説明

電子部品パッケージ、電子部品パッケージの製造方法、及び圧電デバイス

【課題】実装基板との接合強度が厳しい環境変化にも耐えられる電子部品パッケージを得
る。
【解決手段】電子部品パッケージ1は、電子部品を搭載可能な矩形板状のパッケージ本体
6と、パッケージ本体6の底部に形成された実装電極10と、を有し、実装電極10は、
パッケージ本体6の底面に形成された実装電極本体部10a、10bと、パッケージ本体
6の側面の直線部の少なくとも一部に、実装電極本体部10a、10bから延長して形成
された実装電極延長部10c、10dと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品パッケージ、電子部品パッケージの製造方法及び圧電デバイスに関
し、特に回路基板との接続強度を高めるように実装端子の構造の改善に好適なものである

【背景技術】
【0002】
圧電振動子、中でも表面実装型水晶振動子は小型であること、高精度、高安定な周波数
が容易に得られ、経年変化が小さいこと等のため、通信用機器から民生用機器の基準周波
数源として広く用いられている。近年、機器が小型化、軽量化されると共に表面実装型水
晶振動子のさらなる小型化への要求が強くなっている。
周知のように、表面実装型水晶振動子は、水晶板の両主面に、真空蒸着法、あるいはス
パッタリング法を用いて金属膜(励振電極)を形成し、パッケージ本体内に収容し、該パ
ッケージ本体の周縁部に蓋部材を載置し、シーム溶接等で気密封止して構成される。
水晶振動子が車載用機器に用いられる場合、実装基板との接続強度が特に重要となる。
この理由は、車載用機器では低温から高温までの厳しい温度環境にさらされ、圧電振動子
が収容されるパッケージの線膨張係数と、パッケージが実装される実装基板の線膨張係数
とに差があると、繰り返しの温度変化によりパッケージと実装基板とを接続する半田に歪
みが掛かり、半田の疲労破壊が生じる虞があるためである。更に、近年表面実装型水晶振
動子の形状が小型化され、パッケージの実装端子の面積も一段と小さくなっている。
【0003】
特許文献1には、実装端子と回路基板との接続強度を強化した表面実装型水晶振動子が
開示されている。
図8(a)は、特許文献1に記載された表面実装型水晶振動子の側面断面図、同図(b
)は底面図である。
この図に示す表面実装型水晶振動子70は、上部が開口した凹部を有する平面矩形状の
パッケージ本体71と、当該パッケージ本体71の中に収容される水晶振動素子75と、
パッケージ本体71の上部開口部に接合される蓋72とからなる。表面実装型水晶振動子
70は実装基板90の配線パターン91上に半田85を介して接続される。
図8(b)の底面図に示すように、パッケージ本体71の底面の対向辺に沿って形成さ
れた一対の端子電極82、83は、互いに対向する領域82a、83aと、一方の端子電
極が形成されず、対向していない領域82b、83bとを有している。これらの領域は、
パッケージ本体71の中心点に対して点対称に配置されている。また、パッケージ本体7
1の四隅にはキャスタレーションC1〜C4が形成され、キャスタレーションC1、C3
は夫々端子電極82、83と接続されている。
このようなパッケージ本体71を構成することにより、温度環境が変化し、パッケージ
本体71と実装基板90との熱膨張差により端子電極82、83に応力が生じても、一方
の端子電極が形成されない角領域82b、83bに向かって相互に応力を逃がすので、パ
ッケージ本体71の中心点で平面的に回転させるように応力が発生し、応力が緩和される
。その結果、半田クラック等の発生を飛躍的に抑制することができると記載されている。
また、特許文献2にはパッケージ裏面の四隅に4つの端子電極を形成し、各端子電極の
中央部に小さな凸部を形成したパッケージが開示されている。このパッケージを用いた圧
電振動子を回路基板上に搭載すると、端子電極と回路基板との間に間隙が得られ、十分な
量と厚みの半田がこの間隙に入るため、十分な接合強度が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−108923公報
