説明

電気掃除機

【課題】掃除機を被掃除面に接離する際に被掃除面上の塵埃の吹き飛ばしを抑制する排気循環式の電気掃除機を提供する。
【解決手段】ノズル体6と被掃除面とが離れたことを検知した場合に、バイパス風路27を開くと共に、排気風路13のバイパス風路27より下流部を略閉塞させるようにしたので、電動送風機9からの排気流れの大半は、ノズル体6に向かうことなくバイパス風路27を通り、再び電動送風機9に戻される。したがって、被掃除面にある軽い塵埃も吹き飛ばされることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機より排出される排気をノズル体に還流させる排気循環式の電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている排気循環式の電気掃除機は、集塵フィルターで捕捉できなかった微細な塵や臭いを機外に出すことがないので、クリーンな掃除機としての評価は高かった。しかしながら排気循環であるがゆえに、ノズル体を持ち上げる等により床面から離した際に、ノズル体に還流される排気が機外に噴出され、床面上の塵埃等が吹き飛ばされる問題があった。
【0003】
この問題を解消する方法としてノズル体に、電動送風機からの排気を導く排気風路と、電動送風機に吸込まれる空気を導く吸込風路と、これら両風路を仕切る壁に両風路を連通して設けられたバイパス通路と、ノズル体の底面から突出して設けられた床面検知体と、この床面検知体に連動して移動可能に設けられ、この移動により前記バイパス通路を通って排気風路から吸込風路へリークする風量を制御するバイパス制御手段と、を具備した掃除機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図17は、特許文献1に記載された従来の掃除機の全体構成の模式図を示し、図18は、特許文献1に記載された従来の掃除機のノズル体の模式図を示す。
【0005】
図17および図18に示すように、掃除機本体100に内蔵された電動送風機101により吸込まれる空気を集塵室102に通して塵埃を捕捉し、集塵室102を通過して電動送風機101から排出された空気を回収し循環させながら掃除をする電気掃除機に備えられるノズル体103において、空気の循環に伴って被掃除床面上の空気を吸込む吸気口104を有したノズル体主部105と、電動送風機101から排出された空気を導く排気風路106と、この排気風路106で導かれた空気を吸気口104に戻す還流吹出し口107と、吸気口104を通って電動送風機101に吸込まれる空気を導く吸込み風路108と、前記両風路を仕切る壁109に、吸気口104から外れるとともに還流吹出し口107に対して吸込み風路108を通る吸込み空気流の下流側位置で両風路を連通して設けられたバイパス通路110と、ノズル体主部105にその底面から突出して設けられた床面検知体111と、この床面検知体111に連動して移動可能に設けられ、この移動によりバイパス通路110を通って排気風路106から吸込み風路108へリークする風量を制御するバイパス制御手段112と、を具備したものである。
【0006】
この構成により、電動送風機101から排出された空気はノズル体103を通って循環し、それに伴いノズル体主部105の吸気口104から被掃除面上の塵埃とともに吸引した空気を、吸込み風路108を通して掃除機本体100側に吸込んで空気循環式の掃除をすることができる。こうした掃除中にノズル体主部105が被掃除面に接触する際には、その直前に床面検知体111が被掃除面を検知するから、この検知体に連動するバイパス制御手段112は、排気風路106を通って吸気口104へ向おうとしている空気がバイパス通路110を通って吸込み風路108へリークしないようにバイパス通路110の風量を制限する。
【0007】
そして、掃除中にノズル体主部105が被掃除面から離れる際には、それに伴い床面検知体111が被掃除面を検知しなくなると同時に、この検知体に連動するバイパス制御手段112が、排気風路106を通って吸気口104へ向おうとしている空気がバイパス通
