説明

電磁調理具

【課題】IHコンロでは、ガラス製などの天板上に調理具を載置し、天板の下方に配置された加熱コイルが発生する高周波の電磁波によって調理具を加熱している。そのため、調理具の底部の温度を直接検知することは難しい。なお、天板に長尺の貫通孔を1カ所設け、その間通孔を金属製の受熱板で塞ぐと共に受熱板の下面に複数個の温度センサを取り付けたものが提案されているが、受熱板の熱容量のため応答性が損なわれると共に、受熱板が1カ所であるため、調理具が変形している場合に受熱板と調理具とが接触しないおそれが生じる。
【解決手段】天板11を貫通する複数の小孔を加熱範囲内に点在させて設けると共に、これら小孔の上部開口を、小孔を通して天板の下方へ出力する熱電対の測温接点2で閉塞した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板上に載置された調理具を、天板の下方に配置された加熱コイルから発生される電磁力によって加熱する電磁調理具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電磁調理具では、天板上に載置された鍋などの調理具の温度を検知する必要がある。そこで、例えばガラス製の天板では天板の下方に赤外線センサを配設し、調理具から発せられた赤外線を天板を通過して受光して調理具の温度を検知するものなど、各種の温度検知手段が提案されている。
【0003】
しかし、いずれのものも天板を介して間接的に調理具の温度を検知しているので、応答性や精度を向上させる必要があった。そこで、天板の一部に貫通孔を形成し、その貫通孔を金属製の受熱板で閉塞すると共に、受熱板の下面に複数の温度センサを取り付け、調理具の底部を受熱板に直接接触させて調理具の温度を検知するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3781868号公報(図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のものでは、受熱板を1個しか設けていないので、調理具の底面の形状が変形している場合には、必ずしも調理具が受熱板に接触するとは限らない。従って、万一調理具が受熱板に接触しない状態になれば、調理具の温度として誤った低温を検知するので、調理具が必要以上に加熱されるおそれが生じる。
【0005】
また、受熱板自体に熱容量が存在するので、例えば調理具を持ち上げた場合でも、受熱板の温度が低下するまで多少の時間を要し、温度センサの応答性が阻害されるという不具合も生じる。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、調理具の底面の形状が変形していても確実に調理具の温度を検知することができ、かつ応答性に優れた温度検知性能を備えた電磁調理具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明による電磁調理具は、天板上に載置された調理具を、天板の下方に配置された加熱コイルから発生される電磁力によって加熱する電磁調理具において、天板上に、調理具が載置される加熱範囲を設定し、天板を貫通する複数の小孔を加熱範囲内に点在させて設けると共に、これら小孔の上部開口を、小孔を通して天板の下方へ出力する熱電対の測温接点で閉塞したことを特徴とする。
【0008】
熱電対の測温接点を天板の上面に露出させ、更にそのような複数の測温接点を点在させたので、調理具の底部が変形していてもいずれかの測温接点に調理具の底部が接触する。また、受熱板を介さずに測温接点が直接調理具に接触するように構成したので、応答性が極めて高い。
【0009】
なお、測温接点の具体的な形状は種々考えられるが、例えば、熱電対を構成する2種類の金属のうち、一方の金属を板状に形成して蓋体とし、この蓋体で上記小孔の上部開口を閉塞すると共に、他方の金属からなる線材を蓋体の下面に接合するように構成してもよい。
【0010】
なお、複数の熱電対による検知温度は必ずしも相互の同じ温度にならない。そこで、上記複数の小孔の各々に取り付けられた熱電対によって検知される温度のうち、最も高温の検知温度を用いて電磁調理具の作動を制御する制御部を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、調理具の底部が変形していても調理具の底部の温度を確実に検知することができ、かつ、温度検知の応答性が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1を参照して、1はIHコンロであり、上面はガラス製の天板11で覆われている。このIHコンロ1はいわゆる3口コンロタイプであり、手前側の左右2カ所がIHヒータ部12である。なお、10はラジエントヒータ部である。
【0013】
図2を参照して、左右2カ所のIHヒータ部12には加熱範囲12aが示されている。従って、調理者はこの加熱範囲12a内に位置するように、鍋などの調理具を載置する。この加熱範囲12a内には複数個の測温接点2が、ほぼ均等な間隔で配置されている。各測温接点2は熱電対の測温接点であり、天板11の加熱範囲12a内に調理具を載置すると、少なくともいずれかの測温接点2が調理具の底部に接触する。そして、その接触した測温接点2で発電される熱起電力の電圧から、調理具の底部の温度を検知することができる。
【0014】
測温接点2の形状は特定の形状に限定されるものではなく、例えば図3に示すように、熱電対を構成する2種類の金属のうち、一方の金属を小径の円板状に形成して測温板3とすると共に、天板11に介設した貫通穴13をその測温板3で閉塞する。そして他方の金属で形成された電極線4を測温板3の下面に接続すると共に、補償電線31を測温板3の下面に接続して、後述するコントローラに熱起電力を出力するように構成することができる。なお、14は水ガラス等の耐熱性に優れた絶縁性のシール剤である。
【0015】
熱電対の形状は図3に示したものの他、例えば図4に示すように、貫通穴13の上端開口部の周縁を面取りしておき、熱電対の測温接点2を、天板11の上面と均一になるようにつぶして貫通穴13を測温接点2で閉塞するようにしてもよい。なお、3aは電極線である。
【0016】
上記図3及ぶ図4に示す構成の他、種々の構成が考えられるが、図5に示すように、いずれにせよ複数の測温接点2から出力される熱起電力は全てコントローラ5に入力されるように構成した。このコントローラ5はIHコンロ1の作動を制御するものであり、コントローラ5は入力されてくる複数の熱起電力のうち、最も電圧の高いもの、すなわち検知される温度が最も高温の温度に基づいて制御をするようにプログラムされている。
【0017】
このようにプログラムすることにより、例えば調理具の底部の変形のより底部が幾つかの測温接点2から浮き上がるようなことになっても、実際に底部に接触している測温接点2により検知される温度に基づいて制御を行うことができる。
【0018】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】測温接点の配置状況を示す図
【図3】測温接点の設置状態を示す図
【図4】測温接点の他の設置状態を示す図
【図5】熱電対の接続状態を示す図
【符号の説明】
【0020】
1 IHコンロ
2 測温接点
3 測温板
4 電極線
5 コントローラ
11 天板
12 IHヒータ部
12a 加熱範囲
13 貫通穴
31 補償電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板上に載置された調理具を、天板の下方に配置された加熱コイルから発生される電磁力によって加熱する電磁調理具において、天板上に、調理具が載置される加熱範囲を設定し、天板を貫通する複数の小孔を加熱範囲内に点在させて設けると共に、これら小孔の上部開口を、小孔を通して天板の下方へ出力する熱電対の測温接点で閉塞したことを特徴とする電磁調理具。
【請求項2】
熱電対を構成する2種類の金属のうち、一方の金属を板状に形成して蓋体とし、この蓋体で上記小孔の上部開口を閉塞すると共に、他方の金属からなる線材を蓋体の下面に接合したことを特徴とする請求項1に記載の電磁調理具。
【請求項3】
上記複数の小孔の各々に取り付けられた熱電対によって検知される温度のうち、最も高温の検知温度を用いて電磁調理具の作動を制御する制御部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁調理具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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