説明

電源装置、記録ヘッド駆動装置及び記録装置

【課題】 簡単な構成で負荷の誤動作を回避することができる。
【解決手段】 パルスを負荷に出力して当該負荷を駆動する駆動部に第1の電源電圧V1を印加し、駆動部におけるパルスの出力タイミングを制御するロジック部に第1の電源電圧V1よりも低い第2の電源電圧V2を印加する電源装置において、第1の電源電圧V1を基準にして第2の電源電圧V2を生成するレギュレータ98を備え、第2の電源電圧V2の立ち上がりのタイミングを、第1の電源電圧V1の立ち上がりのタイミングと略同時にする補助コンデンサ101をレギュレータ98に並列に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レギュレータを備えた電源装置、記録ヘッド駆動装置及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラテン上に搬送されるシートに画像を記録する記録ワイヤ及びこの記録ワイヤを駆動する電磁コイルを有する記録ヘッドを備え、電磁コイルにスイッチング素子が接続され、スイッチング素子にパルスを出力してスイッチング素子を動作させて記録ワイヤを突出させる記録ヘッド駆動装置を備えた記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の記録ヘッド駆動装置は、スイッチング素子にパルスを出力してスイッチング素子を動作させる駆動部と、この駆動部におけるパルスの出力タイミングを制御する制御部とを備えているのが一般的である。
【0003】
これら駆動部及び制御部は、小電力化の観点から、駆動部及び制御部を動作させる電源装置の電源電圧をできるだけ低く設定するのが好ましい。そこで、駆動部には、負荷としてのスイッチング素子を動作させるのに必要な電源電圧を印加すればよく、制御部には、駆動部を制御するのに必要な電源電圧を印加すればよい。
【0004】
ところが、駆動部に印加する電源電圧は、負荷を駆動する関係上、制御部に印加する電源電圧にまで低く設定することができず、制御部に印加する電源電圧よりも高い電源電圧に設定する必要がある。
【0005】
そこで、電源装置として、駆動部には、第1の電源電圧(例えば、5[V])を印加し、制御部には、第1の電源電圧よりも低い第2の電源電圧(例えば、3.3[V])を印加するため、レギュレータにより第1の電源電圧を基準にして第2の電源電圧を生成するようにしたものが考えられている。
【特許文献1】特開2002−307766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電源装置の電源投入時に、レギュレータにより生成された第2の電源電圧の立ち上がりが、基準となる第1の電源電圧の立ち上がりよりも遅れてしまうことがあるため、駆動部が制御部よりも先に動作状態となり、負荷において思わぬ動作がなされる可能性があった。
【0007】
そこで、駆動部及び制御部に安定した電源電圧が印加されて動作状態となった後に、負荷に電源電圧を印加して動作させるように制御する構成が考えられるが、この構成では、制御が複雑になってしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、簡単な構成で負荷の誤動作を回避することができる電源装置、記録ヘッド駆動装置及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、パルスを負荷に出力して当該負荷を駆動する駆動部に第1の電源電圧を印加し、前記駆動部における前記パルスの出力タイミングを制御する制御部に前記第1の電源電圧よりも低い第2の電源電圧を印加する電源装置において、前記第1の電源電圧を基準にして前記第2の電源電圧を生成するレギュレータを備え、前記第2の電源電圧の立ち上がりのタイミングを、前記第1の電源電圧の立ち上がりのタイミングと略同時にする補助コンデンサを前記レギュレータに並列に設けたことを特徴とするものである。
この構成によれば、補助コンデンサを設ける簡単な構成で、第1の電源電圧及び第2の電源電圧の立ち上がりのタイミングが略同時となるので、制御部の動作のタイミングが駆動部の動作のタイミングに近づき、駆動部の誤動作による負荷の誤動作を回避することができる。
【0010】