路110を通って吸込み風路108へリークするようにバイパス通路110の風量を制御する。したがって、被掃除面からノズル体主部105が離れているときには吸気口104に戻される風量が少なく制限されるので、吸気口104から被掃除面方向に吹出すことを少なくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−189354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の電気掃除機であっても、ノズル体を床面から離した際の床面の塵埃の吹き飛ばし防止の観点からは未だ改善の余地があった。
【0010】
すなわち、特許文献1に記載の電気掃除機では、掃除中にノズル体103が床面から離れる際には、バイパス制御手段112が、バイパス通路110を開き、排気風路106から吸込み風路108へ循環流をリークする構成であり、還流吹出し口107からの吹出し流れは減少するが止めることができない。そのため、ノズル体103を床面から離した時に、ノズル体103周囲の床面に軽い綿埃やペットの毛などがあると、吹き飛ばされてしまう可能性があった。
【0011】
また前記吹き飛ばしを更に防止するために、バイパス通路110を開く際に、バイパス制御手段112を用いて排気風路106を閉じるように構成したとしても、電気送風機101の出口が閉塞されることになり、排気圧が異常に上がったり、冷却風が止まることでモータコイルの温度が過熱されるなどの問題を引き起こす可能性があった。
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、掃除機を被掃除面に接離する際に被掃除面上の塵埃の吹き飛ばしを抑制する排気循環式の電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来技術の有する課題を解決するために、
電動送風機を内蔵し、前記電動送風機の負圧側に集塵室を設けた掃除機本体と、
被掃除面の塵埃を吸引するノズル体と、
前記ノズル体を前記集塵室を介して前記電動送風機の負圧側に連通する吸込風路と、
前記電動送風機の正圧側をノズル体に連通する排気風路と、
前記吸込風路と排気風路とを連通するバイパス風路と、
前記ノズル体が被掃除面からの接離を検知する床面検知手段と、
前記床面検知手段が前記ノズル体と被掃除面とが接していることを検知した場合に前記バイパス風路を閉じ、前記ノズル体と被掃除面とが離れたことを検知した場合には前記バイパス風路を開くように開閉制御するバイパス制御手段とを備え、
前記バイパス制御手段は、前記バイパス風路を開く場合に、前記排気風路の前記バイパス風路より下流部と、前記吸込風路の前記バイパス風路より上流部との少なくとも一方の風路を略閉塞させる電気掃除機を提供する(請求項1)。
【0014】
上述のように、本発明の電気掃除機は、ノズル体と被掃除面とが離れたことを検知した場合に、バイパス風路を開くと共に、排気風路のバイパス風路より下流部と、吸込風路のバイパス風路より上流部との少なくとも一方の風路を略閉塞させるようにしたので、電動送風機からの排気流れの大半は、ノズル体に向かうことなくパイパス風路を通り、再び電動送風機に戻される。したがって、被掃除面にある軽い塵埃も吹き飛ばされることはない

【0015】
また、上述の本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の電気掃除機においては、前記バイパス制御手段は、
前記バイパス風路を開閉させる開閉手段と、
前記開閉手段をバイパス風路を開状態および閉状態に駆動する駆動手段と、
前記電動送風機が運転されている際に、前記床面検知手段が前記ノズル体と被掃除面とが接していることを検知した場合に前記バイパス風路を閉状態に、前記ノズル体と被掃除面とが離れたことを検知した場合には前記バイパス風路を開状態になるように前記駆動手段を駆動指示する制御部とを有することが好ましい(請求項2)。
【0016】
上述のように、本発明の電気掃除機は、バイパス風路の開閉手段を駆動する駆動手段を備えているので、特許文献1の従来技術のように床面検知手段への荷重量によってバイパス風路を開閉する必要がなくなるので、バイパス風路の配置に制約がなくなり、確実な開閉制御が可能となる。
【0017】
また、上述の本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の電気掃除機においては、
前記バイパス制御手段による前記バイパス風路の開状態において、前記吸込風路と前記排気風路の少なくとも一方の風路を略閉塞させる部位の隙間の流路面積を前記バイパス風路の流路面積より小さくすることが好ましい(請求項3)。
