説明

電源装置

【課題】遮蔽部材の位置決めが簡単で、取付工程も容易で作業効率が高く、不用な箇所への冷却用のファンの風を確実に遮断して異物の侵入による短絡事故を防ぐ電源装置を提供する。
【解決手段】筐体の底面を形成する底板12と、底板12にスペーサ14を介して設けられ電子部品18が取り付けられたプリント基板16を有する。底板12に近接し筐体の側面側に設けられて、プリント基板16の電子部品18に向かって送風する冷却用のファン20を有する。プリント基板16の端部に形成された切欠部22と、切欠部22に取り付けられ底板12とプリント基板16間の空間とファン20との間を仕切る遮蔽部材26を備える。遮蔽部材26により、プリント基板16と底板12の間に送られるファン20からの風が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却用ファンが設けられた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱が大きい電源装置には、冷却用ファンが設けられている。例えば、図6に示す電源装置1には、筐体の底面を形成する底板2と、底板2にスペーサ3を介して取付けられたプリント基板4が設けられ、プリント基板4には複数の電子部品5が表裏面に取付けられている。電源装置1の図示しない筐体の側面側であって底板2の近傍には、冷却用のファン6が設けられている。この電源装置1は、ファン6によりプリント基板4に向かって冷却用空気が送られて、電子部品5を冷却するものである。しかし送風の際に、底板2とプリント基板4の間に、冷却用の空気とともにほこり等の導電性の異物等が流れ込み、プリント基板4のはんだ面の電極露出部を短絡する事故が発生することがある。これを防ぐために、底板2の内側面に沿って絶縁紙7が設けられ、絶縁紙7のファン6側の端部7aは、ほぼ直角にプリント基板4へ向かって折り曲げられ、底板2とプリント基板4の隙間を塞ぎ、ファン6の風を遮断して異物等の侵入を防いでいる。
【0003】
また、異物による短絡を防ぐため、プリント基板4にコーティング処理を施す方法がある。例えば、特許文献1に開示されているブラシレスファンモータは、ファンに形成された平板体により外気を撹拌して強制的に通風口から入流させてモータの電子部品を冷却し、モータの駆動制御回路には、防湿・防滴コーティング材を塗布して強制流入空気に含まれるほこりや湿気から駆動制御回路を保護するものである。
【0004】
その他、冷却用の空気とともに侵入する異物を防ぐ遮蔽物を設けたものとして、特許文献2の電子機器や特許文献3の電子機器があった。
【特許文献1】特開平10−108435号公報
【特許文献2】実開平5−4396号公報
【特許文献3】特開2004−253438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示す電源装置1の場合、プリント基板4と絶縁紙7の端部7aの間に隙間ができ、この隙間からわずかに風が入り込んで異物等が侵入するおそれがあった。また、ファン6との接触を避けるため、及びファン6等との放電によるショートを防ぐため、ファン6から底板2とプリント基板4を離して設置しなければならず、電源装置1の小形化を図る上での障害となっていた。
【0006】
また、特許文献1に開示されているブラシレスファンモータは、コーティング処理の塗布管理が難しく、塗りむらなどが発生することがある。また、空冷ファン近傍の部品は風速が早いため、空気とともに細かい粒子或いは水分等が当たり、コーティング膜がはげてしまい、経時的に効果がなくなるものであった。
【0007】
その他、特許文献2,3に開示されたものも、簡単な構成で電子部品に対する風の影響を抑えることできるものではなかった。
【0008】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、遮蔽部材の位置決めが簡単で、取付工程も容易で作業効率が高く、不用な箇所への冷却用のファンの風を確実に遮断して異物の侵入による短絡事故を防ぐ電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筐体の底面を形成する底板と、前記底板にスペーサを介して設けられ電子部品が取り付けられたプリント基板と、前記底板に近接し前記筐体の側面側に設けられて前記プリント基板の前記電子部品に向かって送風する冷却用のファンを有した電源装置であって、前記プリント基板の端部に形成された開口部と、前記開口部に取り付けられ前記底板と前記プリント基板間の空間と前記ファンとの間を仕切る遮蔽部材とを備え、前記遮蔽部材により、前記プリント基板と前記底板の間に送られる前記ファンからの風が遮断される電源装置である。前記遮蔽部材は、絶縁性の合成樹脂で作られている。
