説明

電気機器のレール取付装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電気機器をDIN規格のレール(以下、「レール」と記す)に取り付ける電気機器のレール取付装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の電気機器のレール取付装置としては、例えば、特開平2−254794号公報、特開平2−310999号公報、特開平4−349699号公報等に開示されたものがある。以下、特開平2−254794号公報に開示された電気機器のレール取付装置を例にとって説明する。
【0003】図16は従来の電気機器のレール取付装置を示す底面斜視図、図17はレールに固定された電気機器本体を示す側面図、図18はレバーを解除する動作過程(a)〜(c)を示す底面図であり、図において、101は電気機器本体、102はレール103を通すために電気機器本体101の底面の全長にわたって形成された溝、104はレール103の両端部に設けられた係止片、105は係止片104と係合する係合片である。
【0004】106は溝102と交差する方向に摺動自在となるように電気機器本体101の凹部111に装着され、反係合片105側から係止片104を係合するレバーである。このレバー106は、凹部111に形成された係合溝112と係合する係止片106aと、係止片104を係合する係合爪110と、弾性変形可能な弾性片116と、ストッパ117を備えている。109はマイナスドライバーDの先端部を差し込んでレバー106を引き出すための穴である。
【0005】弾性片116は、電気機器本体101をレール103に取り付ける時に係止爪110をレール103によって外方に付勢された際に、レバー106を内方に付勢させるためのものである。
【0006】118は凹部111に突設させた突起であり、レバー106の弾性片116が弾接する突部118aを備えている。また、この突起118はレバー106のストッパ117とかみ合うように形成されている。
【0007】突部118a及び弾性片116は、電気機器本体101の取り外し時にレバー106を外方へ摺動させた時に、係止爪110が溝102内に位置している間は弾接し、係止爪110が溝102より外方に位置した時には弾接しないように形成されている。
【0008】次に動作について説明する。電気機器本体101をレール103に取り付ける場合には、先ず、電気機器本体101の係合片105をレール103の一方の係止片104に係合させる。次に、レール103の他方の係止片104によってレバー106の係合爪110を外方に付勢し、レバー106を外方に摺動させる。この時、係止爪110が溝102より内方に位置している間は、レバー106は弾性片116の突部118aに対する弾発力によって内方に付勢されている。なお、弾性片116は、突起118の突部118aに弾接しながら、レバー106の摺動面と平行方向に変形している。
【0009】係止爪110が溝102より外方に移動することにより、レール103の他方の係止片104は溝102に完全にはめ込まれる。すると、レバー106の係合爪110は、係止片104によって外方に付勢されなくなるので、弾性片116の弾発力によって内方に付勢され、溝102より内方に位置することとなる。すなわち、係止片104が係合爪110によって係止され、電気機器本体101のレール103への取り付けが完了する。
【0010】一方、電気機器本体101をレール103から外す場合には、図17及び図18に示すように、マイナスドライバーDの先端部を穴109に差し込んで、電気機器本体101の側面部に形成された図示しない凸部を支点にしてレバー106の摺動方向に回動して、この原理でレバー106を外方に引き出す。この場合、ストッパ117と突起118とがかみ合うことによりレバー106の動きが規制され、電気機器本体101からレバー106が外れることを防止する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従来の電気機器のレール取付装置は以上のように構成されているので、電気機器本体101の小型化の要請に伴い弾性片116を細く形成しなければならず、使用回数の増加により、弾性片116の弾発力が弱くなったり折れやすくなったりして、レール103に取り付けた電気機器本体101が、がたついたりするなどの課題があった。
【0012】また、電気機器本体101をレール103から取り外す時には、レバー106を外方に引き出すためにマイナスドライバーDを回動するためのスペースを確保しなければならず、電気機器本体101の設置場所が狭く該スペースを確保できない場合には、電気機器本体101をレール103から取り外せないなどの課題があった。
【0013】さらに、電気機器本体101の種類やサイズが相違すると取り付け位置や溝102の形成位置も相違しているため、異なる種類やサイズの電気機器本体毎に異なるレバーを形成しなければならず、従来のレバー106にあっては1種類の電気機器本体101にしか対応できないなどの課題があった。
