説明

電気自動車用ケーブル接続構造

【課題】電気機器に導線ケーブルが接続された電気自動車において、メンテナンス作業性の向上を図るとともにコストを低減できるようにした、電気自動車用ケーブル接続構造を提供する。
【解決手段】取り外し可能な電気機器2に導線ケーブル端子6Aが接続された、電気自動車用ケーブル接続構造であって、電気機器本体21に隣接して別体に形成され、導線ケーブル6を挿通する挿通用開口22Dを有する端子接続部22と、電気機器本体21から端子接続部22側に突出し、電気機器本体21の内部及び端子6Aと電気的に接続されたバスバー23と、電気機器本体21と端子接続部22とを脱着可能に接合する外部接合部22Cと、電気機器本体21に形成された第1係合部21Bと、端子接続部22に形成された第2係合部22Bとからなり、電気機器本体21と端子接続部22とを密着させる係合部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車において、電力供給源(バッテリ)からの電力を導く導線ケーブルを車両内の電気機器に接続するための電気自動車用ケーブル接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド電気自動車を含め、電動機(以下、走行駆動用モータという)により車両を駆動する電気自動車に対する注目が高まっている。
電気自動車は、一般に、バッテリ等からの電力をケーブルにより導き、車両の走行駆動用のモータに給電するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−48164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、本発明の創案過程で得られた電気自動車の走行駆動用モータ周辺の概略構成について図6を用いて説明する。図6は、電気自動車を車両後方から一部透視して示す模式的な斜視図である。
図6に示すように、この電気自動車(車両)100は、車両100を駆動するための走行駆動用モータ101と、内部にインバータやコントローラ(いずれも図示略)を有するMCU(モータコントロールユニット)102と、充電器(図示略)を内部に備えたDC/DCコンバータ103とを有している。
【0004】
走行駆動用モータ101は、リヤアクスル上に配設されるとともに、その上方にMCU102が配設されており、このMCU102の左側部に隣接してDC/DCコンバータ103が配設されている。
これらの走行駆動用モータ101,MCU102及びDC/DCコンバータ103は、図示しないブラケット等を介してモータマウントフレーム104に固定されており、このモータマウントフレーム104は図示しない車両100のクロスメンバに固設されている。
【0005】
また、MCU102よりも前方側であって、車両100のフロア下部には、車両100を駆動するための電力を蓄電するためのここでは図示しないバッテリが搭載されている。
そして、MCU102と走行駆動用モータ101及びMCU102とバッテリとは、複数の導線ケーブル106を介して電気的に接続され、バッテリからMCU102に直流電流が供給され、MCU102内のインバータにより三相交流電流に変換された上で走行駆動用モータ101に電力が供給されるようになっている。
【0006】
なお、符号105は、駆動系機構を示している。駆動系機構105は、走行駆動用モータ101の駆動力をここでは図示しない駆動輪に伝達するための動力伝達機構であって、デファレンシャルギアや各種シャフト等(いずれも図示略)により構成され、走行駆動用モータ101に動力伝達可能に接続されている。
ここで、導線ケーブル106とMCU102との接続部の構成についてより詳しく説明する。図7に示すように、MCU102には、下方に配設されたモータ101及びバッテリとMCU102との間を接続する導線ケーブル106の端子106Aを接続するための端子接続部102Aが形成されている。この端子接続部102Aは、MCU本体102Bの上部が片持梁状に水平方向に張り出すように形成されている。
【0007】
また、MCU102の内部には導線ケーブル106とMCU本体102Bとを電気的に接続するバスバー102Cが設けられており、このバスバー102Cの先端にはボルト113に対応したネジ溝を有するボルト穴が穿設されている。
一方、導線ケーブル106は、端子接続部102Aの下方からフランジ111を介してMCU102内に挿入されており、フランジ111はボルト112により端子接続部102の下面に圧着されている。これにより、導線ケーブル106の挿入部からMCU102内部への水の浸入を防止できるようになっている。
【0008】