【0018】
バイパス風路の開状態において略閉塞させる部位の流路面積がバイパス風路の面積よりも大きいと、バイパス風路からノズル体の間の流路抵抗が小さくなり、従来技術と同様にノズル体から排気が噴出してしまう。本発明の電気掃除機は、上述の構成とすることにより、バイパス風路が開いた状態で、略閉塞させる部位の流路面積がバイパス風路の面積より小さくできるので、バイパス風路からノズル体の間の流路抵抗が大きくなり、電動送風機からの排気の大半はバイパス風路に流れて、ノズル体からの噴出しが確実に抑えられる。
【0019】
また、上述の本発明の効果に加えてバイパス風路の開閉力を抑える観点から、本発明の電気掃除機においては、前記バイパス風路を少なくとも2箇所に設け、
前記バイパス制御手段は、
前記バイパス風路の一方に対して前記排気風路側に開く第1の開閉手段と、
前記バイパス風路の他方に対して前記吸込風路側に開く第2の開閉手段と、
前記第1の開閉手段と前記第2の開閉手段とが連動するように連接する連接手段とを有することが好ましい(請求項4)。
【0020】
電動送風機の運転中にバイパス風路を開閉手段により排気風路側に開こうとする際に、排気風路と吸込風路の差圧により開閉弁がバイパス風路に吸着して、差圧に勝る大きな力が必要になる。一方、バイパス路を吸込風路側から閉じようとする際には、この差圧以上の加圧をしないと、空気が漏れてしまう課題があった。そこで、本発明の電気掃除機は、上述の構成とすることにより、第1の開閉手段と第2の開閉手段とのそれぞれにかかる差圧が相殺されて、軽い操作力で開閉制御が可能となる。
【0021】
また、上述の本発明の効果に加えてノズル体が被掃除面から離れたことを確実に検知する観点から、本発明の電気掃除機においては、前記床面検知手段は、前記ノズル体底面の複数の部位を検知することが好ましい(請求項5)。
【0022】
この構成とすることにより、ノズル体が大きな段差を有した被掃除面を通過する場合や
、ノズル体を傾けて持ち上げた場合などのように、ノズル体と被掃除面の一部が離れてしまう場合にも、確実にノズル体が離れたことを検知できるので、ノズルからの排気吹き出し防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、掃除機を被掃除面に接離する際に被掃除面上の塵埃の吹き飛ばしを抑制する排気循環式の電気掃除機を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機全体の平面の断面を示す模式図
【図2】同掃除機本体の側面の断面構成を示す模式図
【図3】同掃除機本体の平面構成を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態1における電気掃除機のノズル体の底方向からの平面図
【図5】同電気掃除機のノズル体の一部断面の側面図
【図6】本発明の実施の形態1における電気掃除機のバイパス制御手段を示すブロック図
【図7】同電気掃除機のバイパス風路、開閉手段、駆動手段を示す平面図
【図8】同電気掃除機のバイパス風路、開閉手段、駆動手段を示す図7のA−A矢視断面図
【図9】同電気掃除機のバイパス風路、開閉手段を示す図8のB−B矢視断面図
【図10】同電気掃除機のバイパス風路を開いた状態の開閉手段を示す図9のC−C断面図
【図11】本発明の実施の形態2における掃除機本体のバイパス風路、開閉手段を示す側面からの断面図
【図12】本発明の実施の形態3における掃除機本体のバイパス風路、開閉手段を示す側面からの断面図
【図13】本発明の実施の形態4における掃除機本体のバイパス風路、開閉手段を示す図14のE−E矢視断面図
【図14】本発明の実施の形態4における掃除機本体バイパス風路、開閉手段を示す図13のD−D矢視断面図
【図15】本発明の実施の形態5における電気掃除機のノズル体の底方向からの平面図
【図16】同電気掃除機のノズル体の一部断面の側面図
【図17】従来の電気掃除機の全体構成の模式図