【特許文献2】特開2006−186667公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたパッケージ本体71では、端子電極82、83
が夫々パッケージ本体の角部に形成した1つのキャスタレーションC1、C3を経由して
パッケージ内部に収容した圧電振動素子と導通するように構成されているため、端子電極
82、83とキャスタレーションC1、C3との接続部にクラックが発生すると、水晶振
動子が機能しない虞があるという問題があった。
また、実装端子が左右対称でないため、実装基板のランドパターンの共有化が難しいと
いう問題もあった。更に、実装端子が片側に寄っているので、実装基板への実装後の圧電
振動子の姿勢が悪くなる虞があり、クラックが生じ易くなるという問題もあった。
また、特許文献2の手法では、パッケージの端子電極面と回路基板のランド電極面との
間の半田量は多くなるものの、歪みが集中する箇所の半田量が必ずしも多くないという問
題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、電子部品パッケージの実装電極
と実装基板のランドパターンとの接続強度を高め、半田接合部の亀裂を防止する電子部品
パッケージ、その製造法と、それを用いた圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]電子部品を搭載可能な矩形板状のパッケージ本体と、該パッケージ本体の
底部に形成された実装電極と、を有する電子部品パッケージであって、前記実装電極は、
前記パッケージ本体の底面に形成された実装電極本体部と、前記パッケージ本体の側面の
直線部の少なくとも一部に、前記実装電極本体部から延長して形成された実装電極延長部
と、を有することを特徴とする電子部品パッケージである。
【0008】
パッケージ本体の底部に実装電極本体部と側面に実装電極本体部と連結した実装電極延
長部とを設けたことにより、実装電極は、従来のパッケージに設けられた引き下がりの面
積と実装電極延長部の面積との和の分だけ従来のパッケージのそれより大きくなり、電子
部品パッケージと実装基板との接合強度が強化されるという効果がある。
【0009】
[適用例2]少なくとも、前記パッケージ本体の角部にキャスタレーションを備え、前
記キャスタレーションには、前記実装電極延長部を形成しないことを特徴とする適用例1
に記載の電子部品パッケージである。
【0010】
実装電極本体部と実装電極延長部とからなる実装電極に加え、キャスタレーションも形
成するので、キャスタレーションに形成される半田フィレットにより、電子部品パッケー
ジと実装基板との接合強度が強化されるという効果がある。
【0011】
[適用例3]前記実装電極本体部が、段差部を有することを特徴とする適用例1又は2
に記載の電子部品パッケージである。
【0012】
実装電極本体部に段差部を形成するので、前記段差部の周りの半田量が多くなり、該半
田により電子部品パッケージと実装基板との接合強度が強化されるという効果がある。
【0013】
[適用例4]前記パッケージ本体のベース基板を構成するグリーンシートは引張強度試
験において平均伸度が50%未満、破断に至るまでの平均応力が3.0MPa以上である
ことを特徴とする適用例1、2または3の何れかに記載の電子部品パッケージである。
【0014】
グリーンシートを平均伸度が50%未満、破断に至るまでの平均応力が3.0MPa以
上とすることにより、本発明の実装電極延長部が形成できることになり、電子部品パッケ
ージと実装基板との接合強度が強化されるという効果がある。
【0015】
[適用例5]前記パッケージ本体に前記パッケージ本体内部を気密封止するための封止
穴を有し、前記実装電極本体部は、前記封止穴を封止する封止部材と短絡しない位置に形
成されていることを特徴とする適用例1乃至4の何れか一項に記載の電子部品用パッケー
ジである。
【0016】
電子部品パッケージは封止穴を有しているので、電子部品を実装した後、電子部品パッ
