説明

電解質用の架橋性組成物

本発明の分野は、蓄電池及び蓄電池用電解質の分野に関し、より具体的にはリチウム蓄電池の分野に関する。
本発明は、光化学的に又は電子ビーム下で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物において、
(a)少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS)(A)であって、1分子当たり、
・エポキシ(Epx)官能基を随意としてのエーテル(Eth)官能基と共に含む少なくとも2個のシロキシル単位と、
・ポリオキシアルキレン(Poa)エーテル基を有するシロキシル単位の少なくとも1個と
を含むもの、
(b)少なくとも1種の電解質塩、及び
(c)有効量の少なくとも1種の陽イオン光開始剤
を含む蓄電池電解質用組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、蓄電池及び蓄電池用の高分子電解質の分野に関し、詳しくはリチウム蓄電池の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明の主題は、新規な電解質用重合性及び/又は架橋性組成物、この新規な組成物の重合及び/又は架橋によって得られる新規な高分子電解質並びに新規なポリマー蓄電池である。
【背景技術】
【0003】
従来、鉛蓄電池が最も一般的に使用されてきた。しかしながら、この鉛技術には、蓄電池の重量、操作中の信頼性の欠如及び腐食性液体の使用に関わる多数の不利益があった。これは、アルカリ蓄電池であってその電極がニッケルとカドミウムをベースとするもの(ニッケル−カドミウム蓄電池)又は亜鉛と酸化ニッケルをベースとするもの(亜鉛−ニッケル蓄電池)又は亜鉛、カドミウム若しくは鉄と一体になった酸化銀をベースとするもの(酸化銀蓄電池)の開発に至らせた。これらの技術の全ては、電解質として水酸化カリウム溶液を使用するが、これは携帯機器の開発に関わる要件に関する重量によって低いエネルギー密度という大きな不利益を示す。このため、製造業者は、リチウム金属をベースとする負極を使用するリチウム蓄電池(よって「リチウム金属蓄電池」という)を主体とする新たな産業を発達させてきた。しかしながら、連続充電中のリチウム負極の乏しい回復に関わる問題が、リチウムに対する挿入化合物として使用される炭素をベースとする新規なタイプの負極を直ちにもたらした(よって「リチウムイオン蓄電池」という)。
【0004】
リチウム蓄電池についての動作原理を以下に要約する。
電気化学的充電中に、正極の遷移金属イオンが酸化され、これがリチウムのデインターカレーションを生じさせる。電子が外部回路を介して強制的に移動し、そしてモル当量のリチウムイオンがイオン伝導体及び電子絶縁体である電解質を通過する。これは、負極でのリチウムのインターカレーションを可能にする。この蓄電池の放電中、即ち使用中には、これは自発的に生じる逆現象である。
【0005】
蓄電池では、電極を隔てるイオン伝導体又は電解質が重要な成分である。第一に、その状態、液体、固体又はゲル状物質がこの系の安全性に影響を及ぼし、そして第二に、その伝導性が動作温度の範囲を決める。カーボネートを基材とする液状電解質が一般的に使用される。しかしながら、これらのものは、腐食性液体の取り扱いに関わる最適な安全性条件を示さない。これは、このタイプの蓄電池が、ガスを形成させ、しかして蓄電池の内圧の上昇及び爆発の危険性を増大させる熱暴走のような事象の場であり得るからである。この理由のため、厳格な安全基準によって製造業者は高度なケースを使用することを要求され、それによってユニットの原価が上昇する。
【0006】
この大きな不利益を克服するために、蓄電池産業は、リチウムアノードを含む固体高分子電解質をベースとする新規な技術を開発した(よって「リチウムポリマー蓄電池」という)。その固体の性質及びフィルム形状のため、この新規なタイプの電解質は、非常に多様な形状を有するさらに安全な蓄電池の開発を可能にする。形成されるフィルムの厚さは、低い電流密度でのエネルギー効率の増大を可能にする。最初の「乾燥重合体」の研究の一つは、輸送用途のためのポリオキシエチレンであった。しかしながら、このタイプの重合体の不利益の一つは、周囲温度、まして低温での使用についての低い伝導度に関する。従って、これは、例えば、宇宙空間における静止衛星の蓄電池動作のような極限条件下でのこれらの蓄電池の使用にとって決定的となる大きな不利益の一つである。
【0007】
そのため、当業者は、新規な高分子電解質を開発しようと試みている。例示として、国際公開WO2000/25323号には、少なくとも2個の反応性SiH基を有するポリオキシエチレン基又は環状カーボネート基からなるポリシロキサンと、少なくとも2個のアルケニル型の反応性基を有する架橋剤と、ヒドロシリル化用触媒と、電解質塩とを含む蓄電池用高分子電解質を形成するように架橋され得る組成物が開示されている。この組成物は、70〜100℃の間でほぼ6時間にわたって加熱することによって熱架橋して電解質重合体を生じる。このタイプの製造法の大きな不利益は、電解質重合体の製造にかかる高いエネルギーコスト及び産業への適用を規制する遅い架橋速度に関する。
【特許文献1】国際公開第2000/25323号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該技術分野の産業界は、−20℃〜+80℃にわたる好適な温度範囲で使用するために十分なレベルの伝導度を有する電解質重合体及び低いエネルギーコストの製造方法を採用する高分子電解質を得ることを可能にする蓄電池電解質用の新規な組成物を待望している。
【0009】
従って、本発明の主な目的は、−20℃〜+80℃にわたる好適な温度範囲で使用するために十分なレベルの伝導度を有する電解質重合体を得ることを可能にする蓄電池高分子電解質用の新規な重合性及び/又は架橋性組成物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、光化学的に又は電子ビーム下で重合及び/又は架橋され得る蓄電池高分子電解質用の新規な組成物であって、該電解質重合体の製造にかかる高いエネルギーコストを必要としないものを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、高架橋速度に従って電解質重合体を得るのを可能にする蓄電池高分子電解質用の新規な重合性及び/又は架橋性組成物を提供することである。
【0012】
また、本発明は、本発明に従う組成物の重合及び/又は架橋によって得られる固形高分子電解質をも対象とする。
【0013】
最後に、本発明は、ポリマー蓄電池、より詳しくはリチウムポリマー蓄電池を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、とりわけ、照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物において、
(a)少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS)(A)であって次式(I)のシロキシル単位:
1x2y3zSiO(4-x-y-z)/2 (I)
(式中、これらの様々な記号は次の意味を有する:
・x、y及びzは1≦x+y+z≦3の整数であり、
・R1、R2及びR3基は同一又は互いに異なるものであり、そして随意に置換された線状若しくは分岐のC1〜C12アルキル基、随意に置換されたC5〜C10シクロアルキル基、随意に置換されたC6〜C18アリール基、随意に置換されたアラルキル基又は−OR4基(ここで、R4は水素又は線状若しくは分岐アルキル基であって1〜15個の炭素原子を有するものを表す。)を表し、
ここで、該POS(A)は、1分子あたり、
・少なくとも2個の式(I)のシロキシル単位であってそれらの基のうち1個がエポキシ型の官能基(Epx)及び随意としてエーテル型の官能基(Eth)を含むものと、
・少なくとも1個のポリオキシアルキレン(Poa)エーテル基を含む式(I)のシロキシル単位のうち少なくとも1個と
を含むものとする。)
を含むもの、
(b)少なくとも1種の電解質塩、及び
(c)有効な量の少なくとも1種の陽イオン光開始剤
を含むことを特徴とする、蓄電池電解質用組成物に関する本発明によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第一の選択肢によれば、上に定義されるような組成物は、少なくとも1種のPOS(B)であってそのシロキシル単位が式(I)に等しい式(II)によって規定されるものを含むことができるが、ただし、該POS(B)は、1分子当たり、エポキシ型の官能基(Epx)及び随意としてエーテル型の官能基(Eth)を含む少なくとも2個のシロキシル単位を含むものとする。
【0016】
エポキシ型の官能基(Epx)を有する基は、架橋又は重合後にポリエーテル型の架橋の形成を生じさせることによって、架橋又は重合に関して同時に反応性であるという利益を示すが、これは高分子電解質の伝導性にとって非常に有利な要素である。同一の基中にエーテル型官能基(Eth)が存在し得ることは、高分子電解質の伝導性に及ぼす有利な効果をさらに高める。
【0017】
用語「有効量の少なくとも1種の陽イオン光開始剤」とは、本発明の意味内では、重合又は架橋を開始させるのに十分な量を意味するものとする。この量は、所定期間にわたる該組成物の良好な貯蔵を可能にするためにできるだけ少量であるべきである。陽イオン光開始剤としての使用濃度は、0.1重量%〜2重量%、好ましくは0.2重量%〜1重量%の間にある。
【0018】
有利には、エポキシ型の官能基(Epx)を有し、しかも随意としてエーテル型の官能基(Eth)を有し得る基は、次の基:
【化1】

