説明

電磁誘導加熱調理器及び電磁誘導加熱調理器の検査方法

【課題】被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切な電磁誘導加熱調理器、及び、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切か否かを検査し得る電磁誘導加熱調理器の検査方法を提供する。
【解決手段】電磁誘導加熱調理器において、コイル支持台40に、加熱コイル30の下面30sの一部をケーシング20の底板23b側に臨ませる検査用開口部41eが設けられ、ケーシング20の底板23bに、検査用開口部41eを通して加熱コイル30の下面30sに臨む検査孔26が設けられ、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離を導出可能な計測値を得るための検査具15を、ケーシング20の底板23bから検査孔26及び検査用開口部41eを介して加熱コイル30の下面30sまで到達可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面が被加熱容器載置面とされる載置部を有するケーシング内に、平板状で且つ渦巻状の加熱コイルが上面に配設されたコイル支持台を、前記加熱コイルの上面が前記載置部の下面に対向するように設けた電磁誘導加熱調理器、及び、その電磁誘導加熱調理器の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電磁誘導加熱調理器は、載置部の被加熱容器載置面に被加熱容器を載置した状態で、加熱コイルに高周波電力を印加して高周波磁界を発生させることにより、被加熱容器に誘導電流を発生させて被加熱容器を加熱するものである。
ところで、誘導電流は距離の二乗に反比例して減衰する。そこで、このような電磁誘導加熱調理器では、載置部の被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が所定の設定範囲に入るように、加熱コイルが上面に配設されたコイル支持台をケーシング内の所定の位置に固定している(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−36793号公報
【特許文献2】特開平8−190984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被加熱容器からこぼれた液分等がケーシング内に浸入しないようにするために、載置部とケーシングとの間を気密状に封止する必要がある。
そのため、通常、シリコンシーラント等のシール材を介在させた状態で載置部がケーシングに取り付けられるが、載置部とケーシングとの間のシール材の厚さがばらついたり、又、コイル支持台の上面にシール材(例えば、シリコンシーラント)を介して渦巻状の加熱コイルが固定される等の理由により、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離がばらつく虞がある。
そして、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離がばらつくと、加熱コイルに印加される高周波電力が同じでも、被加熱容器で得られる加熱出力がばらつくことになる。
【0005】
このような電磁誘導加熱調理器では、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離のバラツキにより、出力される電力にバラツキが生じる。そこで、加熱コイルに印加する高周波電力を調整可能な可変抵抗が設けられている。
そして、従来では、可変抵抗を変化させて、加熱出力を計測する検査を行い、可変抵抗の調整範囲内で、設定電力の加熱出力が得られれば、合格としていた。
従って、従来では、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離を計測していないため、下記に一例を挙げるように、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が不適切になる虞があった。
【0006】
即ち、設定電力の加熱出力が得られれば合格としていたので、載置部の被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が小さ過ぎるものも合格となる虞があった。
そして、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が小さいほど、被加熱容器載置面上で加熱されている被加熱容器から発する熱が加熱コイルに伝わり易くなるので、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が小さ過ぎると、加熱コイルが過度に加熱されることになり、加熱コイルの絶縁抵抗、耐久性が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切な電磁誘導加熱調理器、及び、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切か否かを検査し得る電磁誘導加熱調理器の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る電磁誘導加熱調理器は、上面が被加熱容器載置面とされる載置部を有するケーシング内に、平板状で且つ渦巻状の加熱コイルが上面に配設されたコイル支持台を、前記加熱コイルの上面が前記載置部の下面に対向するように設けた電磁誘導加熱調理器であって、
その特徴構成は、前記コイル支持台に、前記加熱コイルの下面の一部を前記ケーシングの底板側に臨ませる検査用開口部が設けられ、
前記ケーシングの底板に、前記検査用開口部を通して前記加熱コイルの下面に臨む検査孔が設けられ、
前記被加熱容器載置面と前記加熱コイルとの距離を導出可能な計測値を得るための検査具、検査用光又は検査用音波を、前記ケーシングの底板から前記検査孔及び前記検査用開口部を介して前記加熱コイルの下面まで到達可能に構成されている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、コイル支持台に、加熱コイルの下面の一部をケーシングの底板側に臨ませる検査用開口部が設けられ、ケーシングの底板に、検査用開口部を通して加熱コイルの下面に臨む検査孔が設けられているので、検査具、検査用光又は検査用音波を、ケーシングの底板から検査孔及び検査用開口部を介して加熱コイルの下面まで到達させることにより、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離を導出可能な計測値を計測することができる。
