説明

電子部品実装装置

【課題】アクセスできなかった空テープ用ガイド部の裏側へ容易にアクセス可能にする。
【解決手段】水平方向に前進させて装置本体の所定位置に装着され、同方向に後退させて装着が解除される、複数のテープフィーダ12が搭載可能な一括交換台車10と、所定位置に装着された前記台車に搭載されたテープフィーダのテープ送り方向下流端部から送り出される空テープを、下方に案内して排出させるガイド部16とを備えた実装装置において、前記ガイド部が、前記台車に固定された上部ガイド18と、装置本体側に固定された下部ガイド20により構成され、上部ガイドは、上部前方案内板24と、これに対抗配置された上部後方案内板26とを備え、下部ガイドは、上端が上部前方案内板の下端より上に位置する下部前方案内板28と、これに対向配置された、上端が上部前方案内板の下端及び上部後方案内板の下端より下に位置する下部後方案内板30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装装置、特に多数の使用済み空テープを効率良くテープカッター等へ案内する際に適用して好適な電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板に半導体チップ等の電子部品を実装(搭載)する際には、電子部品実装装置が用いられている。
【0003】
このような電子部品実装装置においては、所定のピックアップ位置から電子部品を搭載ヘッドにより吸着保持すると共に、該ヘッドを基板上方に移動させた後に、該基板に実装している。その際、ピックアップ位置への電子部品の供給にはテープフィーダを用いる方法が一般に採用されている。
【0004】
このテープフィーダは、電子部品が一定の間隔で収容されているキャリアテープを巻回してあるリールを所定位置にセットしておき、実装時にはこのテープを該リールから順次繰り出すことにより、電子部品を前記ピックアップ位置まで供給するものである。
【0005】
前記搭載ヘッドにより電子部品がピックアップされた後の空テープは、更に一定のピッチで下流側に送られ、テープフィーダの下流端部から外部に送り出され、排出される。
【0006】
このようにテープフィーダの下流端部から排出された空テープは、一般にガイド部によりテープカッターに導かれ、切断された後に回収箱に回収される(特許文献1〜4を参照)。
【0007】
ところで、電子部品実装装置では、一括交換台車を水平方向に前進させて所定位置のフィーダバンクに装着することにより、多数のテープフィーダを一度にセットすることができ、逆に後退させることにより取り外し(装着を解除し)、簡単にテープフィーダを一括して交換することが可能になっている。
【0008】
このような電子部品実装装置においては、フィーダ先端部から排出された空テープをテープカッターまでスムーズに案内するガイド部が重要となる。
【0009】
このガイド部は、通常、下流側に位置する下端部が、前記テープカッター等の電子部品実装装置の装置本体側に固定されており、上流側に位置する上端部が、一括交換台車をフィーダバンクに装着することにより、テープフィーダの先端部(下流端部)の近傍にセットされ、該先端部から排出される空テープを下方に案内する構造に設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−151186号公報
【特許文献2】特開2002−111281号公報
【特許文献3】特開2009−61544号公報
【特許文献4】特開平7−226599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記のようにガイド部の下端部が装置本体側に固定された構成では、このガイド部が装置本体近傍の所定領域を常時占有していることになり、保守や点検等のためにその裏側(前方)にアクセスする場合には、その都度ガイド部全体を取り外さなければならないことから、簡単にアクセスできないという問題があった。
