説明

電気接続箱

【課題】車体への取付強度を確保しつつ、箱本体の回収時には取付部を容易に破断することの出来る、新規な構造の電気接続箱を提供すること。
【解決手段】箱本体12から突設された取付部20における車体への固定点36の周囲に、肉厚寸法が小さくされた破断用薄肉部42を形成すると共に、該破断用薄肉部42の肉厚寸法を、前記箱本体12から離隔するに連れて小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に設けられる電気接続箱に係り、特に、箱本体に設けられた取付部を介して車体に取り付けられる電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
良く知られているように、自動車には多数のワイヤハーネスが配索されている。これらワイヤハーネスは、ジャンクションボックスやリレーボックス、ヒューズボックス等の電気接続箱に接続されている。電気接続箱は、箱本体に取付部が突設されており、該取付部がボルト等で車体パネル等に固定されることにより、車体に取り付けられる構造とされている。
【0003】
ところで、車両の解体時には、ワイヤハーネスや電気接続箱を回収するために、電気接続箱に接続されたワイヤハーネスをクレーンで引っ張ることにより、電気接続箱の取付部を破断して、ワイヤハーネスと共に電気接続箱を箱本体ごと車体から取り外すことが行われている。
【0004】
ところが、電気接続箱は、車両走行中の振動等で容易に脱落しないように、取付部がボルト等で車体に強固に固定されている。それ故、ワイヤハーネスを引っ張った際に、取付部が破断するよりも前にワイヤハーネスが断線して、箱本体が車体側に取り残されるおそれがあった。
【0005】
そこで、特開2000−350331号公報(特許文献1)には、取付部の基端部分に切欠や孔を形成して、基端部分の断面積を小さくすることにより、取付部を容易に破断することのできる電気接続箱が提案されている。しかし、取付部の基端部分は、車両走行時の振動等により応力が集中し易い箇所であることから、基端部分を脆弱にしてしまうと、車体への取付強度を損なうおそれがある。即ち、車体への取付強度を確保することは破断の容易性を損なうことに繋がり、破断を容易にすることは取付強度の低下に繋がることから、これら相反する要求を高度に両立することは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−350331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、車体への取付強度を確保しつつ、箱本体の回収時には取付部を容易に破断することの出来る、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、箱本体から取付部が突設されており、該取付部において車体に固定される電気接続箱であって、前記取付部における前記車体への固定点の周囲には肉厚寸法が小さくされた破断用薄肉部が形成されていると共に、該破断用薄肉部の肉厚寸法が、前記箱本体から離隔するに連れて小さくされていることを、特徴とする。
【0009】
本発明に従う構造とされた電気接続箱においては、取付部における固定点の周囲に、肉厚寸法が小さくされた破断用薄肉部が形成されている。これにより、破断用薄肉部において取付部が部分的に脆弱とされており、電気接続箱の回収時には、破断用薄肉部を破断して固定点の周囲を破断することにより、箱本体を車体から切り離すことが出来る。そして、本発明においては、破断用薄肉部における肉厚寸法が、箱本体から離れる程小さくされている。従って、電気接続箱の回収時において、取付部に引張力が及ぼされた場合には、相対的に薄肉とされた箱本体の遠位側から亀裂が生じて、破断が開始される。そして、箱本体の遠位側の亀裂を起点として、脆弱とされた破断用薄肉部に沿って亀裂を生じさせることにより、取付部を容易に破断することが出来る。
【0010】
また、破断用薄肉部の肉厚は、取付部における箱本体の近位側において、遠位側よりも相対的に厚肉とされている。これにより、車体への取付強度に大きく影響する取付部の箱本体側の剛性を確保することが出来て、車体への取付強度を確保することが出来る。そして、破断用薄肉部は、箱本体の近位側において比較的厚肉とされていることから比較的高い強度を有するが、本発明によれば、箱本体の遠位側を薄肉として、遠位側から破断を開始することによって、破断が進むに連れて、残された近位側の断面積が次第に小さくなる。その結果、箱本体回収時の引張応力を取付部における箱本体の近位側に次第に集中させて、近位側を破断する際には、近位側に大きな引張応力を生ぜしめることが可能であり、比較的高い強度を有する近位側の破断用薄肉部も、容易に破断することが出来る。これにより、車体への取付時には高い固定強度を確保しつつ、箱本体の回収時には取付部を容易に破断することが出来る。
