説明

電源装置の液侵入防止のための防滴構造

【課題】薬液霧の漂っている環境下で使用される電源装置において、電源装置の操作つまみ近傍における薬液侵入の防滴構造を安価に提供する。
【解決手段】シャフトを有するロータリー部品と筐体パネルとの隙間から薬液が侵入しにくい電源装置の構造として、シャフトにつける操作つまみを略傘状に形成し、シャフトに同心円筒状のリブを筐体パネルに形成し、このリブは該操作つまみの外周又は(及び)内周に近接するようなリブとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば、めっき槽の近くなど薬液霧の漂っている環境下で使用される電源装置の操作つまみ近傍における薬液侵入を防止する、防滴構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、回転シャフト型のロータリー部品とパネルとの防滴構造についての技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】「特開2003−4144号」公報「シャフトの防滴構造」に従来技術として次の記述がある。段落(0006)に「従来のシャフト防適構造において、Oリングを用いるものはOリング取り付けのための、部材の特別の加工が必要」、製作工数が増す。そこで、段落(0009)に「操作つまみ内に先端が閉じた平面曲線となるスカート状のヘラを有するパッキングを取り付け、前記シャフトの先端を前記操作つまみ接着し前記パッキングの先端を前記操作パネルに接触させた」との記述がある。
【0004】
同公報の段落(0015)に「パッキングのスカート状のヘラが押し広げられた状態で操作パネルの表面に圧接される」との弾力性のあるスカート状のヘラでパネルに接するようにして解決した技術開示がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような技術が開示されているが、例えば、スカート状のヘラを操作つまみ内の先端に角度精度良く取り付ける接着工程が、大量生産したときにシャフトとヘラ周端との直角度がバラツキ勝ちで目的を果たす精度に維持することは、生産困難度の高い工程であった。このスカート状のヘラのように組み立て工数が掛からない構造で防滴を達成することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
筐体パネル又は、これに取付け板を付けてこの部分にシャフトが貫通して回転運動が容易に出来るようにロータリー部品を取付けたときに、シャフトとパネルの隙間から液滴が流れ込むのを防ぐにはパネルにシャフトを囲む堤防の役割を持つリブを形成し、そのリブ高さを液滴が崩れて流れるときの、雫の厚さ以上の寸法に形成すると筐体内に流れ入るのを防ぐことができるとの知見を得た。
【0007】
請求項1に関しては、回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の筐体パネルとの間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの外周部と近接する円筒形状にリブを筐体パネルに形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0008】
請求項2に関しては、回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の筐体パネルとの間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの内周部と近接する円筒形状にリブを筐体パネルに形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0009】
請求項3に関しては、回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の筐体パネルとの間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの外周部及び内周部と近接する二重の円筒形状にリブを筐体パネルに形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0010】
請求項4に関しては、回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の取付け板との間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの外周部と近接する円筒形状にリブを取付板に形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0011】
請求項5に関しては、回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の取付け板との間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの内周部と近接する円筒形状にリブを取付板に形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0012】
請求項6に関しては、回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の取付け板との間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの外周部及び内周部と近接する二重の円筒形状にリブを取付板に形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0013】
請求項7に関しては、前記操作つまみと近接する円筒形状の前記リブとのギャップ寸法を2mm以下に形成したギャップ寸法であることを特徴とした請求項1乃至6記載の、電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0014】