例えば、検査具、検査用光又は検査用音波を用いて、被加熱容器載置面に直交する方向での所定の基準位置と加熱コイルの下面との距離を前記計測値として計測する。又、載置部の被加熱容器載置面は外部に面しているので、被加熱容器載置面に直交する方向での基準位置と被加熱容器載置面との距離も容易に得ることができる。そして、それらの距離の取得情報に基づいて、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離を導出して、その導出値を被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離とし、その距離が所定の下限値以上か否かを検査する。そして、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が所定の下限値以上のものを合格とすることにより、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が小さ過ぎるために、加熱コイルが過度に加熱されるといった不都合を解消することができるので、加熱コイルの耐久性が低下するのを防止することができる。
尚、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が所定の上限値以下か否かは、本特徴構成により導出した導出値を用いて検査しても良いし、上記の従来の検査方法を実施して、設定電力の加熱出力が得られれば、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が所定の上限値以下であるとみなしても良い。
従って、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切な電磁誘導加熱調理器を提供することができる。
【0010】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器の更なる特徴構成は、前記コイル支持台の周縁部のうち、前記検査用開口部の径方向外側に対応する部分を除いた部分の全周又は略全周にわたって、前記コイル支持台の下面から下方に突出するリブが設けられ、
冷却風を前記被加熱容器載置面に沿う方向に向けてケーシング内に送風する送風手段が、平面視で、一部分を前記コイル支持台の周縁部における前記リブが設けられていない部分に重ねた状態で、前記コイル支持台の下方に設けられている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、加熱コイルのうちの周方向の一部分は、コイル支持台において周縁部がリブで補強されていない部分に載ることになるが、このような加熱コイルの周方向の一部分の下面と被加熱容器載置面との距離を計測することができる。
つまり、電磁誘導加熱調理器では、加熱コイル等を冷却するために、冷却風を載置部の被加熱容器載置面に沿う方向に向けてケーシング内に送風する送風手段をケーシング内に設ける。又、コイル支持台を補強するために、コイル支持台にその下面から下方に突出するようにリブを設けるが、そのリブを設けるに当たっては、コイル支持台の周縁部のうちで検査用開口部の径方向外側に対応する部分を除いた部分の全周又は略全周にわたって設ける。
そして、送風手段をケーシング内に設けるに当たって、平面視で、一部分をコイル支持台の周縁部におけるリブが設けられていない部分に重ねた状態で、コイル支持台の下方に設けると、送風手段から送風される冷却風により加熱コイルを適切に冷却できながら、ケーシング内において送風手段及びコイル支持台を設けるためのスペース(平面視での面積や高さ)を小さくすることができる。
しかも、コイル支持台のうちで周縁部がリブで補強されていない部分は、平坦な上面が形成され難いために、被加熱容器載置面との距離がばらつき易いが、そのようなコイル支持台の部分に載っている加熱コイルの一部分の下面と被加熱容器載置面との距離を計測することができるので、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離を的確に検査することができる。
従って、電磁誘導加熱調理器の小型化を図りながら、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離を適切なものにすることができる。
【0012】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器の更なる特徴構成は、複数の前記検査孔が、前記加熱コイルの周方向に沿って間隔を開けた状態で、前記ケーシングの底板に設けられている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、複数の検査孔を用いて、加熱コイルの下面において周方向で離れた複数の箇所夫々について、被加熱容器載置面との距離を計測することができる。
ところで、コイル支持台を、加熱コイルの上面が載置部の下面に対向するようにケーシング内に設けるに当たっては、通常は、加熱コイルの上面が載置部の下面と平行になるように(つまり、加熱コイルが被加熱容器載置面と平行になるように)設ける。
しかしながら、ケーシングへの載置部の取り付け姿勢やケーシング内へのコイル支持台の取り付け姿勢のバラツキにより、被加熱容器載置面と加熱コイルとの平行状態がわずかではあるがずれる場合があるが、このような場合、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離は、加熱コイルの下面において周方向に離れた箇所の夫々で異なることになる。
そこで、本特徴構成のように、加熱コイルの下面において周方向で離れた複数の箇所夫々について、被加熱容器載置面との距離を計測するようにすることにより、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離の検査を的確に行うことができる。
例えば、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離が加熱コイルの下面の周方向の一部分で所定の下限値よりも小さい不合格状態を判別することができる。
従って、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離が加熱コイルの下面の一部で所定の下限値よりも小さい不合格状態を判別することができるので、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離をより適切なものにすることができる。
【0014】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器の更なる特徴構成は、2個の前記検査孔が、前記加熱コイルの周方向に沿って、前記加熱コイルの中心に対応する中心角で90度又は略90度に相当する間隔を開けた状態で、前記ケーシングの底板に設けられている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、2個の検査孔を用いて、加熱コイルの下面において周方向に中心角で90度又は略90度に相当する間隔が開いた2箇所夫々について、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離を計測することができる。
つまり、被加熱容器載置面と加熱コイルとの平行状態のズレが小さくても、加熱コイルの下面において周方向に中心角で90度又は略90度に相当する間隔が開いた2箇所では、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離の差が大きく現れ易い。
そこで、本特徴構成の配置で2個の検査孔を設けることにより、検査孔の数を少なくしながら、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離の検査を的確に行うことができる。例えば、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離が加熱コイルの下面の一部で所定の下限値よりも小さい不合格状態を的確に判別することができる
従って、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離を更に適切なものにすることができる。
【0016】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器の検査方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁誘導加熱調理器の検査方法であって、
その特徴構成は、前記検査具、前記検査用光又は前記検査用音波を、前記ケーシングの底板から前記検査孔及び前記検査用開口部を介して前記加熱コイルの下面まで到達させて前記計測値を計測し、当該計測値に基づいて前記被加熱容器載置面と前記加熱コイルとの距離を導出して、当該距離が所定の下限値以上であるか否かを検査する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、検査具、検査用光又は検査用音波を、ケーシングの底板から検査孔及び検査用開口部を介して加熱コイルの下面まで到達させて、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離を導出可能な計測値を計測し、当該計測値に基づいて被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離を導出して、当該距離が所定の下限値以上か否かを検査する。
尚、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離は、例えば、上述の電磁誘導加熱調理器の特徴構成についての説明で記載したのと同様の手順で導出することができる。
又、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が所定の上限値以下か否かは、本特徴構成により導出した導出値を用いて検査しても良いし、上記の従来の検査方法を実施して、設定電力の加熱出力が得られれば、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が所定の上限値以下であるとみなしても良い。
従って、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切か否かを検査し得る電磁誘導加熱調理器の検査方法を提供することができる。
【0018】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器の検査方法の更なる特徴構成は、前記検査孔に挿通可能で且つ長さ方向に移動操作自在な検査棒を、前記検査具として用い、
前記検査棒を前記検査孔から挿通し、前記コイル支持台の前記検査用開口部を介して前記加熱コイルの下面に当接させるように移動操作して、前記長さ方向での所定の基準位置と前記検査棒の先端との距離を前記計測値として計測する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、被加熱容器載置面が検査棒の長さ方向に直交する姿勢で、ケーシングを配置して、検査棒を検査孔からケーシング内に挿通し、コイル支持台の検査用開口部を介して加熱コイルの下面に当接させるように移動操作する。
このように検査棒を移動操作する間、被加熱容器載置面に直交する方向での所定の基準位置と検査棒の先端との距離を計測することができるので、検査棒の先端を加熱コイルの下面に当接させることにより、被加熱容器載置面に直交する方向での基準位置と検査棒の先端(即ち、加熱コイルの下面)との距離を前記計測値として計測することができる。
そして、加熱コイルの下面に当接させる検査棒の先端の面積を、検査孔に挿通可能な条件で極力広くすることができるので、加熱コイルの下面に凹凸があっても、被加熱容器載置面に直交する方向での基準位置と加熱コイルの下面との距離を精度良く計測することができる。
又、載置部の被加熱容器載置面は外部に面しているので、上述のようにケーシングを配置している状態で、被加熱容器載置面に直交する方向での基準位置と被加熱容器載置面との距離も容易に得ることができ、それらの距離の取得情報に基づいて、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離を導出することができる。
従って、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切か否かを一層的確に検査することができる。
【0020】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器の検査方法の更なる特徴構成は、平面状の検査面を有し且つその検査面が前記長さ方向に直交する姿勢で配置された検査盤と、前記長さ方向での所定の基準位置と前記検査棒の先端との距離を前記計測値として計測すると共に、その計測値に基づいて前記検査面と前記検査棒の先端との距離を前記被加熱容器載置面と前記加熱コイルとの距離として導出可能な距離計測手段とを用い、
前記ケーシングにおける前記被加熱容器載置面を前記検査面に当接させた状態で配置し、前記検査棒を前記検査孔から挿通し、前記コイル支持台の前記検査用開口部を介して前記加熱コイルの下面に当接させるように移動操作して、その状態での前記検査面と前記検査棒の先端との距離を前記距離計測手段にて計測する点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、ケーシングにおける載置部の被加熱容器載置面を検査面に当接させた状態で配置する。このようにケーシングを配置すると、検査棒を被加熱容器載置面に直交する方向に移動操作することができる。又、このような配置状態では、被加熱容器載置面と検査面とは被加熱容器載置面に直交する方向において同位置に位置するとみなすことができる。
続いて、検査棒を検査孔からケーシング内に挿通して、加熱コイルの下面に向けて移動操作して、検査棒の先端をコイル支持台の検査用開口部を介して加熱コイルの下面に当接させ、距離計測手段により、検査面と検査棒の先端との距離(即ち、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離)を計測する。
【0022】
説明を加えると、距離計測手段を、検査棒の長さ方向(即ち、被加熱容器載置面に直交する方向)での所定の基準位置と検査棒の先端との距離を計測可能に構成する。
すると、検査棒を検査面に向けて移動操作して、検査棒の先端を検査面に当接させると、距離計測手段により、被加熱容器載置面に直交する方向での基準位置と検査面(即ち、被加熱容器載置面)との距離を計測することができる。
