説明

電気二重層コンデンサおよびその製造方法

【課題】コンデンサ素子の引出し電極部を確実にケースに電気的に接続すると共に、コンデンサ素子をケースに固定することのできる電気二重層コンデンサを提供する。
【解決手段】電気二重層コンデンサ1は、円筒状のコンデンサ素子10と、コンデンサ素子10が電解液を含浸した状態で収納される有底筒状のケース30とを有する。ケース30は導電性材料で形成されている。コンデンサ素子10は、陽極箔11と陰極箔12とがセパレータ13を介して巻回された構造を有する。陽極箔11および陰極箔12は、幅方向に関して互いに逆の一端部に、それぞれ引出し電極部14a、16aを有している。引出し電極部16aと、ケース30とは、環状に括れた形状に形成されており、ケース30の括れ形状の先端部によって、引出し電極部16aが押圧されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子の両端に引出し電極部を有する電気二重層コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサとは、電極(分極性電極)と電解液の界面において、極めて短い距離で電荷が配列される現象(電気二重層)を利用したコンデンサである。
一般に、電気二重層コンデンサのコンデンサ素子は、アルミニウム等の金属箔からなる集電体の上に分極性電極層が形成された陽極箔および陰極箔を、セパレータを介して巻回することによって得られる。電気二重層コンデンサは、このようなコンデンサ素子が、電解液を含浸した状態で、アルミニウム等からなる有底筒状のケースに収納されたものである(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、特許文献1の電気二重層コンデンサにおいては、分極性電極から電荷を引き出すために、陽極箔および陰極箔の幅方向に関して互いに逆の一端部に、それぞれ引出し電極部を形成して、コンデンサ素子の両端に引出し電極部を設けており、一方の引出し電極部はケースの底面に接触させることにより電気的に接続され、他方の引出し電極部は、リード棒に溶接等によって接続されている。
【0004】
また、特許文献1の電気二重層コンデンサでは、コンデンサ素子はケースに固定されていない。そのため、このような電気二重層コンデンサに大きな振動が加わった場合、内部のコンデンサ素子にも負荷がかかるため、リード棒と引出し電極部との溶接部分に負荷がかかり、最悪の場合破損してしまう。また、ケースの底面と引出し電極部とは単に接触させただけなので振動により離れてしまう場合がある。
【0005】
特許文献2には、耐振動性を向上させた電気二重層コンデンサが記載されている。特許文献2の電気二重層コンデンサでは、ケースの開口側と底面側の外周面に環状の絞り加工部を形成し、この絞り加工部の内面で引出し電極部の外周面を押圧して固定している。
2つの引出し電極部の一方は、ケースの底面にレーザー溶接によって接続されており、他方の引出し電極部は、ケースの開口端に配置されて封止材を兼ねる端子板に、接触により接続されている。また、他方の引出し電極部の外周面とケースの内周面との間には、短絡防止のために絶縁部材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3013047号公報
【特許文献2】特開2007−258414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の電気二重層コンデンサでは、ケースの底面に引出し電極部を接続しているが、引出し電極部の端面は、渦巻き状に巻回された金属箔の縁で構成されるため、引出し電極部に端面を完全に揃えるのは難しく、また、巻回工程の際に箔の位置ずれが生じやすい。また、ケースに絞り加工部を形成して、コンデンサ素子とケースとを固定しているため、引出し電極部がケースの絞り加工部によって押圧されることにより、引出し電極部の外縁部の筒軸方向長さが、中央部の筒軸方向長さよりも短くなる場合がある。
さらに、ケースの底面と引出し電極部との溶接は、コンデンサ素子の中央に形成された空洞部から溶接用の治具等を挿入して行うため、溶接状態を視認することができない。
また、引出し電極部の端面全体をケース底面に溶接することは一般に困難であり、引出し電極部の端面の一部しか、ケース底面に溶接されない場合があるため、引出し電極部とケースとの電気的接続が不十分となり、信頼性は低い。
【0008】
