説明

電装カプラーの着脱装置

【課題】コネクタ部同士の電気的接続を自動的且つ確実に行う電装カプラーの着脱装置を提供する。
【解決手段】電装カプラーの着脱装置は、雄側カプラー10を走行機体側に設け、雌側カプラー30を作業機側に設ける。雄側カプラー10は、外側面に第一傾斜誘導部11aと第一直線誘導部11bを備え、この誘導部の内側面に第二傾斜誘導部11cと第二直線誘導部11dを備え、この誘導部の内側中心部近傍に複数電極を有する雄側コネクタ部13を設け、この外側面に第三傾斜誘導部13aと第三直線誘導部13bを備える。雌側カプラー30は、内側面に第一傾斜誘導部32aと第一直線誘導部32bを備え、この誘導部の内側に第二傾斜誘導部35aと第一直線誘導部11bを案内する第二直線誘導部35bを備え、この誘導部の内側中心部近傍に複数電極を有する雌側コネクタ部35を設け、この内側面に第三傾斜誘導部35cと第三直線誘導部35dを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ側に設けられた制御用のコントローラと作業機側に設けられたアクチュエータやセンサ等を電気的に接続するケーブルを自動的に着脱する電装カプラーの着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農用トラクタ等の走行機体において、近年、ヒッチ部分を改良して走行機体の後部にヒッチフレームを設け、このヒッチフレームに上部被連結部と下部被連結部を備えておき、作業機に設けた上部連結部と下部連結部をヒッチフレームの上下の被連結部に係合させて、作業機を走行機体に自動的に連結するいわゆるオートヒッチ方式の装置が知られている。また作業機側に耕深センサ等の電気的センサを設けたものも知られている。
【0003】
このような走行機体では、走行機体と作業機との双方を繋ぐ電気配線が必要になるが、この配線は、走行機体から降りた作業者が手作業でカプラーを介して接続するのが一般である。また走行機体に対する作業機の着脱と同時に、カプラーを自動的に接離させる電装カプラーの着脱装置も知られている。
【0004】
この電装カプラー50の着脱装置は、特許文献1に記載されており、図7(a)(断面側面図)に示すように、雌側カプラー51と雄側カプラー60とからなり、雌側カプラー51は作業機側に設けられ、雄側カプラー60は走行機体側に設けられている。雌側カプラー51は、内周面が内側に傾斜する傾斜誘導部52とこの傾斜誘導部52に連設される直線誘導部53とを備え、直線誘導部53の内側中心部に複数の電極ピンを有したコネクタ部54を形成してなる。一方、雄側カプラー60は、中心部近傍に電極ピンに嵌合する孔状の電極を有するコネクタ部61を形成し、前後方向及びこれに直交する方向に移動可能に取り付けられている。
【0005】
雄側カプラー60は、図7(a)及び図7(b)(A矢視図)に示すように、前部に縦長楕円状のフランジ部を設け、フランジ部の後部に内側に傾斜する芯出部62を設け、芯出部62の後方に縦長楕円状で前後方向に延びる突部63を設け、突部63の内側に中空部を形成し、中空部内にコネクタ部61を形成している。一方、雌側カプラー51は、図7(a)及び図7(c)(B矢視図)に示すように、傾斜誘導部52及び直線誘導部53が正面視において縦長楕円状に形成されており、直線誘導部53とコネクタ部54は、雄側カプラー60が雌側カプラー51の直線誘導部52に嵌合し始めた段階では、コネクタ部54,61の電極同士は非接触状態にあり、雄側カプラー60が雌側カプラー51内をさらに進んだ段階で電極同士が接触するように直線誘導部51の始端部よりもやや後方側にコネクタ部54の先端が臨むような位置関係に設定されている。
【0006】
【特許文献1】特許第2922114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来の電装カプラーの着脱装置は、雄側カプラーの突部の外周面を形成する直線誘導部と雌側カプラーの直線誘導部との嵌合精度は比較的に高いので、雄側カプラーの中心軸線が雌側カプラーのそれに対して僅かに斜めにずれた状態で嵌合しても、雄側カプラーはロックされた状態となり、コネクタ部同士の合体が困難になってケーブルの電気的接続が不十分になる問題があった。
【0008】
このため、走行機体から降りた作業者が手作業で両カプラーを接続して配線を電気的に接続する作業を行っているのが現状である。
【0009】
本発明は、このような要望に答えるものであり、コネクタ部同士の電気的接続を自動的に且つ確実に行うことができる電装カプラーの着脱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、本発明は、以下の特徴を有する。特徴の一つは、凹部を有する雌側カプラーとこれに嵌合される雄側カプラーとからなる電装カプラーの着脱装置であって、雌側カプラー及び雄側カプラーのいずれか一方をトラクタ等本体(例えば、実施形態における走行機体70)側に設け、いずれか他方を作業機(例えば、実施形態における耕耘作業機90)側に設け、雌側カプラー及び雄側カプラーは、少なくとも二段階の嵌合誘導部(例えば、実施形態における第一直線誘導部11b,32b、第二直線誘導部11d,35b、第三直線誘導部13b,35d)を有し、両カプラーの嵌合誘導部の内側中心部近傍にはコネクタ部(例えば、実施形態における雄側コネクタ部13、雌側コネクタ部35)が形成され、両カプラーの嵌合は、内側に行くほど精密な嵌合となりながら、雌側カプラーのコネクタ部と雄側カプラーのコネクタ部が合体されるように構成されることを特徴とする。
【0011】
この特徴によれば、雌側カプラー及び雄側カプラーの両カプラーは少なくとも二段階の嵌合誘導部を有し、両カプラーの嵌合は内側に行くほど精密な嵌合となることにより、一段階目の嵌合誘導部では、両カプラーの嵌合誘導部の嵌合精度は比較的に低いので、接近する両カプラーの軸芯がずれていても、カプラーの移動がロックされる虞はなく、カプラーの移動に応じて両カプラーの軸芯のずれを小さくすることができる。また二段階目以降の嵌合誘導部では、カプラー接近方向上流側の嵌合誘導部によって両カプラーの軸芯のずれが既に小さくされているので、二段階目以降の嵌合誘導部の嵌合精度が一段階目のそれより高くなっていても、カプラーの移動がロックされる虞はない。このため、接近するカプラーの移動に応じて両カプラーの軸芯のずれをより小さくして一致させることができ、雌側カプラーのコネクタ部と雄側カプラーのコネクタ部を合体させて両カプラーに繋がる配線を電気的に確実に接続することができる。
【0012】
また特徴の一つは、雄側カプラーは、外側面に設けられて外側に傾斜する第一傾斜誘導部(例えば、実施形態における第一傾斜誘導部11a)と該第一傾斜誘導部に連設される第一直線誘導部(例えば、実施形態における第一直線誘導部11b)とを備え、且つ該第一直線誘導部の内側面には、内側に傾斜する第二傾斜誘導部(例えば、実施形態における第二傾斜誘導部11c)と該第二傾斜誘導部に連設される第二直線誘導部(例えば、実施形態における第二直線誘導部11d)とを備え、且つ該第二直線誘導部の内側中心部近傍に複数の電極(例えば、実施形態におけるソケットタイプの電極17)を有するコネクタ部が形成され、雌側カプラーは、内側面に設けられて内側に傾斜する第一傾斜誘導部(例えば、実施形態における第一傾斜誘導部32a)と該第一傾斜誘導部に連設される第一直線誘導部(例えば、実施形態における第一直線誘導部32b)とを備え、且つ該第一直線誘導部の内側に位置し、外側に傾斜する第二傾斜誘導部(例えば、実施形態における第二傾斜誘導部35a)と該第二傾斜誘導部に連設されて雄側カプラーの第二直線誘導部を案内する第二直線誘導部(例えば、実施形態における第二直線誘導部35b)とを備え、且つ該第二直線誘導部の内側中心部近傍に複数の電極(例えば、実施形態におけるプレートタイプの電極39)を有するコネクタ部が形成され、両カプラーを接近しながら該カプラーの第一直線誘導部及び第二直線誘導部を案内しつつ移動する間に次第に精密な嵌合がなされ、雌側カプラーのコネクタ部と雄側カプラーのコネクタ部が合体されるように構成されることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