説明

電解コンデンサ

【課題】劣化による内圧上昇時において、当該電解コンデンサを設けた装置に対して当該電解コンデンサの異常を感知させることが可能な電解コンデンサを提供する。
【解決手段】封口端子板に形成された、下部に第1の環状凸部、上部に第2の環状凸部を有する釣鐘形の貫通穴と、前記貫通穴に挿入された、肩部および首部を有する断面凸字形の圧力ゴムと、前記圧力ゴムの首部に嵌合されたショートリングと、貫通穴の第2の環状凸部よりも上部に配置され、斜めにカットされた端面が第2の環状凸部側を向くように貫通穴内に露出配置された断面ナイフエッジ形の端部を有し、相対向する第1および第2の電極とからなり、電解コンデンサの内圧上昇時に、圧力ゴムの肩部が第2の環状凸部を越えて上昇し、圧力ゴムの首部に嵌合されたショートリングを第1および第2の電極に接触させ、両電極間をショートさせる電極ショート機構を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用される電解コンデンサにおいて、劣化による内圧上昇時や異常発生時に電極(1+、1−)間をショートさせる異常感知/保安型の電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8(a)および(b)は、この種の従来の電解コンデンサの一例として、ネジ端子形のアルミニウム電解コンデンサ(以下、単に電解コンデンサと称す)の構成を示した断面図および斜視図であり、図8において、コンデンサ素子6は、陽極箔8と陰極箔7との間に電解紙9を介在させて巻回し、巻き終わり部分に巻き止めテープ5を貼り付けることによって構成され、さらにこのコンデンサ素子6には、図示しない駆動用電解液が含浸されている。
【0003】
金属ケース4は、上記コンデンサ素子6を収納する有底円筒状の金属ケースであり、金属ケース4内にコンデンサ素子6を収納した後、金属ケース4の側面に設けた溝部に封口端子板2を係合させ、金属ケースの開放端を封口端子板のゴム部に嵌合させる絞り加工(カーリング)によって封止して構成されている。
【0004】
図9は、図8に示した電解コンデンサの封口端子板2の詳細構成を示す平面図(図9(a))および断面図(図9(b))である。図9に示すように、封口端子板2には、薄肉ゴムで構成された圧力弁10が設けられており、電解コンデンサの劣化による内圧上昇時に圧力弁10の薄肉ゴム部を膨張させ一定以上の内圧によりゴム部が破断し、内部のガスを逃がす構造となっている。
【0005】
また、内圧上昇に対して、シリコンゴムなどからなる圧力開放弁をケースの封口板に設けて圧力をリークする構成の電解コンデンサは、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】2007−142252号公報
【特許文献2】2008−10476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、電解コンデンサについては、長期間にわたり負荷をかけると劣化により内部にガスが発生し、内圧が上昇し、静電容量が減少し、コンデンサとしての機能を果たさなくなる。これにより装置が誤作動を起こす等、予期しない影響が出てしまう問題があった。
【0008】
また、圧力をリークさせて内圧の上昇を抑える従来の構成においては、内圧の上昇を抑えてコンデンサが破裂等しないようにしているが、当該コンデンサを設けた装置に対してコンデンサの寿命に到ったことを知らせることが困難であり、装置がそのまま稼動を続けることにより誤動作するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、劣化による内圧上昇時や異常発生時において、当該電解コンデンサを設けた装置に対して当該電解コンデンサの異常発生を感知させることが可能な電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電解コンデンサは、化成皮膜を形成した陽極箔と、対向する陰極箔との間に電解紙を介して巻回したコンデンサ素子に電解液を含浸し、電極ショート機構を備えた封口端子板を取り付け、金属ケースに収納した後、封口端子板と金属ケースを絞り加工(カーリング)してなる電解コンデンサであって、前記封口端子板に形成された、下部に第1の環状凸部、上部に第2の環状凸部を有する釣鐘形の貫通穴と、貫通穴に挿入された、肩部および首部を有する断面凸字形の圧力ゴムと、圧力ゴムの首部に嵌合されたショートリングと、貫通穴の第2の環状凸部よりも上部に配置され、斜めにカットされた端面が第2の環状凸部側を向くように貫通穴内に露出配置された断面ナイフエッジ形の端部を有し、相対向する第1および第2の電極とからなり、電解コンデンサの内圧上昇時に、圧力ゴムが第1および第2の環状凸部に係合された状態から、圧力ゴムの肩部が第2の環状凸部を越えて上昇し、圧力ゴムの首部に嵌合されたショートリングを第1および第2の電極(1+、1−)に接触させ、両電極間をショートさせる電極ショート機構を備えたことを特徴とする。
【0011】
そして、上記の電極間ショート時には、圧力ゴムの肩部が第2の環状凸部を越えて上昇し、肩部の下部が第2の環状凸部に嵌合するため、圧力ゴムの首部に嵌合されたショートリングが電極(1+、1−)接触位置から外れないように維持され、電極(1+、1−)間のショートが確実に感知されるとともに、当該コンデンサを実装した装置のヒューズを切断させ、安全に停止させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電解コンデンサによると、劣化による内圧上昇時や異常発生時において、当該電解コンデンサを設けた装置に対して、当該電解コンデンサの内圧上昇、異常発生を確実に感知させることが可能な電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る電解コンデンサの模式断面図とコンデンサ素子構造図である。
