説明

電子部品搭載用基板

【課題】 電子部品との接合性に優れ,製造容易なダイパッドを有する電子部品搭載用基板を提供する。
【解決手段】 絶縁基材2の表面に設けた導体回路5及び電子部品接合用のダイパッド1とを有する。ダイパッド1には金属層11を設け,金属層には絶縁基材の裏面側へ連通するサーマルビアホール7を設けてなる。金属層は,少なくともその一部分に,絶縁基材の表面を露出させるための露出用穴10を有する。金属層の合計面積は,ダイパッドの面積の30〜80%を占めていることが好ましい。金属層は,例えば,中央部111と,該中央部より放射状に延設した枝部119とを有する。放射状の枝部の先端には,該先端を互いに連結するフレーム部116を設けていることが好ましい。金属層の中央部又は枝部には,複数のサーマルビアホールが設けられていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,電子部品搭載用基板に関し,特に電子部品とダイパッドとの接合性に関する。
【0002】
【従来技術】電子部品搭載用基板としては,従来,図5,図6に示すごとく,絶縁基材92の表面に,電子部品93を接合するためのダイパッド91を有するものがある。ダイパッド91は,その下方の絶縁基材92を貫通するサーマルビアホール97を有している。電子部品93から発生する熱は,ダイパッド91及びサーマルビアホール97を通って,絶縁基材92の裏面に設けた放熱板98に伝達され,該放熱板98から電子部品搭載用基板9の外部に放散される。
【0003】また,ダイパッド91の周囲には,ボンディングパッド950を有する導体回路95が設けられている。電子部品93は,ダイパッド91の上に,接着剤96を用いて接合される。該接着剤96としては,Agペースト又は樹脂接着剤が用いられる。電子部品93は,ボンディングワイヤー930をボンディングパッド950と接合することにより,導体回路95と電気的に接続される。導体回路95及びダイパッド91は,銅箔をエッチングし,その表面に金めっきを施して形成されている。サーマルビアホール97の中には,湿気浸入防止用の樹脂971が充填されている。
【0004】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の電子部品搭載用基板においては,ダイパッド91と接着剤96との間で剥離が生じるおそれがあり,ダイパッド91と電子部品93との接合不良が生じる場合があった。特に,この接合不良は,高多湿時に発生しやすい。ダイパッドと接着剤との間で剥離が生じるのは,ダイパッド表面の金めっきが接着剤との馴染みが悪いためであると考えられる。
【0005】そこで,ダイパッド91の表面に銅を露出させておくことが考えられる。しかし,そのためには,導体回路に金めっきを施す際に,ダイパッドの表面をマスクパターンにより被覆して金めっきが付着しないようにする必要がある。そのため,ダイパッドの被覆という煩わしい作業を追加して行なわなければならない。
【0006】本発明はかかる従来の問題点に鑑み,電子部品との接合性に優れ,製造容易なダイパッドを有する電子部品搭載用基板を提供しようとするものである。
【0007】
【課題の解決手段】本発明は,絶縁基材と,該絶縁基材の表面に設けた導体回路及び電子部品接合用のダイパッドとを有し,上記ダイパッドには金属層を設け,該金属層には絶縁基材の裏面側へ連通するサーマルビアホールを設けてなる電子部品搭載用基板において,上記金属層は,少なくともその一部分に,絶縁基材の表面を露出させるための露出用穴を有することを特徴とする電子部品搭載用基板にある。
【0008】本発明においては,ダイパッドに設けた金属層が,少なくともその一部分に,絶縁基材の表面を露出させるための露出用穴を有している。そのため,該露出用穴には,接着剤との馴染みが良い絶縁基材の表面が露出する。それ故,露出用穴内の基材露出部において,電子部品が,接着剤を介して,絶縁基材に強く接合される。従って,金属層表面に金めっきを施しても接着剤が剥離することはない。また,高多湿環境においても,電子部品がダイパッドから剥離することはなく,接合不良が発生することはない。
【0009】また,露出用穴を有する金属層は,絶縁基材表面の導体回路等のパターン形成の際に同時に形成することができる。また,従来のように金属層の表面にも導体回路と同様に金等の金属めっきを施すことができる。そのため,従来のように金属層の表面だけを被覆する作業も不要となる。従って,ダイパッドを容易に製造することができる。
【0010】上記金属層の合計面積は,ダイパッドの面積の30%〜80%以上を占めていることが好ましい。30%未満の場合には,金属層を介してサーマルビアホールに伝達される熱量が減少して,ダイパッドの熱放散性が減少するおそれがある。一方,80%を越える場合は,ダイパッドと電子部品との接合性が悪くなるおそれがある。
【0011】上記金属層は,中央部と,該中央部より放射状に延設した枝部とを有することが好ましい。これにより,接着剤が,金属層の間隙から露出した絶縁基材とよく馴染み,電子部品がダイパッドの全体に渡って強く接合される。また,放射状に延びた枝部が,電子部品の熱を電子部品全体から受ける。そのため,熱が効率よくサーマルビアホールに伝達されて,ダイパッドの熱放散性が高くなる。