【0010】
さらに、前記底板と前記プリント基板は互いに平行に位置し、前記プリント基板が前記底板の上方に設けられ、前記プリント基板の端部は前記底板の端部よりも内側に位置し、前記遮蔽部材には、前記プリント基板に対して交差して設けられ下端部が前記底板の上側面に当接し上端部が前記プリント基板の上側面よりも上方に突出する遮蔽板と、前記遮蔽板の上端部に連続し前記プリント基板の前記開口部に向かって突出する連結部と、前記連結部の先端に設けられ前記開口部に差し込み嵌合される差込突起が設けられ、前記連結部は前記プリント基板の上側面に離間して位置し、前記遮蔽板の下端部は、前記底板の上側面に自重をかけて当接するものである。
【0011】
または、前記底板と前記プリント基板は互いに平行に位置し、前記プリント基板が前記底板の上方に設けられ、前記プリント基板の端部は前記底板の端部よりも内側に位置し、前記遮蔽部材には、前記プリント基板に対して交差して設けられ下端部が前記底板の上側面に当接し上端部が前記プリント基板の上側面よりも上方に突出する遮蔽板と、前記遮蔽板の下端部に連続し前記底板の上側面に沿って前記プリント基板の前記開口部に対向する位置に向かって突出する連結部と、前記連結部の先端に設けられ前記開口部に下方から差し込み嵌合される差込突起が設けられ、前記遮蔽板の下端部は前記底板の上側面に自重をかけて当接するものである。
【0012】
前記開口部は、前記プリント基板の端部に開放された小幅部と、この小幅部に連通して側方に広がった大幅部とからなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電源装置は、遮蔽部材の位置決めが簡単で取付工程も容易で作業効率が高く、プリント基板と筐体の底板の間にファンの風が流入することを確実に遮断し、風による導電性の異物等の侵入を防ぎ、短絡事故を防ぐことができる。さらに、冷却用のファンとの距離が一定となり、ファンと接触することによるファンの破損や回転不良、電子部品との間の放電によるショートを防ぐことができ、安全性の高い装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図4はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の電源装置10は、筐体の底部を形成する底板12がほぼ水平に設けられ、底板12の上側面12bにはスペーサ14を介して底板12に対してほぼ平行にプリント基板16が設けられている。プリント基板16の底板12側にはチップ部品等の複数の電子部品18が取り付けられ、底板12と反対側の上側面16cには、トランスやパワートランジスタ等の比較的大きな電子部品18が設けられている。そして、底板12の一方の端部12a近傍の筐体側面側には、大きな電子部品18の発熱を冷却するファン20が設けられている。
【0015】
プリント基板16のファン20に近い端部16aは、底板12の端部12aよりも内側に位置し、プリント基板16の端部16aには、外側に開口した開口部である切欠部22が形成されている。切欠部22は、図2に示すように端部16aの中心付近に設けられ、端部16aに対してほぼ直角に切り欠かれた一定幅の小幅部22aと、小幅部22aのプリント基板16内側に連続して形成され、小幅部22aよりも幅が広い大幅部22bが設けられている。大幅部22bは、端部16aに対して平行な一対の長辺を有する細長い矩形であり、大幅部22bと端部16aの間に切り残され小幅部22aの両側に位置する部分は、係止突起24となる。
【0016】
なお、大幅部22bは、後述する遮蔽部材26の差込突起32が差し込まれるもので、差込突起32の断面形状に対してややゆとりを有して大きく設けられている。これは、差込突起32を大幅部22bに差し込む際の作業性を良好とするためである。また、ゆとりを有しているため、差込突起32は大幅部22bの中で水平方向に僅かに移動するが、遮蔽部材26がファン20に最も近づいてもファン20に接触しない位置に設定され、安全性が確保されている。
【0017】
プリント基板16の端部16aには、遮蔽部材26が取り付けられている。遮蔽部材26は、絶縁性の合成樹脂で一体成形され、プリント基板16に対してほぼ直角に位置する遮蔽板28が設けられている。遮蔽板28は、プリント基板16の端部16aに対して平行な方向に長細い矩形であり、遮蔽板28の一方の長辺である下端部28aは、底板12の上側面12bにほぼ直角に当接し、他方の長辺である上端部28bは、プリント基板16の上側面16cよりも上方に突出するものである。遮蔽板28の下端部28aと上端部28bに対して直角な一対の側端部28c,28dは、プリント基板16の、端部16aに対して直交する一対の端部16b付近に達し、プリント基板16の両側縁より僅かに内側に位置している。
【0018】
遮蔽板28の上端部28bの、長手方向の中間には連結部30が設けられている。連結部30は、一定幅で遮蔽板28に対してほぼ直角にプリント基板16の表面に沿って突出して形成されている。連結部30の先端には、差込突起32が設けられている。差込突起32は、連結部30と同じ幅の矩形の板状であり、連結部30に対して略直角で遮蔽板28に対してほぼ平行に突出して設けられている。差込突起32の、突出方向に交差する断面形状は、プリント基板16の切欠部22の大幅部22bにゆとりを有して差し込まれる形状であり、小幅部22aの幅よりも大きく形成され、係止突起24に係止されて小幅部22aから抜けない形状である。
【0019】
次に、遮蔽部材26のプリント基板16への取付方法について説明する。まず、プリント基板16の切欠部22の大幅部22bに、差込突起32をプリント基板16の上側面16cから差し込み嵌合する。このとき、遮蔽板28の下端部28aは底板12の上側面12bに当接し、上端部28bはプリント基板16の上側面16cよりも上方に突出し、連結部30はプリント基板16の上側面16cの少し上方に離間してほぼ平行に位置する。これにより遮蔽板28はプリント基板16に制限されることがなく、遮蔽板28の下端部28aは底板12の上側面12bに自重をかけて当接し、隙間を生じることがない。また、差込突起32は大幅部22bの中でゆとりを有して嵌合されているが、差込突起32は、大幅部22bの中で水平方向には所定の位置に位置決めされ、遮蔽部材26がファン20に最も近づいたとしてもファン20に接触しない位置に設定され、安全性を確保している。
【0020】
この実施形態の電源装置10によれば、簡単な構造で遮蔽部材26の位置決めが簡単で、取付工程も容易で作業効率が良好である。遮蔽部材26の遮蔽板28が、プリント基板16と底板12の間の空間に隙間なく取付けられるため、ファン20の風の流入を確実に遮断し、風とともに吹き込まれる導電性の異物の侵入を防ぎ、短絡事故を防ぐことができる。また、コーティングされた部品の皮膜が剥離されることもない。
【0021】
さらに、冷却用のファン20と遮蔽部材26の距離が一定となり、ファン20と遮蔽部材26が接触することによるファン20の破損や回転不良を防ぐことができ、安全である。大幅部22bは、差込突起32の厚みに対してややゆとりを有して形成されているため差込突起32を大幅部22bに差し込む作業性はゆとりがあるために良好で、また大幅部22bの位置は、遮蔽部材26が最もファン20に近づいたとしてもファン20に接触しない位置に設定され、安全性が高いものである。
【0022】
遮蔽部材26は、絶縁性の合成樹脂で作られているため、ファン20と電子部品18等との間の放電を確実に防ぐことができる。また、ファン20との絶縁のために距離を置く必要が無く、装置の小形化が可能となる。遮蔽部材26は、プリント基板16の切欠部22に差し込まれて係止され、接着やネジによる固定等が不要で、作業工程が簡単なものとなる。遮蔽部材26は、底板12から連結部30までの遮蔽板28の高さがプリント基板16までの高さより高いため、連結部30がプリント基板16に係止されずに底板12に置かれるため遮蔽板28の下端部28aが底板12の内側面12bに、自重をかけて隙間なく当接することができる。
【0023】
なお、この実施形態の電源装置は、遮蔽部材の形状が異なるものでも良い。例えば図5に示す電源装置34の遮蔽部材36は、遮蔽板38を有し、遮蔽板38の底板12側の下端部38aに連結部40が設けられている。連結部40の先端には差込突起42が設けられている。差込突起42の断面形状は、プリント基板16の切欠部22の大幅部22bにゆとりを有して差し込まれる形状であり、垂直方向の長さは遮蔽板28とほぼ等しく形成されている。遮蔽部材36のプリント基板16への取付方法は、プリント基板16の切欠部22の大幅部22bに、差込突起42を下から差し込み嵌合する。このとき、連結部40は底板12の上側面12bに重ねられ、遮蔽部材36の下端部38aは底板12の上側面12bに当接し、上端部38bはプリント基板16の上側面16cよりも上方に突出する。
【0024】
この電源装置34によれば、電源装置10と同様に遮蔽部材36の取付けの作業効率が良く、ファン20との距離が一定となり、ファン20の風を確実に遮断することができる。遮蔽板38は、上記実施形態の遮蔽部材26の差込突起32を長く形成したもので、上記実施形態の取付方法と兼用可能としてもよい。
【0025】
なお、この発明の電源装置は上記実施の形態に限定されるものではなく、各部材の形状は適宜変更可能であり、プリント基板の切欠部の数や形状は自由に変更可能であり、切欠部の大幅部がプリント基板の端部に連通せず透孔のように形成されてもよい。遮蔽部材の差込突起の数や形状も、切欠部にあわせて適宜変更可能である。遮蔽部材の材質は、絶縁性の合成樹脂であればいろいろな材質を用いることが出来る。遮蔽部材がプリント基板に接着されてもよい。また、プリント基板を取り付ける方向は、水平以外でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態の電源装置の正面図である。
【図2】この実施形態の電源装置のプリント基板の平面図である。
【図3】この実施形態の電源装置のプリント基板と遮蔽部材の斜視図である。
【図4】この実施形態の電源装置の縦断面図である。
【図5】この実施形態の電源装置の変形例を示す正面図である。
【図6】従来の技術の電源装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 電源装置
12 底板
14 スペーサ
16 プリント基板
18 電子部品
20 ファン
22 切欠部
24 係止突起
26 遮蔽部材
28 遮蔽板
30 連結部
32 差込突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の底面を形成する底板と、前記底板にスペーサを介して設けられ電子部品が取り付けられたプリント基板と、前記底板に近接し前記筐体の側面側に設けられて前記プリント基板の前記電子部品に向かって送風する冷却用のファンを有した電源装置において、
前記プリント基板の端部に形成された開口部と、前記開口部に取り付けられ前記底板と前記プリント基板間の空間と前記ファンとの間を仕切る遮蔽部材とを備え、前記遮蔽部材により、前記プリント基板と前記底板の間に送られる前記ファンからの風が遮断されることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、絶縁性の合成樹脂で作られていることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記底板と前記プリント基板は互いに平行に位置し、前記プリント基板が前記底板の上方に設けられ、前記プリント基板の端部は前記底板の端部よりも内側に位置し、前記遮蔽部材には、前記プリント基板に対して交差して設けられ下端部が前記底板の上側面に当接し上端部が前記プリント基板の上側面よりも上方に突出する遮蔽板と、前記遮蔽板の上端部に連続し前記プリント基板の前記開口部に向かって突出する連結部と、前記連結部の先端に設けられ前記開口部に差し込み嵌合される差込突起が設けられ、前記連結部は前記プリント基板の上側面に離間して位置し、前記遮蔽板の下端部は、前記底板の上側面に自重をかけて当接することを特徴とする請求項1または2記載の電源装置。
【請求項4】
前記底板と前記プリント基板は互いに平行に位置し、前記プリント基板が前記底板の上方に設けられ、前記プリント基板の端部は前記底板の端部よりも内側に位置し、前記遮蔽部材には、前記プリント基板に対して交差して設けられ下端部が前記底板の上側面に当接し上端部が前記プリント基板の上側面よりも上方に突出する遮蔽板と、前記遮蔽板の下端部に連続し前記底板の上側面に沿って前記プリント基板の前記開口部に対向する位置に向かって突出する連結部と、前記連結部の先端に設けられ前記開口部に下方から差し込み嵌合される差込突起が設けられ、前記遮蔽板の下端部は前記底板の上側面に自重をかけて当接することを特徴とする請求項1または2記載の電源装置。
【請求項5】
前記開口部は、前記プリント基板の端部に開放された小幅部と、この小幅部に連通して側方に広がった大幅部とからなることを特徴とする請求項1記載の電源装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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