説明

電磁ポンプ

【課題】吸入口と吐出口を同一側に配置して可動鉄心のストロークの調整し吐出量を機械的に容易に出来るようにした電磁ポンプを提供する。
【解決手段】電磁ポンプ10は流体の吸入口19及び吐出口20の位置を可動鉄心28の一方側に配置している。吸入口19及び吐出口20の位置に対向した反対側には可動鉄心28のストロークSを調整できる調整ねじ30及びナット部材31を配置した。
このため、流体の流路を可動鉄心53の中心に連通しないようにしたことで、吸入口19及び吐出口20の配置の自由度が広がった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ポンプに関し、さらに詳細には外部から容量を調整することが可能な電磁ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁ポンプは電磁コイルに流す電流のON−OFFを繰り返すことにより、プランジャが往復動し、流体を(IN)から吸い、(OUT)から吐出する構造である。
【0003】
例えば、図3に示すように電磁ポンプ40は電磁コイル41の内側41bに臨入され該電磁コイル41の一端側に配設されたヨーク42と、ヨーク42に対向して前記電磁コイル41の他端側より内側41cに臨入された固定鉄心43と、を備える。固定鉄心43は、一側に電磁コイル41の他端側に係合する鍔部43aと、該電磁コイル41の内側41cに嵌挿された中央部43bと、他側に側壁部43cと、を備える。前記中央部43bは横断面凹状を有し、側壁部43cに出口穴43dを有する出口シート44が形成されている。
【0004】
固定鉄心43の中央部43bには、吐出側本体45の円筒部45aが嵌合されており、該吐出側本体45の鍔部45bを固定鉄心43の鍔部43aとコイルケース46の一端部46aとで加締め挟持することにより吐出側本体45を固定鉄心43に固定している。
前記吐出側本体45には、軸心方向に貫通する貫通孔45cが穿設され、該貫通孔45cの一端にノズルを形成する2個の吐出口47が設けられている。
【0005】
吐出側本体45の段付貫通孔45cに嵌挿されたばね部材48は、一端を段付貫通孔45cの段部49aに係合し、他端を出口ボール50に当接させており、該ばね部材48の弾発力により出口ボール50を軸心方向に付勢して、出口ボール50を出口シート44に押圧するように機能する。この場合、ばね部材48、出口ボール50、出口シート44により一側(図3で下端)から他端(図3で上端)へのみ液体を通過させる出口逆止弁51が形成される。
【0006】
ヨーク42に当接固定された中央貫通穴52dを有するストッパー52と固定鉄心43との間には、軸心方向に往復運動可能に可動鉄心(プランジャ)53が設けられている。
前記ストッパー52には、吸入口58が設けられた吸入側本体59が当接して設けられている。
前記可動鉄心53には、一側に入口シート54を有する入口穴53dが設けられ、他側が開口している。可動鉄心53の内孔53aには、ばね部材(第2のばね部材)55及び入口ボール56が内装されている。前記ばね部材55は、一端が固定鉄心43の側壁部43cの外端面に当接されており、他端が可動鉄心53の内孔53aの内方端面に係合されている。前記入口ボール56は、前記ばね部材55の内方に遊挿されている。よって、入口ボール56はばね部材55の内方において撓み方向に沿って移動自在に配設されている。さらに、可動鉄心53は、電磁コイル41の非励磁時にばね部材55の弾発力により該ばね部材55及び入口ボール56を入口シート54に押圧されている。
この場合、ばね部材55、入口ボール56及び入口シート54より他側(図3で下端)から一側(図3で上端)へのみ液体を通過させる入口逆止弁57が形成される。
電磁ポンプ40は、電磁コイル41のON−OFFの繰り返しにより可動鉄心53を軸心方向に往復動させ、入口逆止弁57側から液体が吸入され、出口逆止弁51から吐出され、吐出口47を介して吐出される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−258088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では電磁コイルのON−OFFの1回で吐出量Qは、可動鉄心の寸法と該可動鉄心の移動量で決定される。
従って、複数個の容量の個体差を小さくするためには、可動鉄心の直径と該可動鉄心のストローク寸法の精度を上げる必要がある。特に、ストローク寸法は複数部品の寸法のばらつきの累積となるため、個々の部品は非常に高精度に仕上る必要がある。
本発明は、係る課題を解決するためになされたもので、吸入口(IN)と吐出口(OUT)を可動鉄心の同一側に配置して可動鉄心のストロークの調整を容易に出来るようにした電磁ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の請求項1は、
円筒形状のボディと、
前記ボディに嵌挿されソレノイドを形成する円筒形状のコイルと、
前記コイルの内側に設けられ鍔部が前記コイルの一側に係合する円筒形状のヨークと、
前記ヨークの円筒部の内側に摺動可能に嵌挿され一側に開口する凹形状の可動鉄心と、
前記可動鉄心に対向して前コイルに内側に設けられ一側に開口する凹部を形成する固定鉄心と、
前記ボディに取り付けられ前記ボディの軸心方向に対して直交して同一線上で対向して設けられた吸入口及び吐出口を有するポンプ本体と、
前記ポンプ本体に形成され前記吸入口に連通する貫通孔に設けた入口逆止弁と、
前記ポンプ本体に形成され前記吐出口に連通する貫通孔に設けた出口逆止弁と、
前記ボディに取り付けられ前記可動鉄心を押圧して該可動鉄心のストロークを規制する調整機構と、
を備え、
前記可動鉄心及び前記ポンプ本体は前記固定鉄心を挿んで対向して配設され、前記可動鉄心及び前記調整機構は隣接して設けられたことを特徴とする。
本発明によれば、流体の流路を可動鉄心の中心に連通しないようにしたことで、吸入口及び吐出口の配置の自由度が広がった。
さらに、電磁ポンプを構成する部品の累積寸法誤差をキャンセルできる構造にすることにより、可動鉄心のストロークSの精度を向上させることができる。
【0010】
請求項2は、前記固定鉄心の鍔部にはリテーナにより凹部が形成され該凹部に前記吸入口及び前記吐出口が前記貫通孔、前記入口逆止弁及び出口逆止弁を介して連通しているので、前記吸入口及び前記吐出口が共に一側に設けられているので、電磁ポンプの形状をコンパクトにすることができ、好適である。
【0011】
請求項3では、前記入口逆止弁及び前記出口貫通孔に設けられたばね部材と、前記ばね部材の弾発力により押圧されるボール部材と、を備えるので、構造が簡素にすることができる。
【0012】
請求項4では、前記調整機構は、前記ボディに取り付けられたボス部に螺着し前記可動鉄心に係合するねじ部材と、前記ねじ部材に螺合し前記ボス部に固締されるナット部材と、を備えているので、構造が簡単でよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、吸入口及び吐出口の配置の自由度が広がり、電磁ポンプを構成する部品の累積寸法誤差をキャンセルできる構造にすることにより、可動鉄心のストロークSの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る電磁ポンプの概略構造図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電磁ポンプの動作説明図である。
【図3】従来の電磁ポンプの概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電磁ポンプにつき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る電磁ポンプ10の概略構造図である。
図1に示す電磁ポンプ10は、円筒形状のボディ11と、該ボディ11の一端(図1で上端)に螺着されたボス部12と、ボディ11の他側(図1で下端)に螺着されたポンプ本体13と、を備える。
【0016】
さらに、電磁ポンプ10はボディ11に内装された電磁コイル(コイル)14と、該電磁コイル14の内側14aに臨入され該電磁コイル14の一端側(図1で上端側)に配設されたヨーク15と、該ヨーク15に対向して前記電磁コイル14の他端側(図1で下端側)より内側14aに臨入された固定鉄心16と、を備える。
ヨーク15は、一側に電磁コイル14の一端側に係合する鍔部15aと、該電磁コイル14の内側14aに嵌挿された中央部15bと、を備える。前記中央部15bは円筒形状を有している。ボス部12の下面とヨーク15の鍔部15a、並びに鍔部15aの下面と電磁コイル14の鍔部14cは、Oリング部材を介して液密にシールされている。
【0017】
固定鉄心16は、一側に電磁コイル14の他端側(図1で下端側)に係合する鍔部16aと、該電磁コイル14の内側14aに嵌挿された円筒部16bと、該円筒部16bに穿設された連通孔17と、を備える。
ポンプ本体13の内端面13aと固定鉄心16との下面との間には、リテーナ18が挿設されおり、内端面13aとリテーナ18の下面、該リテーナ18の上面と固定鉄心16の下面は、Oリング部材を介して液密にシールされている。前記リテーナ18は入口逆止弁24及び出口逆止弁27を構成する部品をポンプ本体13から飛び出さないように上から押さえている。
【0018】
ポンプ本体13は、流体の吸入口19と、流体の吐出口20が形成されている。吸入口19は、該吸入口19に連通する吸入路21がリテーナ18に穿設された穴18Aaより固定鉄心16の下面に形成された流体の貯留部である凹部22に連通している。
一方、吐出口20は、該吐出口20に連通する吐出路23がリテーナ18に穿設された穴18bより固定鉄心16の下面に形成された流体の貯留部である凹部22に連通している。
【0019】
吸入路21の途中には、ポンプ本体13に設けられた入口逆止弁24が配設されている。入口逆止弁24は、ばね部材25、ボール部材26より構成され、吸入口19より流入する流体を固定鉄心16の凹部22側のみ通過させる機能を有する。
吐出路23の途中には、ポンプ本体13に設けられた出口逆止弁27が配設されている。出口逆止弁27は、ばね部材25、ボール部材26より構成され、吐出路23より吐出する流体を吐出口20側のみ通過させる機能を有する。
【0020】
参照符号28はヨーク15の内孔15cに摺動自在に嵌挿された可動鉄心で、該可動鉄心28と下面28bと固定鉄心16の上面16cとの間にはばね部材29が介挿されており、該ばね部材29の弾発力により可動鉄心28を図1で上方に移動させるようにしている。
参照符号30はボス部12に螺着された調整ねじで、先端が可動鉄心28の上面28aに当接しており、該調整ねじ30(調整機構)の上下方向の移動により可動鉄心28のストロークSを適宜、調整可能にしており、調整ねじ30に螺合するナット部材31(調整機構)をボス部12に締め付けて可動鉄心28の位置を決定している。
【0021】
図1に示すように、電磁ポンプ10は流体の吸入口19及び吐出口20の位置を可動鉄心28の動作位置の一方側の配置しており、また、吸入口19及び吐出口20の位置に対向した反対側に可動鉄心28のストロークSを調整できる調整ねじ30及びナット部材31を配置した。
このため、従来は可動鉄心53の中心を流体の流路とし、吸入口58(IN)及び吐出口47(OUT)を略直線上に配置したが、本発明の実施の形態では流体の流路を可動鉄心53の中心に連通しないようにしたことで、吸入口19及び吐出口20の配置の自由度が広がった。
さらに、電磁ポンプ10を構成する部品の累積寸法誤差をキャンセルできる構造にすることにより、可動鉄心53のストロークSの精度を向上させることができる。
本発明の実施の形態を示す図1において、電磁ポンプ10は縦方向(図1で上下方向)の向きに配設したが、横方向(図1で左右方向)に配置してもよい。
してください。
【0022】
本発明の実施の形態に係る電磁ポンプ10は基本的には以上のように構成されたものであり、動作について説明する。
電磁コイル14を励磁すると図2で可動鉄心28が下方にストロークSだけ固定鉄心16側に吸引され、凹部22に貯留された液体(図示しない)が穴18b、出口逆止弁27、吐出路23、吐出口20より吐出される。(図2参照)
一方、電磁コイル14を非励磁にすると可動鉄心28がばね部材29の弾発力によりストロークSだけ調整ねじ30側に移動する。これにより、液体が吸入口19、吸入路21、入口逆止弁24、穴18aを経て凹部22に貯留される。(図1参照)
【符号の説明】
【0023】
10 電磁ポンプ 11 ボディ
13 ポンプ本体 14 電磁コイル
15 ヨーク 16 固定鉄心
24 入口逆止弁 27 吐出逆止弁
30 調整ねじ 31 ナット部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状のボディと、
前記ボディに嵌挿されソレノイドを形成する円筒形状のコイルと、
前記コイルの内側に設けられ鍔部が前記コイルの一側に係合する円筒形状のヨークと、
前記ヨークの円筒部の内側に摺動可能に嵌挿され一側に開口する凹形状の可動鉄心と、
前記可動鉄心に対向して前コイルに内側に設けられ一側に開口する凹部を形成する固定鉄心と、
前記ボディに取り付けられ前記ボディの軸心方向に対して直交して同一線上で対向して設けられた吸入口及び吐出口を有するポンプ本体と、
前記ポンプ本体に形成され前記吸入口に連通する貫通孔に設けた入口逆止弁と、
前記ポンプ本体に形成され前記吐出口に連通する貫通孔に設けた出口逆止弁と、
前記ボディに取り付けられ前記可動鉄心を押圧して該可動鉄心のストロークを規制する調整機構と、
を備え、
前記可動鉄心及び前記ポンプ本体は前記固定鉄心を挿んで対向して配設され、前記可動鉄心及び前記調整機構は隣接して設けられたことを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の電磁ポンプにおいて、
前記固定鉄心の鍔部にはリテーナにより凹部が形成され該凹部に前記吸入口及び前記吐出口が前記貫通孔、前記入口逆止弁及び出口逆止弁を介して連通することを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2記載の電磁ポンプにおいて、
前記入口逆止弁及び前記出逆止弁は、前記貫通孔に設けられたばね部材と、前記ばね部材の弾発力により押圧されるボール部材と、を備えることを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3記載のいずれか1の電磁ポンプにおいて、
前記調整機構は、前記ボディに取り付けられたボス部に螺着し前記可動鉄心に係合するねじ部材と、前記ねじ部材に螺合し前記ボス部に固締されるナット部材と、を備えることを特徴とする電磁ポンプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−47058(P2012−47058A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187196(P2010−187196)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】