【0012】上記放射状の枝部を有する金属層としては,例えば,広い面積を有する中央部から複数方向に放射状の枝部を延設した金属層(図1,図4参照),又は放射状の複数の枝部が交差することにより中央部が形成された金属層(図3参照)がある。
【0013】上記放射状の枝部の先端には,該先端を互いに連結するフレーム部を有することが好ましい。これにより,ダイパッドの強度が高くなり,取扱いが容易となる。上記金属層の中央部には,複数のサーマルビアホールが設けられていることが好ましい。また,同様に,上記金属層の枝部に複数のサーマルビアホールが設けられてもよい。これにより,ダイパッドに接合した電子部品の熱が,効率よくサーマルビアホールに伝達されるため,ダイパッドの放熱性が高くなる。
【0014】金属層としては,熱伝導性に優れた材料,例えば,銅を用いることができる。また,金属層の表面には,金,ニッケル等の金属めっきを施すことができる。絶縁基材としては,例えば,ガラスエポキシ樹脂基板,ガラスポリイミド樹脂基板,ガラスビスマレイミドトリアジン樹脂基板を用いることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施形態例1本発明の実施形態例にかかる電子部品搭載用基板について,図1,図2を用いて説明する。本例の電子部品搭載用基板20は,図1,図2に示すごとく,絶縁基材2と,該絶縁基材2の表面に設けた導体回路5及び電子部品接合用のダイパッド1とを有している。ダイパッド1には金属層11が設けられている。金属層11には絶縁基材2の裏面側へ連通するサーマルビアホール7が設けられている。
【0016】金属層11は,少なくともその一部分に,絶縁基材2の表面を露出させるための露出用穴10を有している。金属層11の合計面積は,ダイパッド1の面積の30〜80%を占めている。金属層11は,中央部111と,該中央部111より放射状に延設した12本の枝部119とを有している。放射状の枝部119の先端には,該先端を互いに連結するフレーム部116を有している。金属層11の中央部111及び枝部119には,複数のサーマルビアホール7が設けられている。
【0017】ダイパッド1の上には,図2に示すごとく,接着剤6を用いて,電子部品3が接合されている。電子部品3は,ボンディングワイヤー30がボンディングパッド50と接合することにより,導体回路5と電気的に接続される。
【0018】また,図1に示すごとく,ダイパッド1における金属層11のフレーム部116は,接地用ビアホール46と電気的に接続されており,接地回路としての役割も果たしている。また,フレーム部116の周囲には,電源回路115が設けられており,電子部品3にボンディングワイヤーを介して電気を供給している。電源回路115は,電源ビアホール45と電気的に接続されている。
【0019】絶縁基材2の表面に設けた導体回路5は,ダイパッド1の周囲に設けたビアホール56と接続している。絶縁基材2の裏面には,図2に示すごとく,放熱板8が設けられている。放熱板8は,上記サーマルビアホール7と接続している。サーマルビアホール7の中は,エポキシ系の樹脂71が充填されている。これは,ダイパッド1上に湿気が浸入するのを防止するためである。
【0020】金属層11は,銅箔をエッチングすることにより形成されたものであり,その表面には金めっきが施されている。絶縁基材2としては,ガラスエポキシ樹脂基板を用いる。接着剤6は,Agペースト,樹脂接着剤等である。
【0021】次に,本例の作用効果について説明する。本例の電子部品搭載用基板20においては,図1に示すごとく,ダイパッド1に設けた金属層11が,少なくともその一部分に,絶縁基材2の表面を露出させるための露出用穴10を有している。そのため,露出用穴10には,接着剤との馴染みが良い絶縁基材2の表面が露出する。
【0022】それ故,図2に示すごとく,露出用穴10内の基材露出部21において,電子部品3が,接着剤6を介して,絶縁基材2に強く接合される。従って,金属層11表面に金めっきを施しても接着剤6が剥離することはない。また,高多湿環境においても,電子部品3がダイパッド1から剥離することはなく,接合不良が発生することはない。
【0023】また,露出用穴10を有する金属層11は,絶縁基材2表面の導体回路等のパターン形成の際に同時に形成することができる。また,従来のように金属層の表面にも導体回路と同様に金等の金属めっきを施すことができる。そのため,従来のように金属層の表面だけを被覆する作業も不要となる。従って,ダイパッドを容易に製造することができる。
【0024】実施形態例2本例においては,図3に示すごとく,ダイパッドの金属層12が,十字状に交差した太幅の枝部129と,該枝部129よりも細い幅の十字状に交差した枝部128と,上記枝部128,129が交差する部分である中央部121とよりなる。枝部128,129の先端は,フレーム部126により一体的に連結されている。金属層12は,少なくともその一部分に絶縁基材を露出させるための露出用穴10を有している。