【0012】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、従来はアクセスできなかった作業者の位置から見て空テープ用ガイド部の裏側に当る前方位置でも容易にアクセスすることができる電子部品実装装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、水平方向に前進させて装置本体の所定位置に装着され、同方向に後退させて装着が解除される、複数のテープフィーダが搭載可能な一括交換台車と、所定位置に装着された前記一括交換台車に搭載されたテープフィーダのテープ送り方向下流端部から送り出される空テープを、下方に案内して排出させるガイド部とを備えた電子部品実装装置において、前記ガイド部が、前記一括交換台車に固定された上部ガイドと、前記装置本体側に固定された下部ガイドとにより構成され、前記上部ガイドは、上部前方案内板と、これに対抗配置された上部後方案内板とを備え、前記下部ガイドは、上端が前記上部前方案内板の下端より上に位置する下部前方案内板と、これに対向配置された、上端が前記上部前方案内板の下端及び前記上部後方案内板の下端より下に位置する下部後方案内板とを備ええているようにしたことにより、前記課題を解決したものである。
【0014】
本発明は、前記上部ガイドの前記上部後方案内板の後側には可撓性部材が固定され、該可撓性部材の下端が、前記上部後方案内板の下端より下方で、前記下部後方案内板の上端より下方前側に位置するようにしてもよく、その際、前記可撓性部材が、ブラシであるようにしてもよい。
【0015】
本発明は、又、前記下部ガイドが固定される装置本体側が、案内されてくる空テープを切断する、該装置本体に取付けられたテープカッターであるようにしてもよい。
【0016】
本発明は、又、前記下部ガイドが備えている下部前方案内板及び下部後方案内板のうち少なくとも下部前方案内板が、下端部を支点に前後に回動可能に支持されていると共に、付勢手段により後方に付勢されているようにしてもよく、その際、前記下部ガイドが備えている下部後方案内板が、前記装置本体側に固定され、不動であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、排出される空テープを案内するガイド部を、一括交換台車に固定される上流側の上部ガイドと装置本体側に固定される下流側の下部ガイドの二つに分割すると共に、上部ガイドの上部前方案内板の下端を、下部ガイドの下部前方案内板の上端より下に位置させ、下部後方案内板の上端より上に位置するようにしたので、一括交換台車を水平方向に前進させて所定位置に装着するだけでガイド部が完成され、空テープを排出方向へ案内することができるようになるため、通常の実装作業が可能となると共に、水平方向に後退させるだけで上部ガイドを取り外すことができることから、装着時に上部ガイドで占有されていた領域が開放されるため、ガイド部の裏側(前方)へのアクセスを容易に行なうことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1実施形態の電子部品実装装置に装着されている一括交換台車を示す斜視図
【図2】前記一括交換台車の側面図
【図3】第1実施形態に適用される上部ガイドと下部ガイドの連結部分を拡大して示す部分断面図
【図4】第1実施形態の効果を説明するための前記連結部分の部分断面図
【図5】本発明に係る第2実施形態の電子部品実装装置の要部を抽出して示す部分側面図
【図6】第2実施形態における上部ガイドと下部ガイドの連結部分を示す図5A−A’間の縦部分断面図
【図7】第2実施形態における台車装着前の上部ガイドと下部ガイドの関係を示す部分側面図
【図8】第2実施形態における上部ガイドと下部ガイドを連結した後の内部空間を示す部分断面図
【図9】第2実施形態における連結を解除した後の下部ガイドの内部空間を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1、図2は、本発明に係る第1実施形態の電子部品実装装置に装着された状態の一括交換台車を、実装装置の本体を省略して示す斜視図と側面図である。
【0021】
一括交換台車10は、水平方向に前進させて装置本体の所定位置に装着され、水平方向に後退させて装着を解除することができる。この台車10は、複数のテープフィーダ12(図では一台のみ示す)が搭載可能で、各フィーダ12によって下方にセットされているリール14に巻きつけられている電子部品が収納されたキャリアテープ(図示せず)が下流方向に搬送され、電子部品が供給されるようになっている。
【0022】
所定位置に装着されている前記台車10に搭載されたテープフィーダ12により搬送されるキャリアテープは、所定位置で電子部品がピックアップされて空になると、その空テープがさらに下流方向に送られる。そのために、前記台車10が装着されている電子部品実装装置には、テープフィーダ12のテープ送り方向下流端部から送り出される空テープを、更に下方に案内して排出させるガイド部16が備えられている。
【0023】
