電気部品のハンダ付け構造
【課題】 簡単な構造で、電気抵抗の増大を招くことなく、熱容量の小さい工具や装置でハンダ付けすることができる電気部品のハンダ付け構造を提供する。
【解決手段】 コイル13等の電気部品のハンダ付け構造であって、所定の電極16にハンダ付けされる金属片のリード14を有し、金属片のリード14の先端部11a,12aが複数に分割されている。分割された各先端部11a,12aは、電極16に近づくにつれて延びた階段状の段差や、ランダムな段差状、またはリード28の先端部が鋭角に切断された形状に形成されている。
【解決手段】 コイル13等の電気部品のハンダ付け構造であって、所定の電極16にハンダ付けされる金属片のリード14を有し、金属片のリード14の先端部11a,12aが複数に分割されている。分割された各先端部11a,12aは、電極16に近づくにつれて延びた階段状の段差や、ランダムな段差状、またはリード28の先端部が鋭角に切断された形状に形成されている。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は、電気部品と電極を接続する電気部品のハンダ付け構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気部品を回路基板等の電極に接続するため、種々のハンダ付けが行われている。例えば、電気部品であるトランスのコイル部分のハンダ付けは、図9,図10に示すように、メッキ銅板をプレス加工した板金のコイルや平角電線をコイル状に巻回したエッジワイズコイルの場合、コイル1のリード2を、電極3に平行に重ねて接触させ、この状態でリード2の先端部と電極3を覆うようにハンダ4を設け、機械的及び電気的に接続したハンダ付け構造5を形成していた。
【0003】
ハンダ付け作業は、まずコイル1のリード2をその長手方向に沿って電極3の表面に平行に重ね、所定温度に昇温されたハンダごてをリード2に接触させて加熱しながらハンダ4を溶融させ、リード2と電極3を溶融したハンダ4で覆うようにするものである。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記従来の技術の場合、電気が流れる経路であるコイル1とリード2は、電気抵抗を小さくするためなるべく厚い板金を用いた方が好ましい。しかし、厚い板金を用いて製造されたリード2は、その体積に応じて熱容量が大きくなり、ハンダ付けの際に熱容量の大きな工具や装置、例えば大きなハンダごてやリフロー炉等が必要になる。一方、リード2の熱容量を小さくするためにはリード2を薄く細い形にすればよいが、細く薄形等にすると電気抵抗が大きくなるという相反する問題がある。
【0005】
また、図11に示すハンダ付け構造6のように、リード2が電極3に対して斜めにハンダ付けされているものもある。このハンダ付け構造6によると、リード2が電極3に対して面接触して重ねられていないため、ハンダごての熱がリード2を伝わって電極16に逃げる量が少なく、ハンダ付けに必要な熱容量を抑えることができ、ハンダ付けを容易にしている。しかし、リード2と電極3との接触面積が少なく、その部分での電気抵抗が大きくなるという問題がある。
【0006】
この考案は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、電気抵抗の増大を招くことなく、熱容量の小さい工具や装置でハンダ付けすることができる電気部品のハンダ付け構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この考案は、所定の電極にハンダ付けされる金属片を有したコイル等の電気部品のハンダ付け構造であって、上記金属片のハンダ付けされる部分は複数に分割され、上記分割された金属片の各先端部は、上記電極に近づくにつれて延びた階段状の段差に形成されている電気部品のハンダ付け構造である。
【0008】
またこの発明は、所定の電極にハンダ付けされる金属片を有したコイル等の電気部品のハンダ付け構造であって、上記金属片のハンダ付けされる先端部は鋭角に切断された先端面を有して形成され、上記電極の表面に対して上記金属片は長手方向に平行に接して設けられ、上記先端面が上記電極表面に対して外側に面して設けられている電気部品のハンダ付け構造である。
【0009】
またこの発明は、所定の電極にハンダ付けされる金属片を有したコイル等の電気部品のハンダ付け構造であって、上記金属片のハンダ付けされる先端部は、上記金属片の長手方向に沿って複数に分割され、上記金属片の分割された各先端部は、互いに段違いに位置した電気部品のハンダ付け構造である。
【0010】
上記金属片は、メッキ銅板をプレス加工した板金のコイルまたは平角電線をコイル状に巻回したコイルのリードの先端部である。または、上記金属片は、複数の金属線を束ねたリードの先端部である。
【0011】
この考案の電気部品のハンダ付け構造は、リードの先端が段差等により切り欠かれた状態にし、その分体積を小さくしたものである。このため、ハンダ付けの際に伝わる熱容量が小さく抑えられ、リードは熱され易く、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることが可能であり、またリードがハンダ付けに適した温度に達する時間が短く作業性が向上する。そしてリードは、先端のみが部分的に切り欠かれているだけなので、電気が流れる経路を損なわず電気抵抗が大きくなることはない。
