説明

電気化学素子用電極および電気化学素子

【課題】 電気化学素子の電子移動抵抗および内部抵抗を低減し、出力密度を高めることを可能とする電気化学素子用電極および該電極を使用した電気化学素子を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る電気化学素子用電極は、炭素繊維および結着剤を含んでなる導電性接着剤層を介して、集電体上に電極組成物層が形成されてなることを特徴としている。特に、本発明では、炭素繊維の短軸数平均径が0.001μm〜50μmであり、またそのアスペクト比が5〜100000であることが好ましい。本発明の電気化学素子は、電極として、上記電気化学素子用電極を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子用電極および電気化学素子に関する。より詳しくは、電子移動抵抗および内部抵抗を低減し、出力密度に優れた電気化学素子用電極および電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能なリチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの電気化学素子は、その特性を活かして急速に需要を拡大している。リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が比較的大きいことから、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの分野で利用されている。また、電気二重層キャパシタは急激な充放電が可能なので、パーソナルコンピュータ等のメモリーバックアップ用の小型電源として利用されている。さらに電気二重層キャパシタは電気自動車用の大型電源としての応用が期待されている。また、金属酸化物や導電性高分子の表面の酸化還元反応(疑似電気二重層容量)を利用するレドックスキャパシタもその容量の大きさから注目を集めている。これら電気化学素子には、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、高容量化、機械的特性の向上など、よりいっそうの改善が求められている。
【0003】
電気化学素子は、有機系電解液を用いることで作動電圧を高め、エネルギー密度を高めることができるが、一方では電解液の粘度が高いために、内部抵抗が大きいという問題点があった。
【0004】
内部抵抗を低減する目的で、電極組成物層と集電体との間に導電性接着剤層を設けることが提案されている(特許文献1)。特許文献1における導電性接着剤は、導電材としてカーボンブラックを含み、結着剤としてポリビニリデンフルオライド樹脂を含む。しかし、かかる導電性接着剤では、電極の内部抵抗の低減がなお不十分であった。
【特許文献1】特開2002−075805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気化学素子の電子移動抵抗および内部抵抗を低減し、出力密度を高めることを可能とする電気化学素子用電極および該電極を使用した電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題の目的を達成するべく鋭意検討した結果、電気化学素子用電極の電極組成物層と集電体とを接合するための導電性接着剤に含まれる導電材として、炭素繊維を使用することで、電極の電子移動抵抗および内部抵抗が低下し、素子の出力密度が向上することを見出した。
【0007】
本発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成させるに至った。すなわち、上記課題を解決する本発明は、下記事項を要旨として含む。
【0008】
(1)炭素繊維および結着剤を含んでなる導電性接着剤層を介して、集電体上に電極組成物層が形成されてなる電気化学素子用電極。
【0009】
(2)前記炭素繊維の短軸数平均径が0.001μm〜50μmである(1)に記載の電気化学素子用電極。
【0010】
(3)前記炭素繊維のアスペクト比が5〜100000である(1)または(2)に記載の電気化学素子用電極。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電気化学素子用電極を有する電気化学素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電気化学素子用電極によれば、電極の電子移動抵抗および内部抵抗が低減し、出力密度の高い電気化学素子を容易に製造できる。さらに、導電性接着剤層に炭素繊維を使用することで、電極組成物層との密着性を高めることができるため、耐久性が高められるという予期できない効果をも奏される。
【0013】
本発明の電気化学素子は、パソコンや携帯端末等のメモリのバックアップ電源、パソコン等の瞬時停電対策用電源、電気自動車又はハイブリッド自動車への応用、太陽電池と併用したソーラー発電エネルギー貯蔵システム、電池と組み合わせたロードレベリング電源等の様々な用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の電気化学素子用電極は、炭素繊維および結着剤を含んでなる導電性接着剤層を介して、集電体上に電極組成物層が形成されてなることを特徴とする。
【0015】
(炭素繊維)
本発明の電気化学素子用電極の導電性接着剤層に用いる炭素繊維は、石油、石炭、コールタールおよび炭化水素等の原料を高温で炭化することで微細な黒鉛結晶構造をもつ繊維状の炭素物質で、非局在化したπ電子の存在によって高い導電性を有する。具体的には、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられるが、好ましくは気相法炭素繊維、カーボンナノチューブである。
【0016】
炭素繊維の短軸数平均径は、好ましくは0.001μm〜50μm、さらに好ましくは0.005〜10μm、特に好ましくは0.01〜5μmである。炭素繊維の短軸数平均径がこの範囲にあるときは、導電性接着剤層の炭素繊維が高充填され、高導電性が得られる。ここで短軸数平均径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだ炭素繊維100個の短軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である。