本実施形態では、前記ガイド部16が、前記台車10に固定された上部ガイド18と、これと下方に連結され、装置本体側に固定された下部ガイド20により構成されている。この下部ガイド20が固定されている装置本体側は、案内されてくる空テープを切断するテープカッター22であり、このカッター22は電子部品実装装置の本体に一体的に取付けられている。
【0024】
又、このテープカッター22の下側には廃棄用ガイド21が設置され、該ガイド21により細かく切断された空テープが、台車10に設置されている回収箱23に導かれるようになっている。
【0025】
図3には、前記上部、下部の両ガイド18、20の連結部分の断面を拡大して模式的に示す。
【0026】
この図に示されるように、前記上部ガイド18は、上部前方案内板24と、これに対向配置されて案内空間を形成している上部後方案内板26とを備え、前記下部ガイド20は、上端28Aが前記上部前方案内板24の下端24Aより上に位置する下部前方案内板28と、これに対向配置されて案内空間を形成している上端30Aが、前記上部前方案内板24の下端24A及び前記上部後方案内板26の下端26Aより下に位置する下部後方案内板30とを備えている。
【0027】
又、下部後方案内板30は、その上端30Aが上部後方案内板26の下端26Aより後方に位置され、且つ両者間に間隔(すき間)が空けてある。そして、上部後方案内板26の外側(後側)には、下端26Aの近傍にナイロン製のブラシ(可撓性部材)32が、その下端32Aが下部後方案内板30の上端30Aより下方内側(前側)になるように固定され、内側からこの間隔を塞いでいる。
【0028】
そして、前記ガイド部16では、前記台車10を装置本体に装着する前は、該台車10に固定されている上部ガイド18と、テープカッター22に固定されている下部ガイド20とが分離された状態にある。
【0029】
本実施形態においては、上部前方案内板24、上部後方案内板26の各下端24A、26Aと、下部前方案内板28、下部後方案内板30の各上端28A、30Aとを、前述した位置関係にしたので、装着前の台車10を、図2に矢印で示す方向に押して水平方向に前進させることにより、図示されている装着状態にすることができると同時に、図3のように連結されたガイド部16を完成させることができ、又、該台車10を逆に後退させるだけで連結を解除できる。
【0030】
なお、上部後方案内板26の下端26Aと下部後方案内板30の上端30Aとを、図3のようにすき間がある位置関係にしたのは、上部前方案内板24と下部前方案内板28の場合と同じ位置関係にすると、図4に示すように下部後方案内板30の上端30Aが内側に凸の段差を形成することになり、空テープTの先端Taがつっかえてスムーズに流れなくなるのを防止するためである。
【0031】
又、上部後方案内板26の下端26A近傍に前述のように可撓性のブラシ32を固定してすき間を塞ぐようにしたことにより、空テープTの先端Taがつっかえることを防止できると共に、台車10を前進・後退させたときに、下部後方案内板30の上端30Aを簡単に乗り越えることができることから、着脱を容易に行なうことができる。
【0032】
以上詳述した本実施形態によれば、台車10を水平移動により装着するだけで、ガイド部16を完成することができ、空テープTの先端Taの引っかかりや飛び出しを防止して該テープTをスムースに排出することができる上に、簡単に分離することができる。
【0033】
次に、図5から図9を参照して、本発明に係る第2実施形態について説明する。
【0034】
図5には、前記図2からテープフィーダ12が搭載された台車10の一部と、前記ガイド部16を構成する上部ガイド18及び下部ガイド20と、該下部ガイド20が固定されているテープカッター22とを抽出して拡大して示してある。
【0035】
本実施形態でも、上部ガイド18と下部ガイド20の基本的な構成は第1実施形態と同一であるが、図6に示すように、下部ガイド20の下部前方案内板28が、下方に取付けられているヒンジ34により下端部を支点に前後に回動(揺動)可能に支持されていると共に、該ヒンジ34と同じ位置に付設されている板ばね(付勢手段)36により、台車装着前の状態の図7に示すように後方(図中左方向)に付勢されている。
【0036】
又、同位置には側面が三角形状のストッパー38が取付けられ、下部ガイド20の前方への回動が該ストッパー38により制限されている。
【0037】
又、この下部ガイド20を構成する下部後方案内板30は、前記テープカッター22のフレーム部22Aに治具を介して固定されて不動であり、該下部ガイドの下部前方案内板28とは連動しない構成になっている。
【0038】
