説明

電気手術装置及び電気手術装置における高周波電流回収方法

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的な電気手術装置及び電気手術装置における高周波電流回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】高周波電流発生部3から供給される高周波電流により身体部位P1を処置する電流処置部1と、処置する前記身体部位P1とは異なる身体部位P2に設けて身体を流れる前記高周波電流を回収する対極部2とを有する電気手術装置であって、前記高周波電流発生部3は前記電流処置部1に4.0Hz〜6.0MHzMHzの高周波電流を供給するように構成され、更に、前記対極部2は前記身体部位P2から所定距離Hを離した位置に配設されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば外科手術等に用いられる電気手術装置及び電気手術装置における高周波電流回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外科手術等に用いられる電気手術装置、例えば特開平8−52153号などで提案される電気手術装置(以下、従来例という。)は、高周波電流発生部から供給される高周波電流を高密度に集中させて生じる熱(ジュール熱)で身体部位を処置する電流処置部と、処置する身体部位とは異なる身体部位に装着されて身体を流れる高周波電流を回収する対極部とを有するものであり、高周波電流の熱作用により人体組織の切開や凝固(止血)を必要とする手術に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−52153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来例は、身体を流れる高周波電流を回収する際、身体部位への対極部の接触面積が狭いと、高周波電流が一部分に集中することにより熱傷が生じてしまう為、この身体を流れる高周波電流をなるべく分散させて回収すべく、対極部は面積が広い板状に形成されている。
【0005】
しかしながら、この板状の対極部の身体部位への装着は、専用の粘着剤を用いて貼り付けることで行なわれるが、この対極部の装着作業及び取り外し作業は非常に煩わしく(粘着剤の取り扱い性が悪い)、しかも、この対極部の装着が不十分で身体に触れない隙間が生じてしまうと、結局は高周波電流が一部分に集中して熱傷してしまう場合があり、しかも、手術後、対極部を身体部位から剥がす際に皮膚も一緒に剥がれてしまう場合があるなど患者への負担が極めて大きいという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解消する、従来にない作用効果を発揮する画期的な電気手術装置及び電気手術装置における高周波電流回収方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
高周波電流発生部3から供給される高周波電流により身体部位P1を処置する電流処置部1と、処置する前記身体部位P1とは異なる身体部位P2に設けて身体を流れる前記高周波電流を回収する対極部2とを有する電気手術装置であって、前記高周波電流発生部3は前記電流処置部1に4.0Hz〜6.0MHzMHzの高周波電流を供給するように構成され、更に、前記対極部2は前記身体部位P2から所定距離Hを離した位置に配設されるものであることを特徴とする電気手術装置に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の電気手術装置において、前記対極部2は、介在物を介して前記身体部位P2から所定距離Hを離した位置に配設されるものであることを特徴とする電気手術装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の電気手術装置において、前記電流処置部1の先端電極部1bは身体切開作業部であることを特徴とする電気手術装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の電気手術装置において、前記電流処置部1の先端電極部1bは身体刺入作業部であることを特徴とする電気手術装置に係るものである。
【0012】
また、高周波電流発生部3から供給される高周波電流により身体部位P1を処置する電流処置部1と、処置する前記身体部位P1とは異なる身体部位P2に設けて身体を流れる高周波電流を回収する対極部2とを有する電気手術装置における高周波電流回収方法であって、前記対極部2を前記身体部位P2から所定距離Hを離した位置に配設し、前記身体を流れる高周波電流を放電作用により回収することを特徴とする電気手術装置における高周波電流回収方法に係るものである。
【0013】
また、請求項5記載の電気手術装置における高周波電流回収方法において、前記高周波電流発生部3から前記電流処置部1に対して4.0Hz〜6.0MHzの高周波電流を供給することを特徴とする電気手術装置における高周波電流回収方法に係るものである。
【0014】