続いて、ケーシングにおける載置部の被加熱容器載置面を検査面に当接させた状態で配置し、検査棒を検査孔からケーシング内に挿通し、加熱コイルの下面に向けて移動操作して、コイル支持台の検査用開口部を介して加熱コイルの下面に当接させると、その状態での距離計測手段の計測値が、被加熱容器載置面に直交する方向での基準位置と検査棒の先端(即ち、加熱コイルの下面)との距離になる。
そして、距離計測手段により、これらの計測情報に基づいて、検査面と検査棒の先端との距離(即ち、被加熱容器載置面と加熱コイルの下面との距離)が導出される。
例えば、検査棒の先端を検査面に当接させた状態で、距離計測手段を計測値が0になるようにリセットしておくと、検査棒を加熱コイルの下面に当接させたときの距離計測手段の計測値が、検査面と検査棒の先端との距離となる。
従って、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切か否かを簡単な手順で一層的確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電磁誘導加熱調理器の斜視図
【図2】天板の一部を切り欠いた状態での電磁誘導加熱調理器の平面図
【図3】図2のIII−III矢視図
【図4】天板及び上側ケース部材を省略した状態での電磁誘導加熱調理器の平面図
【図5】電磁誘導加熱調理器の底面図
【図6】下側ケース部材及び制御基板を省略した状態での電磁誘導加熱調理器の底面図
【図7】検査装置の構成、及び、その検査装置を用いた電磁誘導加熱調理器の検査方法を説明する縦断面図
【図8】電磁誘導加熱調理器の検査方法を説明する要部の縦断面図
【図9】別実施形態に係る電磁誘導加熱調理器の、天板及び上側ケース部材を省略した状態での平面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明をプレート状で可搬型の電磁誘導加熱調理器に適用した場合の実施形態を説明する。
図2〜4に示すように、上面が被加熱容器載置面21uとされる載置部としての天板21を有するケーシング20内に、平板状で且つ渦巻状の加熱コイル30が上面に配設されたコイル支持台40が、加熱コイル30の上面30uが天板21の下面21sに対向するように設けられている。ちなみに、天板21は厚さが均一な平板状であり、コイル支持台40は、加熱コイル30の上面30uが天板21の下面21sと平行になるように(つまり、加熱コイル30が被加熱容器載置面21uと平行になるように)設けられる。尚、図4において、加熱コイル30は、仮想線で示している。
この実施形態では、直列状に接続された環状の内側加熱コイル31と環状の外側加熱コイル32とにより加熱コイル30が構成され、それら内側加熱コイル31及び外側加熱コイル32が、被加熱容器載置面21uに沿う方向である横方向に間隔を隔てた状態で同心状にコイル支持台40の上面に配設されている。
【0025】
更に、ケーシング20内には、冷却風を吐出口51から横方向に向けてケーシング20内に送風する送風手段としての送風機50、複数の加熱コイル30の中心部30cにおいて被加熱容器Yの底部の温度を検出する中央温度センサ1、内側加熱コイル31と外側加熱コイル32との間において被加熱容器Yの底部の温度を検出する外周側温度センサ2、及び、制御基板11等が設けられている。制御基板11には、発熱部材(図示省略)から発せられる熱を放散させるヒートシンク10、各種回路部品、加熱コイル30を励磁する高周波電力量を調整するインバータ(図示省略)、及び、この電磁誘導加熱調理器の運転を制御する制御部(図示省略)等が搭載されている。尚、図4において、中央温度センサ1及び外周側温度センサ2は、仮想線で示している。
【0026】
図3及び図4に示すように、本発明では、コイル支持台40に、加熱コイル30の下面30sの一部をケーシング20の底板23b側に臨ませる検査用開口部41eが設けられ、ケーシング20の底板23bに、検査用開口部41eを通して加熱コイル30の下面30sに臨む検査孔26が1個設けられている。
そして、図7及び図8に示すように、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離を導出可能な計測値を得るための検査棒15(検査具の一例)を、ケーシング20の底板23bから検査孔26及び検査用開口部41eを介して加熱コイル30の下面30sまで到達可能に構成されている。
尚、検査用開口部41eを通して加熱コイル30の下面30sに臨むとは、ケーシング20の底板23bの側から、天板21の被加熱容器載置面21uに直交する方向視で、検査用開口部41eを通して加熱コイル30の下面30sを見ることができる状態を示す。
【0027】
以下、電磁誘導加熱調理器の各部について、説明を加える。
図1及び図2に示すように、この実施形態では、ケーシング20が、平面視で矩形状に構成されると共に、上面の前方側が下向きに傾斜する傾斜部とされ、その上面の傾斜部に、各種制御指令を指令するスイッチ61〜67及び各種情報を表示する表示器68等を備えた操作部60が設けられている。
図1〜図3に示すように、ケーシング20は、下側ケース部材23と、上面の傾斜部を除いた箇所に矩形の開口を有する上側ケース部材24と、その上側ケース部材24の開口部を上方から閉塞する矩形状の天板21等を備えて構成されている。
天板21は、四角枠状の磁気シールド部材(図示省略)を介在させた状態で接着剤(図示省略)にて上側ケース部材24の開口部の縁部に固着され、そのように天板21が固着された上側ケース部材24と下側ケース部材23とは、複数のネジ(図示省略)により一体的に組み付けられる。
ちなみに、天板21は、透磁性が高く且つ熱伝導率が低い耐熱性材料、例えば、ガラスやセラミックにより構成される。又、接着剤としては、天板21と上側ケース部材24との間を気密封止するために、接着性能を有するシリコンシーラントが用いられる。
【0028】
図4に示すように、下側ケース部材23の後壁部には、その横方向の略全長にわたって、複数のスリット22sが並設され、それら複数のスリット22sにより、送風機50から送風される冷却風Aをケーシング20外に排出する排気口22が構成される。
図4及び図5に示すように、下側ケース部材23の底板23b(即ち、ケーシング20の底板23b)において、平面視で左前方側に寄った部分に、放射状に並ぶ複数のスリット25sから成る吸気口25が設けられている。
【0029】
又、図4に示すように、下側ケース部材23の底板23bには、送風機50の外郭を構成する外郭板52が、板面を上下方向に向けた状態で、平面視で、吸気口25の外周部における前方側の部分に沿う半円よりもやや大きい概円弧状に設けられている。但し、概円弧状の外郭板52の長手方向の両端部は、後述する送風機50のモータ53を支持するために立設された一対のボス部(図示省略)それぞれを囲むように、外方側に膨出した形状に構成されている。
この概円弧状の外郭板52の長手方向の両端縁(図上で51e,51e)は、平面視で、右側の端縁(図上で51e)が左側の端縁(図上で51e)よりも前方側に位置するように構成されている(図4参照)。
そして、この概円弧状の外郭板52の長手方向の両端縁(図上で51e,51e)にて区画される開口部を送風機50の吐出口51として機能させるように構成されている。
つまり、送風機50の吐出口51が、平面視で、右上方に向いて開口するように設けられていることになる。
【0030】
図4に示すように、更に、概円弧状の外郭板52における平面視で右側の端縁(図上で51e)からは、後述する導風板4が概ね接線方向に向かって延設され、平面視で左側の端縁(図上で51e)からは、ケーシング20の左側壁、後壁及び右側壁の内側にそれらと間隔を隔てて沿うように、内壁体5が延設されている。
尚、下側ケース部材23は上側ケース部材24と同様に、樹脂による成形加工により製作されるものであり、外郭板52、導風板4及び内壁体5は、下側ケース部材23の成形加工の際に一体的に形成されるものであるが、夫々機能が異なるので、異なる符号を付している。
【0031】
図4に示すように、羽根体54が出力軸(図示省略)に連結されたモータ53が、羽根体54が概円弧状の外郭板52内に位置する状態で、前記一対のボス部にネジ6により取り付けられている。
つまり、羽根体54、その羽根体54を駆動回転するモータ53、及び、送風機50の外郭を構成すると共に送風機50の吐出口51を形成する概円弧状の外郭板52等を備えて、送風機50が構成される。そして、その送風機50が、吐出口51を排気口22に対向させた状態で設けられて、冷却風Aが吐出口51から排気口22に向かって横方向に流れるように構成されている。
【0032】
図4に示すように、制御基板11は、平面視で、ケーシング20の内壁体5の内部における後方側の概ね半分の範囲を占める状態で、下側ケース部材23の底板23bの上方に支持されている。
ヒートシンク10は、複数のフィン10fを互いに平行状態で備え、そのヒートシンク10に、インバータを構成する半導体スイッチング素子(図示省略)等が取り付けられて、その半導体スイッチング素子を冷却するように構成されている。
そして、このヒートシンク10は、各放熱フィン10fをケーシング20の前後方向(送風機50の吐出口51から排気口22に向けて送風される冷却風Aの通風方向)に沿わせた姿勢で、送風機50と排気口22の間に位置させて制御基板11に搭載されている。
つまり、送風機50の吐出口51から送風される冷却風Aを複数の放熱フィン10fに沿わせて流すことにより、ヒートシンク10全体から効果的に放熱されるように構成されている。
【0033】
ところで、各種回路部品のうち、整流器(図示省略)の出力を平滑するための平滑回路(図示省略)を構成するチョークコイル7、及び、コンデンサ8,9は、比較的発熱量が多い。
そこで、それらの比較的発熱量が多いチョークコイル7及びコンデンサ8,9は、ヒートシンク10に対して冷却風Aの風下に位置させて制御基板11に搭載されており、ヒートシンク10の複数のフィン10fを沿って流れた冷却風Aがチョークコイル7及びコンデンサ8,9に当たり易いように構成されている。
更に、2個のコンデンサ8,9のうち形状が大きい方のコンデンサ8は、細長状の直方体形状であるが、その直方体形状のコンデンサ8は、平面視で、その長手方向を冷却風Aの通風方向に対して傾斜させた姿勢で設けることにより、冷却風Aが当たる面積を大きくして、効果的に冷却されるように構成されている。
【0034】
図2及び図4に示すように、コイル支持台40は、外形が概ね円状で、6個の扇形状の開口部41を周方向に等間隔で並べて備えた概ね車輪形状に絶縁材料にて構成されている。
それら6個の開口部41のうちの1個が検査用開口部41eとして機能させるように構成されている。
そして、コイル支持台40に6個の開口部41が周方向の全周にわたって分散して設けられていて、冷却風Aが各開口部41を通過して流れるので、内側加熱コイル31及び外側加熱コイル32を冷却する効果を向上することができる。
図3及び図6に示すように、コイル支持台40の周縁部のうちの検査用開口部41eの径方向外側に対応する部分を除いた部分の略全周にわたって、コイル支持台40の下面から下方に突出するリブ48が設けられている。
【0035】
図4に示すように、コイル支持台40における開口部41の間に相当する部分42(車輪のスポークに相当するので、以下、スポーク状部分と記載する場合がある)のそれぞれには、下方に凹む凹部(図示省略)が設けられ、各凹部には、フェライトコア44がコイル支持台40の径方向に延びる形態で設けられている。
コイル支持台40の凹部に設けられたフェライトコア44の上面は、コイル支持台40の上面よりも低くなるように構成され、凹部内におけるフェライトコア44の上部には、コイル支持台40の上面と概ね同一面となるようにシリコンシーラント45が充填されている。
【0036】
そして、そのコイル支持台40の上面に、前述のように、内側加熱コイル31及び外側加熱コイル32が配設されている。
外周側温度センサ2を保持するセンサホルダ46が、内側加熱コイル31と外側加熱コイル32との間に位置させた状態で、検査用開口部41eではない開口部41の両側のスポーク状部分42に跨って設けられている。
そして、そのセンサホルダ46に、外周側温度センサ2が弾性体(図示省略)により上方に付勢された状態で設けられている。
コイル支持台40の中央部には、センサ取付孔(図示省略)が設けられ、そのセンサ取付孔に、中央温度センサ1が弾性体(図示省略)により上方に付勢された状態で設けられている。
【0037】
図2〜図4に示すように、上述のように上面に内側加熱コイル31及び外側加熱コイル32が同心状に配設されると共に中央温度センサ1及び外周側温度センサ2が設けられたコイル支持台40が、平面視で、加熱コイル30の中心部30cを送風機50と排気口22との間に位置させて、一部分を送風機50及びヒートシンク10に重ねた状態で、送風機50及びヒートシンク10の上方に配設されている。
図6にも示すように、このようにコイル支持台40が配設されるに当たって、コイル支持台40の周縁部におけるリブ48が設けられていない部分が送風機50の上方に重ねられる。
尚、コイル支持台40は、下側ケース部材23の底板23bに立設された3本のボス部(図示省略)にネジ13により取り付けられる。
【0038】
このような配置形態でコイル支持台40、送風機50及びヒートシンク10が配設されることにより、送風機50が、平面視で、一部分をコイル支持台40の周縁部におけるリブ48が設けられていない部分に重ねた状態で、コイル支持台の下方に設けられていることになる。
又、前述した導風板4は、平面視で、吐出口51の右側の端縁51eから、ヒートシンク10の右側の端部に向かってコイル支持台40の下方に延びるように設けられている。
【0039】
図3〜図6に示すように、検査孔26は、平面視で、ケーシング20の底板23bにおいて、外側加熱コイル32における検査用開口部41e内に位置する部分の下方に対応する位置に設けられている。
【0040】
そして、下側ケース部材23の上部に上側ケース部材24が組み付けられると共に、その上側ケース部材24に天板21が取り付けられて、ケーシング20が一体的に組み付けられる。
図3に示すように、コイル支持台40がケーシング20内に設けられた状態では、中央温度センサ1は弾性体の付勢力により天板21の下面21sに当接する状態となり、天板21に載置された被加熱容器Yの温度がその天板21を介して中央温度センサ1により検出される。
又、図示を省略するが、コイル支持台40がケーシング20内に設けられた状態では、外周側温度センサ2も、中央温度センサ1と同様に、弾性体の付勢力により天板21の下面21sに当接する状態となり、天板21に載置された被加熱容器Yの温度がその天板21を介して外周側温度センサ2により検出される。
【0041】
次に、操作部60について説明する。
図1及び図2に示すように、操作部60には、スイッチ類として、運転の開始及び停止を指令する運転スイッチ61、加熱メニューを設定するメニュースイッチ62、タイマーを設定するタイマースイッチ63、加熱能力を1段ずつ上下させる出力調整スイッチ64、加熱能力を加熱能力調整範囲のうちの低域にジャンプさせる低出力スイッチ65、中域にジャンプさせる中出力スイッチ66、及び、高域にジャンプさせる高出力スイッチ67等が設けられている。
又、上述のスイッチ61〜67により指令される情報を含む各種情報を表示する液晶ディスプレイ68も設けられている。
【0042】
この電磁誘導加熱調理器の加熱能力調整機能について説明する。
前述した制御部は、出力調整スイッチ64、低出力スイッチ65、中出力スイッチ66及び高出力スイッチ67夫々からの指令により、加熱能力を複数段階に調整すべくインバータを制御するように構成されている。
この実施形態では、加熱能力を例えばP1〜P9(P1<P2<P3……………P7<P8<P9)の9段階に調整可能なように構成され、それら9段階の加熱能力P1〜P9のうち、加熱能力P1〜P3が低域に、加熱能力P4〜P6が中域に、加熱能力P7〜P9が高域に夫々グループ分けされている。
【0043】
出力調整スイッチ64は、加熱能力を現在の加熱能力から一段ずつ上昇あるいは下降させるための情報を指令するように構成されている。
低出力スイッチ65は、加熱能力を低域の加熱能力P1〜P3のうちの最高の加熱能力P3に調整するための情報を指令するように構成されている。
中出力スイッチ66は、加熱能力を中域の加熱能力P4〜P6のうちの最高の加熱能力P6に調整するための情報を指令するように構成されている。
高出力スイッチ67は、加熱能力を高域の加熱能力P7〜P9のうちの最高の加熱能力P9に調整するための情報を指令するように構成されている。
【0044】
例えば、現在の加熱能力がP4に設定されているときに、出力調整スイッチ64が加熱能力を下降させる方向に1回押されると、加熱能力が1段下降されてP3に調整され、逆に、出力調整スイッチ64が加熱能力を上昇させる方向に1回押されると、加熱能力が1段上昇されてP5に調整される。
又、現在の加熱能力がP1に設定されているときに、中出力スイッチ66が押されると、P6の加熱能力が指令されて加熱能力が5段上昇され、高出力スイッチ67が押されると、P9の加熱能力が指令されて加熱能力が8段上昇される。
又、現在の加熱能力がP9に設定されているときに、中出力スイッチ66が押されると、P6の加熱能力が指令されて加熱能力が3段下降され、低出力スイッチ65が押されると、P3の加熱能力が指令されて加熱能力が6段下降される。
つまり、低出力スイッチ65、中出力スイッチ66及び高出力スイッチ67のいずれかを押すと、加熱能力が途中の段を飛び越えて複数段上昇あるいは下降されるので、加熱能力を大幅に変更するときに便利である。
【0045】
次に、上述のように構成した電磁誘導加熱調理器の検査方法について、説明する。
図7及び図8に示すように、本発明の検査方法では、検査棒15を、ケーシング20の底板23bから検査孔26及び検査用開口部41eを介して加熱コイル30(具体的には、外側加熱コイル32)の下面30sまで到達させて、加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離を導出可能な計測値を計測し、当該計測値に基づいて被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離を導出して、当該距離が設定範囲の下限値以上であるか否かを検査する。
【0046】
具体的には、検査棒15を検査孔26に挿通可能で且つ長さ方向に移動操作自在に構成して具備する。そして、その検査棒15を検査孔26から挿通し、コイル支持台40の検査用開口部41eを介して加熱コイル30(具体的には、外側加熱コイル32)の下面30sに当接させるように移動操作して、検査棒15の長さ方向(加熱容器載置面21uに直交する方向に相当する)での所定の基準位置と検査棒15の先端との距離を前記計測値として計測する。
検査棒15は、例えば、直線状で且つ横断面形状が円形状の丸棒状であり、その外径は、検査孔26に挿通可能な条件で、加熱コイル30を構成する導体の外径と同等以上とする。
【0047】
図7に基づいて、この検査方法を実行する検査装置Eについて説明する。
検査装置Eは、検査棒15と、平面状の検査面16sを有し且つその検査面16sが検査棒15の長さ方向に直交する姿勢で配置された検査盤16と、検査棒15の長さ方向(即ち、検査面16sに直交する方向)での所定の基準位置と検査棒15の先端との距離を前記計測値として計測すると共に、その計測値に基づいて検査面16sと検査棒15の先端との距離を被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離として導出可能な距離計測手段としての距離計測部17とを具備して構成されている。
説明を加えると、検査盤16の検査面16sの一端側に、ガイド柱18が垂直に立設され、そのガイド柱18に、アーム部材19が、水平方向に張り出した姿勢で、検査面16sに直交する方向に往復移動操作自在に支持されている。
そして、そのアーム部材19の先端に、検査棒15が、検査面16sに直交する姿勢で下向きに取り付けられている。
尚、上述のように検査棒15が取り付けられたガイド柱18は、検査盤16とは別体としても良い。
【0048】
アーム部材19をガイド柱18に往復移動操作自在に支持する構成としては、詳細な説明及び図示を省略するが、例えば、レール状のガイド柱18にベアリングを介在させた状態でアーム部材19を嵌合させた構成や、ボールネジ(ネジ軸とナットからなる)を用いた構成等、種々の周知の構成を利用することができる。
距離計測部17は、周知の構成を利用するので、詳細な説明及び図示を省略して簡単に説明すると、リニアエンコーダやロータリーエンコーダ(図示省略)を用いて、検査棒15の長さ方向、即ち、検査面16sに直交する方向での所定の位置とアーム部材19との距離を計測して、その計測値を表示部17dに表示するように構成される。
【0049】
次に、この検査装置Eを用いて検査面16sと検査棒15の先端との距離を計測する手順を説明する。
図示を省略するが、先ず、検査棒15を下向きに移動操作して、検査棒15の先端を検査面16sに当接させて、その状態で、距離計測部17の計測値を0にリセットする。つまり、検査面16sに直交する方向における基準位置を、検査面16sの位置とする。
この場合、検査面16sに直交する方向において、検査面16sの位置が基準位置となり、検査面16sに直交する方向での基準位置と検査面16sとの距離が0となる。
続いて、検査棒15を上昇させた後、図7及び図8に示すように、電磁誘導加熱調理器を天板21の被加熱容器載置面21uを下向きにした姿勢で検査盤16の検査面16s上に載置して、ケーシング20における天板21の被加熱容器載置面21uを検査面16sに当接させた状態で配置する。
続いて、検査棒15を検査孔26から挿通し、コイル支持台40の検査用開口部41eを介して加熱コイル30(具体的には、外側加熱コイル32)の下面30sに当接させるように移動操作する。そのように検査棒15の先端を加熱コイル30(具体的には、外側加熱コイル32)の下面30sに当接させたときの距離計測部17の計測値が、検査面16sと検査棒15の先端(外側加熱コイル32の下面30s)との距離となり、その計測値を被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離とする。
そして、計測した被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離が設定範囲内か否かを判定する。
【0050】
つまり、検査棒15の先端を加熱コイル30の下面30sに当接させたときの距離計測部17の計測値は、検査面16sに直交する方向での所定の基準位置と加熱コイル30の下面30sとの距離となるが、上述のように、検査面16sに直交する方向における基準位置を検査面16sの位置とするので、検査面16sに直交する方向での基準位置と検査面16sとの距離が0となる。従って、検査棒15を加熱コイル30の下面30sに当接させたときの距離計測部17の計測値が、検査面16sと加熱コイル30の下面30sとの距離となるのである。
【0051】
上述の検査方法を実行すると、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離が所定の設定範囲内に入っているか否かを検査することができ、そして、設定範囲内に入っているものを合格とすることにより、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離を適切にすることができる。
特に、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離を設定範囲の下限値以上にすることができるので、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離が小さ過ぎるために、加熱コイル30が過度に加熱されるといった不都合を解消できることになり、加熱コイル30の絶縁抵抗、耐久性が低下するのを防止することができる。
【0052】
更に、検査棒15の先端面の外径を加熱コイル30を構成する導体の外径と同等以上とすることにより、加熱コイル30の下面30sが凹凸状であっても、検査面16sに直交する方向において、加熱コイル30の下面30sに当接したときの検査棒15の先端の位置のバラツキを極力抑制することができる。これにより、検査面16sと検査棒15の先端との距離の計測精度、ひいては、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離の計測精度を向上することができるので、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離の検査を更に的確に行うことができる。
【0053】
〔別実施形態〕
(A) ケーシング20の底板23bに設ける検査孔26の個数は、上記の実施形態において例示した1個に限定されるものではなく、複数個でも良い。検査孔26をケーシング20の底板23bに複数個設ける場合は、加熱コイル30の周方向に沿って間隔を開けた状態で設けるのが好ましい。これにより、加熱コイル30の下面30sにおいて周方向で離れた複数の箇所夫々について、被加熱容器載置面21uとの距離を計測することができるので、検査精度を向上できると共に、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との平行状態のズレをも検査することができる。従って、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との平行状態がずれて、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離が加熱コイル30の下面30sの一部で設定範囲に入っていないような不合格状態を的確に判定することができる。
この場合は、例えば、図9に示すように、2個の検査孔26を、加熱コイル30の周方向に沿って、加熱コイル30の中心30cに対応する中心角で90度又は略90度に相当する間隔を開けた状態で、ケーシング20の底板23bに設けるのが好ましい。そして、コイル支持台40に設けた6個の扇形状の開口部41のうち、隣り合う2個を検査用開口部41eとして機能させる。
又、図示を省略するが、2個の検査孔26を、加熱コイル30の周方向に沿って、加熱コイル30の中心部30cに対応する中心角で180度又は略180度に相当する間隔を開けた状態で、ケーシング20の底板23bに設けても良い。そして、コイル支持台40に設けた6個の扇形状の開口部41のうち、加熱コイル30の中心部30cに対して対称の位置にある2個を検査用開口部41eとして機能させる。
【0054】
(B) 上記の実施形態では、コイル支持台40に複数個(上記の実施形態では6個)の開口部41を形成して、そのうちの一部(上記の実施形態では1個、図9に示す別実施形態では2個)を検査用開口部41eとして機能させたが、検査用開口部41e以外に開口部を形成しないようにしても良い。
【0055】
(C) 検査具の具体的構成は、上記の実施形態において例示した丸棒状の検査棒15に限定されるものではなく、横断面形状が矩形状や長円形状の棒状体でも良い。
【0056】
(D) 上記の実施形態では、検査面16sに直交する方向における基準位置を検査面16sの位置として、天板21の被加熱容器載置面21uを検査面16sに当接させた状態で配置し、検査棒15を検査孔26から挿通して検査用開口部41eを介して加熱コイル30の下面30sに当接させたときの距離計測部17の計測値が、検査面16sと加熱コイル30の下面30sとの距離となるように構成した。
これに代えて、検査面16sに直交する方向における基準位置を、検査面16sの位置とは別の位置としても良い。
この場合、検査面16sに直交する方向での基準位置と検査面16sとの距離、及び、検査面16sに直交する方向での基準位置と加熱コイル30の下面30sとの距離を計測する。そして、それら計測情報に基づいて、検査面16sと加熱コイル30の下面30sとの距離を導出するように、距離計測部17を構成することになる。
【0057】
(E) 加熱コイル30を同心状に配設された内側加熱コイル31と外側加熱コイル32とにより構成する場合、上記の実施形態では、被加熱容器載置面21uと外側加熱コイル32との距離を計測する場合について例示したが、被加熱容器載置面21uと内側加熱コイル31との距離を計測するように構成しても良い。
【0058】
(F) 本発明の検査方法を実行する検査装置Eの具体的構成は、上記の実施形態において例示した如き、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離を導出可能な計測値を得るための検査棒15(検査具)を用いる構成に限定されるものではない。
例えば、被加熱容器載置面21uと加熱コイル30との距離を導出可能な計測値を得るための計測用光又は計測用音波を用いても良い。
計測用光を用いる場合は、周知の構成を用いるので、詳細な説明を省略して簡単に説明すると、計測用光としてのレーザーを検査孔26から、コイル支持台40の検査用開口部41eを介して加熱コイル30の下面30sに投射し、その反射光を検出する。そして、その反射光の検出情報に基づいて、被加熱容器載置面21uに直交する方向での所定の基準位置と加熱コイル30の下面30sとの距離を計測するように構成される。
又、計測用音波を用いる場合も、周知の構成を用いるので、詳細な説明を省略して簡単に説明すると、計測用音波としての超音波を検査孔26から、コイル支持台40の検査用開口部41eを介して加熱コイル30の下面30sに送信し、この反射波を受信する。そして、その反射波の受信情報に基づいて、被加熱容器載置面21uに直交する方向での所定の基準位置と加熱コイル30の下面30sとの距離を計測するように構成される。
【0059】
(G) 上記の実施形態では、内側加熱コイル31と外側加熱コイル32とを直列接続したが、並列接続しても良い。
【0060】
(H) ケーシング20の平面視での形状は、上記の実施形態において例示した矩形状に限定されるものではなく、例えば円形状でも良い。
【0061】
(I) 本発明を適用可能な電磁誘導加熱調理器は、上記の実施形態において例示したタイプ、即ち、プレート状で可搬型の電磁誘導加熱調理器に限定されるものではない。
例えば、加熱コイル30とそれを励磁するインバータ等から成る加熱部を複数備えた、所謂、二口や三口の据え置き型の電磁誘導加熱調理器でも良い。
あるいは、上部開口の釜収納部内に被加熱容器Yとしての炊飯用の釜を収納するように構成された炊飯用の電磁誘導加熱調理器でも良い。
この場合は、釜収納部の底部が載置部に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切な電磁誘導加熱調理器、及び、被加熱容器載置面と加熱コイルとの距離が適切か否かを検査し得る電磁誘導加熱調理器の検査方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
15 検査棒(検査具)
16 検査盤
16s 検査面
17 距離計測部(距離計測手段)
20 ケーシング
21 天板(載置部)
21s 下面
21u 被加熱容器載置面
23b 底板
26 検査孔
30 加熱コイル
30s 下面
30u 上面
40 コイル支持台
41e 検査用開口部
48 リブ
50 送風機(送風手段)
A 冷却風
Y 被加熱容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が被加熱容器載置面とされる載置部を有するケーシング内に、平板状で且つ渦巻状の加熱コイルが上面に配設されたコイル支持台を、前記加熱コイルの上面が前記載置部の下面に対向するように設けた電磁誘導加熱調理器であって、
前記コイル支持台に、前記加熱コイルの下面の一部を前記ケーシングの底板側に臨ませる検査用開口部が設けられ、
前記ケーシングの底板に、前記検査用開口部を通して前記加熱コイルの下面に臨む検査孔が設けられ、
前記被加熱容器載置面と前記加熱コイルとの距離を導出可能な計測値を得るための検査具、検査用光又は検査用音波を、前記ケーシングの底板から前記検査孔及び前記検査用開口部を介して前記加熱コイルの下面まで到達可能に構成されている電磁誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記コイル支持台の周縁部のうち、前記検査用開口部の径方向外側に対応する部分を除いた部分の全周又は略全周にわたって、前記コイル支持台の下面から下方に突出するリブが設けられ、
冷却風を前記被加熱容器載置面に沿う方向に向けてケーシング内に送風する送風手段が、平面視で、一部分を前記コイル支持台の周縁部における前記リブが設けられていない部分に重ねた状態で、前記コイル支持台の下方に設けられている請求項1に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項3】
複数の前記検査孔が、前記加熱コイルの周方向に沿って間隔を開けた状態で、前記ケーシングの底板に設けられている請求項1又は2に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項4】
2個の前記検査孔が、前記加熱コイルの周方向に沿って、前記加熱コイルの中心に対応する中心角で90度又は略90度に相当する間隔を開けた状態で、前記ケーシングの底板に設けられている請求項3に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁誘導加熱調理器の検査方法であって、
前記検査具、前記検査用光又は前記検査用音波を、前記ケーシングの底板から前記検査孔及び前記検査用開口部を介して前記加熱コイルの下面まで到達させて前記計測値を計測し、当該計測値に基づいて前記被加熱容器載置面と前記加熱コイルとの距離を導出して、当該距離が所定の下限値以上であるか否かを検査する電磁誘導加熱調理器の検査方法。
【請求項6】
前記検査孔に挿通可能で且つ長さ方向に移動操作自在な検査棒を、前記検査具として用いて、
前記検査棒を前記検査孔から挿通し、前記コイル支持台の前記検査用開口部を介して前記加熱コイルの下面に当接させるように移動操作して、前記長さ方向での所定の基準位置と前記検査棒の先端との距離を前記計測値として計測する請求項5に記載の電磁誘導加熱調理器の検査方法。
【請求項7】
平面状の検査面を有し且つその検査面が前記長さ方向に直交する姿勢で配置された検査盤と、前記長さ方向での所定の基準位置と前記検査棒の先端との距離を前記計測値として計測すると共に、その計測値に基づいて前記検査面と前記検査棒の先端との距離を前記被加熱容器載置面と前記加熱コイルとの距離として導出可能な距離計測手段とを用いて、
前記ケーシングにおける前記被加熱容器載置面を前記検査面に当接させた状態で配置し、前記検査棒を前記検査孔から挿通し、前記コイル支持台の前記検査用開口部を介して前記加熱コイルの下面に当接させるように移動操作して、その状態での前記検査面と前記検査棒の先端との距離を前記距離計測手段にて計測する請求項6に記載の電磁誘導加熱調理器の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79632(P2012−79632A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225968(P2010−225968)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】