説明

電流センサ

【課題】安定な直流特性と広帯域とを両立させた電流センサを提供する。
【解決手段】測定電流に対応した電圧値を出力する電流センサであって、測定電流を第1周波数帯域成分と、第1周波数帯域よりも低く、直流を含む第2周波数帯域成分とに分ける分波器と、カレントトランスを有し、第1周波数帯域成分に分けられた電流に対応した電圧値を出力するカレントトランス電流センサ部と、シャント抵抗を有し、第2周波数帯域成分に分けられた電流に対応した電圧値を出力するシャント抵抗電流センサ部と、カレントトランス電流センサ部およびシャント抵抗電流センサ部が出力する電圧値を合成して出力する加算合成器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに係り、特に、安定な直流特性と広帯域とを両立させた電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流センサとして、シャント抵抗型電流センサと、ホール素子とカレントトランスの組合わせによる電流センサとが広く用いられている。
【0003】
図3を参照してシャント抵抗型電流センサについて説明する。本図に示すように、シャント抵抗型電流センサ200は、電流端子1と電流端子2との間に接続されたシャント抵抗210に測定電流を流し、シャント抵抗210の両端に生じる電圧降下Vdを差動増幅器220で増幅して、電圧出力端子Voutから測定器に出力することで電流値の測定を行なう。
【0004】
次に、図4を参照してホール素子とカレントトランスの組合わせによる電流センサについて説明する。本図に示すようにホール素子とカレントトランスの組合わせによる電流センサ300は、カレントトランスが基本回路となっており、電流端子1と電流端子2との間を流れる測定電流をフェライトコア310内に貫通させて1次コイルを形成し、2次コイル320に誘起される電流を終端抵抗330によって電圧変換する。そして、この電圧を高周波パス用増幅器340で増幅し、測定電流の高周波成分と等価な電圧とする。
【0005】
一方、カレントトランスは直流電流に対する感度がなく、また、直流電流を流し続けるとフェライトコア310が飽和する可能性がある。このため、本図に示すようにホール素子350を組み合わせている。すなわち、フェライトコア310にギャップを設けてホール素子350を挿入し、直流から低周波にかけての電流は、ホール素子350によって磁界から電圧に変換する。そして、この電圧を低周波パス用増幅器360で増幅する。
【0006】
低周波パス用増幅器360の出力は、測定電流の直流・低周波成分と等価な電圧として、カレントトランスによって得られた高周波電流成分と等価な電圧と加算合成器380によって合成され、直流から高周波までの測定電流に対応した等価電圧として電圧出力端子Voutから測定器に出力される。
【0007】
また、低周波パス用増幅器360の出力は、帰還用電流増幅器370を介して、フェライトコア310の内部磁束がゼロになるように逆位相で帰還する。これにより、フェライトコア310が飽和することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−236134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
シャント抵抗型電流センサ200は、簡便で直流特性は安定しているが、高周波電流では、シャント抵抗の寄生インダクタンスおよび寄生容量の影響が無視できなくなるため、高周波電流計測には不向きである。
【0010】
一方、ホール素子とカレントトランスの組合わせによる電流センサ300は、高周波まで透磁率の高いフェライトコアを選定することで、高周波まで良好な周波数特性を得ることができる。しかしながら、ホール素子は、本質的に温度ドリフトが大きく、フェライトコアの磁損等による発熱で、測定中に直流オフセットがずれてしまうという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、安定な直流特性と広帯域とを両立させた電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の電流センサは、測定電流に対応した電圧値を出力する電流センサであって、測定電流を第1周波数帯域成分と、前記第1周波数帯域よりも低く、直流を含む第2周波数帯域成分とに分ける分波器と、カレントトランスを有し、前記第1周波数帯域成分に分けられた電流に対応した電圧値を出力するカレントトランス電流センサ部と、シャント抵抗を有し、前記第2周波数帯域成分に分けられた電流に対応した電圧値を出力するシャント抵抗電流センサ部と、前記カレントトランス電流センサ部および前記シャント抵抗電流センサ部が出力する電圧値を合成して出力する加算合成器とを備える。
【0013】
本発明の電流センサでは、ホール素子を用いることなく直流成分を検出できるため、従来のホール素子とカレントトランスの組合わせによる電流センサにおける問題点であった温度ドリフトに起因する直流オフセットを改善することができる。
【0014】
また、本発明の電流センサは、シャント抵抗型電流センサの問題点であった高周波帯域特性を、カレントトランス電流センサ部で補償している。これにより、シャント抵抗型電流センサの安定した直流特性と、カレントトランス型の電流センサの広帯域性とを併せ持つことが可能となる。
【0015】
より具体的には、前記分波器は、測定電流の前記第1周波数帯域成分を通過させるキャパシタと、前記第2周波数帯域成分を通過させるインダクタとを備えて構成することができる。
【0016】
また、前記カレントトランス電流センサ部は、終端抵抗を含み、前記第1周波数帯域成分に分けられた電流を前記カレントトランスの1次コイルに流し、2次コイルに誘起された電流を前記終端抵抗に流すことで前記電流に対応した電圧値を生成することができる。
【0017】
さらに、前記シャント抵抗電流センサ部は、前記第2周波数帯域成分に分けられた電流を前記シャント抵抗に流すことで前記電流に対応した電圧値を生成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安定な直流特性と広帯域とを両立させた電流センサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る電流センサの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る電流センサの具体的な構成例を示す図である。
【図3】シャント抵抗型電流センサを説明する図である。
【図4】ホール素子とカレントトランスの組合わせによる電流センサを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電流センサの構成を示す図である。本図に示すように、電流センサ100は、電流端子1と電流端子2との間に測定電流を流し、測定電流に対応した電圧を電圧出力端子Voutから取り出す構成となっており、カレントトランス120と、シャント抵抗140とを有している。
【0021】
電流端子1から流入した測定電流は、分波器110により、周波数成分によって高周波電流と、直流・低周波電流とに分けられる。ここで、分波器110は、例えば、数10kHz〜100kHz程度をカットオフ周波数として、高周波電流と、直流・低周波電流とに分けるようにすることができる。
【0022】
分波器110で分けられた高周波電流は、カレントトランス120の1次コイル側に導かれる。この高周波電流によってカレントトランス120の2次コイル側に誘起される電流は、終端抵抗130によって電圧変換される。そして、この電圧を高周波信号用増幅器160で適切な信号レベルに増幅し、高周波電流と等価な電圧とする。
【0023】
このように、カレントトランス120と終端抵抗130と高周波信号用増幅器160とで、カレントトランス電流センサ部を構成する。
【0024】
分波器110で分けられた直流・低周波電流は、シャント抵抗140に導かれる。この直流・低周波電流によって、シャント抵抗140の両端に生じる電圧降下Vdを直流・低周波信号用増幅器150で適切な信号レベルに増幅し、直流・低周波電流と等価な電圧とする。
【0025】
このように、シャント抵抗140と直流・低周波信号用増幅器150とで、シャント抵抗電流センサ部を構成する。
【0026】
高周波信号用増幅器160の出力電圧と、直流・低周波信号用増幅器150の出力電圧は、加算合成器170によって合成され、直流から高周波までの電流に対応した電圧の電流検出信号として電圧出力端子Voutから外部の測定器に出力される。
【0027】
このように、本実施形態によれば、ホール素子を用いることなく、直流から高周波電流まで精度よく検出できる電流センサを実現できる。これにより、従来のホール素子とカレントトランスの組合わせによる電流センサにおける問題点であった温度ドリフトに起因する直流オフセットを改善することができる。
【0028】
また、本実施形態の電流センサは、シャント抵抗型電流センサの問題点であった高周波帯域特性を、カレントトランス型の電流センサで補償している。これにより、シャント抵抗型電流センサの安定した直流特性と、カレントトランス型の電流センサの広帯域性とを併せ持つことが可能となる。
【0029】
図2は、本実施形態の電流センサのより具体的な構成例を示す図である。図1と同じ部位については同じ符号を付している。本図の例では、分波器110を、インダクタ110aとキャパシタ110bの組合わせで構成し、ある周波数以下の電流はインダクタ110aを通過させ、それ以上の周波数の電流はキャパシタ110bを通過させることで、測定電流を周波数成分によって選択的に分流している。
【0030】
なお、インダクタ110aは、並列のキャパシタ110bとの共振を避けるために、高周波チョーク等の抵抗性のインダクタを使用することが望ましい。また、本例では、簡易なフィルタ構成としているが、実装上は、次数の高いフィルタを構成してLPF側とHPF側の遮断特性を揃えることが望ましい。
【0031】
本図において、インダクタ110aを通過した直流・低周波電流は、シャント抵抗140にて電圧変換され、直流・低周波信号用増幅器150で適切な信号レベルおよび周波数特性に加工される。また、キャパシタ110bを通過した高周波電流によりカレントトランス120の2次コイルに電流が誘起される。この電流が終端抵抗130にて電圧変換され、高周波信号用増幅器160で適切な信号レベルおよび周波数特性に加工される。
【0032】
直流・低周波信号用増幅器150および高周波信号用増幅器160が出力する信号を加算合成器170で合成することにより、直流から高周波まで平坦な周波数特性を実現するとともに、安定な直流ドリフト特性を実現することができる。
【符号の説明】
【0033】
100…電流センサ
110…分波器
110a…インダクタ
110b…キャパシタ
120…カレントトランス
130…終端抵抗
140…シャント抵抗
150…直流・低周波信号用増幅器
160…高周波信号用増幅器
170…加算合成器
200…シャント抵抗型電流センサ
210…シャント抵抗
220…差動増幅器
300…電流センサ
310…フェライトコア
320…2次コイル
330…終端抵抗
340…高周波パス用増幅器
350…ホール素子
360…低周波パス用増幅器
370…帰還用電流増幅器
380…加算合成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定電流に対応した電圧値を出力する電流センサであって、
測定電流を第1周波数帯域成分と、前記第1周波数帯域よりも低く、直流を含む第2周波数帯域成分とに分ける分波器と、
カレントトランスを有し、前記第1周波数帯域成分に分けられた電流に対応した電圧値を出力するカレントトランス電流センサ部と、
シャント抵抗を有し、前記第2周波数帯域成分に分けられた電流に対応した電圧値を出力するシャント抵抗電流センサ部と、
前記カレントトランス電流センサ部および前記シャント抵抗電流センサ部が出力する電圧値を合成して出力する加算合成器とを備えたことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記分波器は、測定電流の前記第1周波数帯域成分を通過させるキャパシタと、前記第2周波数帯域成分を通過させるインダクタとを備えて構成されることを特徴とする電流センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電流センサであって、
前記カレントトランス電流センサ部は、終端抵抗を含み、前記第1周波数帯域成分に分けられた電流を前記カレントトランスの1次コイルに流し、2次コイルに誘起された電流を前記終端抵抗に流すことで前記電流に対応した電圧値を生成することを特徴とする電流センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電流センサであって、
前記シャント抵抗電流センサ部は、前記第2周波数帯域成分に分けられた電流を前記シャント抵抗に流すことで前記電流に対応した電圧値を生成することを特徴とする電流センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−38964(P2011−38964A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188374(P2009−188374)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】