説明

電気掃除機

【課題】
従来の掃除機では、光触媒層を有する脱臭フィルターを、集塵室内で吸引風の主流が通気する通気経路に設置していた。そのため、集塵しきれなかった微細塵が脱臭フィルターに付着して蓄積され、光触媒層への光の到達を妨げるとともに、光触媒の細孔を塞ぎ、臭気の吸着及び分解を妨げるため、脱臭性能が十分に発揮出来ないといった課題があった。
【解決手段】
本発明に係る電気掃除機は、吸引口と、前記吸引口から吸引したゴミを保持するゴミ蓄積部を内包する集塵部と、脱臭部材と、吸気部から吸引する電動送風機と、これらを保持する本体を有し、前記脱臭部材は、少なくとも吸引方向に通気可能な形状で、集塵室のゴミ蓄積部よりも下流かつ前記電動送風機の上流側に配置され、かつ、前記吸気部に対向する面の少なくとも一部が、前記本体または前記集塵部を形成する内壁と対向してなるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体内部の集塵室内に蓄積された塵埃等から発生した臭気による不快臭が、本体を起動する際に排気と共に室内などの外部に放出される量を低減する手段を有した電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気掃除機では、本体の停止後に、本体内の集塵部に集塵された塵埃等から不快臭が発生し、掃除機本体内に不快臭が滞留していた。この滞留した不快臭は、電気掃除機の起動時に排気流と共に電気掃除機の外に放出される。そこで、従来は、この不快臭の低減のため、電気掃除機内部を流れる風である吸気風の主流が通気する通風路である排気口部、または、集塵室の後段内に脱臭機能を搭載する構成が提案されている。 中でも、近年では、光触媒を用いた脱臭機能が注目されており、本機能を用いることで臭気を分解し長期間メンテナンスを行う必要が無い脱臭機能を有する電気掃除機が開発されている。(例えば、特許文献1参照) 。なお、上記の主流とは、吸引風の主な流れを示すものであり、拡散や渦流により上記吸引風の主な流れから離散していく一部の風の流れを含まないことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−122049
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されているような従来技術では、光触媒層を有する脱臭フィルターを、集塵室内で吸引風の主流が通気する通気経路に設置していた。そのため、前段にて集塵しきれなかったナノオーダのサイズの微細塵が脱臭フィルターに付着して蓄積され、光触媒層への光の到達を妨げていた。同時に、光触媒の細孔を塞ぎ、臭気の吸着及び分解を妨げるため、脱臭性能が十分に発揮出来ないといった課題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために為されたものであり、脱臭部に対する微細塵の付着を抑制して脱臭性能の劣化を最小限に留める事で、集塵部のメンテナンスが必要となる期間がより長い電気掃除機を提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気掃除機は、本体筐体と、前記本体筐体内に設けられ、塵埃を含んだ空気を清浄化する集塵部と、前記本体筐体内に設けられ、本体筐体の本体吸引部から塵埃を含んだ空気を前記集塵部に導入し、前記集塵部から排出される清浄化された空気を本体筐体排気口から排出するための電動送風機と、前記本体筐体内に設けられ、前記集塵部を収納する内部空間と、前記内部空間内に設けられ、背面が前記電動送風機の吸気部の開口面と重ならず、かつ、背面の少なくとも一部が前記内部空間の内部壁面と近接して設けられ、表面の少なくとも一部が開口された脱臭部材とを備えるように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電気掃除機は、上記の構成を採用したことにより、脱臭部へのゴミの付着を抑制して、脱臭性能の劣化を最小限に抑える。