また、一般的に、溶接部は残留応力による脆弱な箇所が存在するため、急激な温度変化を繰り返すような環境に特許文献2に記載の電気二重層コンデンサを設置した場合、引出し電極部とケース底面との溶接部分が、熱サイクルを負荷した際の低温時に金属収縮によって割れてしまい、電気的接続が遮断されてしまう場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、コンデンサ素子の引出し電極部を確実にケースに電気的に良好な状態で接続すると共に、コンデンサ素子をケースに固定することのできる電気二重層コンデンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明の電気二重層コンデンサは、陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子が電解液を含浸した状態で収納される有底筒状のケースとを含む電気二重層コンデンサであって、前記陽極箔および陰極箔の一方が、幅方向一端部に第1引出し電極部を有しており、前記ケースの周面は、少なくとも前記第1引出し電極部に相当する領域が、導電性材料で形成されており、さらに、前記第1引出し電極部と前記ケースとは、環状に括れた形状に形成されており、前記ケースの括れた形状の先端部によって、前記第1引出し電極部が押圧されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、第1引出し電極部とケースとは、環状に括れた形状に形成されており、ケースの括れた形状の先端部によって、第1引出し電極部が押圧されている。そのため、第1引出し電極部は、全周にわたってケースの内周面と接触しており、引出し電極部の端面をケースの底面に接触させる場合に比べて、大きい接触面積で確実に接触させることができ、安定的にかつ電気的に良好な状態で接続することができる。
また、第1引出し電極部は、ケースの括れた形状の先端部に押圧されてケースに固定されているため、電気二重層コンデンサに大きな振動が加わった場合であっても、電気的接続が安定している。
さらに、第1引出し電極部とケースとを溶接により接続していないため、使用環境温度が急激に変化した場合であっても、接続部分が破損して電気的接続が遮断されることがない。
また、第1引出し電極部とケースとを共に環状に括れた形状に形成することによって、第1引出し電極部とケースとを電気的に接続すると同時に、コンデンサ素子をケースに固定することができるため、素子のケースへの固定と電気的接続とを別工程で行う場合に比べて製造工程を簡略化できる。
【0012】
第2の発明の電気二重層コンデンサは、前記第1の発明において、前記陽極箔および前記陰極箔の他方が、幅方向に関して前記第1引出し電極部と反対側に、第2引出し電極部を有し、前記第2引出し電極部を覆う円筒状の端子部材を備えており、前記第2引出し電極部と、前記端子部材とが、環状に括れた形状に形成され、前記端子部材の括れた形状の先端部によって、前記第2引出し電極部が押圧されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、第2引出し電極部と端子部材とは、環状に括れた形状に形成されており、端子部材の括れた形状の先端部によって、第2引出し電極部が押圧されている。そのため、第2引出し電極部は、全周にわたって端子部材の内周面と接触しており、引出し電極部の端面を板状の接続用部材に接触させる場合に比べて、大きい接触面積で確実に接触させることができ、安定的に電気的に接続することができる。
また、第2引出し電極部が端子部材の括れた形状に押圧されることによって、第2引出し電極部と端子部材とは固定されているため、電気二重層コンデンサに大きな振動が加わった場合であっても、第2引出し電極部と端子部材との電気的接続を維持することができる。
さらに、第2引出し電極部と端子部材との接続に溶接を用いていないため、使用環境温度が急激に変化した場合であっても、接続部分が破損して電気的接続が遮断されることがない。
【0014】
第3の発明の電気二重層コンデンサは、前記第2の発明において、前記ケースの周面が、導電性材料で形成されており、前記端子部材の外周面と、前記ケースの内周面との間に、絶縁部材が介在しており、前記ケースが、前記端子部材の前記括れた形状に沿った形状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、端子部材とケースとの間に絶縁部材が介在しているため、端子部材とケースとの短絡を防止できる。
また、ケースと絶縁部材とは、端子部材の括れた形状に沿った形状に形成されているため、ケースと端子部材、即ち、ケースとコンデンサ素子とを固定することができる。
【0016】
第4の発明の電気二重層コンデンサは、前記第1〜3の何れかの発明において前記第1引出し電極部の外周面と、前記ケースの内周面との間に、金属箔が介在していることを特徴とする。
【0017】
この構成によると、第1引出し電極部の括れた形状の先端部付近と、ケースの括れた形状の先端部付近との間の隙間が、金属箔で埋められるため、第1引出し電極部とケースとを電気的により確実に接続することができる。
【0018】
第5の発明の電気二重層コンデンサの製造方法は、陽極箔および陰極箔の一方の幅方向一端部に第1引出し電極部を形成し、前記陽極箔と前記陰極箔とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を形成する工程と、前記コンデンサ素子に電解液を含浸させた後、少なくとも前記第1引出し電極部に相当する領域が導電性材料で形成されている有底筒状のケースに前記コンデンサ素子を挿入する工程と、前記第1引出し電極部と前記ケースとを、前記ケースの外側から環状に絞り加工して、前記第1引出し電極部と前記ケースとを電気的に接続すると同時に、前記コンデンサ素子を前記ケースに固定する工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