【0012】
【考案の実施の形態】
以下、この考案の実施形態について図面に基づいて説明する。図1,図2はこの考案の第一実施形態を示すもので、この実施形態のハンダ付け構造10は、メッキ銅板をプレス加工した板金のコイルや、平角電線をコイル状に巻回したエッジワイズコイル等の板状トランスコイル13を、図示しない基板等の電極16の表面16aに接続するものである。
【0013】
この板状トランスコイル13は、2枚の同径のコイルを形成するコイル材11,12を積層して作られている。そしてコイル材11,12の両端部は、電極16にハンダ付けされる金属片である一対のリード14とし、各リード14は互いに平行に側方へ延出して設けられている。そしてリード14は、電極16に近づくに従い長くなるように、コイル材11の先端部11aがコイル材12の先端部12aよりも長く形成されている。
【0014】
次にこの実施形態のハンダ付け構造10の製造方法について説明する。まず、板状トランスコイル13のリード14を、コイル材11,12を重ねた状態でコイル材11側が電極16に接触するように、電極16に平行に重ねる。この状態で、コイル材12の先端部12a上方の角部と、コイル材11の先端部11a上方の角部に、所定温度に昇温された図示しないハンダごてを接触させながらハンダ22を溶融させる。溶融したハンダ22は下方に流れ、コイル材11の先端部11aとコイル材12の先端部12a、及びコイル材11の先端部11a付近の電極16を覆う。そして、ハンダごてを離すと、その状態でハンダ22が固まる。
【0015】
この実施形態のハンダ付け構造10によれば、リード14は、コイル材11よりコイル材12が短く形成されて階段状の段差となり、リード14のコイル材12の先端部12aの一部が取り除かれた状態となり、リード14部分の体積が小さいため熱容量が小さく、ハンダ付けの際に逃げる熱量が抑えられる。このため、リード14は熱され易く、熱容量の小さい工具や装置でハンダ付けすることが可能であり、工具や装置の設備費を抑えることができる。また、熱容量が小さいことから、リード14がハンダ付けに適した温度に達する時間が短く、作業性が向上する。そして、電気抵抗を小さく抑えるためにリード14が厚いコイル材で形成された場合でも、熱容量の小さい工具やその他ハンダ付け設備で対応することができる。またこのハンダ付け構造10は、リード14が階段状の段差となり、リード14の先端上方付近の断面積が小さくなっているが、電気はその部分に流れず、コイル材11の先端部11aが電極16に接した部分を流れるので、電気が流れる経路を損なわず電気抵抗が大きくなることはない。これにより電気抵抗の増加を招くことなく、かつ熱容量を小さくするという相反する効果を同時に得ることができる。また、コイル材11の先端部11aとコイル材12の先端部12aは階段状の段差に設けられているため、ハンダごてによるハンダ付けの際に、ハンダごてに同時にその角部が接触することができ、接触面積が多くハンダごての熱が伝わりやすくなる。この点からもリード14がハンダ付けに適した温度に達する時間が短く、ハンダ付け効率や作業性を向上させることができる利点がある。
【0016】
次にこの考案の第二実施形態について図3、図4に基づいて説明する。ここで、上記実施の形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のハンダ付け構造24は、断面がほぼ円形である金属線で作られたトランスコイル26を電極16の表面16aに接続するものである。
【0017】
トランスコイル26は、金属線を所定形状に湾曲させて作られ、金属線の両端部は、電極16にハンダ付けされるリード28とし、リード28は互いに平行に側方へ延出して設けられている。リード28の先端面28aは、リード28の引き出し方向に対して直角以外の角度、例えばリード28の引き出し方向に対して20°〜70°程度で交差するように切断され、楕円形に設けられている。そして、各リード28に設けられた先端面28aは、互いにほぼ平行に設けられている。
【0018】
次にこの実施形態のハンダ付け構造24の製造方法について説明する。まず、トランスコイル26のリード28を、リード28の先端面28aが電極16の表面16aに対して対向しないように外向きに配置し、且つ先端面28aが表面16aに対して鋭角に交差するように重ねる。この状態で、リード28に所定温度に昇温されたハンダごてを接触させながらハンダ22を溶融させる。溶融したハンダ22は下方に流れ、リード28の先端面28aと、先端面28a付近の電極16を覆って固まる。
【0019】
この実施形態のハンダ付け構造24によれば、リード28の先端面28aが電極16に対して上方を向いた鋭角に設けられ、リード28の外側角部が斜めに切り欠かれたようになり、リード28のハンダ付け部分の体積が小さい。このため、リード28の熱容量が小さく、ハンダ付けの際に逃げてしまう熱が少なく抑えられ、リード28は熱され易く、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることが可能であり、装置・工具の設備費が抑えられる。そして、電気抵抗を小さく抑えるためにリード28を太い金属線で設けられた場合でも、熱容量の小さい工具・設備で対応することができる。さらに、リード28の先端上方付近が切り欠かれて細くなっているが、電気はその部分に流れることはなく、電気抵抗が大きくなることはない。これにより電気抵抗の増加を招くことなく、かつ熱容量を小さくするという相反する効果を同時に得ることができる。