から選択される。
【0019】
より詳しくは、POS(A)は、随意として式RSiO3/2の単位(T)(T単位の最大%はその組成物が液体の形態のままであるように決定されるであろう)を含むことができる次の一般式(VIII):
【化2】

(これらの式において、
・記号Rは、同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれ随意として置換された線状若しくは分岐のC1〜C12アルキル基、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル若しくはn−ブチル、好ましくはメチル、随意として置換されたC6〜C18アリール基、特にフェニル基、随意として置換されたC5〜C10シクロアルキル基又は随意として置換されたアラルキル基を表し、
・記号Zは同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれヒドロキシル基又は1〜15個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルコキシル基を表し、
・記号R'は同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれ2〜50個、好ましくは2〜20個の炭素原子を含む基、さらに好ましくはn−プロピル基を表し、
・記号Poaは同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれポリオキシアルキレンエーテル型の基、好ましくはポリオキシエチレンエーテル及び/又はポリオキシプロピレンエーテル基、さらに好ましくは−O−(CH2CH2O)m−CH3基(ここで、m≦14である)を表し、
・記号R”は同一又は互い異なるものであり、そしてぞれぞれ2〜50個、好ましくは2〜20個の炭素原子を含む基であって随意として−O−エーテル型の官能基を含むことができるものを表し、
・記号(Epx)はエポキシ官能基を表し、ここで、この官能基は、R”炭化水素鎖の末端として存在する次のタイプ:
【化3】