【0017】
炭素繊維のアスペクト比は、好ましくは5〜100000、さらに好ましくは10〜50000、特に好ましくは15〜10000である。炭素繊維のアスペクト比がこの範囲にあるときは、導電性接着剤層を形成するためのスラリー組成物を容易に製造することができる。ここで、アスペクト比は(短軸数平均径)/(長軸数平均径)で表される値である。長軸数平均径は、透過電子顕微鏡写真で無作為に選んだ炭素繊維100個の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径とする。
【0018】
(結着剤)
本発明の電気化学素子用電極の導電性接着剤層に用いる結着剤は、炭素繊維を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はない。好適な結着剤は、溶媒に分散する性質のある分散型結着剤である。分散型結着剤としては、例えば、フッ素系重合体、ジエン系重合体、アクリレート系重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン系重合体等の高分子化合物が挙げられ、好ましくはフッ素系重合体、ジエン系重合体およびアクリレート系重合体、より好ましくはジエン系重合体およびアクリレート系重合体が挙げられる。
【0019】
ジエン系重合体は、共役ジエンの単独重合体もしくは共役ジエンを含む単量体混合物を重合して得られる共重合体、またはそれらの水素添加物である。前記単量体混合物における共役ジエンの割合は通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエン単独重合体;カルボキシ変性されていてもよいスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)などのシアン化ビニル・共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。
【0020】
アクリレート系重合体はアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを重合して得られる単量体単位を通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有するアクリレート系重合体が好ましく、耐熱性が高く、かつ得られる電気二重層キャパシタ用電極の内部抵抗を小さくできる。アクリレート系重合体の具体例としては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸・アクリロニトリル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸・メタクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル・アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・スチレン・メタクリル酸共重合体、およびアクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・アクリロニトリル・イタコン酸重合体などが挙げられる。
【0021】
結着剤のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは−100〜0℃である。結着剤のTgがこの範囲であると、少量の使用量で結着性に優れ、電極強度が高く、柔軟性に富み、電極形成時のプレス工程により電極密度を容易に高めることができる。
【0022】
結着剤の形状は、特に制限はないが、結着性が良く、また、作成した電極の容量の低下や充放電の繰り返しによる劣化を抑えることができるため、粒子状であることが好ましい。粒子状の結着剤としては、例えば、ラテックスのごとき結着剤の粒子が水に分散した状態のものや、このような分散液を乾燥して得られる粉末状のものが挙げられる。
【0023】
結着剤の数平均粒子径は、格別な限定はないが、通常は0.0001〜100μm、好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.01〜1μmの数平均粒子径を有するものである。結着剤の数平均粒子径がこの範囲であるときは、少量の結着剤の使用でも優れた結着力を導電性接着剤層に与えることができる。ここで、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだ結着剤粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である。粒子の形状は、球形、異形、どちらでもかまわない。これらの結着剤は単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
結着剤の使用量は、炭素繊維100重量部に対して、通常は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。結着剤の量がこの範囲にあると、導電性接着剤層と集電体または電極層との密着性が充分に確保でき、電気化学素子の容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。
【0025】
(導電性接着剤層)
本発明の電気化学素子用電極に用いる導電性接着剤層を形成するためのスラリー組成物は、必須成分として炭素繊維と結着剤とを有するものであり、必要に応じ添加される分散剤とを、水または有機溶媒中で混練することにより製造することができる。
【0026】
分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体などが挙げられる。これらの分散剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が特に好ましい。
【0027】
これらの分散剤の使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で用いることができ、格別な限定はないが、炭素繊維100重量部に対して、通常は0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは0.8〜2重量部の範囲である。
【0028】
