説明

電車線支持用基礎鋼管材及びその製造方法

【課題】必要な耐荷重強度を有し、省スペースを図れ、雨滴の侵入による劣化を防止する基礎鋼管材を提供すること。
【解決手段】鋼管3の内部にコンクリートの硬化材3を注入し硬化させ、基礎鋼管材1を製造する。硬化材3の注入にあたり鋼管2のフランジ4を蓋板11に固定する。蓋板11のほぼ中央部にフランジ4の溝4bに嵌合する直線状の連続した突条11aを設けておく。蓋板11には、鋼管2のフランジ4の挿通孔4aの対応位置にボルト11bを設ける。蓋板11のボルト11bを挿通孔4aに挿通させてナットで締め込んでフランジに密着固定した状態で、鋼管2の内部にコンクリートを充填すれば、コンクリートの露出面には突条11aに対応する溝3aが形成される。基礎鋼管材1は、鋼管柱本体10の下端部に接続されて鋼管柱を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線を吊支するための種々の付属金具が取り付けられるアームやビームを支持する鋼管柱を構成し、地上に固定するための基礎材に関し、特に内部に補強用硬化材を充填したもの及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築・土木関係の分野においては、鋼管柱の内部にコンクリート等を充填し一体化することによって、耐荷重力と共に変形性能を高める鋼管柱とコンクリート柱との複合効果を兼備するいわゆるCFT構造の鋼管コンクリート柱が知られている。このような、鋼管コンクリート柱は、特許文献1に記載のように、鋼管の内側にコンクリート又はモルタルを充填し遠心締固めを行っている。
【特許文献1】特開平5−138641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の鋼管コンクリート柱においては、コンクリート又はモルタルの締固めを行うため比較的径の大きい鋼管を使用することとなり、電車線吊支用の支柱として鉄道レール脇の狭小スペースに適用し難く、しかも電車線を吊支するために多数立設しなければならないので、コスト面での難点がある。また、内部に硬化材を有する鋼管柱では、鋼管内に侵入した雨滴が基礎鋼管材の硬化材上に溜まり鋼管柱の劣化を早めるという問題がある。
そこで、本発明は、必要な耐荷重強度を有し、省スペースを図れ、低コストで製造でき、しかも水滴の侵入による劣化し難い基礎鋼管材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、第1の発明においては、電車線を吊支するための金具類が取り付けられるアームやビームを支持する鋼管柱を構成し、端部に鋼管柱本体10を接続するためのフランジ4を備え、地上に立設される基礎鋼管材1において、フランジ4の接続面に達するように内部にコンクリート又はモルタルなどの硬化材3を充填し、フランジ4及び硬化材3の端面に、鋼管柱本体10のフランジ10aと結合した状態で鋼管柱の内外を連通する水抜き用の通孔を形成する溝4b,3aを設けて電車線支持用基礎鋼管材1を構成した。
第2の発明においては、基礎鋼管材1の製造方法において、連続した突条11aが形成された蓋板11に、予め半径方向に溝4bを形成したフランジ4を有する鋼管2を突条11aが溝4bに合致するように密着係合させ、起立させた鋼管2の内部にコンクリート又はモルタルなどの硬化材3を充填し、硬化材3の固化後、蓋板11を取り外す方法を採用した。
第3の発明においては、蓋板11にボルト11bを設け、フランジ4のボルト孔4aに挿通してナットで締め込むことにより蓋板11を鋼管2に係合させることとした。
【発明の効果】
【0005】
本発明においては、鋼管にコンクリート又はモルタルを注入して硬化させるので、締固めを行うための設備が不要で、簡易に製造でき、しかも比較的径の小さい鋼管に適用できることとなり、電車線吊支用の支柱として鉄道レール脇の狭小スペースに低コストで立てることがてきる。また、硬化材を充填しても、鋼管内に侵入した雨滴が硬化材上に溜まることなく、溝3a,4bを通じて鋼管柱の外に伝い落ちるので鋼管の劣化を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
図1ないし図3において、基礎鋼管材1は円筒状の鋼管2の中空内部をコンクリート製の硬化材3が埋めるように構成される。鋼管2の一端部には、鋼管柱本体10と接続するために半径方向に延出するフランジ4が一体に固着されている。フランジ4には中空の鋼管柱本体10のフランジ10aもろとも接続ボルトを貫通させる軸線方向の挿通孔4aが周方向に等間隔に複数設けられている。フランジ4の接続面及び硬化材3の端面には鋼管2のほぼ中心を通る連続する溝4b,3aが設けられている。フランジ4の溝4bは、基礎鋼管材1と鋼管柱本体10とを結合した状態で鋼管柱の内外を連通させる通孔を形成する。
【0007】
この基礎鋼管材1は、図4,図5に示すように、内部にコンクリートの硬化材3を注入し、固化させることにより製造する。鋼管2に硬化材3を注入するとき、フランジ4を蓋板11に固定する。この蓋板11は矩形板材で構成され、そのほぼ中央部にはフランジ4の溝4bに嵌合し溝4b,4b間をわたす直線状の連続した一本の突条11aが形成されている。また、蓋板11には、基礎鋼管材1のフランジ4の挿通孔4aの対応位置にボルト11bが突設されている。しかして、蓋板11のボルト11bを基礎鋼管材1の挿通孔4aに挿通させてナットで締め込んでフランジ10bに密着固定した状態で、鋼管2の内部に硬化材3を充填する。硬化材3が固化した後、蓋板11を取り外し、必要な養生を施せば、基礎鋼管材1が完成する。硬化材3の露出面には突条11aに対応して溝4aに連続する溝3aが形成される。
なお、硬化材3はコンクリートのほかにモルタルなどの流動体から固体に変質し鋼管を補強する各種の材料を適用することができる。
【0008】
このように製造した基礎鋼管材1においては、図3に示すように、フランジ4と鋼管柱本体10のフランジ10aとを密着接合し、ボルトを挿通してナットを締め込むことにより接続し鋼管柱を一体に構成する。そして、基礎鋼管材1を所定の深さまで埋め込んで、鋼管柱を立設する。この鋼管柱は、硬化材3により強度が高いので、小径化により設置スペースを縮小することができ、電車線を吊支するためのアームを設けたり、レールを挟んで対向するように立設した他方の鋼管柱との間にビームを渡すための支柱にすれば、電車レール脇の狭小箇所への適用が可能になる。鋼管柱本体10のフランジ4との間には溝4bによって鋼管柱の内外を連通する透孔が形成され、雨滴の侵入などにより鋼管柱の内部に水が入っても、内部に溜まることなく硬化材4の溝4及びフランジ3の溝3aを伝わって鋼管柱の外に流れ落ちる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
この発明は、電車線を吊支するための鋼管柱の基礎部への適用に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る基礎鋼管材を適用し鋼管柱の一部を切り欠いた正面図。
【図2】図1のA−A縦面図である。
【図3】鋼管柱の分解斜視図である。
【図4】製造途上の基礎鋼管材を斜視図である。
【図5】製造途上の基礎鋼管材の縦断面である。
【符号の説明】
【0011】
1 基礎鋼管材
2 鋼管
3 硬化材
3a 溝
4 フランジ
4a 挿通孔
4b 溝
10 鋼管柱本体
10a フランジ
11 蓋板
11a 突条
11b ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車線を吊支するための金具類が取り付けられるアームやビームを支持する鋼管柱を構成し、端部に鋼管柱本体を接続するためのフランジを備え、地上に立設される基礎鋼管材において、
前記フランジの接続面に達するように内部にコンクリート又はモルタルなどの硬化材が充填され、
前記フランジ及び硬化材の端面に、鋼管柱本体のフランジと結合した状態で鋼管柱の内外を連通する水抜き用の通孔を形成する溝が設けられていることを特徴とする電車線支持用基礎鋼管材。
【請求項2】
電車線を吊支するための金具類が取り付けられるアームやビームを支持する鋼管柱を構成し、端部に鋼管柱本体に接続するためのフランジを備え、地上に立設される基礎鋼管材の製造方法において、
連続した突条が形成された蓋板に、予め内周面から外周面に至る溝を形成した前記フランジを前記突条がこの溝に合致するように密着係合させ、
起立させた前記基礎鋼管材の内部にコンクリート又はモルタルなどの硬化材を充填し、
硬化材の固化後、前記蓋板を取り外すことを特徴とする電車線支持用基礎鋼管材の製造方法。
【請求項3】
前記蓋板にはボルトが植設されており、前記鋼管柱本体を接続するためのフランジのボルト孔に挿通することにより蓋板に係合することを特徴とする請求項2に記載の電車線支持用基礎鋼管材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−184884(P2008−184884A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22055(P2007−22055)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼研究集会名 平成18年電気学会産業応用部門大会 ▲2▼主催者名 電気学会 ▲3▼開催日 平成18年8月21日
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】