説明

電子鍵盤楽器の鍵盤装置

【課題】 スイッチ本体の可動接点と固定接点との安定した接触動作を確保することにより、押鍵情報を正確に検出することができる電子鍵盤楽器の鍵盤装置を提供する。
【解決手段】 ハンマー4は所定の形状の押圧面26dを有し、鍵スイッチ17は、固定接点18a,18bが設けられた基板17aと、弾性材で構成され、被押圧面31aを有するスイッチ本体17bと、スイッチ本体17bに設けられた可動接点34a,34bを有する。被押圧面31aが押圧面26dで押圧されることにより、スイッチ本体17bが圧縮変形し、可動接点34a,34bが固定接点18a,18bにそれぞれ接触する。被押圧面31aは、押圧面26dと同じ形状を有するとともに、可動接点34a,34bが固定接点18a,18bに接触した後にハンマー4の回動が終了したときの押圧面26dの向きに合致するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵の押鍵情報を検出するための鍵スイッチを備えた、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鍵盤装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
この鍵盤装置は、シャーシに設けられた、複数の鍵、複数のハンマーおよび鍵スイッチを備えている。各鍵は、前後方向に延び、後端部においてシャーシに回動自在に支持されている。ハンマーは、各鍵の下方に配置され、前部においてシャーシに回動自在に支持されており、ハンマーの前端部には鍵が上方から当接している。また、ハンマーの中央付近には、上方に突出する押圧部が一体に形成されており、その上面は平らな押圧面になっている。
【0003】
鍵スイッチは、基板および複数のスイッチ本体を有し、ハンマーの上方に配置されている。基板は、シャーシにねじ止めされており、左右方向に水平に延びている。また、基板の下面には、ハンマーの支点に近い側に第1固定接点が、ハンマーの支点から遠い側に第2固定接点が、前後方向に互いに所定の間隔を隔てて取り付けられている。各スイッチ本体は、ゴムなどの弾性材により中空状に形成され、第1および第2固定接点を覆うように基板に設けられている。スイッチ本体の平らな下面(以下「被押圧面」という)は、基板の下面とほぼ平行に配置されており、ハンマーの押圧面に上方から対向している。また、スイッチ本体の内部には、第1可動接点および第2可動接点が設けられている。第1可動接点は第1固定接点に、第2可動接点は第2固定接点に、それぞれ対向しており、この第2可動接点と第2固定接点との間隔は、第1可動接点と第1固定接点との間隔よりも若干、大きい。
【0004】
以上の構成により、鍵が押鍵されるのに伴い、ハンマーは、その前端部が鍵で押圧されることにより回動し、押圧部でスイッチ本体を押圧する。これにより、スイッチ本体の第1可動接点が第1固定接点に接触した後、第2可動接点が第2固定接点に接触し、それらの接触状態を表す検出信号がそれぞれ出力される。これらの検出信号および両者の時間差に基づいて、押鍵の有無および押鍵速度などの押鍵情報が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−46493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この従来の鍵盤装置では、以下の理由から押鍵情報を正確に検出できないおそれがある。図5は、従来の鍵盤装置61のハンマー62とスイッチ本体63との位置関係およびスイッチ本体63の動作状態を模式的に示したものである。同図(a)に示す離鍵状態では、前述したように、スイッチ本体63の被押圧面63aは、基板65の下面とほぼ平行に配置されているのに対し、ハンマー62の押圧面62aは後ろ下がりに傾斜している。この離鍵状態から鍵(図示せず)が押鍵されると、ハンマー62は、押圧面62aを介してスイッチ本体63の被押圧面63aに当接し、スイッチ本体63を押圧・圧縮する。同図(b)に示すように、ハンマー62の回動量が小さい段階では、スイッチ本体63の圧縮量は、その全体にわたってほぼ均一である。
【0007】