得られた導電性接着剤形成用のスラリー組成物を、集電体に塗布、乾燥して導電性接着剤層が形成される。また、電極組成物層にスラリー組成物を塗布、乾燥して導電性接着剤層を形成してもよい。上記導電性接着剤層を形成することで、電極組成物層と集電体との間の結着性を向上させ、また内部抵抗の低下に寄与する。
【0029】
本発明の電気化学素子用電極に用いる導電性接着剤層の形成方法は、特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗りなどによって、集電体または電極組成物層上に形成される。
【0030】
導電性接着剤層の厚みは、通常0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。導電性接着剤層の厚みが前記範囲であることにより、良好な接着性が得られ、かつ電子移動抵抗を低減することができる。
【0031】
(集電体)
本発明の電気化学素子用電極に用いる集電体は、具体的には、金属、炭素、導電性高分子などを用いることができ、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用するのが好ましい。
【0032】
集電体の形状は、特に制限されないが、フィルム状またはシート状であり、シート状集電体は、空孔を有していてもよい。シート状集電体は、エキスパンドメタル、パンチングメタル、網状などの形状を有していてもよい。空孔を有するシート状集電体を用いると、得られる電極の体積あたりの容量を高くすることができる。シート状集電体が空孔を有する場合の空孔の割合は、好ましくは10〜79面積%、より好ましくは20〜60面積%である。
【0033】
集電体の厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は1〜200μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。集電体の厚みがこの範囲にあると、電子の移動抵抗が低減でき、内部抵抗が低減できる。
【0034】
(電極組成物層)
本発明の電気化学素子用電極の電極組成物層は、導電性接着剤層を介して集電体上に設けられるが、その形成方法は制限されない。具体的には、
電極活物質、導電材および結着剤を混練してなる電極形成用組成物を、シート成形し、得られたシート状電極層組成物を、表面に導電性接着剤層を有する集電体上に積層する方法(混練シート成形法)、
電極活物質、導電材および結着材からなるペースト状の電極形成用組成物を調製し、表面に導電性接着剤層を有する集電体上に塗布し、乾燥する方法(湿式成形法)、
電極活物質、導電材および結着剤からなる複合粒子を調製し、表面に導電性接着剤層を有する集電体上にシート成形、ロールプレスし得る方法(乾式成形法)がなどが挙げられる。中でも、湿式成形法、乾式成形法が好ましく、乾式成形法がより好ましい。
【0035】
また、シート状電極層組成物を作成し、該シート上に導電性接着剤を形成し、さらに集電体を積層して電気化学素子用電極を得ることもできる。
【0036】
電極組成物層を形成する電極活物質、導電材および結着剤としては、各種公知の材料が特に制限されることなく用いられる。
【0037】
電極組成物層の密度は、特に制限されないが、通常は0.30〜10g/cm、好ましくは0.35〜5.0g/cm、より好ましくは0.40〜3.0g/cmである。また、電極組成物層の厚みは、特に制限されないが、通常は5〜1000μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは30〜300μmである。
【0038】
(電気化学素子)
本発明の電気化学素子は、前記電気化学素子用電極を用いることを特徴とし、具体的には、上記電気化学素子用電極、セパレータおよび電解液で構成される。
【0039】
(セパレータ)
セパレータは、電気化学素子用電極の間を絶縁でき、陽イオンおよび陰イオンを通過させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、レーヨンもしくはガラス繊維製の微孔膜または不織布、一般に電解コンデンサ紙と呼ばれるパルプを主原料とする多孔質膜などを用いることができる。セパレータは、上記一対の電極組成物層が対向するように、電気化学素子用電極の間に配置され、素子が得られる。セパレータの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は1〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは20〜60μmである。
【0040】
(電解液)
電解液は、通常電解質と溶媒で構成される。電解質は、カチオン性であってもよく、アニオン性であってもよい。カチオン性電解質としては、以下に示すような(1)イミダゾリウム、(2)第四級アンモニウム、(3)第四級ホスホニウム、(4)リチウム等を用いることができる。
(1) イミダゾリウム
1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチル−エチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム等
(2)第四級アンモニウム
テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム等
(3)第四級ホスホニウム
テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、メチルトリブチルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウム等
(4)リチウム
【0041】
また、アニオン性電解質としては、PF、BF、AsF、SbF、N(RfSO2−、C(RfSO3−、RfSO(Rfはそれぞれ炭素数1〜12のフルオロアルキル基)、F、ClO、AlCl、AlF等を用いることができる。これらの電解質は単独または二種類以上として使用することができる。
【0042】
