施例を説明する。
【0017】
図1は、本発明の電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムの概略システムの構成を示した図である.
【0018】
まず,電子透かし情報生成手段1は,楽曲音源に埋め込みたい電子透かし情報5を入力し,入力された情報を音源へと変換する処理を行い,電子透かし情報正位相音源61と電子透かし情報逆位相音源62を生成する.
【0019】
電子透かし情報埋込手段2では,ステレオ楽曲音源63と共に電子透かし情報生成手段1生成された電子透かし情報正位相音源61と電子透かし情報逆位相音源62を入力し,ステレオ楽曲音源63中に電子透かし情報正位相音源61と電子透かし情報逆位相音源62を埋め込む処理を行い,電子透かし情報埋込楽曲音源64を生成する.このとき,ステレオ楽曲音源63の右音源に電子透かし情報正位相音源61を埋め込んだ場合は左音源に電子透かし情報逆位相音源62を埋め込み,ステレオ楽曲音源63の右音源に電子透かし情報逆位相音源62を埋め込んだ場合は左音源に電子透かし情報正位相音源61を埋め込むようにする.
【0020】
電子透かし情報正位相音源61と電子透かし情報逆位相音源62が埋め込まれた電子透かし情報埋込楽曲音源64は,ステレオ音源出力手段4により右音源41と左音源42と独立に音として出力される.この出力は単なる左右独立に音を出力するのみである.すなわちステレオ音源出力手段4は専用のハードウェアなどを開発することなく,通常のオーディオ用ステレオや,ステレオ音声出力が可能なテレビ,ステレオ音声出力が可能なラジオなど,既存のステレオ音声出力が可能な機器で実現可能である.
【0021】
ステレオ音源出力手段4から出力された右音源41と左音源42には,各々電子透かし情報正位相音源61と電子透かし情報逆位相音源62が埋め込まれているため,各々の音源をそのまま視聴すると,電子透かし情報音源が雑音のように聞こえることになる.しかし出力される右音源41と左音源42を同時に,同じ強度となるように視聴すれば,各々の音源に含まれる電子透かし情報音源は,正位相と逆位相になっているため,ステレオ音源の位相効果により,ほとんど聞こえないようになる.
【0022】
電子透かし情報解読手段3では,ステレオ音源出力手段4から出力された右音源41と左音源42を同じ強度で集音するのではなく,左右音源のどちらか一方の音源が強くなるように集音する.これにより
【0021】
に示すステレオ音源の位相効果による電子透かし情報音源が打ち消される効果は薄くなるため,右音源41もしくは左音源42から電子透かし情報正位相音源61もしくは電子透かし情報逆位相音源62を認識しやすくなる.
【0023】
電子透かし情報解読手段3では,まず図2に示すように音源入力手段31で集音した右音源41もしくは左音源42から電子透かし情報正位相音源61もしくは電子透かし情報逆位相音源62を識別し切り出す処理を,電子透かし情報識別手段33にて行う.この処理は電子透かし情報がどのような周波数,音の長さや音調などで表現されているかを知っていれば,図3に示す音源のスペクトルのパターン照合で容易に抽出可能である.
【0024】
このとき,上記の通り電子透かし情報がどのような周波数,音の長さや音調などで表現されているかという情報が電子透かし情報解読手段3内部で保持する必要があるが,この情報は電子透かし情報音源データベース34として電子透かし情報解読手段3中に保持すればよい.この情報はデータ容量的には多く見積もっても100Kバイト以下で実現可能であり,この情報を持つことが電子透かし情報解読手段3のハードウェア設計に影響を及ぼす可能性は,現状の半導体技術から考えて極めて薄いといえる.
【0025】
電子透かし情報識別手段33にて抽出された抽出電子透かし情報36は,電子透かし情報表示手段36にて電子透かし情報37として表示され,利用者もしくは視聴者に現在聞いている楽曲音源のアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの音源に対する様々な情報を得ることができる.
【0026】
ここで電子透かし情報解読手段3を構成するハードウェアについて具体例を示す.まず,電子透かし情報解読手段3を既存の携帯電話を用いて実現する方法について概略を説明する.携帯電話の場合,マイクロフォンは既に搭載されているためこれを音源入力手段31として代替え利用可能である.電子透かし情報識別手段33には,図3に示す音源のスペクトルのパターン照合のため,演算装置と記憶装置が必要になるが,これは通常の携帯電話の場合インターネット接続機能を有しており,この処理用の演算装置と記憶装置で代替え利用可能である.電子透かし情報音源データベース34は100Kバイト以下の記憶装置があればよく,現在の半導体技術から考えると,既存の携帯電話用LSIチップ中に埋め込むことは技術的に問題ない.電子透かし情報表示手段36は携帯電話にあるディスプレイを利用できる.
