説明

電源システム

【課題】 信頼性が高くかつ安定した電力の供給が可能な電源システムを提供する。
【解決手段】 電源システムに備えた複数の整流器ユニット12には、出力電流を検出する出力電流検出回路20が備えられ、その検出結果がコントローラ13に備えたCPU21に取り込まれている。そして、CPU21は、最大電流を出力する整流器ユニット12と、最小電流を出力する整流器ユニット12とを検出し、それら両整流器ユニット12に補正信号を送って、最大電流を下げ、かつ、最小電流を上げる。そして、最大電流と最小電流との差が所定の閾値より小さくなるまで、この動作が繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、直流電源装置を並列運転して負荷に電力を供給しつつ各直流電源装置の出力電流の平衡化を図った電源システムに関する。
【0002】
【従来の技術】直流電源装置の並列運転は、オーバーフロー方式が一般的であるが、オーバーフロー方式は各直流電源装置毎に負荷分担率が異なっているため、直流電源装置の構成部品の温度上昇が異なり、そのため直流電源装置の寿命に相違が生じてしまう。一方、負荷分担率を同じになるように調整しようとすると、直流電源装置の出力インピーダンスが非常に低いため、各直流電源装置の出力電圧を極めて精密に一致させる必要があり、かなりの労力を要する。また、調整後の経年変化、負荷変動などのために電流バランス状態を長期にわたって維持することはできない。
【0003】これらの問題に対処する従来の電源システムとして、平均電流制御方式が知られている。この方式は、システムに備えた直流電源装置の出力電流の平均値に、各直流電源装置の出力電流を合わせるように制御するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した方式では、いずれかの直流電源装置が故障したときに、その直流電源装置の故障を検出し、正常な直流電源装置の出力電流を負荷に合わせるように再分配する必要があるので、故障時の過渡特性が悪くなるという問題があった。本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、信頼性が高くかつ安定した電力の供給が可能な電源システムの提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る電源システムは、少なくとも2つ以上の直流電源装置を並列運転して負荷に電力を供給すると共に、直流電源装置の出力電流を平衡化させる電源システムにおいて、各直流電源装置に設けられて、与えられた目標電圧と直流電源装置の出力電圧との偏差に基づいて、出力電圧をフィードバック制御する第1出力電圧制御手段と、基準電圧を出力する基準電圧回路と、各直流電源装置に対応した補正電圧を基準電圧に加算して、各直流電源装置毎に目標電圧を生成する第2出力電圧制御手段と、各直流電源装置の出力電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段の検出結果に基づき、全部の直流電源装置のうち最大電流を出力する直流電源装置と、最小電流を出力する直流電源装置とを検出する直流電源装置検出手段とを備え、第2出力電圧制御手段は、最大電流を出力する直流電源装置の出力電圧を下げかつ最小電流を出力する直流電源装置の出力電圧を上げるように目標電圧を生成して、最大電流と最小電流との差を所定の閾値内に収めるように構成されたところに特徴を有する。
【0006】請求項2の発明は、請求項1記載の電源システムにおいて、補正電圧は、全部の直流電源装置に共通する一括補正電圧と、個々の直流電源装置に対応する加減電圧とを合わせてなり、一括補正電圧は、設定手段により、全部の直流電源装置に関して一括変更可能となっているところに特徴を有する。
【0007】
【発明の作用及び効果】<請求項1の発明>本発明の電源システムでは、直流電源装置検出手段が、最大電流を出力する直流電源装置と、最小電流を出力する直流電源装置とを検出し、その検出結果に基づいて、出力電圧補正手段が、各直流電源装置の出力電圧を調整し、その結果、最大電流と最小電流との差が縮まる。そして、最大電流と最小電流との差が所定の閾値より小さくなるまで、この動作が行われる。このようにして、各直流電源装置の出力電流が平衡化され、それら各直流電源装置の構成部品の温度上昇を均一にすることができるから、各直流電源装置の寿命がほぼ同じになり、電源システムの信頼性が向上する。