電解液の溶媒は、一般に電解液の溶媒として用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、プロピレンカーボート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネート類;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;スルホラン類;アセトニトリルなどのニトリル類;が挙げられる。これらは単独または二種以上の混合溶媒として使用することができる。中でも、カーボネート類が好ましい。
【0043】
上記の素子に電解液を含浸させて、本発明の電気化学素子が得られる。具体的には、キャパシタ素子を必要に応じ捲回、積層または折るなどして容器に入れ、容器に電解液を注入して封口して製造できる。また、素子に予め電解液を含浸させたものを容器に収納してもよい。容器としては、コイン型、円筒型、角型などの公知のものをいずれも用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例により本発明の電気化学素子をさらに具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定する。
【0045】
(電極組成物層と集電体との密着性)
電極組成物層と集電体との密着性は、導電性接着剤層および電極組成物層の塗布方向が長辺となるように電極を長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とし、電極組成物層面を下にして電極組成物層表面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付け、集電体の一端を垂直方向に引張り速度50mm/分で引張って剥がしたときの応力を3回測定し、その平均値を求め、密着性を評価する。この密着性をピール強度と称し、ピール強度が大きいほど電極組成物層の集電体への結着力が大きいことを示す。
【0046】
(電気特性)
実施例および比較例で製造したコインセル形状の電気二重層キャパシタの静電容量および内部抵抗は、作製したコインセルを24時間静置させた後に充放電の操作を行い測定する。ここで、充電は10mAの定電流で開始し、電圧が2.7Vに達したら、その電圧を保って定電圧充電とし、充電電流が0.5mAまで低下した時点で充電を完了する。また、放電は充電終了直後に定電流10mAで0Vに達するまで行った。静電容量は放電時のエネルギー換算法を用い、電気二重層キャパシタに使用している活物質の重量当たりの静電容量として算出する。内部抵抗は放電直後の電圧降下から算出する。
【0047】
(実施例1)
炭素繊維として短軸数平均径が0.15μm、アスペクト比10000の気相法炭素繊維(VGCF;昭和電工製)100部と、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの4.0%水溶液(DN−10L;ダイセル化学工業社製)を固形分で4部、結着剤として数平均粒子径が0.25μmのアクリレート重合体の40%水分散体を固形分で8部及びイオン交換水を全固形分濃度20%となるように混合し、導電性接着剤層形成用のスラリー組成物を調製した。
【0048】
一方、電極活物質として、体積平均粒子径が5μmのフェノール樹脂を原料とする水蒸気賦活炭である活性炭粉末(RP−20;クラレケミカル社製)100部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1.5%水溶液(DN−800H;ダイセル化学工業社製)を固形分で1.4部、導電材としてアセチレンブラック(デンカブラック粉状;電気化学工業社製)5部、結着剤として数平均粒子径が0.25μmでアクリレート重合体の40%水分散体を固形分で3部およびイオン交換水を全固形分濃度35%となるように混合し、電極層形成用のスラリー組成物を調製した。
【0049】
厚さ30μmのアルミニウム箔からなる集電体に前記導電性接着剤形成用のスラリー組成物を塗布し、120℃、10分間乾燥して厚み4μmの導電性接着剤層を形成した。
【0050】
前記導電性接着剤層を有する集電体上に、前記電極層形成用のスラリー組成物をドクターブレードによって塗布し、60℃20分間および120℃20分間にて乾燥し、厚み120μmの電極組成物層を形成し、得られた電気化学素子用電極を直径12mmの円形に打ち抜いて、電気二重層キャパシタ用電極を得た。
【0051】
この電極及びセパレータとしてセルロース(TF40;ニッポン高度紙工業社製)を、室温で1時間電解液に含浸させ、次いで2枚の電極がセパレータを介して分極性電極が内側になるように対向させ、それぞれの電極が電気的に接触しないように配置して、コインセル形状の電気二重層キャパシタを作製した。電解液には1.0mol/Lのテトラエチルアンモニウムフルオロボレートを用いた。この電極および電気二重層キャパシタの各特性を測定した結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2)
炭素繊維として、短軸数平均径が0.02μm、アスペクト比1500のカーボンナノチューブを用いた以外は、実施例1と同様にして電極および電気二重層キャパシタを作製した。この電極および電気二重層キャパシタの各特性を測定した結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
炭素繊維に代えて、短軸数平均径が0.3μmのカーボンブラック(デンカブラック;電気化学工業社製、アスペクト比1)を用いた他は、実施例1と同様にして電極および電気二重層キャパシタを作製した。この電極および電気二重層キャパシタの各特性を測定した結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
以上の実施例および比較例より明らかなように、本発明の電気化学素子は、電子移動抵抗および内部抵抗を低減し、出力密度を高めることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維および結着剤を含んでなる導電性接着剤層を介して、集電体上に電極組成物層が形成されてなる電気化学素子用電極。
【請求項2】
前記炭素繊維の短軸数平均径が0.001μm〜50μmである請求項1に記載の電気化学素子用電極。
【請求項3】
前記炭素繊維のアスペクト比が5〜100000である請求項1または2に記載の電気化学素子用電極。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学素子用電極を有する電気化学素子。