説明

電気的構造素子、その製造法および該構造素子の使用

【課題】NTC抵抗体として適しており、長時間安定性が高くかつ抵抗値の散乱幅が僅かである場合に低い抵抗値を有する電気構造素子、ならびに構造素子の目標の抵抗値にできるだけ正確に調節することを可能にする、電気構造素子の製造方法を記載する。
【解決手段】導電性セラミック層は比電気抵抗が負の温度係数を有するセラミックからなり、導電性セラミック層が電極層と一緒に焼結されたセラミックグリーンシートから製造されており、基体の2つの対向する外面には、電極層と導電的に結合されている外側電極が配置されている、電気的構造素子、ならびに先駆構造素子の実際の抵抗を測定する工程、目標の抵抗を達成させるために必要とされる、製造すべき構造素子である、先駆構造素子の長手方向区間の目標の長さを計算する工程、先駆構造素子の目標の長さの長手方向区間を切り取る工程を有する、前記電気構造素子の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体が所定の比抵抗を有するセラミックを含む、基体と2つの外側電極とを有する電気構造素子に関する。更に、本発明は、前記構造素子の製造法に関する。更に、本発明は、電気構造素子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に記載した種類の電気構造素子は、公知であり、この場合セラミックの比抵抗は、負の温度係数を有し、したがってNTC抵抗体として使用される。例えば、暖房技術、工業電気工学または自動車電気工学におけるNTC抵抗体の特殊な使用のためには、50〜500オームの少ない抵抗値が構造素子に必要とされる。通常、NTC構造素子の抵抗は、25℃で記載される。
【0003】
望ましい低い抵抗値を有する構造素子を実現させるために、低い比抵抗を有するセラミックが使用される。このセラミックは、マンガン、ニッケル、コバルトおよび銅の群の4つの陽イオンから構成されている、スピネル構造を有する混晶を基礎とする。陽イオンは、Mn/Ni/Co/Cuの原子比で互いに混合されており、この原子比は、65/19/9/7ないし56/16/8/20の間にある。このセラミックの比抵抗は、100〜0.1Ωcmである。
【0004】
前記セラミックは、抵抗が強い散乱を受けるという欠点を有している。更に、このセラミックは、電気的性質、殊に電気抵抗が長時間安定性ではないという欠点を有している。構造素子の長時間安定性は、例えば70℃の温度で10000時間に亘って構造素子を貯蔵した後の抵抗の変化として記載される。抵抗の時間に応じた変化は、前記条件下で低いオームのセラミックを用いて製造された構造素子の場合には、2%を上廻る。
【0005】
更に、公知の構造素子は、抵抗が簡単な設計(2つの外側接触電極を有するセラミックブロックまたはセラミックウェーハ)に基づいて専らセラミックの比抵抗に依存し、したがって相応してセラミック材料の組成の変動が生じるという欠点を有している。製造に依存した、目標の抵抗からの実際の抵抗の偏倚は、5%またはそれ以上であることができる。
【0006】
刊行物のドイツ連邦共和国特許第2321478号明細書の記載から、多層構造を有するNTC抵抗体(サーミスター)は、公知であり、この場合電極層は、セラミック層によって互いに分離されている。この場合、セラミック層は、厚膜層としてスクリーン印刷により電極層上に印刷される。使用されるスクリーン印刷法に基づいて、セラミック層は、層厚に関連して大きな散乱値を有し、したがって記載された刊行物から公知のサーミスターは、正確に所定の抵抗値で製造することは極めて困難である。従って、公知のサーミスターは、電気抵抗に関連して大きな許容差を有している。
【0007】
前記の高い散乱値および少ない長時間安定性のために、公知の低い抵抗のNTC抵抗体は、構造素子の許容差および構造素子の安定性に関連する要件が僅かに課されている使用に対してのみ適している。このような使用は、例えば投入電流制限器の使用である。
【0008】