一般に、電子鍵盤楽器のタッチ感をアコースティックピアノに、より近似させるためには、ハンマーをある程度、大きく回動させることが必要であるため、ハンマー62の回動量を従来よりも大きくすることが望ましい。しかし、ハンマー62の回動量をさらに大きくすると、ハンマー62の支点からの距離および回動ストロークの相違により、同図(c)に示すように、スイッチ本体63のハンマー62の支点から遠い第2可動接点63c側の圧縮量が第1可動接点63b側の圧縮量よりも大きくなる。このようなスイッチ本体63の不均一な圧縮により、スイッチ本体63が全体として第2可動接点63c側を中心として傾くため、可動接点63b,63cが固定接点64a,64bに対して、接触後にずれたり、外れたりすることにより、これらの接触状態が不安定になり、押鍵情報を正確に検出できないおそれがある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、ハンマーで押圧されるスイッチ本体の可動接点と固定接点との安定した接触動作を確保することにより、押鍵情報を正確に検出することができる電子鍵盤楽器の鍵盤装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る電子鍵盤楽器の鍵盤装置は、揺動自在の鍵と、所定の形状の押圧面を有し、鍵の押鍵に伴って回動するハンマーと、鍵の押鍵情報を検出するための鍵スイッチと、を備え、鍵スイッチは、複数の固定接点が設けられた基板と、弾性材で構成され、被押圧面を有し、複数の固定接点を覆うように基板に設けられた中空状のスイッチ本体と、スイッチ本体の内部に設けられ、複数の固定接点に互いに異なる間隔を隔てて対向するとともに、鍵の押鍵に伴い、スイッチ本体の被押圧面がハンマーの押圧面で押圧されることにより、スイッチ本体が圧縮変形することによって、複数の固定接点に順にそれぞれ接触する複数の可動接点と、を有し、スイッチ本体の被押圧面は、ハンマーの押圧面と同じ形状を有するとともに、複数の可動接点が複数の固定接点にそれぞれ接触した後にハンマーの回動が終了したときのハンマーの押圧面の向きに合致するように配置されていることを特徴とする。
【0010】
この電子鍵盤楽器の鍵盤装置によれば、鍵が押鍵されると、それに伴ってハンマーが回動し、その押圧面で鍵スイッチのスイッチ本体の被押圧面を押圧することにより、スイッチ本体が圧縮変形する。この圧縮変形により、スイッチ本体に設けられた複数の可動接点が、基板に設けられた複数の固定接点に順にそれぞれ接触する。これらの接触の有無や時間差に基づいて、鍵の押鍵情報が検出される。
【0011】
また、スイッチ本体の被押圧面は、ハンマーの押圧面と同じ形状を有するとともに、複数の可動接点が複数の固定接点にそれぞれ接触した後にハンマーの回動が終了したときのハンマーの押圧面の向きに合致するように配置されている。これにより、回動量が最大になるハンマーの回動の終了時において、スイッチ本体の圧縮量が複数の可動接点の間でほぼ等しくなり、スイッチ本体はほぼ均一に圧縮され、スイッチ本体が傾くことがなくなる。その結果、複数の可動接点が複数の固定接点に対して、接触後にずれたり、外れたりすることがなくなり、ハンマーの回動量が大きい場合でも、それらの安定した接触動作が確保されることによって、押鍵情報を正確に検出することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置において、ハンマーの押圧面は凸状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ハンマーの押圧面が凸状に形成されているため、この押圧面がスイッチ本体の被押圧面を押圧する際、スイッチ本体を設けた基板までの距離を保ちやすくなり、ハンマーの押圧面以外の部分、特にハンマーの回動支点から遠い先端側の部分が、基板と干渉しにくくなる。その結果、ハンマーのより大きな回動量を確保できるため、押鍵時のタッチ感をアコースティックピアノに、より近似させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による電子ピアノの鍵盤装置を、離鍵状態において示す側断面図である。
【図2】図1の鍵盤装置を押鍵状態において示す側断面図である。
【図3】図1の鍵盤装置のハンマーおよび鍵スイッチとその周辺部を拡大して示す側断面図であり、(a)は離鍵状態、(b)は押鍵状態を示す。
【図4】第2実施形態による鍵盤装置のハンマーおよび鍵スイッチを模式的に示す側断面図であり、(a)は離鍵状態、(b)は押鍵状態を示す。
【図5】従来の鍵盤装置のハンマーとスイッチ本体との位置関係を模式的に示した側断面図であり、(a)は離鍵状態、(b)はハンマーの回動の初期段階、(c)はハンマーの回動の終了段階を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。なお、図1〜図4では、理解の容易化のために、断面を表すハッチングは省略されている。図1は、本発明の第1実施形態による電子ピアノの鍵盤装置1を、離鍵状態において示している。同図に示すように、この鍵盤装置1は、鍵盤シャーシ2と、鍵盤シャーシ2に回動自在に取り付けられた白鍵3aおよび黒鍵3bから成る複数(例えば88個)の鍵3と、鍵3ごとに鍵盤シャーシ2に回動自在に取り付けられた複数のハンマー4(1つのみ図示)と、各鍵3の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ17を備えている。なお、鍵3の白鍵3aおよび黒鍵3bの構成は、基本的に互いに同じであるので、以下、白鍵3aを中心として説明する。