この構成によると、第1引出し電極部とケースとは、ケース外周から環状に絞り加工することによって、互いに固定されている。そのため、第1引出し電極部は、全周にわたってケースの内周面と接触しており、引出し電極部の端面をケースの底面に接触させる場合に比べて、大きい接触面積で確実に接触させることができ、安定的かつ電気的に良好な状態で接続することができる。
また、第1引出し電極部は、絞り加工によってケースに固定されているため、電気二重層コンデンサは耐振動性に優れている。
さらに、第1引出し電極部とケースとの接続に溶接を用いていないため、環境温度が急激に変化した場合であっても、接続部分が破損して電気的接続が遮断されることがない。
また、第1引出し電極部とケースとを絞り加工することによって、第1引出し電極部とケースとを電気的に接続すると同時に、コンデンサ素子をケースに固定することができるため、素子のケースへの固定と電気的接続とを別工程で行う場合に比べて製造工程を簡略化できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電気二重層コンデンサによると、引出し電極部とケースとを電気的に確実に接続することができると同時に、コンデンサ素子をケースに固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る電気二重層コンデンサの断面図である。
【図2】コンデンサ素子の分解斜視図である。
【図3】コンデンサ素子の部分拡大断面図である。
【図4】(a)は端子部材の平面図であって、(b)は端子部材の正面図である。
【図5】(a)は絶縁部材の平面図であって、(b)は絶縁部材の正面図である。
【図6】電気二重層コンデンサの製造工程において、コンデンサ素子をケース内に挿入したときの図である。
【図7】他の実施形態に係る電気二重層コンデンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の電気二重層コンデンサ1は、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収納するケース30と、端子部材20と、絶縁部材40とを有する。
【0023】
図2に示すように、コンデンサ素子10は、陽極箔11と陰極箔12とがセパレータ13を介して円筒状に巻回された構造を有する。図1に示すように、コンデンサ素子10の外周面の幅方向略中央部には、巻き止めテープ18が巻き付けられている。
【0024】
図2および図3に示すように、陽極箔11は、例えばアルミニウム箔等の金属箔からなる集電体14と、この集電体14の両面に形成された分極性電極層15とから構成されている。陰極箔12も陽極箔11と同じく、例えばアルミニウム箔等の金属箔からなる集電体16と、この集電体16の両面に形成された分極性電極層17とから構成されている。なお、分極性電極層15、17は、集電体14、16の片面にのみ形成されていてもよい。
【0025】
陽極箔11の分極性電極層15は、集電体14の幅方向の一端側(図2中左側)に形成されている。これにより、陽極箔11は、幅方向の他端側(図2中右側)に、集電体14のみからなる陽極側引出し電極部14aを有する。
陰極箔12の分極性電極層17は、集電体16の幅方向の一端側(図2中右側)に形成されている。これにより、陰極箔12は、幅方向の他端側(図2中左側)に、集電体16のみからなる陰極側引出し電極部16aを有する。
【0026】
分極性電極層15、17の幅は互いに同じである。陽極箔11と陰極箔12とは、分極性電極層15、17がセパレータ13を介して対向した状態で巻回されている。そのため、コンデンサ素子10は、両端部に、陽極側引出し電極部14aと陰極側引出し電極部16aを有する。
【0027】
分極性電極層15、17は、活性炭粉末を有する組成物で構成されており、例えば、集電体14、16の表面に、活性炭粉末、カーボンブラック、およびフッ素系樹脂バインダーからなるスラリーを一定の厚さで塗布し、乾燥することによって形成されている。
【0028】
図1に示すように、コンデンサ素子10の陽極側引出し電極部14aには、略円筒状の端子部材20が被せられており、端子部材20を外周から絞り加工することによって、陽極側引出し電極部14aと端子部材20とは固定されている。
【0029】
図4に示すように、端子部材20は、例えばアルミニウム等の導電性材料からなり、筒部21と、筒部21の一端を閉塞する円板部22とから構成されている。円板部22の外面には、円板状の突出部22aが形成されている。
【0030】
絞り加工によって、陽極側引出し電極部14aと端子部材20の筒部21とは、共に環状に括れた形状に形成されており、陽極側引出し電極部14aは、端子部材20の括れた形状部分(絞り加工部21aとする)の先端部によって押圧されている。
【0031】
図1に示すように、コンデンサ素子10は、電解液を含浸した状態でケース30に収納されている。電解液としては、例えば、1mol/Lのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを溶解したプロピレンカーボネート溶液からなるものが使用される。
【0032】
