説明

電流検出装置

【課題】電流検出装置及び導電体の配置スペースを小さくすることができる電流検出装置を提供する。
【解決手段】電流検出装置は、バスバ7Uが挿入される挿入部60Xが切り欠き形成された基板60と、挿入部60Xを挟むように基板60に設けられた一対の磁気検出素子70とを有する。一対の磁気検出素子70は、挿入部60Xにバスバ7Uが挿入されたときに、そのバスバ7Uを挟むように設けられるとともに、バスバ7Uを流れる電流Iにより発生する磁束Φと集磁面71とが直交するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体に流れる電流を検出する電流検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バスバなどの電力線に流れる電流を非接触状態で検出する電流検出装置が知られている。この種の電流検出装置では、バスバを取り囲むように設けられたリング状の集磁コアによって、バスバに流れる電流に応じてバスバの周囲に発生する磁束が集磁される。そして、集磁された磁束がホール素子などの磁気検出素子によって検出され、バスバに流れる電流が検出される。しかし、このような電流検出装置では、集磁コアを設けるための配置スペースが必要であり、装置の大型化を招いていた。
【0003】
そこで、集磁コアを用いずに直接磁束を検出してバスバに流れる電流を検出する、いわゆるコアレス型の電流検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このコアレス型の電流検出装置では、集磁コアが不要となるため装置を小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4385883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年、上記電流検出装置が適用される装置(インバータなど)の小型化が進み、電流検出装置及びバスバに対する配置スペースの縮小化の要請が高まっている。このため、電流検出装置及びバスバの配置スペースの縮小化が強く望まれていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、電流検出装置及びバスバの配置スペースを小さくすることができる電流検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、導電体が挿入される第1挿入部が形成された基板と、前記第1挿入部を挟むように前記基板に設けられた一対の磁気検出素子と、を有し、前記一対の磁気検出素子は、前記第1挿入部に前記導電体が挿入されたときに、前記導電体を挟むように設けられるとともに、前記導電体を流れる電流により発生する磁束と集磁面とが直交するように設けられていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、基板の挿入部に導電体が挿入されると、磁気検出素子の配置スペースとなる基板の厚さが導電体の配置スペースとしても利用されることになる。このため、例えば挿入部を有さない基板上に導電体を配置する場合と比べて、導電体の配置スペースを小さくすることができる。この結果、挿入部に導電体を挿入したときに、電流検出装置及び導電体の配置スペースを小さくすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電流検出装置において、前記導電体が挿入される第2挿入部が形成されたケースを有し、前記ケースには、前記第1挿入部が前記第2挿入部と対向するように前記基板が収容され、前記ケースには、前記導電体が前記第1挿入部及び前記第2挿入部に挿入された状態で固定されることを要旨とする。この発明によれば、磁気検出素子の収容されたケースに導電体が固定されるため、磁気検出素子と導電体との相対的な位置関係をケースによって安定的に保持することができる。これにより、位置ずれによる検出精度の悪化等の問題の発生を抑制することができ、導電体に流れる電流を安定した検出精度で検出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電流検出装置において、前記ケースには、前記導電体を締結するための取付部材が形成されていることを要旨とする。