ケージ内を真空にすることができ、例えば輪郭系の圧電振動子、高安定な圧電振動子等を
構成する場合に効果がある。また、電子部品パッケージ内を真空にした後、不活性ガスで
満たすことができるという効果がある。
【0017】
[適用例6]適用例1乃至5の何れか一項に記載の電子部品用パッケージと、圧電素子
とを備えたことを特徴とする圧電デバイスである。
【0018】
電子部品パッケージと圧電素子とで構成した圧電デバイスは、実装基板との接合強度が
大幅に強化され、例えば環境変動の厳しい車載用に適した圧電デバイスが得られるという
効果がある。
【0019】
[適用例7]電子部品を搭載可能な矩形板状のパッケージ本体と、該パッケージ本体の
底部に形成された実装電極と、を有する電子部品パッケージの製造方法であって、複数枚
の前記パッケージ本体をシート状に連結したパッケージ本体母材を用意する工程と、個々
の前記パッケージ本体に実装電極をメタライズ印刷するメタライズ印刷工程と、前記パッ
ケージ本体母材を構成する前記パッケージ本体間の境界に沿ってスナップ刃によりスナッ
プ溝を形成するスナップ工程と、を備え、前記スナップ刃の刃先の角度を鋭角にしたこと
を特徴とする電子部品パッケージの製造方法である。
【0020】
上記製造方法を用いて電子部品パッケージを作製すると、パッケージの側面下部に実装
電極本体部と連結する実装電極延長部を構成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子部品パッケージの構成を示す概略図であり、(a)は断面図、(b)は底面図、(c)は断面の要部拡大図、(d)は側面の要部拡大図である。
【図2】本実施形態の電子部品パッケージの製造フローチャートである。
【図3】(a)はグリーンシートのメタライズ印刷工程、(b)スナップ工程、(c)は焼成後の断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る電子部品パッケージの構成を示す概略図であり、(a)は断面図、(b)は底面図である。
【図5】第3の実施形態に係る電子部品パッケージの構成を示す底面図である。
【図6】第4の実施形態に係る電子部品パッケージの構成を示す底面図である。
【図7】上記の電子部品パッケージを用いた圧電振動子を示した図である。
【図8】従来のパッケージの、(a)は断面図、(b)は底面図である。
【図9】従来のパッケージの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子部品パッケージの構成を示す概略図であり
、同図(a)は断面図、同図(b)は底面図、同図(c)は(b)のQ1−Q1における
要部拡大断面図、同図(d)は要部拡大側面図である。ここで要部とは、図1(c)、(
d)において、楕円破線で示す部分である。
この図に示す電子部品パッケージ1は、図1(a)に示すように、電子部品が搭載可能
な矩形板状のパッケージ本体6と、このパッケージ本体6の底部に形成された実装電極1
0と、パッケージ本体6を気密封止する蓋部材20と、を備えている。
実装電極10は、図1(b)に示すように、パッケージ本体6の底面に形成された実装
電極本体部10a、10bと、同図(c)、(d)に示すように、パッケージ本体6の側
面の直線部の少なくとも一部に、実装電極本体部10a、10bから延長して形成された
実装電極延長部
10c、10dと、を有する。ここで、パッケージ本体6の側面の直線部とは、パッケー
ジ側面のうちキャスタレーションCが形成されていない箇所を指す。
【0023】
パッケージ本体6は、上面側に凹部19を有し、該凹部19に電子部品を搭載する絶縁
材料からなる矩形箱状の絶縁基板である。パッケージ本体6の上面の凹部19内には、収
容した電子部品の電極端子と接続する複数の電極パッド15が設けられている。この電極
パッド15と、パッケージ本体6の底面に形成された実装電極本体部10a、10bとは
、パッケージ本体6の内部に形成した複数の接続電極16により電気的に接続されている

また、パッケージ本体6には、パッケージ本体6内に電子部品を実装し、更に蓋部材2