【0014】この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、電気機器本体の小型化に伴い構成部材を小型化した場合であっても、弾性片の弾発力や寿命が低下せず、電気機器本体をレールに強固に取り付けられる電気機器のレール取付装置を得ることを目的とする。
【0015】また、この発明は電気機器本体の設置場所が狭くても、電気機器本体をレールから容易に取り外せる電気機器のレール取付装置を得ることを目的とする。
【0016】さらに、この発明は異なる種類やサイズの電気機器本体に対して、1つのレバーで対応できる電気機器のレール取付装置を得ることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明に係る電気機器のレール取付装置は、幅方向両端部に係止片部を有するレールをはめるために電気機器本体の一面に設けたレール用溝と、該レール用溝の幅方向の端部に設けられ前記レールの一方の前記係止片と係合する係合片と、前記レールの他方の前記係止片を係止する係止爪を有し、前記電気機器本体をレールに取り付ける時に該レールに付勢されて外方に摺動するレバーと、前記レール用溝と交差して設けられ前記レバーを該レール用溝の幅方向に摺動自在に保持するレバー用溝と、前記レバー用溝に設けられ前記レバーの摺動方向と垂直方向に突出形成した突起と、前記レバーに設けられ前記突起に弾接して該レバーを内方に付勢させるとともに、前記レバーの摺動方向と垂直方向であって前記レール側に弾性変形する弾性片とを備えたものである。
【0018】請求項2記載の発明に係る電気機器のレール取付装置は、マイナスドライバーの先端を挿入しこの挿入方向に回動する場合、またはプラスドライバーの径部を有する先端を圧入する場合に、前記電気機器本体に対して生じる反発力により、前記レバーを外方に引き出す解除用孔を、前記レバーの外方側の端部に設けたものである。
【0019】請求項3記載の発明に係る電気機器のレール取付装置は、レバーに係止爪を複数設けたものである。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1によるレバー用溝を示す正面図、図2は図1のA−A断面図、図3R>3は図1のB−B断面図、図4はレバーを示す上面図、図5はレバーを示す側面図、図6はレバーを示す下面図、図7はレバーを示す正面図、図8はレバーを示す背面図、図9は図6のC−C断面図、図10は図6のD−D断面図、図11は電気機器本体をレールに固定する際の係止爪と弾性片の動作(a)〜(c)を対応させて示す説明図、図12はレバーを電気機器本体に装着した状態を示す下面図、図13はマイナスドライバーによりレバーを解除する動作(a)〜(c)を示す部分断面図、図14はプラスドライバーによりレバーを解除する動作(a)〜(c)を示す部分断面図、図15はレバーを他の電気機器本体に装着した状態を示す下面図である。
【0021】図1から図3において、1は例えばトランスミッタユニット等の電気機器本体であり、例えばポリアセタール等の樹脂にて形成してある。2はレール3を通すために電気機器本体1の底面の全長にわたって形成されたレール用溝、4はレール3の両端部に設けられた係止片、5はレール用溝2の幅方向の端部に設けられ係止片4と係合する係合片である。
【0022】6はレール用溝2と交差して設けられ、後述するレバー10をレール用溝2の幅方向に摺動自在に保持するレバー用溝であり、後述するレバー10のガイド部14と係合可能な係合溝部6aを備えている。また、レバー用溝6には傾斜面6bが形成されている。
【0023】7はレバー用溝6の天井面に凹設された凹部であり、後述するレバー10の弾性片12が進入できるように形成されている。
【0024】8はレバー10の摺動方向と垂直方向となるように、凹部7内に突出形成された突起であり、垂直断面形状が略三角形となっている。この突起8は、電気機器本体1の取り外し時にレバー10を外方へ摺動させた時に、後述する係止爪11aがレール用溝2内に位置している間は後述する弾性片12と弾接し、係止爪11aがレール用溝2より外方に位置した時には弾性片12と弾接しない位置に配設されている。
【0025】図4から図10において、10はレール3の係止片4を係止する2つの係止爪11a,11bを有し、電気機器本体1をレール3に取り付ける時にレール3に付勢されてレバー用溝6内を外方に摺動するレバーであり、例えばポリプラスチック等により形成してある。
【0026】係止爪11a,11bは、所定間隔で平行に形成してある。そして、係止爪11bは、他の種類・サイズの電気機器本体にレバー10を装着する際にその取り付け位置に対応可能な位置に形成されている。また、電気機器本体1にレバー10を装着する際に、いずれかの係止爪11a,11bが邪魔になる場合には、簡単に除去できるように形成してある。なお、本実施の形態においては、2つの係止爪11a,11bを形成したが、より多くの種類・サイズの電気機器本体にも対応できるように、さらに同様の係止爪を追加して形成することももちろん可能である。