また、請求項5,6いずれか1項に記載の電気手術装置における高周波電流回収方法において、前記対極部2は、介在物を介して前記身体部位P2から所定距離Hを離した位置に配設されるものであることを特徴とする電気手術装置における高周波電流回収方法に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例と異なり、身体部位に対極部を貼り付けたり剥がしたりするなどの煩わしい作業は無く、しかも、身体部位に対極部を接触させないから、対極部が身体部位の一部分に接触することによって熱傷が生じたり、対極部を剥がすことによって皮膚が剥がれたりするようなことも一切なく、よって、患者の負担を確実に軽減することができるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な電流手術装置及び電気手術装置における高周波電流回収方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例の使用状態説明図である。
【図2】本実施例に係る要部の概略動作説明図である。
【図3】本実施例に係る要部の概略動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
高周波電流発生部3から供給される高周波電流により電流処置部1で身体部位P1を処置する。この電流処置部1で処置する際、身体を流れる高周波電流を前記処置する身体部位P1とは異なる身体部位P2に設けた対極部2で回収する。
【0019】
本発明は、対極部2を前記身体部位P2から所定距離Hを離した位置に配設して、身体を流れる高周波電流を放電作用により回収する。
【0020】
実際に本発明者は実験を行い、ある程度の高い周波数の電流、例えば5MHzの高周波電流になると身体を流れる高周波電流が放電作用により回収可能になることを確認している。
【0021】
従って、前述した従来例と異なり、身体部位に対極部を貼り付けたり剥がしたりするなどの煩わしい作業は無く、しかも、身体部位に対極部を接触させることが無いから、対極部が身体部位の一部分に接触することによって熱傷が生じたり、対極部を剥がすことによって皮膚が剥がれたりするようなことも一切なく、よって、患者の負担を確実に軽減することができることになる。
【実施例】
【0022】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、例えば外科手術等に用いられる電気手術装置及び電気手術装置における高周波電流回収方法である。
【0024】
具体的には、本実施例に係る電気手術装置は、図1に図示したように高周波電流発生部3から供給される高周波電流により身体部位P1を処置する電流処置部1と、前記処置する身体部位P1とは異なる身体部位P2に設けて身体を流れる高周波電流を回収する対極部2とを有する構造である。
【0025】
高周波発生部3は、4.0Hz〜6.0MHzまでの高周波電流を発生するように構成されており(出力150Wタイプ)、図1に図示したように電流供給ライン4を介して電流処置部1へ高周波電流を供給し、電流回収ライン5を介して対極部2で回収した高周波電流を回収する構造である。
【0026】
本実施例では、4.0Hz〜6.0MHzの高周波電流を電流処置部1へ供給するように設定されており、この数値は、後述する対極部2での放電作用での回収を可能にする周波数であると共に、患者に負担の少ない良好な処置(焦げ付かず切れ味の良い切開)が行なわれる周波数である。
【0027】
電流処置部1は、図1,2に図示したように電流供給ライン4が接続される本体1a(ハンドピース)の先端に先端電極部1bを設けて構成されており、この先端電極部1bは刃状(板状)に形成されて身体切開作業部(メス)として構成されている。
【0028】
また、この先端電極部1bはチタン合金製の母材の周囲に金メッキを施して構成されている。本発明者は、この先端電極部1bの構成から、実際の使用に際して該先端電極部1bの焦げ付きを可及的に阻止し得ることを確認している。
【0029】
尚、電流処置部1の先端電極部1bとしては前述したものに限らず、先鋭棒状に形成されて身体刺入作業部(縫合針)として構成しても良いなど本実施例の特性を発揮する構成であれば適宜採用し得るものである。
【0030】
対極部2は、図1,3に図示したように適宜な金属製の板材で構成したものであり、電流回収ライン5に接続される既存構造のものである。尚、対極部2の表面には特殊コーティングが施されている。
【0031】
また、対極部2は、後述する使用場面(身体を流れる高周波電流を放電作用により回収する場面)において図示省略の治具によって支持される。
【0032】
この治具は、絶縁性のある部材で構成され、対極部2を身体部位P2から所定間隔を介した位置に配設されるように構成されている。
【0033】
尚、身体部位P2に対する対極部2の配設は、前述した治具を使用する場合に限らず、患者の着衣のポケットに配設したり、身体部位P2の上に敷いたガーゼや粘性のある薬剤などの介在物を介して配設するようにしても良い。その意味において、対極部2を身体部位P2に配設する際の所定距離Hとは、身体部位P2の皮膚に直接触れない僅かな間隔までを含むものである。
【0034】
符号6は手術台、7はアースである。
【0035】
以上の構成からなる本実施例に係る電気手術装置を用いた手術方法(電気手術装置における高周波電流回収方法)について説明する。
【0036】