【図18】同従来の掃除機のノズル体の模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の電気掃除機の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における電気掃除機全体の平面の断面を示す模式図、図2は同掃除機本体の側面の断面構成を示す模式図、図3は同掃除機本体の平面構成を示す断面図、図4は本発明の実施の形態1におけるノズル体の底方向からの平面図、図5は同電気掃除機のノズル体の一部断面の側面図、図6は本発明の実施の形態1における電気掃除機のバイパス制御手段を示すブロック図、図7は同電気掃除機のバイパス風路、開閉手段、駆動手段を示す平面図、図8は図7のA−A断面図、図9は図8のB−B断面図、図10は図9のC−C断面図である。
【0027】
図1〜3に示すように、掃除機本体1の外部には、車輪2およびキャスター3が取り付けられており、掃除機本体1は床面を自在に移動できる。掃除機本体1前方には、ホース4、延長管5が順次接続されており、延長管5の先端にノズル体6が取り付けられている。
【0028】
掃除機本体1は、前方に空気を吸引する吸気口7と排気を排出する排気口8を有した電動送風機9を内蔵する電動送風機室10と、コードリールもしくは蓄電池を内蔵する電源供給室11と、前記電動送風機9の負圧側である吸気口7に設けられた集塵室12と、この集塵室12とノズル体6とを連通し、ノズル体6より吸引した塵埃を集塵室12に導く吸込風路14と、前記電動送風機9の正圧側である排気口8より排出される排気をノズル体6に導く排気風路13を有している。
【0029】
したがって、ホース4、延長管5、ノズル体6にはそれぞれ連通する吸込風路14と排気風路13とを有している。
【0030】
排気風路13の排気口8近傍に、内部に排気を通過させる複数の管状の伝熱体15を並列に配置してなる第1の風路17と、伝熱体15の周囲を覆うケース体18と複数の管状の伝熱体15の隙間により形成された第2の風路19とを備え、冷風ファン20により第2の風路19に外気を導入し、発熱体15の外表面に外気を触れさせて排気熱を放熱させる熱交換手段21を配置している。
【0031】
図において実線の矢印は電動送風機9により循環する空気の流れを示し、破線の矢印は冷風ファン20により外気を取り入れ第2の風路19を経て排出する流れを示している。
【0032】
第1の風路17内の排気の流れ方向に対して、伝熱体15周囲を流れる外気は逆方向としている。すなわち、外気は排気の下流側から上流側へと流れる。いわゆる対向流にすることによって伝熱体15全体から効率よく放熱させることできる。
【0033】
また、第2の風路18内に配置したバッフル板24により第2の風路18内で外気を蛇行させて、外気の流れの偏りを防止し、放熱の効率を向上させることができる。
【0034】
集塵室12内には集塵袋25が取替え自在に配置され、ノズル体6により吸引された塵埃がこの集塵袋25によりトラップされる。
【0035】
掃除機本体1の前方で排気風路13と吸込風路14が隣接する隔壁26には、両風路を連通するバイパス風路27と、このバイパス風路27を開閉自在にする開閉手段28が設けられている。この開閉手段28は後述のバイパス制御手段により開閉制御される。
【0036】
次に図4、図5を用いてノズル体6の構成について説明する。図4においてノズル体6底面は、被掃除面の塵埃を吸引するための開口30と、この開口30に望む回転ブラシ31と、ノズルの前方(図の右側)に回転シャッタ32が設けられている。回転シャッタ32は、回転扉のようにゴムブレードが回転しながら、掃除運転操作中に排気風路よりノズル体6内部に噴出される排気がノズル前方より漏れないようにシールし、かつ被掃除面上の塵埃を開口30内部に取り込むものである。
【0037】
ノズル体6底面の開口30部周囲には、排気がノズル体6両側方向および後方にもれないように起毛布33が配置されている。この起毛布33により、被掃除面に多少の凹凸によりノズル体6が上下に動いても排気がノズル体6の外に漏れることはない。
【0038】
ノズル体6底面の開口30部の後方には、ノズル体6が持ち上げられるなどにより被掃
除面から離れたことを検知する床面検知手段34が設けられている。図5に床面検知手段の34の構成を示す。図のように床面検知手段34は、ヒンジ35を中心として回動する車輪36と、この車輪36が所定以上降下した場合に、作動するマイクロスイッチ37により構成している。このマイクロスイッチ37動作により、ノズル体6が床面から離れたことを検知する。車輪36はバネ38により下方に付勢し、ノズル体6が床面から離れている間は、常にマイクロスイッチ37が作動した状態を維持する。
【0039】