【0027】レバー10は、突起8に弾接して該レバー10をレール3の幅方向の内方に付勢させるために、レバー10の摺動方向と垂直方向に突出形成した弾性片12を備えている。この弾性片12は欠設部12aを設けることにより、全体形状を舌片状に形成され、所定の弾発力を得られるようになっている。
【0028】14はレバー用溝6の係合溝部6aに係合するようにレバー10の両端部に突出形成されたガイド部である。16はレバー10の端部に設けられ、マイナスドライバーの先端を挿入して回動でき、さらにプラスドライバーの先端を圧入できるように形成された解除用孔である。18は所定の深さに凹設された肉盗み部である。
【0029】次に動作について説明する。電気機器本体1をレール3に取り付ける場合には、先ず、電気機器本体1の係合片5をレール3の一方の係止片4に係合させる。
【0030】次に、図11(a)に示すように、レール3の他方の係止片4によってレバー10の係合爪11aを外方(図中の左向き矢印方向)に付勢し、レバー10を外方に摺動させる。この時、係止爪11aがレール用溝2より内方に位置している間は、レバー10は弾性片12に対する弾発力によって内方に付勢されている。また、弾性片12は、突起8に弾接しながら、レバー10の摺動方向と垂直方向に弾性変形している。
【0031】そして、図11(b)に示すように、係止爪11aがレール用溝2より外方に移動することにより、レール3の図示しない他方の係止片4はレール用溝2に完全にはめ込まれる。
【0032】すると、図11(c)に示すように、レバー10の係合爪11aは、係止片4によって外方に付勢されなくなるので、弾性片12の弾発力によって内方に付勢され、レール用溝2より内方に位置することとなる。すなわち、図12に示すように、係止片4が係合爪11aによって係止され、電気機器本体1のレール3への取り付けが完了する。
【0033】なお、図15に示すように、上記と同様の手順で係合爪11bを使用することにより、他の種類・サイズの電気機器本体1に対応することができる。
【0034】一方、電気機器本体1をレール3から外す場合には、図13に示すように、マイナスドライバーDの先端部を解除用孔16に差し込み(a)、次に回動し(b)、レバー10を外方に引き出す(c)。これは回動するマイナスドライバーDの先端部を介して、解除用孔16の内側面部と電気機器本体1の側面部とによる反発力を利用したものである。
【0035】また、図13(c)に示すように、弾性片12と凹部7とが係合することにより、レバー10のさらに外方への動きが規制され、電気機器本体1からレバー10が外れることを防止できる。
【0036】一方、図14(a)〜(c)に示すように、プラスドライバーDを使用して電気機器本体1をレール3から外すこともできる。この場合は、プラスドライバーDの先端部を解除用孔16に圧入すればよい。これは圧入するプラスドライバーDの先端部が拡径しているため、圧入の際に生じる反発力、すなわち、プラスドライバーDの先端部を介して、解除用孔16の内側面部と電気機器本体1の側面部とによる反発力を利用したものである。
【0037】以上のように、この実施の形態1によれば、弾性片12はその構造上、従来技術において開示された弾性片116に比較して幅広く形成し得るので、電気機器本体1の小型化に伴い弾性片12を薄く形成した場合であっても、従来よりも長寿命で強固な弾発力を得ることができ、もって電気機器本体1をレール3に強固に取り付けることができる効果が得られる。
【0038】また、従来よりも幅広く形成可能な弾性片12と凹部7とが係合することにより、弾性片12自体が従来のストッパ117の役割をも兼ね備え、電気機器本体1からレバー10が外れにくくなると共に、折れにくくなる効果が得られる。
【0039】さらに、電気機器本体1の設置場所が狭くても、解除用孔16にマイナスドライバーDの先端を挿入して回動するか、またはプラスドライバーDの先端を圧入することにより、従来のような作業スペースを必要とせず、電気機器本体1をレール3から容易に取り外すことができる効果が得られる。
【0040】また、レバー10に2つの係止爪11a,11bを形成したことにより、2種類の電気機器本体に対して、1つのレバー10を共用して対応できる効果が得られる。
【0041】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によれば、電気機器本体の一面に設けたレール用溝と、該レール用溝の幅方向の端部に設けられてレールの一方の係止片と係合する係合片と、前記レールの他方の係止片を係止する係止爪を有し、電気機器本体をレールに取り付ける時に該レールに付勢されて外方に摺動するレバーと、電気機器本体に設けられ前記レール用溝と交差して前記レバーを摺動自在に保持するレバー用溝と、このレバー用溝に設けられ前記レバーの摺動方向と垂直方向に突出形成した突起と、前記レバーに設けられ前記突起に弾接して該レバーを内方に付勢させるとともに、前記レバーの摺動方向と垂直方向であって前記レール側に弾性変形する弾性片とを備え構成したので、電気機器本体の小型化に伴い弾性片を薄く形成した場合であっても、従来よりも長寿命で強固な弾発力を得ることができ、もって電気機器本体をレールに強固に取り付けることができる効果がある。