【図2】図1の電解コンデンサのショート機構付の封口端子板の詳細構成を示す平面図および当該平面図のB−B線による断面図である。
【図3】ショート機構として設けられる圧力ゴムの装着部を拡大して示す部分断面図である。
【図4】圧力ゴムが内圧により上昇した状態を示す部分断面図である。
【図5】圧力ゴムを示す平面図である。
【図6】圧力ゴムに嵌合されたショートリングを示す平面図である。
【図7】内圧上昇時の電極間のショート状態を示すグラフである。
【図8】従来の電解コンデンサの模式断面図とコンデンサ素子構造図である。
【図9】図8の電解コンデンサの封口端子板の詳細構成を示す平面図および当該平面図のA−A線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図8との対応部分に同一符号を付して示す図1は、ショート機構付きの電解コンデンサの構成を示す断面図(図1(a))および斜視図(図1(b))である。図1に示す電解コンデンサは、図8に示した電解コンデンサと比べて、ショート機構付きの封口端子板22を備えた点が異なる。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子6は、陽極箔8と陰極箔7との間に電解紙9を介在させて巻回し、巻き終わり部分に巻き止めテープ5を貼り付けることによって構成され、さらにこのコンデンサ素子6には、図示しない駆動用電解液が含浸されている。
【0016】
金属ケース4は、上記コンデンサ素子6を収納する有底円筒状の金属ケースであり、封口端子板22は、上記コンデンサ素子6から引き出された外部引き出し用のリードタブ3が接続される一対の端子1を備えている。
【0017】
封口端子板22は金属ケース4の開口部に配設され、金属ケース4の開放端をカーリングすることにより封止するものであり、これにより電解コンデンサの気密性を確保するように構成されている。封口端子板22には、その中心部に貫通孔22Aが設けられており、後述する圧力ゴム11およびショートリング12(図3、図4)がショート機構として設けられている。
【0018】
次に、本実施の形態による電解コンデンサの製造方法について説明する。まず、陽極箔8と陰極箔7に外部引き出し用のリードタブ3を各々接続した後、陽極箔8と陰極箔7との間に電解紙9を介在させて巻回し、巻き終わり部分に巻き止めテープ5を貼り付けることによりコンデンサ素子6を作製する。
【0019】
次に、このコンデンサ素子6に駆動用電解液を含浸させた後、このコンデンサ素子6から引き出されたリードタブ3を、凹型のネジ切りを行った封口端子板22に設けられた一対の端子1に各々接続する。
【0020】
次に、上記コンデンサ素子6とショート機構付きの封口端子板22とを金属ケース4に収納し、カーリングを行う。
【0021】
図2は、本実施の形態に係る電解コンデンサのショート機構付きの封口端子板22の詳細構成を示す平面図(図2(a))および断面図(図2(b))である。
また、図3は、ショート機構として設けられるショート機能付きの圧力ゴム11の装着部を拡大して示す部分断面図であり、図4は、圧力ゴム11が内圧により上昇した状態を示す部分断面図である。
さらに、図5は、圧力ゴム11を示す平面図であり、図6は、圧力ゴム11に嵌合される導電性のショートリング12を示す平面図である。
【0022】
図2、3に示すように、封口端子板22には、貫通穴22Aが形成されている。この貫通穴22Aは、内径の大きな釣鐘形の大径部22Bを有するとともに、この大径部22Bの天井部において、大径部22Bに連通した、当該大径部22Bよりも内径の小さな小径部22Cを有する。
【0023】
大径部22Bには、その下部に貫通穴22A内に突出した第1の環状凸部22Dが形成されているとともに、その上部には、貫通穴22A内に突出した第2の環状凸部22Eが形成されている。
【0024】
第1の電極1(−)および第2の電極1(+)には、貫通穴22Aの大径部22Bと小径部22Cとの境界部−第2の環状凸部22Eの上部−に突出した鍔部1Aが形成されている。この鍔部1Aの端部1Bは、断面ナイフエッジ形でなり、斜めにカットされた端面が第2の環状凸部22E側を向くように貫通穴22A内に露出配置されている。
【0025】
第1の電極1(−)および第2の電極1(+)の各端部1Bは、大径部22Bと小径部22Cとの境界部において、貫通穴22Aの内部空間を隔てて相対向するように配置されている。
【0026】
貫通穴22Aには、圧力ゴム11が挿入されている。圧力ゴム11は、断面凸字形の円柱形状で形成されており、径の大きな下部11Aと、径の小さな上部11Bを有する。下部11Aの肩部11Cから上部11Bの付け根である首部11Dにかけて、段差状に形成されており、首部11Dには、円環形のショートリング12が嵌合されている。
【0027】
図3に示すように、圧力ゴム11の下部11Aが貫通穴22Aの大径部22Bに係合されている状態においては、下部11Aは、貫通穴22Aの大径部22Bに形成された第1の環状凸部22Dおよび第2の環状凸部22Eによって上下方向への動きが規制されている。
【0028】
この状態において、電解コンデンサの内圧が上昇すると、図4に示すように、圧力ゴム11の肩部11Cが第2の環状凸部22Eを越えて上昇し、首部11Dに嵌合されたショートリング12が、第1の電極1(−)および第2の電極1(+)の鍔部1A(端部1B)に接触して、これら電極1(−)および1(+)間をショートさせる。
【0029】
このショート状態により、当該電解コンデンサを設けた装置において、コンデンサの異常発生を発見することが可能となる。
【0030】
本実施の形態の場合、鍔部1Aの端部1Bは、上部ほど横方向への突出量が大きくなるように斜めにカットされたナイフエッジ形に形成されており、また、第1の電極1(−)の端部1Bのエッジ部と、第2の電極1(+)の端部1Bのエッジ部との間隔L1は、ショートリング12の外径L2よりも小さく形成されている。これにより、圧力ゴム11が上昇すると、ショートリング12は、第1の電極1(−)および第2の電極1(+)の各端部1Bに確実に接触する。
【0031】
また、この時、圧力ゴム11の肩部11Cが第2の環状凸部22Eを越えて上昇し、圧力ゴム11の肩部11Cの下部が第2の環状凸部22Eに嵌合するため、圧力ゴム11の首部11Dに嵌合されたショートリング12が電極(1+、1−)接触位置から外れないように維持される。
【0032】
また、下部11Aの周側面は、上方にかけて径が小さくなるように傾斜しており、封口端子板22の貫通孔22Aもこれに合わせて上部ほど径が小さくなるように形成されている。これにより、電解コンデンサの内圧が所定の値になるまでは、圧力ゴム11の上昇が抑えられる。
【0033】
なお、内圧が所定の値になるまで、圧力ゴム11の弾力のみによって当該圧力ゴム11の上昇を抑えるようにする場合には、下部11Aおよび貫通孔22Aの傾斜は不要となる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0035】
図1に示した電解コンデンサとして、封口端子板22にフェノール樹脂を用い、圧力ゴム11としてシリコン、EPTゴムを用いて評価試験(内圧上昇試験)を試み、図7に示す結果を得た。
【0036】
図7に示すように、従来の圧力弁10を装着した封口端子板2は機械的作動のみのため電圧が印加されたままとなるが、本発明の実施の形態の圧力ゴム11とショートリング12を装着したショート機能付きの封口端子板22では内圧上昇による電気的作動が加わり、ショートしていることが感知される。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係る電解コンデンサにおいては、内圧が上昇すると、圧力ゴム11が上昇してショートリング12が電極1(−)および1(+)に接触し、この電極1(−)と1(+)との間をショートさせ、また、その状態が維持される。
【0038】
上記のとおり、内圧上昇によりコンデンサの機能が十分に果たされなくなる前に、端子間がショートすることとなり、当該電解コンデンサが設けられた装置のヒューズ(図示せず)を切断させることができ、この結果、装置が誤動作する前に当該装置を安全に停止させることができる。
【0039】
すなわち、電解コンデンサとしての機能が、装置を誤動作させる程度に低下する前に、装置のヒューズを切断させて装置を安全に停止させることが可能となる。
【0040】
なお、上述の実施例においては、弁作用金属をアルミニウムとした電解コンデンサに本発明を適用する場合について述べたが、これに限られるものではなく、タンタル、ニオブ等の弁作用金属をアルミニウムの代わりに用いたものに本発明を適用しても、同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、上述の実施例においては、封口端子板22の材質としてフェノール樹脂を用い、圧力ゴム11の材質としてシリコンまたはEPTを用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、内圧の上昇によって稼動するものであれば、他の材質を用いることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 端子
1A 鍔部
1B 端部
2、22 封口端子板
3 リードタブ
4 金属ケース
5 巻き止めテープ
6 コンデンサ素子
7 陰極箔
8 陽極箔
9 電解紙
10 圧力弁
11 圧力ゴム
11A 下部
11B 上部
11C 肩部
11D 首部
12 ショートリング
22A 貫通穴
22B 大径部
22C 小径部
22D 第1の環状凸部
22E 第2の環状凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化成皮膜を形成した陽極箔と、対向する陰極箔との間に電解紙を介して巻回したコンデンサ素子に電解液を含浸し、電極ショート機構を備えた封口端子板を取り付け、金属ケースに収納した後、封口端子板と金属ケースを絞り加工してなる電解コンデンサであって、
前記封口端子板に形成された、下部に第1の環状凸部、上部に第2の環状凸部を有する釣鐘形の貫通穴と、
前記貫通穴に挿入された、肩部および首部を有する断面凸字形の圧力ゴムと、
前記圧力ゴムの首部に嵌合されたショートリングと、
前記貫通穴の第2の環状凸部よりも上部に配置され、斜めにカットされた端面が前記第2の環状凸部側を向くように前記貫通穴内に露出配置された断面ナイフエッジ形の端部を有し、相対向する第1および第2の電極と、
からなることを特徴とする電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−272566(P2010−272566A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120699(P2009−120699)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)