【0011】
なお、破断用薄肉部は、必ずしも薄肉部が連続して形成されている必要はなく、複数の薄肉部を取付部の固定点の周囲に断続して形成して、それら複数の薄肉部で破断用薄肉部を構成しても良い。また、破断用薄肉部における取付部の肉厚寸法は、固定点回りで段階的に変化されても良いし、連続的に滑らかに変化されても良い。更に、破断用薄肉部は、取付部において部分的に肉厚寸法が小さくされた部位であれば良いのであって、必ずしも取付部の中で最も肉厚寸法が小さい部位を言うものでは無い。従って、取付部において、破断用薄肉部よりも薄肉の部位が存していても良い。
【0012】
また、本発明において破断用薄肉部が形成される取付部は、車体に固定されるものであればその固定態様は限定されない。例えば、取付部にボルト挿通孔を形成して、該ボルト挿通孔にボルトを挿通して車体にボルト固定する場合には、ボルト挿通孔が固定点とされる。接着や溶着等で固定する場合には、接着部位や溶着部位が固定点とされる。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記破断用薄肉部が、前記取付部における前記箱本体からの突出先端縁部と突出基端縁部に形成されているものである。
【0014】
このようにすれば、箱本体の回収時には、取付部における突出先端縁部から亀裂を生じさせることが出来る。これにより、取付部の縁部に生じた亀裂を起点に、取付部を破断用薄肉部に沿って引き裂くようにして、より容易に破断することが出来る。更に、破断用薄肉部が取付部の突出先端縁部と突出基端縁部の両方に形成されていることから、取付部の突出先端縁部から突出基端縁部にまで亀裂を生じ易くして、より安定的な破断を行うことが出来る。
【0015】
なお、取付部が矩形やその他の多角形状を有する場合には、破断用薄肉部は、突出先端縁部において応力の集中し易い角部に形成されることがより好ましい。このようにすれば、取付部の突出先端縁部により容易に亀裂を生ぜしめることが出来る。また、本態様において、破断用薄肉部は、少なくとも取付部の突出先端縁部と突出基端縁部に形成されていれば良いのであって、必ずしも突出先端縁部から突出基端縁部にかけて連続して形成されている必要はない。
【0016】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記破断用薄肉部が、前記取付部における前記車体への固定点と前記箱本体の間を通って形成されているものである。
【0017】
このようにすれば、破断用薄肉部に沿って生じる亀裂を、取付部における固定点と箱本体の間に進行させることが出来る。これにより、箱本体と固定点との間をより確実に分断して、箱本体を取付部の固定点からより容易に切り離すことが出来る。
【0018】
本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記取付部には前記箱本体から突出する平板状部が形成されていると共に、該平板状部には補強リブが形成されており、該補強リブに形成された切欠を含んで、前記破断用薄肉部が形成されているものである。
【0019】
本態様によれば、取付部の全体を厚肉とすることなく、補強リブで補強することによって、樹脂量の削減を図りつつ、成形時のヒケ等の問題も回避することが出来る。そして、厚肉とされた補強リブに破断用薄肉部を形成することによって、破断の容易性を効果的に向上することが出来る。
【0020】
本発明の第五の態様は、前記第一〜第四の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記取付部には、前記車体に固定するためのボルトを挿通する前記固定点としてのボルト挿通孔が形成されており、前記破断用薄肉部が、前記ボルト挿通孔よりも前記取付部の外周縁部寄りに形成されているものである。
【0021】
本態様によれば、破断用薄肉部が、ボルト挿通孔から離れて形成されている。これにより、破断用薄肉部にボルトの頭部が重なって、破断用薄肉部がボルトの頭部で補強されるおそれを低減して、破断用薄肉部における破断の容易性をより確実に発揮することが出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、箱本体から突出されて車体に固定される取付部において、車体への固定点の周囲に破断用薄肉部を設けると共に、破断用薄肉部の肉厚寸法を、箱本体から離れるに連れて小さくした。これにより、取付強度に影響の大きい箱本体に対する近位では肉厚寸法を大きくして取付強度を確保しつつ、取付強度に影響の小さい箱本体に対する遠位では肉厚寸法を小さくして該遠位から破断を開始することによって、取付部を容易に破断することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態としての電気接続箱の箱本体の斜視図。