0でパッケージ本体6の上面開口部を封止した後にパッケージ本体6内部を真空、あるい
は窒素(N2)を封入するための封止穴18と、該封止穴18を封止する封止部材18a
を有し、実装電極本体部10a、10bは、封止穴18を封止する封止部材と短絡しない
位置に形成されている。
パッケージ本体6の一例は、図1(a)に示すように、それぞれセラミックス材料の矩
形薄板からなる下層板6aと、フレーム状の中層板6bと、フレーム状の上層板6cと、
を夫々積層して箱状の絶縁基板を形成する。該絶縁基板の上層板6cの周縁部上には、例
えばシールリング6dがロウ付けされている。つまり、下層板6aとフレーム状の中層板
及び上層板6b、6cとで内部空間(凹部)19を形成する構造をしている。なお、蓋部
材20にガラス等の非金属を用いる場合には、シールリング6dは不要である。
また、図1(a)ではシールリング6dを除き三層構造のパッケージ本体6を示したが
、パッケージ本体6は二層構造以下でもよいし、四層構造以上であってもよい。
【0024】
本実施形態の電子部品パッケージの特徴は、図1(c)、(d)に示すように、パッケ
ージ本体6の側面の下部に実装電極延長部10c、10dを形成したことにある。この実
装電極延長部10c、10dは、パッケージ本体6の底部に形成した実装電極本体部10
a、10bの端部に連続して形成されている。実装基板のランドパターンに半田クリーム
を塗布し、この上に図1に示す電子部品パッケージ1の底面を載置して、リフロー(加熱
炉)に通すと、リフロー内の温度により半田が溶融する。このとき、実装電極本体部10
a、10bから実装電極延長部10c、10dへと溶融した半田の流れが生じ、温度が下
がるとランドパターンと実装電極延長部10c、10dとの間に半田フィレトが形成され
る。つまり、電子部品パッケージ1は、実装電極本体部10a、10bと、実装基板のラ
ンドパターンと、が半田で接続、固定されるだけでなく、実装電極延長部10c、10d
とランドパターンとの間の半田フィレットにより、実装基板に接続、固定され、実装基板
と電子部品パッケージ1との接続強度が大幅に強化される。
【0025】
従来のパッケージでは、図9のパッケージ底面図に示すように底面の端と実装端子の端
との間の引き下がり90(幅d1、d2)を設けていた。つまり電極を形成しない領域を
設けていたが、本実施形態のパッケージ本体6では、底面に形成される実装電極本体部1
0a、10bにはこの引き下がりを設けないで端部まで電極を形成することが特徴である
。つまり、引き下がりを設けない分だけ実装電極本体部10a、10bの面積が広がり、
電子部品パッケージ1と実装基板の接合強度が強化される。
また本実施形態の電子部品パッケージのもう一つの特徴は、パッケージ本体6の側面下
部に、実装電極本体部10a、10bと連続する実装電極延長部10c、10dを設けた
ことである。実装電極延長部10c、10dは、キャスタレーションCを除いて、実装電
極本体部10a、10bが在るパッケージ本体6の側面下部に形成されるので、実装電極
延長部10c、10dに形成されるフィレットにより、電子部品パッケージ1と実装基板
の接合強度が強化される。
【0026】
図9に示したような従来のパッケージ本体では引き下がり部分が必要なため、実装電極
の面積が本体の底面の面積に対して54%程度しか確保できなかったのに対し、引き下が
りを設けず実装電極本体部10a、10bとすると共に、側面下部に実装電極延長部10
c、10dを形成したパッケージ本体6の実装電極の面積(実装電極本体部の面積+実装
電極延長部の面積)はパッケージ本体の底面の面積に対して84%と、大幅に増加するこ
とが判明した。
実装電極本体部10a、10b、実装電極延長部10c、10dとも電子部品パッケー
ジ1の中心線に対し、対称に形成されているので、実装基板への実装した際に姿勢が基板
面に対し平行となり、歪んだ応力がかからない。更に、実装電極延長部10c、10dに
は均等な半田フィレットが形成されるので、クラック等の発生も低減される。
【0027】
また本実施形態の電子部品パッケージ1は、引き下がりを無くした広い実装電極本体部
