説明

電池

【課題】電池容器2の溶接用孔2aをざぐり孔やテーパ孔等とすることにより、電池のエネルギー密度を向上させ正極集電接続板6との溶接を容易にする電池を提供する。
【解決手段】発電要素1の正極1aをアルミニウム製の電池容器2に接続した電池において、電池容器2の底板部に、開口径が外側ほど広い溶接用孔2aが開口されると共に、発電要素1の正極1aに接続された正極集電接続板6がこの溶接用孔2aの内側開口部を覆って配置され、この溶接用孔2aの開口周縁部がレーザ溶接によりこの正極集電接続板6に溶着された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電要素の一方の電極を金属製の電池ケースの内面に接続した電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製の電池ケースの内面に発電要素の正極を接続することにより、この電池ケース自体を正極端子とした非水電解質二次電池の従来の構成例を図4に示す。この非水電解質二次電池は、角型のアルミニウム製の電池ケース内に発電要素1を収納したものである。電池ケースは、アルミニウム板を深絞り加工により方形容器状に成形した電池容器2と、この電池容器2の上端開口部を塞ぐ方形のアルミニウム板からなる蓋板3とで構成されている。また、蓋板3には、負極端子4が上下面を貫通し、かつ、絶縁封止材を介して絶縁封止して取り付けられている。そして、この負極端子4には、銅板からなる負極集電接続板5の上端部が蓋板3の下面側で絶縁されてかしめ等により接続固定されている。
【0003】
上記発電要素1は、帯状の正極1aと負極1bを上下にずらして、セパレータ1cを介して長円筒形に巻回した巻回型のものである。従って、この長円筒形の発電要素1の下端面には、正極1aの帯状の下端側縁部(活物質未塗部のアルミニウム箔)が突出すると共に、上端面には、負極1bの帯状の上端側縁部(活物質未塗部の銅箔)が突出している。そして、この発電要素1の下端面から突出した正極1aの下端側縁部は、アルミニウム板からなる正極集電接続板6に接続されている。正極集電接続板6は、アルミニウム板からなる断面コの字形状の板材であり、上方を向けた両側板部の間に正極1aの下端側縁部を挟み込み、これら両側板部の内側面に超音波溶接により接続している。
【0004】
上記発電要素1は、電池容器2の上端開口部から挿入されて内部に収納される。すると、図5に示すように、発電要素1の下端部に取り付けた正極集電接続板6の底板部は、電池容器2の底板部上に配置されることになる。そして、抵抗溶接機の下方電極チップ7の上にこの電池容器2の底板部の下面を載置すると共に、上方からこの電池容器2内の発電要素1の巻回中心部の隙間に上方電極チップ8を差し込み、この上方電極チップ8を正極集電接続板6の底板部上に押し当てて通電を行うことにより、これら正極集電接続板6と電池容器2の底板部を抵抗溶接する。従って、電池容器2は、正極集電接続板6を介して発電要素1の正極1aに接続されるので、正極端子となる。
【0005】
上記負極集電接続板5の下端部は、図4に示すように、発電要素1の上端面から突出した負極1bの上端側縁部に接続される。そして、この負極集電接続板5の中間部を折り曲げる等して、蓋板3を電池容器2の上端開口部に嵌め込み周囲を溶接により封止固定する。また、電池容器2か蓋板3に予め開口されていた図示しない注液口から電池ケースの内部に電解液を注入し、発電要素1の予備充電を行った後に、この注液口を封口することにより非水電解質二次電池が完成する。
【0006】
ところが、上記構成の従来の非水電解質二次電池は、発電要素1の巻回中心部に、上方電極チップ8を挿入するための隙間が必要となり、この発電要素1に巻回中心まで隙間なく正極1aや負極1bを巻回することができないので、非水電解質二次電池のエネルギー密度が低下するという問題が発生していた。しかも、上方電極チップ8は、正極集電接続板6と電池容器2の底板部を下方電極チップ7に強い力で圧迫してから通電を行うので、この圧迫の際に正極集電接続板6の位置ずれが生じ易く、この位置ずれによって発電要素1が電池ケース内に偏って収納されたり溶接強度が低下するおそれがあるという問題もあった。
【0007】
また、上記問題を解消するために、正極集電接続板6の一部を、発電要素1の巻回中心部や電池容器2の側板とこの発電要素1の側面との間を通して上端部に引き出し、ここで蓋板3等にかしめや超音波溶接により接続固定する構造の非水電解質二次電池も従来からあった。しかしながら、このような構造の非水電解質二次電池の場合にも、電池ケース内に正極集電接続板6の一部を上端部に引き出すためのスペースが必要となるので、エネルギー密度が低下するという問題を完全に解消することはできない。
【0008】
なお、上記問題を解消するために、電池容器2の底板部に溶接用孔を開口しておき、この溶接用孔の開口周縁部を電池容器2の底板部の下方からレーザ溶接等により正極集電接続板6の底板部に溶接することにより、これら正極集電接続板6と電池容器2の底板部を接続固定すると共に溶接用孔を封口する電池が従来から提案されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。しかしながら、この場合には、電池容器2の底板部に溶接用孔が開口しているので、この開口周縁部を全周にわたってレーザ溶接等により確実に溶接し封口する必要があり、この溶接作業が容易ではないという問題が生じる。即ち、電池容器2の底板部がある程度の厚さを有するために、溶接用孔の孔長が深くなるので、レーザスポットをこの溶接用孔の内側から孔内壁の奥に照射しなければならず、溶接作業が極めて難しいものになる。
【特許文献1】特開2000−48795
【特許文献2】特開2003−168415
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電池ケースの溶接用孔をざぐり孔やテーパ孔等とすることにより、電池のエネルギー密度が低下したり溶接が困難になるという問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、発電要素の一方の電極を金属製の電池ケースに接続した電池において、電池ケースに、開口面積が外側ほど広い溶接用孔が開口されると共に、発電要素の一方の電極に接続された集電接続体がこの溶接用孔の内側開口部を覆って配置され、この溶接用孔の開口周縁部が溶接によりこの集電接続体に溶着されたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、前記溶接用孔が、開口径が外側に1段階広くなったざぐり孔であることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、前記溶接用孔が、開口径が外側ほど徐々に広がるテーパ孔であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、発電要素の一方の電極に接続された集電接続体が電池ケースの外側から溶接によって溶接用孔の開口周縁部に溶着されるので、この集電接続体を抵抗溶接するための電極チップを電池ケース内に通すスペースが不要となり、しかも、この集電接続体の一部を電池ケースの開口部まで引き出す必要もなくなるので、電池のエネルギー密度を高めることができるようになる。また、溶接用孔は、ざぐり孔やテーパ孔等のように開口面積が外側ほど広くなるので、電池ケースの板厚が厚くても、この溶接用孔の開口周縁部の板厚は薄くなり、集電接続体への溶接が容易となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、溶接用孔がざぐり孔であるため、汎用の工具で容易に加工できるだけでなく、この溶接用孔の開口周縁部の板厚を確実に薄くすることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、溶接用孔がテーパ孔であるため、汎用の工具で容易に加工できるだけでなく、この溶接用孔の開口周縁部の板厚を縁部ほど確実に薄くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。なお、これら図1〜図3においても、図4〜図5に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
【0017】
本実施形態は、従来例と同様に、アルミニウム製の電池ケースを正極端子とした非水電解質二次電池について説明する。この非水電解質二次電池も、図1に示すように、発電要素1を収納する電池ケースが電池容器2と蓋板3とからなり、この蓋板3と発電要素1の構成は、従来例と同じである。そして、発電要素1の下端面から突出した正極1aの下端側縁部に正極集電接続板6が接続され、上端面から突出した負極1bの上端側縁部に負極集電接続板5が接続されると共に、この負極集電接続板5が蓋板3に絶縁封止して取り付けられた負極端子4に接続固定されている構成も、従来例と同じである。
【0018】
上記電池容器2は、従来例と同様に、アルミニウム板を深絞り加工により方形容器状に成形したものであるが、底板部の中央には円形の溶接用孔2aが開口している。溶接用孔2aは、通常の円筒孔ではなく、図2に示すように、底板部の外面(下面)側の開口径が内面(上面)側よりも1段階広がったざぐり孔となっている。即ち、この溶接用孔2aは、電池容器2の底板部における内面側の開口面積よりも外面側の開口面積の方が1段階広くなっている。従って、この溶接用孔2aは、外面側の開口部より内径側で内面側の開口部よりも外径側のざぐり部分の板厚が本来の電池容器2の底板部の板厚よりも確実に薄くなっている。
【0019】
上記溶接用孔2aは、電池容器2の深絞り加工後に、ざぐり孔の専用工具を用いて切削加工により形成することができる。また、このざぐり孔状の溶接用孔2aの下孔となる円筒孔は、事前にプレス加工により形成しておくこともできる。さらに、プレス加工によって、一度にこのようなざぐり孔状の溶接用孔2aを開口することも可能である。
【0020】
発電要素1は、上記構成の電池容器2の上端開口部から挿入されて内部に収納される。すると、図2に示すように、発電要素1の下端部に取り付けた正極集電接続板6の底板部が電池容器2の底板部上に配置されて、溶接用孔2aの内側開口部を覆うことになる。そして、電池容器2の外側の下方から、この溶接用孔2aの開口周縁部に全周にわたってレーザ光Aを照射することによりレーザ溶接を行う。この際、レーザ光Aは、溶接用孔2aの開口周縁部であって板厚が薄くなった部分に照射されるので、容易にアルミニウム板を溶融させて正極集電接続板6の底板部に確実に溶着させることができる。
【0021】
上記構成により、本実施形態の非水電解質二次電池は、発電要素1の正極1aに接続された正極集電接続板6が電池容器2の底板部の溶接用孔2aにレーザ溶接されるので、この正極集電接続板6を電池容器2の底板部に抵抗溶接するために、発電要素1の巻回中心部に上方電極チップ8を通す必要がなくなるだけでなく、この正極集電接続板6の一部を電池容器2の上方開口端部まで引き出す必要もなくなる。従って、電池ケースの内部に無駄なスペースが不要となるので、非水電解質二次電池のエネルギー密度を高めることができるようになる。
【0022】
また、溶接用孔2aは、開口周縁部のざぐり部分の板厚が薄くなっているので、ここにレーザ光を照射することにより容易に溶融させることができ、正極集電接続板6を確実に溶着させることができるようになる。さらに、この溶接用孔2aは、外面側の開口部より内径側であって内面側の開口部よりも外径側となる広いざぐり部分で板厚が薄くなっているので、レーザ光Aをこの開口周縁部の全周にわたって容易に照射することができるようになり、溶接用孔2aを確実に封口することができるようになる。
【0023】
なお、上記実施形態では、溶接用孔2aがざぐり孔状である場合を示したが、図3に示すように、テーパ孔(皿孔)状とすることもできる。この場合、溶接用孔2aは、外面側の開口径が内面側よりも徐々に広がるテーパ孔に形成され、開口周縁部の板厚が縁部ほど確実に薄くなる。また、この溶接用孔2aは、開口面積が外側ほど広い孔であればよいので、孔形状は円形には限定されない。さらに、上記実施形態では、溶接用孔2aの開口周縁部をレーザ溶接で溶接する場合について示したが、この溶接方法は任意であり、TIG溶接等を用いることもできる。
【0024】
また、上記実施形態では、角型の電池ケースが電池容器2と蓋板3とで構成される場合を示したが、この電池ケースの形状や構成も任意である。さらに、発電要素1の形状や構成についても任意である。さらに、上記実施形態では、断面コの字形状の正極集電接続板6に発電要素1の正極1aの下端側縁部を超音波溶接により接続する場合を示したが、この正極集電接続板6の構造や接続方法も任意である。さらに、上記実施形態では、蓋板3に負極端子4を取り付ける場合を示したが、この負極端子4の取り付け場所や取り出し手段も任意である。
【0025】
また、上記実施形態では、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)製の電池ケースや正極集電接続板6を用いる場合を示したが、これらの金属材料は特に限定されない。さらに、上記実施形態では、電池ケースが正極端子となる場合を示したが、この電池ケースが負極端子となる場合にも同様に実施可能である。さらに、上記実施形態では、非水電解質二次電池について説明したが、電池ケース自体を一方の極性の端子として用いる電池であれば、他の種類の電池にも同様に実施可能である。
【実施例1】
【0026】
図1〜図2に示した実施例の非水電解質二次電池を、図4〜図5に示した従来例と比較した結果、実施例では、発電要素1の巻回中心部の隙間を最小限にすることにより、エネルギー密度を約10%向上させることができた。また、これら実施例と従来例の非水電解質二次電池について、10G、24時間の振動試験を実施した結果、従来例では正極集電接続板6の溶接が外れて内部断線を生じるものがあったが、実施例では異常は生じなかった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、非水電解質二次電池の構成を示す組み立て斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであって、電池容器の底板部のざぐり孔状の溶接用孔と正極集電接続板とをレーザ溶接する様子を示す部分拡大縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであって、電池容器の底板部のテーパ孔状の溶接用孔と正極集電接続板とをレーザ溶接する様子を示す部分拡大縦断面図である。
【図4】従来例を示すものであって、非水電解質二次電池の構成を示す組み立て斜視図である。
【図5】従来例を示すものであって、電池容器の底板部と正極集電接続板とを抵抗溶接する様子を示す部分拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 発電要素
1a 正極
2 電池容器
2a 溶接用孔
6 正極集電接続板
A レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素の一方の電極を金属製の電池ケースに接続した電池において、
電池ケースに、開口面積が外側ほど広い溶接用孔が開口されると共に、発電要素の一方の電極に接続された集電接続体がこの溶接用孔の内側開口部を覆って配置され、この溶接用孔の開口周縁部が溶接によりこの集電接続体に溶着されたことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記溶接用孔が、開口径が外側に1段階広くなったざぐり孔であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記溶接用孔が、開口径が外側ほど徐々に広がるテーパ孔であることを特徴とする請求項1に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−19220(P2006−19220A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198290(P2004−198290)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000004282)日本電池株式会社 (48)
【Fターム(参考)】