、雄側カプラーは、外側面に第一傾斜誘導部と第一直線誘導部とを備え、第一直線誘導部の内側面に第二傾斜誘導部と第二直線誘導部とを備え、第二直線誘導部の内側中心部近傍にコネクタ部を形成し、雌側カプラーは、内側面に第一傾斜誘導部と第一直線誘導部とを備え、第一直線誘導部の内側に第二傾斜誘導部と第二直線誘導部とを備え、第二直線誘導部の内側中心部近傍にコネクタ部を形成し、両カプラーは第一直線誘導部及び第二直線誘導部に案内されながら移動する間に次第に精密な嵌合がなされることで、両カプラーが接近すると、雄側カプラーの第一傾斜誘導部が雌側カプラーの第一傾斜誘導部に接触して摺動し、両カプラーの軸芯のずれを小さくする。そして、両カプラーがさらに接近する過程で、雌側カプラーの第一直線誘導部内を雄側カプラーの第一直線誘導部が移動する。ここで、第一直線誘導部の嵌合精度は比較的に低いので、接近する両カプラーの軸芯がずれていても、カプラーの移動がロックされる虞はない。そして、両カプラーがさらに接近すると、雄側カプラーの第二傾斜誘導部が雌側カプラーの第二傾斜誘導部に接触して摺動し、両カプラーの軸芯のずれをさらに小さくして両カプラーの軸芯を一致させる。そして、両カプラーがさらに接近する過程で、雄側カプラーの第二直線誘導部内を雌側カプラーの第二直線誘導部が移動して、雌側カプラーのコネクタ部と雄側カプラーのコネクタ部を合体させて両カプラーに繋がる配線を電気的に確実に接続することができる。
【0014】
また特徴の一つは、両カプラーの第一直線誘導部及び第二直線誘導部は、第一直線誘導部が嵌合してから第二直線誘導部の嵌合が始まる位置関係を有することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、両カプラーの第一直線誘導部及び第二直線誘導部は、第一直線誘導部が嵌合してから第二直線誘導部の嵌合が始まる位置に配置されていることで、両カプラーが嵌合連結される初期の段階で、より精度の高い芯出し作用がなされることがなく、カプラーの芯出し精度を、両カプラー同士の連結が進む過程で除々に上げることができる。このため、第一直線誘導部同士が嵌合する前に第二直線誘導部同士が嵌合することはなく、両カプラーの嵌合をスムースにして、両コネクタ部の合体を容易にすることができる。
【0016】
さらに特徴の一つは、雌側カプラー及び雄側カプラーの少なくともいずれかは、固定部材との間にピン(例えば、実施形態におけるボルト88)と該ピンを巻回するスプリングとを設け、固定部材に対して前後方向及びこれと略直交する方向に所定範囲移動可能に構成したことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、雌側カプラー及び雄側カプラーの少なくともいずれかを、固定部材に対して前後方向及びこれと略直交する方向に所定範囲移動可能に設けることで、着脱時における両カプラーの損傷を抑制することができ、電源ライン等が確実に接続されて、誤動作の虞をなくして、作業機を正確に動作させることができる。
【0018】
また特徴の一つは、雌側カプラー及び雄側カプラーのいずれか一方のコネクタ部はプレートタイプの電極を有し、他方のコネクタ部は、プレートタイプの電極が挿入されると弾性を有した接触部を押し広げてプレートタイプの電極の平面部と押圧接触するソケットタイプの電極を有することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、コネクタ部の一方はプレートタイプの電極を備え、コネクタ部の他方は、プレートタイプの電極が挿入されると弾性を有した接触部を押し広げてプレートタイプの電極の平面部と押圧接触するソケットタイプの電極を備えることで、雌側カプラー及び雄側カプラーの両コネクタ部が合体すると、プレートタイプの電極がソケットタイプの電極の接触部を押し広げながら内側に移動して、プレートタイプの電極の平面部が接触部と押圧接触する。