この発明によれば、ケースと導電体を締結することができるため、ケースと導電体を容易に固定することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電流検出装置において、前記第1挿入部及び前記第2挿入部に挿入された前記導電体を有し、前記導電体に形成された貫通孔を貫通するとともに前記取付部材に螺入するねじによって、前記ケースに前記導電体が固定されていることを要旨とする。この発明では、導電体の貫通孔をケースの取付部材に位置決めした状態でケースに導電体を固定すれば、ケースと導電体とが予め設定された位置関係で配置される。これにより、ケース内に収容された各磁気検出素子と導電体との位置関係を所望の位置関係に精度良く合わせることができる。したがって、これら磁気検出素子によって、導電体に流れる電流を精度良く検出することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の電流検出装置において、前記第1挿入部は前記基板の端部が開口するように形成され、前記第2挿入部は前記ケースの端部が開口するように形成されていることを要旨とする。この発明によれば、第1挿入部及び第2挿入部の形成された基板及びケースの端部に開口端が形成されるため、その開口端から第1挿入部及び第2挿入部内に導電体を挿入することができる。したがって、例えば導電体を複雑な形状(多数の屈曲部を有する形状など)に形成した後であっても、その導電体を第1挿入部及び第2挿入部に容易に挿入させることができる。この結果、導電体の形状の自由度を向上させることができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の電流検出装置において、前記ケース及び前記基板の一方に突起部が形成され、前記ケース及び前記基板の他方に前記突起部と嵌合する凹部が形成されていることを要旨とする。この発明によれば、突起部と凹部を嵌合させることにより、ケースに対して基板を位置決めすることができる。これにより、基板に設けられた一対の磁気検出素子と第2挿入部との位置関係を所望の位置関係に精度良く合わせることができる。ひいては、第2挿入部に導電体が挿入されたときに、その導電体に対して各磁気検出素子を所望の位置に精度良く配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電流検出装置及び導電体の配置スペースを小さくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の電流検出装置の使用例を示すブロック回路図。
【図2】電流検出装置の分解斜視図。
【図3】電流検出装置を示す概略斜視図。
【図4】磁気検出素子とバスバの位置関係を示す概略斜視図。
【図5】電流検出装置を示す概略断面図。
【図6】変形例の電流検出装置を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。図1に示すように、本実施形態の電流検出装置10は、3相交流(U相、V相、W相)により3相モータMGを駆動する駆動装置1に適用される。
【0017】
駆動装置1は、インバータ2と、そのインバータ2を制御する制御装置3とを有している。インバータ2は、6個のスイッチング素子Q1〜Q6を有している。各スイッチング素子Q1〜Q6としては、例えば絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ(insulated gate bipolar transistor:IGBT)やパワーMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)等のパワー半導体素子が用いられる。
【0018】
第1のスイッチング素子Q1は、第2のスイッチング素子Q2と直列に接続されている。第3のスイッチング素子Q3は、第4のスイッチング素子Q4と直列に接続されている。第5のスイッチング素子Q5は、第6のスイッチング素子Q6と直列に接続されている。各スイッチング素子Q1〜Q6には、ダイオードDが逆並列接続されている。すなわち、各スイッチング素子Q1〜Q6のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードDが接続されている。
【0019】