10a、10bと、実装電極延長部10c、10dと、を有しているので、電子部品パッ
ケージを更に小型化する場合にも実装基板との接合強度は十分にたもたれる。
また、電子部品パッケージ1は、実装電極に加え、キャスタレーションも形成するので
、キャスタレーションに形成される半田フィレットにより、電子部品パッケージと実装基
板との接合強度が強化されるという効果がある。
また、電子部品パッケージ1は、封止穴を有しているので、電子部品を実装した後、電
子部品パッケージ内を真空にすることができ、例えばパッケージ内部の真空封止が好まし
い輪郭系の圧電振動子、高安定振動子等を構成する場合に効果がある。また、電子部品パ
ッケージ内を真空にした後、不活性ガスで満たすことができるという効果がある。
以上、電子部品パッケージ1を2端子の場合を例にして説明したが、2端子に限定する
ものではなく、3端子、あるいは4端子であってもよい。
【0028】
次に、実装電極延長部10c、10dの形成工程を説明するために、図2に示す製造フ
ローチャートを用いて、パッケージ本体6の製造プロセスについて説明する。
先ず、ベース基板の原材料となるアルミナ粉やガラス粉などを練り上げて複数のグリー
ンシートを
作成し(S1)、ベース基板の形状に合わせて型抜きを行う(S2)。型抜きしたそれぞ
れの層のグリーンシートに、外部電極、導電体、その他のパターンを、タングステン、ま
たは、モリブデン(本発明ではモリブデン)などを用いてメタライズ印刷する(S3)。
次に、所定の枚数のグリーンシートを重ね合せ、例えば、熱プレスなどを加えてグリー
ンシートを積層した後(S4)、鋭利な刃先のスナップ刃で積層板に上下から楔状のスナ
ップ溝(以下、溝と称す)を入れる(S5、スナップ工程)。
次に、楔状の溝を入れた積層板を1000℃以上の温度で焼成し、所望のベース基板母
材を作成する(S6)。次に、S3においてメタライズ印刷した部分に、一回目のNiメ
ッキを施した後(S7)、ベース基板母材の上面の所定の位置にシールリングをロウ付け
し、ベース基板母材の上面に凹所を形成する(S8)。更に、一回目のNiメッキを施し
た箇所に二回目のNiメッキを施し(S9)、その上にAuメッキを施してメッキ処理が
完成する(S10)。最後に、シールリングをロウ付けしたベース基板母材を楔状の溝に
沿って個片に分割し、パッケージ本体1は完成する(S11)。
【0029】
図3は、上記製造プロセスの中で、実装電極延長部10c、10dの形成に係る主要な
工程を図示したものである。なお、実際は大きな積層板を用いるが、図では小さい領域の
みを示している。
図3(a)は、工程S3のメタライズ印刷工程の図で、実装電極本体部10a、10b
となるメタライズ部が、個片となるブロックの境界を越えて連なって印刷されている。つ
まり、引き下がりを形成しない。
図3(b)は、工程S5のスナップ工程で、鋭利な刃先のスナップ刃25を用いてメタ
ライズされた積層板に楔状の溝26を上下から形成する工程である(図3(b)では、一
方の面のスナップ刃25を示している)。
図3(c)は、焼成後の楔状の溝26と、実装電極本体部10a、10bと、実装電極
延長部10c、10dと、を示す断面図である。鋭利なスナップ刃25がメタライズ部(
実装電極本体部10a、10b)を押し下げる際に、溝26が形成されるが、同時にメタ
ライズ部が溝26の斜面に引き伸ばされて形成されることになる。この溝26の壁面に形
成されるメタライズ材が、実装電極延長部10c、10dである。
しかし、グリーンシート材が硬めの材料を利用するため、溝を刃先の鋭利なスナップ刃
で形成されるので、モリブデンからなるメタライズ材は、図3(c)に示すように、溝2
6の内部まで伸びるが先端部は切断されており、焼成後に個片に切断する際に支障(バリ
、カケ)とはならない。従って工程の手順数は従来のままであり、余分な工程は不要であ
る。
なお、本発明に用いるグリーンシートはその焼成前の状況において、一般的な引張強度
試験において平均伸度が50%未満、好ましくは40%〜20%のもので(従来の一般的
なグリーンシートの平均伸度は70%以上)、また破断に至るまでの平均応力が3.00