更に、高いB値と低いR値との組合せは、物理的に実現不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第2321478号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、NTC抵抗体として適しており、長時間安定性が高くかつ抵抗値の散乱幅が僅かである場合に低い抵抗値を有する電気構造素子を記載することである。更に、本発明の目的は、構造素子の目標の抵抗値にできるだけ正確に調節することを可能にする、電気構造素子の製造方法を記載することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本発明によれば、請求項1記載の電気構造素子ならびに請求項11記載の方法によって達成される。この構造素子および方法の好ましい実施形式ならびに構造素子の使用は、他の請求項から認めることができる。
【0012】
本発明には、互いに重ね合わせた導電性電極層からなる層スタックを有する基体を備えた電気的構造素子が記載されている。それぞれ2つの隣接した電極層は、導電性セラミック層によって互いに分離されている。導電性セラミック層は、比電気抵抗ρ(T)が負の温度係数を有するセラミック材料からなる。導電性セラミック層は、電極層と一緒に焼結されたセラミックグリーンシートから製造されている。更に、基体の2つの対向する外面には、電極層と導電的に結合されている外側電極が配置されている。
【0013】
本発明による構造素子は、導電性セラミック層がセラミックグリーンシートから製造されているという利点を有する。セラミックグリーンシートを延伸する方法は、約50μの厚さを有するフィルムを製造するために、極めて正確に層厚の規定を維持しながら使用されることができる。それによって、本発明による構造素子は、構造素子に対して極めて正確に所定の抵抗値に維持することができるという利点を有する。
【0014】
更に、本発明の好ましい実施態様において、比電気抵抗の温度経過ρ(T)を示すB値が4000Kよりも大きいセラミック材料が導電性セラミック層に対して選択されている。B値は、次の式:
ρ(T)=ρ25 exp (B/T)
によって温度経過ρ(T)を示す。
【0015】
B値は、次の式:
【数1】

により計算される。
【0016】
この場合、R(T)およびR(T)は、2つの異なる温度TおよびTの際のセラミック材料の抵抗である。
【0017】
大きなB値を有するセラミックは、これが温度に依存して抵抗に対し高い感度を有するという利点を有し、このことは、極めて敏感な温度センサーの製造を可能にする。更に、高いB値を有するセラミック系は、電気抵抗の長時間安定性の挙動が良好であるという利点を有する。
【0018】
しかし、高いB値を有するセラミックは、高い比抵抗をも有している。本発明によれば、電極層を電気構造素子の基体中に設けることによって、構造素子の電気抵抗を減少させることが可能である。これは、高い抵抗の多数の抵抗体の並列接続を電極層により実現させることによって成功する。従って、使用されたセラミックの抵抗が高いにも拘わらず、2kΩ未満の抵抗値を有する温度センサーを製造することができる。更に、基体が平行六面体の形を有する電気構造素子が好ましい。この場合には、平行六面体の2つの側面のみが外側電極によって覆われており、一方で、4つの残りの側面は、導電性被膜を有していない。このような構造素子は、外側電極が空間的に正確に定義されており、それによって構造素子の電気抵抗が影響を及ぼされえないという利点を有する。これは、公知の構造素子と比較して大きな利点であり、この場合外側電極は、導電性ペースト中への浸漬によって製造され、こうしてキャップ状で、したがって縁部で上方から係合するように基体の多数の側面上に載置され、それによって外側電極は、不利な場合には、外側電極が基体の浸漬の際に極めて隣接して接することにより、抵抗を極めて強く減少させることができる。
【0019】
縁部で上方から係合しておらず、したがって平行六面体の形の基体の側面の4つが導電性の被膜を備えさせないという目的が達成される、外側電極で基体を覆う好ましい形は、平行六面体の側面を印刷するためのスクリーン印刷法の使用である。
【0020】
従って、即ち極めて低い抵抗と高い感度とを同時に有する温度センサーを製造することができる。
【0021】
以下、本発明による構造素子への使用に適した、B値が3600Kよりも高い若干のセラミック材料を挙げることができる:
例えば、ニッケルおよびコバルトの添加剤を有するMnを基礎とする高い抵抗のセラミック混晶がこれに該当し、この場合Mn/Ni/Coの混合比は、55.6/3.4/41である。このようなセラミックは、例えば4000Kを上廻るB値を有する。
【0022】
更に、Mnと共になおニッケルおよびチタンの添加剤を含有するセラミックがこれに該当し、この場合Mn/Ni/Tiの混合比は、77/20/3の比に相当する。このようなセラミックは、4170KのB値を有する。
【0023】
他の例として、Mnと共になおニッケルおよび亜鉛を含有するセラミックを挙げることができる。この場合Mn/Ni/Znの混合比は、64/7/29に等しい。このようなセラミックは、4450KのB値を有する。
【0024】
更に、ニッケル、コバルト、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの元素から選択された1つ以上の添加剤を有するMnをベースとして製造された、セラミックがスピネル構造、ペロフスカイト構造またはコランダム構造の混晶である構造素子は、特に好ましい。この場合好ましいのは、殊に電極層により低い値に減少させることができる、10〜10Ωcmの高い比抵抗を有する安定な組成物である。
【0025】
10Ωcmを上廻る比抵抗を有する高い抵抗のセラミックをベースとする構造素子は、セラミックが電気抵抗に関連して高い貯蔵時間安定性を有するという利点を有している。
【0026】
特に高い抵抗のセラミックとして、例えば94/6のMn/Niの混合比を有するMnをベースとする混合物がこれに該当する。このようなセラミックは、104Ωcmの比抵抗および4600KのB値を有する。
【0027】
もう1つの方法は、70/20/10のMn/Ni/Coの混合比を有するマンガン、ニッケルおよびコバルトからなる混合物である。最後に記載された混合物は、100Ωcmの比抵抗およびほぼ3600Kを上廻るB値を有している。
【0028】
構造素子の抵抗の減少に適した、電極層の配置は、好ましくは、全ての外側電極が平行に重なり合って存在する平らな層の形で電極層と接触している構造素子において実現させることができる。外側電極と接触した層は、この外側電極と一緒に櫛状の電極パッケージを形成する。それぞれ外側電極に属する2つの電極パッケージは、構造素子中で互いの中へ押し込まれている。
【0029】
櫛状の互いの中へ押し込まれた電極パッケージを有する本発明による構造素子の実施形式は、個々のフィルムまたは層が重なり合って存在することによって、簡単に実現させることできるという利点を有している。その上、平行に重なり合って存在する層は、構造素子中で使用される体積がオーム抵抗の減少のために最適に利用されるという利点を有している。従って、これは、櫛状の配置でそれぞれの電極層の特に大きな面が相対していることに由来する。それによって、当該の導電体の横断面積が大きくなり、したがってこの導電体の抵抗は減少する。
【0030】
電極層の実施形式のために、原理的に構造素子の製造に必要とされる温度で安定性である全ての電極材料が適している。電極層は、本発明の特に好ましい実施形式において、パラジウム、白金またはこれらの合金中に形成されている。これらの貴金属は、電気化学的な腐食に対して敏感ではないという利点を有している。それによって、前記の貴金属を用いて製造された電気構造素子は、外側から構造素子中に侵入する湿分または水に対して敏感ではなくなる。
【0031】
更に、記載された貴金属を電極層のための材料として使用することは、貴金属が極めて僅かな移行傾向を有するという利点を有しており、それによって、セラミック中への金属の移動、ひいてはセラミック構造素子の電気抵抗体の制御不可能な変化を阻止することができる。
【0032】
外側電極は、セラミック構造素子のための全ての市販の電極材料からなることができる。勿論、電極層への良好な電気接続が保証されることに注目することができる。本発明による構造素子の特に好ましい実施形式において、外側電極は、銀または金の焼付けペーストからなる。この焼付けペーストは、セラミックが電極層と一緒に焼結された後に、基体の2つの外面上に施しかつ焼き付けることができる。銀の焼付けペーストは、構造素子の接触のために良好な導電性を有するという利点を有している。更に、この銀の焼付けペーストは、良好にロウ付け可能であり、したがって外側電極に接続線材をロウ付けすることができるという利点を有している。例えば、銅線材であることができるかかる接続線材を用いることにより、保護塗膜または適当な材料からの別のカバーを取り付けた後に、完成したセンサー素子を得ることができる。
【0033】
Au外側電極および金被覆された接続線材を使用しながら、構造素子にガラスからなる保護カバーを備えさせることは可能である。
【0034】
更に、本発明には、所定の目標の抵抗を有する本発明による電気構造素子を製造する方法が記載され、この場合構造素子は、棒状の基体を有する先駆構造素子から出発して製造される。先駆構造素子は、本発明の特に好ましい実施形式において、セラミックグリーンシートと電極とを重ね合わせて積層し、引続きこうして生じた層スタックを焼結させることによって製造される。先駆構造素子は、棒の縦側面上に配置された外側電極を有し、この場合先駆構造素子の外側電極間で測定された実際の抵抗は、製造すべき電気構造素子の目標の抵抗よりも低い。更に、先駆構造素子は、外側電極を有する、先駆構造素子の同じ長さの長手方向区間の抵抗が本質的に同じ大きさであるという性質を有している。
【0035】
最初に、先駆構造素子の実際の抵抗は、例えばオーム計により測定される。引続き、実際の抵抗から、先駆構造素子によって切り取るべき長手方向区間の長さが計算される。この場合、先駆構造素子の長手方向区間は、製造すべき電気構造素子である。最後に、先駆構造素子の先に計算された長さを有する長手方向区間が切り取られる。
【0036】
本発明による方法は、電気構造素子の抵抗がセラミックが既に完成されて焼結されている時点で極めて遅い処理工程で初めて確定されるという利点を有している。それによって、多数の同様の構造素子の製造の場合に実際にできるだけ簡単に異なる幾何学的寸法が生じるが;しかし、これは、極めて正確に再現可能な目標の抵抗の大きな利点によってよりいっそう補償される。更に、本発明による方法は、セラミックの抵抗が構造素子の最終的な製造の前に測定されるという利点を有する。こうして、抵抗の完成に必然的な変動は、補償させることができる。
【0037】
場合によっては、先駆構造素子からの構造素子の切り取り後に、なお接続線材は、外側電極上に堅固にロウ付けさせることができる。
【0038】
その上、本発明による方法は、構造素子の抵抗体との結合で減少する電極層を極めて低い抵抗に正確に調節することができるという利点を有している。
【0039】
更に、先駆構造素子がセラミックのグリーンシートと適当に配置された電極層との層スタックである板から製造される方法は、特に好ましい。電極層の適した配置は、例えば板が多数の並列的に配置された、棒状と思われる先駆構造素子から構成されることによって記載される。
【0040】
本発明による構造素子を製造する場合には、最初に板から棒が打ち抜かれ、引続きこの棒は、焼結される。同様に、板を全体的に焼結させ、これを適当な分離法(例えば、切り取り)により棒に分離することは、可能である。この棒の焼結後、棒の長手方向側に外側電極が取り付けられる。それによって、先駆構造素子は、製造され、これは、上記方法で本発明による電気構造素子にさらに加工されることができる。
【0041】
この方法は、重なり合って存在するセラミックグリーンシートと電極層とから板を製造することによって、多数の電気構造素子の同時の完成を可能にするという利点を有している。
【0042】
更に、本発明は、抵抗が25℃で50〜500ΩであるNTC抵抗体としての電気構造素子の使用に関する。この場合には、殊に低い抵抗の温度センサーとしての構造素子の使用がこれに該当する。むしろ、本発明による構造素子に使用可能な高い抵抗のセラミックの感度が高いために、医学的範囲で、例えば体温計への使用が可能である。まさに、体温計の場合、使用される温度センサーは、温度の測定の際に0.1K未満の高い精度を達成しなければならない。更に、このような使用の場合には、抵抗の高い完成精度は、利点である。本発明による電気構造素子は、殊に小さな寸法を有するNTC抵抗体に適している。それというのも、電極層のために、抵抗体の大きな断面積を断念することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による構造素子を示す略示断面図。
【図2】本発明による構造素子を示す略示斜視図。
【図3】さらに本発明による構造素子を製造するための先駆構造素子として記載されている本発明による構造素子を示す略示斜視図。
【図4】先駆構造素子の製造に適した板を示す略示断面図。
【0044】
以下、本発明を実施例およびそれに属する図につき詳説する。
【実施例】
【0045】
図1は、導電性セラミック層10を含む基体1を有する一体型の多層構造素子としての本発明による構造素子を示す。セラミックは、比抵抗が負の温度係数を有するセラミックである。このセラミックは、付加的になおニッケル含量を含有する、Mnをベースとするスピネル構造を有する混晶である。この混合比Mn/Niは、94/6である。このセラミックは、10Ωcmの高い抵抗を有する。
【0046】
基体1の内部には、電極層3が配置されており、この電極層は、導電性貴金属層からなり、導電性セラミック層10によって互いに分離されている。電極層3の厚さは、約5μmである。高い抵抗のセラミックからなる構造素子の抵抗は、電極層3によって適当に減少され、したがって構造素子は、全体的に50オームの低い抵抗の抵抗体を有している。電極層3は、基体1の外側に取り付けられている外側電極2と結合されている。外側電極2は、銀焼付けペーストの焼付けによって製造されている。全ての外側電極2には、それぞれ銅線材が接続線材4としてロウ付けされている。
【0047】
図1に示された構造素子は、湿分および別の環境の影響からの保護のために、付加的になおプラスチック層またはラッカー層で被覆されていてもよいかまたはガラスからなる保護カバー11を備えていてもよい。
【0048】
図2は、図1からの構造素子を斜視図で示す。この図2から、本発明による構造素子の幾何学的寸法が明らかになる。長さlおよび幅bは、それぞれ0.5〜5mmである。厚さdは、0.3〜2mmである。厚さdと幅bまたは長さlとの差が少なくとも0.2mmであることによって、図1に示された構造素子は、既に別の構造素子のための試験された、係合および輸送のための系を用いて操作することができる。示された寸法から、本発明による構造素子は、殊に小型化された温度センサーを実現させるために適していることが明らかになる。
【0049】
図2に示された構造素子の電気的性質の安定性は、次の第1表に示された種々の試験判断基準につき検出することができる。
【0050】
【表1】

【0051】
図3は、棒状の基体6を有する先駆構造素子5を示す。棒状の基体6の対向する2つの側面には、それぞれ外側電極2が取り付けられている。この外側電極5を用いて、先駆構造素子5の電気抵抗は、測定されることができる。棒状の基体6の内部には、電極層3が配置されており、この電極層は、先駆構造素子の電気抵抗を減少させ、導電性のセラミック層10によって互いに分離されている。
【0052】
先駆構造素子5の電気的性質は、棒に沿って均一であり、即ち同一の長さを有する棒の全ての区間は、同じ電気抵抗を有する。それによって、長さの単一の寸法により、製造すべき構造素子の電気抵抗は、正確に調節されることができる。
【0053】
図4は、板7を示し、この板から、打抜き線9に沿って棒を打抜くことによって、先駆構造素子を製造することができる。板7は、製造すべき構造素子の長さ1に相応する厚さを有している。板7の別の寸法は、約105×105mmである。板は、重なり合って存在するセラミックグリーンシート8からなり、このグリーンシートの間には、電極層3が互いにずれて配置されている。最初に先駆構造素子に加工されかつ最終的に製造すべき構造素子それ自体に加工される板7を用いて、正確に定義された抵抗値を有する多数の構造素子を同時に完成させることが可能である。
【0054】
本発明は、例示的に示された実施形式に制限されるのではなく、最も一般的な形で請求項1および11によって定義されている。
【符号の説明】
【0055】
1 基体、 2 外側電極、 3 電極層、 4 接続線材、 5 先駆構造素子、 6 棒状の基体、 8 セラミックグリーンシート、 9 打抜き線、 10 導電性セラミック層、 11 保護カバー、 b 幅、 d 厚さ、 l 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性セラミック層(10)によって互いに分離されている重ね合わせた導電性電極層(3)からなる層スタックを有する基体(1)を備えた電気的構造素子において、
導電性セラミック層(10)は比電気抵抗が負の温度係数を有するセラミックからなり、
導電性セラミック層(10)が電極層(3)と一緒に焼結されたセラミックグリーンシートから製造されており、かつ
基体(1)の2つの対向する外面には、電極層(3)と導電的に結合されている外側電極(2)が配置されていることを特徴する、電気的構造素子。
【請求項2】
比抵抗の温度経過ρ(T)を示す、セラミックのB値が4000Kよりも大きい、請求項1記載の電気構造素子。
【請求項3】
基体(1)が導電性被膜を含まない4つの側面を有する平行六面体の形を有している、請求項1または2記載の電気構造素子。
【請求項4】
外側電極(2)がスクリーン印刷法によって基体(1)上に印刷されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の電気構造素子。
【請求項5】
構造素子の電気抵抗が25℃で2kΩ未満である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の電気構造素子。
【請求項6】
セラミックがニッケル、コバルト、チタン、ジルコニウムまたはアルミニウムの元素から選択された1つ以上の添加剤を有する、スピネル構造、ペロフスカイト構造またはコランダム構造のMnをベースとする混晶である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の電気構造素子。
【請求項7】
全ての外側電極(2)が平行に重なり合った平らな層の形の電極層(3)と接触しており、この電極層がそれぞれの外側電極(2)と櫛状の電極パッケージを形成し、これらの電極パッケージが互いの中へ押し込まれている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の電気構造素子。
【請求項8】
電極層(3)が金、パラジウムまたは白金を含有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の電気構造素子。
【請求項9】
外側電極(2)が銀または金の焼付けペーストからなる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の電気構造素子。
【請求項10】
全ての外側電極(2)に接続線(4)がロウ付けされている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の電気構造素子。
【請求項11】
棒状の基体(6)と、外側電極(2)の間で測定される実際の抵抗が目標の抵抗よりも小さい、縦側面上に配置された外側電極(2)とを備え、外側電極(2)を有する同じ長さの長手方向区間の抵抗が同じ大きさである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の先駆構造素子(5)から出発して、所定の目標の抵抗を有する電気構造素子を製造する方法において、次の工程:
a)先駆構造素子(5)の実際の抵抗を測定する工程、
b)目標の抵抗を達成させるために必要とされる、製造すべき構造素子である、先駆構造素子の長手方向区間の目標の長さを計算する工程、
c)先駆構造素子(5)の目標の長さの長手方向区間を切り取る工程
を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の先駆構造素子(5)から出発して、所定の目標の抵抗を有する電気構造素子を製造する方法。
【請求項12】
先駆構造素子(5)がセラミックグリーンシート(8)と適当に配置された電極層(3)との層スタックである板(7)から製造される請求項7記載の方法であって、次の工程:
a)板(7)から棒を打ち抜く工程、
b)棒を焼結させる工程、
c)外側電極(2)を棒の縦側面上に施す工程を有する、前記の方法。
【請求項13】
先駆構造素子(5)がセラミックグリーンシート(8)と適当に配置された電極層(3)との層スタックである板(7)から製造される請求項7記載の方法であって、次の工程:
a)板(7)を焼結させる工程、
b)棒を板(7)から切り取る工程、
c)外側電極(2)を棒の縦側面上に施す工程を有する、前記の方法。
【請求項14】
抵抗が25℃で50〜500ΩであるNTC抵抗体としての請求項1から10までのいずれか1項に記載の構造素子の使用。
【請求項15】
全ての接続線材(4)が金で被覆されており、ガラスからなる保護カバー(11)を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の構造素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−64960(P2012−64960A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243269(P2011−243269)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2001−579314(P2001−579314)の分割
【原出願日】平成13年4月25日(2001.4.25)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】