【0042】請求項2記載の発明によれば、マイナスドライバーの先端を挿入しこの挿入方向に回動する場合、またはプラスドライバーの拡径部を有する先端を圧入する場合に、前記電気機器本体に対して生じる反発力により、前記レバーを外方に引き出す解除用孔を、前記レバーの外方側の端部に設けるように構成したので、従来のような作業スペースを必要とせず、電気機器本体をレールから容易に取り外すことができる効果がある。
【0043】請求項3記載の発明によれば、レバーに係止爪を複数設けて構成したので、複数の種類・サイズの電気機器本体に対して、1つのレバーを共用して対応できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1によるレバー用溝を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】レバーを示す上面図である。
【図5】レバーを示す側面図である。
【図6】レバーを示す下面図である。
【図7】レバーを示す正面図である。
【図8】レバーを示す背面図である。
【図9】図6のC−C断面図である。
【図10】図6のD−D断面図である。
【図11】電気機器本体をレールに固定する際の係止爪と弾性片の動作(a)〜(c)を対応させて示す説明図である。
【図12】レバーを電気機器本体に装着した状態を示す下面図である。
【図13】マイナスドライバーによりレバーを解除する動作(a)〜(c)を示す部分断面図である。
【図14】プラスドライバーによりレバーを解除する動作(a)〜(c)を示す部分断面図である。
【図15】レバーを他の電気機器本体に装着した状態を示す下面図である。
【図16】従来の電気機器のレール取付装置を示す底面斜視図である。
【図17】レールに固定された電気機器本体を示す側面図である。
【図18】レバーを解除する動作過程(a)〜(c)を示す底面図である。
【符号の説明】
1 電気機器本体
2 レール用溝
3 レール
4 係止片
5 係合片
6 レバー用溝
8 突起
10 レバー
11a,11b 係止爪
12 弾性片
16 解除用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 幅方向の両端部に係止片を有するレールをはめるために電気機器本体の一面に設けたレール用溝と、該レール用溝の幅方向の端部に設けられ前記レールの一方の前記係止片と係合する係合片と、前記レールの他方の前記係止片を係止する係止爪を有し、前記電気機器本体を該レールに取り付ける時に該レールに付勢されて外方に摺動するレバーと、前記レール用溝と交差して設けられ前記レバーを該レール用溝の幅方向に摺動自在に保持するレバー用溝と、前記レバー用溝に設けられ前記レバーの摺動方向と垂直方向に突出形成した突起と、前記レバーに設けられ前記突起に弾接して該レバーを内方に付勢させるとともに、前記レバーの摺動方向と垂直方向であって前記レール側に弾性変形する弾性片とを備えた電気機器のレール取付装置。
【請求項2】 マイナスドライバーの先端を挿入しこの挿入方向に回動する場合、またはプラスドライバーの径部を有する先端を圧入する場合に、前記電気機器本体に対して生じる反発力により、前記レバーを外方に引き出す解除用孔を、前記レバーの外方側の端部に設けたことを特徴とする請求項1記載の電気機器のレール取付装置。
【請求項3】 レバーに係止爪を複数設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の電気機器のレール取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【特許番号】特許第3352878号(P3352878)
【登録日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【発行日】平成14年12月3日(2002.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−100325
【出願日】平成8年4月22日(1996.4.22)
【公開番号】特開平9−289387
【公開日】平成9年11月4日(1997.11.4)
【審査請求日】平成12年11月14日(2000.11.14)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【参考文献】
【文献】実開 平5−72181(JP,U)
【文献】実開 平1−121989(JP,U)
【文献】実開 平4−87692(JP,U)
【文献】実開 平1−153683(JP,U)
【文献】実開 平2−136375(JP,U)