【図2】図1に示した箱本体の要部の斜視図。
【図3】図2に示した要部の上面図。
【図4】図3のIV−IV断面図。
【図5】図4における破断用薄肉部を拡大して示す説明図。
【図6】本発明の第二の実施形態としての電気接続箱の要部を示す、図3に対応する上面図。
【図7】本発明の第三の実施形態としての電気接続箱の要部を示す、図3に対応する上面図。
【図8】図7におけるVIII−VIII断面を概略的に示す断面説明図。
【図9】図7に示した要部の異なる態様を示す、図8に対応する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、図1に、本発明の一実施形態としての電気接続箱10を構成する、箱本体12を示す。箱本体12は合成樹脂から形成された一体成形品とされている。箱本体12は略矩形箱体形状を有し、リレーが装着される複数のリレー装着部14等が設けられている。箱本体12は、図示しないアッパケースとロアケースが組み付けられることにより、電気接続箱10を構成する。
【0026】
箱本体12の外周壁18には、取付部20が一体形成されている。図2および図3に、取付部20を示す。取付部20には、外周壁18から突出する平板状部22が形成されている。平板状部22は、外周壁18に対して略垂直に、箱本体12の外方に突出する略正方形の板形状とされており、略一定の肉厚寸法をもって箱本体12に一体形成されている。
【0027】
平板状部22の外周縁部24aには、ハーネス取付板26が一体形成されている。ハーネス取付板26は、外周縁部24aの略全長に亘って、平板状部22の上面25から垂直に突出された突出壁とされている。ハーネス取付板26にはハーネス取付穴28が貫設されており、図示しないワイヤハーネスに設けられたクランプの突起がハーネス取付穴28に差し込まれて固定されることにより、ワイヤハーネスが電気接続箱10に固定されるようになっている。このようなハーネス取付板26は、平板状部22における外周壁18からの突出基端縁部30と連結壁32で連結されている。連結壁32は、平板状部22の突出基端縁部30の略全長に亘って上面25から垂直に突出形成されている。また、平板状部22の下面33における外周縁部24cは、略全長に亘って、外周壁18から突出された補強壁34と連結されている。但し、ハーネス取付板26、連結壁32および補強壁34は、必ずしも必要ではない。
【0028】
平板状部22の中央部分には、円形のボルト挿通孔36が貫設されている。従来公知のように、このボルト挿通孔36に図示しないボルトが挿通されることにより、取付部20が図示しない車体パネルに固定されるようになっている。このように、本実施形態においては、ボルト挿通孔36が車体への固定点とされている。
【0029】
平板状部22の上面25には、補強リブ38が突出して一体形成されている。補強リブ38の形成位置は、取付部20に要求される取付強度や、ボルト固定や接着等の固定方法等を考慮して適宜に設定される。本実施形態においては、平板状部22の外周縁部24b,24cの全長に亘って、補強リブ38a,38bがそれぞれ直線状に延出して形成されている。一方、ボルト挿通孔36を囲む全周に亘って、補強リブ38cが形成されている。補強リブ38cは、補強リブ38aと連結されている。そして、補強リブ38cとハーネス取付板26を連結する補強リブ38d、補強リブ38cと連結壁32を連結する補強リブ38e、補強リブ38cと補強リブ38bを連結する補強リブ38fがそれぞれ直線状に延出して形成されている。これら補強リブ38d,38e,38fは、ボルト挿通孔36の周方向で、等間隔(ボルト挿通孔36の中心軸回りで90°毎)に形成されている。また、補強リブ38a,38d,38fが互いに平行に延出されていると共に、補強リブ38b,38eが互いに平行に延出されて、これら補強リブ38a,38d,38fと補強リブ38b,38eが互いに直交して延出されている。図4に示すように、補強リブ38a〜38fの平板状部22の上面25からの突出寸法(図4中、上下方向寸法)は互いに等しくされており、平板状部22は、補強リブ38a〜38fの形成部分において部分的に厚肉とされている。
【0030】
補強リブ38a,38b,38d,38eには、切欠40a,40b,40d,40eがそれぞれ形成されている。これら切欠40a,40b,40d,40eは、それぞれ、補強リブ38a,38b,38d,38eの上面上に開口して形成されている。本実施形態における切欠40a,40b,40d,40eの断面形状は略U字形状とされているが、例えば矩形状や、平板状部22側に先細となる三角形状等、各種の断面形状が適宜に採用可能である。切欠40a,40b,40d,40eは、好適には、補強リブ38a,38b,38d,38eの全幅に亘って形成される。これにより、補強リブ38a,38bに形成された切欠40a,40bは、平板状部22の外周縁部24b,24cにそれぞれ開口されている。
