説明

電気柵の支柱

【課題】碍子を足場にして支柱を登られることのないようにし、且つ裸電線が外れにくい電気柵の支柱を提供する。
【解決手段】害獣侵入防止用の電気柵の支柱において、金属管34の表面を、突起42が形成された合成樹脂の皮膜36によって覆われてなる園芸用の棒状部材31と、棒状部材31の裸電線を巻き付ける部位に装着される合成樹脂製の筒状部材32とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害獣の侵入を防止するための電気柵の支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、猪、猿、鹿、熊などの害獣が畑に侵入して作物を荒らす被害が多発している。
このような害獣の畑への侵入を防止するために畑の周囲を電気柵で囲む提案が従来よりなされている。
【0003】
従来より知られている電気柵は、支柱と、支柱の間に張り巡らされる裸電線と、裸電線に害獣を撃退するための高電圧を印加をするためのバッテリーとを備えている。
支柱の材質としては、木材や金属が考えられる。しかし、木材を使用すると、裸電線に印加された高電圧が漏電してしまうおそれもあるし、野外に長期間設置するために風雨にさらされて腐食して長期の使用に耐えられないおそれもある。また、支柱を金属製にすることで強度を維持し且つ長期の使用にも耐えられるが、裸電線からの高電圧が漏電するというおそれは解消できない。
【0004】
そこで、支柱に裸電線を支持させるためには、支柱に絶縁用の碍子を取り付け、この碍子に裸電線を巻き付けるようにしている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
碍子は合成樹脂などの絶縁体で構成され、支柱に取り付けるための取付部と、裸電線を巻き付けるための巻き付け部とを有している。
【0005】
【特許文献1】特開2005−218406号公報
【特許文献2】特開2002−272355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように従来の電気柵の支柱では、裸電線を支持するための碍子が必要であった。このような構成では、猪や狸といった4本足で歩行する害獣に対しては有効である。
しかし、支柱に碍子を設けると、猿はこの碍子を足場として裸電線に触れずに支柱を登り、畑内に侵入してしまうと言う課題があった。
【0007】
また、電気柵は、裸電線と地面との間に1万V程度の高電圧をかけることにより害獣を撃退するものであるが、裸電線が支柱から外れて地面に接触してしまうと害獣撃退効果がなくなってしまう。このような不具合の原因を検討すると、ほとんどの場合、碍子が支柱から外れてしまうことに原因があるということが判明した。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、碍子を足場にして支柱を登られることのないようにし、且つ裸電線が外れにくい電気柵の支柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。すなわち、本発明にかかる電気柵の支柱によれば、害獣侵入防止用の電気柵の支柱において、金属管の表面を、突起が形成された合成樹脂の皮膜によって覆われてなる園芸用の棒状部材と、該棒状部材の裸電線を巻き付ける部位に装着されるゴム製の筒状部材とを具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、支柱に支持させる裸電線は、筒状部材に巻き付けるので、従来の碍子のように、猿にとって足場となるように突出した部分がなく、猿の侵入を防止することができる。また、表面に多数の突起が形成されている園芸用の棒状部材を支柱に採用することで、装着した筒状部材に突起に食い込んで保持されており、筒状部材が棒状部材から外れるようなことがなく、電線が地面に接触してしまうような事故を防止することができる。さらに、園芸用の棒状部材はホームセンターなどで容易に入手することができ、また安価であることから、製造コストが非常に安く済むという効果もある。
【0010】
また、前記筒状部材の軸線方向の両端部には、裸電線のズレを防止するためのリング状の突起が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、筒状部材の表面に単に巻き付けた場合には、筒状部材の表面から裸電線がズレてしまい、棒状部材に接触してしまうおそれもあるが、筒状部材の両端部にリング状の突起があることで、裸電線はこのリング状の突起の側面に当接して筒状部材の表面からズレないようにすることができる。
【0011】
さらに、前記リング状の突起は、前記筒状部材とは別体に形成された合成樹脂製のリング状部材であることを特徴としてもよい。
この構成によれば、両端部が肉厚となっている筒状部材を形成するよりもコスト的に有利である。
【0012】
なお、前記筒状部材は、熱収縮する材質であり、棒状部材に装着時に熱をかけて棒状部材に密着させることを特徴としてもよい。
この構成によれば、棒状部材を筒状部材に挿入して熱をかけるだけで、筒状部材を容易且つ確実に棒状部材に密着させて固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気柵の支柱によれば、支柱を登らせる足場がないので、猿の侵入を防止できるとともに、裸電線の支柱からの脱落事故を減らし、且つコストを削減して低価格で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る電気柵の支柱の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に本実施形態の電気柵の支柱の全体構成図を示し、図2に支柱を構成する棒状部材の一部分の断面を拡大して示す。
支柱30は、園芸用の棒状部材31に、合成樹脂製の筒状部材32を装着して成る。
園芸用の棒状部材31は、中心に金属管34が配置され、金属管34の表面全体に合成樹脂製の被覆36がなされている。
金属管34としては、鉄等の金属が筒状に形成されているものであり、また被覆36はオレフィン系のポリプロピレン等の合成樹脂により構成される。
金属管34の上部はキャップ38が装着され、金属管34内部への水等の異物の侵入を防いでいる。
さらに、金属管34の下部は先端が尖鋭となったキャップ40が装着されており、水や土等の異物の金属管34内部への侵入を防止するとともに、地面に棒状部材31を突き刺す際に地面に突き刺しやすくしている。
【0015】
被覆36は、金属管34上部のキャップ38と金属管下部のキャップ40を覆うように金属管34に施される。
被覆36の表面には、複数の突起42が形成されている。突起42は、金属管の軸線方向に沿って延びるような突条に形成されており、長さが約5mm、幅が約2mm、突出高さが約1mmである。
【0016】
このような棒状部材31としては、植物の誘引などに用いられる、いわゆるイボ竹(登録商標)を好適に採用することができる。
【0017】
棒状部材31の所定位置(棒状部材に裸電線を支持させる位置)には筒状部材32を装着する。筒状部材32は熱収縮性を有する合成樹脂製であり、例えばオレフィン系の合成樹脂材を採用することができる。筒状部材32は絶縁性が高いものを用いる。例えば、裸電線に、1万V程度の高電圧をかけた場合であっても、絶縁を維持できる程度の絶縁性が必要である。
【0018】
筒状部材32の取り付けは以下の通りである。
まず、棒状部材31へ筒状部材32を挿入させる。その後、筒状部材32を所定位置に保持しつつ、ホットエアーガンなどの加熱機器で筒状部材32を収縮させる。このため、筒状部材32は棒状部材31の所定位置において、ズレないように密着して固定される。また、上述したように棒状部材31の表面には複数の突起42が形成されているので、筒状部材32の収縮時には、この突起42が筒状部材32の内壁面に食い込み、さらに筒状部材32のズレを防止する役割を有する。
【0019】
以下、支柱の好適な例について、図3に基づいて説明する。
棒状部材31として、長さ150cm、直径1.5cmのものを採用する。装着する筒状部材32の長さは、約10cmであり、厚さは約2mmである。
棒状部材31は、地中に60cmほど差し込むことを想定している。棒状部材31への筒状部材32の取付位置は、筒状部材32の中心が地面から約20cmの部位と、筒状部材32の中心が地面から約50cmの部位とする。したがって、棒状部材31の下部から約80cmの位置に筒状部材32の中心が位置するように筒状部材32を装着し、棒状部材31の下部から約110cmの位置に筒状部材32の中心が位置するように筒状部材32を装着する。
【0020】
図4に、本発明にかかる支柱の他の実施形態について示す。
筒状部材32の軸線方向の両端部には、裸電線のズレ防止のためのリング状の突起44を設ける。ここでは、リング状の突起44は、筒状部材32とは別体に形成されており、筒状部材32の外壁面に装着させるものとする。リング状の突起44も合成樹脂製であり、熱収縮性を有するものであると好適である。
ただし、リング状の突起としては、熱収縮性を有しておらず、ゴムのように弾性を有するものであって弾性力により筒状部材に装着するようにしてもよい。
【0021】
また、リング状の突起44は、筒状部材32と一体に形成されたものであってもよい。この場合、筒状部材32の両端部が、外周方向に肉厚となる大径部に形成され、この大径部が上述してきたリング状の突起44に該当する。
【0022】
図5に、本発明にかかる支柱を複数本束ねた例を示す。
上述してきた実施形態では、支柱を1本の棒状部材31で構成したものについてのみ説明した。しかし、畑の周囲に設置したときにコーナーに該当する箇所では、力が加わったときに倒れやすい。
このため、特にコーナーなどに用いる支柱については、上述してきた支柱を複数本束ねて使用するとよい。結束手段46としては、電線などを束ねる際に用いられる結束バンドを用いると好適である。
【0023】
さらに、支柱の長さが足りないような場合、複数の支柱を上述したような結束手段46を採用して長さ方向に継ぎ足すようにして束ね、高さ方向を延長させるように設けてもよい。
本発明では、ホームセンターなどで容易に入手できる棒状部材を用いるので、強度に不安がある場合や高さが足りない場合など、容易に且つ低コストで復数本の支柱を結束して強度維持や高さの延長を行える。
【0024】
以上、本発明につき好適な実施形態を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電気柵の支柱の全体構成を示す説明図である。
【図2】棒状部材の構造について説明する説明図である。
【図3】本発明の支柱を電気柵に用いた実施例を示す説明図である。
【図4】支柱の他の実施形態の全体構成を示す説明図である。
【図5】支柱を複数本束ねた例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
30 支柱
31 棒状部材
32 筒状部材
34 金属管
36 被覆
38,40 キャップ
42 突起
44 突起
46 結束手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害獣侵入防止用の電気柵の支柱において、
金属管の表面を、突起が形成された合成樹脂の皮膜によって覆われてなる園芸用の棒状部材と、
該棒状部材の裸電線を巻き付ける部位に装着される合成樹脂製の筒状部材とを具備することを特徴とする電気柵の支柱。
【請求項2】
前記筒状部材の軸線方向の両端部には、裸電線のズレを防止するためのリング状の突起が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気柵の支柱。
【請求項3】
前記リング状の突起は、前記筒状部材とは別体に形成された合成樹脂製のリング状部材であることを特徴とする請求項2記載の電気柵の支柱。
【請求項4】
前記筒状部材は、熱収縮する材質であり、棒状部材に装着時に熱をかけて棒状部材に密着させることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載の電気柵の支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−259428(P2008−259428A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102378(P2007−102378)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(301016171)有限会社アルプス計器 (2)
【出願人】(301016160)
【Fターム(参考)】