請求項8に関しては、前記リブ高さ寸法の内の、つまみの外周部、又は(及び)内周部に対する重なり寸法が1mm以上の寸法に形成されたリブ寸法であることを特徴とした請求項1乃至6記載の、電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0015】
請求項9に関しては、前記ギャップとリブ高さの関係は、操作つまみと近接する円筒形状の前記リブとのギャップ寸法1mmに対して、リブ高さ寸法の内、つまみ外周部又は(及び)内周部に対する重なり寸法が1mm以上の寸法に形成されたリブ寸法であれば有効であり、リブとのギャップ寸法に対して、前記リブ高さ寸法の内、つまみ外周部又は(及び)内周部に対する重なり寸法が1倍以上の比率の寸法に形成されたリブ寸法であることを特徴とした請求項1乃至6記載の、電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0016】
請求項10に関しては、回転運動するシャフトと、取付け板又は筐体パネルとの間で、より高性能な防滴効果を持たせる為に、スペーサを形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、操作つまみに従来例のような複雑な形状に加工する余分な製作コストが掛からない。しかも防滴性能は向上させることができ、材料資源のロス削減にも寄与できたので工業的価値が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に示す本発明による実施形態を説明する。1は筐体パネルである。このパネルにロータリー部品7が取付けられていて、2の操作つまみによって操作される。該パネルと8のシャフトの間から液体が流れ込むのを防ぐ為に操作つまみの外周部3に近接してリブ5が設けられている。G1は外周部とリブ5とのギャップ寸法である、Lはリブ高さのうち外周部3との重なり寸法であり、この寸法とギャップG1との寸法の決め方は実験によって確かめられ、性能が最適であり、しかも加工性を考慮して大量生産に困難を伴わない寸法に決定された。加工性と性能上の最適化の両立するL/G1の値は1であることが確認されL/G1の値は1以上であることが防滴に有効であった。
【0019】
図2に示す本発明による第2の実施形態を説明する。図1との相違点は、リブ6の位置が操作つまみ2の内周部4に近接した位置に設けることである。筐体パネル1が水平に近い傾斜位置にあるときには効果が第1図の場合に比べて劣らない。
【0020】
図3によって、本発明による第3の実施形態を説明する。第1図の場合に追加して操作つまみ2の内周部4に近接した位置にもリブ6を設けた。防滴性能は最も良い、しかし精度を要求しているのでリブの立つ位置が例えば、樹脂成型の際の収縮率を考慮して、つまみと接触して回転に支障がないようにすることが重要で、より高い精度を必要とする。以上の図1乃至3に説明した筐体パネルは、リブ加工に適した樹脂成型品などで形成されている。
【0021】
図4によって、本発明による第4の実施形態を説明する。筐体パネルが前記の場合と違って金属製の場合、リブを形成する加工工程での製作コストが高価になるので、リブを設けた樹脂成型品などの取付板を、大きい窓を有する筐体パネルに貼り付けてロータリー部品の取付部を形成した。樹脂成型品などの取付板9は筐体パネル1の窓に貼り付けられている。この取付板9にロータリー部品7が取付けられていて、2の操作つまみによって操作される。該取付板と8のシャフトの間から液体が流れ込むのを防ぐ為に操作つまみの外周部3に近接してリブ5が設けられている。
【0022】
図5によって、本発明による第5の実施形態を説明する。筐体パネルが金属製の場合、リブを設けた樹脂成型品などの取付板9が、大きい窓を有する筐体パネル1の窓に貼り付けられている。この取付板9にロータリー部品7が取付けられていて、2の操作つまみによって操作される。該取付板と8のシャフトの間から液体が流れ込むのを防ぐ為に、図2に示した場合と同様にシャフト8に対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの内周部にリブ6をパネル1に替わって取付板9に形成する。
【0023】
図6によって、本発明による第5の実施形態を説明する。筐体パネルが金属製の場合、リブを設けた樹脂成型品などの取付板9が、大きい窓を有する筐体パネル1の窓に貼り付けられている。この取付板9にロータリー部品7が取付けられていて、2の操作つまみによって操作される。該取付板と8のシャフトの間から液体が流れ込むのを防ぐ為に、図3に示した場合と同様にシャフト8に対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの外周部及び内周部と近接する二重の円筒形状にリブ5、及びリブ6をパネル1に替わって取付板9に形成する。
【0024】
前記リブ高さ寸法が1mm以上に形成された場合、液滴の堤防として作用し得ることが見出された。1mm以上がリブ寸法であれば有効であるが、この場合は、操作つまみと近接する円筒形状の前記リブとのギャップ寸法G1を1mm以下にすることが望ましく、リブ高さ寸法が2mm以上の場合は、操作つまみと近接する円筒形状の前記リブとのギャップ寸法G1を2mm以下すれば有効であることを確認し、電源装置の液侵入防止のための防滴構造とした。
【0025】
図1の場合と同様の円筒形状の前記リブとつまみ周縁とのギャップ寸法G1に対して、リブ高さ寸法の内、つまみ外周部又は(及び)内周部に対する重なり寸法Lが、1倍以上の比率の寸法にリブ寸法を形成することが、第1乃至第5の実施形態で性能を確保する為に重要であることが確認され、電源装置の液侵入防止のための防滴構造として有効であった。
【0026】