このため、平面部に土等の付着物が付いていても、電極の挿着時に接触部によって付着物を取り除くことができ、プレートタイプの電極とソケットタイプの電極との接触不良を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係わる電装カプラーの着脱装置によれば、上記特徴を有することによって、コネクタ部同士の電気的接続を自動的に且つ確実に行うことができる電装カプラーの着脱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係わる電装カプラーの着脱装置の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。なお、本実施形態は、耕耘作業を行う耕耘作業機にこれを牽引するトラクタ等の走行機体を連結する場合を例にして説明する。先ず、本発明の電装カプラーの着脱装置を説明する前に、この着脱装置を取り付ける走行機体の後部に設けられた昇降装置について説明する。
【0022】
昇降装置71は、図1(側面図)に示すように、走行機体70の機体後部に設けられた3点リンク連結機構72を備える。この3点リンク連結機構72は、走行機体70の後部下側の左右両側に設けられたロアーリンク73と走行機体70の後部上側中央部に設けられたトップリンク74を備える。ロアーリンク73はリフトロッド75を介してリフトアーム76に接続されており、リフトアーム76の上下動によってロアーリンク73が上下方向に回動して、3点リンク連結機構72に連結されたヒッチフレーム80を介して耕耘作業機90が昇降可能である。リフトアーム76は、走行機体70の後部に設けられた図示しない油圧シリンダによって上下動するようになっている。
【0023】
ヒッチフレーム80は、図1,図2(側面図),図3(背面図)に示すように、背面視において略逆U字状に形成されたパイプ81と、この中央上部に固着された吊り上げフック82と、パイプ81の下端に設けられて作業機側の連結ピン91を係止する係止プレート83と、嵌入された連結ピン91を保持するロックプレート84等を備える。
【0024】
耕耘作業機90は、走行機体70のPTO軸92からユニバーサルジョイント等の動力伝達手段93を介して、耕耘作業機90の幅方向中央部に設けられたギアボックス94から前方へ突出する入力軸94aに動力が伝達されるようになっている。
【0025】
耕耘作業機90は、耕耘作業を行う耕耘体を有する作業機本体95と作業機本体95の背面側に折り畳み可能に設けられて耕耘体の作業幅を延長する延長耕耘体96とを備え、作業機本体95及び延長作業体96,96によって3分割構造になっている。耕耘作業機90の作業機本体95にはギアボックス94を取り付けて機体幅方向に延びる主フレーム97が設けられ、この主フレーム97の中央上部には前側に延びてピン98aを有したトップマスト98が設けられている。
【0026】
延長作業体96は、作業機本体95の左右方向の端部に設けられた支点を中心として回動可能に設けられ、作業機本体95と延長作業体96との間に接続された電動式油圧シリンダ99の伸縮によって、延長作業体96は作業幅を延長する作業位置と作業機本体95の背面側に収納される収納位置との間を移動可能である。電動式油圧シリンダ99は、走行機体70に設けられた操作スイッチの操作に応じて電動式油圧シリンダ99の伸縮動作を制御する制御信号を発生するコントローラとケーブルを介して電気的に接続されている。このケーブルの途中に、相互に接続・分離自在な雄側カプラー10及び雌側カプラー30からなる電装カプラー1の着脱装置を取り付け、両カプラーを介して制御信号が流れるようになっている。なお、電源は走行機体側に設けられてコントローラに電力を供給する。
【0027】
雄側カプラー10は、ヒッチフレーム80の係止プレート83間を繋ぐ連結部材85の中央部右側に設けられた支持部材86を介して取り付けられた固定部材87に対して前後方向及びこれと略直交する方向に所定範囲移動可能に設けられている。雄側カプラー10は、固定部材87に取り付けられた前後方向に延びるボルト88とこれを挿通するスプリング89を介して前後方向に移動可能に支持され、常にスプリング89によってボルト頭部側に付勢されている。またボルト88を挿通する固定部材87に設けられた孔部はボルト88の径よりも大きく形成されている。このため、ボルト88は固定部材87に対して傾動可能である。その結果、雄側カプラー10は、前後方向に移動可能であるとともに、ボルト88と略直交する方向に所定範囲で移動可能である。一方、雌側カプラーは、図4(正面図)に示すように、作業機本体95の主フレーム97の中央部右側に設けられた支持板100に取り付けられている。