それにより、集塵部のメンテナンスが必要となる期間をより長くすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の全体を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の本体の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の本体の上面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の本体の側面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る図3のA−A断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る図3のB−B断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る図5のC−C断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る脱臭部51近傍の斜め方向の模式断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る集塵部50を取り外した状態での掃除機本体5の上面図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る集塵部50を取り外した状態での図3の掃除機本体5のA−A断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る集塵部50の斜視図、正面図、及び背面図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る吸気フィルター52と脱臭部材51aとを収納したフォルダーの斜視図、正面図、及び背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1に係る電気掃除機について、構成、動作・作用、及び効果について説明する。
【0010】
(電気掃除機全体の構成)
図1は本発明に係る電気掃除機100の外観を示す斜視図である。まず、図1により、実施の形態1に係る電気掃除機100の構成について説明する。
電気掃除機100は、吸込口体1と、吸引パイプ2と、接続パイプ3と、サクションホース4と、掃除機本体5とから構成されている。
吸込口体1は、使用者が掃除する際にその一方の面である吸込口が床面に接触して床面上のごみ、塵埃、及び周囲の空気すなわち含塵空気等を吸い込むためのものである。吸込口体1の出口側は、使用者が使い易い姿勢で作業できるように使用者の手の位置程度まで真直ぐに延びる構造であり、例えば円筒形状の吸引パイプ2の一端に接続されている。吸引パイプ2の他端は、中途で若干折れ曲がった形状の接続パイプ3の一端に接続されている。そして、この接続パイプ3には電気掃除機100の運転を制御する操作スイッチが設けられた把手部3aが設けられている。接続パイプ3の他端は、蛇腹状で可撓性を有するサクションホース4の一端に接続されている。そして、サクションホース4の他端は、掃除機本体5の本体吸引口56に接続されている。このようにして、吸込口体1、吸引パイプ2、接続パイプ3、およびサクションホース4は、ゴミ、塵埃、及び含塵空気を掃除機本体5の本体吸引口56に流入させるための経路の一部を構成している。
【0011】
(掃除機本体5の全体構成)
次に、掃除機本体5の全体構成について説明する。図2は掃除機本体5の斜視図であり、図3は掃除機本体5の上面図であり、図4は掃除機本体5の側面図である。
これらの図2〜図4において、掃除機本体5は、掃除機の主要部品を格納する本体筐体90と、前記した本体吸引口56と、吸入口体1から吸入したごみや塵埃等を分離して溜め込むための集塵部50と、使用者が持ち運ぶ際に把持するためのハンドル58と、使用時に居室等を移動するための車輪55と、電源コードを収納するための図示しないコードリール部等を備えている。
【0012】
(掃除機本体5の内部構成)
次に、掃除機本体5の内部構成について説明する。図5は図3の掃除機本体5のA−A断面図であり、図6は図3の掃除機本体5のB−B断面図であり、図7は図5のC−C断面図である。図5に示すように、本体筐体90の内部には、前記の本体吸引口56と、本体吸引口56から吸引したごみや塵埃等を通過させるための吸引風路49と、前記の集塵部50と、集塵部にたまったごみや塵埃等の臭気を分解するための脱臭部51(図7に示す)と、内部にファンを有するモーター回転させることで掃除機本体5の通風路内部を負圧にして、吸込口体1の吸込口からごみや塵埃等を前記集塵部50に吸込むための電動送風機53と、前記集塵部50にごみや塵埃等を残し他の吸い込んだ空気を外部に排出する手前の空間である吸込み排気空間57と、が配置されている。
前記の、本体吸引口56は、サクションホース4を取り外した状態で本体筐体90外部の空間に対する開口を形成している。
【0013】
また、図6に示すように、本体筐体90の内部には、集塵部50を通過した微細な塵埃等を捕捉するための吸気フィルター52と、前記排気空間57を通過した空気を掃除機本体5の外部に排出するための排気口54と、が設けられている。
【0014】
(集塵部50の構成)
次に、集塵部50の構成について説明する。
図3に示すように、集塵部50の上面は、本体筐体90の上面の一部を構成し、その中央部にはハンドル58が設けられている。そして、この集塵部50は、使用者が前記の本体筐体90の上面にあるハンドル58を把持して、上斜め後方の方向に引き出すことで、取り外し可能な構造となっている。集塵部50を取り外した状態では、図9に示す集塵部50の掃除機本体5の上面図のような形状、及び図10に示す図3の掃除機本体5のA−A断面図の様な形状となる。
尚、図10に示すように、本体筐体90において集塵部50を格納する空間を本体内部空間と称する。
【0015】
前記の集塵部50の上面の裏側には、図5に示すように、立方体で箱状の形状をしたゴミ等を溜めるための集塵ケース50bが取り付けられている。図11(a)は、掃除機本体5の本体吸引口56を正面とした場合の左側側方から見た場合の、集塵ケース50bの斜視図であり、図11(b)はその正面図で、図11(c)はその背面図である。この集塵ケース50bの内部には、吸込口体1から吸込んだごみや塵埃等を蓄積するために設けられたゴミ蓄積部50aが格納されている。このゴミ蓄積部50aは通気性を有するフィルター材で構成され、袋形状に形成されており、その内部に取り込んだ含塵空気からゴミや塵埃等を分離して捕集する。
そして、このゴミ蓄積部50aは交換可能となっている。それにより、集塵ケース50b一杯まで膨らみ、使用者がゴミの補修性能の低下を感じた際に、上記ハンドル58を把持して、集塵部50を取り出した際に、このゴミ集積積部50aを交換する等、容易にメンテナンスすることができる構成としている。
【0016】
図5、及び図11に示すように、前記の集塵ケース50bは、吸引風路49から吸引された吸引風を集塵部50に導入するための略円形状に開口する集塵部吸気口50cと、集塵部50にゴミや塵埃等を分離して残りの空気を電動送風機53に導くための集塵部排気口50dを有している。
図5、及び図11に示すように、集塵部吸気口50cは、吸引風路49と連通するように設けられており、吸引風をゴミ蓄積部50aへと導く。そのため、例えば、吸引風路49と同形状、同サイズとなっており、圧損が生じないように構成されている。
また、図6、及び図7に示すように、集塵部排気口50dは、ゴミ蓄積部50aの外形をなすフィルタ材を通過することで、ある程度清浄化された吸引風を電動送風機53へと導く。
【0017】
また、図6、及び図11に示すように、集塵部排気口50dは、後述する吸気フィルター52及び脱臭部材51aが設置される掃除機本体5の内部の壁面53cと対向し、脱臭部材51aよりも大きい面積を有するように形成されており、吸気フィルター52と連通するように設置されている。ゴミ蓄積部50aと脱臭部材51aとの間には圧損体を設けておらず、空気の流通の妨げが無い状態となっている。
また、集塵部排気口50dは、吸引方向に対して略平行な風路として、格子状に開口を成すように形成されている。このように格子状に開口を形成することで、集塵部から出た空気を格子にそって平行に流れるように整流している。それにより、集塵部から出た空気が吸気フィルターに向かって流れるようになる。(
また、図7は図5の掃除機本体5のC−C断面図であり、この図7に示すように、集塵部排気口50dは、脱臭部材51a方向から吸気フィルター52がある吸気部53a方向に近づくにつれて、厚くなるように形成されている。すなわち、脱臭部材側51a(図7下側)の格子を短くし、吸気フィルター52側(図7上側)の格子を長くすることで、脱臭部材51aよりも吸気フィルター52側の流れがより整流されることで、集塵部から出た空気が吸気フィルター52に向かって流れるように作用する。それにより、脱臭部51a表面への集塵部からの空気の流れを減らすように作用する。
【0018】
(脱臭部51及び吸気フィルター52の構成及び配置)
次に、脱臭部51及び吸気フィルター52の構成及び配置について説明する。図8は脱臭部51近傍の斜め方向の模式断面図である。また、図12(a)は、掃除機本体5の本体吸引口56を正面とした場合の左側後方から見た場合の、吸気フィルター52と脱臭部材51aを収納したフォルダーの斜視図であり、図12(b)はその正面図で、図12(c)はその背面図である。この図8及び図9に示すように、脱臭部51は臭気を脱臭するための脱臭部材51aと、脱臭部材に所定の波長の光を照射するための光源51bにより構成される。
【0019】
本実施の形態1では、例えば、脱臭部材51aは段ボール箱の素材のようなコルゲート形状の基材に、酸化チタン等の紫外線領域から可視光領域まで応答して
活性が高まる可視光応答性光触媒と、光触媒が光を得られないときに臭気を保持する作用をする物質である金属酸化物と、ゼオライト等の吸着材とをあらかじめ混合した上で添着された部材を用いている。 この金属酸化物は熱触媒と呼ばれ、熱を与えることで分解作用をも引き出すことが出来る。従って、図5に示すように、電動送風機53に隣接するように脱臭部材51aを設置することで、脱臭部材51aに熱を与えて分解作用を引き出すことができる。
なお、脱臭部材51aは、必ずしもコルゲート形状以外でも、表面積が広く取れ、一方向でしか吸引できない、側面が塞がれた形状である形状が望ましい。
また、脱臭部材51aには、上記の紫外線応答性光触媒、可視光応答性光触媒、金属酸化物、吸着材のうち、必ずしも全てではなくても、いずれかを混合するものでも構わない。
【0020】
この脱臭部材51aは、掃除機本体50から取り外してメンテナンスが可能なよう、ケーシングされて本体側に設置されている。そして、図8及び図9に示すように、脱臭部材51aは、吸気フィルター52と共に、例えば、同一のホルダー内部に収納される構造となっている。
【0021】
図8に示すように、吸気フィルター52は、電動送風機に吸込まれる開口である吸気部53aに面して設置され、吸気部53aから吸引される吸引風が通気する。また、図8及び図12に示すように、脱臭部材51a、及び吸気フィルター52の双方の開口面がとも、電動送風機53の吸引方向に対し、略垂直となるように開口を有している。脱臭部材51aは、前記のように吸気フィルター52と同一平面状で隣接するが、吸気部53aから吸引される吸引風が可能な限り通気しないように、吸気部53aの正面とならないように、また吸気部53aの開口と脱臭部材51aの表面とが重ならないように設置されている。更に、脱臭部材51aにおける吸気部53aに対向する面の一部が、前記の本体内部空間の内壁面の一部である電動送風機前壁面51cにて覆われるように設置されている。
脱臭部材51aと吸気フィルター52を収納するホルダーは、集塵部50と電動送風機53の間に設けた凹部)に設置される。
【0022】
(光源51b)
図7に示すように、脱臭部51を構成する光源51bは、電動送風機53に隣接して設けられている。また、光源51bは、本体の動作時に光源51bが発する光が脱臭部材51aに当たるように、脱臭部材51aに対向するように設置されている。
【0023】
光源51bは青色の光を照射するLEDを用いている。本実施の形態1に係わる電気掃除機の構成では、脱臭部材51aに添着した光触媒を可視光応答性のものを使用しているため、光源は青色としている。ただし、可視光応答性のものでも、光の波長は短い方がより分解効果が高くなる傾向が有り、500nm以下の波長を有する光のものを用いるのが望ましい。従って、例えば、470nmを主波長とする青色LEDを用いている。
また、脱臭部材51aに対して広い範囲で光を照射するように、光源51bと脱臭部材51aの間に偏光板を設け、光を分散させることが望ましい。
【0024】
図9及び図10に示すように、前記ホルダーは、集塵部50を取り出した際に、脱臭部材51aと吸気フィルター52とが天面方向を向くように斜めに設置されている。すなわち、脱臭部材51aは、光源51bにより照射されるだけでなく、天面方向に対して斜め方向に傾斜させて設置することで、室内の上方から照射される光を得られやすいようにしている。それにより、集塵部50を取り外した場合、脱臭部材51aが天井の蛍光灯や太陽の光を受け、脱臭部材51aの光触媒がその光のうちの可視光や紫外線を受けることにより、最も脱臭性能が劣化している可能性が高いメンテナンス時においても分解性能が得られる構成としている。
【0025】
なお、脱臭部材51aの配置は、特に上記の配置に限定されるものではなく、集塵部内に設置しても良いが、集塵部50内であると、ゴミ蓄積部50aを形成する袋体が満杯になった際に直接接触し、臭気の拡散が妨げられてしまう場合がある。また、ゴミ蓄積部50aから漏れる塵埃が付着しやすい。また、光源51bとの距離が離れ、照射がし難いといった課題もある。
また、本実施の形態1では脱臭部材51aのメンテナンスは積極的に行う必要は無いが、例えば、ペットの糞尿等、強烈な臭気を発生する物を吸引した場合、分解が追いつかず、水洗い等を行うケースがある。また、ゴミ蓄積部50aを形成する袋体が破損したりした場合、ゴミの付着を抑えきれない時がある。従って、上記のように脱臭部材51aを取り外し可能な形態としているので、取り外してメンテナンスすることができる。
【0026】
(全体の動作説明)
次に、実施の形態1の電気掃除機の動作について説明する。
図1に示すように、掃除機本体5には電源コードが接続されており、使用者が電源コードをコンセント等の外部電源に接続することで、掃除機本体5が通電する。そして、使用者が把手部3aの操作スイッチをONすることで電動送風機53が駆動されて吸引動作を行う。具体的には、使用者が、吸込口体1の吸込口を床面等に接触させて床面のゴミ、塵埃等を吸い込む。それにより、このゴミ、塵埃等は、吸込口体1、吸引パイプ2、接続パイプ3およびサクションホース4を経て、本体吸引口56から掃除機本体5の内部に流入する。
【0027】
図5に示すように、掃除機本体5に流入したゴミと塵埃等を含んだ含塵空気は、吸引風路49を経て、集塵部50へ到達する。前記含塵空気は集塵部吸気口50cからゴミ蓄積部50aに流入する。ゴミ蓄積部50aは通気性のフィルター材で袋形状に形成されているため、その内部に取り込んだ含塵空気からゴミを分離して捕集する。残った空気はゴミ蓄積部50aを通過して、集塵部排気口50dを経て集塵部50より下流へ流れる。
【0028】
図8に示すように、ゴミ蓄積部50aの集塵部50で含塵空気からごみを分離されて清浄化された空気は、吸気フィルター52及び脱臭部51の方向へと流れていく(図8の白矢印で示す)。そして、この空気は、吸気フィルター52を通過する際に、微細な塵埃等がフィルタに捕捉されることで、残りの空気を清浄化される。その後、図6に示すように、電動送風機53、排気空間57、排気口54を経て、掃除機本体5の外部に排出される。一方、ゴミ蓄積部50aは前記のように袋形状に形成されているため、使用者が掃除をする毎に、その内部に取り込んだ含塵空気からゴミを分離して捕集し、ゴミを取り込みつつ集塵ケース50b一杯まで膨らむ。
【0029】
従って、ゴミ蓄積部50a及び集塵ケース50bの体積が大きければ大きい程、長期間ゴミを溜めることが出来、集塵部50のメンテナンス回数を減らす事が可能である。一般的にはゴミ蓄積部50a及び集塵ケース50bは数か月分のゴミが蓄積可能なように設計されている。ただし、ゴミ蓄積部50aは通気することが前提であるため、ゴミの捕集性能を100%とすることは出来ない。従って、少なくとも、粒径が数百ナノ以下の微細な塵埃を、吸引風と主流と共に通過させてしまうことが一般的に知られている。特に、多量のゴミを蓄積した状態では、新たに吸引されたゴミによって、前から捕集し、蓄積されていたゴミが押し出され、ゴミ蓄積部50aを通過してしまう。このため、ゴミ蓄積部50aにゴミを蓄積すれば蓄積するほど捕集性能が低下していく傾向も認められている。従って、集塵部50は、使用者がゴミの捕集性能の低下を感じた際に、ハンドル58を把持して、集塵部50を上斜め方向に引き出すことで、集塵部50を取り出した上で、ゴミ蓄積部50aを交換することで、メンテナンスを行う。
【0030】
(ゴミ蓄積部50aから発生する臭気)
次に、ゴミ蓄積部50aから発生する臭気及びこの臭気が使用者に与える不快感について説明する。
前記のように、ゴミ蓄積部50aは家庭ゴミを数ヶ月分蓄積し、使用することが可能な体積を有している。つまり、数ヶ月の間は掃除機本体5が動作していようが停止していようが、ゴミ蓄積部50aはメンテナンスされずに、掃除機本体5に設置され続ける。従って、ゴミは掃除機本体5から取り除かれること無く、絶えず臭気を発生し続ける。特に、掃除機停止時は、空気は温度及び湿度の変化やガス成分の濃度変化による自然滞留でのみ移動し、新鮮な無臭空気の出入りが殆ど無いため、掃除機本体5内部の空間内に臭気が拡散、蓄積され続ける。このように、蓄積された臭気は掃除機本体5の起動時の動作と共に、一度に外部に排出され、排気臭となって使用者に不快感を与える結果となる。そして、ゴミ蓄積部50aに蓄積するゴミの量が多ければ多いほど、発生するゴミの臭気は多くなるため、掃除機の起動時の排気臭は強くなっていく傾向にある。
【0031】
(脱臭部51の脱臭作用と脱臭効果)
次に、脱臭部51による臭気の脱臭作用について説明する。
前記のように、ゴミ蓄積部50aに蓄積されたゴミからは掃除機の停止後に、時間と共に徐々に臭気が放出される。一般的に気体は濃度勾配による拡散現象により、濃度が濃い方から薄い方に流れていくことが知られている。つまり、ゴミの臭気はゴミ蓄積部50a内に一定量蓄積され、その後、ゴミ蓄積部50a内から、集塵部50の外に向けて自然に拡散して行く。この時、図5に示すように、臭気を除去する性能を有する脱臭部材51aが集塵部50と空間上連通する位置、すなわち同一空間に設置されていると、脱臭部材51a近傍は臭気が除去されていくため、臭気の濃度が低い状態に保たれる。従って、臭気は掃除機本体5内の全体には拡散せずに、脱臭部材51a近傍のみに留まり、かつ、低濃度に抑えられる。従って、掃除機本体5の動作時に、含塵空気が脱臭部材51aの表面を通気しなくても脱臭の効果を十分に得ることが出来る。
【0032】
なお、臭気の除去については、吸着と分解の二つのプロセスがあることが一般的に知られている。吸着については臭気成分そのものを留めるのみで、消失させる訳ではないため、限界が有り、限界を超えると臭気の除去が出来なくなる。そのため、使用者に洗浄などのメンテナンスを行ってもらうことで、吸着した臭気を対象から取り除かなければならない。しかし、分解については、臭気を臭わない気体にすることが出来るため、使用者はメンテナンスの必要が無いといったメリットがある。そこで、本発明に係わる電気掃除機では、分解に着目し、光触媒を添着した脱臭部材に対して光源及び自然光を用いて光を照射することで、臭気を分解し、除去する構成とている。
【0033】
しかし、脱臭部材51a表面上にゴミが付着してしまうと、ゴミにより、光が妨げられ、光触媒そのものに光が当たらず、分解が起こらない。また、分解を起こすために一時的に臭気を保持するための細孔をゴミによって埋められてしまい、臭気の保持性能が得られなくなる。つまり、分解性能が得られないために、ゴミを除去するためのメンテナンスを行う必要が出てしまうことになる。
【0034】
そこで、実施の形態1では、図8に示すように、脱臭部材51aを吸気フィルター52と同一平面状で隣接させるが、前記のような背景があるため、吸気部53aから吸引される吸引風が可能な限り脱臭部材51aを通気しないようにすべく、脱臭部材51aを吸気部53aの正面とならないように、また、重ならないように設置する。また、脱臭部材51aにおいて吸気部53aに対向する面の一部が、本体内部空間の内壁面の一部である電動送風機前壁面51cにて覆われるように設置している。それにより、脱臭部材51aに対して吸引風の主流の通気を抑制し、また、吸引風に含まれる僅かに漏れる微細な塵埃が脱臭部材51aの表面へ付着することを抑制することが出来る。
また、脱臭部材51aよりも上流側にゴミ蓄積部50aを設置することで、大きなゴミの付着を無くすことが出来る。
【0035】
尚、前記のように掃除機本体5内の臭気の脱臭は主に掃除機停止時に自然拡散によって起こるため、脱臭部材51aへの通気は可能な限り少なく抑えるのが望ましい。従って、本構成では、電動送風機前壁面51cで脱臭部材51aの一部分を覆う形としているが、全面を覆う構成とすれば、吸引風を全く通気させないことも可能となり、更に微細な塵埃の付着を抑制することが出来る。
【0036】
また、図8に示すように、集塵フィルターを同一平面状に隣接し、吸気部53aから吸引される吸引風の主流が流れるように配置しているので、集塵フィルター上で優先して微細塵を捕集するとともに、吸引風の主流を整流し、乱流の形成による飛散を防止することで、更に、脱臭部材へのゴミ付着を抑制できる。これらの効果により、脱臭部材51aの表面に対するゴミによる遮蔽を減らし、光源からの光を脱臭部材に十分に当て続け、分解性能を保持することが出来る。
【0037】
なお、脱臭部材51aは必ず一部分が本体内に存在する空気に接するように、開放されている必要があり、ゴミ蓄積部50aと空間上連通、すなわち、同一空間に配置されている必要がある。前記のように、臭気は自然拡散するが、脱臭部材51aそのものが、臭気発生源であるゴミ蓄積部50aと同一空間とならないように区切られてしまうと、当然臭気は拡散されず、脱臭効果も得られないことになる。従って、脱臭部材51aの開放面積を可能な限り多くし、かつ、ゴミ蓄積部50aと圧損体で区切られず、空間上連通している方が、性能を発揮できる。
【0038】
また、前記のように、脱臭部材51aをコルゲート状といった、通気可能な形状とすることで、表面積を増やし、光が当たる部分を増やすと共に、ゴミの付着面積の比率を下げて、かつ、脱臭部材の表面(集塵部50側)から裏面(電動送風機53側)への臭気の流れを向上することが出来る。
このとき、脱臭部材51aは、本実施の形態1のように一方向のみに通気可能な形式が望ましい。例えば繊維状等に形成すれば多方向から通気が可能になるが、脱臭部材51a内部に乱流場が形成されやすくなり、微細な塵埃が付着しやすくなる。また、一方向であると、通気可能な方向から光を照射することで、光が当たらない影の部分が生じづらくなる。
【0039】
(脱臭部材の添着した材料の作用と効果)
次に、添着した材料の作用と効果について説明する。
光触媒は、光のエネルギーを得ることで電子を放出し、周囲にラジカルを生成して、臭気を分解する作用を持つ。脱臭部材51aに対し、光源51bより光を照射し、臭気を分解することで、長時間使用しても、脱臭性能が劣化しない。特に紫外線領域を主とした低波長の光を得ることで、高い分解効果を得ることが出来る。つまり、理論的には永久に脱臭性能を維持し続けることが可能である。しかし、実際にはゴミの付着等で光が妨げられ、劣化が起こる。従って、実施の形態1のようなゴミの付着を抑制した設置形状で無ければ、その効果を十分に引き出すことが出来ない。
【0040】
光触媒を電気掃除機で用いるときは、光源を用いて光触媒の活性を高める手法が主にとられている。しかし、実際には、外の光を集光し、光触媒に照射しても光触媒の効果が得られる。そこで、本実施の形態1では、光源を用いることの他に、脱臭部材51aを天面方向に斜め方向に向けて設置し、室内の上方から照射される光を得られやすいようにしている。そのため、集塵部50を取り外すと、脱臭部材51aが天井の蛍光灯や太陽の光を受け、脱臭部材51aの光触媒がその光のうちの可視光や紫外線を受けることにより、最も脱臭性能が劣化している可能性が高いメンテナンス時に、最も光触媒の分解性能を得ることが出来る。
【0041】
通常の光触媒を用いた場合、活性をあげる為に紫外光を主波長とした光源を用いるのが一般的である。しかし、集塵部50を取り出した際に光源51bを直接視認する可能性があり、紫外線は直視すると目が痒くなる等の症状を使用者に与える場合がある。そのため、紫外線の使用は避けるのが望ましい。そこで、本実施の形態1では、脱臭部材51aとして、いわゆる可視光応答性光触媒を用いることにより、可視光領域を主波長とする光源を使用している。そのため、光源51bを直接見た場合でも、直接視認した場合のリスク使用者の影響を少なくしつつ、脱臭部材51aの光触媒としても活性が高まるという効果を奏することができる。
【0042】
また、金属酸化物や吸着材は、臭気を表面に留める役割を果たす。光触媒には分解の作用があるが、その効果は光源51bが動作している間のみである。従って、通電されていないとき、すなわち光源51bが動作していないときは臭気を分解することが出来ない。そこで、本実施の形態1では、光触媒が光を得られないときに臭気を保持するために、金属酸化物を脱臭部材51aに混ぜ込んでいる。それにより、光源51bが脱臭部材51aを照射していない時は、脱臭部材51aが臭気を吸着することにより保持し、光源51bが脱臭部材を照射している間は、吸着された臭気を分解し、脱臭部材をクリーニングするというプロセスを得ることが出来るようになり、掃除機本体5内の臭気が低い状態を保つことが出来る。
【0043】
なお、金属酸化物は熱触媒と呼ばれ、熱を与えることで分解作用をも引き出すことが出来る。従って、本実施の形態1に係わる電気掃除機では、図5に示すように電動送風機53に隣接するように脱臭部材51aを設置することで、電動送風機53が動作時に発する排熱により、脱臭部材51aを熱することが出来る。これにより、光触媒の分解効果だけでなく、金属酸化物による分解効果も引き出すことが可能となる。
【0044】
(光源51bの動作及び効果)
前記のように紫外線は直視しないほうが良い。従って、従来技術では、集塵部50を取外した際はLEDの照射を止める等の制御が必要であった。しかし、本実施の形態1では、紫外線を含まないLEDを用いているため、使用者がどのような状態で使用しても、電源が入っている限りLEDを照射し続け、分解作用を得続けることが出来る。具体的には、掃除機本体への通電の開始と同時にLEDが照射され、集塵部50を取り外したときにも通電を行いLEDが照射され、通電の終了がそのままLEDの停止となる。
【0045】
なお、脱臭部材51aに添着される光触媒の全てに光を照射して分解効果を引き出すために、光源51bから発する光は脱臭部材51a全体に照射した方が良い。従って、光源51bと脱臭部材51aの間に偏光板を設け、光を分散させることが望ましい。
【0046】
また、集塵部50と対向する面と逆側から光が照射されるように光源51bを設置する構成とすることで、脱臭部材のゴミ蓄積部から漏れた微細塵が付着しづらい側を重点的に照射し、微細塵の汚れの影響を受けずに光触媒の性能を得られる。
【0047】
また、脱臭部材51aを掃除機本体5に設けた凹部に設置する。これにより、脱臭部材51aの設置により発生する凸型をより小さくし、集塵部50の取り出しの際の引っ掛かりを抑制すると共に、凸部へ塵埃が溜まるのを防ぎ、脱臭部材51aの汚れを抑制する効果を得られる。
【0048】
以上より、本実施の形態1によれば、脱臭部材への微細塵付着を抑制して、脱臭性能の劣化を最小限に留める事で、長期間メンテナンスを行わなくても排気が臭わないようにすることが出来る。
【0049】
なお、本実施の形態1とは異なる形態となるが、前記脱臭部材は前記光源の照射軸に対し所定の角度を有するように設置しても良い。脱臭部材51aと光源51bの照射角を垂直としないことで、光が照射する面積が増加させることが出来る。これにより、脱臭部材全体に光を照射しやすくなり、分解性能が向上する。
【0050】
また、本実施の形態1では、ゴミ蓄積部50aに集塵袋を用いた構成としたものを示したが、例えばサイクロン分離装置やフィルターといった集塵方式でも同様の効果を奏することができる。また、本発明は、実施の形態で説明したキャニスタータイプの電気掃除機に限られるものではない。
【0051】
また、本発明は以上説明した実施の形態1に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 吸込口体、2 吸引パイプ、3 接続パイプ、3a 把手部、4 サクションホース、5 掃除機本体、49 吸引風路、49a 放出口、50 集塵部、50a ゴミ蓄積部、50b 集塵ケース、50c 集塵部吸気口、
50d 集塵部排気口、51 脱臭部、51a 脱臭部材、51b 光源、51c 電動送風機前壁面、52 吸気フィルター、53 電動送風機、53a 吸気部、54 排気口、55 車輪、56 本体吸引口、57 排気空間、58 ハンドル、90 本体筐体、100 電気掃除機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筐体と、
前記本体筐体内に設けられ、塵埃を含んだ空気を清浄化する集塵部と、
前記本体筐体内に設けられ、前記本体筐体の本体吸引部から塵埃を含んだ空気を前記集塵部に導入し、前記集塵部から排出される清浄化された空気を本体筐体排気口から排出するための電動送風機と、
前記本体筐体内に設けられ、前記集塵部を収納する内部空間と、
前記内部空間内に設けられ、背面が前記電動送風機の吸気部の開口面と重ならず、かつ、背面の少なくとも一部が前記内部空間の内部壁面と近接して設けられ、表面の少なくとも一部が開口された脱臭部材と、
を備えることを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記脱臭部材は、
その背面の少なくとも一部が前記内部空間の電動送風機前壁面と近接して設けられ、
その開口面より面積が小さいことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記脱臭部材は、前記集塵部を通過した微細な塵埃等を捕捉するための吸気フィルターと同一平面で構成されることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載の電動送風機。
【請求項4】
前記脱臭部材は一方向のみに通気可能な形状を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記脱臭部材は、光触媒が担持されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記脱臭部材が担持する光触媒は、紫外線領域から可視光領域まで応答する光触媒であることを特徴とする請求項5記載の電気掃除機。
【請求項7】
前記脱臭部材は、金属酸化物及び吸着材が添着されているか、または、金属酸化物か吸着材のいずれかが添着されていることを特徴とする請求項5または6のいずれか1項記載の電気掃除機。
【請求項8】
前記脱臭部材を照射する光源を有してなることを特徴とする請求項5〜7項のいずれか1項記載の電気掃除機。
【請求項9】
前記光源は、前記電動送風機の方向から前記集塵部の方向に向けて前記脱臭部材を照射するように設置されてなることを特徴とする請求項8に記載の電気掃除機。
【請求項10】
前記脱臭部材は前記光源の照射軸に対し所定の角度を有してなることを特徴とする請求項8または9のいずれか1項記載の電気掃除機。
【請求項11】
前記集塵部は略上下方向に着脱可能に設置されており、前記脱臭部材は、掃除機本体の凹部に設置されてなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の電気掃除機。
【請求項12】
前記脱臭部材は、本体筐体底面に対して所定の角度で傾いた状態で設けられ、
前記集塵部を取り外した状態で、外部から露出することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−480(P2013−480A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136980(P2011−136980)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【特許番号】特許第4957858号(P4957858)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】