説明

電解コンデンサ用封口ゴム

【課題】コンデンサ内部の圧力が上昇して封口ゴムを外側へ押し出すような変形があっても、リード線を引っ張ったり、基板が変形したりするのを効果的に抑制することができる封口ゴムを提供する。
【解決手段】電解コンデンサのケース開口部を封口するようにケース6に固定され、一対のリード線5、5を外部に導出するリード線導出孔4、4を備えた封口ゴム1であって、前記封口ゴムにおける軸方向外端部側に、コンデンサ実装時における基板などの取り付け面に対して密着当接する凸状部2を設けてなり、前記凸状部が、前記一対のリード線導出孔間に位置し、その先端面の中央部分に凹状へこみ部3を備えたものからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサにおけるケース開口部側を封口するための電解コンデンサ用の封口ゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、従来の電解コンデンサは、例えば、図7および図8に示すように、一対のリード線15、15を備えたコンデンサ素子17をアルミケース16内に収容し、該アルミケース16の開口部側を封口ゴムにより封口した後、該アルミケース16の開口部を加締処理により封着処理した構造を呈している。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
このような構造からなる電解コンデンサは、プリント基板などに対し、該プリント基板に設けた孔にリード線を挿入して、プリント基板の裏面側において半田付けすることにより当該プリント基板上に実装している。
【0004】
上記特許文献1の電解コンデンサにおいて、上記するように当該電解コンデンサをプリント基板などに実装する際、半田付け処理などにより発生するフラックスガスを外部へ放出する通路を確保する目的で、封口ゴムにおける軸方向の外側端に、前記プリント基板などにおける取り付け面に密着当接する凸状部12が設けられている。
【0005】
しかしながら、上記するように、フラックスガスの放出路を確保するために、封口ゴムの軸方向外側端に凸状部を設けた構成のみでは、当該コンデンサをプリント基板などに実装する際に、以下に示すような新たな問題が生じるということが指摘されている。
【0006】
例えば、上記するような形態でプリント基板上に実装されたコンデンサに、仕様以上の電圧やリプル電流が印加されたり、カテゴリ上限温度以上で使用されると、コンデンサ内部で発熱やガスが発生してコンデンサ内部の圧力が上昇し、その結果、封口ゴムが外方向に向けて膨張してしまい、この膨張によって、当該封口ゴム11における凸状部12の基板に接する面が平面性を失い、基板を押圧してしまう。それにより、リード線が強く引っ張られるため、リード線が半田付け部において基板から剥がれたり、凸状部が基板を押圧し、基板が変形する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−114119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記するとおり、コンデンサ内部の圧力が上昇して、封口ゴムを外側に向けて押し出すような変形があっても、封口ゴムのプリント基板に接する面の平面性を保つことができ、それによりリード線を引張ったり、プリント基板が変形したりするのを効果的に抑制することができるように構成した電解コンデンサ用封口ゴムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記する目的を達成するにあたって、具体的には、電解コンデンサのケース開口部を封口するようにケースに固定され、一対のリード線を外部に導出するリード線導出孔を備えた封口ゴムであって、
前記封口ゴムにおける軸方向外端部側に、コンデンサ実装時における基板などの取り付け面に対して密着当接する凸状部を設けてなり、
前記凸状部が、前記一対のリード線導出孔間に位置し、その先端面の中央部分に凹状へこみ部を備えたことを特徴とする電解コンデンサ用封口ゴムを構成するものである。
【0010】
さらに、本発明において請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電解コンデンサ用封口ゴムであって、前記凸状部が、前記一対のリード線導出孔に対して座ぐり形成された一対の座ぐり部を有し、概して平面視分銅形状をなすものからなることを特徴とするものである。
【0011】
さらにまた、本発明において請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電解コンデンサ用封口ゴムであって、前記凸状部に形成される凹状へこみが、リード線導出孔を結ぶ線に対して交差する線に沿って形成され、少なくとも前記凸状部の平面視輪郭線に達しない形状でなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明になる電解コンデンサ用封口ゴムによれば、封口ゴムにおける軸方向外側面の凸状部が凹状にへこむように形成されているため、電解コンデンサ使用時にケース内の圧力上昇によって、封口ゴム内面が押され、外側へ押し出されるような変形を受けても、この変形を吸収するように作用する。よって、リード線が引っ張られたり、基板が変形したりするのを防ぐことができる。さらに、凹形状の両端部分がつながっていることにより、封口ゴムが外側へ押し出されるように変形しても、平面性を保つことができる。
【0013】
また、封口ゴムの中央部、つまり、リード線間に凸部があることで、リード線間の短絡防止効果がある。また、凸部がリード線導出用の穴部を囲むように配置され、外周側の一部が開いた形状になっているため、フラックスガスの放出流路の確保と半田付け状態(濡れ上がり状態)の確認ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係る封口ゴムの具体的な一実施例を示す概略的な斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す封口ゴムの概略的な平面図である。
【図3】図3は、図2におけるA−A線に沿って矢視方向に見た概略的なA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2におけるB−B線に沿って矢視方向に見た概略的なB−B線断面図である。
【図5】図5は、本発明の封口ゴムを用いた電解コンデンサを一対のリード線の配列方向に沿って断面にして示す概略的な断面図である。
【図6】図6は、本発明の封口ゴムを用いた電解コンデンサを一対のリード線の配列方向に直交する線に沿って断面にして示す概略的な断面図である。
【図7】図7は、従来の封口ゴムを用いた電解コンデンサを一対のリード線の配列方向に沿って断面にして示す概略的な断面図である。
【図8】図8は、従来の封口ゴムを用いた電解コンデンサを一対のリード線の配列方向に直交する線に沿って断面にして示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
【実施例】
【0016】
この発明の適用になる電解コンデンサは、基本的には、まず、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子7を作製した後、電解液を含浸させた。続いて、有底円筒状のケース6内に、コンデンサ素子7を収容し、ケース開口部側を封口ゴム1により封口した。なお、封口ゴム1には、コンデンサ素子7からのびる一対のリード線5、5を外部に導出するリード線導出孔4、4を設けた。さらに、ケース6の開口部側に封口ゴム1を装着した後、カーリングによりケース開口部側を封口した。
【0017】
本発明に係る封口ゴム1は、電気絶縁性のゴム弾性材料による成形品であり、前記有底円筒状のケース6の開口部内に嵌り合う外径を有する基部1aと、該基部1aから軸方向外端部側に向けて伸びる凸状部2を有するものからなっている。前記凸状部2の外側端面2aは、実装時における基板などの取り付け面に対して密着当接する当接面として機能する。
【0018】
前記凸状部2は、前記一対のリード線導出孔4、4の間に位置し、その先端面の中央部分に凹状へこみ部3を備えたものからなっている。さらに、前記凸状部2は、前記一対のリード線導出孔4、4に対して座ぐり形成された一対の座ぐり部8、8を有しており、それによって、概して平面視分銅形状をなすものからなっている。
ここに、本明細書中において、分銅形状とは、図1ならびに図2において具体的に示されるように、一つの円が、その一直径線上において背反する方向からそれぞれ円弧状に切り欠かれた形状を言うものとする。
【0019】
前記凸状部2に形成される凹状へこみ3は、リード線導出孔4、4を結ぶ線に対して交差する線に沿って形成され、少なくとも前記凸状部の平面視輪郭線に達しない形状でなることを特徴とするものである。
【従来例】
【0020】
従来例としては、図7、図8に示すように、封口ゴム11における凸状部12の軸方向先端面の中央部分に凹形状を設けないこと以外は、本発明実施例と同様の方法とした。
【0021】
以上の構成の電解コンデンサを、カテゴリ上限温度を超えた温度で使用した場合、ケース6内の電解液の蒸気圧や熱膨張により内部の圧力が上昇し、封口ゴムの内側面が押される。
実施例と従来例に係るカテゴリ上限温度105℃の電解コンデンサを、170℃で10分間大気中に放置した後、平面板上に搭載し、ぐらつきの有無を各々10個ずつ確認することで、封口ゴムの基板に接する面の平面性を評価した。表1にその結果を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1より実施例は従来例と比較して、ぐらつきが皆無であり、改善されていることが分かる。これは、封口ゴム外側面の凸部中央が凹形状をしているため、封口ゴムが外側に押されて膨張した際、凹形状部分でその膨張変化を吸収するように作用するためと考えられる。
【0024】
また他に、封口ゴムの凸部は穴部を囲むように突出しているが、外周方向の一部が開いており、フラックスガスを逃がす流路が確保されているため、半田付けの不良も防止できる。さらに、外周方向の一部が開いているために、半田付け後の半田付け状態の確認も容易に行うこともできる。
【符号の説明】
【0025】
1、11 封口ゴム
2、12 凸状部
3 凹状へこみ
4、14 リード線導出孔
5、15 リード線
6、16 ケース
7、17 コンデンサ素子
8 座ぐり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサのケース開口部を封口するようにケースに固定され、一対のリード線を外部に導出するリード線導出孔を備えた封口ゴムであって、
前記封口ゴムにおける軸方向外端部側に、コンデンサ実装時における基板などの取り付け面に対して密着当接する凸状部を設けてなり、
前記凸状部が、前記一対のリード線導出孔間に位置し、その先端面の中央部分に凹状へこみ部を備えたことを特徴とする電解コンデンサ用封口ゴム。
【請求項2】
前記凸状部が、前記一対のリード線導出孔に対して座ぐり形成された一対の座ぐり部を有し、概して平面視分銅形状をなすものからなることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用封口ゴム。
【請求項3】
前記凸状部に形成される凹状へこみが、リード線導出孔を結ぶ線に対して交差する線に沿って形成され、少なくとも前記凸状部の平面視輪郭線に達しない形状でなることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用封口ゴム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−258122(P2010−258122A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104685(P2009−104685)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)