また、ノズル体6が床面に接した場合には、車輪36が上昇して、マイクロスイッチ37が非動作状態になる。つまりこの非動作状態が床面検知状態となる。
【0040】
次に図6を用いてバイパス制御手段の説明をする。図6において、バイパス制御手段40は、バイパス風路を開閉する開閉手段41と、開閉手段41を操作してバイパス風路を開状態および閉状態に駆動する駆動手段42と、電動送風機が運転されている際に、床面検知手段34がノズル体と床面とが接していることを検知した場合にバイパス風路を閉状態に、ノズル体と床除面とが離れたことを検知した場合にはバイパス風路を開状態になるように駆動手段42を駆動指示する制御部43とを有している。
【0041】
駆動手段42は、モータ44と、このモータ44の回転を開閉手段41の扇状往復回動に変換するリンク機構45と、開閉手段41がパイパス風路を閉じる位置で作動するリミットスイッチ46とにより構成している。
【0042】
制御部43の具体的な動作は、床面検知手段34がノズル体と床面とが接していることを検知した場合にリミットスイッチ46が作動するまでモータ44を駆動する。したがって、開閉手段41が回動してバイパス風路を閉じると停止する。
【0043】
床面検知手段34がノズル体と床面とが離れたことを検知し、かつリミットスイッチ46が作動した状態の場合には、モータ44を予め設定した時間だけ駆動する。この予め設定した時間とは、バイパス風路が閉じた状態から全開状態に至る時間を実験的に求めたもので、ばらつきはあるものの時間制限でもバイパス風路を開くには十分に機能する。したがって、開閉手段41がバイパス風路を全開近傍に達して停止する。
【0044】
次に図7から図10を用いてバイパス風路の開閉動作を説明する。図9において、排気風路13と吸込風路14との隔壁26に設けたバイパス風路27を開閉する開閉手段41は、図の実線のように開閉手段41がバイパス風路27を閉じた状態では、排気風路13と吸込風路14とは独立した風路として構成される。開閉手段41と隔壁26の接触箇所にはゴム等のパッキン47が配設してあり、排気風路13の空気が吸込風路14側に漏れないようにしている。
【0045】
一方、二点鎖線に示すように開閉手段41がバイパス風路27を開いた状態では、開閉手段41が排気風路13のバイパス風路27下流側をほぼ閉塞している。したがって、図の破線のように排気の大半はバイパス風路27に流れ込み吸込風路14を経て、電動送風機に戻される。このバイパス風路27が開いている状態の排気風路13の流路面積は図10の黒塗部48に示すように、バイパス風路27の風路面積に比べると充分に小さいので、排気風路13からノズル体に排気が流出することはない。
【0046】
図7、図8において駆動手段42は、モータ44の回転をリンク機構45により開閉手段41のバイパス風路27の開閉動作に変換している。すなわちリンク機構45は、モータ44の回転をクランク50に連結した連結棒51で往復動作に変換し、連結棒51の他端に連結したアーム52により軸53を中心とする往復回動に変換している。この軸53に固定された開閉手段41は、モータ44の回転によりバイパス風路27を開閉駆動する

【0047】
アーム52には、開閉手段41がバイパス風路27を閉じる方向に付勢するバネ54を設け、連結棒51とアーム52との連結部はあそび55を設けることにより、リンク機構45の位置ばらつきがあっても確実にバイパス風路27を閉じることができるようにしている。また、電動送風機運転中に排気風路13と吸込風路14との差圧により開閉手段41がバイパス風路27方向に押される際に、あそび55に開閉手段41がバイパス風路27方向に移動し、より確実に排気漏れを防止できる。
【0048】
開閉手段41がバイパス風路27を閉じる位置に達した状態において、リミットスイッチ46がアーム52により作動するように配置することによって、バイパス風路27の閉止検知を行っている。したがって、床面検知手段によってノズル体が床面に接している状態を検知した場合は、リミットスイッチ46が作動するまでモータ44を回転させ、リミットスチッチ46が作動した時点でモータ44を停止することによりバイパス風路27は閉じられる。
【0049】