【0027】
以上,携帯電話により電子透かし情報解読手段3を実現することは技術的には極めて容易である.仮に携帯電話により電子透かし情報解読手段3を実現し,テレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽に,電子透かし情報としてアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などを挿入した場合,利用者もしくは視聴者が音楽のアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの音源に対する情報を知りたい場合,ステレオ音源出力手段4から出力される音楽の左右どちらか一方の音に携帯電話を近づけると,携帯電話のディスプレイに,当該音楽のアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの情報が表示されるようになる.
【0028】
また,テレビにより電子透かし情報解読手段3を実現する方法について概略を説明する.テレビの場合,音声データはテレビ内で再生されているので,再生前の音スペクトルは集音しなくても既に存在しているため音源入力手段31は必要ない.電子透かし情報識別手段33には,図3に示す音源のスペクトルのパターン照合のため,演算装置と記憶装置が必要になるが,リモコン制御などに用いている演算装置と記憶装置で代替え利用可能である.電子透かし情報音源データベース34は100Kバイト以下の記憶装置があればよく,現在の半導体技術から考えると,既存のLSIチップ中に埋め込むことは技術的に問題ない.電子透かし情報表示手段36はテレビ画面にチャンネルなどを表示させるスーパーインポーズ機能を改修すれば容易にテレビ画面に表示されることは可能である.
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように,本発明の電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムを用いれば、利用者や視聴者が聞き流している状況となる場合が多いテレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽に対してもアーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの情報を提供できることが容易に可能となる.
【0030】
この技術を応用すれば,電子透かし情報に販売促進用の情報を埋め込むことも可能であるため,楽曲の販売促進やマーケティング活動に利用することも可能となる.
【0031】
更に,ここでは左右音源に対して,正位相および逆位相の電子透かし情報を音源化したものを楽曲などの音源へ埋め込むことを記載したが,5.1チャンネルのような多チャンネル化された音楽に対しても,位相関係のある2出力以上に,電子透かし音源を組み込めば適用可能である.
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】 本発明の電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムの概略システムの構成を示した図である.
【図2】 本発明の電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システムの電子透かし音源解読手段の詳細構成を示した図である.
【図3】 音源の音スペクトルの一例を示した図である.
【符号の説明】
【0033】
1 電子透かし音源生成手段
2 電子透かし音源埋込手段
3 電子透かし音源解読手段
31 音源入力手段
32 入力音源
33 電子透かし情報識別手段
34 電子透かし情報音源データベース
35 抽出電子透かし情報
36 電子透かし情報表示手段
37 電子透かし情報
4 テレオ音源出力手段
41 右音源
42 左音源
5 電子透かし情報
61 電子透かし情報正位相音源
62 電子透かし情報逆位相音源
63 ステレオ楽曲音源
64 電子透かし情報埋込楽曲音源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子透かし情報を音源へエンコードする手段であって,
電子透かし情報を入力する電子透かし情報入力手段と,
入力された電子透かし情報を音源へと変換し音源透かし情報を生成すると共に,生成した音源透かし情報と逆位相の音源である逆位相透かし情報を生成する音源エンコーダ手段を用いることで,
電子透かし情報を音源へ変換した正位相透かし音源を生成すると共に,生成した正位相透かし音源と逆の位相を持つ逆位相透かし音源を同時にセットで生成する電子透かし音源生成手段.
【請求項2】
請求項1に示す電子透かし音源生成手段にて生成した電子透かし情報の音源およびその逆位相の音源を,
テレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽のステレオ音源の左右の音源へ,
ステレオ音源の右音源に正位相透かし音源を埋め込んだ場合にはステレオ音源の左音源に逆位相透かし音源を埋め込み,
ステレオ音源の右音源に逆位相透かし音源を埋め込んだ場合にはステレオ音源の左音源に正位相透かし音源を埋め込み,
ステレオ音源の左右を同時に聞けば埋め込まれた電子透かし情報の音源が人間の耳にとって聞こえづらくなるステレオ音源を生成する電子透かし音源埋込手段.
【請求項3】
音源入力手段を有し,
音源入力手段から請求項2に示す電子透かし音源埋込手段にて,請求項1に示す電子透かし音源生成手段を埋め込まれたステレオ音源の右音源もしくは左音源を入力し,
入力した右音源もしくは左音源から電子透かし音源の正位相音源もしくは逆位相音源を識別する電子透かし音源識別手段を有し,
電子透かし音源識別手段で識別した電子透かし音源から電子透かし情報に埋め込まれた情報をデコードする電子透かし音源解読手段.
【請求項4】
請求項1に示す電子透かし音源生成手段と,
請求項2に示す電子透かし音源埋込手段と,
請求項3に示す電子透かし音源解読手段を用いることで,
テレビ、ラジオ、有線、コンサートなどでかかっている音楽のステレオ音源に,アーティスト名や楽曲名,出版レコード会社などの音源に対する様々な情報を埋め込み配信することを可能とする電子透かし情報埋め込み型音楽情報配信システム.

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−11242(P2007−11242A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216460(P2005−216460)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(300076633)コグニティブリサーチラボ株式会社 (2)