図7に示した第7の実施形態は、第1乃至第6の実施形態でより過酷な使用環境で高性能を確保する為には、シャフトの周囲の隙間を極限まで少なくすることが重要であるとの認識から、前記シャフトと取付け板又は筐体パネルとの間に、シャフトが回転方向に摺動自在にスペーサ10を形成し電源装置への液侵入防止のための二重防滴構造として有効であった。スペーサ10はフェルトのような油性物を含ませた弾力性のある材質で落ちぬき形成されたものが有効である。図8に示した第8の実施形態は取付板の片面に貼り付けられたシャフトに摺れる穴をもつス穴空きペーサ11を設けて、電源装置への液侵入防止のための二重防滴構造とした。
【0027】
開示されている従来例の様に、スカート状のヘラを操作つまみ内の先端に角度精度良く取り付ける工程が、大量生産したときにヘラ周端とのシャフトとの直角度がバラツキ、目的を果たす精度に維持することは、困難度の高い工程であったが、このスカート状のヘラのように、組み立て工数が掛からない構造で防滴効果を達成する本発明の構造によれば、(効果/コスト)が大きくて、工業上有効なものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によると材料資源のロス削減にも寄与でき、省資源にも貢献できたので工業価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による実施の形態を示す構造説明図。
【図2】本発明による第2の実施の形態を示す構造説明図。
【図3】本発明による第3の実施の形態を示す構造説明図。
【図4】本発明による第4の実施の形態を示す構造説明図。
【図5】本発明による第5の実施の形態を示す構造説明図。
【図6】本発明による第6の実施の形態を示す構造説明図。
【図7】本発明による第7の実施の形態を示す構造説明図。
【図8】本発明による第8の実施の形態を示す構造説明図。
【符号の説明】
【0030】
1 筐体パネル
2 操作つまみ
3 外周部
4 内周部
5 リブ
6 リブ
7 ロータリー部品
8 シャフト
9 取付板
10 スペーサ
11 穴空きスペーサ
G1 ギャップ寸法
G2 ギャップ寸法
L 重なり寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の筐体パネルとの間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの外周部と近接する円筒形状にリブを筐体パネルに形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造。
【請求項2】
回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の筐体パネルとの間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの内周部と近接する円筒形状にリブを筐体パネルに形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造。
【請求項3】
回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の筐体パネルとの間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの外周部及び内周部と近接する二重の円筒形状にリブを筐体パネルに形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造。
【請求項4】
回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の取付け板との間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの外周部と近接する円筒形状にリブを取付板に形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造。
【請求項5】
回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の取付け板との間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの内周部と近接する円筒形状にリブを取付板に形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造。
【請求項6】
回転運動するシャフトを有するロータリー部品と、該シャフトに対して垂直な平面の取付け板との間で、防滴効果を持たせる防滴取付け構造において、該シャフトに対して同心円筒状で断面が略傘形の操作つまみの外周部及び内周部と近接する二重の円筒形状にリブを取付板に形成することを特徴とした電源装置の液侵入防止のための防滴構造。
【請求項7】
前記操作つまみと近接する円筒形状の前記リブとのギャップ寸法を2mm以下に形成したギャップ寸法であることを特徴とした請求項1乃至6記載の、電源装置の液侵入防止のための防滴構造。
【請求項8】
前記リブ高さ寸法の内の、つまみの外周部、又は(及び)内周部に対する重なり寸法が1mm以上の寸法に形成されたリブ寸法であることを特徴とした請求項1乃至6記載の、電源装置の液侵入防止のための防滴構造。
【請求項9】
前記操作つまみと近接する円筒形状の前記リブとのギャップ寸法に対して、前記リブ高さ寸法の内の、つまみの外周部又は(及び)内周部に対する重なり寸法が1倍以上の比率の寸法に形成されたリブ寸法であることを特徴とした請求項1乃至6記載の、電源装置の液侵入防止のための防滴構造。
【請求項10】
前記シャフトと取付け板又は筐体パネルとの間に、シャフトが回転方向に摺動自在にスペーサを形成することを特徴とした請求項1乃至9記載の、電源装置の液侵入防止のための防滴構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−66232(P2006−66232A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247501(P2004−247501)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】