【0031】
これら切欠40a,40b,40d,40eが形成されることによって、補強リブ38a,38b,38d,38eは平板状部22の上面25からの突出寸法(図4中、上下方向寸法)が部分的に小さくされている。その結果、取付部20には、切欠40a,40b,40d,40eの形成部分によって、肉厚寸法(図4中、上下方向寸法)が部分的に小さくされた破断用薄肉部42a,42b,42d,42eが形成されており、これら破断用薄肉部42a,42b,42d,42eを含んで、ボルト挿通孔36の周囲を回って延びる破断用薄肉部42が形成されている。
【0032】
図3に示したように、切欠40a,40b,40d,40eが補強リブ38a,38b,38d,38eに形成されていることにより、破断用薄肉部42a,42b,42d,42eは、ボルト挿通孔36の周囲で、図3中に矢印で示すボルト挿通孔36の中心軸回りに形成されている。これにより、破断用薄肉部42d,42e,40bを結んで構成された破断用薄肉部42が、ボルト挿通孔36と箱本体12の間を通って形成されている。また、切欠40a,40b,40d,40e(即ち、破断用薄肉部42a,42b,42d,42e)は、各補強リブ38a,38b,38d,38eのそれぞれの延出方向において、ボルト挿通孔36よりも取付部20の外周縁部側に形成されていることが好ましい。本実施形態においては、切欠40a,40d(破断用薄肉部42a,40d)が、補強リブ38a,38dにおける外周縁部24a側の端縁部に形成されている。更に、切欠40aは、外周縁部24a側で、取付部20において箱本体12からの突出先端縁部となる外周縁部24bに形成されている。一方、切欠40e,40b(破断用薄肉部42e,42b)が、補強リブ34e,34bにおける突出基端縁部30側の端縁部に形成されている。
【0033】
これら切欠40a,40b,40d,40eの深さ寸法は、ボルト挿通孔36回りで段階的に異ならされている。図5に、取付部20における切欠40a,40b,40d,40eの形成部分を拡大して示すように、切欠40a,40b,40d,40eの深さ寸法は、図3に矢印で示したボルト挿通孔36回りで、箱本体12に対して近位の切欠40bから、箱本体12に対して遠位の切欠40aに向けて、切欠40b,40e,40d,40aの順で、深さ寸法が次第に大きくされている。その結果、取付部20は、破断用薄肉部42b,42e,42d,42aの肉厚寸法:Tb,Te,Td,Taが、ボルト挿通孔36回りで、箱本体12に対して近位の破断用薄肉部42bから、箱本体12に対して遠位の破断用薄肉部42aにかけて、破断用薄肉部42b,42e,42d,42aの順で次第に小さくされて、Tb>Te>Td>Taとされている。
【0034】
なお、図1に示したように、箱本体12には、取付部20に加えて、取付部20の対角に位置して、取付部44が一体形成されている。取付部44は、箱本体12の外周壁18から突出する板形状を有すると共に、ボルト挿通孔46が貫設されている。取付部44におけるボルト挿通孔46と箱本体12の間には、取付部20における切欠40a,40b,40d,40eと同方向に開口する切欠48,48が形成されている。これら切欠48,48の深さ寸法は、互いに等しくされている。
【0035】
このような構造とされた電気接続箱10は、従来公知のように、図示しないワイヤハーネスの端末に設けられた接続端子が箱本体12のリレー装着部14等に差し込まれることにより、箱本体12からワイヤハーネスが延出されて、電気接続箱10の外部に取り出される。そして、箱本体12の取付部20の下面33が、図示しない車両の車体パネルに重ね合わせられると共に、ボルト挿通孔36に上面25側から図示しないボルトが挿通されることにより、取付部20が車体パネルにボルト固定される。同様に、取付部44が、図示しない車体パネルに重ね合わされて、ボルト挿通孔46に図示しないボルトが挿通されることによって、車体パネルにボルト固定される。これにより、電気接続箱10は、取付部20,44において車体パネルに固定される。
【0036】
そして、車両解体時には、箱本体12から延出された図示しないワイヤハーネスがクレーン等で引っ張られる。これにより、箱本体12が引っ張られて、取付部20には、箱本体12からの引張力が及ぼされる。そして、本実施形態においては、取付部20は、破断用薄肉部42a,42d,42e,42bにおいて部分的に薄肉とされて断面積が小さくされていると共に、それら破断用薄肉部42a,42d,42e,42bの肉厚寸法:Ta,Td,Te,Tbが、ボルト挿通孔36回りで箱本体12の遠位ほど小さくされている。これにより、取付部20に引張力が及ぼされた場合には、肉厚寸法の最も小さくされた、箱本体12から最も遠位の破断用薄肉部42aから亀裂を生じて、破断が開始される。そして、破断用薄肉部42aに生じた亀裂は、破断用薄肉部42aに近位で、次に肉厚寸法が小さくされた破断用薄肉部42dに進行して、破断用薄肉部42dを破断する。続いて、亀裂は破断用薄肉部42e,42bの順に進行して、破断用薄肉部42e,42bを破断する。このように、取付部20に引張力が及ぼされた場合には、図3中に矢印で示した破断用薄肉部42a,42d,42e,42bの順に亀裂が進行する。これにより、取付部20の固定点であるボルト挿通孔36と箱本体12の間が破断される。一方、取付部44が、箱本体12が引っ張られることにより、切欠48,48で破断される。その結果、箱本体12が車体パネルから取り外し可能とされる。