従って、前記図7に右方向の矢印で示す装着方向に、付勢力に抗して台車10を前進させるだけで装着でき、前記図5の状態にできる。その際、前記ストッパー38により、一定の角度以上に前方に倒れこむことが防止されると共に、その内部では前記図6に示されるように、下部後方案内板30との間で案内空間が形成されているため、空テープをスムーズに下方に送り出すことができるようになっている。
【0039】
又、台車10の装着前(又は装着解除後)の下部ガイド20の内部では、図8に前記図6に示した断面図に相当する連結部分を抽出して示すように、下部前方案内板28は前記板ばね36により付勢されて後方に回動した状態にあるが、下部後方案内板30は回動しないため、その上端30Aと下部前方案内板28との間は極めて狭い状態に維持されることになる。
【0040】
これとは逆に、下部前方案内板28が後方へ付勢されていない場合は、台車10を装着しない状態のときには、図9に示すように下部ガイド20の案内空間の上端が大きく空いた状態になっているため、この上端から誤ってテープカッター22の内部にある固定刃22Bと可動刃22Cの間に手指を入れてしまう可能性があることから極めて危険である。
【0041】
これに対し、本実施形態によれば、特別にカバー部材を用いることなく、不使用時には常時図8の状態にできることから、空テープのガイド機能とテープカッター22に対するカバー機能を両立(併有)させることができるため、コスト抑制と共にテープカッターの占有スペースの低減を実現することができる。
【0042】
なお、前記実施形態では、下部ガイド20がテープカッター22に固定されている場合を示したが、これに限らず装置本体側であれば任意である。
【0043】
又、可撓性部材としては、前記ブラシ32に限らず、同様の機能を有するものであれば、シート状等形状は任意である。
【符号の説明】
【0044】
10…一括交換台車
12…テープフィーダ
14…リール
16…ガイド部
18…上部ガイド
20…下部ガイド
22…テープカッター
24…上部前方案内板
26…上部後方案内板
28…下部前方案内板
30…下部後方案内板
32…ブラシ(可撓性部材)
34…ヒンジ
36…板ばね
38…ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に前進させて装置本体の所定位置に装着され、同方向に後退させて装着が解除される、複数のテープフィーダが搭載可能な一括交換台車と、
所定位置に装着された前記一括交換台車に搭載されたテープフィーダのテープ送り方向下流端部から送り出される空テープを、下方に案内して排出させるガイド部とを備えた電子部品実装装置において、
前記ガイド部が、前記一括交換台車に固定された上部ガイドと、前記装置本体側に固定された下部ガイドとにより構成され、
前記上部ガイドは、上部前方案内板と、これに対抗配置された上部後方案内板とを備え、
前記下部ガイドは、上端が前記上部前方案内板の下端より上に位置する下部前方案内板と、これに対向配置された、上端が前記上部前方案内板の下端及び前記上部後方案内板の下端より下に位置する下部後方案内板とを備えていることを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記上部ガイドの前記上部後方案内板の後側には可撓性部材が固定され、該可撓性部材の下端が、前記上部後方案内板の下端より下方で、前記下部後方案内板の上端より下方前側に位置することを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記可撓性部材が、ブラシであることを特徴とする請求項2に記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
前記下部ガイドが固定される装置本体側が、案内されてくる空テープを切断する、該装置本体に取付けられたテープカッターであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の電子部品実装装置。
【請求項5】
前記下部ガイドが備えている下部前方案内板及び下部後方案内板のうち少なくとも下部前方案内板が、下端部を支点に前後に回動可能に支持されていると共に、付勢手段により後方に付勢されていることを特徴とする請求項1乃至4に記載の電子部品実装装置。
【請求項6】
前記下部ガイドが備えている下部後方案内板が、前記装置本体側に固定され、不動であることを特徴とする請求項5に記載の電子部品実装装置。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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