この電源装置において、前記レギュレータは、入力端子、出力端子及びグランド端子を有する三端子レギュレータであり、前記入力端子と前記出力端子との間に、前記補助コンデンサが設けられ、前記出力端子と前記グランド端子との間に、前記第2の電源電圧を安定化させる安定化用コンデンサが設けられ、前記補助コンデンサの容量を、前記安定化用コンデンサの容量よりも大きく設定してもよい。
【0011】
また、上記電源装置において、前記補助コンデンサの容量を、前記第2の電源電圧が前記制御部の動作電圧に達する前に前記駆動部により出力される誤パルスが、前記負荷を誤作動させないパルス幅以下となる容量に設定してもよい。
【0012】
また、記録ヘッドの電磁コイルにスイッチング素子が接続され、第1の電源電圧で動作し前記スイッチング素子にパルスを出力して前記スイッチング素子を動作させる駆動部と、前記第1の電源電圧よりも低い第2の電源電圧で動作し前記駆動部におけるパルスの出力タイミングを制御する制御部と、を備えた記録ヘッド駆動装置において、前記第1の電源電圧を基準にして前記第2の電源電圧を生成するレギュレータを備え、前記第2の電源電圧の立ち上がりのタイミングを、前記第1の電源電圧の立ち上がりのタイミングと略同時にする補助コンデンサを前記レギュレータに並列に設けたことを特徴とするものである。
この構成によれば、補助コンデンサを設ける簡単な構成で、第1の電源電圧及び第2の電源電圧の立ち上がりのタイミングが略同時となるので、制御部の動作のタイミングが駆動部の動作のタイミングに近づき、駆動部の誤動作によるスイッチング素子の誤動作を回避することができる。
【0013】
この記録ヘッド駆動装置において、前記レギュレータは、入力端子、出力端子及びグランド端子を有する三端子レギュレータであり、前記入力端子と前記出力端子との間に、前記補助コンデンサが設けられ、前記出力端子と前記グランド端子との間に、前記第2の電源電圧を安定化させる安定化用コンデンサが設けられ、前記補助コンデンサの容量を、前記安定化用コンデンサの容量よりも大きく設定してもよい。
【0014】
また、上記記録ヘッド駆動装置において、前記補助コンデンサの容量を、前記第2の電源電圧が前記制御部の動作電圧に達する前に前記駆動部により出力される誤パルスが、前記スイッチング素子を誤作動させないパルス幅以下となる容量に設定してもよい。
【0015】
また、プラテンに沿って走行可能なキャリッジに、前記プラテン上に搬送されるシートに画像を記録する記録ワイヤ及びこの記録ワイヤを駆動する電磁コイルを備えた記録ヘッドが搭載され、前記電磁コイルにスイッチング素子が接続され、第1の電源電圧で動作し前記スイッチング素子にパルスを出力して前記スイッチング素子を動作させる駆動部と、前記第1の電源電圧よりも低い第2の電源電圧で動作し前記駆動部におけるパルスの出力タイミングを制御する制御部と、を備えた記録装置において、前記第1の電源電圧を基準にして前記第2の電源電圧を生成するレギュレータを備え、前記第2の電源電圧の立ち上がりのタイミングを、前記第1の電源電圧の立ち上がりのタイミングと略同時にする補助コンデンサを前記レギュレータに並列に設けたことを特徴とするものである。
この構成によれば、補助コンデンサを設ける簡単な構成で、第1の電源電圧及び第2の電源電圧の立ち上がりのタイミングが略同時となるので、制御部の動作のタイミングが駆動部の動作のタイミングに近づき、駆動部の誤動作によるスイッチング素子の誤動作を回避することができる。
【0016】
この記録装置において、前記レギュレータは、入力端子、出力端子及びグランド端子を有する三端子レギュレータであり、前記入力端子と前記出力端子との間に、前記補助コンデンサが設けられ、前記出力端子と前記グランド端子との間に、前記第2の電源電圧を安定化させる安定化用コンデンサが設けられ、前記補助コンデンサの容量を、前記安定化用コンデンサの容量よりも大きく設定してもよい。
【0017】
前記補助コンデンサの容量を、前記第2の電源電圧が前記制御部の動作電圧に達する前に前記駆動部により出力される誤パルスが、前記スイッチング素子を誤作動させないパルス幅以下となる容量に設定してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単な構成で電源立ち上がり時の誤動作を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る記録装置の実施の形態が適用されたドットインパクトプリンタのプリンタ本体を示す斜視図である。図2は、図1のプリンタ本体を示す側断面図である。