一方、床面検知手段がノズル体と床面とが離れたことを検知し、かつリミットスイッチ46が作動した状態の場合には、モータ44を前述した予め設定した時間だけ駆動して、開閉手段41がバイパス風路27を全開近傍に達して停止する。この時、排気風路13を流れる空気は開閉手段41に衝突した後、バイパス風路27側に方向を変え吸込風路14に吸引される。この風圧によって開閉手段41は排気風路13の内壁に押し広げられる力が作用する。
【0050】
以上の構成により、図1に示すように電動送風機9を運転すると、集塵室12および吸込風路14が負圧ととなりノズル体6から電動送風機9に向けて吸引の流れが発生する。そしてこの流れに乗ってノズル体6の接している被掃除面である床面から塵埃が吸引され、集塵袋25にトラップされる。一方、電動送風機9からの排気は、電動送風機室10の排気口8から排気風路13を経て、ノズル体6内部で被掃除面に吹出される。この排気の噴出流によって床面の塵埃は吸込風路14に誘導されるので、外気を取り入ることなく塵埃の吸引が可能となる。
【0051】
この時、図5に示す床面検知手段34はノズル体6が床面に接している事を検出するので、図6のバイパス制御手段40は開閉手段41がバイパス風路を閉じるように制御する。したがって、上記のように排気循環による塵埃吸引運転が可能となる。
【0052】
また、図5に示すノズル体6を床面から持ち上げると、床面検知手段34はノズル体6が床面から離れたことを検知して、図6のバイパス制御手段40は開閉手段41がバイパス風路を開くように制御する。この結果、図1に示すように電動送風機9からの排気は排気風路13からバイパス風路27を通り吸込風路14と流れ、集塵室を経て電動送風機9に戻される。したがって、ノズル体6への排気の流れがなくなるので、床面の塵埃が吹き飛ばされることはない。
【0053】
以上、本発明の電気掃除機における第1実施形態について説明したが、本発明の電気掃除機は上述したキャニスタータイプの電気掃除機に限定されるものではない。例えば、アプライトタイプの電気掃除機でもよい。
【0054】
また、本発明の電気掃除機における第1実施形態の集塵室は、集塵袋により塵埃を捕集する構造としたが、塵埃を遠心分離して捕集するサイクロン式の集塵室としてもよい。
【0055】
さらに、第1実施形態のバイパス風路は、掃除機本体に配置したが、延長管5やノズル
体6に配置してもよい。
【0056】
また、第1実施形態の床面検知手段は、機械式の検知構成としたが、フォトセンサを用いた光学式の検知構成を用いてもよい。
【0057】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る電気掃除機について、図面を用いて詳細に説明する。図11は同実施の形態2におけるバイパス風路、開閉手段を示す側面からの断面図である。なお、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号を付与して説明を省略する。
【0058】
図11に示すように実施の形態1と異なるのは、排気風路13と吸込風路14との隔壁26に第1のバイパス風路60と、第2のバイパス風路61のふたつのバイパス風路を設けた点と、第1のバイパス風路60には排気風路13側に開く第1の開閉手段62と、第2のバイパス風路61には吸込風路14側に開く第2の開閉手段63とを備え、第1の開閉手段62と第2の開閉手段63とが機械的に連動するように連接する連接手段64とを有した点にある。
【0059】
第1の開閉手段62により第1のバイパス風路60が閉じられている状態では排気風路13と吸込風路14と差圧が第1の開閉手段62に掛かり、第1のバイパス風路60を開く場合に、この差圧と第1の開閉手段62の面積の積以上の力が必要になる。一方、第2の開閉手段63により第2のバイパス風路61を閉じる場合は逆に排気風路13と吸込風路14と差圧が第2の開閉手段63を開く方向にかかり、第2のバイパス風路61を閉めてシールする場合に、この差圧と第2の開閉手段63の面積の積以上の力が必要になる。
【0060】
したがって、第1の開閉手段62と第2の開閉手段63とを連接手段64で連接することによって、両者にかかる差圧が相殺され、開閉駆動に必要な力が最小限にできる。このため、駆動手段のモータを小型にできる。
【0061】
なお、本実施の形態2における第1の開閉手段は排気風路側に開き、第2の開閉手段は吸込風路側に開くようにしたが、逆に第1の開閉手段は吸込風路側に開き、第2の開閉手段が排気風路側に開くようにしてもよい。
