説明

電車線温度検出装置

【課題】 パンタグラフの通過の妨げにならず、簡易に装着でき、十分な固着力でトロリ線やこれに接続されたリード線のような電車線に取り付けられる電車線温度検出装置を提供する。
【解決手段】 電車線温度検出装置1は、形状記憶合金製の帯板状温度センサ2と、この温度センサ2を電車線11の上面に固定するための固定金具3とを具備する。温度センサ2は、電車線11の上面に沿って延びるように配置され、電車線11の温度変化に応じて変形し、異常発熱を視認可能とする。固定金具3は、電車線11の外周形状に沿うほぼ半環状に湾曲したばね部3aと、電車線11の両側に係合するように屈折した両縁の係合部3bとを具備する。固定金具3は、電車線11の上面との間に温度センサ2の一部を挟み込んで電車線11,13上に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トロリ線やこれに接続されたリード線のような電車線の異常発熱を検出するために電車線上に取り付けられる電車線温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の圧縮接続管による接続部分の異常発熱を検知するため、温度センサ付きの電線圧縮接続管が市販されている。この電線圧縮接続管は、一端側から形状記憶合金製の帯板状の温度センサを軸線方向に延出させたもので、温度センサが接続部分の異常発熱を検知すると、延出部分が屈曲して、異常発熱を地上から視認可能とするものである。
一方、既設のトロリ線に取り付けることによって、このトロリ線の摩耗を検出することができる摩耗検出装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この摩耗検出装置は、両側面上部に長手方向に延びる溝が形成された溝付きの円形トロリ線下面の摩耗を検出するためのトロリ線摩耗検出装置であって、検知部材と、検知部材に接続されるケーブルと、検知部材をトロリ線上に保持する弾性保持具とを具備する。検知部材は、トロリ線の長手方向に間隔をおいて複数設けられる。弾性保持具は、個々の検知部材の両脚部をトロリ線の両側の溝に両側から挟みつけてこのトロリ線に保持するもので、剛性の高いプラスチック材製で、トロリ線の頂部に上から嵌められる嵌合部と、この嵌合部の両端に連なり検知部材を保持する棒状の保持部とを備える。
【特許文献1】特開2001−260717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の温度センサ付きの電線圧縮接続管は、パンタグラフに衝突するからトロリ線上には装着することができない。また、温度センサの付いていない既設の電線圧縮接続管を用いた電車線の接続部には対応不可能である。
上記摩耗検出装置における弾性保持具を温度センサの保持具にそのまま適用する場合には、十分な保持力が得られないし、複数の保持具を取り付けるとすると、装着に手間がかかるという問題点がある。
したがって、この出願に係る発明は、パンタグラフの通過の妨げにならず、簡易に装着でき、十分な固着力をもってトロリ線やこれに接続されたリード線のような電車線に取り付けることができる電車線温度検出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この出願に係る発明においては、形状記憶合金製の帯板状温度センサ2と、この温度センサ2をトロリ線11やこれに接続されたリード線13のような電車線の上面に固定するための固定金具3とを具備させて電車線温度検出装置1を構成する。温度センサ2は、電車線11,13の上面に沿ってそれの延長方向に延びるように配置され、電車線11,13の温度変化に応じて変形して電車線11,13の異常発熱を視認可能とする。固定金具3は、電車線11,13の外周形状に沿い、電車線11,13を弾性的に把持できるようにほぼ半環状に湾曲したばね部3aと、電車線11,13の両側に係合するように屈折した両縁の係合部3bとを具備する。固定金具3は、電車線11,13の上面との間に温度センサ2の一部を挟み込んで電車線11,13上に装着される。固定金具3の装着は、ばね部3aの弾性により両縁の係合部3b間を押し開くように、電車線を11,13係合部間3bに圧入させることによって行われる。固定金具3は、温度センサ2を電車線11,12上に弾性的に把持して固定する。
両側面に溝11aを有する断面ほぼ円形のトロリ線11に装着される電車線温度検出装置1における固定金具3のばね部3aは、トロリ線11の上部に沿うようにほぼ円弧状に湾曲し、両縁の係合部3bは、トロリ線11の両側の溝11aに嵌合するように屈折している。温度センサ2の、固定金具3により把持される部位は、常時は平板状でばね性を有し、固定金具3によってトロリ線11の上面との間に挟み込まれた状態において、トロリ線11の上面に沿ってばね性に抗して湾曲され、反発力によりトロリ線11と固定金具3との間に強固に保持される。
フィードイヤー12のスリーブ14を介してトロリ線11に接続されたリード線13に装着される電車線温度検出装置1においては、固定金具3のばね部3aが、リード線13に圧縮接続されたスリーブ14を把持できるように、当該スリーブ14の圧縮断面形状である六角形の連続する3辺に沿って屈曲しており、両縁の係合部3bは、六角形の隣接する他の2辺に掛かるように屈折している。
以上、添付図面の符号を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明の装置によれば、パンタグラフの通過の妨げにならず、簡易に装着でき、十分な固着力をもってトロリ線やこれに接続されたリード線のような電車線に取り付けて、有効に電車線の異常発熱を検知することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1はトロリ線上に装着される電車線温度検出装置の正面図、図2は図1におけるII−II断面図、図3は電車線温度検出装置の分解した側面図である。
【0007】
図において、トロリ線11は、両側面の上部に長手方向に延びる溝11aが形成された溝付きの断面ほぼ円形状のものである。電車線温度検出装置1は、例えばトロリ線11におけるフィードイヤー12(図5)の接続部付近に取り付けられる。
【0008】
電車線温度検出装置1は、形状記憶合金製の帯板状温度センサ2と、この温度センサ2をトロリ線11の上面に固定するための固定金具3とを具備する。
【0009】