【0008】<請求項2の発明>設定手段を操作することにより、出力電圧補正手段から出力される全部の補正電圧に含まれる一括補正電圧が一括してオフセットされ、もって電源システム全体の出力電圧を調整することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態の電源システムは、図1に示すように、複数の整流器ユニット12(本発明の直流電源装置に相当する。以下、適宜、「ユニット12」という)を並列接続して、その入力側にノイズフィルタ32を介して交流電圧を入力するための入力端子を設ける一方、出力側には蓄電池10を介して負荷を接続するための出力端子を設け、さらに、各整流器ユニット12から延びた複数の信号線を電流バランスコントローラ13(以下、「コントローラ13」という)に接続してなる。
【0010】整流器ユニット12は、少なくとも2台以上からなり、より詳細には、本システム全体の定格容量に必要なN台の整流器ユニット12に予備としての1台の整流器ユニット12を加えたいわゆるN+1台方式の冗長系を採用して、信頼性を向上させてある。
【0011】そして、各整流器ユニット12に設けられた出力電圧制御回路16(図2参照)が、その整流器ユニット12の出力電圧をフィードバック制御している。より具体的には、図3に示すように、出力電圧制御回路16に内蔵したOPアンプ17のマイナス入力端子には、整流器ユニット12の出力電圧VT が分圧回路30を介して入力される一方、OPアンプ17のプラス入力端子には、コントローラ13から出力されたPWM信号(後述の基準電圧調整信号H)をCR積分回路19でアナログ化した補正電圧VH と、基準電圧回路18から出力された基準電圧VRfとが加算回路33にて加算されて入力される。そして、出力電圧制御回路16は、基準電圧VRfと補正電圧VH とを加えた電圧(VRf+VH )と、出力電圧VT との電位差に基づき、整流器ユニット12の出力電圧を制御する。
【0012】各整流器ユニット12には、自身の出力電流を検出する出力電流検出回路20(図2参照)が備えられ、その検出結果を次述のコントローラ13に出力する。
【0013】コントローラ13には、図2に示すように、CPU21が備えられ、このCPU21の入出力ポートに、各ユニット12の信号線が接続されている。そして、CPU21に、各出力電流検出回路20の検出結果と、各ユニット12の運転信号とが送られる。
【0014】CPU21は、各出力電流検出回路20から送られた検出結果を比較し、全ユニット12のうち最大電流を出力する整流器ユニット12と、最小電流を出力する整流器ユニット12とを検出する。また、その最大電流と最小電流との差が所定の閾値より小さいか否かを判別する。
【0015】CPU21は、各整流器ユニット12に対応した基準電圧調整信号Hを生成し、これら基準電圧調整信号Hがコントローラ13から一括して出力される。この各基準電圧調整信号Hは、電圧一括設定用の一括補正値H0 と、個々のユニット12に対応して加減される加減定数H1 とを合わせた値に対応する内容をなし、コントローラ13からPWM信号として出力される。詳細については、以下の動作説明にて述べる。
【0016】次に、本実施形態の電源システムの動作を説明する。電源システムを起動すると、CPU21が、一括補正値H0 に基づいて生成した各基準電圧調整信号Hを全部の整流器ユニット12に一括して送る。すると、基準電圧調整信号Hは、CR積分回路19(図3参照)にてアナログの補正電圧VH に変換される。ここで、全てのユニット12における補正電圧VH は、共に一括補正値H0 に対応したVH0(本発明の「一括補正電圧」に相当する)となっているから、これが基準電圧VRfと加算されて、各ユニット12の出力電圧制御回路16に同一の目標電圧(VRf+VH0)として取り込まれる。そして、全ユニット12の出力電圧制御回路16は、同じ目標電圧(VRf+VH0)を受けて、それに応じた出力電圧を整流器ユニット12から出力させる。
【0017】ところで、整流器ユニット12の出力インピーダンスは非常に小さいので、各ユニット12間の出力電圧の僅かなばらつきにより、各ユニット12の電流分担に大きな差が生じる。また、仮にばらつきが小さくても、経年変化、負荷変動などにより、電流分担に差が生じてくる。
【0018】その具体例として、図4には、本電源システムが、例えばNo1〜No5の5つの整流器ユニット12を並列運転する場合において、各ユニット12の出力電流の検出結果と、CPU21から各ユニット12に対して出力された補正信号とが時刻を追って示され、図5R>5には、図4の各時刻に対応した各ユニット12の出力電流の推移がグラフとして示されている。
【0019】以下、図4及び図5に基づいた本システムの動作を説明すると、時刻1は、本電源システムの起動直後であり、コントローラ13はバランス動作を行っておらず、この結果、図4及び図5の時刻1における各ユニット12の出力電流はばらついたままとなる。
【0020】各ユニット12の出力電流検出回路20は、この電流値を検出してコントローラ13のCPU21に送る。すると、CPU21は、最大電流を出力している整流器ユニット12の番号No1と、最小電流を出力している整流器ユニット12の番号No5とを検出する。また、CPU21は、最大電流の値(I0 +3)アンペアと、最小電流の値(I0 −2.5)アンペアとの差が、閾値により大きいか否かを判別する。ここで、閾値を2アンペアとすると、最大電流と最小電流との差は、(I0 +3)−(I0 −2)=5アンペアであるから、閾値2アンペアより大きいと判別され、CPU21は以下のバランス動作を行う。
【0021】即ち、CPU21は、一括補正値H0 から加減常数H1 を引いた値(H0−H1)に対応させて、No1の整流器ユニット12に与える基準電圧調整信号Hを新たに生成する一方、一括補正値H0 に加減常数H1 を加えた値(H0+H1)に対応させて、No5の整流器ユニット12に与える基準電圧調整信号Hを新たに生成する。また、No2,No3,No4の各ユニット12に与える各基準電圧調整信号Hは、現状のままとし、これら基準電圧調整信号Hを、時刻2に一斉に各コンバータNo1〜No5に与える。
【0022】No1のユニット12に送られた基準電圧調整信号Hが、CR積分回路19にてアナログの補正電圧VH に変換されると、この補正電圧VH は、一括補正値H0に対応した成分VH0(本発明の「一括補正電圧」に相当する)から、加減常数H1 に対応した成分VH1(本発明の「加減電圧」に相当する)を引いた電圧値(VH0−VH1)となり、これが基準電圧VRfと加算されて目標電圧(VRf+VH0−VH1)として出力電圧制御回路16に取り込まれる。出力電圧制御回路16は、その目標電圧(VRf+VH0−VH1)に基づき、その出力電圧を制御するから、目標電圧が(VRf+VH0)であったときに比べて、出力電圧が加減電圧VH1に対応した分だけ1段階下がり、これに伴ってNo1から出力されていた最大電流が1段階、例えば1.5アンペア下がる。
【0023】一方、No5のユニット12では、上記したNo1の場合とは逆に、補正電圧VH が、一括補正値H0に対応した成分VH0に、加減常数H1 に対応した成分VH1を加えた電圧値(VH0−VH1)となり、これが基準電圧VRfと加算されて目標電圧(VRf+VH0+VH1)として出力電圧制御回路16に取り込まれるから、目標電圧が(VRf+VH0)であったときに比べて、出力電圧が加減電圧VH1に対応した分だけ1段階上げられ、これに伴ってNo5から出力されていた最小電流が1段階、例えば1.5アンペア上がる。
【0024】また、No2,No3,No4のユニット12では、補正電圧VH が、一括補正値H0に対応した成分VH0のみで構成され、目標電圧は(VRf+VH0)のままで現状とかわらないから、従って、出力電圧も出力電流も変化しない。
【0025】次いで、時刻3に、各ユニット12の出力電流値がCPU21に与えられると、CPU21は、最大電流を出力している整流器ユニット12の番号No1と、最小電流を出力している整流器ユニット12の番号No4とを検出すると共に、最大電流の値(I0 +1.5)アンペアと、最小電流の値(I0 −1.5)アンペアとの差(3アンペア)が、閾値2アンペアよりも大きいと判別する。
【0026】そして、No1のユニット12に与えている基準電圧信号Hの内容(H0-H1)を、更にもう1段下げるべく、一括補正値H0 から加減常数H1 を2つ引いた値(H0−2H1)に対応させて、No1のユニット12に与える基準電圧調整信号Hを生成する一方、No4のユニット12に与えている基準電圧信号Hの内容(H0)を1段上げるべく、一括補正値H0 に加減常数H1 を加えた値(H0+H1)に対応させて、No4の整流器ユニット12に与える基準電圧調整信号Hを生成する。また、No2,No3,No5の各ユニット12に与える各基準電圧調整信号Hの内容は、現状のままとし、これら基準電圧調整信号Hを、時刻4に一斉に各コンバータNo1〜No5に与える。
【0027】すると、No1のユニット12の出力電流がさらに1段階下がり、No4のユニット12の出力電流が1段階上がる(図5参照)。
【0028】時刻5に、各ユニット12の出力電流値がCPU21に与えられると、CPU21は、最大電流を出力している整流器ユニット12の番号No2と、最小電流を出力している整流器ユニット12の番号No5とを検出する。ところが、最大電流の値(I0 +0.5)アンペアと、最小電流の値(I0 −0.5)アンペアとの差(1アンペア)が、閾値2アンペアよりも小さいから、CPU21は、No1〜No5の各ユニット12への基準電圧調整信号Hの内容をそのままにして、それらを時刻6に一斉に各ユニット12に与える。以下、これを繰り返す。
【0029】ところで、電源システムの出力電圧を調整したい場合には、コントローラ13に備えた一括設定スイッチ23を操作すればよい。すると、一括補正値H0 の内容が変更され、これに伴って全ユニット12の出力電圧制御回路16に与えられる補正電圧VH に含まれる一括補正電圧VH0が一括にオフセットされ、もって電源システム全体の出力電圧が調整される。
【0030】このように本実施形態の電源システムによれば、各整流器ユニット12の出力電流を平衡化することができるから、各ユニット12間の構成部品の温度上昇が均一化され、各ユニット12の寿命がほぼ同じになり、電源システムの信頼性が向上する。しかも、電流平衡化のための平均値算出を必要としないから、故障時にも安定した電力供給が可能となる。また、本電源システムでは、一括設定スイッチ23により各ユニット12の出力電圧を一括に変更できるから、電流分担を均一に保ちつつ各整流器ユニット12の出力電圧を調整することができる。これにより、従来のオーバーフロー方式ではユニット台数の増加に伴って各ユニットの出力電圧の調整の手間が大幅に増大する傾向があったところ、本実施形態ではこれを簡略化できる。
【0031】<他の実施形態>本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0032】(1)前記実施形態では、全ての整流器ユニット12に一括して補正信号H0を与えることを前提としていたが、最大及び最小電流を出力する整流器ユニットにのみ加減定数H1を与える構成としてもよい。
【0033】(2)前記実施形態では、1つの電流バランスコントローラ13で、複数の整流器ユニット12を集中制御していたが、例えば、各整流器ユニット毎に電流バランスコントローラを備えて、これら複数のコントローラでいわゆる分散制御を行う構成としてもよい。この場合、各コントローラ同士が互いにデータを比較し合って、最大電流と最小電流を出力しているユニットを検出し、それらのユニットのコントローラが各ユニットの出力電圧を調整すればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電源システムのブロック図
【図2】整流器ユニットとコントローラとの関係を示すブロック図
【図3】電圧制御回路の一部を示す回路図
【図4】各時刻ごとの出力電流値と補正信号の内容をまとめたデータテーブル
【図5】各コンバータの出力電流の推移を示すグラフ
【符号の説明】
12…整流器ユニット(直流電源装置)
13…電流バランスコントローラ
16…出力電圧制御回路(第1出力電圧制御手段)
18…基準電圧回路
19…CR積分回路(第2出力電圧制御手段)
20…出力電流検出回路
23…一括設定スイッチ(設定手段)
21…CPU(直流電源装置検出手段、第2出力電圧制御手段)
H…基準電圧調整信号
H0…一括補正値
H1…加減常数
VH…補正電圧
VH0…一括補正電圧
VH1…加減電圧
VRf…基準電圧
VT…出力電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも2つ以上の直流電源装置を並列運転して負荷に電力を供給すると共に、前記直流電源装置の出力電流を平衡化させる電源システムにおいて、前記各直流電源装置に設けられて、与えられた目標電圧と前記直流電源装置の出力電圧との偏差に基づいて、前記出力電圧をフィードバック制御する第1出力電圧制御手段と、基準電圧を出力する基準電圧回路と、前記各直流電源装置に対応した補正電圧を前記基準電圧に加算して、前記各直流電源装置毎に前記目標電圧を生成する第2出力電圧制御手段と、前記各直流電源装置の出力電流を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段の検出結果に基づき、全部の前記直流電源装置のうち最大電流を出力する直流電源装置と、最小電流を出力する直流電源装置とを検出する直流電源装置検出手段とを備え、前記第2出力電圧制御手段は、前記最大電流を出力する直流電源装置の出力電圧を下げかつ前記最小電流を出力する直流電源装置の出力電圧を上げるように前記目標電圧を生成して、前記最大電流と前記最小電流との差を所定の閾値内に収めるように構成されたことを特徴とする電源システム。
【請求項2】 前記補正電圧は、全部の前記直流電源装置に共通する一括補正電圧と、個々の前記直流電源装置に対応する加減電圧とを合わせてなり、前記一括補正電圧は、設定手段により、全部の前記直流電源装置に関して一括変更可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−322134(P2000−322134A)
【公開日】平成12年11月24日(2000.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−134026
【出願日】平成11年5月14日(1999.5.14)
【出願人】(000004282)日本電池株式会社 (48)
【Fターム(参考)】