スイッチング素子Q1,Q3,Q5のコレクタはそれぞれ配線4を介して直流電源6のプラス端子に接続され、スイッチング素子Q2,Q4,Q6のエミッタはそれぞれ配線5を介して直流電源6のマイナス端子に接続されている。スイッチング素子Q1,Q2間の接続点は、バスバ7U(導電体)を介して3相モータMGのU相コイルに接続されている。スイッチング素子Q3,Q4間の接続点は、バスバ7V(導電体)を介して3相モータMGのV相コイルに接続されている。スイッチング素子Q5,Q6間の接続点は、バスバ7W(導電体)を介して3相モータMGのW相コイルに接続されている。
【0020】
バスバ7U,7V,7Wには、電流検出装置10がそれぞれ設けられている。電流検出装置10は、磁気検出素子70(図2参照)を有している。この磁気検出素子70としては、例えばホール素子、MR(磁気抵抗効果)素子、MI(磁気インピーダンス)素子等を用いることができる。この電流検出装置10は、集磁コアを備えておらず、バスバ7U,7V,7Wに流れる電流に応じてバスバ7U,7V,7Wの周囲に発生する磁束を磁気検出素子70で直接検出することにより、バスバ7U,7V,7Wに流れる電流値を検出する。そして、電流検出装置10は、検出結果を制御装置3に出力する。
【0021】
制御装置3は、3相モータMGのトルク指令値、各電流検出装置10から入力される電流値、及びインバータ2の入力電圧に基づいて3相モータMGの各相コイル電圧を演算する。そして、制御装置3は、演算結果に基づいてスイッチング素子Q1〜Q6をオン・オフする制御信号を生成してインバータ2に出力する。なお、インバータ2は、制御信号に基づいて、直流電源6から入力される直流電圧を交流電圧に変換して3相モータMGに出力する。
【0022】
次に、電流検出装置10の構造について説明する。なお、バスバ7U,7V,7Wに設けられる電流検出装置10の構成はそれぞれ略同様であるため、ここでは、バスバ7Uに設けられる電流検出装置10を代表的に説明する。
【0023】
図2及び図3に示すように、電流検出装置10は、ホルダ21とカバー22とからなる樹脂製のケース20と、ケース20の内部に収容される基板60と、基板60に実装された一対の磁気検出素子70とを有している。
【0024】
図2に示すように、ホルダ21は、略直方体状に形成されている。具体的には、ホルダ21は、平面視コ字状に形成された板状の底壁30と、その底壁30の縁辺から立設されて平面視コ字状に形成された側壁40とを有し、有底箱状に形成されている。ここで、側壁40は、長手方向(Y方向)に延設された第1及び第2側壁部41,42と、それら第1及び第2側壁部41,42間に形成され短手方向(X方向)に延設された第3側壁部43とを有している。また、側壁40は、第3側壁部43と対向して平行に形成され第1側壁部41と連続して形成された第4側壁部44と、第3側壁部43と対向して平行に形成され第2側壁部42と連続して形成された第5側壁部45とを有している。さらに、側壁40は、第4及び第5側壁部44,45間に平面視コ字状に形成された第6〜第8側壁部46〜48を有している。
【0025】
第6側壁部46は、第4側壁部44と連続して形成され、該第4側壁部44に直交してホルダ21の内部に向かってY方向に延設されている。第7側壁部47は、第6側壁部46と連続して形成され、該第6側壁部46に直交して第2側壁部42に向かってX方向に延設されている。第8側壁部48は、第7側壁部47と連続して形成され、該第7側壁部47に直交して第5側壁部45に向かって延設されている。この第8側壁部48は、第5側壁部45と連続して形成されている。そして、これら第6〜第8側壁部46〜48によって、バスバ7Uが挿入される挿入部21Xが区画形成されている。換言すると、ホルダ21には、第3側壁部43と対向する側壁40の幅方向中央部に四角柱状の凹部が挿入部21Xとして形成されている。この挿入部21Xは、第3側壁部43と対向する側壁40(端部)を開口するように形成されている。
【0026】
底壁30の四隅には、基板60を支持する台座31がそれぞれ形成されている。具体的には、台座31は、第1及び第2側壁部41,42と第3側壁部43とによって形成された角部と、第1、第4及び第6側壁部41,44,46によって形成された角部と、第2、第5及び第8側壁部42,45,48によって形成された角部とに形成されている。各台座31には、基板60を位置決めするための略円柱状の位置決め突起部32が突設されている。また、第3側壁部43寄りの底壁30には、貫通孔33が形成されている。
【0027】