ケース30は、例えばアルミニウム等の導電性を有する金属材料からなり、有底筒状に形成されている。
コンデンサ素子10がケース30内に収納された状態で、ケース30の底面近傍部(陰極側引出し電極部16aに相当する位置)を外周から絞り加工することにより、陰極側引出し電極部16aとケース30とは固定されている。
この絞り加工によって、陰極側引出し電極部16aとケース30の周面とは、共に環状に括れた形状に形成されており、陰極側引出し電極部16aは、ケース30の括れた形状部分(絞り加工部30aとする)の先端部によって押圧されている。
【0033】
図1に示すように、端子部材20の筒部21の外周面と、ケース30の内周面との間には、絶縁部材40が介在している。
図5に示すように、絶縁部材40は、絶縁性を有する合成樹脂等により形成されており、環状板42と、環状板42の外縁から延びる筒部41とから構成されている。
絶縁部材40は、環状板42の中央に形成された孔から端子部材20の突出部22aを外部に露出させた状態で、端子部材20の外側を覆っている。
端子部材20に装着された状態での絶縁部材40の筒部41の外径は、ケース30の内径とほぼ同じであってもよいが、若干小さくてもよい。
端子部材20とケース30との間に絶縁部材40を介在させることによって、端子部材20とケース30との間の絶縁状態を保ち、端子部材20とケース30との短絡を防止している。
【0034】
ケース30の開口端は、巻き込み加工によって絶縁部材40に食い込んでいる。これにより、ケース30は密閉されている。
【0035】
次に、電気二重層コンデンサ1の製造手順について説明する。
【0036】
まず、金属箔からなる集電体14、16の表面に分極性電極層15、17を形成すると共に、集電体14、16の幅方向一端部に引出し電極部14a、16aを形成して、陽極箔11と陰極箔12とを形成した。
その後、図2に示すように、陽極側引出し電極部14aと陰極側引出し電極部16aとが、幅方向に関して互いに逆になるように陽極箔11と陰極箔12とを配置して、陽極箔11と陰極箔12とをセパレータ13を介して巻回してコンデンサ素子10を形成した。
【0037】
得られたコンデンサ素子10の陽極側引出し電極部14aに、端子部材20を被せて、端子部材20の外周から絞り加工を行い、陽極側引出し電極部14aと端子部材20とを接続した。
その後、図6に示すように、端子部材20が接続されたコンデンサ素子10を、電解液に浸漬してから、ケース30に挿入した。
【0038】
次に、陰極側引出し電極部16aとケース30とを、ケース30の外周から環状に絞り加工して、陰極側引出し電極部16aとケース30とを電気的に接続すると同時に、コンデンサ素子10をケース30に固定した。
【0039】
最後に、端子部材20に絶縁部材40を被せてから、ケース30の開口端を巻き込み加工によって絶縁部材40の環状板42に食い込ませて、ケース30を密閉した。なお、絶縁部材40は、ケース30内に挿入する前の状態のコンデンサ素子10の端子部材20に予め被せておいてもよい。
【0040】
以上説明した電気二重層コンデンサ1においては、上述したように、引出し電極部14a、16aと、端子部材20およびケース30とは、環状に括れた形状に形成されており、端子部材20およびケース30の絞り加工部21a、30aの先端部によって、引出し電極部14a、16aは押圧されている。
そのため、引出し電極部14a、16aは、全周にわたって端子部材20およびケース30の内周面に接触しており、引出し電極部の端面をケース30の底面等に接触させる場合に比べて、大きい接触面積で確実に接触させることができ、安定的にかつ電気的に良好な状態で接続することができる。
【0041】
また、陰極側引出し電極部16aは、ケース30と共に環状に絞り加工されることによって、引出し電極部16aに電気的に接続されると同時に、ケース30に固定されている。そのため、コンデンサ素子10のケース30への固定と電気的接続とを別工程で行う場合に比べて、製造工程を簡略化できる。
【0042】
陰極側引出し電極部16aは、ケース30の絞り加工部30aの先端部に押圧されてケース30に固定されているため、電気二重層コンデンサ1に大きな振動が加わった場合であっても、負荷によるコンデンサ素子10のケース30に対する移動が抑制され、電気二重層コンデンサ1の電気的接続を安定させることができる。
【0043】
また、陽極側引出し電極部14aが端子部材20の絞り加工部21aの先端部に押圧されることによって、陽極側引出し電極部14aと端子部材20とは固定されているため、電気二重層コンデンサ1に大きな振動が加わった場合であっても、陽極側引出し電極部14aと端子部材20との接続を強固に維持することができる。
【0044】
さらに、引出し電極部14a、16aと、ケース30および端子部材20との接続に溶接を用いていないため、使用環境温度が急激に変化した場合であっても、接続部分が破損して電気的接続が遮断されることがない。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更しても実施することができる。
【0046】
例えば、図7に示すように、ケース30の開口側の周面が、端子部材20の括れ形状に沿った形状に形成されていてもよい。