導線ケーブル106の先端はいわゆる丸端子となっており、端子106Aはボルト113が貫通しうるように丸く環状に形成されている。そして、導線ケーブル106の端子106Aとバスバー102Cとは、ボルト113により車両の前後方向から締結されている。これにより、MCU102と導線ケーブル106とが電気的に接続されるようになっている。なお、端子接続部102Aの後方側の面には、ボルト113の締結作業を行うために、開閉可能な作業窓114が設けられている。
【0009】
この車両100のように、レイアウト設計上、走行駆動用モータ101及びバッテリがMCU102よりも下方に配設されている場合には、図示するように導線ケーブル106の長さを最短にするために導線ケーブル106がMCU102(端子導入部102A)の下方からMCU102に接続されるように配索するのが好ましい。
ところで、図6,図7を用いて説明した車両100において、MCU102よりも下方に配設されたモータ101等の機器のメンテナンスを行う場合には、図8に示すように、MCU102を車両100から取り外す必要がある。もちろん、MCU102自体のメンテナンスを行う際にもMCU102を車両100から取り外す必要がある。
【0010】
ところが、車両100のフロア(ここでは荷室のフロア)120よりも下方にMCU102が配設されている場合、上述したようにMCU102の内部において、バスバー102Cと導線ケーブル106とが前後方向からボルト113により接続されているため、MCU102をフロア120に設けられたフロア開口120Aを通して車両100から取り外す際には、一旦、作業者が、作業窓114を通じて導線ケーブル106を取り外す作業を行うことができる程度の高さ(即ち、ボルト113がフロア120よりも高くなる程度の高さ)までMCU102を持ち上げる必要がある。また、作業者が、MCU102を持ち上げた状態で、ボルト113の締結解除作業を行う必要がある。このため、上述のような車両100においては、MCU102及びMCU102の下方にある機器のメンテナンス作業が煩雑となるという課題があった。
【0011】
また、作業窓114を通じての作業が可能な高さにまでMCU102を持ち上げる必要があるため、その分、導線ケーブル106には十分な余長を確保する必要があり、この余長分だけ導線ケーブル106のコストが大きくなる上、車両の重量増の一因となっていた。
なお、上述したような電気自動車に用いられる導線ケーブル106は径が大きく剛性が高いため、弾性変形し難い。このため、仮に導線ケーブル106に十分な余長を与えても、この余長分の弾性によりMCU102を上方に押し上げようとする力が加わり、通常の設置において端子106Aに不要な負荷がかかる。また、反対に導線ケーブル106の余長を少なめに設定した場合には、導線ケーブル106の弾性により、MCU102を持ち上げる際にさらに大きな負荷が加わり、作業性が低下するという課題もある。
【0012】
これらの課題は、MCU102に導線ケーブル106が接続される場合に限らず、電気機器の種類や用途に関わらず同様の課題が生じる。
また、電気機器の取り外し方向についても上下方向(鉛直方向)に限らず、電気機器の取り外し側とは異なる位置に導線ケーブルが接続されている場合には同様の課題が生じる。
【0013】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、電気機器に導線ケーブルが接続された電気自動車において、メンテナンス作業性の向上を図るとともにコストを低減できるようにした、電気自動車用ケーブル接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するために、本発明の電気自動車用ケーブル接続構造(請求項1)は、電動機の駆動力により走行する車両において、該車両から取り外し可能な所定の電気機器に該車両を駆動するための電力供給源からの電力を供給する導線ケーブルの端子が接続された電気自動車におけるケーブル接続構造であって、該電気機器の主要部をなす電気機器本体と、該電気機器本体に隣接して該電気機器本体とは別体に形成され、該導線ケーブルを挿通する挿通用開口を有する端子接続部と、該電気機器本体から該端子接続部側に突出し、一端側が該電気機器本体の内部と電気的に接続されるとともに他端側が該端子接続部の内部において該導線ケーブルの該端子と電気的に接続されたバスバーと、該電気機器本体と該端子接続部とを該電気機器の取り外し方向に沿った方向からボルトにより脱着可能に接合するための外部接合部と、該電気機器本体に形成された第1係合部と該端子接続部に形成された第2係合部とからなり、該第1係合部と該第2係合部とが係合した状態で該外部接合部が接合されることにより、該電気機器本体と該端子接続部とを密着させる係合部と、を有していることを特徴としている。
【0015】
また、該電気機器が、該電力供給源から供給された電力を調整して、該電動機に供給する電力を制御するモータコントロールユニットであることが好ましい(請求項2)。