【0021】
これらの図に示す記録装置としてのプリンタ10は、記録ヘッド18の複数の記録ワイヤを、インクリボン31(図2)を介してシートSに打ち付けてドットを記録することにより、文字を含む画像を印刷するドットインパクトプリンタである。
【0022】
ここで、シートSは、単票紙や連続紙などの普通紙の他に、通帳や葉書、封筒などである。特に、単票紙は単票複写紙を含み、上記連続紙は連続複写紙を含む。
【0023】
上記プリンタ10は、図1に示すように、記録装置本体としてのプリンタ本体11と、このプリンタ本体11に着脱自在に装着されたプッシュトラクタユニット12及び排出ユニット13と、同じくプリンタ本体11に着脱自在に装着されたシート供給ガイド34(図2)と、プリンタ本体11の上方、下方をそれぞれ覆う図示しない上部ケース及び下部ケースと、を有して構成される。
【0024】
上記プリンタ本体11は、本体フレームとしてのベースフレーム14、シート案内フレーム15(図2)、左サイドフレーム16及び右サイドフレーム17と、記録ヘッド18及びキャリッジ19を備えた印刷機構部20と、プラテン21、シート案内22及びピンチローラ25(図2)を備えたシート搬送機構部23と、を有して構成される。
【0025】
ベースフレーム14及びシート案内フレーム15は、図2に示すようにほぼ平行配置され、これらのベースフレーム14及びシート案内フレーム15の両端に上記左サイドフレーム16、右サイドフレーム17がそれぞれ立設して固定される。これらの左サイドフレーム16と右サイドフレーム17間に、図1に示すように、キャリッジ軸24が架け渡されて回動可能に支持され、プラテン21が架け渡されて回転自在に配設されている。シート案内22は、左サイドフレーム16と右サイドフレーム17との間に配設されて、シート案内フレーム15に嵌合して固定されている。また、左サイドフレーム16及び右サイドフレーム17の後方部、上方部それぞれには、前記プッシュトラクタユニット12、排出ユニット13をそれぞれ装着可能な図示しないトラクタユニット装着部、排出ユニット装着部が設けられている。
【0026】
図2に示すプッシュトラクタユニット12は、シートSとしての連続紙をシート搬送機構部23へ送り出し、シート供給ガイド34は、シートSとしての単票紙を1枚づつ(単票複写紙の場合には一綴りづつ)シート搬送機構部23へ供給する。また、排出ユニット13は、連続紙または単票紙をシート搬送機構部23からプリンタ10外へ引き出すものである。
【0027】
つまり、プッシュトラクタユニット12のトラクタベルト26の回転により、このトラクタベルト26のピン27の作用で、連続紙は、シート搬送機構部23のシート案内22に案内され、このシート案内22とプラテン21との間に形成されるシート搬送経路28を経て記録ヘッド18へ向い、矢印α方向に送給される。このプッシュトラクタユニット12の非動作時に、シート供給ガイド34から単票紙が一枚づつ、シート搬送経路28を経て記録ヘッド18へ供給可能とされる。また、排出ユニット13の排出ローラ29の回転により、後述のごとく、記録ヘッド18により文字等が記録された連続紙または単票紙は、シート搬送機構部23のプラテン21から矢印β方向に引き出される。これにより、連続紙または単票紙は、キャリッジ19の後述の主走査方向に直交する副走査方向に搬送される。
【0028】
図1に示す前記キャリッジ19は、キャリッジ軸24に摺動自在に挿通されると共に、記録ヘッド18を搭載する。キャリッジ軸24がプラテン21と平行に配置されることから、キャリッジ19は、これらのプラテン21及びキャリッジ軸24の軸方向と一致する主走査方向に移動(走行)可能に設けられる。
【0029】
図示しないキャリッジ駆動モータの正転または逆転により、キャリッジ19は、タイミングベルト30(図2)を介しキャリッジ軸24に案内されて、主走査方向における図1の左向きまたは右向きに走行される。
【0030】
前記記録ヘッド18は多数の記録ワイヤ35(図3及び図4)を備え、これらの記録ワイヤ35の突出方向前方にインクリボン31が位置する。記録ヘッド18は、キャリッジ19と共に主走査方向に走行する間に、記録ワイヤ35を突出動作させてインクリボン31に打ち当て、インクリボン31のインクを、プラテン21とインクリボン31との間に搬送されるシートS(連続紙または単票紙)に付着させて、このシートSに文字を含む画像を記録する。