の官能基であるか又はR”炭化水素鎖の中間位置に存在する次のタイプ:
【化4】

の官能基であるかのいずれかであり、ここで、この中間位置は、該鎖の環状部分、特に5〜7員環、好ましくは6員環上に存在することができるものとし、
・記号Aは同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれ−R、H、−R”−Epx及び−OR4(ここで、R4は水素又は1〜15個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基を表す。)から選択される1価の基を表し、
・mは0以上、好ましくは5〜200、さらに好ましくは10〜100の整数又は分数であり、
・nは0〜5に変化する整数又は分数であり、そして残余のSiH単位の数を表し、
・oは1以上、好ましくは1〜100、より好ましくは5〜30の整数又は分数であり、
・pは2以上、好ましくは3〜200、さらに好ましくは10〜40の整数又は分数であり、
・qは0以上、好ましくは0〜10の整数又は分数である。)
の本質的に線状のランダム又はブロック共重合体である。
【0020】
好ましくは、数m、o及びpは、次の条件:
比(m+n+p+q)/o≦10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜5
を満足するように選択される。
【0021】
有利には、−R”−Epx型の基は、上に定義される(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)基から選択される。
【0022】
好ましくは、−R'−Poa基は、
−(CH23−O−(CH2CH2−O)m−CH3、−(CH22−O−(CH2CH2−O)m−CH3、−(CH23−O−(CH(CH3)−CH2−O)m−CH3及び−(CH22−O−(CH(CH3)−CH2−O)m−CH3(ここで、m≦14である)から選択される。
【0023】
本発明の注目すべき特徴によれば、電解質塩(b)は、
・金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン及びグアニジニウムイオンよりなる群から選択される陽イオン、及び
・塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、硝酸イオン、AsF6-、PF6-、ステアリルスルホン酸イオン、トリフルオルメタンスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、R4SO3-、(R4SO2)(R5SO2)N-及び(R4SO2)(R5SO2)(R6SO2)C-(それぞれの式において、R4、R5及びR6基は同一又は異なるものであり、そして電子求引基を表す。)よりなる群から選択される陰イオン
から構成される。
【0024】
有利には、R4、R5及びR6基は、ペルフルオルアリール又はペルフルオルアルキル型の電子求引基から選択されるが、ここで、該ペルフルオルアルキル基は1〜6個の炭素原子を含むものとする。
【0025】
本発明の一選択肢によれば、電解質塩(b)は、周期律表(Chem.& Eng.News,第63巻,No.5,26(1985年2月4日))の第1族及び第2族のアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される金属陽イオンを含む。特に有利な態様では、該金属陽イオンは、リチウム型のものであるか又は遷移金属、例えば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カルシウム若しくは銀から選択されるかのいずれかである。
【0026】
本発明に従って使用するリチウム型電解質塩は、次の化合物:
LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22及びこれらの化合物の混合物
よりなる群から選択できる。
【0027】
好ましくは、組成物のリチウム電解質塩の量は、O/Liモル比が15〜40、好ましくは10〜30、さらに好ましくは20〜25であるように定義される。
【0028】
本発明に従う高分子電解質は、架橋及び/又は重合後に固体であるが、この本発明の教示は固体のみに限定されない。これは、架橋及び/又は重合後に液体又はゲル化された形態を得るために、該組成物に有機電解質(d)を添加することが可能だからである。この選択は、好ましくは、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド及びポリエチレングリコールジメチルエーテルよりなる群から選択される化合物からなされるであろう。
【0029】
本発明に従う組成物の重合及び/又は架橋の開始は、陽イオン光開始剤の存在によって可能になる。これは、該組成物が、エネルギー、例えばUVエネルギーの吸収後に強酸H+を放出する光開始剤(よって「陽イオン光開始剤」という)と反応性があるエポキシド官能基を有するポリオルガノシロキサン(POS)を含むからである。この光開始剤は、実体の形成による連鎖重合の開始及び成長反応を可能にするであろう。
【0030】
任意の陽イオン光開始剤が本発明に好適であり得る。有利には、陽イオン光開始剤は、周期律表(Chem.& Eng.News,第63巻,No.5,26(1985年2月4日))の第15〜17族の元素の硼酸オニウム(単独で又はそれらの混合物として)又は周期律表(同一の刊行物)の第4〜10族の元素の有機金属錯体の硼酸塩から選択できる。
【0031】
この選択は、本発明に従って使用される陽イオン光開始剤のうち、その硼酸塩の陽イオン部分が、
(a)次式(IX):
[(R1n−A−(R2m+ (IX)
(式中、
・Aは、例えば、I、S、Se、P又はNのような第15〜17族の元素を表し、
・R1はC6〜C20炭素環式又は複素環式アリール基を表し、ここで、該複素環式基はヘテロ原子として窒素又は硫黄を含むことができるものとし、
・R2は、R1又は線状若しくは分岐C1〜C30アルキル若しくはアルケニル基を表し、ここで、該R1及びR2基は、C1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ニトロ、クロル、ブロム、シアノ、カルボキシ、エステル又はメルカプト基によって置換されていてよいものとし、
・nは1〜v+1の範囲の整数であり、ここで、vは元素Aの原子価であり、
・mは0〜v−1の範囲の整数であり、ここで、n+m=v+1であるものとする。)
のオニウム陽イオン、
(b)次式(X):
(L123M)q+ (X)
(式中、
・Mは第4〜10族の金属、特に、鉄、マンガン、クロム又はコバルトを表し、
・L1はπ電子を介して金属Mに結合する配位子を表し、ここで、該配位子は、η3−アルキル、η5−シクロペンタジエニル及びη7−シクロヘプタトリエニル配位子並びに置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環を有する化合物(それぞれの環は金属Mの原子価の層に3〜8個のπ電子を介して寄与することができる)から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L2は、π電子を介して金属Mに結合する配位子を表し、ここで、該配位子は、η7−シクロヘプタトリエニル配位子並びに置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環を有する化合物(それぞれの環は金属Mの原子価層に6〜7個のπ電子を介して寄与することができる)から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L3は、σ電子を介して金属Mに結合する0〜3個の同一又は異なる配位子を表し、ここで、該配位子は、CO及びNO2+から選択され、L1、L2及びL3並びに金属Mのイオン電荷が寄与する錯体の全電子電荷は正であり及び1又は2に等しいものとする。)
の有機金属陽イオン、
(c)次式(XI):
【化5】

(ここで、R3基は線状又は分岐C1〜C20アルキル基を表す。)
を有するオキソイソチオクロマニウム陽イオン、及び
(d)次式(XIII):
(L123M)q+ (XIII)
(式中、
・Mは第4〜10族の金属、特に、鉄、マンガン、クロム又はコバルトを表し、
・L1はπ電子を介して金属Mに結合する配位子を表し、ここで、該配位子は、好ましくは、η3−アルキル、η5−シクロペンタジエニル及びη7−シクロヘプタトリエニル配位子並びに置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環を有する化合物(それぞれの環は、金属Mの原子価層に3〜8個のπ電子を介して寄与することができる)から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L2はπ電子を介して金属Mに結合する配位子を表し、ここで、該配位子は、好ましくは、η7−シクロヘプタトリエニル配位子並び置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環を有する化合物(それぞれの環は、金属Mの原子価層に6又は7個のπ電子を介して寄与することができる)から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L3は、σ電子を介して金属Mに結合する0〜3個の同一又は異なる配位子を表し、ここで、該配位子は、CO及びNO2+から選択され、L1、L2及びL3並びに金属Mのイオン電荷が寄与する錯体の全電子電荷qは正であり及び1又は2に等しいものとする。)
の有機金属陽イオン
から選択される式を有するものからなされるであろう。
【0032】
本発明に従って使用するその他の陽イオン光開始剤は、次式(XII)の陰イオン部分:
[BXab- (XII)
(式中、
・a及びbは0〜4の範囲の整数であり、ここで、a+b=4であり、
・記号Xはハロゲン原子(塩素、弗素)(a=0〜3)及びOH官能基(a=0〜2)を表し、
・記号Rは同一又は異なるものであり、そして、
(a)陽イオン部分が第15〜17族元素のオニウムである場合には、CF3、NO2又はCNから選択される少なくとも1個の電子求引基又は少なくとも2個の弗素原子によって置換されたフェニル基、
(b)陽イオン部分が第4〜10族元素の有機金属錯体である場合には、弗素原子、CF3、NO2又はCNから選択される少なくとも1個の電子求引元素又は少なくとも1個の電子求引基によって置換されたフェニル基、及び/又は
(c)陽イオン部分が何であれ、弗素原子、CF3、NO2又はCNから選択される少なくとも1個の電子求引元素又は少なくとも1個の電子求引基によって随意に置換された少なくとも2個の芳香環を含むアリール基
を表す。)
から選択される。
【0033】
これは限定するものではないが、本発明に従って使用する際に特に好ましい硼酸オニウム及び硼酸有機金属塩の下位概念についてのさらなる詳細を以下に与える。
【0034】
特に有利には、陽イオン光開始剤の陰イオン部分は、
[B(C654-、[B(C64CF34-、[B(C64CF34-、[(C652BF2-、[C65BF3-、[B(C6324-、[B(C64OCF34]-
よりなる群から選択される。
【0035】
別の有利な変形例によれば、陽イオン光開始剤の陽イオン部分は、
[(Φ)2I]+、[C817−O−Φ−I−Φ]+、[(Φ−CH32I]+、[C1225−Φ−I−Φ]+、[(C817−O−Φ)2I]+、[C817−O−Φ−I−Φ]+、[(Φ)3S]+、[(Φ)2−S−Φ−O−C817+、[CH3−Φ−I−Φ−CH(CH32+、[Φ−S−Φ−S−(Φ)2+、[(C1225−Φ)2I]+、[CH3−Φ−I−Φ−OC25+、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Fe+、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−1−メチルナフタリン)Fe+及び(η5−シクロペンタジエニル)(η6−クメン)Fe+
よりなる群から選択される。
【0036】
特に好適な重合及び/又は架橋陽イオン光開始剤は、
[(Φ)2I]+[B(C654-、[(C817)−O−Φ−I−Φ]+[B(C654-、[C1225−Φ−I−Φ]+[B(C654-、[(C817−O−Φ)2I]+[B(C654-、[(C817)−O−Φ−I−Φ]+[B(C654-、[(Φ)3S]+[B(C654-、[(Φ)2S−Φ−O−C817+[B(C64CF34-、[(C1225−Φ)2I]+[B(C654-、[(Φ)3S]+[B(C64OCF34-、[(Φ−CH32I]+[B(C654-、[(Φ−CH32I]+[B(C64OCF34-、[CH3−Φ−I−Φ−CH(CH32+[B(C654-、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Fe+[B(C654-、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−1−メチルナフタリン)Fe+[B(C654-、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−クメン)Fe+[B(C654-及びそれらの混合物
よりなる群から選択される。
【0037】
これらの重合及び/又は架橋用の陽イオン光開始剤は、イソプロパノール、ジアセトンアルコール又は乳酸ブチルのような溶媒の溶液で与えられ得る。
【0038】
硼酸オニウム及び硼酸有機金属塩を定義するためのその他の参考文献としては、欧州特許第0562897号及び欧州特許第0562922号の全体を参照されたい。
【0039】
光開始剤として使用できるオニウム塩のその他の例としては、米国特許第4138255号及び米国特許第4310469号に開示されたものが挙げられる。
【0040】
また、その他の陽イオン光開始剤としては、例えば、
・ユニオン・カーバイド社によって販売されているもの(Photoinitiator 6990(商標)及び6974(商標)であるヘキサフルオロ燐酸トリアリールスルホニウム及びヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスルホニウム)、
・ヘキサフルオロ燐酸ヨードニウム又はヘキサフルオロアンチモン酸ヨードニウム塩、又は
・これらの様々な陰イオンのフェロセニウム塩
も使用できる。
【0041】
本発明の一つの選択肢によれば、成分(c)として、ポリオルガノシロキサンを有する溶液、好ましくは、上記のポリオルガノシロキサンPOS(B)の溶液の状態の陽イオン光開始剤からなる触媒系が使用できる。
【0042】
別の選択肢によれば、陽イオン光開始剤は、例えば、ベンゾフェノンをベースとするラジカル光開始剤と混合できる。例としては、チバ・ガイギー社によって販売されるもの:Irgacure184(商標)、Irgacure500(商標)、Darocure1173(商標)、Irgacure1700(商標)、Darocure4265(商標)、Irgacure907(商標)、Irgacure369(商標)、Irgacure261(商標)、Irgacure784DO(商標)、Irgacure2959(商標)及びIrgacure651(商標)が挙げられる。
【0043】
また、ラジカル光開始剤は、チバ・ガイギー社によって販売されるもの(Irgacure1700)又はBASF社によって販売されるもの(Lucirin TPO)のように、1個以上の燐原子を含むこともできる。
【0044】
別の選択肢によれば、本発明に従う組成物は、200〜500nmの残存光吸収を有する1個以上の置換又は非置換芳香環を含む少なくとも1種の芳香族炭化水素光増感剤(e)を含む。本発明に従う組成物中に存在する光増感剤(e)は、本質的にかなり変更できる。米国特許第4939069号、同4278751号及び同4147552号に開示された光増感剤が使用できる。好ましくは、光増感剤(e)は、次の化合物:
4,4’−ジメトキシベンゾイン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,8−ジヒドロキシアントラキノン、過酸化ジベンゾイル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾイン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ベンズアルデヒド、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)ケトン、ベンゾイルアセトン、
【化6】

2−イソプロピルチオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン及びそれらの混合物
よりなる群から選択される。
【0045】
また、本発明に従う組成物は、重合及び/又は架橋後に得られる高分子電解質の機械的性質を改善させるために補強剤を含むこともできる。例えば、本発明に従う組成物は、随意として、処理されたシリカ、処理されたアルミナ又はポリオルガノシロキサン樹脂を含むことができる。
【0046】
また、本発明は、光化学的に又は電子ビーム下、特にUV照射下に、本発明に従う重合性及び/又は架橋性組成物を重合及び/又は架橋させることによって得られる蓄電池用の固体高分子電解質に関するものでもある。照射時間は短くてもよく、一般的には20秒以内である。この高分子電解質は、ポリオキシアルキレンエーテル官能基と、随意として架橋されていない残余基と、エポキシ環の開環によって得られる基とを含む。
【0047】
本発明の別の主題は、上記の重合及び/又は架橋によって得られた固体高分子電解質をアノードとカソードとの間に配置してなる蓄電池である。有利には、該カソードの成分のうち少なくとも1種は、リチウム金属、リチウム合金、リチウム挿入物を含む無機材料及びリチウム挿入物を含むカーボネート材料よりなる群から選択される。
【0048】
これらの蓄電池の用途は、蓄電の次の分野:産業用システム及び電気通信システム用の非常電源、携帯機器用の二次電源、静止衛星用途のための蓄電池並びに電気自動車及びハイブリッド自動車用の蓄電池に特に好適である。
【0049】
次に実施例を例示するが、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0050】
例1:エポキシ及びポリオキシエチレンエーテル官能基を有するポリオルガノシロキサンの製造
497.2gのキシレン及び10.1gのPt/木炭不均一触媒を、1個の撹拌器と、3個の傾斜スクリューと、温度の測定を可能にする2個のバッフルと、2個の膜ポンプと、1個の滴下漏斗とを備えた2L反応器に導入する。この反応媒体を撹拌しつつ窒素の不活性雰囲気下で80℃に加熱する。80℃の温度に到達したときに、次の反応体:
・500.8g(1.47モル)のNOF社製Uniox MA300(商標)アリルポリエーテル(一方の第1膜ポンプを介して)、及び
・285.1gのシリコーンオイルであってMD'5025M型(ここで、M=(CH33SiO1/2、D=(CH32SiO2/2及びD'=(CH3)HSiO2/2である)の構造のSiH官能基を含むもの
を3時間にわたって同時に流すことによって添加する。
【0051】
SiH官能基の転化率が40%に達したときに、295.2gのアリルグリシジルエーテル(分子量:113g/モル、即ち2.6モル)を2時間30分にわたって流す。添加が完了した後に、転化率は73%である。この反応混合物を86℃で36時間にわたって撹拌した状態を保持して100%の転化率を得る。周囲温度に戻した後に、この反応媒体を濾過する。この濾過によって1801.2gの透明な、触媒を有しない生成物が得られる。ロータリーエバポレーター中で150℃及び5mbarでの蒸発によって揮発成分を除去できる。ほぼ945gの最終生成物POS(A)が得られるが、この生成物は、2650mPa.sの粘度及び式:M*−D21−D'3.6−DOE9.7−DAGE16.4−TOR4−T1.6−M*(ここで、
D=(CH32SiO2/2、D'=(CH3)HSiO2/2、DOE=(CH3)R'SiO2/2、DAGE=(CH3)R”SiO2/2、T=SiO3/2、TOR=(RO)(CH3)SiO2/2であり、
*=79%のM単位+6%のDOR単位+15%のDOH単位(モル%として)、
OR=(CH32aSiO1/2
OH=(CH32(OH)SiO1/2
a=ポリエーテル残基、
R'=−(CH23−O−(CH2CH2−O)8-9−CH3、及び
【化7】

であり、
記号*は、珪素原子に結合する炭素を表す。)
によって表される構造を有する。
【0052】
例2:UV照射下での架橋
この例の組成物において使用した物質は次の通り:
シリコーンPOS(B):(粘度23.5mPa.s):
【化8】

陽イオン光開始剤(P1)
【化9】

である。
組成物を、
(a)例1で得られたPOS(A)を100部、
(b)LiTFSi塩(LiTFSi=リチウムビストリフルオルメタンスルホンアミド)を15.57部、
(c)重合用陽イオン光開始剤触媒系であって
(c−1)76.3重量%のシリコーン(B)、
(c−2)21.6重量%の、構造(P1)を有するロディア社製光開始剤Rhodorsil Photoinitiator2074(商標)、
(c−3)1.9重量%の、シリコーン(B)中4重量%のTinuvin−765(商標:チバ社製)からなる溶液、
(c−4)0.2重量%の光増感剤(e)1−クロル−4−プロポキシチオキサントン
を含むものを3重量部
混合することによって製造する。
【0053】
この組成物を、UVランプを使用して、全ランプスペクトル(UV+可視)上でほぼ3〜5m/分の該ランプ下での通過時間(これは、ほぼ10秒の架橋時間を得ることを可能にする)でもって架橋させる。2つのネットワークが得られた:10アンペアでの通電後の第1(N1)並びに10アンペア及び17アンペアの2回の通電による第2(N2)。ネットワークは、50〜250μmの平均厚さを有するフィルムの形で得られる。
【0054】
例3:イオン伝導度の測定
温度に対する例2に従う架橋ネットワークのイオン伝導度及びそれらの電荷を、複素インピーダンススペクトロメトリー技術(この技術は、導電系の特性量、例えば、それらの抵抗又はそれらの容量を決定するのを可能にする)を使用して測定した。固体電解質のフィルムをステンレス鋼から作られた2個の電極の間に挿入し、そして固定した状態を保持した(この完全な組立体は、主要な測定用の電池を構成する)。この実験用装置を、−20℃〜+80℃の間の温度走査を可能にするオーブンの内部に配置する。この電池を、データ記録用のコンピューターに連結されたヒューレット・パッカード社製のHD4192Aインピーダンスメーターに接続した。この電池を、5×10-3Hz〜13MHzにわたる周波数範囲内での100mV波高〜波高の正弦波電圧に付す。それぞれの試料について、設定温度で3/4時間にわって保持した後に測定を実施する。
【0055】
これらの条件下での、複素インピーダンス法によって測定されるときの例2に従う架橋ネットワークの25℃でのイオン伝導度は、10-4〜5×10-6シーメンス/cmである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物において、
(a)少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS)(A)であって次式(I)のシロキシル単位:
1x2y3zSiO(4-x-y-z)/2 (I)
(式中、これらの様々な記号は次の意味を有する:
x、y及びzは1≦x+y+z≦3の整数であり、
1、R2及びR3基は同一又は互いに異なるものであり、そして随意に置換された線状若しくは分岐のC1〜C12アルキル基、随意に置換されたC5〜C10シクロアルキル基、随意に置換されたC6〜C18アリール基、随意に置換されたアラルキル基又は−OR4基(ここで、R4は水素又は1〜15個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル基を表す)を表し、
ここで、該POS(A)は、1分子あたり、
・少なくとも2個の式(I)のシロキシル単位であってそれらの基のうち1個がエポキシ型の官能基(Epx)及び随意としてエーテル型の官能基(Eth)を含むものと、
・ポリオキシアルキレン(Poa)エーテル官能基を有する少なくとも1個の基を含む式(I)のシロキシル単位の少なくとも1個と
を含むものとする)
を含むもの、
(b)少なくとも1種の電解質塩、及び
(c)有効量の少なくとも1種の陽イオン及び/又はラジカル光開始剤
を含むことを特徴とする、照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項2】
組成物が次式(II)の少なくとも1種のPOS(B):
1x2y3zSiO(4-x-y-z)/2 (II)
(式中、これらの様々な記号は次の意味を有する:
x、y及びzは1≦x+y+z≦3の整数であり、
1、R2及びR3基は同一又は互いに異なるものであり、そして随意に置換された線状若しくは分岐のC1〜C12アルキル基、随意に置換されたC5〜C10シクロアルキル基、随意に置換されたC6〜C18アリール基、随意に置換されたアラルキル基又は−OR4基(ここで、R4は水素又は1〜15個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル基を表す)を表し、
ここで、該POS(B)は、1分子あたり、エポキシ型の官能基(Epx)及び随意としてエーテル型の官能基(Eth)を含む少なくとも2個のシロキシル単位を含むものとする)
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項3】
随意としてエーテル型官能基(Eth)を有し得るエポキシ型官能基(Epx)を有する基が、次の基:
【化1】

から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物
【請求項4】
ポリオキシアルキレン(Poa)エーテル基がポリオキシエチレンエーテル及び/又はポリオキシプロピレンエーテル型のものであることを特徴とする、請求項1に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項5】
POS(A)が、式RSiO3/2(T)の単位を随意として含み得る次の一般式(VIII):
【化2】

(これらの式において、
・記号Rは同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれ随意として置換された線状若しくは分岐のC1〜C12アルキル基、随意として置換されたC6〜C18アリール基、随意として置換されたC5〜C10シクロアルキル基又は随意として置換されたアラルキル基を表し、
・記号Zは同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれヒドロキシル基又は1〜15個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルコキシル基を表し、
・記号R'は同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれ2〜50個の炭素原子を含む基を表し、
・記号Poaは同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれポリオキシアルキレンエーテル型の基を表し、
・記号R"は同一又は互い異なるものであり、そしてそれぞれ2〜50個の炭素原子を含む基であって随意として−O−エーテル型の官能基を含むことができるものを表し、
・記号(Epx)はエポキシ官能基を表し、ここで、この官能基は、R"炭化水素鎖の末端として存在する次のタイプ:
【化3】

の官能基であるか、又は、R"炭化水素鎖の中間位置に存在する次のタイプ:
【化4】

の官能基であるかのいずれかであり、ここで、このエポキシ官能基のこの中間位置は、該鎖の環状部分、特に5〜7員環上に存在することができるものとし、
・記号Aは同一又は互いに異なるものであり、そしてそれぞれ−R、H、−R"−Epx及び−OR4(ここで、R4は水素又は1〜15個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基を表す)から選択される1価の基を表し、
・mは0以上、好ましくは5〜200、さらに好ましくは10〜100の整数又は分数であり、
・nは0〜5に変化する整数又は分数であり、
・oは1以上、好ましくは1〜100、より好ましくは5〜30の整数又は分数であり、
・pは2以上、好ましくは3〜200、さらに好ましくは10〜40の整数又は分数であり、
・qは0以上、好ましくは0〜10の整数又は分数である)
の本質的に線状のランダム又はブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項6】
数m、o及びpが、次の条件:
比(m+n+p+q)/o≦10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜5
を満足するように選択されることを特徴とする、請求項5に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項7】
−R"−Epx型の基が、請求項3に定義されるような(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)基から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項8】
−R'−Poa基が、−(CH23−O−(CH2CH2−O)m−CH3、−(CH22−O−(CH2CH2−O)m−CH3、−(CH23−O−(CH(CH3)−CH2−O)m−CH3及び−(CH22−O−(CH(CH3)−CH2−O)m−CH3(ここで、m≦14である)から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項9】
電解質塩(b)が、
・金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン及びグアニジニウムイオンよりなる群から選択される陽イオン、及び
・塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、硝酸イオン、AsF6-、PF6-、ステアリルスルホン酸イオン、トリフルオルメタンスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、R4SO3-、(R4SO2)(R5SO2)N-及び(R4SO2)(R5SO2)(R6SO2)C-(それぞれの式において、R4、R5及びR6基は同一又は異なるものであり、そして電子求引基を表す)よりなる群から選択される陰イオン
から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項10】
4、R5及びR6基がペルフルオルアリール又はペルフルオルアルキル型の電子吸引基であり、ここで、該ペルフルオルアルキル基は1〜6個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項9に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項11】
電解質塩(b)が、周期律表(Chem.& Eng.News,第63巻,No.5,26(1985年2月4日))の第1族及び第2族のアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される金属陽イオンを含むことを特徴とする、請求項9に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項12】
金属陽イオンがリチウム型のものであることを特徴とする、請求項11に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項13】
電解質塩(b)が次の化合物:
LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22及びこれらの化合物の混合物
よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は11に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項14】
金属陽イオンが遷移金属から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項15】
金属陽イオンがマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カルシウム及び銀よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項16】
有機電解質(d)を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項17】
有機電解質(d)が次の化合物:炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド及びポリエチレングリコールジメチルエーテルよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項16に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項18】
重合及び/又は架橋用陽イオン光開始剤が硼酸オニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項19】
前記硼酸オニウムは、その陽イオン部分が、
(a)次式(IX):
[(R1n−A−(R2m+ (IX)
(式中、
・Aは、例えば、I、S、Se、P又はNのような第15〜17族の元素を表し、
・R1はC6〜C20炭素環式又は複素環式アリール基を表し、ここで、該複素環式基はヘテロ原子として窒素又は硫黄を含むことができるものとし、
・R2は、R1又はアルキル基若しくは線状若しくは分岐C1〜C30アルキル基を表し、ここで、該R1及びR2基は、C1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ニトロ、クロル、ブロム、シアノ、カルボキシ、エステル又はメルカプト基によって置換されていてよいものとし、
・nは1〜v+1の範囲の整数であり、ここで、vは元素Aの原子価であり、
・mは0〜v−1の範囲の整数であり、ここで、n+m=v+1であるものとする)
のオニウム陽イオン、
(b)次式(X):
(L123M)q+ (X)
(式中、
・Mは第4〜10族の金属、特に、鉄、マンガン、クロム又はコバルトを表し、
・L1はπ電子を介して金属Mに結合する配位子を表し、ここで、該配位子は、η3−アルキル、η5−シクロペンタジエニル及びη7−シクロヘプタトリエニル配位子並びに置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環を有する化合物(それぞれの環は金属Mの原子価層に3〜8個のπ電子を介して寄与することができる)から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L2は、π電子を介して金属Mに結合する配位子を表し、ここで、該配位子は、η7−シクロヘプタトリエニル配位子並びに置換されていてよいη6−ベンゼン配位子及び2〜4個の縮合環を有する化合物(それぞれの環は金属Mの原子価層に6又は7個のπ電子を介して寄与することができる)から選択されるη6−芳香族化合物から選択されるものとし、
・L3は、σ電子を介して金属Mに結合する0〜3個の同一又は異なる配位子を表し、ここで、該配位子は、CO及びNO2+から選択され、L1、L2及びL3並びに金属Mのイオン電荷が寄与する錯体の全電子電荷は正であり及び1又は2に等しいものとする)
の有機金属陽イオン、
(c)次式(XI):
【化5】

(ここで、R3基は線状又は分岐C1〜C20アルキル基を表す)
を有するオキソイソチオクロマニウム陽イオン、及び
(d)次式(XIII):
(L123M)q+ (XIII)
(式中、
・Mは第4〜10族の金属を表し、
・L1及びL2はπ電子を介して金属Mに結合する配位子を表し、
・L3は、σ電子を介して金属Mに結合する0〜3個の同一又は異なる配位子を表し、ここで、該配位子は、CO及びNO2+から選択され、
・全電子電荷qは正であり及び1又は2に等しい)
の有機金属陽イオン
から選択される式を有するものから選択されることを特徴とする、請求項18に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項20】
硼酸塩型の重合及び/又は架橋用陽イオン光開始剤は、その硼酸陰イオン部分が次式(XII):
[BXab- (XII)
(式中、
・a及びbは0〜4の範囲の整数であり、ここで、a+b=4であり、
・記号Xはハロゲン原子(塩素、弗素)(a=0〜3)及びOH官能基(a=0〜2)を表し、
・記号Rは同一又は異なるものであり、そして、
陽イオン部分が第15〜17族元素のオニウムである場合には、CF3、NO2又はCNから選択される少なくとも1個の電子求引基又は少なくとも2個の弗素原子によって置換されたフェニル基、
陽イオン部分が第4〜10族元素の有機金属錯体である場合には、弗素原子、CF3、NO2又はCNから選択される少なくとも1個の電子求引元素又は少なくとも1個の電子求引基によって置換されたフェニル基、及び/又は
陽イオン部分が何であれ、弗素原子、CF3、NO2又はCNから選択される少なくとも1個の電子求引元素又は少なくとも1個の電子吸引基によって随意に置換された少なくとも2個の芳香環を含むアリール基
を表す)
を有する式のものから選択されることを特徴とする、請求項18に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項21】
硼酸塩の陰イオン部分が、[B(C654-、[B(C64CF34-、[B(C64CF34-、[(C652BF2-、[C65BF3-、[B(C6324-、[B(C64OCF34]-よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項20に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項22】
陽イオン部分が、[(Φ)2I]+、[C817−O−Φ−I−Φ]+、[(Φ−CH32I]+、[C1225−Φ−I−Φ]+、[(C817−O−Φ)2I]+、[C817−O−Φ−I−Φ]+、[(Φ)3S]+、[(Φ)2−S−Φ−O−C817+、[CH3−Φ−I−Φ−CH(CH32+、[Φ−S−Φ−S−(Φ)2+、[(C1225−Φ)2I]+、[CH3−Φ−I−Φ−OC25+、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Fe+、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−1−メチルナフタリン)Fe+及び(η5−シクロペンタジエニル)(η6−クメン)Fe+
よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項19に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項23】
硼酸塩型の重合及び/又は架橋用陽イオン光開始剤が、[(Φ)2I]+[B(C654-、[(C817)−O−Φ−I−Φ]+[B(C654-、[C1225−Φ−I−Φ]+[B(C654-、[(C817−O−Φ)2I]+[B(C654-、[(C817)−O−Φ−I−Φ]+[B(C654-、[(Φ)3S]+[B(C654-、[(Φ)2S−Φ−O−C817+[B(C64CF34-、[(C1225−Φ)2I]+[B(C654-、[(Φ)3S]+[B(C64OCF34-、[(Φ−CH32I]+[B(C654-、[(Φ−CH32I]+[B(C64OCF34-、[CH3−Φ−I−Φ−CH(CH32+[B(C654-、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Fe+[B(C654-、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−1−メチルナフタリン)Fe+[B(C654-、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−クメン)Fe+[B(C654-及びそれらの混合物
よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項24】
200〜500nmの残存光吸収を有する1個以上の置換又は非置換芳香環を含む少なくとも1種の芳香族炭化水素光増感剤(e)を含むことを特徴とする、請求項1〜23のいずれかに記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項25】
光増感剤(e)が、
4,4'−ジメトキシベンゾイン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,8−ジヒドロキシアントラキノン、過酸化ジベンゾイル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾイン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ベンズアルデヒド、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)ケトン、ベンゾイルアセトン、
【化6】

2−イソプロピルチオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン及びそれらの混合物
よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の照射下、好ましくは化学線照射下で及び/又は電子ビームによって陽イオン及び/又はラジカル経路で重合及び/又は架橋され得る蓄電池電解質用組成物。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれかに記載の組成物を陽イオン及び/又はラジカル経路により重合及び/又は架橋させることによって得られた蓄電池用高分子電解質。
【請求項27】
請求項26に記載の高分子電解質をアノードとカソードとの間に配置してなるポリマー蓄電池。
【請求項28】
カソードの成分の少なくとも1種が次の化合物:
リチウム金属、リチウム合金、リチウム挿入物を含む無機材料及びリチウム挿入物を含むカーボネート材料
よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項27に記載のポリマー蓄電池。


【公表番号】特表2006−522432(P2006−522432A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500164(P2006−500164)
【出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000707
【国際公開番号】WO2004/091033
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【氏名又は名称原語表記】RHONE−POULENC CHIMIE
【Fターム(参考)】