【0037】
このように、本実施形態においては、取付部20における破断用薄肉部42a,42d,42e,42bの肉厚寸法:Ta,Td,Te,Tbが、ボルト挿通孔36回りで箱本体12の遠位ほど小さくされている。これにより、最も薄肉とされた破断用薄肉部42aの破断を容易にして、破断用薄肉部42aの破断をきっかけに、図3中の矢印回りで、肉厚寸法の小さい破断用薄肉部42d,42e,42bの順に破断を進行させることにより、取付部20を容易に破断することが出来る。一方、箱本体12に近位の破断用薄肉部42e,42bは比較的肉厚寸法が大きくされている。これにより、車体への取付強度に影響の大きな取付部20の突出基端縁部30では取付部20の肉厚寸法が確保されており、取付強度を確保することが出来る。そして、破断用薄肉部42e,42bは比較的肉厚寸法が大きくされて剛性が確保されているが、取付部20を破断する際には、破断用薄肉部42aから破断が開始されることにより、破断が進行するにつれて残存する破断用薄肉部42e,42bに応力を集中させて、容易に破断することが出来る。その結果、特別な部品点数の増加等を招くことなく、簡易な構成で、取付部20の破断の容易性の向上と車体への取付強度の確保という相反する効果を高度に両立することが出来る。
【0038】
特に本実施形態においては、破断用薄肉部42aが取付部20の箱本体12からの突出先端縁部となる外周縁部24bに形成されていると共に、破断用薄肉部42e,42fが突出基端縁部30に形成されている。これにより、取付部20を、外周縁部24bから突出基端縁部30に至る全長に亘って容易に破断することが出来る。また、破断用薄肉部42a,42fに形成された切欠40a,40fは、それぞれ、外周縁部24bおよび外周縁部24cに開放されて、平板状部22の最外周縁部まで薄肉に形成されていることから、外周縁部24aからの引裂の開始と、外周縁部24cにおける箱本体12からの切り離しの完了がより容易とされている。更に、破断用薄肉部42aが、応力の集中し易い平板状部22の角部に形成されていることから、破断用薄肉部42aの破断をより容易に行なうことが出来る。また、破断用薄肉部42a,42dが外周縁部24aに形成されていると共に、破断用薄肉部42b,42eが突出基端縁部30に形成されており、平板状部22においてボルト挿通孔36よりも外周縁部側に位置されている。これにより、ボルト挿通孔36に挿通されたボルトの頭部が破断用薄肉部42a,42d,42e,42bに重なるおそれが低減されており、ボルトの頭部で破断用薄肉部42a,42d,42e,42bが押さえられて補強されることにより、破断が困難となるようなおそれも低減されている。
【0039】
さらに、破断用薄肉部42e,42bが突出基端縁部30に形成されることにより、破断用薄肉部42a,42d,42e,42bを結ぶ破断用薄肉部42の延出経路が、ボルト挿通孔36と箱本体12の間を通って形成されている。これにより、取付部20を破断する際には、破断用薄肉部42a,42d,42e,42bを結ぶ破断用薄肉部42に沿って、ボルト挿通孔36と箱本体12の間に亀裂を誘導して、ボルト挿通孔36と箱本体12の間を分断することによって、箱本体12を、車体パネルへの固定点となるボルト挿通孔36から容易に切り離すことが出来る。
【0040】
次に、図6に、本発明の第二の実施形態としての電気接続箱60の取付部62を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に前記第一の実施形態と同一の符号を付することにより、その説明を適宜に省略する。
【0041】
本実施形態における取付部62には、前記第一の実施形態における切欠40bに代えて、補強リブ38fにおける外周縁部24c側の端縁部に切欠40fが形成されていると共に、補強リブ38aにおける外周縁部24c側の端縁部に、切欠40a’が形成されている。そして、切欠40f,40a’の形成部位が、破断用薄肉部42f,42a’とされており、箱本体12に対して遠位の破断用薄肉部42a’の肉厚寸法が、箱本体12に対して近位の破断用薄肉部42fの肉厚寸法に比して小さくされている。これにより、取付部62には、ボルト挿通孔36の中心軸回りで、外周縁部24bの破断用薄肉部42aから破断用薄肉部42d,42e,42fを通って再び外周縁部24bの破断用薄肉部42a’に戻るUターン形状で延出する破断用薄肉部42が形成されている。なお、箱本体12に対する離隔距離の等しい破断用薄肉部42aと破断用薄肉部42a’、および破断用薄肉部42dと破断用薄肉部42fの肉厚寸法は、互いに等しくされていても良いし、互いに異ならされていても良い。このように、破断用薄肉部42を、ボルト挿通孔36を囲むように延出して形成することも可能である。