【0020】
次にこの考案の第三実施形態について図5、図6に基づいて説明する。ここで、上記実施の形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のハンダ付け構造30は、複数の金属線32を互いに長手方向に束ねて作られたトランスコイル34を、電極16の表面16aに接続するものである。
【0021】
トランスコイル34は、束ねられた金属線を所定形状に湾曲させて作られ、金属線の両端部は電極16にハンダ付けされるリード36とし、リード36は互いに平行に側方へ延出して設けられている。リード36の、各金属線32の先端部32aは、リード36の引き出し方向に沿って互いに段違いで異なる位置で、ばらばらに位置している。
【0022】
次にこの実施形態のハンダ付け構造30の作り方について説明する。まず、トランスコイル34のリード36の各金属線32の先端部32aが、ランダムに各々段違いになるように形成する。そして、リード36の金属線32の側面が電極16の表面16aに接する位置に重ねる。この状態で、リード36に所定温度に昇温されたハンダごてを接触させながらハンダ22を溶融させる。溶融したハンダ22は下方に流れ、リード部36の、各金属線32先端部32aと、先端部32a付近の電極16を覆って固まる。
【0023】
この実施形態のハンダ付け構造30によれば、リード36の、各金属線32先端部32aが互いに段違いに設けられているため、リード36の先端部分が細かく部分的に切除された状態となり、リード36の体積を抑えることができる。このため、リード36の熱容量が小さく、ハンダ付けの際に伝わる熱が抑えられ、リード36は熱され易く、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることが可能であり、装置・工具の設備費を抑えることができる。そしてリード36の先端付近は、部分的に細かく切除された状態になっているが、電気はその部分に流れることはなく、電気が流れる経路を損なわず電気抵抗が大きくなることはない。
これにより電気抵抗の増加を招くことなく、かつ熱容量を小さくするという相反する効果を同時に得ることができる。
【0024】
次にこの考案の第四実施形態について図7、図8に基づいて説明する。ここで、上記の実施の形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のハンダ付け構造38は、メッキ銅板をプレス加工した板金のコイルや平角電線をコイル状に巻回したエッジワイズコイル等を形成する4数のコイル材40,41,42,43を積層して作られた板状トランスコイル44を、電極16に接続するものである。
【0025】
板状トランスコイル44は、コイル材40,41,42,43の両端部が、電極16にハンダ付けされるリード46として形成され、リード46は互いに平行に側方へ延出して設けられている。コイル材40,41,42,43の両端部の長さは、各々不均一であり、コイル材40,41,42,43の先端部40a,41a,42a,43aは、リード46の引き出し方向に対して互いに段違いで異なる位置にある。各先端部40a,41a,42a,43aは、リード46の引き出し方向に対してほぼ直角に端面が形成されている。
【0026】
次にこの実施形態のハンダ付け構造38の作り方について説明する。まず、トランスコイル44のリード46の各先端部40a,41a,42a,43aが各々ランダムに位置するように各コイル材40,41,42,43を重ねる。そして、電極16の表面16aにリード46が接する位置に重ね、リード46に所定温度に昇温されたハンダごてを、コイル材40,42,43の各角部に接触させてハンダ22を溶融させる。溶融したハンダ22は下方に流れ、各コイル材40,41,42,43の先端部40a,41a,42a,43aと、先端部40a付近の電極16を覆って固まる。
【0027】
この実施形態のハンダ付け構造38によれば、リード46の、各コイル材40,41,42,43の先端部40a,41a,42a,43aがリード46の引き出し方向に対して互いに段違いで異なる位置にばらばらに位置し、リード46の先端部分が部分的に切除されたようになり、リード46の体積を小さくすることができる。このため、リード46の熱容量が小さく、ハンダ付けの際に伝わる熱が抑えられ、リード46は熱され易く、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることが可能となり、装置・工具の設備費を抑えることができる。そしてリード46の先端付近は、部分的に細かく切除された状態で部分的に細くなっているが、電気はその部分に流れることはなく、電気が流れる経路を損なわず電気抵抗が大きくなることはない。これにより電気抵抗の増加を招くことなく、かつ熱容量は小さくするという相反する効果を同時に得ることができる。またハンダごてにはコイル材40,42,43等の複数箇所で接触するため、ハンダごての熱が伝わりやすく、ハンダ付けに適した状態となる。
