説明

電磁変換器

【課題】高い磁束密度の磁界を振動膜のコイルに与えて、効率よく駆動力が得られる電磁変換器を提供することを目的とする。
【解決手段】一対のフレーム31,32の間にスペーサ33を設け、一対のフレーム31,32の内壁面に永久磁石11,13を千鳥配置し、永久磁石11,13上にプレート12,14を水平方向に直線上に配置し、プレート12,14と一対のフレーム31,32及びスペーサ33との間隔及びプレート12,14同士の間隔に振動膜15を配置し、プレート12,14同士の間隔及びプレート14とフレーム32又はスペーサ33との間隔に振動膜15のコイルパターン15bを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば永久磁石と振動膜とを組み合わせ、オーディオ信号から音声再生する電磁変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
永久磁石と振動膜とを組み合わせた電磁変換器については、様々な技術が提案されている。このような電磁変換器は、例えば、特許文献1によれば、永久磁石板とその永久磁石板に対向するように配置した振動膜と、永久磁石板と振動膜との間に配置された緩衝部材とを備えている。
【0003】
永久磁石は、帯状の異なる磁極が一定の間隔(ギャップとも言う)をおいて交互に形成されたもの(多極着磁パターンとも言う)である。また、振動膜は、永久磁石板の異なる磁極同士の間隙部分のいわゆる着磁のニュートラルゾーンと称される部分に対向する位置に、蛇行形状の導体パターンからなるコイル(コイルパターンとも言う)が形成されている。一般的な電磁変換器は、これら各部材がフレームに覆われており、このフレームがスピーカ筺体に取り付けられて構成されている。
【0004】
このような構成の電磁変換器は、フレームの内面で永久磁石板の磁極が上下に対向するように配設されており、磁極間のギャップに磁界を発生させている。磁極間のギャップに対向する位置に振動膜のコイルパターンが設けられており、振動膜のコイルパターンに電流(オーディオ信号)が流れると、そのコイルパターンと永久磁石板の多極着磁パターンとが電磁的に結合し、フレミングの法則に従って振動膜にオーディオ振動が発生する。フレームに形成された放音孔などにより、オーディオ振動が外部に放出されて音声再生が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−331596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電磁変換器は、磁極間のギャップに対向する位置にコイルパターンが形成されているため、振動膜に形成されたコイルパターンはギャップに発生する磁界の漏れ磁束で駆動することになり、効率が悪かった。
【0007】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、永久磁石間の高い磁束密度の磁界で振動膜上に形成されたコイルパターンを駆動させる効率の良い電磁変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電磁変換器は、組み合わせた際に中空が形成されるように配置されると共に、少なくとも一方の両端部が折り曲げられた一対のフレームと、一対のフレームの相対する内壁面に、同一の磁極の方向で所定の間隔をもって千鳥配置となるよう固定された棒状の永久磁石と、永久磁石のフレームとの固定面と相対する面に、水平方向に一直線となるよう固定されたプレートと、一対のフレームの端部間で、千鳥配置された外側の永久磁石に固定されたプレートの近傍に配置されたスペーサと、各プレート間及びプレートとフレーム又はスペーサ間に配置されるよう断面が凹凸状に形成されると共に、各プレート間の近傍、及び千鳥配置された外側の永久磁石に固定されたプレートとスペーサ間の近傍にコイルパターンが形成された振動膜とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る電磁変換器によれば、上記のように構成された永久磁石、プレート及び振動膜により、永久磁石間の高い磁束密度の磁界で振動膜上のコイルパターンを駆動させることができ、効率良く駆動力を得ることができるとともに、上記のように構成されたスペーサ及び振動膜により、永久磁石間の磁束密度と同様の高い磁束密度の磁界で振動膜上の外端のコイルパターンを駆動させることができ、振動膜上で一様な駆動力が得られる。その結果、音響特性が良好な電磁変換器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1の電磁変換器の構成を示す(a)外観斜視図であり、(b)分解斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】実施の形態1の電磁変換器におけるフレームの折り返し部の長さa、プレート間の磁界発生位置♯1、フレームとプレートとの間の磁界発生位置♯2を示す断面図である。
【図4】図3に示すフレームの折り返し部の長さaを変化させたときの位置♯1,♯2における磁束密度の変化を表したグラフである。
【図5】実施の形態1の電磁変換器において、一方のフレームに折り返し部を設けない構造を示した断面図である
【図6】実施の形態2の電磁変換器の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の電磁変換器の構成を説明する斜視図であり、図1(a)が外観斜視図、図1(b)が分解斜視図である。
図1(a)、図1(b)に示すように、電磁変換器1は、永久磁石11,13、プレート12,14、振動膜15、フレーム30から構成されている。フレーム30は、上側フレーム31、下側フレーム32(一対のフレーム)及びスペーサ33を組み合わせた際に中空が形成されるように配置した筺体構造であり、上側フレーム31、下側フレーム32の面には、フレーム30の内部と外部とを連通する放音孔31a,32aが形成されている。
【0012】
永久磁石11,13は棒状形状であり、永久磁石11,13の一面には、磁性体からなるプレート12,14が接着されている。
【0013】
振動膜15は、薄く柔軟な樹脂フィルムからなる振動膜基材15aの表裏面に、蛇行形状の導体パターンからなるコイル(以下、コイルパターンと言う)15bが形成されたものである。
【0014】
図2は、図1に示すA−A線に沿って切断した電磁変換器1の断面図であり、電磁変換器1における永久磁石11,13、プレート12,14、振動膜15、上側フレーム31,下側フレーム32、スペーサ33の配置を示している。
【0015】
図2に示すように、永久磁石11,13は着磁された磁極の方向を同一にし、所定の間隔をもって、上側フレーム31、下側フレーム32の対向する内壁面に互い違いに千鳥配置で固定されている。
【0016】
永久磁石11と上側フレーム31との固定面に相対する面には、プレート12が接着固定されており、永久磁石13と下側フレーム32との固定面に相対する面には、プレート14が接着固定されている。また、プレート12,14は水平方向に一直線上にならぶように配置されている。
【0017】
プレート12,14は、鉄などの磁性体からなり、着磁された永久磁石11,13に載置させることにより、例えば図2の矢印のように、近くの異なる磁極との磁束密度が集中するように作用している。
【0018】
上側フレーム31、下側フレーム32には、両端部を折り曲げた折り返し部31b、32bが形成されており、折り返し部31b,32bの外端同士の間にスペーサ33が配置されている。スペーサ33は、例えば非磁性体からなり、上下のフレーム31,32の各折り返し部31b,32bの外端同士が接触しないように所定の高さを持った間隙部分を形成している。スペーサ33は、図2に示すように、千鳥配置された外側の永久磁石13を固定していない上側フレーム31に設けられるとともに、永久磁石13に固定されたプレート14の近傍に配置される。
【0019】
振動膜15の振動膜基材15aは、断面が凹凸状に形成され、振動膜凸部15c、振動膜凹部15d、振動膜作用部15eを有している。振動膜凸部15cはプレート14と上側フレーム31との間に配置され、振動膜凹部15dはプレート12と下側フレーム32との間に配置され、振動膜作用部15eはプレート14とプレート12との間、プレート14と下側フレーム32との間及びプレート14とスペーサ33との間に配置されている。振動膜作用部15eは、振動膜凸部15cと振動膜凹部15dとの接続部分であり、振動膜作用部15eの中心がプレート12,14同士の略中間に配置されている。
【0020】
次に電磁変換器1の動作原理について説明する。
永久磁石11,13に載置されたプレート12,14間において、振動膜15の振動膜作用部15eを横切るように磁界を発生させている。コイルパターン15bに外部から電流(オーディオ信号)が供給されると、コイルパターン15bと永久磁石11,13とが電磁的に結合し、フレミングの法則に従って駆動力が発生する。発生したコイルパターン15bの駆動力によって振動膜15が振動し、この振動が放音孔31a及び32aから外部へ放射され、音声として再生される。
【0021】
次に振動膜作用部15eのコイルパターン15bに作用する磁束密度について説明する。
図3は、図1に示すA−A線に沿って切断した電磁変換器1の一部を省略した断面図であり、上側フレーム31の折り返し部31bの長さa、磁束密度の発生位置としての間隔♯1及び間隔♯2を示している。間隔♯1は、プレート14とプレート12との間隔であり、間隔♯2はプレート14とフレーム32の間隔及びプレート14とスペーサ33の間隔である。
図4は、永久磁石11,13の寸法を幅W=6.5mm、奥行きD=5.5mmとし、上側フレーム31の折り返し部31bの長さa(mm)を変化させたときの間隔♯1,♯2における磁束密度の変化を示している。
【0022】
上述したような電磁変換器1において、上下のフレーム31,32を接触させるような構成にした場合、図4に示すように、間隔♯2の磁束密度が低下し、間隔♯2の磁束密度と、間隔♯1の磁束密度との大きさが異なって、発生する駆動力が異なることから振動膜15上で駆動力のアンバランスが発生するという問題点がある。
【0023】
この問題点に対して実施の形態1では、上述したように上側フレーム31と下側フレーム32との間に間隙部分として非磁性体等からなるスペーサ33を設けてフレーム30を構成したことにより、プレート14とフレーム30との間隔♯2の磁束密度が極端に低下することを防いでいるが、図3に示したフレーム31の折り返し部31bの長さa(mm)を変化させることにより、さらに音響特性が良好な電磁変換器を得ることができる。
【0024】
図4に示すように、永久磁石11,13の寸法を幅W=6.5mm、奥行きD=5.5mmとした場合、折り返し部31bの長さa(mm)を約3mmにすることによりプレート12,14同士の間隔♯1の磁束密度と、プレート14とフレーム30の間隔♯2の磁束密度を同等にすることができる。
【0025】
なお、永久磁石11,13の寸法の変化または能力の違いにより、上記プレート12,14同士の間隔♯1の磁束密度と、プレート14とフレーム30との間隔♯2の磁束密度を同等にするための上側フレーム31の折り返し部31bの長さaは異なる。
【0026】
また、永久磁石11,13の寸法または能力の違いにより、フレーム31の両端部は折り返さない構造としても良い。例えば、図5は上側フレーム31の両端部を折り返さない構造を示す断面図であり、図5に示すように、図2における上側フレーム31の折り返し部31bに替えて、折り返し部を有するスペーサ33を設けても良い。
【0027】
上述のように、実施の形態1の電磁変換器1は、上側フレーム31と下側フレーム32の相対する内壁面に永久磁石11,13を千鳥配置し、永久磁石11,13に固定したプレート12,14を水平方向に直線上に配置し、プレート12,14同士の間隔に振動膜15のコイルパターン15bを配置したことにより、コイルパターン15bに永久磁石11,13の強い磁束密度を与えることができる。
【0028】
また、上側フレーム31と下側フレーム32との間に間隙部分を設けるようにスペーサ33を配置したことにより、振動膜15の外端のコイルパターン15bも強い磁束密度の磁界を受けて駆動力を得ることができる。
【0029】
さらに、上側フレーム31の折り返し部31bの長さaを調整する、すなわちスペーサ33の高さを所定の高さにして上側フレーム31と下側フレーム32との間に所定の間隙部分を設けることにより、プレート14と上側フレーム31及び下側フレーム32との間隔♯2の磁束密度とプレート12,14同士の間隔♯1の磁束密度を同等にすることができ、振動膜15上で一様な駆動力が得られる。その結果、音響特性が良好な電磁変換器1を得ることができる。
【0030】
実施の形態2.
実施の形態1では、上下のフレーム31,32の折り返し部31b,32bの端部をスペーサ33を介して接続する構成について示したが、実施の形態2は、プレート14と下側フレーム32との間隔♯2の磁束密度をさらに高める構成について説明する。
【0031】
図6は、図1のA−A線で切断した電磁変換器1の断面図である。図6において、突起部32cを設けた以外は、図1等の構成と同等であるため、同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
図6に示すように、下側フレーム32は、折り返し部32bを下側フレーム32の内側方向に折り曲げてなる突起32cを形成している。突起32cは、千鳥配置された外側の永久磁石13に固定されたプレート14に磁束密度を集中させるように作用する。
【0033】
実施の形態2の電磁変換器1は、このように構成することで、突起32cと永久磁石13に載置されたプレート14との間に磁束密度が集中するので、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、さらに効果的に振動膜15のコイルパターン15bに磁束密度を集中させることができる。
【0034】
なお、図1〜6は説明を簡単にするために誇張拡大して示したものであり、実際の縮尺とは異なるものであり、また、説明を容易にするため、一部を省略して示している。
【0035】
また、ここでは、説明を容易にするためにフレームの上下を区別しているが、上下が反転するものであってもかまわない。
【0036】
以上のように、この発明に係る電磁変換器は、上側フレーム31及び下側フレーム32の相対する内壁面に永久磁石11,13を千鳥配置し、永久磁石11,13に固定したプレート12,14を水平方向に直線上にならぶように配置し、プレート12,14同士の間隔及びプレート14とフレーム30との間隔に振動膜15のコイルパターン15bを配置し、上側フレーム31と下側フレーム32との間隙部分として、上側フレーム31の外端部にスペーサ33を設けたことにより、コイルパターン15bが永久磁石11,13間の磁束密度と同等の強い磁束密度の磁界で駆動させて振動膜15を一様に効率良く駆動させることができるので、音響特性が良好な電磁変換器を得ることができるので、音響装置などに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0037】
1 電磁変換器、11,13 永久磁石、12,14 プレート、15 振動膜、15a 振動膜基材、15b コイルパターン、15c 振動膜凸部、15d 振動膜凹部、15e 振動膜作用部、30 フレーム、31 上側フレーム、31a,32a 放音孔、31b,32b 折り返し部、32 下側フレーム、32c 突起、33 スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み合わせた際に中空が形成されるように配置されると共に、少なくとも一方の両端部が折り曲げられた一対のフレームと、
上記一対のフレームの相対する内壁面に、同一の磁極の方向で所定の間隔をもって千鳥配置となるよう固定された棒状の永久磁石と、
上記永久磁石の上記フレームとの固定面と相対する面に、水平方向に一直線となるよう固定されたプレートと、
上記一対のフレームの端部間で、千鳥配置された外側の永久磁石に固定されたプレートの近傍に配置されたスペーサと、
上記各プレート間及び上記プレートと上記フレーム又は上記スペーサ間に配置されるよう断面が凹凸状に形成されると共に、上記各プレート間の近傍、及び千鳥配置された外側の永久磁石に固定されたプレートと上記スペーサ間の近傍にコイルパターンが形成された振動膜とを備えた電磁変換器。
【請求項2】
上記両端部が折り曲げられたフレームに、千鳥配置された外側の永久磁石に固定されたプレートに磁束密度を集中させる突起を設けたことを特徴とする請求項1記載の電磁変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−252028(P2010−252028A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98957(P2009−98957)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】