手術台6に載った患者の身体部位P2(電流処置部1で処置する身体部位P1と別の部位)に対極部2を配設する。この対極部2の配設は治具を用いて行なわれ、身体部位P2から所定距離Hを介した位置に配設する(前述したように患者の着衣のポケットに配設したり、身体部位P2の上に敷いたガーゼや粘性のある薬剤などの介在物に載置して配設するようにしても良い)。
【0037】
続いて、電流処置部1で身体部位P1の処置を行なう。この際、高周波電流発生部3から4.0Hz〜6.0MHzの高周波電流が供給され、電流処置部1の先端電極部1bから高密度に集中させて生じるジュール熱により身体部位P1が処置される。
【0038】
また、この電流処置部1での処置の際、対極部2により身体を流れる高周波電流の回収が行なわれる。
【0039】
具体的には、図3に図示したように前述したように対極部2は身体部位P2から所定間隔Hを介した位置に配設されており、電流処置部1から身体に流れ込んだ4.0Hz〜6.0MHzの高周波電流は放電作用により対極部2に回収される。尚、3.0MHz程度の周波数の高周波電流では放電作用はおきにくく、4.0MHz以上の周波数であることが望ましく、また、電流処置部1での処置を考慮すると6.0MHz以下の周波数であることが望ましい(周波数が高過ぎると放電作用が生じて切開作業や刺入作業が行われにくくなる。)。この意味において、本実施例では高周波電流発生部3から電流処置部1に対して4.0Hz〜6.0MHzの電流が供給されるように設定されている。
【0040】
本実施例は上述のように構成したから、前述した従来例と異なり、身体部位に対極部2を貼り付けたり剥がしたりするなどの煩わしい作業は無く、しかも、身体部位に対極部2を接触させないから、対極部2が身体部位の一部分に接触することによって熱傷が生じたり、対極部2を剥がすことによって皮膚が剥がれたりするようなことも一切なく、よって、患者の負担を確実に軽減することができることになる。
【0041】
また、本実施例は、高周波電流発生部3から電流処置部1に対して4.0Hz〜6.0MHzの電流が供給されるように設定されているから、対極部2における放電作用による高周波電流の回収が可能となり、しかも、電流処置部1における焦げ付かず良好な処置が可能となる。
【0042】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、電気手術装置及び電気手術装置における高周波電流回収方法であり、例えば電気メスや電気針などを用いた外科手術を行なう際に有用である。
【符号の説明】
【0044】
H 距離
P1 身体部位
P2 身体部位
1 電流処置部
1b 先端電極部
2 対極部
3 高周波電流発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電流発生部から供給される高周波電流により身体部位P1を処置する電流処置部と、処置する前記身体部位P1とは異なる身体部位P2に設けて身体を流れる前記高周波電流を回収する対極部とを有する電気手術装置であって、前記高周波電流発生部は前記電流処置部に4.0Hz〜6.0MHzMHzの高周波電流を供給するように構成され、更に、前記対極部は前記身体部位P2から所定距離を離した位置に配設されるものであることを特徴とする電気手術装置。
【請求項2】
請求項1記載の電気手術装置において、前記対極部は、介在物を介して前記身体部位P2から所定距離を離した位置に配設されるものであることを特徴とする電気手術装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の電気手術装置において、前記電流処置部の先端電極部は身体切開作業部であることを特徴とする電気手術装置。
【請求項4】
請求項1,2いずれか1項に記載の電気手術装置において、前記電流処置部の先端電極部は身体刺入作業部であることを特徴とする電気手術装置。
【請求項5】
高周波電流発生部から供給される高周波電流により身体部位P1を処置する電流処置部と、処置する前記身体部位P1とは異なる身体部位P2に設けて身体を流れる高周波電流を回収する対極部とを有する電気手術装置における高周波電流回収方法であって、前記対極部を前記身体部位P2から所定距離を離した位置に配設し、前記身体を流れる高周波電流を放電作用により回収することを特徴とする電気手術装置における高周波電流回収方法。
【請求項6】
請求項5記載の電気手術装置における高周波電流回収方法において、前記高周波電流発生部から前記電流処置部に対して4.0Hz〜6.0MHzの高周波電流を供給することを特徴とする電気手術装置における高周波電流回収方法。
【請求項7】
請求項5,6いずれか1項に記載の電気手術装置における高周波電流回収方法において、前記対極部は、介在物を介して前記身体部位P2から所定距離を離した位置に配設されるものであることを特徴とする電気手術装置における高周波電流回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−193962(P2010−193962A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39534(P2009−39534)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000105279)ケイセイ医科工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】