具体的な製造手順としては、端子部材20と陽極側引出し電極部14aとを絞り加工によって接続した後に、ケース30と絶縁部材40とを、端子部材20の外周面の形状に沿って絞り加工してもよいが、陽極側引出し電極部14aに端子部材20を被せただけの状態で、コンデンサ素子10をケース30内に挿入し、ケース30と絶縁部材40と端子部材20と陽極側引出し電極部14aとを一度にケース30の外周から絞り加工してもよい。
これにより、ケース30と端子部材20、即ち、ケース30とコンデンサ素子10とを固定することができる。
また、この場合には、コンデンサ素子10はケース30の開口側部分に固定されるため、陰極側引出し電極部16aは、ケース30の底面に接触させただけで、ケース30の底面近傍部と共に絞り加工されていなくもよい。
【0047】
なお、陰極側引出し電極部16aとケース30との間に、アルミニウム等の導電性を有する金属箔を介在させてもよい。
具体的な製造手順としては、例えば、陰極側引出し電極部16aの外周面に金属箔を巻き付けた状態で、コンデンサ素子10をケース30内に挿入する。
この方法であっても、陰極側引出し電極部16aの括れた形状の先端部付近と、ケース30の底面近傍部の括れた形状の先端部付近との間の隙間が、金属箔で埋められるため、陰極側引出し電極部16aとケース30を電気的により確実に接続することができる。
【0048】
上記実施形態では、陽極側引出し電極部14aが、端子部材20に接続され、陰極側引出し電極部16aがケース30の底面近傍部に接続されているが、逆に、陰極側引出し電極部16aが、端子部材20に接続され、陽極側引出し電極部14aがケース30に接続されていてもよい。
【0049】
また、陽極側引出し電極部14aは、リード棒等に溶接されていてもよい。
【0050】
上記実施形態では、コンデンサ素子10は、ほぼ真円の円筒状であるが、楕円の円筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 電気二重層コンデンサ
10 コンデンサ素子
11 陽極箔
12 陰極箔
13 セパレータ
14 集電体(陽極側)
14a 陽極側引出し電極部(第2引出し電極部)
15 分極性電極層(陽極側)
16 集電体(陰極側)
16a 陰極側引出し電極部(第1引出し電極部)
17 分極性電極層(陰極側)
18 巻き止めテープ
20 端子部材
21 筒部
21a 絞り加工部
22 円板部
22a 突出部
30 ケース
30a 絞り加工部
40 絶縁部材
41 筒部
42 環状板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子が電解液を含浸した状態で収納される有底筒状のケースとを含む電気二重層コンデンサであって、
前記陽極箔および陰極箔の一方が、幅方向一端部に第1引出し電極部を有しており、
前記ケースの周面は、少なくとも前記第1引出し電極部に相当する領域が、導電性材料で形成されており、
さらに、前記第1引出し電極部と前記ケースとは、環状に括れた形状に形成されており、前記ケースの括れた形状の先端部によって、前記第1引出し電極部が押圧されていることを特徴とする電気二重層コンデンサ。
【請求項2】
前記陽極箔および前記陰極箔の他方が、幅方向に関して前記第1引出し電極部と反対側に、第2引出し電極部を有し、
前記第2引出し電極部を覆う円筒状の端子部材を備えており、
前記第2引出し電極部と、前記端子部材とが、環状に括れた形状に形成され、前記端子部材の括れた形状の先端部によって、前記第2引出し電極部が押圧されていることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項3】
前記ケースの周面が、導電性材料で形成されており、
前記端子部材の外周面と、前記ケースの内周面との間に、絶縁部材が介在しており、
前記ケースが、前記端子部材の前記括れた形状に沿った形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項4】
前記第1引出し電極部の外周面と、前記ケースの内周面との間に、金属箔が介在していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項5】
陽極箔および陰極箔の一方の幅方向一端部に第1引出し電極部を形成し、前記陽極箔と前記陰極箔とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を形成する工程と、
前記コンデンサ素子に電解液を含浸させた後、少なくとも前記第1引出し電極部に相当する領域が導電性材料で形成されている有底筒状のケースに前記コンデンサ素子を挿入する工程と、
前記第1引出し電極部と前記ケースとを、前記ケースの外側から環状に絞り加工して、前記第1引出し電極部と前記ケースとを電気的に接続すると同時に、前記コンデンサ素子を前記ケースに固定する工程とを含むことを特徴とする電気二重層コンデンサの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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