【0025】金属層12の合計面積は,ダイパッドの面積の50〜65%を占めている。金属層12の中央部121及び太幅の枝部129には,複数のサーマルビアホール7が設けられている。
【0026】上記中央部121及び枝部128,129の上には,金属層3の大きさよりも小さい電子部品3が搭載される。金属層3のフレーム部126には,電子部品3と接続するためのボンディングワイヤーを接合することができる。このため,フレーム部126はボンディングパッドとしての役目を果たすことができる。その他は,実施形態例1と同様である。本例においても,実施形態例1と同様の効果を得ることができる。
【0027】実施形態例3本例においては,図4に示すごとく,ダイパッドの金属層13が,四角形状の中央部131と,該中央部131より8方向に延設した枝部139と,該枝部139を一体的に連結しているフレーム部136とよりなる。枝部139の中央部131付近は太幅に,フレーム部136付近は細幅に形成されている。中央部131及び枝部139の太幅部分には,複数のサーマルビアホール7が設けられている。金属層13は,少なくともその一部分に絶縁基材を露出させるための露出用穴10を有している。
【0028】金属層13の合計面積は,ダイパッドの面積の65〜80%を占めている。金属層13の中央部131及び太幅の枝部129には,複数のサーマルビアホール7が設けられている。上記フレーム部136には,上記実施形態例2と同様にボンディングワイヤーを接合することができる。その他は,実施形態例1と同様である。本例においても,実施形態例1と同様の効果を得ることができる。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば,電子部品との接合性に優れ,製造容易なダイパッドを有する電子部品搭載用基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1の電子部品搭載用基板の平面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】実施形態例2における,金属層の平面図。
【図4】実施形態例3における,金属層の平面図。
【図5】従来例である電子部品搭載用基板の断面図。
【図6】従来例における,ダイパッド付近を示す,電子部品搭載用基板の平面図。
【符号の説明】
1...ダイパッド,
10...露出用穴,
11,12,13...金属層,
111,121,131...中央部,
116,126,136...フレーム部,
119,128,129,139...枝部,
2...絶縁基材,
20...電子部品搭載用基板,
21...基材露出部,
3...電子部品,
5...導体回路,
6...接着剤,
7...サーマルビアホール,
8...放熱板,

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁基材と,該絶縁基材の表面に設けた導体回路及び電子部品接合用のダイパッドとを有し,上記ダイパッドには金属層を設け,該金属層には絶縁基材の裏面側へ連通するサーマルビアホールを設けてなる電子部品搭載用基板において,上記金属層は,少なくともその一部分に,絶縁基材の表面を露出させるための露出用穴を有することを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項2】 請求項1において,上記金属層の合計面積は,ダイパッドの面積の30%〜80%を占めていることを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項3】 請求項1又は2において,上記金属層は,中央部と,該中央部より放射状に延設した枝部とを有することを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項4】 請求項3において,上記放射状の枝部の先端には,該先端を互いに連結するフレーム部を設けていることを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一項において,上記金属層の中央部には,複数のサーマルビアホールが設けられていることを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一項において,上記金属層の枝部には,複数のサーマルビアホールが設けられていることを特徴とする電子部品搭載用基板。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平9−181418
【公開日】平成9年(1997)7月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−351684
【出願日】平成7年(1995)12月25日
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)