【0028】
次に、雄側カプラー10の構造について説明する。なお、説明の都合上、図5(a)(横断面図)の矢印が示す方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。雄側カプラー10は、図5(a)及び図5(b)(縦断面図)に示すように、略直方体形状をなし、外側に角筒状の雄側芯出部11が設けられ、雄側芯出部11の内側に後方側へ突出する雄側コネクタ部13が設けられている。雄側芯出部11の外側面の後端部には外側に傾斜する第一傾斜誘導部11aが設けられ、外側面の前側には第一傾斜誘導部11aに繋がる第一直線誘導部11bが設けられている。また雄側芯出部11の内側面の後端部には内側に傾斜する第二傾斜誘導部11cが設けられ、内側面の前側には第二傾斜誘導部11cに繋がる第二直線誘導部11dが設けられている。雄側コネクタ部13は、略直方体形状であり、その外側面の後端部には、外側に傾斜する第三傾斜誘導部13aが設けられ、外側面の前側には第三傾斜誘導部13aに繋がる第三直線誘導部13bが設けられている。雄側コネクタ部13の内部には、横方向に所定距離を有して複数配設されて上下2段に設けられた複数の穴部にソケットタイプの電極17が挿着されている。雄側コネクタ部13の後端部は第二直線誘導部11dの後端よりも前側に位置している。
【0029】
一方、雌側カプラー30は、略直方体形状をなして内側に凹部31を有し、外側に角筒状の雌側芯出部32が設けられ、雌側芯出部32の内側に前方側へ突出する雌側コネクタ部35が設けられている。雌側芯出部32の前端部には外側に傾斜する第一傾斜誘導部32aが設けられ、雌側芯出部32の内側面の後側には第一傾斜誘導部32aに繋がる第一直線誘導部32bが設けられている。
【0030】
雌側コネクタ部35は、略直方体形状であり、その外側面の前端部には外側に傾斜する第二傾斜誘導部35aが設けられ、外側面の前側には第二傾斜誘導部35aに繋がる第二直線誘導部35bが設けられている。雌側コネクタ部35の前側には雄側カプラー10の雄側コネクタ部13と嵌合する嵌合穴部36が設けられ、嵌合穴部36の内側の前端部には外側に傾斜する第三傾斜誘導部35cが設けられ、嵌合穴部36の後側には第三傾斜誘導部35cに繋がって後方側へ延びる第三直線誘導部35dが設けられている。雌側コネクタ部35の内部には、横方向に所定距離を有して複数配設されて上下2段に設けられた複数の穴部にプレートタイプの電極39が挿着されている。プレートタイプの電極39は、雌側カプラー30と雄型カプラー10が合体状態になると、対応するソケットタイプの電極17と接触して電気的に接続された状態になる。雌側コネクタ部35の前端部は第一直線誘導部32bの前端よりも後側に位置している。
【0031】
このように構成された雄側カプラー10と雌側カプラー30は、両カプラーの第一直線誘導部11b,32b同士、第二直線誘導部11d,35b同士、第三直線誘導部13b、35d同士が嵌合可能な大きさに形成されているとともに、両カプラーの内側に行くほど精密な嵌合となるように形成されている。即ち、第一直線誘導部11b,32b同士の嵌合精度は最も低く、第三直線誘導部13b、35d同士の嵌合精度は最も高く、第二直線誘導部11d,35b同士の嵌合精度は第一及び第三直線誘導部同士の嵌合精度の中間の精度を有している。
【0032】
また両カプラーの第一直線誘導部11b,32b、第二直線誘導部11d,35b及び第三直線誘導部13b、35dは、第一直線誘導部11b,32bが嵌合してから第二直線誘導部11d,35bの嵌合が始まり、第二直線誘導部11d,35bが嵌合してから第三直線誘導部13b、35dの嵌合が始まる位置関係を有している。即ち、雄側カプラー10の第一直線誘導部11bの後端位置より前側に雄側カプラー10の第二直線誘導部11dの後端が位置し、この後端位置より前側に雄側カプラー10の第三直線誘導部13bの後端が位置しており、雌側カプラー30の第一直線誘導部32bの前端位置より後側に雌側カプラー30の第二直線誘導部35bの前端が位置し、この前端位置より若干前側位置に雌側カプラー30の第三直線誘導部35dの前端が位置している。
【0033】
雌側カプラー30の雌側コネクタ部35に挿着されたプレートタイプの電極39は、板状の雄型接触部39aとこの後端部に連設された接続部39bとを有し、雄型接触部39aを孔部の後方側から前側に挿入して雌側コネクタ部35に挿着され、雄型接触部39aが孔部の前端から前方に所定距離を有した位置まで延びる。なお、プレートタイプの電極39は、金属等の導電材料で形成されている。
【0034】
一方、雄側カプラー10の雄側コネクタ部13に挿着されたソケットタイプの電極17は、弾性を有する金属等の導電材料で形成され、雄型接触部39aの両側を押圧接触する一対の雌型接触部17aとこれに繋がる接続部17bを有してなる。ソケットタイプの電極17は雌型接触部17aを穴部の後方側から前側に挿入して雄側コネクタ部13に挿着され、ソケットタイプの電極17が雄側コネクタ部13に挿着されると、一対の雌側接触部17aは所定範囲内で互いに離反する方向に移動可能であり、また一対の雌側接触部17a間にプレートタイプの電極39が挿入されていない状態では、一対の雌側接触部17a間の間隔は、プレートタイプの電極39の厚さより小さくなるように形成されている。このため、一対の雌型接触部17a間にプレートタイプの電極39が挿入されると、一対の雌側接触部17aは互いに離反する方向に弾性変形して、プレートタイプの電極39の両面に押圧接触する。
【0035】
次に、電装カプラー1の着脱装置の動作について説明する。走行機体70と耕耘作業機90を連結する場合には、図1及び図2に示すように、ヒッチフレーム80のフック82をトップマスト98の下にもぐり込ませ、フック82をピン98aに係止して3点リンク連結機構72が上側に移動するように操作して、ヒッチフレーム80を二点鎖線で示したヒッチフレーム80の位置から実線で示したヒッチフレーム80の位置側に移動させ、耕耘作業機90を吊り上げる。すると、耕耘作業機90がこのピン98aを中心として円弧上に前側に回動して、耕耘作業機90の連結ピン91が係止プレート83に係止される。
【0036】
ここで、連結ピン91が係止プレート83に嵌入し始めると、雌側カプラー30と雄側カプラー10とが接触し始め、図6(a)(横断面図、縦断面図)に示すように、雄側カプラー10の第一傾斜誘導部11aが雌側カプラー30の第一傾斜誘導部32aに接触して芯出し作用がなされて、雄側カプラー10の第一直線誘導部11bが雌側カプラー30の第一直線誘導部32b内を進む。そして、さらに雌側カプラー30が雄側カプラー側に移動すると、図6(b)(横断面図、縦断面図)に示すように、雌側カプラー30の第二傾斜誘導部35aが雄側カプラー10の第二傾斜誘導部11cに接触して芯出し作用がなされる。
【0037】
そして、さらに雌側カプラー30が雄側カプラー側に移動すると、図6(c)(横断面図、縦断面図)に示すように、雌側カプラー30の第二直線誘導部35bが雄側カプラー10の第二直線誘導部11d内にはいり込み、雌側カプラー30の第三傾斜誘導部35cが雄側カプラー10の第三傾斜誘導部13aに接触して芯出し作用がなされる。これと同時に、雄側カプラー10の第一直線誘導部11bが雌側カプラー30の第一直線誘導部32b内をさらに進む。ここで、両カプラーの第一直線誘導部11b,32b間の嵌合精度は、第二直線誘導部11d,35b間のそれよりも低いので、雌側カプラー30が第一直線誘導部11bに引っかかって雌側カプラー30の移動がロックされることはない。
【0038】
そして、さらに雌側カプラー30が雄側カプラー側に移動すると、図6(d)(横断面図、縦断面図)に示すように、雌側カプラー30の第三直線誘導部35dが雄側カプラー10の第三直線誘導部13b内を進み、雌側カプラー30のプレートタイプの電極39の雄型接触部39aがソケットタイプの電極17の一対の雌型接触部17a間に挿入される。そして、さらに雌側カプラー30が雄側カプラー側に移動すると、図6(e)(横断面図、縦断面図)に示すように、雌側カプラー30の第三直線誘導部35dが雄側カプラー10の第三直線誘導部13b内を進み、雄型接触部39aが一対の雌型接触部17a間に入り込み、一対の雌型接触部17aは拡開する方向に押し広げられて雄型接触部39aの両面に押圧接触して、両カプラーが合体して両カプラーに接続されたケーブルが電気的に接続される。
【0039】
ここで、雄型接触部39aに土等の塵が付着していても、この塵は、雄型接触部39aが一対の雌型接触部17a間に入り込むときに雌型接触部17aによって掻き取られるようにして雄型接触部39aから取り除かれる。このため、両接触部が接触不良になる虞を未然に防止することができる。
【0040】
また雌側カプラー30及び雄側カプラー10の両カプラーは複数段階の直線誘導部を有し、両カプラーの嵌合は内側に行くほど精密な嵌合となっているので、一段階目の直線誘導部では、接近する両カプラーの軸芯がずれていても、雌側カプラー30の移動がロックされる虞はなく、両カプラーの軸芯のずれを小さくすることができる。また二段階目以降の直線誘導部では、カプラー接近方向上流側の嵌合誘導部によって両カプラーの軸芯のずれが既に小さくされているので、二段階目以降の直線誘導部の嵌合精度が高くなっていても、雌側カプラー30の移動がロックされる虞はない。このため、接近する雌側カプラー30の移動に応じて両カプラーの軸芯のずれをより小さくして一致させることができ、雌側カプラー30の雌側コネクタ部35と雄側カプラー10の雄側コネクタ部13を合体させて両カプラーに繋がる配線を電気的に確実に接続することができる。
【0041】
また雄側カプラー10は前後方向及びこれに直交する方向に移動可能に所定範囲移動可能に設けられているので、両カプラーが直線的に接近せずに所定角度を有して接近してもその角度を容易に吸収しながら接近することができ、雄側カプラー10が角度を有したままでロックされる虞がない。また両カプラーの接続が失敗した場合でも、雄側カプラー10はスプリング89に抗してボルト先端側に移動するので、両カプラーが損傷する事態を未然に防止することができる。また両カプラーが非接続時では、雄側カプラー10のソケットタイプの電極17は奥側に入り込んでいて雨水が浸入し難い構成である一方、雌側カプラー30のプレートタイプの電極39は突出した構成であるが、コントローラとは非接続であるので、仮に電極39が短絡しても何ら支障はない。
【0042】
さらに両カプラー連結時に多極の電極を同時に接続できるので、電極の接続操作に手間が掛からず、操作性が向上し、また雌側コネクタ部35及び雄側コネクタ部13は雄雌のカプラーで覆われているので、電極のシール性も向上し、耐久性を向上することができる。
【0043】
なお、前述した実施例では、電源を走行機体側に設けたが、耕耘作業機側に設けてもよい。また作業機は、耕耘作業機90の他に畦塗り機、溝掘り機でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係わる電装カプラーの着脱装置を搭載した耕耘作業機の側面図を示す。
【図2】ヒッチフレーム側と作業機側に取り付けられて電装カプラーの側面図を示す。
【図3】ヒッチフレームを図2のA矢視から見たときの雄側カプラーの背面図を示す。
【図4】ヒッチフレームを図2のB矢視から見たときの雌側カプラーの正面図を示す。
【図5】電装カプラーの断面図を示し、同図(a)は電装カプラーの横断面図であり、同図(b)は電装カプラーの縦断面図である。
【図6】雄側カプラーと雌側カプラーの接続動作を説明するための両カプラーの横断面図及び縦断面図を示す。
【図7】従来の電装カプラーの着脱装置を示し、同図(a)は電装カプラーの要部断面図であり、同図(b)は同図(a)のA矢視から見た雄側カプラーの背面図であり、同図(c)は同図(a)のB矢視から見た雌側カプラーの正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 電装カプラー
10 雄側カプラー
11a,32a 第一傾斜誘導部
11b,32b 第一直線誘導部(嵌合誘導部)
11c,35a 第二傾斜誘導部
11d,35b 第二直線誘導部(嵌合誘導部)
13b,35d 第三直線誘導部(嵌合誘導部)
13 雄側コネクタ部(コネクタ部)
17 ソケットタイプの電極(電極)
17a 雄型接触部(接触部)
30 雌側カプラー
31 凹部
35 雌側コネクタ部(コネクタ部)
39 プレートタイプの電極(電極)
70 走行機体(トラクタ等本体)
87 固定部材
88 ボルト(ピン)
89 スプリング
90 耕耘作業機(作業機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する雌側カプラーとこれに嵌合される雄側カプラーとからなる電装カプラーの着脱装置であって、
前記雌側カプラー及び前記雄側カプラーのいずれか一方をトラクタ等本体側に設け、いずれか他方を作業機側に設け、
前記雌側カプラー及び前記雄側カプラーは、少なくとも二段階の嵌合誘導部を有し、両カプラーの嵌合誘導部の内側中心部近傍にはコネクタ部が形成され、
前記両カプラーの嵌合は、内側に行くほど精密な嵌合となりながら、前記雌側カプラーのコネクタ部と前記雄側カプラーのコネクタ部が合体されるように構成されることを特徴とする電装カプラーの着脱装置。
【請求項2】
前記雄側カプラーは、外側面に設けられて外側に傾斜する第一傾斜誘導部と該第一傾斜誘導部に連設される第一直線誘導部とを備え、且つ該第一直線誘導部の内側面には、内側に傾斜する第二傾斜誘導部と該第二傾斜誘導部に連設される第二直線誘導部とを備え、且つ該第二直線誘導部の内側中心部近傍に複数の電極を有するコネクタ部が形成され、
前記雌側カプラーは、内側面に設けられて内側に傾斜する第一傾斜誘導部と該第一傾斜誘導部に連設される第一直線誘導部とを備え、且つ該第一直線誘導部の内側に位置し、外側に傾斜する第二傾斜誘導部と該第二傾斜誘導部に連設されて前記雄側カプラーの前記第二直線誘導部を案内する第二直線誘導部とを備え、且つ該第二直線誘導部の内側中心部近傍に複数の電極を有するコネクタ部が形成され、
両カプラーを接近しながら該カプラーの前記第一直線誘導部及び前記第二直線誘導部を案内しつつ移動する間に次第に精密な嵌合がなされ、前記雌側カプラーのコネクタ部と前記雄側カプラーのコネクタ部が合体されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の電装カプラーの着脱装置。
【請求項3】
前記両カプラーの前記第一直線誘導部及び前記第二直線誘導部は、前記第一直線誘導部が嵌合してから前記第二直線誘導部の嵌合が始まる位置関係を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電装カプラーの着脱装置。
【請求項4】
前記雌側カプラー及び前記雄側カプラーの少なくともいずれかは、固定部材との間にピンと該ピンを巻回するスプリングとを設け、前記固定部材に対して前後方向及びこれと略直交する方向に所定範囲移動可能に構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電装カプラーの着脱装置。
【請求項5】
前記雌側カプラー及び前記雄側カプラーのいずれか一方の前記コネクタ部はプレートタイプの電極を有し、他方の前記コネクタ部は、前記プレートタイプの電極が挿入されると該電極が弾性を有した接触部を押し広げて前記プレートタイプの電極の平面部と押圧接触するソケットタイプの電極を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電装カプラーの着脱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−153087(P2008−153087A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340727(P2006−340727)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】