【0028】
なお、この考案の電気部品のハンダ付け構造は、上記各実施形態に限定されるものではなく、トランスコイルのコイル材の数や金属線の本数、形状等、自由に変更可能である。そしてこの考案のハンダ付け構造により取り付ける電気部品は、トランスコイル以外の各種電気部品にも応用することができる。
【0029】
【実施例】
この発明のハンダ付け構造の一実施例について説明する。まず、4数の平角電線をコイル状に巻回したコイル材として、0.3mm厚の銅板を使用して、4層の板状トランスコイルを製造し、リード部を段状として、60Wのハンダごてにより電極16にハンダ付けを行った。この結果、同じコイル部の体積のリードのハンダ付け作業が約10秒であったところ、この実施例では約5秒となり、作業時間が大幅に短縮された。
【0030】
このことから、この考案の電気部品のハンダ付け構造は、ハンダ付け作業の効率を大きく向上させる効果があることがわかった。
【0031】
【考案の効果】
この考案の電気部品のハンダ付け構造は、簡単な構造で電気抵抗の増大を抑えつつ、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることができ、設備費を抑えることができ、熱を供給する時間が短縮され、作業性が向上する。また、電気部品の金属片の形状や種類を問わず、ハンダ付け効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案の第一実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図2】この実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図3】この考案の第二実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図4】この実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図5】この考案の第三実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図6】この実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図7】この考案の第四実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図8】この実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図9】従来の技術の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図10】図9のコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図11】従来の技術の他の電気部品のハンダ付け構造の縦断面図である。
【符号の説明】
10 ハンダ付け構造
11,12 コイル材
11a,12a 先端部
13 板状トランスコイル
14 リード
16 電極
22 ハンダ
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は、電気部品と電極を接続する電気部品のハンダ付け構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気部品を回路基板等の電極に接続するため、種々のハンダ付けが行われている。例えば、電気部品であるトランスのコイル部分のハンダ付けは、図9,図10に示すように、メッキ銅板をプレス加工した板金のコイルや平角電線をコイル状に巻回したエッジワイズコイルの場合、コイル1のリード2を、電極3に平行に重ねて接触させ、この状態でリード2の先端部と電極3を覆うようにハンダ4を設け、機械的及び電気的に接続したハンダ付け構造5を形成していた。
【0003】
ハンダ付け作業は、まずコイル1のリード2をその長手方向に沿って電極3の表面に平行に重ね、所定温度に昇温されたハンダごてをリード2に接触させて加熱しながらハンダ4を溶融させ、リード2と電極3を溶融したハンダ4で覆うようにするものである。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記従来の技術の場合、電気が流れる経路であるコイル1とリード2は、電気抵抗を小さくするためなるべく厚い板金を用いた方が好ましい。しかし、厚い板金を用いて製造されたリード2は、その体積に応じて熱容量が大きくなり、ハンダ付けの際に熱容量の大きな工具や装置、例えば大きなハンダごてやリフロー炉等が必要になる。一方、リード2の熱容量を小さくするためにはリード2を薄く細い形にすればよいが、細く薄形等にすると電気抵抗が大きくなるという相反する問題がある。
【0005】
また、図11に示すハンダ付け構造6のように、リード2が電極3に対して斜めにハンダ付けされているものもある。このハンダ付け構造6によると、リード2が電極3に対して面接触して重ねられていないため、ハンダごての熱がリード2を伝わって電極16に逃げる量が少なく、ハンダ付けに必要な熱容量を抑えることができ、ハンダ付けを容易にしている。しかし、リード2と電極3との接触面積が少なく、その部分での電気抵抗が大きくなるという問題がある。
【0006】
この考案は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、電気抵抗の増大を招くことなく、熱容量の小さい工具や装置でハンダ付けすることができる電気部品のハンダ付け構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この考案は、所定の電極にハンダ付けされる金属片を有したコイル等の電気部品のハンダ付け構造であって、上記金属片のハンダ付けされる部分は複数に分割され、上記分割された金属片の各先端部は、上記電極に近づくにつれて延びた階段状の段差に形成されている電気部品のハンダ付け構造である。
【0008】
またこの発明は、所定の電極にハンダ付けされる金属片を有したコイル等の電気部品のハンダ付け構造であって、上記金属片のハンダ付けされる先端部は鋭角に切断された先端面を有して形成され、上記電極の表面に対して上記金属片は長手方向に平行に接して設けられ、上記先端面が上記電極表面に対して外側に面して設けられている電気部品のハンダ付け構造である。
【0009】
またこの発明は、所定の電極にハンダ付けされる金属片を有したコイル等の電気部品のハンダ付け構造であって、上記金属片のハンダ付けされる先端部は、上記金属片の長手方向に沿って複数に分割され、上記金属片の分割された各先端部は、互いに段違いに位置した電気部品のハンダ付け構造である。
【0010】
上記金属片は、メッキ銅板をプレス加工した板金のコイルまたは平角電線をコイル状に巻回したコイルのリードの先端部である。または、上記金属片は、複数の金属線を束ねたリードの先端部である。
【0011】
この考案の電気部品のハンダ付け構造は、リードの先端が段差等により切り欠かれた状態にし、その分体積を小さくしたものである。このため、ハンダ付けの際に伝わる熱容量が小さく抑えられ、リードは熱され易く、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることが可能であり、またリードがハンダ付けに適した温度に達する時間が短く作業性が向上する。そしてリードは、先端のみが部分的に切り欠かれているだけなので、電気が流れる経路を損なわず電気抵抗が大きくなることはない。
【0012】
【考案の実施の形態】
以下、この考案の実施形態について図面に基づいて説明する。図1,図2はこの考案の第一実施形態を示すもので、この実施形態のハンダ付け構造10は、メッキ銅板をプレス加工した板金のコイルや、平角電線をコイル状に巻回したエッジワイズコイル等の板状トランスコイル13を、図示しない基板等の電極16の表面16aに接続するものである。
【0013】
この板状トランスコイル13は、2枚の同径のコイルを形成するコイル材11,12を積層して作られている。そしてコイル材11,12の両端部は、電極16にハンダ付けされる金属片である一対のリード14とし、各リード14は互いに平行に側方へ延出して設けられている。そしてリード14は、電極16に近づくに従い長くなるように、コイル材11の先端部11aがコイル材12の先端部12aよりも長く形成されている。
【0014】
次にこの実施形態のハンダ付け構造10の製造方法について説明する。まず、板状トランスコイル13のリード14を、コイル材11,12を重ねた状態でコイル材11側が電極16に接触するように、電極16に平行に重ねる。この状態で、コイル材12の先端部12a上方の角部と、コイル材11の先端部11a上方の角部に、所定温度に昇温された図示しないハンダごてを接触させながらハンダ22を溶融させる。溶融したハンダ22は下方に流れ、コイル材11の先端部11aとコイル材12の先端部12a、及びコイル材11の先端部11a付近の電極16を覆う。そして、ハンダごてを離すと、その状態でハンダ22が固まる。
【0015】
この実施形態のハンダ付け構造10によれば、リード14は、コイル材11よりコイル材12が短く形成されて階段状の段差となり、リード14のコイル材12の先端部12aの一部が取り除かれた状態となり、リード14部分の体積が小さいため熱容量が小さく、ハンダ付けの際に逃げる熱量が抑えられる。このため、リード14は熱され易く、熱容量の小さい工具や装置でハンダ付けすることが可能であり、工具や装置の設備費を抑えることができる。また、熱容量が小さいことから、リード14がハンダ付けに適した温度に達する時間が短く、作業性が向上する。そして、電気抵抗を小さく抑えるためにリード14が厚いコイル材で形成された場合でも、熱容量の小さい工具やその他ハンダ付け設備で対応することができる。またこのハンダ付け構造10は、リード14が階段状の段差となり、リード14の先端上方付近の断面積が小さくなっているが、電気はその部分に流れず、コイル材11の先端部11aが電極16に接した部分を流れるので、電気が流れる経路を損なわず電気抵抗が大きくなることはない。これにより電気抵抗の増加を招くことなく、かつ熱容量を小さくするという相反する効果を同時に得ることができる。また、コイル材11の先端部11aとコイル材12の先端部12aは階段状の段差に設けられているため、ハンダごてによるハンダ付けの際に、ハンダごてに同時にその角部が接触することができ、接触面積が多くハンダごての熱が伝わりやすくなる。この点からもリード14がハンダ付けに適した温度に達する時間が短く、ハンダ付け効率や作業性を向上させることができる利点がある。
【0016】
次にこの考案の第二実施形態について図3、図4に基づいて説明する。ここで、上記実施の形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のハンダ付け構造24は、断面がほぼ円形である金属線で作られたトランスコイル26を電極16の表面16aに接続するものである。
【0017】
トランスコイル26は、金属線を所定形状に湾曲させて作られ、金属線の両端部は、電極16にハンダ付けされるリード28とし、リード28は互いに平行に側方へ延出して設けられている。リード28の先端面28aは、リード28の引き出し方向に対して直角以外の角度、例えばリード28の引き出し方向に対して20°〜70°程度で交差するように切断され、楕円形に設けられている。そして、各リード28に設けられた先端面28aは、互いにほぼ平行に設けられている。
【0018】
次にこの実施形態のハンダ付け構造24の製造方法について説明する。まず、トランスコイル26のリード28を、リード28の先端面28aが電極16の表面16aに対して対向しないように外向きに配置し、且つ先端面28aが表面16aに対して鋭角に交差するように重ねる。この状態で、リード28に所定温度に昇温されたハンダごてを接触させながらハンダ22を溶融させる。溶融したハンダ22は下方に流れ、リード28の先端面28aと、先端面28a付近の電極16を覆って固まる。
【0019】
この実施形態のハンダ付け構造24によれば、リード28の先端面28aが電極16に対して上方を向いた鋭角に設けられ、リード28の外側角部が斜めに切り欠かれたようになり、リード28のハンダ付け部分の体積が小さい。このため、リード28の熱容量が小さく、ハンダ付けの際に逃げてしまう熱が少なく抑えられ、リード28は熱され易く、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることが可能であり、装置・工具の設備費が抑えられる。そして、電気抵抗を小さく抑えるためにリード28を太い金属線で設けられた場合でも、熱容量の小さい工具・設備で対応することができる。さらに、リード28の先端上方付近が切り欠かれて細くなっているが、電気はその部分に流れることはなく、電気抵抗が大きくなることはない。これにより電気抵抗の増加を招くことなく、かつ熱容量を小さくするという相反する効果を同時に得ることができる。
【0020】
次にこの考案の第三実施形態について図5、図6に基づいて説明する。ここで、上記実施の形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のハンダ付け構造30は、複数の金属線32を互いに長手方向に束ねて作られたトランスコイル34を、電極16の表面16aに接続するものである。
【0021】
トランスコイル34は、束ねられた金属線を所定形状に湾曲させて作られ、金属線の両端部は電極16にハンダ付けされるリード36とし、リード36は互いに平行に側方へ延出して設けられている。リード36の、各金属線32の先端部32aは、リード36の引き出し方向に沿って互いに段違いで異なる位置で、ばらばらに位置している。
【0022】
次にこの実施形態のハンダ付け構造30の作り方について説明する。まず、トランスコイル34のリード36の各金属線32の先端部32aが、ランダムに各々段違いになるように形成する。そして、リード36の金属線32の側面が電極16の表面16aに接する位置に重ねる。この状態で、リード36に所定温度に昇温されたハンダごてを接触させながらハンダ22を溶融させる。溶融したハンダ22は下方に流れ、リード部36の、各金属線32先端部32aと、先端部32a付近の電極16を覆って固まる。
【0023】
この実施形態のハンダ付け構造30によれば、リード36の、各金属線32先端部32aが互いに段違いに設けられているため、リード36の先端部分が細かく部分的に切除された状態となり、リード36の体積を抑えることができる。このため、リード36の熱容量が小さく、ハンダ付けの際に伝わる熱が抑えられ、リード36は熱され易く、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることが可能であり、装置・工具の設備費を抑えることができる。そしてリード36の先端付近は、部分的に細かく切除された状態になっているが、電気はその部分に流れることはなく、電気が流れる経路を損なわず電気抵抗が大きくなることはない。
これにより電気抵抗の増加を招くことなく、かつ熱容量を小さくするという相反する効果を同時に得ることができる。
【0024】