【0016】
鍵盤シャーシ2は、前シャーシ11、中シャーシ12および後シャーシ13で構成されており、これらのシャーシ11〜13はいずれも、合成樹脂(例えばABS樹脂)の射出成形品などで構成されている。また、これらの前シャーシ11、中シャーシ12および後シャーシ13は、前後方向に延びるリブ(図示せず)で互いに連結されるとともに、左右方向(鍵3の並び方向)にそれぞれ延びる前側、中央および後側の取付けレール14〜16を介して、電子ピアノの棚板(図示せず)に載置され、固定されている。
【0017】
前シャーシ11には、白鍵3aごとに、上下方向に貫通する左右2つの係合孔11a,11a(1つのみ図示)が形成されており、その前側の下面には、フェルトなどで構成された鍵ストッパ11bが取り付けられている。
【0018】
中シャーシ12には、ハンマー4を支持するための、左右両側に突出する軸状のハンマー支点12aが設けられている。後シャーシ13には、鍵3を支持するための軸穴状の鍵支点13aが設けられており、その後ろ側の下面には、フェルトなどで構成されたハンマーストッパ13bが取り付けられている。
【0019】
鍵3は、合成樹脂(例えばAS)の射出成形品などで構成されており、下方に開放する中空状に形成され、前後方向に延びている。鍵3の後端部には、左右両側に突出する支点軸23が設けられている。鍵3は、この支点軸23が鍵支点13aに係合することによって、後シャーシ13に回動自在に支持されている。
【0020】
また、白鍵3aの前端部には、左右一対のフック部21、21(1つのみ図示)が設けられている。これらのフック部21、21は、左右の側壁から前シャーシ11の係合孔11a、11aを通って下方に延び、さらにその下端から前方に屈曲している。離鍵状態では、このフック部21が前シャーシ11の鍵ストッパ11bに下方から当接することによって、白鍵3aの上限位置が規制される。また、白鍵3aの下面には、フック部21よりも後方の位置に、下方に突出するアクチュエータ部22が設けられている。
【0021】
ハンマー4は、ハンマー本体24と、ハンマー本体24に取り付けられた錘25で構成されている。ハンマー本体24は、合成樹脂(例えばPOM(ポリアセタール))の射出成形品などで構成されており、前後方向に延び、その中心よりも若干、前側の位置に、下方に開放するU字状の軸孔26aを有している。ハンマー4は、この軸孔26aがハンマー支点12aに係合することによって、中シャーシ12に回動自在に支持されている。
【0022】
また、ハンマー本体24の軸孔26aよりも前側には、上方および前方に開放する係合凹部26bが形成されている。鍵3のアクチュエータ部22は、係合凹部26bに収容されるとともに、その底面に当接している。さらに、ハンマー本体24の係合凹部26bの底壁は、鍵スイッチ17を押圧するためのスイッチ押圧部26cになっている。図3に示すように、スイッチ押圧部26cの下面は、下向きに凸状に緩やかに湾曲した所定の形状を有する押圧面26dになっている。
【0023】
また、ハンマー本体24の後半部の一方の側部は、錘取付け部27になっており、この錘取付け部27に錘25が着脱自在に取り付けられている。錘25は、ハンマー本体24よりも比重の大きな鉄などの金属板で構成され、プレス加工などによって所定の形状に形成されている。この錘25は、前後方向に延び、その前半部においてハンマー本体24の錘取付け部27に取り付けられるとともに、錘取付け部27から後方に突出し、後シャーシ13の後端付近まで延びている。
【0024】
鍵スイッチ17は、プリント基板17aと、このプリント基板17aに鍵3ごとに取り付けられた複数のスイッチ本体17bを有している。プリント基板17aは、後端部が中シャーシ12に差し込まれた状態で、前端部が前シャーシ11にねじ止めされており、前下がりに傾斜するとともに、左右方向に延びている。また、図3に示すように、プリント基板17aの上面には、鍵3ごとに、ハンマー支点12aに近い側に第1固定接点18aが、ハンマー支点12aから遠い側に第2固定接点18bが、前後方向に互いに所定の間隔を隔てて取り付けられている。
【0025】
各スイッチ本体17bは、ゴムなどの弾性材で構成され、被押圧部31および周壁部32を一体に有し、下方に開放する中空状に形成されている。周壁部32の下面には、複数のボス(図示せず)が形成されている。スイッチ本体17bは、これらのボスをプリント基板17aの係合孔(図示せず)に差し込むことによって、第1および第2固定接点18a,18bを覆うようにプリント基板17aに取り付けられている。
【0026】