また、該取り外し方向とは略鉛直方向であって、該端子接続部は該電気機器本体の側面に隣接し、該外部接合部は該電気機器本体の上面と該端子接続部とをボルトにより脱着可能に接合するように構成されていることが好ましい(請求項3)。
【0016】
また、該導線ケーブルの該端子と該バスバーとが、ボルトにより該取り外し方向から脱着可能に接続され、該端子接続部の該取り外し方向側の面には、該導線ケーブルの該端子と該バスバーとの脱着作業を行うために開閉可能なアクセス窓が設けられていることが好ましい(請求項4)。
また、該第1係合部が、該電気機器本体の側面にテーパ状に形成され、該第2係合部が、該第1係合部の形状に対応した形状のテーパ状に形成され、該係合部は、該外部接合部が接合されることにより、該第1係合部と該第2係合部が互いに係合することにより該電気機器本体と該端子接続部とを密着させるように構成されていることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電気自動車用ケーブル接続構造(請求項1)によれば、電気機器を取り外す場合には、電気機器の取り外し方向と一致する方向から外部接合部のボルトをゆるめることにより、電気機器本体と端子接続部との接合を解除することができ、電気機器本体をそのまま車両から取り外すことができる。これにより、電気機器を一旦取り外し方向に動かす作業が必要ない上、取り外し方向からの作業のみで電気機器本体と端子接続部との接合を解除して電気機器本体を取り外すことができる。これにより、メンテナンス時における作業性を大幅に向上させることができる。また、電気機器を一旦取り外し方向に動かすために導線ケーブルに余長を確保する必要がないため、導線ケーブルを従来のものよりも短く設定することができ、コスト及び重量を低減することができる。また、導線ケーブルを短く設定できる分だけ省スペース化を実現できるという効果もある。
【0018】
本発明の電気自動車用ケーブル接続構造(請求項2)によれば、MCUには、より多くの導線ケーブルが導入される上、MCUには、比較的高電流を導通する必要があるため、導線ケーブルとしてケーブル径が大きいものを用いるため、各導線ケーブルは剛性が高く、重量が大きいものとなる。しかしながら、このMCUに導入される導線ケーブルを従来のものよりも短く設定することにより、メンテナンス性の向上とコストの低減とをより効果的に実現することができる。
【0019】
本発明の電気自動車用ケーブル接続構造(請求項3)によれば、下方から導線ケーブルが導入される電気機器を有する電気自動車において、電気機器を取り外す場合に重量が大きい電気機器を一旦持ち上げる必要なく、メンテナンス作業にかかる作業性をさらに良好にすることができる。
本発明の電気自動車用ケーブル接続構造(請求項4)によれば、導線ケーブルの端子とバスバーとを確実に接続することができるとともに、アクセス窓を介して導線ケーブルの端子とバスバーとの脱着作業を取り外し方向側から容易に行うことができる。
【0020】
本発明の電気自動車用ケーブル接続構造(請求項5)によれば、外部接合部においてボルトが螺合することにより、それぞれテーパ状に形成された第2係合部が第1係合部側に押しつけられると、電気機器本体と端子接続部との密着性が向上し、これにより、電気機器本体と端子接続部との接触面においての防水性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1〜図5は、いずれも本発明の一実施形態に係る電気自動車用ケーブル接続構造を説明するためのものであって、図1は電気機器と導線ケーブルとの接続部の構成を側面視で模式的に示す図、図2は電気自動車の概略構成を平面視で模式的に示す図、図3は電気自動車の車両後部付近の構成を車両後方からの視点で一部透視して模式的に示す斜視図、図4は電気自動車の車両後部付近の構成を上方視で模式的に示す斜視図、図5は電気機器と導線ケーブルとの接続を解除した状態を側面視で模式的に示す図である。
【0022】
図2,図3に示すように、この電気自動車(車両)50は、走行駆動用モータ(電動機)1,MCU(モータコントロールユニット,電気機器)2及びDC/DCコンバータ(電気機器)3,バッテリ(電力供給源)8とを有している。
図3に示すように、走行駆動用モータ1は、車両50を走行させるための駆動力を付与するものであり、本実施形態ではリヤアクスル上に配設されている。なお、走行駆動用モータ1は車両50を走行させるとともに、車両50の回生制動時には発電機としても機能し、回生電力を発電するようになっている。
【0023】
MCU2は、走行駆動用モータ1の上方に配設されており、このMCU2の左側部に隣接してDC/DCコンバータ3が配設されている。
MCU2は内部にインバータやコントローラ(いずれも図示略)を有し、バッテリ8から供給された電力を調整するとともに、運転要求に応じた電力を、走行駆動用モータ1に供給するようになっている。
【0024】
DC/DCコンバータ3は充電器(図示略)を内部に収納してアッセンブリ化したものである。MCU2とDC/DCコンバータ3との間も電気的に接続されており、走行駆動用モータ1で発電した回生電力を一旦DC/DCコンバータ3内部において整流した上でバッテリ8に電力供給しうるように構成されている。
これらの走行駆動用モータ1,MCU2及びDC/DCコンバータ3は、図示しないブラケット等を介してモータマウントフレーム4に固定されており、このモータマウントフレーム4は図示しない車両50のクロスメンバに固設されている。
【0025】
また、バッテリ8は、車両50の車室フロア(図示省略)の下部に搭載されており、車両50を駆動するための電力を蓄電するようになっている。そして、図2に示すように、MCU2とバッテリ8とが、導線ケーブル6を介して電気的に接続されるとともに、図3に示すようにMCU2と走行駆動用モータ1とも導線ケーブル6を介して電気的に接続されている。これにより、バッテリ8からMCU2に直流電流が供給され、MCU2内のインバータにより三相交流電流に変換された上で走行駆動用モータ1に駆動用の電力が供給されるようになっている。
【0026】
また、MCU2とDC/DCコンバータ3との間も電気的に接続されており、走行駆動用モータで発電した回生電力を一旦DC/DCコンバータ3内部において整流した上でバッテリ8に電力供給しうるように構成されている。
なお、電気自動車である車両50において、MCU2,走行駆動用モータ1及びDC/DCコンバータ3等には、比較的大電流を導通する必要があり、導電時の発熱等を抑制するため、導線ケーブル6は比較的径が大きく剛性が高いものに設定されている。
【0027】
なお、符号5は、駆動系機構を示している。駆動系機構5は、走行駆動用モータ1の駆動力を車輪7に伝達するための動力伝達機構であって、デファレンシャルギアや各種シャフト等(いずれも図示略)により構成され、走行駆動用モータ1に動力伝達可能に接続されている。
また、図1,図4に示すように、MCU2は、車両50のフロア40に設けられたメンテナンス用のフロア開口40Aを通して、鉛直方向(取り外し方向)に車両50から取り外し可能となっている。
【0028】
即ち、MCU2を車両50から取り外すことにより、MCU2自体のメンテナンスはもちろん、MCU2よりも下方に配設された走行駆動用モータ1やその他の図示しない機器類のメンテナンスを行えるようになっている。
【0029】
ここで、複数の導線ケーブル6とMCU2との接続部の構成についてより詳しく説明する。
図1に示すように、MCU2は、MCU本体(電気機器本体)21及び端子接続部22から構成されており、MCU2の上面は、車両50のフロア40及びメンテナンス用のフロア開口40Aよりも下方に配設されている。
MCU本体21は内部にインバータ及びコントローラ(いずれも図示略)を収納し、MCU2の主要部をなしている。
【0030】
一方、端子接続部22は、MCU本体21の後方側の側面に隣接してMCU本体21とは別体に配設されており、内部に空間を有する箱状に形成されている。
MCU本体21及び端子接続部22は、それぞれ、MCU本体21及び端子接続部22間を連通可能とするための開口部21A,22Aを有しており、MCU本体21及び端子接続部22が接合された状態で各開口部21A,22Aの位置が一致するようになっている。
【0031】
そして、MCU本体21の内部からは、開口部21A,22Aを介して端子接続部22側にバスバー23が略水平に突出している。このバスバー23は、一端側がMCU本体21の内部と電気的に接続されており、導線ケーブル6の数量に対応して複数設けられている。また、各バスバー23の他端側には、ボルト14に対応したネジ溝が切設された図示省略のボルト穴が設けられている。
【0032】
端子接続部22の下面には、MCU2よりも下方から鉛直方向(即ち、MCU2の取り外し方向)に沿って複数の導線ケーブル6を挿通しうるように導線ケーブル6と同数の挿通用開口22Dが穿設されている。そして、各導線ケーブル6は、フランジ11を介して挿通用開口22Dに挿通されている。
フランジ11には、ボルト12に対応したネジ溝が切設された図示省略のボルト穴が設けられている。即ち、ボルト12を締結することによりフランジ11の上面が端子接続部2の下面に圧着され、これにより、挿通用開口22Dに導線ケーブル6を挿入する際においてのMCU2内部への水の浸入を防止できる。即ち、MCU2の液密性を確保できるようになっている。
【0033】
各導線ケーブル6の先端には、いわゆる丸端子型の端子6Aが形成されており、この端子6Aはボルト13が貫通しうる径で丸く環状に形成されている。
各導線ケーブル6と各バスバー23とはそれぞれブラケット15を介して電気的に接続されている。即ち、ブラケット15はL字状に略直角に屈曲した導体により形成されており、ブラケット15の両端付近には各ボルト13,14に対応したネジ溝を有するボルト穴(図示省略)が形成されている。
【0034】
そして、ボルト14は、上方からブラケット15及びバスバー23のそれぞれのボルト穴に螺合し、ブラケット15の一端側とバスバー23とが電気的に接続されている。一方、ボルト13は、後方(MCU2の取り外し方向とは異なる方向)から端子6A及びブラケット15のそれぞれのボルト穴に螺合し、ブラケット15の他端側と端子6Aとが電気的に接続されている。
【0035】
なお、端子接続部22の上面には、上方からボルト14の締結作業を行うために、開閉可能な作業窓(アクセス窓)16が設けられている。また、端子接続部22の後方側側面には、後方からボルト13の締結作業を行うために、開閉可能な作業窓17が設けられている。
端子接続部22の上部前方側には、MCU本体21の上面に接するように片持梁状に水平方向に張り出した外部接合部22Cが形成されている。この外部接合部22CとMCU本体21とは、図4に示すように、左右方向に並列した複数のボルト18により接合されている。
【0036】
つまり、外部接合部22C及びMCU本体21にはボルト18に対応したネジ溝を有する複数のボルト穴(図示略)が切設されている。そして、各ボルト18が上方から外部接合部22C及びMCU本体21の上面の複数のボルト穴にそれぞれ螺合することにより外部接合部22CとMCU本体21とが接合されている。また、図示はしないが、MCU本体21と端子接合部22との間には液密性を保持するためのパッキン(シール部材)が設けられており、各ボルト18による締結により、外部接合部22CとMCU本体21との間に水が浸入することを防止してMCU2の液密性が確保されるようになっている。
【0037】
なお、図1では理解を容易とするため、外部接合部22CやMCU本体21の内部にあるボルト18については実線で表示している。
また、MCU本体21の後方側面には、本体側テーパ部(係合部,第1係合部)21Bが突設されている。一方、端子接続部22の前側及び下側の角付近には、第2係合部としての端子接続部側テーパ部(係合部,第2係合部)22Bが突設されている。
【0038】
このうち、本体側テーパ部21Bは端子接続部側テーパ部22Bに向かって(上方に向かって)前後方向の長さ(幅長)が短くなるようにテーパ状に形成されており、一方、端子接続部側テーパ部22Bは、本体側テーパ部21Bに向かって(下方に向かって)前後方向の長さ(幅長)が短くなるようにテーパ状に形成されている。
これにより、端子接続部側テーパ部22Bが下方にある本体側テーパ部21BとMCU本体21との間に浸入することにより、車両前後方向に互いに押しつけあって係合し、MCU本体21と端子接続部22とを密着させるように構成されている。
【0039】
本発明の一実施形態にかかる電気自動車用ケーブル接続構造はこのように構成されているので、以下のような作用及び効果を奏する。
即ち、車両50からMCU2を鉛直方向上方に取り外す場合には、図5に示すように、作業者はまず、上方からフロア40に形成されたメンテナンス用のフロア開口40Aを通してボルト18の締結を緩め、MCU本体21と端子接続部22の外部接続部22Cとの接合を解除する。
【0040】
次に作業者は、作業窓16を開き、作業窓16を通して各ボルト14の締結を緩め、ブラケット15とバスバー23とのそれぞれの接合を解除する。
これらの作業によって、MCU本体21と端子接続部22とのボルトによる接合がすべて解除されることとなり、本体側テーパ部21B及び端子接続部側テーパ部22Bの係合部の係合を容易に解除して端子接続部22を上方に持ち上げることが可能となる。これにより、MCU本体21は、導線ケーブル6に干渉されることなく、容易にフロア開口40Aを通じて車両50から取りはずすことができる。
【0041】
また、MCU本体21が取り外された後には、端子接続部22を前方に傾斜させることにより、上方から作業窓17を通して各ボルト13の締結を緩めることができ、端子6Aとブラケット15とのそれぞれの接合を解除して、導線ケーブル6に干渉されることなく端子接続部22を車両50から容易に取り外すことができ、MCU2を全て車両から取り外すことができる。
【0042】
また、車両50にMCU2を取り付ける場合には、作業者はまず、上方から作業窓17を通じて各端子6A及び各ブラケット15にボルト13を螺合して各端子6A及び各ブラケット15を接合し、作業窓を閉じる。そして、MCU本体21を所定の位置にセットした後に、上方から本体側テーパ部21Bに向かって端子接続部22の端子接続部側テーパ部22Bを挿入して互いに係合部を形成する。