【0042】
次に、図7および図8に、本発明の第三の実施形態としての電気接続箱70の取付部72を示す。本実施形態における平板状部22は、前記第一の実施形態における補強リブ38が非形成とされている。そして、平板状部22には、ボルト挿通孔36の周囲を回って、外周縁部24bから外周縁部24cに亘って延びる一条の切欠74が形成されており、切欠74の形成部分によって、肉厚寸法(図8中、上下方向寸法)が部分的に小さくされた破断用薄肉部42が形成されている。そして、図8に示すように、切欠74の深さ寸法(図8中、上下方向寸法)が、外周縁部24cから外周縁部24bに行くにつれて段階的に大きくされることにより、破断用薄肉部42における肉厚寸法が、ボルト挿通孔36回りで、箱本体12に近位の外周縁部24c側から箱本体12に遠位の外周縁部24bに行くにつれて、段階的に小さくされている。本実施形態から明らかなように、破断用薄肉部42は、前記第一の実施形態のように複数の破断用薄肉部42a,42d,42e,42bを組み合わせて断続的に形成しても良いし、本実施形態のように、一条の連続する切欠74によって連続的に形成しても良い。また、本実施形態において、図9に示すように、切欠74の深さ寸法を、外周縁部24cから外周縁部24bにかけて、次第に変化するようにして、破断用薄肉部42における肉厚寸法を、外周縁部24cから外周縁部24b側に行くに連れて次第に小さくなるようにしても良い。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、箱本体に複数の取付部が形成される場合には、それら複数の取付部に破断用薄肉部を形成しても良い。
【0044】
また、取付部の車体への取付態様は、前記実施形態の如きボルト固定に限定されず、例えば車体パネルに取付穴を貫設する一方、取付部に差込突起を形成して、差込突起を取付穴に差し込むことにより取付部を車体パネルに固定しても良い。このような場合には、差込突起が車体への固定点とされる。また、取付部を車体パネルに接着して固定するなどしても良い。このような場合には、接着箇所が車体への固定点とされる。
【符号の説明】
【0045】
10,60,70:電気接続箱、12:箱本体、20,62,72:取付部、22:平板状部、24a,c:外周縁部、24b:外周縁部(突出先端縁部)、30:突出基端縁部、36:ボルト挿通孔(固定点)、38a〜f:補強リブ、40a,b,d,e,74:切欠、42a,b,d,e:破断用薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱本体から取付部が突設されており、該取付部において車体に固定される電気接続箱であって、
前記取付部における前記車体への固定点の周囲には肉厚寸法が小さくされた破断用薄肉部が形成されていると共に、
該破断用薄肉部の肉厚寸法が、前記箱本体から離隔するに連れて小さくされている
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記破断用薄肉部が、前記取付部における前記箱本体からの突出先端縁部と突出基端縁部に形成されている
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記破断用薄肉部が、前記取付部における前記車体への固定点と前記箱本体の間を通って形成されている
請求項1又は2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記取付部には前記箱本体から突出する平板状部が形成されていると共に、該平板状部には補強リブが形成されており、該補強リブに形成された切欠を含んで、前記破断用薄肉部が形成されている
請求項1〜3の何れか1項に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記取付部には、前記車体に固定するためのボルトを挿通する前記固定点としてのボルト挿通孔が形成されており、
前記破断用薄肉部が、前記ボルト挿通孔よりも前記取付部の外周縁部寄りに形成されている
請求項1〜4の何れか1項に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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