被押圧部31の上面は被押圧面31aになっており、離鍵状態において、この被押圧面31aにハンマー4の押圧面26dが上方から対向している。被押圧面31aは、ハンマー4の押圧面26dに対応して、下向きに凹状に緩やかに湾曲した同じ所定の形状を有する。また、図3(a)に示すスイッチ本体17bの被押圧面31aと図3(b)に示すハンマー4の押圧面26dとの比較から明らかなように、被押圧面31aは、ハンマー4の回動が終了したとき(以下「ハンマーの回動終了時」という)の押圧面26dの向きにほぼ合致するように配置されている。
【0027】
また、被押圧部31には、プリント基板17a側に延びる第1取付け部33aおよび第2取付け部33bが一体に設けられている。第1取付け部33aの長さは、第2取付け部33bの長さよりも若干大きい。また、第1および第2取付け部33a,33bの先端には、第1可動接点34aおよび第2可動接点34bがそれぞれ取り付けられている。これらの第1および第2可動接点34a,34bは、第1および第2固定接点18a,18bにそれぞれ上方から対向しており、それらの間隔は、第2可動接点34b側の方が大きい。
【0028】
次に、図1〜図3を参照しながら、鍵盤装置1の動作について説明する。図1および図3(a)に示すように、離鍵状態では、ハンマー4は、錘25の重さによって後ろ下がりに傾斜している。この離鍵状態から鍵3が押鍵されると、図2に示すように、鍵3は、鍵支点13aを中心として同図の反時計方向に回動する。これに伴い、鍵3のアクチュエータ部22が、ハンマー4の係合凹部26bの底部を下方に押圧する。これにより、図3(b)に示すように、ハンマー4は、ハンマー支点12aを中心として反時計方向に回動し、スイッチ押圧部26cの押圧面26dがスイッチ本体17bの被押圧面31aの第1可動接点34a側に当接する。これにより、スイッチ本体17bの第1可動接点34a側が主として押圧され、圧縮変形することによって、第1可動接点34aが第1固定接点18aに接触し、その接触状態を表す第1検出信号が出力される。
【0029】
その後、ハンマー4がさらに回動するのに伴い、押圧面26dが被押圧面31aの第2可動接点34b側にも当接するようになることで、スイッチ本体17bの第2可動接点34b側が押圧され、圧縮変形する。これにより、第2可動接点34bが第2固定接点18bに接触し、その接触状態を表す第2検出信号が出力される。これらの第1および第2検出信号および両者の時間差に基づいて、鍵3の押鍵の有無および押鍵速度などの押鍵情報が検出される。
【0030】
その後、ハンマー4は、スイッチ本体17bを圧縮変形させながら、さらに回動し、後端部がハンマーストッパ13bに当接することによって、ハンマー4の回動が終了する。図3(b)は、このハンマー4の回動終了時の状態を示し、このときのハンマー4の押圧面26dの向きは、ハンマー4で押圧される前の図3(a)に示すスイッチ本体17bの被押圧面31aの向きに合致している。
【0031】
一方、押鍵した鍵3が離鍵されると、ハンマー4が上記と逆の方向に回動し、それに伴い、鍵3が、アクチュエータ部22を介して押し上げられることにより、上記と逆の方向に回動し、そのフック部21が鍵ストッパ11bに当接することによって、鍵3のそれ以上の回動が阻止される。これにより、鍵3およびハンマー4は、図1および図3(a)に示す離鍵状態に復帰する。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、スイッチ本体17bの被押圧面31aは、ハンマー4の押圧面26dと同じ形状を有するとともに、第1および第2可動接点34a,34bが第1および第2固定接点18a,18bにそれぞれ接触した後にハンマー4の回動終了時の押圧面26dの向きに合致するように配置されている。これにより、回動量が最大になるハンマー4の回動終了時において、スイッチ本体17bの圧縮量が第1可動接点34a側と第2可動接点34b側との間でほぼ等しくなり、スイッチ本体17bはほぼ均一に圧縮され、スイッチ本体17bが傾くことはない。その結果、第1および第2可動接点34a,34bが第1および第2固定接点18a,18bに対して、接触後にずれたり、外れたりすることがなくなり、ハンマー4の回動量が大きい場合でも、それらの安定した接触動作が確保されることによって、押鍵情報を正確に検出することができる。
【0033】
また、ハンマー4の押圧面26dが凸状に形成されているため、この押圧面26dがスイッチ本体17bの被押圧面31aを押圧する際、プリント基板17aまでの距離を保ちやすくなり、ハンマー4の押圧面26d以外の部分、特にハンマー支点12aから遠い先端側の部分が、プリント基板17aと干渉しにくくなる。その結果、ハンマー4のより大きな回動量を確保できるため、押鍵時のタッチ感をアコースティックピアノに、より近似させることができる。
【0034】
次に、図4を参照しながら、本発明の第2実施形態による鍵盤装置41について説明する。なお、以下の説明では、前述した第1実施形態の鍵盤装置1と同様の構成部品については適宜、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0035】