MPa以上、好ましくは3.5MPa以上のもの(従来の一般的なグリーンシートの平均
応力は1.5MPa程度)を用いる。
すなわち、本発明に用いるグリーンシートは塑性変形しにくく、かつ破断に至るまでの
耐応力が高いものである。
【0030】
従来のパッケージと異なる点を上げると、グリーンシートの粘度、メタライズ材料、ス
ナップ刃、メタライズ部の引き下がり等がある。従来のパッケージではグリーンシートの
粘度は柔らかいが、本発明のパッケージ本体6では硬いグリーンシートを用いることが重
要である。また、メタライズ材料では従来のパッケージではタングステン(例えば、製品
名A443;京セラ株式会社製、製品名NA311B;株式会社住友金属エレクトロデバ
イス社製)を用いていたが、本実施形態のパッケージ本体6ではモリブデン(例えば、京
セラAO700)を用いる。
また、従来のパッケージではスナップ刃の角度は鈍角である。これはスナップで生じる
切り込みが浅い場合でも、グリーンシートが柔らかいため、焼成後で個片に分割する際に
、バリやカケが生じにくいからである。
これに対し、本実施形態のパッケージ本体6では、スナップ刃の角度は鋭角とし、刃の
厚みも薄くしている。これは、本発明のグリーンシートは比較的硬いため、スナップで生
じる切り込みが深くないと、焼成後で個片化する際にバリやカケが生じる可能性があるか
らである。
また、従来のパッケージではメタライズ部の引き下がりを設けていたが、これは、スナ
ップで生じる切り込みが浅いため、引き下がり無しではスナップ工程で溝にメタライズ材
が入り込み、焼成工程で隣り合うパッケージのメタライズ材が融着し、個片に分割する際
にバリ、カケが生じるためである。本発明のパッケージ本体6では、スナップで生じる切
り込みが深いため、焼成で隣り合うパッケージのメタライズ材が融着することがなく、確
実に個片に分割することができる。
このような製造方法を用いて電子部品パッケージを形成すると、パッケージの側面下部
に実装電極本体部と連結する実装電極延長部を構成できるという効果がある。
【0031】
図4は、本発明の第2の実施形態の電子部品パッケージの構成を示す概略図であり、同
図(a)は断面図、同図(b)は底面図である。
図1に示した電子部品パッケージ1と異なる点は、パッケージ本体6底面の実装電極本
体部10a、10bに、それぞれ段差部(バンプ)13を設けたことである。
実装電極本体部10a、10bの一部に段差部13を設けることにより、実装基板と実
装電極本体部10a、10bの底面との間に介在する半田量が、段差部13の周りで厚く
なる。半田に係る歪はパッケージ本体6の中心から遠い程、大きくなる。この歪みが半田
の量を多めにすることにより緩和される。
また、半田の厚みと接続強度との関係は特開平5−308179号公報に開示されてお
り、半田厚みに対し接続強度には極大値があり、適切な厚さがある。
段差部13を設けて、熱歪等により繰り返し加わる応力(歪)が大きい領域の半田量を
多くすることより、電子部品パッケージと実装基板との接合強度が一段と強化される。
【0032】
図5は、本発明の第3の実施形態の電子部品パッケージの構成を示す底面図である。
図1に示した電子部品パッケージ1と異なる点は、パッケージ本体の四隅にキャスタレ
ーションCを設けず、パッケージ本体6の底面の四隅に無電極部8の領域を形成したこと
である。パッケージ本体6の中心から一番遠い四隅は、応力(歪)が最も大きい領域であ
るので、この領域に電極を設けないことにより、熱歪等により繰り返し加わる大きな応力
(歪)を避けることができ、半田のクラック等が生ずる確率を大幅に低減することが可能
となる。なお、キャスタレーションを設けなくとも、電子部品パッケージ3の側面の下部
に形成した実装電極延長部10c、10d(いずれも図示なし)に半田フィレットができ
るので、実装基板との接合強度は十分である。
【0033】
図6は、本発明の第4の実施形態の電子部品パッケージの構成を示す底面図である。
図5に示した電子部品パッケージ3の底面の実装電極本体部10a、10cに段差部(
バンプ)13を設けたことである。段差部13を設けると、熱歪等により繰り返し加わる
応力(歪)が大きい領域の半田量を多くすることができ、電子部品パッケージと実装基板
との接合強度が一段と強化される。
【0034】
図7は、図1に示したパッケージ本体6のパッド電極15に導電性接着剤を塗布し、該
導電性接着剤に圧電振動素子Xのリード電極が接続するように載置し、乾燥、硬化させる
と共に、パッケージ本体6のシールリング6dに金属製の蓋部材20をシーム溶接等の手
段を用いて溶接して構成した圧電振動子である。
圧電振動素子Xは、例えばATカット水晶基板の両面に対向した励振電極を形成し、該
励振電極からリード電極(引出電極)を水晶基板の端部まで延在して構成する。
パッケージ本体6は、第2〜第4の実施形態において説明したパッケージ本体を用いて
もよい。
上記の電子部品パッケージと圧電素子とで構成した圧電デバイスは、実装基板との接合
強度が大幅に強化され、例えば環境変動の厳しい車載用に適した圧電デバイスが得られる
という効果がある。
【符号の説明】
【0035】
1、2、3、4…電子部品パッケージ、5…圧電振動子、6…パッケージ本体、6a…
下層板、6b…中層板、6c…上層板、6d…シールリング、8…無電極部、10…実装
電極、10a、10b…実装電極本体部、10c、10d…実装電極延長部、13…段差
部、15…パッド電極、16…接続電極、18…封止穴、19凹部、20…蓋部材、25
…スナップ刃、26…スナップ溝(溝)、C…キャスタレーション、X…圧電振動素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を搭載可能な矩形板状のパッケージ本体と、該パッケージ本体の底部に形成さ
れた実装電極と、を有する電子部品パッケージであって、
前記実装電極は、前記パッケージ本体の底面に形成された実装電極本体部と、
前記パッケージ本体の側面の直線部の少なくとも一部に、前記実装電極本体部から延長
して形成された実装電極延長部と、を有することを特徴とする電子部品パッケージ。
【請求項2】
少なくとも、前記パッケージ本体の角部にキャスタレーションを備え、前記キャスタレ
ーションには、前記実装電極延長部を形成しないことを特徴とする請求項1に記載の電子
部品パッケージ。
【請求項3】
前記実装電極本体部は、段差部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子
部品パッケージ。
【請求項4】
前記パッケージ本体のベース基板を構成するグリーンシートは引張強度試験において平
均伸度が50%未満、破断に至るまでの平均応力が3.0MPa以上であることを特徴と
する請求項1、2または3の何れかに記載の電子部品パッケージ。
【請求項5】
前記パッケージ本体に前記パッケージ本体内部を気密封止するための封止穴を有し、前
記実装電極本体部は、前記封止穴を封止する封止部材と短絡しない位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電子部品用パッケージ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の電子部品用パッケージと、圧電素子とを備えたこ
とを特徴とする圧電デバイス。
【請求項7】
電子部品を搭載可能な矩形板状のパッケージ本体と、該パッケージ本体の底部に形成さ
れた実装電極と、を有する電子部品パッケージの製造方法であって、
複数枚の前記パッケージ本体をシート状に連結したパッケージ本体母材を用意する工程
と、
個々の前記パッケージ本体に実装電極をメタライズ印刷するメタライズ印刷工程と、
前記パッケージ本体母材を構成する前記パッケージ本体間の境界に沿ってスナップ刃に
よりスナップ溝を形成するスナップ工程と、を備え、
前記スナップ刃の刃先の角度を鋭角にしたことを特徴とする電子部品パッケージの製造
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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