温度センサ2は、トロリ線11の上面に沿ってトロリ線11の延長方向に延びるように配置され、トロリ線11の温度変化に応じて変形することにより、トロリ線11の異常発熱を視認可能とする。
【0010】
固定金具3は、短冊状の弾性金属板を屈曲して形成され、トロリ線11の外周形状に沿い、トロリ線11を弾性的に把持できるようにほぼ半環状に湾曲したばね部3aと、トロリ線11の両側の溝11aに係合するように屈折した両縁の係合部3bとを具備する。固定金具3は、トロリ線11の上面との間に温度センサ2の一部を挟み込むようにトロリ線11上に装着される。固定金具3をトロリ線11上に装着する際には、ばね部3aの弾性により両縁の係合部3b間を押し開くようにトロリ線11を係合部3b間に圧入させる。固定金具3は、トロリ線11への装着後、温度センサ2をトロリ線11上に弾性的に把持して強固に固定する。
【0011】
温度センサ2は、常時はトロリ線11と平行に延びているが、例えばフィードイヤー12の接続不良により生じるトロリ線11の異常発熱を検知すると、図1に仮想線で示すように不可逆的に屈曲して起立し、遠隔位置からこれを視認することができる。温度センサ2における、固定金具3により把持される部位は、常時は平板状で、ばね性を有し、固定金具3によってトロリ線11の上面との間に挟み込まれた状態において、トロリ線11の上面に沿ってばね性に抗して湾曲され、反発力によりトロリ線11と固定金具3との間に強固に保持される。
【0012】
電車線温度検出装置1は、単一の固定金具3により、十分な保持力が得られ、装着に手間がかからない。また、トロリ線11の下方へ突出しないので、パンタグラフの通過の妨げにならない。
【0013】
図4は、トロリ線11にフィードイヤー12を介して接続されたリード線13上に装着される他の実施形態の電車線温度検出装置1の正面図、図5は図4におけるV−V断面図である。図において先の実施形態と同等の構成部に同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
図において、トロリ線11に電力を供給するためのリード線13は、フィードイヤー12を介してトロリ線11に接続されている。フィードイヤー12は接続用スリーブ14を有する。リード線13の端部がスリーブ14内に挿入され、図6に示すように断面六角形状に圧縮接続される。
【0015】
電車線温度検出装置1は、帯板状の温度センサ2と、この温度センサ2をスリーブ14の圧縮部上に固定するための固定金具3とを具備する。固定金具3のばね部3aは、リード線13に圧縮接続されたスリーブ14を把持するように、当該スリーブ14の圧縮断面形状である六角形の連続する3辺に沿って半環状に屈曲している。ばね部3aの両縁の係合部3bは、六角形の隣接する他の2辺に掛かるように屈折している。
【0016】
温度センサ2は、スリーブ14と固定金具3との間に強固に保持される。温度センサ2は、常時はリード線13と平行に延びているが、リード線13の異常発熱をスリーブ14を介して検知すると、図5に仮想線で示すように不可逆的に屈曲して起立し、遠隔位置からこれを視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トロリ線上に装着される電車線温度検出装置の正面図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】電車線温度検出装置の分解した側面図である。
【図4】リード線上に装着される他の実施形態の電車線温度検出装置の正面図である。
【図5】図4におけるV−V断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 電車線温度検出装置
2 温度センサ
3 固定金具
3a ばね部
3b 係合部
11 トロリ線
11a 溝
12 フィードイヤー
13 リード線
14 スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車線の温度を検出するために電車線上に取り付けられる温度検出装置であって、
電車線の上面に沿って電車線の延長方向に延びるように配置され、電車線の温度変化に応じて変形して電車線の異常発熱を視認可能とする形状記憶合金製の帯板状温度センサと、
前記電車線の上面に前記温度センサを固定するために、電車線の上面に沿って電車線の延長方向に延びるように取り付けられる固定金具とを具備し、
前記固定金具は、前記電車線の外周形状に沿い、電車線を弾性的に把持できるようにほぼ半環状に湾曲したばね部と、電車線の両側に係合するように屈折した両縁の係合部とを具備し、電車線の上面との間に前記温度センサの一部を挟み、ばね部の弾性により両縁の係合部間を押し開くように電車線を係合部間に圧入させることによって電車線上に装着され、温度センサを電車線上に弾性的に把持して固定することを特徴とする電車線温度検出装置。
【請求項2】
前記電車線は、その両側面上部に長手方向に延びる溝が形成された溝付きの断面ほぼ円形のトロリ線であり、
前記固定金具のばね部は、前記トロリ線の上部に沿うようにほぼ円弧状に湾曲し、前記両縁の係合部は、トロリ線の両側の溝に嵌合するように屈折していることを特徴とする請求項1に記載の電車線温度検出装置。
【請求項3】
前記温度センサの少なくとも前記固定金具により把持される部位が、常時は平板状でばね性を有し、固定金具によって前記トロリ線の上面との間に挟み込まれた状態において、トロリ線の上面に沿ってばね性に抗して湾曲され、反発力によりトロリ線と固定金具との間に強固に保持されることを特徴とする請求項2に記載の電車線温度検出装置。
【請求項4】
前記電車線は、トロリ線に電力を供給するためにフィードイヤーのスリーブを介してトロリ線に接続されたリード線であり、
前記固定金具のばね部は、前記リード線に圧縮接続された前記スリーブを把持するように、当該スリーブの圧縮断面形状である六角形の連続する3辺に沿って屈曲し、前記両縁の係合部は、前記六角形の隣接する他の2辺に掛かるように屈折していることを特徴とする請求項1に記載の電車線温度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−18651(P2009−18651A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181650(P2007−181650)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)