同図に示すように、鍵盤装置41は、第1実施形態の鍵盤装置1と比較して、ハンマー42の押圧面42aおよび鍵スイッチ43のスイッチ本体44の被押圧面44aの形状のみが異なる。具体的には、同図(a)に示すように、ハンマー42の押圧面42aは平面で構成され、それに対応して、スイッチ本体44の被押圧面44aもまた平面で構成されている。また、同図(a)の被押圧面44aと同図(b)の押圧面42aとの比較から明らかなように、被押圧面44aは、ハンマー42の回動終了時の押圧面42aの向きにほぼ合致するように配置されている。
【0036】
以上の構成により、同図(a)に示す離鍵状態から鍵3が押鍵されると、第1実施形態と同様にして、ハンマー42が同図の反時計方向に回動することにより、ハンマー42の押圧面42aが、スイッチ本体44の被押圧面44aに第1可動接点34a側から当接し、その後、第2可動接点34b側に当接することによって、スイッチ本体44が圧縮変形する。この圧縮変形により、第1および第2可動接点34a,34bが第1および第2固定接点18a,18bに順にそれぞれ接触し、それらの接触状態を表す第1および第2検出信号が出力される。
【0037】
その後、ハンマー42は、スイッチ本体44を圧縮変形させながら、さらに回動し、ハンマーストッパ13bに当接することによって、ハンマー42の回動が終了する(同図(b))。このハンマー42の回動終了時の押圧面42aの向きは、ハンマー42で押圧される前の同図(a)に示すスイッチ本体44の被押圧面44aの向きに合致している。
【0038】
以上から、本実施形態においても、第1実施形態と同様、ハンマー42の回動終了時において、スイッチ本体44の圧縮量が第1可動接点34a側と第2可動接点34b側との間でほぼ等しくなり、スイッチ本体17bはほぼ均一に圧縮される。その結果、第1および第2可動接点34a,34bと第1および第2固定接点18a,18bとの安定した接触動作が確保されることによって、押鍵情報を正確に検出することができる。
【0039】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態で示したハンマーの押圧面およびスイッチ本体の被押圧面の形状は、あくまで例示であり、他の適当な形状に変更してもよい。また、実施形態では、複数の可動接点および固定接点として、第1および第2の2つの可動接点および固定接点を用いているが、これらの数はそれぞれ3つ以上でもよい。さらに、実施形態では、鍵スイッチがハンマーの下方に配置されているが、これらの構成および配置などは任意である。
【0040】
また、実施形態は、電子ピアノの鍵盤装置の例であるが、本発明は、他の電子鍵盤楽器の鍵盤装置にも、もちろん適用することができる。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 鍵盤装置
3 鍵
3a 白鍵
3b 黒鍵
4 ハンマー
17 鍵スイッチ
17a プリント基板(基板)
17b スイッチ本体
18a 第1固定接点(固定接点)
18b 第2固定接点(固定接点)
26d 押圧面
31a 被押圧面
34a 第1可動接点(可動接点)
34b 第2可動接点(可動接点)
41 鍵盤装置
42 ハンマー
42a 押圧面
43 鍵スイッチ
44 スイッチ本体
44a 被押圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動自在の鍵と、
所定の形状の押圧面を有し、当該鍵の押鍵に伴って回動するハンマーと、
前記鍵の押鍵情報を検出するための鍵スイッチと、を備え、
当該鍵スイッチは、
複数の固定接点が設けられた基板と、
弾性材で構成され、被押圧面を有し、前記複数の固定接点を覆うように前記基板に設けられた中空状のスイッチ本体と、
当該スイッチ本体の内部に設けられ、前記複数の固定接点に互いに異なる間隔を隔てて対向するとともに、前記鍵の押鍵に伴い、前記スイッチ本体の前記被押圧面が前記ハンマーの前記押圧面で押圧されることにより、前記スイッチ本体が圧縮変形することによって、前記複数の固定接点に順にそれぞれ接触する複数の可動接点と、を有し、
前記スイッチ本体の前記被押圧面は、前記ハンマーの前記押圧面と同じ形状を有するとともに、前記複数の可動接点が前記複数の固定接点にそれぞれ接触した後に前記ハンマーの回動が終了したときの当該ハンマーの前記押圧面の向きに合致するように配置されていることを特徴とする電子鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
前記ハンマーの前記押圧面は凸状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate