説明

電気探査比抵抗法

【課題】セメンテーション処理やボーリング孔内への連続注水のような煩雑な作業を行ったり、高価な電極を用いることなく、ボーリング孔内に配置された孔内電極と孔壁とを導通させることができる作業性及び経済性に優れた電気探査比抵抗法を提供する。
【解決手段】複数の電極3;4が、地盤に設けられた一対のボーリング孔2内において上下に所定間隔を隔てて設置されたとともに一対のボーリング孔間の地表面Sにおいて所定間隔を隔てて設置された構成と、測定装置7とを用い、測定装置7が任意の一対の電極間に電流を流すとともにその他の一対の電極で測定された電位を測定する電気探査比抵抗法において、ボーリング孔2内の地下水位Wよりも上方の空間に水よりも流動性の低い導電性材料(泡10)を入れて孔内の電極とボーリング孔の孔壁22との導通を確保した後に任意の一対の電極間に電流を流した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔内に配置された孔内電極と孔壁とを導通させることができる作業性及び経済性に優れた電気探査比抵抗法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気探査比抵抗法は、地盤に設けられた一対のボーリング孔と、各ボーリング孔内において上下に間隔を隔てて設置された複数の電極と、各ボーリング孔間の地表面において間隔を隔てて設置された複数の電極と、測定装置とを用い、測定装置で任意の一対の電極間に電流を流すとともにその他の一対の電極間の電位を測定する方法であり、この測定結果に基いて地盤の2次元比抵抗分布又は3次元比抵抗分布を得ることができ、2次元比抵抗分布又は3次元比抵抗分布から地盤の性状を推定することが可能となる(例えば、特許文献1等参照)。
上記任意の一対の電極間に電流を流すためには、ボーリング孔内に配置された電極とボーリング孔の孔壁(地盤面)とを通電させる必要がある。上下に間隔を隔てて設けられた複数の電極をボーリング孔内に吊るして設置する場合には、ボーリング孔内に水を入れて電極と孔壁とを通電可能にするようにしているが、ボーリング孔内の水は孔壁を介して地盤に浸透してしまうので、孔壁をセメントで覆うセメンテーション処理をしてからボーリング孔内に水を入れたり、ボーリング孔内への連続注水を行っていた。あるいは、ボーリング孔内に水がなくても通電可能なように孔壁と圧着可能な構造の電極(例えば、特許文献2;3等参照)を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−337746号公報
【特許文献2】特開平10−220182号公報
【特許文献3】特開2006−119096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セメンテーション処理やボーリング孔内への連続注水は作業が煩雑となり作業コストもかかるという問題点があった。また、ボーリング孔の孔壁と圧着可能な構造の電極は高価であるので導入し難いという問題点があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、セメンテーション処理やボーリング孔内への連続注水のような煩雑な作業を行ったり、高価な電極を用いることなく、ボーリング孔内に配置された孔内電極と孔壁とを導通させることができる作業性及び経済性に優れた電気探査比抵抗法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電気探査比抵抗法は、複数の電極が、地盤に設けられた一対のボーリング孔内において上下に所定間隔を隔てて設置されたとともに一対のボーリング孔間の地表面において所定間隔を隔てて設置された構成、又は、複数の電極が、地盤に設けられた一対のボーリング孔内において上下に所定間隔を隔てて設置された構成、又は、複数の電極が、地盤に設けられた1つのボーリング孔内において上下に所定間隔を隔てて設置されたとともにボーリング孔の周囲の地表面において所定間隔を隔てて設置された構成と、測定装置とを用い、測定装置が任意の一対の電極間に電流を流すとともにその他の一対の電極で測定された電位を測定する電気探査比抵抗法において、ボーリング孔内の地下水位よりも上方の空間に水よりも流動性の低い導電性材料を入れて孔内の電極とボーリング孔の孔壁との導通を確保した後に任意の一対の電極間に電流を流したので、セメンテーション処理やボーリング孔内への連続注水のような煩雑な作業を行ったり、高価な電極を用いることなく、作業性及び経済性に優れ、ボーリング孔内に注入された水よりも流動性の低い導電性材料により孔内電極と孔壁とが導通するので、任意の一対の電極間に電流を流すことができ、作業性及び経済性に優れ、測定信頼性の高い電気探査比抵抗法を実現できる。
また、ボーリング孔内に有孔管を挿入し、有孔管内に水よりも流動性の低い導電性材料としての泡を入れて、泡により孔内の電極とボーリング孔の孔壁との通電を確保したので、ボーリング孔内に注入された泡により孔内電極と孔壁とが導通し、任意の一対の電極間に電流を流すことができ、作業性及び経済性に優れ、測定信頼性の高い電気探査比抵抗法を実現できる。また、有孔管を用いたので、泡をボーリング孔内の地下水位よりも上方の空間全体に満遍なく行き渡らせることができるので、孔内電極と孔壁とをより確実に導通させることができる。また、取扱いが容易でかつ孔壁を介して地盤に浸透しにくい泡を用いたので、孔内電極と孔壁との導通性を長時間維持できる測定信頼性の高い電気探査比抵抗法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】電気探査比抵抗法の測定方法を示す模式図(実施の形態)。
【図2】(a)はボーリング孔に孔壁保持管を設置した図、(b)はボーリング孔内に有孔管を設置した図(実施の形態)。
【図3】ボーリング孔内に導電性材料を供給した状態を示す図(実施の形態)。
【図4】ボーリング孔内に導電性材料を供給した状態を示す斜視図(実施の形態)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
電気探査比抵抗法による測定は、図1に示す電気探査比抵抗測定装置1により実現可能である。電気探査比抵抗測定装置1は、地盤に設けられた一対のボーリング孔2と、一対のボーリング孔2内において上下に所定間隔を隔てて設置された複数の孔内電極3と、一対のボーリング孔2間の地表面Sにおいて所定間隔を隔てて設置された複数の地上電極4と、水よりも流動性の低い導電性材料5と、導電性材料供給装置6と、測定装置7と、測定装置7や導電性材料供給装置6の機械に電源を供給するための図外の安定化電源とを備える。
【0008】
水よりも流動性の低い導電性材料5としては、泡10を用いる。導電性材料供給装置6は、泡貯留タンク9、ポンプ11、孔壁保持管12、有孔管13、注入ホース14(図3参照)を備える。孔壁保持管12は金属管を用いた。有孔管13は開口率10%の塩化ビニル製の管を用いた。有孔管13は、管の内面と外面とに貫通するように設けられた複数の孔15を備えた管である(図4参照)。測定装置7は、電流を流す一対の電極の組と電位を測定する一対の電極の組との組合せを設定するためのスイッチングボックス、電流計、電圧計などを備える。
【0009】
図2乃至図4、及び、図1を参照し、電気探査比抵抗法による測定方法を実現するための電気探査比抵抗測定装置1の作り方について説明する。図2(a)に示すように、地表面Sから地盤中に向けてボーリング孔2を形成した後、ボーリング孔2の上端開口20よりボーリング孔2の孔内に孔壁保持管12を嵌め込んでボーリング孔2の上端側の孔壁21の崩壊を防止する。例えば、管の外径がボーリング孔2の孔径よりも若干大きい孔壁保持管12を用いて、孔壁保持管12の下端側をボーリング孔2の上端開口20よりボーリング孔2内に嵌め込んで孔壁保持管12の上端側を地上に突出させる。図2(b)に示すように、有孔管13を下端側から孔壁保持管12の上端開口23より挿入して、有孔管13をボーリング孔2内に設置するとともに、有孔管13の上端を孔壁保持管12より上方に突出させる。有孔管13の下端開口24は、ボーリング孔2の孔底25に接触させても良いし(図2(b)参照)、ボーリング孔2内の地下水位Wよりも上方に設置しても良い。
【0010】
図3に示すように、泡貯留タンク9の泡出口30とポンプ11の吸込口31とを連通ホース32で繋ぎ、ポンプ11の吐出口33に注入ホース14の一端を繋ぐ。そして、注入ホース14を他端側から有孔管13内に入れて注入ホース14の他端開口35を所定の位置に接地する。即ち、注入ホース14の他端開口35は、ボーリング孔2内に泡10を効率的に充填できる位置に設置すれば良い。例えば、注入ホース14の他端開口35を地下水位Wよりも上方に設置し、泡10が有孔管13の孔15を経由してボーリング孔2内に充填されるようにする。泡貯留タンク9内に水と発泡剤とを入れて攪拌装置などで攪拌することにより泡10を作った後、ポンプ11を駆動して泡10を注入ホース14に送る。尚、安定な泡10を作るには、例えば、アニオン系界面活性剤からなる発泡剤を使用すれば良い。注入ホース14を介して注入された泡10は、有孔管13の少なくとも複数の孔15を経由してボーリング孔2内に供給され、ボーリング孔2内の地下水位Wよりも上方の空間全体(以下、ボーリング孔空間内全体Bという)に供給される。泡10の注入は、図4に示すように、泡10が孔壁保持管12の上端開口23より溢れるまで続ける。泡10がボーリング孔空間内全体Bに供給された後は、注入ホース14を有孔管13内から抜き取る。
【0011】
図1に示すように、泡10がボーリング孔空間内全体Bに供給された後、有孔管13内に複数の孔内電極3を設置するとともに、一対のボーリング孔2間の地表面Sに複数の地上電極4を設置する。例えば、所定間隔毎に複数の電極が取り付けられたロープや棒のような電極取付体を有孔管13内に挿入することで、複数の孔内電極3がボーリング孔2内において上下に所定間隔を隔てて設置される。一対のボーリング孔2内に、複数の孔内電極3を設置し、一端が複数の孔内電極3に個々に接続された電線の他端をボーリング孔2より引き出しておき、電線の他端を測定装置7に繋ぐ。また、所定間隔毎に複数の電極が取り付けられた上記電極取付体を一対のボーリング孔2間の地表面Sに設置することで、複数の地上電極4が一対のボーリング孔2間の地表面Sに所定間隔を隔てて設置され、一端が複数の地上電極に個々に接続された電線の他端を測定装置7に繋ぐ。以上により、図1に示すような電気探査比抵抗測定装置1が完成する。尚、図1では、図示簡略化のため、複数の電極の電線及び電極取付体を1本の線xで示した。