【0031】
記録ヘッド18による記録動作は、キャリッジ19が主走査方向左向きまたは右向きに走行する間に、記録ヘッド18の記録ワイヤ35により一行分の記録がなされ、この一行分の記録がなされる度に、シートSが連続紙の場合には、図2に示すシート搬送機構部23のプラテン21、プッシュトラクタユニット12及び排出ユニット13が、また、シートSが単票紙の場合には、シート搬送機構部23のプラテン21、ピンチローラ25及び排出ユニット13が、それぞれシートSを所定量(通常行間分)搬送させ、これらの動作が繰り返されることにより実施される。
【0032】
尚、図2に示す符号32は、ベースフレーム14とシート案内フレーム15との間に開口して形成されて、プリンタ10の下方からシート搬送機構部23内へシートSを供給するためのボトムシート供給口である。
【0033】
上記記録ヘッド18は、図3及び図4に示すように、ヘッド本体40にノーズ部41が連設され、ヘッド本体40の外側にヘッド本体40を冷却する放熱器42が配置されて構成される。
【0034】
上記ヘッド本体40は、図4に示すように、有底円筒形状のフレーム43の開口側に、略リング形状のヨーク44、サイドヨーク45が順次積層して配設される。また、フレーム43の内側には、スプリングホルダ(不図示)が配置され、更に、上記ヨーク44及びサイドヨーク45にワイヤレバー49が収容される。また、これらのワイヤレバー49の基端部50が支点軸51により支持され、更に、これらのワイヤレバー49がレバーホルダ52により保持されて構成される。
【0035】
フレーム43は、軟磁性材料(例えば1%ケイ素鋼)から構成され、このフレーム43の底面部には、同心円上に所定間隔を隔てて複数のコア53が一体に形成される。これらの各コア53に電磁コイル54が嵌め込まれ、このコア53及び電磁コイル54により電磁石59が構成される。上記電磁コイル54は、ボビン56に巻き付けられて構成されている。
【0036】
それぞれの上記ワイヤレバー49の先端部55に、記録ワイヤ35が1本づつ装着される。また、各ワイヤレバー49は、それぞれの先端部55付近が、スプリングホルダに内蔵された復帰コイルばね(ともに図示せず)によってレバーホルダ52方向へ常時付勢される。
【0037】
更に、各ワイヤレバー49の基端部50が支点軸51に支持され、各ワイヤレバー49は、支点軸51を中心として回動可能に設けられる。
【0038】
前記電磁コイル54に通電がなされると、この電磁石59の周囲に磁気回路63(図4)が形成され、コア53が励磁されて吸引力が発生し、ワイヤレバー49のアーマチュア部60がコア53に吸引される。これにより、ワイヤレバー49は、基端部50を支持する支点軸51を中心としてノーズ部41方向に回動し、記録ワイヤ35をノーズ部41の先端ガイド65から突出動作させる。このように、電磁コイル54は通電により、ワイヤレバー49を介して記録ワイヤ35を駆動する。
【0039】
電磁コイル54の通電が遮断されたときにコア53が消磁されて、上記吸引力が消失する。このとき、ワイヤレバー49は、図示しない復帰コイルばねの付勢力(復帰力)により、支点軸51を中心としてレバーホルダ52方向へ回動し、記録ワイヤ35を元位置に復帰させる。
【0040】
ところで、この記録ヘッド18の電磁コイル54は、ヘッド駆動回路81(図5)により駆動される。そして、電磁コイル54やヘッド駆動回路81には、電源装置90により電力が供給される。これらヘッド駆動回路81及び電源装置90により記録ヘッド駆動装置80が構成される。記録ヘッド駆動装置80は、例えばプリンタ本体11(図2)の後部側下方に配置される。
【0041】
図5は、記録ヘッド駆動装置80の構成を示す電気回路図である。
【0042】
図5に示すように、ヘッド駆動回路81は、記録ヘッド18の電磁コイル54を駆動するためのスイッチング素子としてのトランジスタ82と、このトランジスタ82をオンオフするASIC83とを備えている。なお、図5では、説明の便宜上、1つの電磁コイル54を図示しているが、実際は複数有り、各電磁コイル54にトランジスタ82がそれぞれ接続され、ASIC83は、各トランジスタ82をオンオフするように構成されている。
【0043】
トランジスタ82は、電磁コイル54に直列に電気的に接続されている。ASIC83は、トランジスタ82に電圧信号を示すパルスPを出力してトランジスタ82を動作させる駆動部83Aと、駆動部83AにおけるパルスPの出力タイミングを制御する制御部としてのロジック部83Bとを備えている。