【0043】
次に、MCU本体21の上面に外部接続部22Cを載置し、外部接続部22C及びMCU本体21の上面のボルト穴にボルト18を螺合することにより、外部接続部22C及びMCU本体21とを接合する。
その後、作業窓16を通して各ブラケット15及び各バスバー23にボルト14を螺合して各ブラケット15及び各バスバー23を接合する。
【0044】
なお、ボルト18の螺合により、端子接続部側テーパ部22Bは下方(即ち、本体側テーパ部21B側)に押し下げられ、本体側テーパ部21Bと端子接続部側テーパ部22Bとはより深く係合することになる。このとき、本体側テーパ部21B及び端子接続部側テーパ部22Bは、互いに接近方向に進むほど、前後方向の長さ(幅長)が長くなるため、本体側テーパ部21Bと端子接続部側テーパ部22Bとがより深く係合するにつれてMCU本体21と端子接続部22とが前後方向にそれぞれ押しつけ合うこととなり、互いに密着することによりMCU本体21と端子接続部22との間に水が浸入することを防止でき、MCU2の液密性を高めることになる。
【0045】
このように、本発明の電気自動車用ケーブル接続構造によれば、MCU2がフロア40のフロア開口40Aよりも下方に配設されている状態であっても、鉛直方向(MCU本体21の取り外し方向)からボルト18を緩めて外部接合部22CとMCU本体21との接合を容易に解除することができる。また、作業窓16を通してやはり鉛直方向(MCU本体21の取り外し方向)からボルト14を緩めてブラケット15とバスバー23との接合を容易に解除することができる。
【0046】
これにより、MCU2を車両50から取り外す際に、比較的大重量のMCU2を一旦フロア40の高さにまで上方に持ち上げる等の手間を低減することができ、メンテナンス時における作業性を大幅に向上させることができる。
また、導線ケーブル6の余長は、本体側テーパ部21B及び端子接続部側テーパ部22Bの係合部の係合を解除できる程度であればよく、導線ケーブル6の余長を大幅に低減することができる。これにより、コスト及び重量を低減することができる。また、ケーブルを短く設定できる分だけ車両50の省スペース化を実現できるという効果もある。
【0047】
さらに、導線ケーブル6の余長を低減することができるので、剛性の高い導線ケーブル6の余長が大きい場合に、導線ケーブル6の弾性力に起因して端子6Aやバスバー23にかかる負荷を低減することができる。
また、導線ケーブル6の端子6Aとバスバー23とが、L字形状のブラケット15を介してボルト13,14により接合されているので、端子6Aとバスバー23とを確実に接続することができる。また、作業窓16を介して上方からブラケット15とバスバー23との脱着作業を行うことができ、作業性を大幅に向上させることができる。
【0048】
さらに、ボルト18の螺合により、端子接続部側テーパ部22Bが本体側テーパ部21Bに押しつけられることにより、MCU本体21と端子接続部22との密着性が向上し、これにより、MCU本体21と端子接続部22との接触面においての防水性を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態においては、導線ケーブルが接続される電気機器としてMCUを一例として説明したが、導線ケーブルが接続される電気機器はMCUに限定されるものではなく、どのような電気機器を適用してもよい。特に、MCUの他にDC/DCコンバータや車両駆動用モータには、比較的大きな電流を導通する必要があるため、より大径且つ大重量の導線ケーブルを接続する必要があり、より効果的なコスト低減効果及び重量低減効果を得ることができる。
【0050】
また、実施形態では電気機器を車両から取り外す取り外し方向が鉛直方向であるものについて説明したが、本発明において、電気機器の取り外し方向は実施形態の方向に限定されるものではなく、任意の方向であってよい。
また、電気機器に接続される導線ケーブルの接続方向についても、特に限定されるものではなく任意の方向であってよいが、ケーブルの配索方向が電気機器の取り外し方向と一致している場合には特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車用ケーブル接続構造を説明するためのものであって、電気機器と導線ケーブルとの接続部の構成を側面視で模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電気自動車用ケーブル接続構造を説明するためのものであって、電気自動車の概略構成を平面視で模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電気自動車用ケーブル接続構造を説明するためのものであって、電気自動車の車両後部付近の構成を車両後方からの視点で一部透視して模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る電気自動車用ケーブル接続構造を説明するためのものであって、電気自動車の車両後部付近の構成を上方視で模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電気自動車用ケーブル接続構造を説明するためのものであって、電気機器と導線ケーブルとの接続を解除した状態を側面視で模式的に示す図である。
【図6】従来技術を説明するためのものであって、電気自動車の車両後部付近の構成を車両後方からの視点で一部透視して模式的に示す斜視図である。
【図7】従来技術を説明するためのものであって、電気機器と導線ケーブルとの接続部の構成を側面視で模式的に示す図である。
【図8】従来技術を説明するためのものであって、電気自動車の車両後部付近の構成を上方視で模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 車両駆動用モータ(電動機)
2 MCU(モータコントロールユニット,電気機器)
3 DC/DCコンバータ
4 モータマウントフレーム
5 駆動系機構
6 導線ケーブル
6A 端子
7 車輪
8 バッテリ(電力供給源)
11 フランジ
12,13,14,18 ボルト
15 ブラケット
16 作業窓(アクセス窓)
17 作業窓
21 MCU本体
21A 開口部
21B 本体側テーパ部(第1係合部,係合部)
22 端子接続部
22A 開口部
22B 端子接続部側テーパ部(第2係合部,係合部)
22C 外部接合部
22D 挿通用開口
40 フロア
40A フロア開口
50 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の駆動力により走行する車両において、該車両から取り外し可能な所定の電気機器に該車両を駆動するための電力供給源からの電力を供給する導線ケーブルの端子が接続された電気自動車におけるケーブル接続構造であって、
該電気機器の主要部をなす電気機器本体と、
該電気機器本体に隣接して該電気機器本体とは別体に形成され、該導線ケーブルを挿通する挿通用開口を有する端子接続部と、
該電気機器本体から該端子接続部側に突出し、一端側が該電気機器本体の内部と電気的に接続されるとともに他端側が該端子接続部の内部において該導線ケーブルの該端子と電気的に接続されたバスバーと、
該電気機器本体と該端子接続部とを該電気機器の取り外し方向に沿った方向からボルトにより脱着可能に接合するための外部接合部と、
該電気機器本体に形成された第1係合部と該端子接続部に形成された第2係合部とからなり、該第1係合部と該第2係合部とが係合した状態で該外部接合部が接合されることにより、該電気機器本体と該端子接続部とを密着させる係合部と、を有している
ことを特徴とする、電気自動車用ケーブル接続構造。
【請求項2】
該電気機器が、該電力供給源から供給された電力を調整して、該電動機に供給する電力を制御するモータコントロールユニットである
ことを特徴とする、請求項1記載の電気自動車用ケーブル接続構造。
【請求項3】
該取り外し方向とは略鉛直方向であって、
該端子接続部は該電気機器本体の側面に隣接し、
該外部接合部は該電気機器本体の上面と該端子接続部とをボルトにより脱着可能に接合するように構成されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の電気自動車用ケーブル接続構造。
【請求項4】
該導線ケーブルの該端子と該バスバーとが、ボルトにより該取り外し方向から脱着可能に接続され、
該端子接続部の該取り外し方向側の面には、該導線ケーブルの該端子と該バスバーとの脱着作業を行うために開閉可能なアクセス窓が設けられている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気自動車用ケーブル接続構造。
【請求項5】
該第1係合部が、該電気機器本体の側面にテーパ状に形成され、
該第2係合部が、該第1係合部の形状に対応した形状のテーパ状に形成され、
該係合部は、該外部接合部が接合されることにより、該第1係合部と該第2係合部が互いに係合することにより該電気機器本体と該端子接続部とを密着させるように構成されている
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気自動車用ケーブル接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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