【0012】
測定装置7で任意の一対の電極間に電流を流すとともにその他の一対の電極間の電位を測定する。この場合、ボーリング孔2内に注入された泡10により当該電極と孔壁22(地盤面)との導通が確保された後に、ボーリング孔2内に配置された任意の電極に電流を流すので、任意の一対の電極間に電流を確実に流すことができる。そして、測定装置7に設けられたスイッチングボックスにより、電流を流す一対の電極の組と電位を測定する一対の電極の組との組合せを順次変更して測定した電位(比抵抗Ωm)の測定結果に基いて地盤の2次元比抵抗分布又は3次元比抵抗分布を得ることができ、2次元比抵抗分布又は3次元比抵抗分布から地盤の性状を推定することが可能となる。
【0013】
本形態によれば、セメンテーション処理やボーリング孔2内への連続注水のような煩雑な作業を行ったり、高価な電極を用いることなく、ボーリング孔2内に注入された泡10により当該電極と孔壁22(地盤面)とが通電するので、任意の一対の電極間に確実に電流を流すことができ、作業性、経済性、測定信頼性に優れた電気探査比抵抗法を実現できる。また、有孔管13を用いたので、泡10をボーリング孔空間内全体Bに満遍なく行き渡らせることができるので、孔内電極3と孔壁22とをより確実に導通させることができる。また、取扱いが容易でかつ孔壁22を介して地盤に浸透しにくい泡10を用いたので、作業性、経済性、測定信頼性に優れ、孔内電極3と孔壁22との導通性を長時間維持できる電気探査比抵抗法を実現できる。
【0014】
泡10がボーリング孔空間内全体Bに供給された後も、注入ホース14を有孔管13内に挿入したままとしておき、注入ホース14が挿入された有孔管13内に複数の孔内電極3を設置しても良い。このようにすれば、測定中において泡が少なくなったら即座に泡を追加注入でき、長時間の測定の場合でも信頼性の高い測定を実現できる。
【0015】
水よりも流動性の低い導電性材料5として、ムースやゲルのような導電性材料5を用いても良い。
【0016】
上記形態では、複数の電極が、地盤に設けられた一対のボーリング孔内において上下に所定間隔を隔てて設置されたとともに一対のボーリング孔間の地表面において所定間隔を隔てて設置された構成を例にして説明したが、電極の設置構成としては、複数の電極が、地盤に設けられた一対のボーリング孔内において上下に所定間隔を隔てて設置された構成、又は、複数の電極が、地盤に設けられた1つのボーリング孔内において上下に所定間隔を隔てて設置されたとともに当該ボーリング孔の周囲の地表面において所定間隔を隔てて設置された構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の電気探査比抵抗法は、地盤における水脈、空洞、土密度などを知る判断材料となる2次元比抵抗分布又は3次元比抵抗分布を求めることができる。本発明は、地山に対して横方向や上方向にボーリング孔を形成して2次元比抵抗分布又は3次元比抵抗分布を求めるような場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0018】
2 ボーリング孔、3 孔内電極、4 地上電極、5 導電性材料、7 測定装置、
10 泡、13 有孔管、22 孔壁、W 地下水位、S 地表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極が、地盤に設けられた一対のボーリング孔内において上下に所定間隔を隔てて設置されたとともに一対のボーリング孔間の地表面において所定間隔を隔てて設置された構成、又は、複数の電極が、地盤に設けられた一対のボーリング孔内において上下に所定間隔を隔てて設置された構成、又は、複数の電極が、地盤に設けられた1つのボーリング孔内において上下に所定間隔を隔てて設置されたとともにボーリング孔の周囲の地表面において所定間隔を隔てて設置された構成と、測定装置とを用い、測定装置が任意の一対の電極間に電流を流すとともにその他の一対の電極で測定された電位を測定する電気探査比抵抗法において、
ボーリング孔内の地下水位よりも上方の空間に水よりも流動性の低い導電性材料を入れて孔内の電極とボーリング孔の孔壁との導通を確保した後に任意の一対の電極間に電流を流したことを特徴とする電気探査比抵抗法。
【請求項2】
ボーリング孔内に有孔管を挿入し、有孔管内に水よりも流動性の低い導電性材料としての泡を入れて、泡により孔内の電極とボーリング孔の孔壁との通電を確保したことを特徴とする請求項1に記載の電気探査比抵抗法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−230433(P2010−230433A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77261(P2009−77261)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(504024597)独立行政法人水資源機構 (15)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000133397)株式会社ダイヤコンサルタント (11)
【出願人】(509086992)株式会社ジオフィール (1)