上記第1〜第5側壁部41〜45には、カバー22を位置決めするための略四角柱状の突出部49が突設されている。
第1側壁部41には、連結部50を介してボス部51が固定されている。ボス部51は、ホルダ21(第1側壁部41)と一体に形成されている。このボス部51は、ケース20とバスバ7Uとをねじ止めするために設けられた取付部材である。ボス部51は、円筒状に形成され、その中空部51Xが第1側壁部41の高さ方向(Z方向)に平行して延設されている。この中空部51Xの内面には、ねじ52が螺入される雌ねじが形成されている。
【0028】
基板60は、略矩形板状に形成されている。基板60には、該基板60がホルダ21に収容された状態において、上記挿入部21Xと対向する位置に挿入部60Xが切り欠き形成されている。具体的には、挿入部60Xは、基板60がホルダ21に収容された状態において、挿入部21Xを構成する第6〜第8側壁部46〜48が当該挿入部60Xに挿入される大きさに形成されている。この挿入部60Xは、基板60の厚さ方向に貫通するように形成されている。また、基板60の四隅近くには、当該基板60をホルダ21に収容する際に上記位置決め突起部32と対向する位置に位置決め孔61が形成されている。
【0029】
基板60の表面には、図示しない回路が形成されている。また、基板60の表面には、上記挿入部60Xを挟むようにして一対の磁気検出素子70が表面実装されている。これら一対の磁気検出素子70は、基板60がホルダ21に収容され、且つ上記挿入部60Xにバスバ7Uが挿入されたときに、図4に示すように、バスバ7Uの電流Iが流れる方向に延びる面8を挟むように配置される。具体的には、各磁気検出素子70は、その集磁面71が、バスバ7Uに流れる電流Iに応じてバスバ7Uの周囲に発生する磁束Φと直交するように配置されている。
【0030】
図2に示すように、基板60の裏面には、上記制御装置3と電気的に接続するためのハーネス(図示略)が接続される接続端子62が形成されている。接続端子62は、基板60の表面に形成された図示しない回路と電気的に接続されている。この接続端子62は、基板60がホルダ21に収容された状態において、底壁30の貫通孔33から露出されるように形成されている。
【0031】
カバー22は、略矩形板状に形成されている。カバー22には、該カバー22がホルダ21に組み付けられた状態において、上記挿入部21Xと対向する位置に挿入部22Xが切り欠き形成されている。図3に示すように、カバー22がホルダ21に組み付けられると、挿入部21X,22Xが連通され、それら挿入部21X,22Xがケース20の挿入部20Xになる。上記第1〜第5側壁部41〜45に対応するカバー22の縁辺には、ホルダ21に組み付けられた際に上記突出部49と係合する凹部23がそれぞれ切り欠き形成されている。
【0032】
図2に示すように、バスバ7Uは、断面が長方形である金属板(例えば、銅板)が階段状に曲げて形成されている。具体的には、バスバ7Uは、接続孔を有する第1接続部7aと、第1接続部7aに連続して形成され平面視略L字状に形成された第1導電部7bと、第1導電部7bと連続して形成され、該第1導電部7bに直交してホルダ21の側壁40の高さ方向(Z方向)に延設された第2導電部7cとを有している。バスバ7Uは、第2導電部7cと連続して形成され、該第2導電部7cに直交してX方向に延設された第3導電部7dと、第3導電部7dと連続して形成され、接続孔を有する第2接続部7eとを有している。ここで、第2導電部7cは第1導電部7bの端部から下向きに垂直に屈曲され、第3導電部7dは第2導電部7cの端部から上記第1導電部7bの端部とは反対方向に水平に屈曲されている。これにより、第1導電部7b、第2導電部7c及び第3導電部7dは階段状に形成されている。そして、側壁40の高さ方向に延設された第2導電部7cの一部が挿入部21X,22X,60Xに挿入される。具体的には、第2導電部7cの電流Iが流れる方向に延設された面が第6及び第8側壁部46,48と対向するように、第2導電部7cの一部が挿入部21X,22X,60Xに挿入される。このように挿入部21X,22X,60Xに挿入される第2導電部7cの面8は平坦な面に形成されている。
【0033】
第3導電部7dには、バスバ7Uがケース20に固定される際に上記ボス部51の中空部51Xと対向する位置に貫通孔7Xが形成されている。また、第1接続部7a及び第2接続部7eの一方の接続部がインバータ2に接続され、他方の接続部が3相モータMGに接続される。