【0062】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る電気掃除機について、図面を用いて詳細に説明する。図12は同実施の形態3におけるバイパス風路、開閉手段を示す側面からの断面図である。なお、上述した実施の形態1または実施の形態2と同一部分は同一符号を付与して説明を省略する。
【0063】
図12に示すように実施の形態2と異なるのは、第2のバイパス風路65の風路面積が第1のバイパス風路60の風路面積より小さい点と、第2の開閉手段66の面積が第2のバイパス風路65に合わせて小さくなっている点である。
【0064】
上記のように第1の開閉手段62の面積を第2の開閉手段66の面積より大きくすることにより、第1の開閉手段62により第1のバイパス風路60が閉じられている状態で、第1の開閉手段62に第1のバイパス風路60を閉める方向にかかる力の方が、第2の開閉手段66が第2のバイパス風路65を開く方向にかかる力よりも大きくなるので、連接手段64により結合されて総合した力は、両第1のバイパス風路60及び第2のバイパス風路65を閉める方向に働く。したがって、開閉駆動力を小さくしながら両バイパス風路からの排気漏れを効果的に防止することができる。
【0065】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る電気掃除機について、図面を用いて詳細に説明する。図13は本発明の実施の形態4におけるバイパス風路、開閉手段を示す正面からの断面図(図14のE−E断面図)、図14は図13のD−D断面図である。なお、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号を付与して説明を省略する。
【0066】
図13、図14に示すように実施の形態1と異なるのは、排気風路A70と、この排気通路A70の側面の開口する接続口71で直角に連通した排気風路B72と、排気通路B72と平行の吸込風路73と、排気風路A70の接続口71と同一面上に開口するバイパス口74と吸込風路73を連通するバイパス風路75と、中央に開口部76を有した平板状の開閉手段77とを備えた点にあり、開閉手段77は排気通路A70の接続口71とバイパス口74の開口面上に接触してスライドするように配置して、スライドによって開口部76が接続口71とバイパス口74の何れか一方に一致し、一致しない他方は閉じるように構成している。この開閉手段77のスライド動作は公知のラックと正逆回転するピニオン(図示せず)により行い、開閉手段77の位置検出で制御するようにしている。
【0067】
以上構成により、排気をバイパスさせない場合は、接続口71と開口部76が一致する位置に開閉手段77を駆動する。このとき図14の実線矢印のように排気は接続口71を通ってノズル体方向に流れる。一方、排気をバイパスさせる場合は、バイパス口74と開口部76を一致する位置に開閉手段77を駆動する。この状態では図14の破線矢印のように排気はバイパス口74からバイパス風路75を通って吸込風路73に戻るので、排気がノズル体方向に流れることはない。
【0068】
本実施の形態4は、開閉手段77に掛かる排気風路A70と吸込風路73との差圧を排気風路A70の内面で受けるので、開閉手段77をスライドする動力は差圧の影響を受けにくいため、少ない力でバイパス風路75の開閉制御が可能となる。
【0069】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5に係る電気掃除機について、図面を用いて詳細に説明する。図15は本発明の実施の形態5における電気掃除機のノズル体の底方向から見たの平面図、図16は同電気掃除機のノズル体の床面検知手段の構成を示す一部断面の側面図である。なお、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号を付与して説明を省略する。
【0070】
図15、図16に示すように実施の形態1と異なるのは床面検知手段80を複数備えた点にある。
【0071】
本実施の形態5は、床面検知手段80をノズル体6底面の開口30の左右両側にそれぞれに設けられている。そして、両床面検知手段80の何れか一方が床面から離れたことを検知した場合に、バイパス風路27(図3)を開き、両床面検知手段80の双方が床面に接した事を検知した場合に、バイパス風路27(図3)を閉じるように制御する。この動作によりノズル体6が左右に傾いて持ち上げられても床面検知手段80のどちらかが床面から離れたことを検知するので、排気が開口30から吹き出されることはない。