次にこの考案の第四実施形態について図7、図8に基づいて説明する。ここで、上記の実施の形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のハンダ付け構造38は、メッキ銅板をプレス加工した板金のコイルや平角電線をコイル状に巻回したエッジワイズコイル等を形成する4数のコイル材40,41,42,43を積層して作られた板状トランスコイル44を、電極16に接続するものである。
【0025】
板状トランスコイル44は、コイル材40,41,42,43の両端部が、電極16にハンダ付けされるリード46として形成され、リード46は互いに平行に側方へ延出して設けられている。コイル材40,41,42,43の両端部の長さは、各々不均一であり、コイル材40,41,42,43の先端部40a,41a,42a,43aは、リード46の引き出し方向に対して互いに段違いで異なる位置にある。各先端部40a,41a,42a,43aは、リード46の引き出し方向に対してほぼ直角に端面が形成されている。
【0026】
次にこの実施形態のハンダ付け構造38の作り方について説明する。まず、トランスコイル44のリード46の各先端部40a,41a,42a,43aが各々ランダムに位置するように各コイル材40,41,42,43を重ねる。そして、電極16の表面16aにリード46が接する位置に重ね、リード46に所定温度に昇温されたハンダごてを、コイル材40,42,43の各角部に接触させてハンダ22を溶融させる。溶融したハンダ22は下方に流れ、各コイル材40,41,42,43の先端部40a,41a,42a,43aと、先端部40a付近の電極16を覆って固まる。
【0027】
この実施形態のハンダ付け構造38によれば、リード46の、各コイル材40,41,42,43の先端部40a,41a,42a,43aがリード46の引き出し方向に対して互いに段違いで異なる位置にばらばらに位置し、リード46の先端部分が部分的に切除されたようになり、リード46の体積を小さくすることができる。このため、リード46の熱容量が小さく、ハンダ付けの際に伝わる熱が抑えられ、リード46は熱され易く、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることが可能となり、装置・工具の設備費を抑えることができる。そしてリード46の先端付近は、部分的に細かく切除された状態で部分的に細くなっているが、電気はその部分に流れることはなく、電気が流れる経路を損なわず電気抵抗が大きくなることはない。これにより電気抵抗の増加を招くことなく、かつ熱容量は小さくするという相反する効果を同時に得ることができる。またハンダごてにはコイル材40,42,43等の複数箇所で接触するため、ハンダごての熱が伝わりやすく、ハンダ付けに適した状態となる。
【0028】
なお、この考案の電気部品のハンダ付け構造は、上記各実施形態に限定されるものではなく、トランスコイルのコイル材の数や金属線の本数、形状等、自由に変更可能である。そしてこの考案のハンダ付け構造により取り付ける電気部品は、トランスコイル以外の各種電気部品にも応用することができる。
【0029】
【実施例】
この発明のハンダ付け構造の一実施例について説明する。まず、4数の平角電線をコイル状に巻回したコイル材として、0.3mm厚の銅板を使用して、4層の板状トランスコイルを製造し、リード部を段状として、60Wのハンダごてにより電極16にハンダ付けを行った。この結果、同じコイル部の体積のリードのハンダ付け作業が約10秒であったところ、この実施例では約5秒となり、作業時間が大幅に短縮された。
【0030】
このことから、この考案の電気部品のハンダ付け構造は、ハンダ付け作業の効率を大きく向上させる効果があることがわかった。
【0031】
【考案の効果】
この考案の電気部品のハンダ付け構造は、簡単な構造で電気抵抗の増大を抑えつつ、熱容量の小さい工具・設備でハンダ付けすることができ、設備費を抑えることができ、熱を供給する時間が短縮され、作業性が向上する。また、電気部品の金属片の形状や種類を問わず、ハンダ付け効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案の第一実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図2】この実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図3】この考案の第二実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図4】この実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図5】この考案の第三実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図6】この実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図7】この考案の第四実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図8】この実施形態の電気部品であるコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図9】従来の技術の電気部品であるコイルのハンダ付け構造を示す斜視図である。
【図10】図9のコイルのハンダ付け構造の縦断面図である。
【図11】従来の技術の他の電気部品のハンダ付け構造の縦断面図である。
【符号の説明】
10 ハンダ付け構造
11,12 コイル材
11a,12a 先端部
13 板状トランスコイル
14 リード
16 電極
22 ハンダ
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 所定の電極にハンダ付けされる金属片を有した電気部品のハンダ付け構造において、上記金属片のハンダ付けされる部分は複数に分割され、上記分割された金属片の各先端部は、上記電極に近づくにつれて延びた階段状の段差に形成されていることを特徴とする電気部品のハンダ付け構造。
【請求項2】 所定の電極にハンダ付けされる金属片を有した電気部品のハンダ付け構造において、上記金属片のハンダ付けされる先端部は鋭角に切断された先端面を有して形成され、上記電極の表面に対して上記金属片は長手方向に平行に接して設けられ、上記先端面が上記電極表面に対して外側に面して設けられていることを特徴とする電気部品のハンダ付け構造。
【請求項3】 所定の電極にハンダ付けされる金属片を有した電気部品のハンダ付け構造において、上記金属片のハンダ付けされる先端部は、上記金属片の長手方向に沿って複数に分割され、上記金属片の分割された各先端部は、互いに段違いに位置したことを特徴とする電気部品のハンダ付け構造。
【請求項4】 上記金属片は、トランスコイルのリードの先端部であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気部品のハンダ付け構造。
【請求項5】 上記金属片は、プレス加工した板金のコイルまたは平角電線をコイル状に巻回したコイルのリードの先端部であることを特徴とする請求項4記載の電気部品のハンダ付け構造。
【請求項6】 上記金属片は、複数の金属線を束ねたリードの先端部であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気部品のハンダ付け構造。
【請求項1】 所定の電極にハンダ付けされる金属片を有した電気部品のハンダ付け構造において、上記金属片のハンダ付けされる部分は複数に分割され、上記分割された金属片の各先端部は、上記電極に近づくにつれて延びた階段状の段差に形成されていることを特徴とする電気部品のハンダ付け構造。
【請求項2】 所定の電極にハンダ付けされる金属片を有した電気部品のハンダ付け構造において、上記金属片のハンダ付けされる先端部は鋭角に切断された先端面を有して形成され、上記電極の表面に対して上記金属片は長手方向に平行に接して設けられ、上記先端面が上記電極表面に対して外側に面して設けられていることを特徴とする電気部品のハンダ付け構造。
【請求項3】 所定の電極にハンダ付けされる金属片を有した電気部品のハンダ付け構造において、上記金属片のハンダ付けされる先端部は、上記金属片の長手方向に沿って複数に分割され、上記金属片の分割された各先端部は、互いに段違いに位置したことを特徴とする電気部品のハンダ付け構造。
【請求項4】 上記金属片は、トランスコイルのリードの先端部であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気部品のハンダ付け構造。
【請求項5】 上記金属片は、プレス加工した板金のコイルまたは平角電線をコイル状に巻回したコイルのリードの先端部であることを特徴とする請求項4記載の電気部品のハンダ付け構造。
【請求項6】 上記金属片は、複数の金属線を束ねたリードの先端部であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気部品のハンダ付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図10】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図10】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【登録番号】実用新案登録第3089873号(U3089873)
【登録日】平成14年8月28日(2002.8.28)
【発行日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【考案の名称】電気部品のハンダ付け構造
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2002−2693(U2002−2693)
【出願日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【登録日】平成14年8月28日(2002.8.28)
【発行日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【考案の名称】電気部品のハンダ付け構造
【国際特許分類】
【出願番号】実願2002−2693(U2002−2693)
【出願日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
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