【0034】
次に、上記電流検出装置10とバスバ7Uとの組み付け態様を説明するとともに、電流検出装置10の作用を説明する。
まず、図2に示すように、基板60の接続端子62が形成された面をホルダ21に対向させるとともに、基板60の挿入部60Xをホルダ21の挿入部21Xに対向させるように、基板60をホルダ21に挿入する。このとき、ホルダ21の各位置決め突起部32を基板60の各位置決め孔61に嵌合させる。このように位置決めされた状態で、図示しないねじ等の締結部材によってホルダ21に基板60を固定する。これにより、基板60が位置決めされた状態でホルダ21に固定(収容)されるため、その基板60に表面実装された一対の磁気検出素子70が挿入部21Xに対して予め設定された位置関係で配置される。
【0035】
次に、カバー22を位置決めしつつホルダ21に積層する。すなわち、カバー22の挿入部22Xをホルダ21の挿入部21Xに対向させ、且つホルダ21の突出部49にカバー22の凹部23に係合させながらカバー22をホルダ21に積層する。その後、図3に示すように、突出部49をカバー22の内側に曲げるように加工することにより、カバー22をホルダ21に固定する。これにより、挿入部21X,22Xが連通されて形成された挿入部20Xを有し、平面視コ字状に形成されたケース20が形成される。
【0036】
続いて、ケース20の挿入部20Xの開口端からバスバ7Uの第2導電部7cを挿入し、挿入部20X内に第2導電部7cを挿入させる。このとき、第3導電部7dの貫通孔7Xがホルダ21のボス部51の中空部51Xに対向するように、ケース20に対してバスバ7Uを位置決めする。そして、図5に示すように、第3導電部7dの貫通孔7Xを貫通するとともに、ケース20のボス部51の雌ねじ部に螺合するねじ52によって、バスバ7Uをケース20に固定する。これにより、基板60が収容されたケース20に対してバスバ7Uが位置決めされた状態で固定されるため、基板60に表面実装された磁気検出素子70とバスバ7Uとが予め設定された位置関係で配置される。
【0037】
また、上述のようにケース20とバスバ7Uとが固定されると、磁気検出素子70の配置スペースとなる基板60の厚さがバスバ7Uの配置スペースにも利用されるため、バスバ7Uの配置スペースを縮小化することができる。
【0038】
以上のようにケース20とバスバ7Uが固定された状態において、図4に示すように、バスバ7Uに電流Iが流れると、その電流Iに応じてバスバ7U(第2導電部7c)の周囲に磁束Φが発生する。このとき、電流Iに応じて発生した磁束Φが各磁気検出素子70の集磁面71を垂直に通過するように一対の磁気検出素子70が配置されている。このため、上記磁束Φの発生に伴って、一対の磁気検出素子70は、磁界強度に応じた電圧を基板60に形成された図示しない回路に出力する。この回路は、一対の磁気検出素子70からの検出信号(電圧値)に基づいて、バスバ7Uに流れた電流値を検出する。具体的には、一対の磁気検出素子70の集磁面71には、互いに異なる方向から磁束Φが通過される。このため、一対の磁気検出素子70からの検出信号は、例えば電流Iの増加に伴って一方の検出信号の電圧値が大きくなる一方で、他方の検出信号の電圧値が小さくなる。そして、上記図示しない回路は、反対の特性を有する2つの検出信号の差分値を算出し、その差分値に基づいて、バスバ7Uに流れた電流値を検出する。このような差分値を利用することにより、ノイズ成分をキャンセルしてバスバ7Uに流れた電流値を検出することができるため、バスバ7Uに流れる電流値を精度良く検出することができる。
【0039】
さらに、ケース20に対してバスバ7Uが位置決めされた状態で固定されることで、一対の磁気検出素子70がバスバ7Uに対して所望の位置に精度良く配置されている。このため、バスバ7Uに流れる電流値を精度良く検出することができる。
【0040】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)基板60の厚さ方向に貫通された挿入部60Xにバスバ7Uを挿入し、そのバスバ7Uを挟むように一対の磁気検出素子70を設けるようにした。これにより、磁気検出素子70の配置スペースとなる基板60の厚さがバスバ7Uの配置スペースにも利用されることになるため、バスバ7Uの配置スペースを小さくすることができ、電流検出装置10及びバスバ7U全体の配置スペースを小さくすることができる。ひいては、電流検出装置10及びバスバ7Uが配置される駆動装置1を小型化することができる。
【0041】
(2)基板60及びその基板60に実装された磁気検出素子70が収容されたケース20にバスバ7Uを直接固定するようにした。これによれば、磁気検出素子70とバスバ7Uとの相対的な位置関係をケース20によって安定的に保持することができるため、位置ずれによる特性の悪化等を抑制することができる。
【0042】
例えば電流検出装置10とバスバ7Uとが互いに異なる部材によって固定される場合には、電流検出装置10やバスバ7Uの製造誤差やそれらを固定するための部材の取付公差などに起因して、磁気検出素子70とバスバ7Uとの位置関係にばらつきが生じる。すると、磁気検出素子70から出力される電圧値にばらつきが生じ、バスバ7Uに流れる電流の検出精度が悪化するという問題がある。
【0043】
これに対し、本実施形態では、ケース20に対してバスバ7Uを直接固定するようにした。これにより、例えば電流検出装置10とバスバ7Uを別に固定するための部材の取付公差などの要因が取り除かれるため、磁気検出素子70とバスバ7Uとの位置関係にばらつきが生じることを好適に抑制することができ、その位置関係を所望の位置関係に精度良く合わせることができる。したがって、バスバ7Uに流れる電流値を精度良く検出することができる。
【0044】
(3)ケース20にバスバ7Uをねじ止めするようにした。これにより、ケース20にバスバ7Uを容易に固定することができる。例えばケース20とバスバ7Uをモールドしてケース20にバスバ7Uに固定する場合には、バスバ7Uの形状が複雑であると金型の形状も複雑になってしまう。これに対し、ケース20にバスバ7Uをねじ止めする場合には、バスバ7Uが複雑な形状であっても挿入部20Xに挿入可能な形状であれば、ケース20に複雑な形状のバスバ7Uを簡単に固定することができる。
【0045】
(4)ケース20の端部を開口するように挿入部20Xを形成し、基板60の端部を開口するように挿入部60Xを形成した。これにより、ケース20及び基板60の端部に開口端が形成されるため、その開口端から挿入部20X,60X内にバスバ7Uを挿入することができる。したがって、例えばバスバ7Uを複雑な形状に形成した後であっても、そのバスバ7Uを挿入部20X,60Xに容易に挿入させることができる。
【0046】
(5)ケース20のホルダ21に位置決め突起部32を形成し、基板60に位置決め孔61を形成するようにした。そして、各位置決め突起部32を各位置決め孔61に嵌合させることにより、ホルダ21に基板60を位置決めするようにした。これにより、基板60に表面実装された一対の磁気検出素子70と挿入部20Xとの位置関係を所望の位置関係に精度良く合わせることができる。ひいては、挿入部20Xに挿入されたバスバ7Uに対して各磁気検出素子70を所望の位置に精度良く配置することができる。
【0047】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
○ 上記実施形態では、ケース20の挿入部20Xに挿入された第2導電部7cと直交するように屈曲された第3導電部7dとケース20のボス部51とをねじ止めするようにした。これに限らず、図6に示されるように、ケース20内部に挿入部20X(図6では図示略)を通じて挿入された導電部7fの一部であって、挿入部20Xから露出された面9に対してねじ止めを行うようにしてもよい。この場合には、例えばケース20の一側面20Aに、上記導電部7fが挿通される溝部53Xを有する延出部53が形成され、その延出部53にねじ52が螺入されるボス部54が形成される。そして、延出部53及び導電部7fを貫通するとともに、ボス部54に螺合するねじ52によって、ケース20にバスバ7Uが固定される。なお、ねじ52によりねじ止めされる面は、挿入部20Xから露出された面に限らず、挿入部20X内に挿入された面であってもよい。
【0048】
○ 上記実施形態では、基板60に、その厚さ方向に貫通する挿入部60Xを形成するようにした。これに限らず、バスバ7Uの一部が挿入可能な形状であれば、挿入部60Xを凹状に形成するようにしてもよい。
【0049】
○ 上記実施形態では、挿入部20X,60Xを切り欠き形成するようにした。これに限らず、例えばケース20及び基板60の中央部に挿入部20X,60Xを設けるようにしてもよい。
【0050】
○ 上記実施形態では、ねじ止めによりケース20とバスバ7Uを固定するようにした。これに限らず、例えばボルト及びナットなどによりケース20とバスバ7Uを締結するようにしてもよい。また、例えばケース20とバスバ7Uをモールドすることにより、ケース20とバスバ7Uを固定するようにしてもよい。
【0051】
○ 上記実施形態におけるバスバ7Uの断面形状を長方形としたが、これに限らず、例えばバスバ7Uの断面形状を円形や三角形にしてもよい。
○ 上記実施形態では、ケース20に位置決め突起部32を形成し、基板60に位置決め孔61を形成するようにした。これに限らず、例えばケース20に位置決め孔を形成し、基板60に位置決め突起部を形成するようにしてもよい。また、位置決め孔61の代わりに、位置決め突起部32と嵌合される凹部を形成するようにしてもよい。
【0052】
○ 上記実施形態におけるケース20を省略してもよい。この場合であっても、基板60に挿入部60Xが形成され、その挿入部60Xを挟むように一対の磁気検出素子70が基板60に設けられ、挿入部60Xにバスバ7Uが挿入されたときに、一対の磁気検出素子70がバスバ7Uを挟むように配置された構成を有していれば、上記実施形態の(1)と同様の効果を奏する。
【0053】
○ 上記実施形態では、電流検出装置10を駆動装置1に適用するようにしたが、電流検出装置10の適用位置はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0054】
7U…バスバ(導電体)、7X…貫通孔、10…電流検出装置、20…ケース、20X…挿入部(第2挿入部)、21…ホルダ、21X…挿入部(第2挿入部)、22…カバー、22X…挿入部(第2挿入部)、32…位置決め突起部(突起部)、61…位置決め孔(凹部)、51,54…ボス部(取付部材)、52…ねじ、60…基板、60X…挿入部(第1挿入部)、70…磁気検出素子、71…集磁面、I…電流、Φ…磁束。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体が挿入される第1挿入部が形成された基板と、
前記第1挿入部を挟むように前記基板に設けられた一対の磁気検出素子と、を有し、
前記一対の磁気検出素子は、前記第1挿入部に前記導電体が挿入されたときに、前記導電体を挟むように設けられるとともに、前記導電体を流れる電流により発生する磁束と集磁面とが直交するように設けられていることを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記導電体が挿入される第2挿入部が形成されたケースを有し、
前記ケースには、前記第1挿入部が前記第2挿入部と対向するように前記基板が収容され、
前記ケースには、前記導電体が前記第1挿入部及び前記第2挿入部に挿入された状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記ケースには、前記導電体を締結するための取付部材が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記第1挿入部及び前記第2挿入部に挿入された前記導電体を有し、
前記導電体に形成された貫通孔を貫通するとともに前記取付部材に螺入するねじによって、前記ケースに前記導電体が固定されていることを特徴とする請求項3に記載の電流検出装置。
【請求項5】
前記第1挿入部は前記基板の端部を開口するように形成され、
前記第2挿入部は前記ケースの端部を開口するように形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記ケース及び前記基板の一方に突起部が形成され、前記ケース及び前記基板の他方に前記突起部と嵌合する凹部が形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113687(P2013−113687A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259592(P2011−259592)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(310014322)アルプス・グリーンデバイス株式会社 (47)
【Fターム(参考)】