【0072】
また図16のように床面検知手段80は、ヒンジ81を中心として回動する車輪82と、この車輪82が所定以上降下した場合に、作動するマイクロスイッチ83により構成している。このマイクロスイッチ83動作により、ノズル体6が床面から離れたことを検知する。車輪82はバネ84により下方に付勢し、ノズル体6が床面から離れている間は、常にマイクロスイッチ83が作動した状態を維持する。また、ノズル体6が床面に接した場合には、車輪82が上昇して、マイクロスイッチ83が非動作状態になる。この非動作状態が床面検知状態となる。
【0073】
なお、本発明の電気掃除機における第5実施形態の床面検知手段は、ノズル体6底面の開口30の左右両側の2箇所に設けたが、3箇所以上でもよく、開口30後方に並べて設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の電気掃除機は、家庭用だけでなく業務用などの各種排気循環式掃除機に使用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 掃除機本体
6 ノズル体
9 電動送風機
12 集塵室
13 排気風路
14 吸込風路
27 バイパス風路
28 開閉手段
40 バイパス制御手段
41 開閉手段
42 駆動手段
43 制御部
60 第1のバイパス風路
61 第2のバイパス風路
62 開閉手段
63 開閉手段
65 第2のバイパス風路
66 開閉手段
70 排気風路A
72 排気風路B
73 吸込風路
75 バイパス風路
77 開閉手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機を内蔵し、前記電動送風機の負圧側に集塵室を設けた掃除機本体と、
被掃除面の塵埃を吸引するノズル体と、
前記ノズル体を前記集塵室を介して前記電動送風機の負圧側に連通する吸込風路と、
前記電動送風機の正圧側をノズル体に連通する排気風路と、
前記吸込風路と排気風路とを連通するバイパス風路と、
前記ノズル体が被掃除面からの接離を検知する床面検知手段と、
前記床面検知手段が前記ノズル体と被掃除面とが接していることを検知した場合に前記バイパス風路を閉じ、前記ノズル体と被掃除面とが離れたことを検知した場合には前記バイパス風路を開くように開閉制御するバイパス制御手段とを備え、
前記バイパス制御手段は、前記バイパス風路を開く場合に、前記排気風路の前記バイパス風路より下流部と、前記吸込風路の前記バイパス風路より上流部との少なくとも一方の風路を略閉塞させる電気掃除機。
【請求項2】
前記バイパス制御手段は、
前記バイパス風路を開閉させる開閉手段と、
前記開閉手段を駆動しバイパス風路を開状態および閉状態にする駆動手段と、
前記電動送風機が運転されている際に、前記床面検知手段が前記ノズル体と被掃除面とが接していることを検知した場合に前記バイパス風路を閉状態に、前記ノズル体と被掃除面とが離れたことを検知した場合には前記バイパス風路を開状態になるように前記駆動手段を駆動指示する制御部とを有した請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記バイパス制御手段による前記バイパス風路の開状態において、前記吸込風路と前記排気風路の少なくとも一方の風路を略閉塞させる部位の隙間の流路面積を前記バイパス風路の流路面積より小さくした請求項1または2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記バイパス風路を少なくとも2箇所に設け、
前記バイパス制御手段は、
前記バイパス風路の一方に対して前記排気風路側に開く第1の開閉手段と、
前記バイパス風路の他方に対して前記吸込風路側に開く第2の開閉手段と、
前記第1の開閉手段と前記第2の開閉手段とが連動するように連接する連接手段とを有する請求項1から3のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記床面検知手段は、
前記ノズル体底面の複数の部位を検知する請求項1から4のいずれか1項に記載の電気掃除機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate