電気駆動車両
【課題】駆動輪のスリップが発生する場合に、駆動輪を駆動する電動機のトルクが低減され過ぎるのを防止すると共に、必要なトルクの大小に関わらず駆動輪のスリップを解消できる電気駆動車両を提供すること。
【解決手段】電動機1,4と、電動機により駆動される駆動輪3,6と、駆動輪にスリップが発生するときに電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御器22とを備えた電気駆動車両において、
駆動輪3,6にスリップが発生している場合において、電動機制御器が電動機のトルクの大きさを低減させるときのトルクの大きさにはトルク指令制限値LPn,LNnが設定されており、当該制限値の大きさは、駆動輪に発生するスリップの継続時間に応じて段階的に小さくされる。
【解決手段】電動機1,4と、電動機により駆動される駆動輪3,6と、駆動輪にスリップが発生するときに電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御器22とを備えた電気駆動車両において、
駆動輪3,6にスリップが発生している場合において、電動機制御器が電動機のトルクの大きさを低減させるときのトルクの大きさにはトルク指令制限値LPn,LNnが設定されており、当該制限値の大きさは、駆動輪に発生するスリップの継続時間に応じて段階的に小さくされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機によって駆動輪が駆動されることで走行する電気駆動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結路、圧雪路等の滑りやすい路面を走行中の車両において、運転者がアクセルを踏み込んで車両を加速させようとすると、駆動輪の車輪速度が急増し、駆動輪が空転する現象が発生する場合がある。また、逆に運転者がブレーキを踏み込んで車両を減速させようとすると、駆動輪の車輪速度が急減し、駆動輪がロックする現象が発生する場合がある。以下では、これらの現象をまとめてスリップと称する。このような駆動輪のスリップが発生すると、車両の挙動は不安定になり、またステアリング操作も効かず安定走行が困難になる。そこで、このような駆動輪のスリップを抑制することが重要である。
【0003】
電動機によって駆動輪が駆動されることで走行する電気駆動車両においてスリップを抑制する制御(スリップ抑制制御)としては、駆動輪のスリップが発生している場合は駆動輪を駆動する電動機のトルクを低減してスリップを抑制し、スリップが解消したら低減していた当該電動機のトルクを回復する方式がある。例えば、特開平2−299402号公報には、そのようなスリップ抑制方式を行う車両が記載されている。
【0004】
しかし、このように電動機のトルクを低減・回復させることでスリップの抑制を図ると、電動機のトルクを低減し過ぎる可能性がある。これは、電動機のトルクを低減しても、実際に駆動輪のスリップが解消されるまでにある程度時間を要するためで、その間に電動機のトルクが低減され過ぎてしまうからである。その結果、電動機の出力する平均的なトルクの大きさが小さくなり、車両の加速時には加速性能が低下し、又は減速時には減速性能が低下するおそれがある。また、電動機のトルクの変動が大きくなることで、車両のピッチング振動を誘発するおそれもある。
【0005】
この点を鑑みた技術としては、駆動輪のスリップが発生した場合に低減する電動機のトルクに制限値を設けたものがある。例えば、特開2002−27610号公報には、スリップ発生時に電動機のトルクを10〜20%に低減するスリップ抑制制御を行う車両が記載されている。このように、制限値を設けると、電動機のトルクが低減し過ぎるおそれは低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−299402号公報
【特許文献2】特開2002−27610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特開2002−27610号公報に記載のように、電動機のトルクに制限値を設けると、非常に滑りやすい路面を車両が走行する場合に駆動輪のスリップを抑制することが困難になるおそれがある。これは非常に滑りやすい路面では電動機のトルクを十分小さくしないと駆動輪のスリップを抑制できないが、トルクの制限値によって電動機のトルクが低減されるのが抑制される為である。
【0008】
本発明の目的は、駆動輪のスリップが発生する場合に、駆動輪を駆動する電動機のトルクが低減され過ぎるのを防止すると共に、必要なトルクの大小に関わらず駆動輪のスリップを解消できる電気駆動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、前記駆動輪にスリップが発生している場合において、前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減させるときの当該トルクの大きさには制限値が設定されており、当該制限値の大きさは、前記駆動輪に発生するスリップの継続時間に応じて段階的に小さくされるものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動輪に発生するスリップを解消するときに電動機のトルクが低減され過ぎることが防止され、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下が抑制される。また、滑りやすい路面を走行する時にも電動機のトルクを十分低減でき、駆動輪に発生するスリップを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るスリップ判定器18の構成図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るトルク補正判定器30の構成図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るスリップ率演算器31の構成図。
【図5】スリップ率と車輪−路面間の摩擦係数との関係を示す図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るトルク制限演算器23が実行するOFF指令処理のフローチャート。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るトルク制限演算器23が実行するON指令処理のフローチャート。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るトルク指令演算器17が実行するON指令処理のフローチャート。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るトルク指令演算器17が実行するOFF指令処理のフローチャート。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の加速中における動作を示すタイミングチャート。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の減速中における動作を示すタイミングチャート。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る電気駆動車両における積載量とトルク指令制限値LPn,LNnの関係を示す図。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る電気駆動車両における積載量とトルク指令制限値LPn,LNnの関係を示す図。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図である。この図に示す電気駆動車両は、駆動輪3及び駆動輪6と、従動輪7及び従動輪8と、ギヤ2を介して駆動輪3を駆動する電動機1と、ギア5を介して駆動輪6を駆動する電動機4を備えている。
【0014】
本実施の形態における電動機1及び電動機4としては誘導電動機が用いられている。なお、電動機1,4として、同期電動機を用いることもできる。電動機1及び電動機4は、電動機制御器(電動機制御手段)22によって制御される。
【0015】
電動機制御器22は、スリップ判定器18と、トルク制限演算器23と、トルク指令演算器17と、トルク制御器16と、電力変換器13を備えている。電動機制御器22によって制御される電動機1,4がギア2,5を介して駆動輪3,6を駆動することで車両は前進または後進する。
【0016】
また、図1に示す電気駆動車両は、速度検出器9及び10と、速度検出器11及び12を備えている。速度検出器9は、電動機1に接続されており、電動機1の回転速度を検出する。速度検出器10は、電動機4に接続されており、電動機4の回転速度を検出する。速度検出器11は、従動輪7の軸に接続されており、従動輪7の回転速度を検出する。速度検出器12は、従動輪8の軸に接続されており、従動輪8の回転速度を検出する。速度検出器9,10,11,12はスリップ判定器18に接続されており、それらの検出速度はスリップ判定器18に出力されている。また、速度検出器9,10は、トルク制御器16に接続されており、検出速度をトルク制御器16に出力している。当該検出速度はこのようにトルク制御器16にフィードバックされトルク制御器16における電動機1,4のトルク制御に利用される。
【0017】
スリップ判定器18は、速度検出器9、速度検出器10、速度検出器11及び速度検出器12が出力する回転速度検出値を入力して、駆動輪3及び駆動輪6にスリップが発生しているかどうかを判定する処理を実行する部分である。スリップ判定器18は、スリップの発生を検出すると(スリップの判定方法については後に図を用いて詳述する。)、トルク補正指令を出力する。スリップ判定器18は、スリップが発生していると判定した場合には、トルク制限演算器23及びトルク指令演算器17にトルク補正指令として「ON指令」を出力し、スリップが発生していないと判定した場合にはトルク補正指令として「OFF指令」を出力する。
【0018】
トルク制限演算器23は、スリップ判定器18の出力するトルク補正指令を入力として、電動機1及び電動機4へのトルク指令の制限値(トルク指令制限値LPn,NPn)をトルク指令演算器17に出力する。トルク制限演算器23の詳細は図を用いて後述する。
【0019】
トルク指令演算器17には、運転者のアクセル操作に応じたアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度検出器19と、運転者のブレーキ操作に応じたブレーキペダルの開度を検出するブレーキ開度検出器20と、運転者のステアリング操作に応じたステアリングの角度を検出するステアリング角度検出器21が接続されている。
【0020】
トルク指令演算器17は、アクセル開度検出器19が出力するアクセル開度検出値と、ブレーキ開度検出器20が出力するブレーキ開度検出値と、ステアリング角度検出器21が出力するステアリング角度検出値と、スリップ判定器18が出力するトルク補正指令(ON指令/OFF指令)と、トルク制限演算器23が出力するトルク指令制限値LPn,NPn(n=1、2、3、…)とを入力値として電動機1及び電動機4へのトルク指令を算出し、その算出したトルク指令をトルク制御器16に出力する。トルク指令演算器17の詳細は図を用いて後述する。なお、以下においては、運転者のアクセルペダル操作、ブレーキペダル操作及びステアリング操作によって決定されるトルク指令であって、トルク指令演算器17においてアクセル開度検出値、ブレーキ開度検出値及びステアリング角度検出値から算出されるものを「トルク指示値」と称することがある。
【0021】
電流検出器14は、電力変換器13と電動機1の間に接続されており、これらの間に流れる電流を検出するものである。電流検出器14の電流検出値はトルク制御器16に出力されている。また、電流検出器15は、電力変換器13と電動機4の間に接続されており、これらの間に流れる電流を検出するものである。電流検出器15の電流検出値はトルク制御器16に出力されている。
【0022】
トルク制御器16は、トルク指令演算器17が出力する電動機1へのトルク指令と、電流検出器14の出力する電流検出値と、速度検出器9の出力する回転速度検出値とに基づいて、電動機1の出力するトルクが電動機1へのトルク指令に従うように、パルス幅変調制御(PWM制御)により電力変換器13へのゲートパルス信号を出力する。また、トルク制御器16は、トルク指令演算器17が出力する電動機4へのトルク指令と、電流検出器15が出力する電流検出値と、速度検出器10が出力する回転速度検出値とに基づいて、電動機4の出力するトルクが電動機4へのトルク指令に従うように、PWM制御により電力変換器13へのゲートパルス信号を出力する。
【0023】
電力変換器13はトルク制御器16からのゲートパルス信号を受け、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のスイッチング素子が高速にスイッチングを行うことで、電動機1,4に対する高応答なトルク制御を実現する。
【0024】
次にスリップ判定器18の詳細な構成について説明する。図2は本発明の第1の実施の形態に係るスリップ判定器18の構成図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。図2に示すスリップ判定器18は、駆動輪3,6及び従動輪7,8の車輪速度から駆動輪3,6のスリップ率λを演算する演算手段として、左駆動輪車輪速度演算器24と、右駆動輪車輪速度演算器25と、左従動輪車輪速度演算器26と、右従動輪車輪速度演算器27と、駆動輪車輪速度演算器28と、従動輪車輪速度演算器29と、トルク補正判定器30とを備えている。
【0025】
左駆動輪車輪速度演算器24は、速度検出器9の出力する電動機1の回転速度検出値を入力として、駆動輪3の車輪速度検出値を出力する。右駆動輪車輪速度演算器25は、速度検出器10の出力する電動機4の回転速度検出値を入力として、駆動輪6の車輪速度検出値を出力する。
【0026】
左従動輪車輪速度演算器26は、速度検出器11の出力する従動輪7の回転速度検出値を入力として、従動輪7の車輪速度検出値を出力する。右従動輪車輪速度演算器27は、速度検出器12の出力する従動輪8の回転速度検出値を入力として、従動輪8の車輪速度検出値を出力する。
【0027】
駆動輪車輪速度演算器28は、左駆動輪車輪速度演算器24の出力する駆動輪3の車輪速度検出値と、右駆動輪車輪速度演算器25の出力する駆動輪6の車輪速度検出値を入力として、それらの平均値を駆動輪車輪速度検出値として出力する。従動輪車輪速度演算器29は、左従動輪車輪速度演算器26の出力する従動輪7の車輪速度検出値と、右従動輪車輪速度演算器27の出力する従動輪8の車輪速度検出値を入力として、それらの平均値を従動輪車輪速度検出値として出力する。
【0028】
図3は本発明の第1の実施の形態に係るトルク補正判定器30の構成図である。この図に示すようにトルク補正判定器30は、スリップ率演算器31と、判定器32を備えている。
【0029】
スリップ率演算器31は、駆動輪車輪速度演算器28の出力する駆動輪車輪速度検出値と従動輪車輪速度演算器29の出力する従動輪車輪速度検出値を入力としてスリップ率λを算出する処理を実行する部分である。
【0030】
図4は本発明の第1の実施の形態に係るスリップ率演算器31の構成図である。この図に示すように、スリップ率演算器31は、減算器33と、絶対値演算器34、35と、最大値選択器36と、除算器37とを備えている。
【0031】
減算器33は、駆動輪車輪速度検出値と従動輪車輪速度検出値を入力として、それらの差を出力する。絶対値演算器34は、従動輪車輪速度検出値を入力として、その絶対値を出力する。絶対値演算器35は、駆動輪車輪速度検出値を入力として、その絶対値を出力する。最大値選択器36は、絶対値演算器34の出力と絶対値演算器35の出力を入力とし、値の大きい方を出力する。除算器37は、減算器33の出力を最大値選択器36の出力で割ることで、駆動輪3,6のスリップ率λを出力する。
【0032】
なお、駆動輪3,6のスリップ率λの演算には、駆動輪3,6の対地速度が本来必要であるが、ここではその近似値として従動輪7,8の車輪速度を用いている。また、ここでは、左右の従動輪7,8の平均速度と左右の駆動輪3,6の平均速度を利用してスリップ率λを算出したが、その他の演算方法を利用してスリップ率λを算出しても良い。その他の演算方法としては、例えば、左右の一方における駆動輪3,6と従動輪7,8の車輪速度を用いて算出するものがある。
【0033】
ここで、スリップ率と車輪−路面間の摩擦係数との関係について説明する。図5はスリップ率と車輪−路面間の摩擦係数との関係を示す図である。この図において、スリップ率λが正の領域は車両の加速時のスリップ率を示し、負の領域は車両の減速時のスリップ率を示す。また、摩擦係数が負の領域は車輪−路面間に発生する力が車両の進行方向と逆向きであることを表す。一般に、スリップ率の大きさ(すなわち、スリップ率の絶対値の大きさ)が小さい領域(図5においてスリップ率が零に近い領域)では、その値が増加するにつれて車輪−路面間の摩擦係数の大きさも増加するため、車輪−路面間に作用する力も増加し、スリップが発生しない。すなわち、図5においてスリップが発生しないのは、スリップ率λがλN≦λ≦λPを満たす領域である(スリップ非発生領域)。
【0034】
一方、スリップ非発生領域において車輪−路面間の摩擦係数が最大になると、それ以降はスリップ率が増加するにつれて車輪−路面間の摩擦係数の大きさが当該最大値から減少するため、車輪−路面間に作用する力も減少してスリップが発生する。図5においてスリップが発生するのはスリップ率λがλ>λPあるいはλ<λNを満たす領域である(スリップ発生領域)。したがって、スリップ率λを計算し、その計算したスリップ率λがスリップ発生領域(λN≦λ≦λP)に含まれるか否かを判定することで、スリップが発生するか否かを判定することができる。λPは、例えば、0.1〜0.3に設定し、λNは、例えば、−0.1〜−0.3に設定することがある。
【0035】
判定器32は、スリップ率演算器31で算出されたスリップ率値λを入力として、電動機1及び電動機4の出力するトルクを補正するか否かを判定して、その判定結果に基づいてトルク補正指令(ON指令/OFF指令指令)を出力する部分である。具体的には、判定器32は、スリップ率演算器31の出力するスリップ率λが予め定めた設定値λPを上回る場合又は予め定めた設定値λNを下回る場合には、スリップが発生していると判定し、トルク補正指令としてON指令を出力する。一方、それ以外の場合には、スリップが発生していないと判定し、OFF指令を出力する。
【0036】
トルク補正判定器30がトルク補正指令としてON指令を出力すると、トルク指令演算器17は出力するトルク指令を低減するので、駆動輪3,6のスリップが抑制されて駆動輪3,6のスリップ率λはλN≦λ≦λPを満たすようにすることができる。なお、λP及びλNは、駆動輪3,6と路面の間の摩擦係数が最大になるようなスリップ率に設定するのが良い。このようにすることで、駆動輪3,6がスリップしない限界まで駆動輪3,6を有効活用することができる。
【0037】
次にトルク制限演算器23が実行する処理の詳細について説明する。図6は本発明の第1の実施の形態に係るトルク制限演算器23がOFF指令が入力されたときに実行する処理(OFF指令処理)のフローチャートである。この図に示すように、トルク制限演算器23は、スリップ判定器18からOFF指令が入力されると、ON指令が入力されるまでの間、トルク指令制限値として初期値LP1,LN1を出力する(S601,602)。そして、ON指令が入力されたら、図7に示すON指令処理を実行する。
【0038】
ここで、トルク制限演算器23が出力するトルク指令制限値には、車両加速時に利用する正の制限値LPnと、車両減速時に利用する負の制限値LNnとがある(n=1、2、3、…)(図10,11参照)。また、各トルク指令制限値LPn,LNnは、添字のnの数が大きくなるしたがって段階的に大きさ(絶対値)小さくなるように設定されているものとする。すなわち、|LP1|>|LP2|>|LP3|>…>|LPn|が成立し、|LN1|>|LN2|>|LN3|>…>|LNn|が成立する。また、トルク制限演算器23が実行するON指令処理におけるS704(後述)では、時間T[s]が経過するごとに添字の数が1つずつ大きいトルク指令制限値がトルク指令演算器17に出力されるものとする。
【0039】
図7は本発明の第1の実施の形態に係るトルク制限演算器23がON指令が入力されたときに実行する処理(ON指令処理)のフローチャートである。この図に示すように、トルク制限演算器23は、スリップ判定器18からON指令が入力されると、タイマーを起動してON指令が入力された時刻からの経過時間[s]の計測を開始する(S701)。そして、OFF指令が入力されるか否かを監視しながら、予め設定しておいた時間T[s]に当該時間が到達するまで時間を計測する(S702,703)。
【0040】
このとき、ON指令が入力されてからの時間がT[s]に到達したら、トルク指令制限値LPn,LNnとして直前に出力していたものより一段階大きさの小さいもの(すなわち、添字の数字の大きさが1つ大きいトルク指令制限値)をトルク指令演算器17に出力する(例えば、直前に初期値LP1,LN1を出力していた場合には、LP2,LN2を出力する。)(S704)。トルク指令演算器17へのトルク指令制限値LPn,LNnの出力が完了したら、計測時間をリセットして(S705)S702戻り、以後の処理を繰り返す。一方、ON指令が入力された時刻又はS705からの経過時間を計測している間に、スリップ判定器18からOFF指令が入力された場合には、ON指令処理を終了して図6のOFF指令処理を実行する。
【0041】
このように、本実施の形態においてトルク制限演算器23から出力されるトルク指令制限値LPn,LNnの大きさは、駆動輪3,6に発生するスリップの継続時間に応じて段階的に小さくなるように設定されている。具体的には、当該制限値LPn,LNnの大きさは、駆動輪3,6のスリップの継続時間の増加に合わせて、時間T[s]が経過するごとに段階的に小さくなるように設定されている。
【0042】
なお、本実施の形態では、ON指令の入力時刻から時間計測を開始し、当該入力時刻からの時間を基準にして時間T[s]経過ごとにトルク指令制限値LPn,LNnを変更する構成とした。しかし、トルク指令制限値LPn,LNnを変更する条件となる時間T[s]は、それぞれ異なる時間としても良い。また、トルク指令演算器17が出力するトルク指令がトルク指令制限値LPn,LNnに一致した時刻をトルク指令演算器17からフィードバックすることで当該時刻から時間計測を開始し、さらに、当該計測開始時刻からの時間が所定の時間(例えば、図10及び図11における時間Ta,Tb[s])に到達するごとにトルク指令制限値LPn,LNnを変更する構成としても良い。
【0043】
次にトルク指令演算器17が実行する処理の詳細について説明する。図8は本発明の第1の実施の形態に係るトルク指令演算器17がON指令が入力されたときに実行する処理(ON指令処理)のフローチャートである。
【0044】
この図に示すように、トルク指令演算器17は、スリップ判定器18からON指令が入力されると、トルク制御器16に出力しているトルク指令を直前の値(例えば、直前に駆動輪3,6のスリップが発生していない場合にはトルク指示値となる)から低減する補正を開始する(S801)。そして、トルク指令演算器17は、OFF指令が入力されたか否かをチェックしながら(S802)、予め定められた基準に従って、時間経過とともに徐々にトルク指令を小さくする補正を行う(S801,802,803)。その際、補正後のトルク指令が、トルク制限演算器23から入力されるトルク指令制限値LPn,LNnに到達した場合には(S803)、当該制限値LPn,LNnにトルク指令を保持する(S804)。S804においてトルク指令をトルク指令制限値LPn,LNnに保持する補正を開始したら、OFF指令が入力されるか否かをチェックしながら(S805)、トルク指令制限値LPn,LNnが更新されるまで待機する(S804,805,806)。そして、S806において、トルク指令制限値LPn,LNnの更新が確認されたら、S801に戻って、以後の処理を繰り返す。また、上記の処理におけるS802,805においてOFF指令が入力されたことが確認できたら、ON指令処理を終了して図9に示すOFF指令処理を実行する。
【0045】
このように本実施の形態に係るトルク指令演算器17は、ON指令が入力されているときには、トルク制限演算器23によるトルク指令制限値LPn,LNnの更新の有無に配慮しながら、当該制限値LPn,LNnに到達するまでトルク指令を低減する補正を行う。これにより駆動輪3,6に発生するスリップを防止する動作が行われる。
【0046】
なお、本実施の形態におけるトルク指令演算器17は、トルク指令がトルク指令制限値LPn,LNnと一致している場合(S804→S805→S806→S804→…)を除いて、予め定められた基準に基づいてトルク指令を低減している(具体的には、トルクの時間変化率が一定になるようにトルク指令を低減しており、図10,11(後述)に示すようにトルク指令は直線状に低減している。)。このように予め定めた基準に基づいてトルク指令を低減させると、トルク指令制限値LPn,LNnまでトルク指令を低減させるために必要な時間が算出できる。そして、当該時間よりも大きい値にT[s]を設定すれば、トルク指令とトルク指令制限値LPn,LNnが一致する時間が必ず発生することになるので、スリップ制御に伴うトルクの過剰低減を防止することができる。
【0047】
図9は本発明の第1の実施の形態に係るトルク指令演算器17がOFF指令が入力されたときに実行する処理(OFF指令処理)のフローチャートである。
【0048】
この図に示すように、トルク指令演算器17は、スリップ判定器18からOFF指令が入力されると、まず、トルク指令がトルク指示値に一致しているか否かを判定する(S901)。S901において、トルク指令の大きさ(絶対値)がトルク指示値の大きさ未満である場合には、トルク指令を回復する(大きくする)補正を行う(S902)。その際、トルク指令演算器17は、ON指令が入力されたか否かをチェックしながら(S903)、予め定められた基準に従って、トルク指示値に到達するまで時間経過とともに徐々にトルク指令を回復する(S901,902,903)。
【0049】
S901においてトルク指令がトルク指示値と一致していると判定された場合と、S904においてトルク指令がトルク指示値に到達したと判定された場合には、ON指令が入力されたか否かをチェックしながら(S906)、トルク指令をトルク指示値に保持する(S905)。また、上記の処理におけるS903,906においてON指令が入力されたことが確認できたら、OFF指令処理を終了して図8に示すON指令処理を実行する。
【0050】
このように本実施の形態に係るトルク指令演算器17は、OFF指令が入力されているときには、アクセルペダルの踏み込み量等で決定されるトルク指示値とトルク指令との大小関係に配慮しながら、当該トルク指示値に到達するまでトルク指令を回復する補正を行う。
【0051】
次に、図10、図11を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両のトルク指令演算器17、スリップ判定器18、トルク制限演算器23の動作について説明する。
【0052】
まず、車両加速中における動作について説明する。トルク指令演算器17は、アクセル開度検出器19を介して入力される運転者のアクセル操作に基づいて、車両加速中であることを判定する。図10は、本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の加速中における動作を示すタイミングチャートである。
【0053】
図10において、横軸は時間を示している。図10(A)の縦軸は、従動輪7,8及び駆動輪3,6の車輪速度を示している。図10(B)の縦軸は、スリップ判定器18の出力するトルク補正指令(ON指令/OFF指令)を示している。図10(C)の縦軸は、トルク指令演算器17の出力するトルク指令及びトルク制限演算器23の出力するトルク指令制限値LPnを示している。
【0054】
スリップ判定器18が従動輪車輪速度及び駆動輪車輪速度から駆動輪3,6のスリップを検出してトルク補正指令としてON指令を出力すると、トルク指令演算器17はトルク制限演算器23の出力するトルク指令制限値LPnを下限値としてトルク指令の大きさを低減する。一方、スリップ判定器18がトルク補正指令としてOFF指令を出力すると、トルク指令演算器17は元のトルク指令(すなわち、トルク指示値)に向かってトルク指令を回復する動作を行う。
【0055】
トルク制限演算器23は、最初はトルク指令制限値としてLP1を出力するが、トルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLP1より大きさが小さいLP2を出力する。この後、さらにトルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLP2より大きさが小さいLP3を出力する。この後、さらにトルク補正指令としてON指令が出力される状態が継続する場合は同様の動作を繰り返し、例えば、トルク指令制限値としてLPn−1を出力している状態で、トルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLPn−1より大きさが小さいLPnを出力する。このように、トルク指令制限値は最大でn−1段階変化する。また、トルク指令演算器17はトルク補正指令としてOFF指令が出力されると、トルク指令制限値としてLP1を出力する(すなわち、初期値に戻す)。なお、車両の加速状態を保持するためにLP1〜LPnは零以上の値とする。
【0056】
したがって、図10(C)に示すように、駆動輪3,6のスリップを検出してトルク指令の大きさを低減する場合は、トルク指令はトルク指令制限値LPnを下回らないように制限されるので、電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを低減し過ぎることが無くなる。
【0057】
また、非常に滑りやすい路面を走行する場合は電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを十分低減しないと駆動輪3,6のスリップが解消されない。しかし、駆動輪3,6のスリップが解消されるまでは、トルク指令制限値LPnの大きさは段階的に低減され、それに伴いトルク指令の大きさも低減されるので、走行している路面状態に応じて適切な値まで電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを低減することができる。
【0058】
次に、車両減速中における動作について説明する。トルク指令演算器17は、ブレーキ開度検出器20を介して入力される運転者のブレーキ操作に基づいて、車両減速中であることを判定する。図11は、本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の減速中における動作を示すタイミングチャートである。
【0059】
図11において、横軸は時間を示している。図11(A)の縦軸は、従動輪7,8及び駆動輪3,6の車輪速度を示している。図11(B)の縦軸は、スリップ判定器18の出力するトルク補正指令(ON指令/OFF指令)を示している。図11(C)の縦軸は、トルク指令演算器17の出力するトルク指令及びトルク制限演算器23の出力するトルク指令制限値LNnを示している。
【0060】
スリップ判定器18が従動輪車輪速度及び駆動輪車輪速度から駆動輪3,6のスリップを検出してトルク補正指令としてON指令を出力すると、トルク指令演算器17はトルク制限演算器23の出力するトルク指令制限値LNnを上限値としてトルク指令の大きさを低減する。一方、スリップ判定器18がトルク補正指令としてOFF指令を出力すると、トルク指令演算器17は元のトルク指令(すなわち、トルク指示値)に向かってトルク指令を回復する動作を行う。
【0061】
トルク制限演算器23は、最初はトルク指令制限値としてLN1を出力するが、トルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLN1より大きさが小さいLN2を出力する。この後、さらにトルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLN2より大きさが小さいLN3を出力する。この後、さらにトルク補正指令としてON指令が出力される状態が継続する場合は同様の動作を繰り返し、例えば、トルク指令制限値としてLNn−1を出力している状態で、トルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLNn−1より大きさが小さいLNnを出力する。このように、トルク指令制限値は最大でn−1段階変化する。また、トルク指令演算器17はトルク補正指令としてOFF指令が出力されると、トルク指令制限値としてLN1を出力する。なお、車両の減速状態を保持するためにLN1〜LNnは零以下の値とする。
【0062】
したがって、図11(C)に示すように、駆動輪3,6のスリップを検出してトルク指令の大きさを低減する場合は、トルク指令はトルク指令制限値LNnを上回らないように制限されるので、電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを低減し過ぎることが無くなる。
【0063】
また、非常に滑りやすい路面を走行する場合は電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを十分低減しないと駆動輪3,6のスリップが解消されない。しかし、駆動輪3,6のスリップが解消されるまでは、トルク指令制限値LNnの大きさは段階的に低減され、それに伴いトルク指令の大きさも低減されるので、走行している路面状態に応じて適切な値まで電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを低減することができる。
【0064】
以上のように、本実施の形態によれば、トルク指令の大きさに係るトルク指令制限値LPn,LNnの大きさがスリップ継続時間の増加に伴って段階的に小さく設定されるので、駆動輪3,6のスリップを解消するときに電動機1,4のトルクが低減され過ぎることが防止され、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制することができる。また、スリップの解消にトルクの大きさを十分小さくする必要のある路面(例えば、滑りやすい路面)を走行している場合には、スリップ継続時間の増加に伴って電動機1,4のトルクの大きさを十分低減できるので、必要なトルクの大小に関わらず駆動輪3,6のスリップを確実に解消することができる。
【0065】
なお、上記の実施の形態では、トルク指令制限値LPn,LNnは、それぞれ一定であるものとして説明したが、トルク指令演算器17から出力されるトルク指令がトルク指令制限値LPn,LNnに一致している間に、スリップ抑制制御に影響を与えない範囲内で当該トルク指令制限値を変化させても良い。この種の制御を利用したものとしては、トルク指令がトルク指令制限値に一致した時刻から、当該トルク指令制限値をトルク制限演算器23において徐々に小さくするものや、これとは反対に徐々に大きくするものがある。このようにトルク指令制限値を設定しても、最終的に電動機1,4のトルクが段階的に低減することになるので、上記と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、上記の実施の形態で説明した制御は、トルク指令制限値LPn,LNnの大きさを小さいものに変更するまでの間(図10,11の例では時間T[s])に、電動機1,4のトルク(トルク指令演算器17からのトルク指令)の大きさの時間変化率(図10,11におけるトルク指令の線図の傾き)を、スリップ継続時間の増加に合わせて適宜変更する制御を実行していると解することもできる。すなわち、図10に示した例では、2回目のスリップ発生中におけるトルク指令の大きさの時間変化率は、まず、当該スリップの開始時刻から第1の値に設定され、その後Tc1[s]経過後に第1の値よりも相対的に小さい第2の値(変化率は零)に設定される。このように時間T[s](=Tc1+Tc2[s])の間においてトルク指令の大きさの時間変化率を変更すると、時間変化率を一定にする場合と比較して電動機1,4のトルクが低減するまでの時間を長くできるので、上記と同様の効果を得ることができる。なお、図10に示す例では、Tc3以後も第1の値と第2の値を交互に行き来させているが、「(1)初期値→(2)当該初期値よりも相対的に小なる値→(3)当該相対的に小なる値((2)の値)よりも相対的に大なる値→(4)当該相対的に大なる値((3)の値)よりも相対的に小なる値→…(省略)」というように、時系列順に配列させた複数の値において隣り合う2つの値の関係が大小関係になるように各値を設定すれば、3つ以上の値の間を行き来させても良い。
【0067】
図12は本発明の第2の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図である。第1の実施の形態に係る電気駆動車両と異なる点は、積載量センサ38と、トルク制限演算器39を備えている点にある。
【0068】
積載量センサ(積載量検出手段)38は、電気駆動車両の積載量を検出し、その検出値(積載量検出値)をトルク制限演算器39に出力するためのものである。トルク制限演算器39は、第1の実施の形態におけるトルク制限演算器23が実行する処理に加えて、積載量センサ38から入力される積載量検出値に応じてトルク指令制限値LPn,LNnの大きさを調整する処理を実行するためのものである。図13は本発明の第2の実施の形態に係る電気駆動車両における積載量とトルク指令制限値LPn,LNnの関係を示す図である。この図に示すように、トルク制限演算器39は、車両の積載量の増加に比例してトルク指令制限値LPn,LNnの大きさが大きくなるようにトルク指令制限値LPn,LNnを補正している。
【0069】
例えば、荷台を有するダンプトラックのように積載量が大きく変化する車両では、積載量に応じて駆動輪3,6の滑りやすさが変化する。一般に、積載量が大きくなると駆動輪3,6に発生する摩擦力が大きくなるので駆動輪3,6は滑りにくくなる。したがって、積載量が相対的に大きい場合は積載量が相対的に小さい場合に比べて駆動輪のトルク指令を相対的に大きくすることが好ましい。そこで、本実施の形態では、図13に示すように車両の積載量が大きくなるにつれて、トルク指令制限値LPn,LNnの大きさを大きく設定している。
【0070】
このようにトルク指令制限値LPn,LNnを設定すると、積載量が大きい場合に不必要にトルク指令の大きさが小さくなることが抑制されるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。
【0071】
図14は本発明の第3の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図である。第1の実施の形態に係る電気駆動車両と異なる点は、傾斜センサ40と、トルク制限演算器41を備えている点にある。
【0072】
傾斜センサ(傾斜検出手段)40は、車両が走行している路面の傾斜を検出し、その検出値(傾斜検出値)をトルク制限演算器41に出力するためのものである。トルク制限演算器41は、第1の実施の形態におけるトルク制限演算器23が実行する処理に加えて、傾斜センサ40から入力される傾斜検出値に応じてトルク指令制限値LPn,LNnの大きさを調整する処理を実行するためのものである。図15は本発明の第3の実施の形態に係る電気駆動車両における積載量とトルク指令制限値LPn,LNnの関係を示す図である。この図に示すように、トルク制限演算器41は、車両が走行する路面の傾斜の増加に比例してトルク指令制限値LPn,LNnの大きさが小さくなるようにトルク指令制限値LPn,LNnを補正している。なお、図15において、傾斜が正の場合は上り坂を、傾斜が負の場合は下り坂を表すものとする。
【0073】
例えば、車両が走行している路面の傾斜が変化する場合は、路面の傾斜に応じて駆動輪3,6の滑りやすさが変化する。一般に、路面の傾斜が小さくなると駆動輪3,6に発生する摩擦力が大きくなるので駆動輪3,6は滑りにくくなる。したがって、路面の傾斜が相対的に大きい場合は傾斜が相対的に小さい場合に比べて駆動輪のトルク指令を相対的に小さくすることが好ましい。そこで、本実施の形態では、図15に示すように車両が走行している路面の傾斜の大きさが大きくなるにつれて、トルク指令制限値LPn,LNnの大きさを小さく設定している。
【0074】
このようにトルク指令制限値LPn,LNnを設定すると、路面の傾斜が小さい場合に不必要にトルク指令の大きさが小さくなることが抑制されるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。
【0075】
図16は本発明の第4の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図である。第1の実施の形態に係る電気駆動車両と異なる点は、調節装置42と、トルク制限演算器43を備えている点にある。
【0076】
調節装置42は、人(運転者又はサービスマン等)がトルク指令制限値LPn,LNnを調節するための操作装置である。調節装置42としては、例えば、ダイヤルの回転量によってアナログ式にトルク指令制限値を指示するものや、スイッチを切り換えることでデジタル式にトルク指令制限値を指示するもの等がある。運転者が手動で容易にトルク指令制限値LPn,LNnを調節可能にする観点からは、調節装置42は車両の運転席に設置することが好ましい。
【0077】
トルク制限演算器43は、第1の実施の形態におけるトルク制限演算器23が実行する処理に加えて、調節装置42から入力される指令(調節指令)に基づいてトルク指令制限値LPn,LNnの大きさを調整する処理を実行するためのものである。調節装置42から適宜出力される調節指令の入力を受けたトルク制限演算器43は、当該調節指令に合わせてトルク指令制限値LPn,LNnの大きさを補正する。
【0078】
このように調節装置42を設置すると、車両の走行する路面の状況に合わせて最適なトルク指令制限値LPn,LNnを適宜利用することができるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。また、スリップ発生時のトルク低減の態様を運転者の嗜好に合わせることができるので、運転者の操作フィーリングを向上させることができる。
【0079】
以上の説明では、電気駆動車両の種類については特に触れなかったが、上記発明の適用対象は電動機によって駆動輪が駆動される電気駆動車両であれば良く、一般的な自動車のみに限られるものではない。例えば、ホイールローダやフォークリフト等、走行体として複数の車輪を有するホイール式の建設機械にも適用可能であることは言うまでもない。
【0080】
ここで、上記の各実施の形態の概要について説明する。
【0081】
(1)上記の実施の形態では、電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、前記駆動輪にスリップが発生している場合において、前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減させるときの当該トルクの大きさには制限値が設定されており、当該制限値の大きさは、前記駆動輪に発生するスリップの継続時間の増加に合わせて段階的に小さくされることとした。これにより電動機のトルクの大きさに係る制限値がスリップ継続時間の増加に伴って段階的に小さく設定されるので、駆動輪のスリップを解消するときにトルクが低減され過ぎることが防止され、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制することができる。
【0082】
(2)また、前記制限値の大きさは、前記スリップの継続時間が所定時間に到達するごとに、段階的に小さくしても良い。
【0083】
(3)さらに、前記制限値の大きさは、前記駆動輪のトルクが当該制限値に一致する時間が所定時間に到達するごとに、段階的に小さくしても良い。
【0084】
(4)また、前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減するときの当該トルクの時間変化は、当該トルクが前記制限値と一致している場合を除いて、予め定められているとしても良い。このように予め定めた基準に基づいてトルクを低減させると、制限値までトルクを低減させるために必要な時間が算出できる。そして、当該時間よりも大きい値にT[s]を設定すれば、トルクと制限値が一致する時間が必ず発生することになるので、スリップ制御に伴うトルクの過剰低減を防止することができる
(5)また、前記制限値は、前記車両の加速中は零以上に設定され、前記車両の減速中は零以下に設定すると良い。
【0085】
(6)また、前記制限値の大きさは、前記車両の積載量が大きいほど大きく設定すると良い。このように制限値を設定すると、積載量が大きい場合に不必要にトルクの大きさが小さくなることが抑制されるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。
【0086】
(7)また、前記制限値の大きさは、前記車両が走行している路面の傾斜が大きいほど小さく設定すると良い。このように制限値を設定すると、路面の傾斜が小さい場合に不必要にトルク指令の大きさが小さくなることが抑制されるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。
【0087】
(8)また、前記制限値の大きさを調節するための調節装置をさらに備えても良い。このように調節装置を設置すると、車両の走行する路面の状況に合わせて最適な制限値を適宜利用することができるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。また、スリップ発生時のトルク低減の態様を運転者の嗜好に合わせることができるので、運転者の操作フィーリングを向上させることができる。
【0088】
(9)また、前記調節装置は、前記車両の運転席に設置すると良い。
【0089】
(10)また、上記の実施の形態では、電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、スリップ発生中に前記電動機制御手段によって低減される前記電動機のトルクの大きさの時間変化率は、スリップ開始時から第1の値となり、スリップ開始後から所定時間経過後に当該第1の値よりも相対的に小さい第2の値に変化することとした。このようにトルクの大きさの時間変化率を変更すると、時間変化率を一定にする場合と比較して電動機のトルクが低減するまでの時間を長くできるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…電動機、2…ギア、3…駆動輪、4…電動機、5…ギア、6…駆動輪、7…従動輪、8…従動輪、9…速度センサ、10…速度センサ、11…速度センサ、12…速度センサ、13…電力変換器、14…電流センサ、15…電流センサ、16…トルク制御器、17…トルク指令演算器、18…スリップ判定器、19…アクセル開度検出器、20…ブレーキ開度検出器、21…ステアリング角度検出器、22…電動機制御器、23…トルク制限演算器、24…左駆動輪車輪速度演算器、25…右駆動輪車輪速度演算器、26…左従動輪車輪速度演算器、27…右従動輪車輪速度演算器、28…駆動輪車輪速度演算器、29…従動輪車輪速度演算器、30…トルク補正判定器、31…スリップ率演算器、32…判定器、33…減算器、34…絶対値演算器、35…絶対値演算器、36…最大値選択器、37…除算器、38…積載量センサ、39…トルク制限演算器、40…傾斜センサ、41…トルク制限演算器、42…調節装置、43…トルク制限演算器
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機によって駆動輪が駆動されることで走行する電気駆動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結路、圧雪路等の滑りやすい路面を走行中の車両において、運転者がアクセルを踏み込んで車両を加速させようとすると、駆動輪の車輪速度が急増し、駆動輪が空転する現象が発生する場合がある。また、逆に運転者がブレーキを踏み込んで車両を減速させようとすると、駆動輪の車輪速度が急減し、駆動輪がロックする現象が発生する場合がある。以下では、これらの現象をまとめてスリップと称する。このような駆動輪のスリップが発生すると、車両の挙動は不安定になり、またステアリング操作も効かず安定走行が困難になる。そこで、このような駆動輪のスリップを抑制することが重要である。
【0003】
電動機によって駆動輪が駆動されることで走行する電気駆動車両においてスリップを抑制する制御(スリップ抑制制御)としては、駆動輪のスリップが発生している場合は駆動輪を駆動する電動機のトルクを低減してスリップを抑制し、スリップが解消したら低減していた当該電動機のトルクを回復する方式がある。例えば、特開平2−299402号公報には、そのようなスリップ抑制方式を行う車両が記載されている。
【0004】
しかし、このように電動機のトルクを低減・回復させることでスリップの抑制を図ると、電動機のトルクを低減し過ぎる可能性がある。これは、電動機のトルクを低減しても、実際に駆動輪のスリップが解消されるまでにある程度時間を要するためで、その間に電動機のトルクが低減され過ぎてしまうからである。その結果、電動機の出力する平均的なトルクの大きさが小さくなり、車両の加速時には加速性能が低下し、又は減速時には減速性能が低下するおそれがある。また、電動機のトルクの変動が大きくなることで、車両のピッチング振動を誘発するおそれもある。
【0005】
この点を鑑みた技術としては、駆動輪のスリップが発生した場合に低減する電動機のトルクに制限値を設けたものがある。例えば、特開2002−27610号公報には、スリップ発生時に電動機のトルクを10〜20%に低減するスリップ抑制制御を行う車両が記載されている。このように、制限値を設けると、電動機のトルクが低減し過ぎるおそれは低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−299402号公報
【特許文献2】特開2002−27610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特開2002−27610号公報に記載のように、電動機のトルクに制限値を設けると、非常に滑りやすい路面を車両が走行する場合に駆動輪のスリップを抑制することが困難になるおそれがある。これは非常に滑りやすい路面では電動機のトルクを十分小さくしないと駆動輪のスリップを抑制できないが、トルクの制限値によって電動機のトルクが低減されるのが抑制される為である。
【0008】
本発明の目的は、駆動輪のスリップが発生する場合に、駆動輪を駆動する電動機のトルクが低減され過ぎるのを防止すると共に、必要なトルクの大小に関わらず駆動輪のスリップを解消できる電気駆動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、前記駆動輪にスリップが発生している場合において、前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減させるときの当該トルクの大きさには制限値が設定されており、当該制限値の大きさは、前記駆動輪に発生するスリップの継続時間に応じて段階的に小さくされるものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動輪に発生するスリップを解消するときに電動機のトルクが低減され過ぎることが防止され、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下が抑制される。また、滑りやすい路面を走行する時にも電動機のトルクを十分低減でき、駆動輪に発生するスリップを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るスリップ判定器18の構成図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るトルク補正判定器30の構成図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るスリップ率演算器31の構成図。
【図5】スリップ率と車輪−路面間の摩擦係数との関係を示す図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るトルク制限演算器23が実行するOFF指令処理のフローチャート。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るトルク制限演算器23が実行するON指令処理のフローチャート。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るトルク指令演算器17が実行するON指令処理のフローチャート。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るトルク指令演算器17が実行するOFF指令処理のフローチャート。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の加速中における動作を示すタイミングチャート。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の減速中における動作を示すタイミングチャート。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る電気駆動車両における積載量とトルク指令制限値LPn,LNnの関係を示す図。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る電気駆動車両における積載量とトルク指令制限値LPn,LNnの関係を示す図。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図である。この図に示す電気駆動車両は、駆動輪3及び駆動輪6と、従動輪7及び従動輪8と、ギヤ2を介して駆動輪3を駆動する電動機1と、ギア5を介して駆動輪6を駆動する電動機4を備えている。
【0014】
本実施の形態における電動機1及び電動機4としては誘導電動機が用いられている。なお、電動機1,4として、同期電動機を用いることもできる。電動機1及び電動機4は、電動機制御器(電動機制御手段)22によって制御される。
【0015】
電動機制御器22は、スリップ判定器18と、トルク制限演算器23と、トルク指令演算器17と、トルク制御器16と、電力変換器13を備えている。電動機制御器22によって制御される電動機1,4がギア2,5を介して駆動輪3,6を駆動することで車両は前進または後進する。
【0016】
また、図1に示す電気駆動車両は、速度検出器9及び10と、速度検出器11及び12を備えている。速度検出器9は、電動機1に接続されており、電動機1の回転速度を検出する。速度検出器10は、電動機4に接続されており、電動機4の回転速度を検出する。速度検出器11は、従動輪7の軸に接続されており、従動輪7の回転速度を検出する。速度検出器12は、従動輪8の軸に接続されており、従動輪8の回転速度を検出する。速度検出器9,10,11,12はスリップ判定器18に接続されており、それらの検出速度はスリップ判定器18に出力されている。また、速度検出器9,10は、トルク制御器16に接続されており、検出速度をトルク制御器16に出力している。当該検出速度はこのようにトルク制御器16にフィードバックされトルク制御器16における電動機1,4のトルク制御に利用される。
【0017】
スリップ判定器18は、速度検出器9、速度検出器10、速度検出器11及び速度検出器12が出力する回転速度検出値を入力して、駆動輪3及び駆動輪6にスリップが発生しているかどうかを判定する処理を実行する部分である。スリップ判定器18は、スリップの発生を検出すると(スリップの判定方法については後に図を用いて詳述する。)、トルク補正指令を出力する。スリップ判定器18は、スリップが発生していると判定した場合には、トルク制限演算器23及びトルク指令演算器17にトルク補正指令として「ON指令」を出力し、スリップが発生していないと判定した場合にはトルク補正指令として「OFF指令」を出力する。
【0018】
トルク制限演算器23は、スリップ判定器18の出力するトルク補正指令を入力として、電動機1及び電動機4へのトルク指令の制限値(トルク指令制限値LPn,NPn)をトルク指令演算器17に出力する。トルク制限演算器23の詳細は図を用いて後述する。
【0019】
トルク指令演算器17には、運転者のアクセル操作に応じたアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度検出器19と、運転者のブレーキ操作に応じたブレーキペダルの開度を検出するブレーキ開度検出器20と、運転者のステアリング操作に応じたステアリングの角度を検出するステアリング角度検出器21が接続されている。
【0020】
トルク指令演算器17は、アクセル開度検出器19が出力するアクセル開度検出値と、ブレーキ開度検出器20が出力するブレーキ開度検出値と、ステアリング角度検出器21が出力するステアリング角度検出値と、スリップ判定器18が出力するトルク補正指令(ON指令/OFF指令)と、トルク制限演算器23が出力するトルク指令制限値LPn,NPn(n=1、2、3、…)とを入力値として電動機1及び電動機4へのトルク指令を算出し、その算出したトルク指令をトルク制御器16に出力する。トルク指令演算器17の詳細は図を用いて後述する。なお、以下においては、運転者のアクセルペダル操作、ブレーキペダル操作及びステアリング操作によって決定されるトルク指令であって、トルク指令演算器17においてアクセル開度検出値、ブレーキ開度検出値及びステアリング角度検出値から算出されるものを「トルク指示値」と称することがある。
【0021】
電流検出器14は、電力変換器13と電動機1の間に接続されており、これらの間に流れる電流を検出するものである。電流検出器14の電流検出値はトルク制御器16に出力されている。また、電流検出器15は、電力変換器13と電動機4の間に接続されており、これらの間に流れる電流を検出するものである。電流検出器15の電流検出値はトルク制御器16に出力されている。
【0022】
トルク制御器16は、トルク指令演算器17が出力する電動機1へのトルク指令と、電流検出器14の出力する電流検出値と、速度検出器9の出力する回転速度検出値とに基づいて、電動機1の出力するトルクが電動機1へのトルク指令に従うように、パルス幅変調制御(PWM制御)により電力変換器13へのゲートパルス信号を出力する。また、トルク制御器16は、トルク指令演算器17が出力する電動機4へのトルク指令と、電流検出器15が出力する電流検出値と、速度検出器10が出力する回転速度検出値とに基づいて、電動機4の出力するトルクが電動機4へのトルク指令に従うように、PWM制御により電力変換器13へのゲートパルス信号を出力する。
【0023】
電力変換器13はトルク制御器16からのゲートパルス信号を受け、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のスイッチング素子が高速にスイッチングを行うことで、電動機1,4に対する高応答なトルク制御を実現する。
【0024】
次にスリップ判定器18の詳細な構成について説明する。図2は本発明の第1の実施の形態に係るスリップ判定器18の構成図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。図2に示すスリップ判定器18は、駆動輪3,6及び従動輪7,8の車輪速度から駆動輪3,6のスリップ率λを演算する演算手段として、左駆動輪車輪速度演算器24と、右駆動輪車輪速度演算器25と、左従動輪車輪速度演算器26と、右従動輪車輪速度演算器27と、駆動輪車輪速度演算器28と、従動輪車輪速度演算器29と、トルク補正判定器30とを備えている。
【0025】
左駆動輪車輪速度演算器24は、速度検出器9の出力する電動機1の回転速度検出値を入力として、駆動輪3の車輪速度検出値を出力する。右駆動輪車輪速度演算器25は、速度検出器10の出力する電動機4の回転速度検出値を入力として、駆動輪6の車輪速度検出値を出力する。
【0026】
左従動輪車輪速度演算器26は、速度検出器11の出力する従動輪7の回転速度検出値を入力として、従動輪7の車輪速度検出値を出力する。右従動輪車輪速度演算器27は、速度検出器12の出力する従動輪8の回転速度検出値を入力として、従動輪8の車輪速度検出値を出力する。
【0027】
駆動輪車輪速度演算器28は、左駆動輪車輪速度演算器24の出力する駆動輪3の車輪速度検出値と、右駆動輪車輪速度演算器25の出力する駆動輪6の車輪速度検出値を入力として、それらの平均値を駆動輪車輪速度検出値として出力する。従動輪車輪速度演算器29は、左従動輪車輪速度演算器26の出力する従動輪7の車輪速度検出値と、右従動輪車輪速度演算器27の出力する従動輪8の車輪速度検出値を入力として、それらの平均値を従動輪車輪速度検出値として出力する。
【0028】
図3は本発明の第1の実施の形態に係るトルク補正判定器30の構成図である。この図に示すようにトルク補正判定器30は、スリップ率演算器31と、判定器32を備えている。
【0029】
スリップ率演算器31は、駆動輪車輪速度演算器28の出力する駆動輪車輪速度検出値と従動輪車輪速度演算器29の出力する従動輪車輪速度検出値を入力としてスリップ率λを算出する処理を実行する部分である。
【0030】
図4は本発明の第1の実施の形態に係るスリップ率演算器31の構成図である。この図に示すように、スリップ率演算器31は、減算器33と、絶対値演算器34、35と、最大値選択器36と、除算器37とを備えている。
【0031】
減算器33は、駆動輪車輪速度検出値と従動輪車輪速度検出値を入力として、それらの差を出力する。絶対値演算器34は、従動輪車輪速度検出値を入力として、その絶対値を出力する。絶対値演算器35は、駆動輪車輪速度検出値を入力として、その絶対値を出力する。最大値選択器36は、絶対値演算器34の出力と絶対値演算器35の出力を入力とし、値の大きい方を出力する。除算器37は、減算器33の出力を最大値選択器36の出力で割ることで、駆動輪3,6のスリップ率λを出力する。
【0032】
なお、駆動輪3,6のスリップ率λの演算には、駆動輪3,6の対地速度が本来必要であるが、ここではその近似値として従動輪7,8の車輪速度を用いている。また、ここでは、左右の従動輪7,8の平均速度と左右の駆動輪3,6の平均速度を利用してスリップ率λを算出したが、その他の演算方法を利用してスリップ率λを算出しても良い。その他の演算方法としては、例えば、左右の一方における駆動輪3,6と従動輪7,8の車輪速度を用いて算出するものがある。
【0033】
ここで、スリップ率と車輪−路面間の摩擦係数との関係について説明する。図5はスリップ率と車輪−路面間の摩擦係数との関係を示す図である。この図において、スリップ率λが正の領域は車両の加速時のスリップ率を示し、負の領域は車両の減速時のスリップ率を示す。また、摩擦係数が負の領域は車輪−路面間に発生する力が車両の進行方向と逆向きであることを表す。一般に、スリップ率の大きさ(すなわち、スリップ率の絶対値の大きさ)が小さい領域(図5においてスリップ率が零に近い領域)では、その値が増加するにつれて車輪−路面間の摩擦係数の大きさも増加するため、車輪−路面間に作用する力も増加し、スリップが発生しない。すなわち、図5においてスリップが発生しないのは、スリップ率λがλN≦λ≦λPを満たす領域である(スリップ非発生領域)。
【0034】
一方、スリップ非発生領域において車輪−路面間の摩擦係数が最大になると、それ以降はスリップ率が増加するにつれて車輪−路面間の摩擦係数の大きさが当該最大値から減少するため、車輪−路面間に作用する力も減少してスリップが発生する。図5においてスリップが発生するのはスリップ率λがλ>λPあるいはλ<λNを満たす領域である(スリップ発生領域)。したがって、スリップ率λを計算し、その計算したスリップ率λがスリップ発生領域(λN≦λ≦λP)に含まれるか否かを判定することで、スリップが発生するか否かを判定することができる。λPは、例えば、0.1〜0.3に設定し、λNは、例えば、−0.1〜−0.3に設定することがある。
【0035】
判定器32は、スリップ率演算器31で算出されたスリップ率値λを入力として、電動機1及び電動機4の出力するトルクを補正するか否かを判定して、その判定結果に基づいてトルク補正指令(ON指令/OFF指令指令)を出力する部分である。具体的には、判定器32は、スリップ率演算器31の出力するスリップ率λが予め定めた設定値λPを上回る場合又は予め定めた設定値λNを下回る場合には、スリップが発生していると判定し、トルク補正指令としてON指令を出力する。一方、それ以外の場合には、スリップが発生していないと判定し、OFF指令を出力する。
【0036】
トルク補正判定器30がトルク補正指令としてON指令を出力すると、トルク指令演算器17は出力するトルク指令を低減するので、駆動輪3,6のスリップが抑制されて駆動輪3,6のスリップ率λはλN≦λ≦λPを満たすようにすることができる。なお、λP及びλNは、駆動輪3,6と路面の間の摩擦係数が最大になるようなスリップ率に設定するのが良い。このようにすることで、駆動輪3,6がスリップしない限界まで駆動輪3,6を有効活用することができる。
【0037】
次にトルク制限演算器23が実行する処理の詳細について説明する。図6は本発明の第1の実施の形態に係るトルク制限演算器23がOFF指令が入力されたときに実行する処理(OFF指令処理)のフローチャートである。この図に示すように、トルク制限演算器23は、スリップ判定器18からOFF指令が入力されると、ON指令が入力されるまでの間、トルク指令制限値として初期値LP1,LN1を出力する(S601,602)。そして、ON指令が入力されたら、図7に示すON指令処理を実行する。
【0038】
ここで、トルク制限演算器23が出力するトルク指令制限値には、車両加速時に利用する正の制限値LPnと、車両減速時に利用する負の制限値LNnとがある(n=1、2、3、…)(図10,11参照)。また、各トルク指令制限値LPn,LNnは、添字のnの数が大きくなるしたがって段階的に大きさ(絶対値)小さくなるように設定されているものとする。すなわち、|LP1|>|LP2|>|LP3|>…>|LPn|が成立し、|LN1|>|LN2|>|LN3|>…>|LNn|が成立する。また、トルク制限演算器23が実行するON指令処理におけるS704(後述)では、時間T[s]が経過するごとに添字の数が1つずつ大きいトルク指令制限値がトルク指令演算器17に出力されるものとする。
【0039】
図7は本発明の第1の実施の形態に係るトルク制限演算器23がON指令が入力されたときに実行する処理(ON指令処理)のフローチャートである。この図に示すように、トルク制限演算器23は、スリップ判定器18からON指令が入力されると、タイマーを起動してON指令が入力された時刻からの経過時間[s]の計測を開始する(S701)。そして、OFF指令が入力されるか否かを監視しながら、予め設定しておいた時間T[s]に当該時間が到達するまで時間を計測する(S702,703)。
【0040】
このとき、ON指令が入力されてからの時間がT[s]に到達したら、トルク指令制限値LPn,LNnとして直前に出力していたものより一段階大きさの小さいもの(すなわち、添字の数字の大きさが1つ大きいトルク指令制限値)をトルク指令演算器17に出力する(例えば、直前に初期値LP1,LN1を出力していた場合には、LP2,LN2を出力する。)(S704)。トルク指令演算器17へのトルク指令制限値LPn,LNnの出力が完了したら、計測時間をリセットして(S705)S702戻り、以後の処理を繰り返す。一方、ON指令が入力された時刻又はS705からの経過時間を計測している間に、スリップ判定器18からOFF指令が入力された場合には、ON指令処理を終了して図6のOFF指令処理を実行する。
【0041】
このように、本実施の形態においてトルク制限演算器23から出力されるトルク指令制限値LPn,LNnの大きさは、駆動輪3,6に発生するスリップの継続時間に応じて段階的に小さくなるように設定されている。具体的には、当該制限値LPn,LNnの大きさは、駆動輪3,6のスリップの継続時間の増加に合わせて、時間T[s]が経過するごとに段階的に小さくなるように設定されている。
【0042】
なお、本実施の形態では、ON指令の入力時刻から時間計測を開始し、当該入力時刻からの時間を基準にして時間T[s]経過ごとにトルク指令制限値LPn,LNnを変更する構成とした。しかし、トルク指令制限値LPn,LNnを変更する条件となる時間T[s]は、それぞれ異なる時間としても良い。また、トルク指令演算器17が出力するトルク指令がトルク指令制限値LPn,LNnに一致した時刻をトルク指令演算器17からフィードバックすることで当該時刻から時間計測を開始し、さらに、当該計測開始時刻からの時間が所定の時間(例えば、図10及び図11における時間Ta,Tb[s])に到達するごとにトルク指令制限値LPn,LNnを変更する構成としても良い。
【0043】
次にトルク指令演算器17が実行する処理の詳細について説明する。図8は本発明の第1の実施の形態に係るトルク指令演算器17がON指令が入力されたときに実行する処理(ON指令処理)のフローチャートである。
【0044】
この図に示すように、トルク指令演算器17は、スリップ判定器18からON指令が入力されると、トルク制御器16に出力しているトルク指令を直前の値(例えば、直前に駆動輪3,6のスリップが発生していない場合にはトルク指示値となる)から低減する補正を開始する(S801)。そして、トルク指令演算器17は、OFF指令が入力されたか否かをチェックしながら(S802)、予め定められた基準に従って、時間経過とともに徐々にトルク指令を小さくする補正を行う(S801,802,803)。その際、補正後のトルク指令が、トルク制限演算器23から入力されるトルク指令制限値LPn,LNnに到達した場合には(S803)、当該制限値LPn,LNnにトルク指令を保持する(S804)。S804においてトルク指令をトルク指令制限値LPn,LNnに保持する補正を開始したら、OFF指令が入力されるか否かをチェックしながら(S805)、トルク指令制限値LPn,LNnが更新されるまで待機する(S804,805,806)。そして、S806において、トルク指令制限値LPn,LNnの更新が確認されたら、S801に戻って、以後の処理を繰り返す。また、上記の処理におけるS802,805においてOFF指令が入力されたことが確認できたら、ON指令処理を終了して図9に示すOFF指令処理を実行する。
【0045】
このように本実施の形態に係るトルク指令演算器17は、ON指令が入力されているときには、トルク制限演算器23によるトルク指令制限値LPn,LNnの更新の有無に配慮しながら、当該制限値LPn,LNnに到達するまでトルク指令を低減する補正を行う。これにより駆動輪3,6に発生するスリップを防止する動作が行われる。
【0046】
なお、本実施の形態におけるトルク指令演算器17は、トルク指令がトルク指令制限値LPn,LNnと一致している場合(S804→S805→S806→S804→…)を除いて、予め定められた基準に基づいてトルク指令を低減している(具体的には、トルクの時間変化率が一定になるようにトルク指令を低減しており、図10,11(後述)に示すようにトルク指令は直線状に低減している。)。このように予め定めた基準に基づいてトルク指令を低減させると、トルク指令制限値LPn,LNnまでトルク指令を低減させるために必要な時間が算出できる。そして、当該時間よりも大きい値にT[s]を設定すれば、トルク指令とトルク指令制限値LPn,LNnが一致する時間が必ず発生することになるので、スリップ制御に伴うトルクの過剰低減を防止することができる。
【0047】
図9は本発明の第1の実施の形態に係るトルク指令演算器17がOFF指令が入力されたときに実行する処理(OFF指令処理)のフローチャートである。
【0048】
この図に示すように、トルク指令演算器17は、スリップ判定器18からOFF指令が入力されると、まず、トルク指令がトルク指示値に一致しているか否かを判定する(S901)。S901において、トルク指令の大きさ(絶対値)がトルク指示値の大きさ未満である場合には、トルク指令を回復する(大きくする)補正を行う(S902)。その際、トルク指令演算器17は、ON指令が入力されたか否かをチェックしながら(S903)、予め定められた基準に従って、トルク指示値に到達するまで時間経過とともに徐々にトルク指令を回復する(S901,902,903)。
【0049】
S901においてトルク指令がトルク指示値と一致していると判定された場合と、S904においてトルク指令がトルク指示値に到達したと判定された場合には、ON指令が入力されたか否かをチェックしながら(S906)、トルク指令をトルク指示値に保持する(S905)。また、上記の処理におけるS903,906においてON指令が入力されたことが確認できたら、OFF指令処理を終了して図8に示すON指令処理を実行する。
【0050】
このように本実施の形態に係るトルク指令演算器17は、OFF指令が入力されているときには、アクセルペダルの踏み込み量等で決定されるトルク指示値とトルク指令との大小関係に配慮しながら、当該トルク指示値に到達するまでトルク指令を回復する補正を行う。
【0051】
次に、図10、図11を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両のトルク指令演算器17、スリップ判定器18、トルク制限演算器23の動作について説明する。
【0052】
まず、車両加速中における動作について説明する。トルク指令演算器17は、アクセル開度検出器19を介して入力される運転者のアクセル操作に基づいて、車両加速中であることを判定する。図10は、本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の加速中における動作を示すタイミングチャートである。
【0053】
図10において、横軸は時間を示している。図10(A)の縦軸は、従動輪7,8及び駆動輪3,6の車輪速度を示している。図10(B)の縦軸は、スリップ判定器18の出力するトルク補正指令(ON指令/OFF指令)を示している。図10(C)の縦軸は、トルク指令演算器17の出力するトルク指令及びトルク制限演算器23の出力するトルク指令制限値LPnを示している。
【0054】
スリップ判定器18が従動輪車輪速度及び駆動輪車輪速度から駆動輪3,6のスリップを検出してトルク補正指令としてON指令を出力すると、トルク指令演算器17はトルク制限演算器23の出力するトルク指令制限値LPnを下限値としてトルク指令の大きさを低減する。一方、スリップ判定器18がトルク補正指令としてOFF指令を出力すると、トルク指令演算器17は元のトルク指令(すなわち、トルク指示値)に向かってトルク指令を回復する動作を行う。
【0055】
トルク制限演算器23は、最初はトルク指令制限値としてLP1を出力するが、トルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLP1より大きさが小さいLP2を出力する。この後、さらにトルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLP2より大きさが小さいLP3を出力する。この後、さらにトルク補正指令としてON指令が出力される状態が継続する場合は同様の動作を繰り返し、例えば、トルク指令制限値としてLPn−1を出力している状態で、トルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLPn−1より大きさが小さいLPnを出力する。このように、トルク指令制限値は最大でn−1段階変化する。また、トルク指令演算器17はトルク補正指令としてOFF指令が出力されると、トルク指令制限値としてLP1を出力する(すなわち、初期値に戻す)。なお、車両の加速状態を保持するためにLP1〜LPnは零以上の値とする。
【0056】
したがって、図10(C)に示すように、駆動輪3,6のスリップを検出してトルク指令の大きさを低減する場合は、トルク指令はトルク指令制限値LPnを下回らないように制限されるので、電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを低減し過ぎることが無くなる。
【0057】
また、非常に滑りやすい路面を走行する場合は電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを十分低減しないと駆動輪3,6のスリップが解消されない。しかし、駆動輪3,6のスリップが解消されるまでは、トルク指令制限値LPnの大きさは段階的に低減され、それに伴いトルク指令の大きさも低減されるので、走行している路面状態に応じて適切な値まで電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを低減することができる。
【0058】
次に、車両減速中における動作について説明する。トルク指令演算器17は、ブレーキ開度検出器20を介して入力される運転者のブレーキ操作に基づいて、車両減速中であることを判定する。図11は、本発明の第1の実施の形態に係る電気駆動車両の減速中における動作を示すタイミングチャートである。
【0059】
図11において、横軸は時間を示している。図11(A)の縦軸は、従動輪7,8及び駆動輪3,6の車輪速度を示している。図11(B)の縦軸は、スリップ判定器18の出力するトルク補正指令(ON指令/OFF指令)を示している。図11(C)の縦軸は、トルク指令演算器17の出力するトルク指令及びトルク制限演算器23の出力するトルク指令制限値LNnを示している。
【0060】
スリップ判定器18が従動輪車輪速度及び駆動輪車輪速度から駆動輪3,6のスリップを検出してトルク補正指令としてON指令を出力すると、トルク指令演算器17はトルク制限演算器23の出力するトルク指令制限値LNnを上限値としてトルク指令の大きさを低減する。一方、スリップ判定器18がトルク補正指令としてOFF指令を出力すると、トルク指令演算器17は元のトルク指令(すなわち、トルク指示値)に向かってトルク指令を回復する動作を行う。
【0061】
トルク制限演算器23は、最初はトルク指令制限値としてLN1を出力するが、トルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLN1より大きさが小さいLN2を出力する。この後、さらにトルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLN2より大きさが小さいLN3を出力する。この後、さらにトルク補正指令としてON指令が出力される状態が継続する場合は同様の動作を繰り返し、例えば、トルク指令制限値としてLNn−1を出力している状態で、トルク補正指令としてON指令が出力される状態がT[s]継続すると、トルク指令制限値としてLNn−1より大きさが小さいLNnを出力する。このように、トルク指令制限値は最大でn−1段階変化する。また、トルク指令演算器17はトルク補正指令としてOFF指令が出力されると、トルク指令制限値としてLN1を出力する。なお、車両の減速状態を保持するためにLN1〜LNnは零以下の値とする。
【0062】
したがって、図11(C)に示すように、駆動輪3,6のスリップを検出してトルク指令の大きさを低減する場合は、トルク指令はトルク指令制限値LNnを上回らないように制限されるので、電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを低減し過ぎることが無くなる。
【0063】
また、非常に滑りやすい路面を走行する場合は電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを十分低減しないと駆動輪3,6のスリップが解消されない。しかし、駆動輪3,6のスリップが解消されるまでは、トルク指令制限値LNnの大きさは段階的に低減され、それに伴いトルク指令の大きさも低減されるので、走行している路面状態に応じて適切な値まで電動機1及び電動機4の出力するトルクの大きさを低減することができる。
【0064】
以上のように、本実施の形態によれば、トルク指令の大きさに係るトルク指令制限値LPn,LNnの大きさがスリップ継続時間の増加に伴って段階的に小さく設定されるので、駆動輪3,6のスリップを解消するときに電動機1,4のトルクが低減され過ぎることが防止され、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制することができる。また、スリップの解消にトルクの大きさを十分小さくする必要のある路面(例えば、滑りやすい路面)を走行している場合には、スリップ継続時間の増加に伴って電動機1,4のトルクの大きさを十分低減できるので、必要なトルクの大小に関わらず駆動輪3,6のスリップを確実に解消することができる。
【0065】
なお、上記の実施の形態では、トルク指令制限値LPn,LNnは、それぞれ一定であるものとして説明したが、トルク指令演算器17から出力されるトルク指令がトルク指令制限値LPn,LNnに一致している間に、スリップ抑制制御に影響を与えない範囲内で当該トルク指令制限値を変化させても良い。この種の制御を利用したものとしては、トルク指令がトルク指令制限値に一致した時刻から、当該トルク指令制限値をトルク制限演算器23において徐々に小さくするものや、これとは反対に徐々に大きくするものがある。このようにトルク指令制限値を設定しても、最終的に電動機1,4のトルクが段階的に低減することになるので、上記と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、上記の実施の形態で説明した制御は、トルク指令制限値LPn,LNnの大きさを小さいものに変更するまでの間(図10,11の例では時間T[s])に、電動機1,4のトルク(トルク指令演算器17からのトルク指令)の大きさの時間変化率(図10,11におけるトルク指令の線図の傾き)を、スリップ継続時間の増加に合わせて適宜変更する制御を実行していると解することもできる。すなわち、図10に示した例では、2回目のスリップ発生中におけるトルク指令の大きさの時間変化率は、まず、当該スリップの開始時刻から第1の値に設定され、その後Tc1[s]経過後に第1の値よりも相対的に小さい第2の値(変化率は零)に設定される。このように時間T[s](=Tc1+Tc2[s])の間においてトルク指令の大きさの時間変化率を変更すると、時間変化率を一定にする場合と比較して電動機1,4のトルクが低減するまでの時間を長くできるので、上記と同様の効果を得ることができる。なお、図10に示す例では、Tc3以後も第1の値と第2の値を交互に行き来させているが、「(1)初期値→(2)当該初期値よりも相対的に小なる値→(3)当該相対的に小なる値((2)の値)よりも相対的に大なる値→(4)当該相対的に大なる値((3)の値)よりも相対的に小なる値→…(省略)」というように、時系列順に配列させた複数の値において隣り合う2つの値の関係が大小関係になるように各値を設定すれば、3つ以上の値の間を行き来させても良い。
【0067】
図12は本発明の第2の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図である。第1の実施の形態に係る電気駆動車両と異なる点は、積載量センサ38と、トルク制限演算器39を備えている点にある。
【0068】
積載量センサ(積載量検出手段)38は、電気駆動車両の積載量を検出し、その検出値(積載量検出値)をトルク制限演算器39に出力するためのものである。トルク制限演算器39は、第1の実施の形態におけるトルク制限演算器23が実行する処理に加えて、積載量センサ38から入力される積載量検出値に応じてトルク指令制限値LPn,LNnの大きさを調整する処理を実行するためのものである。図13は本発明の第2の実施の形態に係る電気駆動車両における積載量とトルク指令制限値LPn,LNnの関係を示す図である。この図に示すように、トルク制限演算器39は、車両の積載量の増加に比例してトルク指令制限値LPn,LNnの大きさが大きくなるようにトルク指令制限値LPn,LNnを補正している。
【0069】
例えば、荷台を有するダンプトラックのように積載量が大きく変化する車両では、積載量に応じて駆動輪3,6の滑りやすさが変化する。一般に、積載量が大きくなると駆動輪3,6に発生する摩擦力が大きくなるので駆動輪3,6は滑りにくくなる。したがって、積載量が相対的に大きい場合は積載量が相対的に小さい場合に比べて駆動輪のトルク指令を相対的に大きくすることが好ましい。そこで、本実施の形態では、図13に示すように車両の積載量が大きくなるにつれて、トルク指令制限値LPn,LNnの大きさを大きく設定している。
【0070】
このようにトルク指令制限値LPn,LNnを設定すると、積載量が大きい場合に不必要にトルク指令の大きさが小さくなることが抑制されるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。
【0071】
図14は本発明の第3の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図である。第1の実施の形態に係る電気駆動車両と異なる点は、傾斜センサ40と、トルク制限演算器41を備えている点にある。
【0072】
傾斜センサ(傾斜検出手段)40は、車両が走行している路面の傾斜を検出し、その検出値(傾斜検出値)をトルク制限演算器41に出力するためのものである。トルク制限演算器41は、第1の実施の形態におけるトルク制限演算器23が実行する処理に加えて、傾斜センサ40から入力される傾斜検出値に応じてトルク指令制限値LPn,LNnの大きさを調整する処理を実行するためのものである。図15は本発明の第3の実施の形態に係る電気駆動車両における積載量とトルク指令制限値LPn,LNnの関係を示す図である。この図に示すように、トルク制限演算器41は、車両が走行する路面の傾斜の増加に比例してトルク指令制限値LPn,LNnの大きさが小さくなるようにトルク指令制限値LPn,LNnを補正している。なお、図15において、傾斜が正の場合は上り坂を、傾斜が負の場合は下り坂を表すものとする。
【0073】
例えば、車両が走行している路面の傾斜が変化する場合は、路面の傾斜に応じて駆動輪3,6の滑りやすさが変化する。一般に、路面の傾斜が小さくなると駆動輪3,6に発生する摩擦力が大きくなるので駆動輪3,6は滑りにくくなる。したがって、路面の傾斜が相対的に大きい場合は傾斜が相対的に小さい場合に比べて駆動輪のトルク指令を相対的に小さくすることが好ましい。そこで、本実施の形態では、図15に示すように車両が走行している路面の傾斜の大きさが大きくなるにつれて、トルク指令制限値LPn,LNnの大きさを小さく設定している。
【0074】
このようにトルク指令制限値LPn,LNnを設定すると、路面の傾斜が小さい場合に不必要にトルク指令の大きさが小さくなることが抑制されるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。
【0075】
図16は本発明の第4の実施の形態に係る電気駆動車両の概略構成図である。第1の実施の形態に係る電気駆動車両と異なる点は、調節装置42と、トルク制限演算器43を備えている点にある。
【0076】
調節装置42は、人(運転者又はサービスマン等)がトルク指令制限値LPn,LNnを調節するための操作装置である。調節装置42としては、例えば、ダイヤルの回転量によってアナログ式にトルク指令制限値を指示するものや、スイッチを切り換えることでデジタル式にトルク指令制限値を指示するもの等がある。運転者が手動で容易にトルク指令制限値LPn,LNnを調節可能にする観点からは、調節装置42は車両の運転席に設置することが好ましい。
【0077】
トルク制限演算器43は、第1の実施の形態におけるトルク制限演算器23が実行する処理に加えて、調節装置42から入力される指令(調節指令)に基づいてトルク指令制限値LPn,LNnの大きさを調整する処理を実行するためのものである。調節装置42から適宜出力される調節指令の入力を受けたトルク制限演算器43は、当該調節指令に合わせてトルク指令制限値LPn,LNnの大きさを補正する。
【0078】
このように調節装置42を設置すると、車両の走行する路面の状況に合わせて最適なトルク指令制限値LPn,LNnを適宜利用することができるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。また、スリップ発生時のトルク低減の態様を運転者の嗜好に合わせることができるので、運転者の操作フィーリングを向上させることができる。
【0079】
以上の説明では、電気駆動車両の種類については特に触れなかったが、上記発明の適用対象は電動機によって駆動輪が駆動される電気駆動車両であれば良く、一般的な自動車のみに限られるものではない。例えば、ホイールローダやフォークリフト等、走行体として複数の車輪を有するホイール式の建設機械にも適用可能であることは言うまでもない。
【0080】
ここで、上記の各実施の形態の概要について説明する。
【0081】
(1)上記の実施の形態では、電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、前記駆動輪にスリップが発生している場合において、前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減させるときの当該トルクの大きさには制限値が設定されており、当該制限値の大きさは、前記駆動輪に発生するスリップの継続時間の増加に合わせて段階的に小さくされることとした。これにより電動機のトルクの大きさに係る制限値がスリップ継続時間の増加に伴って段階的に小さく設定されるので、駆動輪のスリップを解消するときにトルクが低減され過ぎることが防止され、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制することができる。
【0082】
(2)また、前記制限値の大きさは、前記スリップの継続時間が所定時間に到達するごとに、段階的に小さくしても良い。
【0083】
(3)さらに、前記制限値の大きさは、前記駆動輪のトルクが当該制限値に一致する時間が所定時間に到達するごとに、段階的に小さくしても良い。
【0084】
(4)また、前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減するときの当該トルクの時間変化は、当該トルクが前記制限値と一致している場合を除いて、予め定められているとしても良い。このように予め定めた基準に基づいてトルクを低減させると、制限値までトルクを低減させるために必要な時間が算出できる。そして、当該時間よりも大きい値にT[s]を設定すれば、トルクと制限値が一致する時間が必ず発生することになるので、スリップ制御に伴うトルクの過剰低減を防止することができる
(5)また、前記制限値は、前記車両の加速中は零以上に設定され、前記車両の減速中は零以下に設定すると良い。
【0085】
(6)また、前記制限値の大きさは、前記車両の積載量が大きいほど大きく設定すると良い。このように制限値を設定すると、積載量が大きい場合に不必要にトルクの大きさが小さくなることが抑制されるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。
【0086】
(7)また、前記制限値の大きさは、前記車両が走行している路面の傾斜が大きいほど小さく設定すると良い。このように制限値を設定すると、路面の傾斜が小さい場合に不必要にトルク指令の大きさが小さくなることが抑制されるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。
【0087】
(8)また、前記制限値の大きさを調節するための調節装置をさらに備えても良い。このように調節装置を設置すると、車両の走行する路面の状況に合わせて最適な制限値を適宜利用することができるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制できる。また、スリップ発生時のトルク低減の態様を運転者の嗜好に合わせることができるので、運転者の操作フィーリングを向上させることができる。
【0088】
(9)また、前記調節装置は、前記車両の運転席に設置すると良い。
【0089】
(10)また、上記の実施の形態では、電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、スリップ発生中に前記電動機制御手段によって低減される前記電動機のトルクの大きさの時間変化率は、スリップ開始時から第1の値となり、スリップ開始後から所定時間経過後に当該第1の値よりも相対的に小さい第2の値に変化することとした。このようにトルクの大きさの時間変化率を変更すると、時間変化率を一定にする場合と比較して電動機のトルクが低減するまでの時間を長くできるので、車両の加速性能及び減速性能の不必要な低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…電動機、2…ギア、3…駆動輪、4…電動機、5…ギア、6…駆動輪、7…従動輪、8…従動輪、9…速度センサ、10…速度センサ、11…速度センサ、12…速度センサ、13…電力変換器、14…電流センサ、15…電流センサ、16…トルク制御器、17…トルク指令演算器、18…スリップ判定器、19…アクセル開度検出器、20…ブレーキ開度検出器、21…ステアリング角度検出器、22…電動機制御器、23…トルク制限演算器、24…左駆動輪車輪速度演算器、25…右駆動輪車輪速度演算器、26…左従動輪車輪速度演算器、27…右従動輪車輪速度演算器、28…駆動輪車輪速度演算器、29…従動輪車輪速度演算器、30…トルク補正判定器、31…スリップ率演算器、32…判定器、33…減算器、34…絶対値演算器、35…絶対値演算器、36…最大値選択器、37…除算器、38…積載量センサ、39…トルク制限演算器、40…傾斜センサ、41…トルク制限演算器、42…調節装置、43…トルク制限演算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、
前記駆動輪にスリップが発生している場合において、前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減させるときの当該トルクの大きさには制限値が設定されており、
当該制限値の大きさは、前記駆動輪に発生するスリップの継続時間の増加に合わせて段階的に小さくされることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項2】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさは、前記スリップの継続時間が所定時間に到達するごとに、段階的に小さくされることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項3】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさは、前記駆動輪のトルクが当該制限値に一致する時間が所定時間に到達するごとに、段階的に小さくされることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減するときの当該トルクの時間変化は、当該トルクが前記制限値と一致している場合を除いて、予め定められていることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記制限値は、前記車両の加速中は零以上に設定され、前記車両の減速中は零以下に設定されることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさは、前記車両の積載量が大きいほど大きく設定されることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさは、前記車両が走行している路面の傾斜が大きいほど小さく設定されることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさを調節するための調節装置をさらに備えることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項9】
請求項8に記載の電気駆動車両において、
前記調節装置は、前記車両の運転席に設置されていることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項10】
電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、
スリップ発生中に前記電動機制御手段によって低減される前記電動機のトルクの大きさの時間変化率は、スリップ開始時から第1の値となり、スリップ開始後から所定時間経過後に当該第1の値よりも相対的に小さい第2の値に変化することを特徴とする電気駆動車両。
【請求項1】
電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、
前記駆動輪にスリップが発生している場合において、前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減させるときの当該トルクの大きさには制限値が設定されており、
当該制限値の大きさは、前記駆動輪に発生するスリップの継続時間の増加に合わせて段階的に小さくされることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項2】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさは、前記スリップの継続時間が所定時間に到達するごとに、段階的に小さくされることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項3】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさは、前記駆動輪のトルクが当該制限値に一致する時間が所定時間に到達するごとに、段階的に小さくされることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記電動機制御手段が前記電動機のトルクの大きさを低減するときの当該トルクの時間変化は、当該トルクが前記制限値と一致している場合を除いて、予め定められていることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記制限値は、前記車両の加速中は零以上に設定され、前記車両の減速中は零以下に設定されることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさは、前記車両の積載量が大きいほど大きく設定されることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさは、前記車両が走行している路面の傾斜が大きいほど小さく設定されることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電気駆動車両において、
前記制限値の大きさを調節するための調節装置をさらに備えることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項9】
請求項8に記載の電気駆動車両において、
前記調節装置は、前記車両の運転席に設置されていることを特徴とする電気駆動車両。
【請求項10】
電動機と、当該電動機により駆動される駆動輪と、当該駆動輪にスリップが発生するときに前記電動機のトルクの大きさを低減させ、当該スリップ解消後に前記電動機のトルクの大きさを回復させる電動機制御手段とを備えた電気駆動車両において、
スリップ発生中に前記電動機制御手段によって低減される前記電動機のトルクの大きさの時間変化率は、スリップ開始時から第1の値となり、スリップ開始後から所定時間経過後に当該第1の値よりも相対的に小さい第2の値に変化することを特徴とする電気駆動車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−42599(P2013−42599A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178154(P2011−178154)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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