【0044】
また、記録ヘッド駆動装置80は、Lレベル(0[V])のリセット信号を、ロジック部83Bに電源装置90の電源電圧が安定するまで出力し続けるリセットIC84を備えている。このリセット信号を入力したロジック部83Bは、駆動部83AにパルスPの出力を停止する制御を行う。
【0045】
電源装置90は、交流電圧を直流電圧に変換して負荷に給電するものであり、交流電源が接続される入力端子91と、複数(本実施形態では、3つ)の異なる電源電圧(直流電圧)を負荷に供給するための複数の出力端子92A、92B、92Cとを備えている。出力端子92Aは、例えば直流電圧42[V]のヘッド駆動用の電源電圧Vhを記録ヘッド18の電磁コイル54に印加するための端子であり、出力端子92Bは、例えば直流電圧5[V]の第1の電源電圧V1をASIC83に印加するための端子であり、出力端子92Cは、例えば直流電圧3.3[V]の第2の電源電圧V2をASIC83に印加するための端子である。
【0046】
出力端子92Aには、電源ライン93Aが電気的に接続され、この電源ライン93Aには、記録ヘッド18の電磁コイル54が電気的に接続される。従って、トランジスタ82がオンされると、電源ライン93Aを介して電磁コイル54に電流が流れ、記録ワイヤ35(図3、図4)が突出される。トランジスタ82がオフされると、電磁コイル54への通電が停止され、記録ワイヤ35(図3、図4)が待避される。
【0047】
上記ASIC83は、2つの電源により動作する2電源タイプのものである。具体的に説明すると、ASIC83の駆動部83Aは、負荷であるトランジスタ82にパルスPを出力してトランジスタ82をオンさせる必要があるため、ASIC83の駆動部83Aには、第1の電源電圧V1(例えば、5[V])が印加される。また、ASIC83のロジック部83Bには、小型化及び省電力化を図るべく、第1の電源電圧V1よりも低い第2の電源電圧V2(例えば、3.3[V])が印加される。つまり、電源装置90の出力端子92Bに電源ライン93Bが電気的に接続され、この電源ライン93BにASIC83の駆動部83Aが電気的に接続される。これにより、第1の電源電圧V1が駆動部83Aに印加されて、駆動部83Aが動作する。また、電源装置90の出力端子92Cに電源ライン93Cが電気的に接続され、この電源ライン93CにASIC83のロジック部83Bが電気的に接続される。これにより、第2の電源電圧V2がロジック部83Bに印加されて、ロジック部83Bが動作する。
【0048】
図6は、電源装置90の構成を示す電気回路図である。
【0049】
交流電源が電気的に接続される入力端子91には、プリンタ10に電源を投入するための電源スイッチ94が電気的に接続される。この電源スイッチ94には、ノイズを除去するための入力フィルタ95が電気的に接続される。この入力フィルタ95には、記録ヘッド18の電磁コイル54に電力を供給するために直流電圧(例えば、42[V])のヘッド駆動用の電源電圧Vhを生成するヘッド駆動用電源回路96が電気的に接続される。これにより、電磁コイル54にヘッド駆動用の電源電圧Vhが印加されることとなる。このヘッド駆動用電源回路96は、RCC方式の電源回路である。このヘッド駆動用電源回路96の出力側が上述した出力端子92Aに電気的に接続される。
【0050】
また、ヘッド駆動用電源回路96の出力側には、ヘッド駆動用の電源電圧Vhに基づいて第1の電源電圧V1に降圧した直流電圧を生成する降圧チョッパ回路97(電源部)が電気的に接続される。つまり、この降圧チョッパ回路97は、第1の電源電圧V1を生成する。この降圧チョッパ回路97の出力側が上述した出力端子92Bに電気的に接続される。これにより、ASIC83の駆動部83Aに第1の電源電圧V1が印加されることとなる。
【0051】
図7は、降圧チョッパ回路97の構成を示す電気回路図である。この図7に示すように、降圧チョッパ回路97は、スイッチング素子としてのトランジスタ97Aと、このトランジスタ97Aの出力側に電気的に接続されるチョークコイル97Bと、チョークコイル97Bの入力側とグランドラインとの間に接続されるダイオード97Cと、チョークコイル97Bの出力側とグランドラインとの間に接続される平滑コンデンサ97Dと、トランジスタ97Aを駆動する制御回路97Eとを備えて構成される。
【0052】
ここで、仮に、第2の電源電圧V2を生成するために、ヘッド駆動用の電源電圧Vhに基づいて第2の電源電圧V2を生成する降圧チョッパ回路を、降圧チョッパ回路97に並列に接続する場合、この降圧チョッパ回路にも制御回路を設ける必要があり、電源装置の構成が複雑になってしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、図6に示すように、降圧チョッパ回路97の出力側には、第1の電源電圧V1を基準にしてこの第1の電源電圧V1よりも低い第2の電源電圧V2を生成するレギュレータ98が接続される。このレギュレータ98は、シリーズレギュレータであり、入力端子98A、出力端子98B及びグランド端子98Cを有するIC化された三端子レギュレータである。このレギュレータ98の出力端子98Bが、上述した出力端子92Cに接続され、ASIC83のロジック部83Bに第2の電源電圧V2が印加されることとなる。このレギュレータ98を用いることによって、簡単な回路構成で第2の電源電圧V2を生成することができる。
【0054】
このレギュレータ98のグランド端子98Cは、グランドラインに接続され、レギュレータ98の入力端子98Aとグランド端子98Cの間には、高周波ノイズをカットするバイパスコンデンサ99が設けられている。また、レギュレータ98の出力端子98Bとグランド端子98Cの間には、第2の電源電圧V2を安定化させるための安定化用コンデンサ100が設けられている。
【0055】
電源スイッチ94がユーザによりオン操作された場合、第1の電源電圧V1は、降圧チョッパ回路97のチョークコイル97B(図7)や平滑コンデンサ97Dの作用で、電源投入のタイミングから瞬時に立ち上がらずに徐々に立ち上がる。
【0056】
本実施形態では、図6に示すように、第2の電源電圧V2の立ち上がりのタイミングを、第1の電源電圧V1の立ち上がりのタイミングと略同時にする補助コンデンサ101が、レギュレータ98に並列に設けられている。つまり、レギュレータ98の入力端子98Aと出力端子98Bとの間に、補助コンデンサ101が設けられている。
【0057】
図8に示す電圧波形の説明図を参照しながら説明すると、レギュレータ98の入力端子98Aと出力端子98Bとの間に、補助コンデンサ101を設けたことで、電源投入時の第1の電源電圧V1の立ち上がり時に、レギュレータ98が非動作状態でも補助コンデンサ101を介してASIC83のロジック部83Bに電圧が印加されることとなる。従って、電源投入時に、第1の電源電圧V1の立ち上がりのタイミング(つまり、電源投入のタイミング)t1と、第2の電源電圧V2の立ち上がりのタイミングt2とが略同時となる。
【0058】
ここで、補助コンデンサ101を省略してしまうと、図9に示すように、電源投入時に、第1の電源電圧V1の立ち上がりのタイミング(つまり、電源投入のタイミング)t1と、第2の電源電圧V2の立ち上がりのタイミングt2とが略同時とはならず、第1の電源電圧V1がレギュレータ98の動作電圧V1y以下の場合には、レギュレータ98が非動作状態となってしまい、レギュレータ98が動作するまで第2の電源電圧V2は、0[V]である。この第2の電源電圧V2が0[V]である場合、ロジック部83Bは非動作状態であるが、駆動部83Aには、第1の電源電圧V1が印加されるので、第1の電源電圧V1が駆動部83Aの動作電圧V1x以上となった場合に、ロジック部83Bが非動作状態であっても駆動部83Aが動作状態となってしまう状況が生じてしまい、駆動部83Aが誤動作する可能性がある。この駆動部83Aの誤動作により誤パルスPeがトランジスタ82に出力されてしまい、誤パルスPeのパルス幅Wが、トランジスタ82がオンするパルス幅であると、電源投入時に記録ワイヤ35が突出され、不要なドットがシートに形成されてしまうこととなる。
【0059】
本実施形態では、レギュレータ98の入力端子98Aと出力端子98Bとの間に補助コンデンサ101設けるという簡単な構成で、図8に示すように、ロジック部83Bに印加する第2の電源電圧V2の立ち上がりが速まり、第2の電源電圧V2が動作電圧V2xに達するのが速くなる。従って、ロジック部83Bが動作状態となるのが速まり、ロジック部83Bの動作のタイミングt4が駆動部83Aの動作のタイミングt3に近づく。これにより、駆動部83Aが誤動作する期間が短縮され、誤パルスPeのパルス幅Wが狭まるため、駆動部83Aの誤動作によるトランジスタ82の誤動作を回避することができる。従って、電源投入時に記録ワイヤ35が突出するのを回避できるので、記録ヘッド18の誤動作を回避することができ、プリンタ10の安定性を向上させることができる。
【0060】
更に、補助コンデンサ101の容量Cを大きくすればするほど、第2の電源電圧V2の立ち上がり速度が速まり、駆動部83Aが誤動作する期間がより短縮され、誤パルスPeのパルス幅Wがより狭まる。従って、補助コンデンサ101の容量Cを、第2の電源電圧V2がロジック部83Bの動作電圧V2xに達する前に駆動部83Aにより出力される誤パルスPeが、トランジスタ82を誤作動させない所定パルス幅(例えば、500[μs])以下となる容量に設定している。これによって、駆動部83Aにより誤パルスPeが出力されても、このパルス幅Wは、所定パルス幅以下であるので、トランジスタ82がオンすることはなく、記録ヘッド18が誤動作することはない。従って、プリンタ10の安定性を向上させることができる。
【0061】
また、補助コンデンサ101の容量Cは、安定化用コンデンサ100の容量C33よりも大きく設定するのが好ましい。具体的に説明すると、電源投入時には、
V2=C/(C+C33)×V1
の関係式が成り立つので、補助コンデンサ101の容量Cを、安定化用コンデンサ100の容量C33よりも十分大きく設定することにより、電源電圧立ち上がり時に第2の電源電圧V2を第1の電源電圧V1に近づけることができる。
【0062】
例えば、安定化用コンデンサ100の容量C33を22[μF]とし、補助コンデンサ101の容量Cを100[μF]とした場合、図10に示すように、電源電圧の立ち上がり時に第2の電源電圧V2を第1の電源電圧V1に近づけることができ、駆動部83Aとロジック部83Bとが略同時に動作するか、或いはロジック部83Bが駆動部83Aよりも先に動作状態となることとなり、駆動部83Aが誤動作することはない。従って、誤パルスが駆動部83Aより出力されることはないので、記録ヘッド18が誤動作することはなく、プリンタ10の安定性を更に向上させることができる。
【0063】
以上、一実施形態に基いて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、パルスが出力される負荷として、電磁コイル54に接続されたトランジスタ82の場合について説明したが、これに限るものではなく、負荷がパルスを入力して動作するものであれば、この負荷に用いる駆動部及び制御部に本発明の電源装置を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る記録装置の実施形態が適用されたドットインパクトプリンタのプリンタ本体を示す斜視図である。
【図2】図1のプリンタ本体を示す側断面図である。
【図3】図1の記録ヘッドを示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う記録ヘッドの断面図である。
【図5】記録ヘッド駆動装置の構成を示す電気回路図である。
【図6】電源装置の構成を示す電気回路図である。
【図7】降圧チョッパ回路の構成を示す電気回路図である。
【図8】電源電圧の電圧波形を示す説明図である。
【図9】電源電圧の電圧波形を示す説明図である。
【図10】電源電圧の電圧波形を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
10…プリンタ(記録装置)、18…記録ヘッド、19…キャリッジ、21…プラテン、31…インクリボン、35…記録ワイヤ、54…電磁コイル、80…記録ヘッド駆動装置、82…トランジスタ(スイッチング素子)、83…ASIC、83A…駆動部、83B…ロジック部(制御部)、90…電源装置、94…電源スイッチ、98…レギュレータ(三端子レギュレータ)、98A…入力端子、98B…出力端子、98C…グランド端子、100…安定化用コンデンサ、101…補助コンデンサ、V1…第1の電源電圧、V2…第2の電源電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスを負荷に出力して当該負荷を駆動する駆動部に第1の電源電圧を印加し、前記駆動部における前記パルスの出力タイミングを制御する制御部に前記第1の電源電圧よりも低い第2の電源電圧を印加する電源装置において、
前記第1の電源電圧を基準にして前記第2の電源電圧を生成するレギュレータを備え、
前記第2の電源電圧の立ち上がりのタイミングを、前記第1の電源電圧の立ち上がりのタイミングと略同時にする補助コンデンサを前記レギュレータに並列に設けたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記レギュレータは、入力端子、出力端子及びグランド端子を有する三端子レギュレータであり、
前記入力端子と前記出力端子との間に、前記補助コンデンサが設けられ、
前記出力端子と前記グランド端子との間に、前記第2の電源電圧を安定化させる安定化用コンデンサが設けられ、
前記補助コンデンサの容量を、前記安定化用コンデンサの容量よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記補助コンデンサの容量を、前記第2の電源電圧が前記制御部の動作電圧に達する前に前記駆動部により出力される誤パルスが、前記負荷を誤作動させないパルス幅以下となる容量に設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
記録ヘッドの電磁コイルにスイッチング素子が接続され、第1の電源電圧で動作し前記スイッチング素子にパルスを出力して前記スイッチング素子を動作させる駆動部と、前記第1の電源電圧よりも低い第2の電源電圧で動作し前記駆動部におけるパルスの出力タイミングを制御する制御部と、を備えた記録ヘッド駆動装置において、
前記第1の電源電圧を基準にして前記第2の電源電圧を生成するレギュレータを備え、
前記第2の電源電圧の立ち上がりのタイミングを、前記第1の電源電圧の立ち上がりのタイミングと略同時にする補助コンデンサを前記レギュレータに並列に設けたことを特徴とする記録ヘッド駆動装置。
【請求項5】
前記レギュレータは、入力端子、出力端子及びグランド端子を有する三端子レギュレータであり、
前記入力端子と前記出力端子との間に、前記補助コンデンサが設けられ、
前記出力端子と前記グランド端子との間に、前記第2の電源電圧を安定化させる安定化用コンデンサが設けられ、
前記補助コンデンサの容量を、前記安定化用コンデンサの容量よりも大きく設定したことを特徴とする請求項4に記載の記録ヘッド駆動装置。
【請求項6】
前記補助コンデンサの容量を、前記第2の電源電圧が前記制御部の動作電圧に達する前に前記駆動部により出力される誤パルスが、前記スイッチング素子を誤作動させないパルス幅以下となる容量に設定したことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の記録ヘッド駆動装置。
【請求項7】
プラテンに沿って走行可能なキャリッジに、前記プラテン上に搬送されるシートに画像を記録する記録ワイヤ及びこの記録ワイヤを駆動する電磁コイルを備えた記録ヘッドが搭載され、前記電磁コイルにスイッチング素子が接続され、第1の電源電圧で動作し前記スイッチング素子にパルスを出力して前記スイッチング素子を動作させる駆動部と、前記第1の電源電圧よりも低い第2の電源電圧で動作し前記駆動部におけるパルスの出力タイミングを制御する制御部と、を備えた記録装置において、
前記第1の電源電圧を基準にして前記第2の電源電圧を生成するレギュレータを備え、
前記第2の電源電圧の立ち上がりのタイミングを、前記第1の電源電圧の立ち上がりのタイミングと略同時にする補助コンデンサを前記レギュレータに並列に設けたことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
前記レギュレータは、入力端子、出力端子及びグランド端子を有する三端子レギュレータであり、
前記入力端子と前記出力端子との間に、前記補助コンデンサが設けられ、
前記出力端子と前記グランド端子との間に、前記第2の電源電圧を安定化させる安定化用コンデンサが設けられ、
前記補助コンデンサの容量を、前記安定化用コンデンサの容量よりも大きく設定したことを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記補助コンデンサの容量を、前記第2の電源電圧が前記制御部の動作電圧に達する前に前記駆動部により出力される誤パルスが、前記スイッチング素子を誤作動させないパルス幅以下となる容量に設定したことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate