説明

電車線路用架空線のばね式張力バランサの引出装置および断線した電車線路用架空線の復旧装置、並びにこれを用いた断線した電車線路用架空線の復旧方法

【課題】 ばね式張力バランサが引留めているちょう架線が断線したときに、これを地上へ降ろさずに、高所の設置位置において短時間で復旧できるばね式張力バランサの引出装置を提供する。
【解決手段】ばね式張力バランサの引出装置1は、高所に設置された状態のばね式張力バランサ51の内筒53の先端側を所定位置まで外筒52の先端側から引き出す装置である。引出装置1は、外筒52に離脱可能に懸架される取付部材2と、この取付部材2に離脱可能に支持される一対の油圧シリンダ3と、この油圧シリンダのロッド4を内筒53の先端側に離脱可能に結合する連結部材5と、油圧ホース7を介して油圧シリンダ3に油圧を供給するように地上に配置される油圧装置6を具備する。一対の油圧シリンダ3は、軸線を外筒52の軸線と平行に向けロッド4を外筒53の先端方向へ突出させるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インテグレート架線方式と称される電車線路用架空線の架線構造において、トロリ線を吊っているき電ちょう架線等の電車線路用架空線が落雷等で切断した場合に、これを復旧させる工事等に用いられるばね式張力バランサの引出装置と、電車線路用架空線の復旧装置並びに、これを用いて断線した電車線路用架空線を復旧させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、首都圏では、トロリ線を吊るための「ちょう架線」と電力供給のための「き電線」と兼用させた「き電ちょう架線」の下に、ハンガを介してトロリ線を吊るインテグレート架線方式と称される電車線路用架空線の架線構造が採用されている(非特許文献1参照)。インテグレート架線方式は、地上約6(m)の高さに架設された2条のき電ちょう架線の下に、ハンガを介して1条のトロリ線を吊るシンプルな架線構造である。き電ちょう架線およびトロリ線の両端は、ばね式張力バランサを介して支持構造物に引留められ、張力が調整される。引留め区間は最長で約1.6(km)、架線総重量は約10(t)にのぼり、張力は、2条のき電ちょう架線が合わせて4(t)、トロリ線1条が1.5(t)にそれぞれ調整される。ばね式張力バランサは、コイルばねを内蔵した外筒と、この外筒内に嵌挿され、ばねにより引き込み方向に付勢される内筒とを備える。内筒に接続される電車線路用架空線が温度変化等により伸縮しても、ばねの弾性により当該架空線に一定の張力が付与される(特許文献1参照)。張力バランサの設置に当たっては、所定の初期張力が得られる位置まで内筒が引き出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】東日本旅客鉄道株式会社、「建設プロジェクトを支える新技術」、[online]、[平成21年1月6日検索]、インターネット(URL:http://www.jreast.co.jp/newtech/tech09_main.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平成19年、上記インテグレート架線構造における2条のき電ちょう架線が落雷により同時に断線する事故が生じ、復旧に多大な時間を要した。復旧工事においては、張力バランサをいったん地上に下ろし、専用装置を用いて所定位置まで内筒を引き出す作業を要すること、断線により20(m)以上も引き離される切断箇所を引き寄せるのが容易でないことが、復旧を困難にする大きな要因となっている。
したがって、この出願に係る発明は、ばね式張力バランサが引留めているき電ちょう架線のような電車線路用架空線が何らかの原因で断線したときに、ばね式張力バランサを地上へ降ろすことなく、高所の設置位置において短時間で復旧することができるばね式張力バランサの引出装置と、切断箇所を引き寄せる架空線の復旧装置並びに、これを用いた電車線路用架空線の迅速な復旧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのこの出願に係る発明の張力バランサの引出装置1は、高所に設置された状態の張力バランサ51の内筒53の先端側を所定位置まで外筒52の先端側から引き出す作業を行うための装置である。この引出装置1は、外筒52に離脱可能に懸架される取付部材2と、この取付部材2に離脱可能に支持される一対の圧力シリンダ3と、この圧力シリンダのロッド4を内筒53の先端側に離脱可能に結合する連結部材5と、圧力ホース7を介して圧力シリンダ3に圧力を供給するように地上に配置される圧力装置6を具備する。一対の圧力シリンダ3は、軸線を外筒52の軸線と平行に向けロッド4を外筒53の先端方向へ突出させるように配置される。
好適には、取付部材2は、外筒52の外周上部に離脱可能に掛け止められる掛止部材8と、外筒52の先端面に当接する当接部材9とを具備し、圧力シリンダ3は、当接部材9に離脱可能に支持される。
上記課題を解決するためのこの出願に係る発明の断線した電車線路用架空線の復旧装置は、上記ばね式張力バランサの引出装置1と、断線して引き離されたちょう架線Mのような架空線の切断端部M1,M2の相互を引き寄せるための引き寄せ装置31との組み合わせからなる。引き寄せ装置31は、架空線Mの一方の切断端部M1に引留め金具32を介して接続される第1の滑車34と、架空線Mの他方の切断端部M2に引留め金具32を介して接続される第2の滑車35と、第1、第2の滑車34,35間に掛け回され、地上に係止された張線器37により滑車34,35を引き寄せるロープ36とを具備する。
好ましくは、滑車34,35の枠には、1または2以上の引留め金具32が連結されたヨーク33が接続され、引留め金具32によって、1または2以上の架空線Mを同時に引き寄せ可能に構成される。
上記課題を解決するためのこの出願に係る発明の架空線の復旧方法は、上記復旧装置を用いて断線した電車線路用架空線を復旧する方法である。この方法は、断線した電車線路用架空線Mの両端を引留めている一対のばね式張力バランサ31の一方の外筒52に取付部材2を掛け止めるステップと、この取付部材2に、外筒52の両側に沿って平行に一対の圧力シリンダ3を支持するステップと、連結部材5の中央部を張力バランサ51の内筒53の先端部に係止するステップと、連結部材5の両端部を一対の圧力シリンダ3のロッド4に接続するステップと、圧力シリンダ3に圧力を供給して内筒53の先端側を所定位置まで外筒52から引き出すステップと、架空線の両切断端部M1,M2間に引き寄せ装置31を装着し、断線した架空線Mの両側を引き寄せることにより、他方の張力バランサの内筒を所定位置まで引き出すステップと、その後、架空線の両切断端部M1,M2間をケブラー(登録商標)ロープのような比較的軽量なロープ38で接続することにより、ロープ38に架空線Mの張力を負担させるステップと、その後、引き寄せ装置31を取り外すステップと、その後、架空線の両切断端部M1,M2間を接続用線材39で接続するステップとを含む。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明のばね式張力バランサの引出装置1によれば、引留めている電車線路用架空線Mが断線した場合に、ばね式張力バランサ51を高所の設置場所から降ろすことなく、設置位置において内筒53を外筒52から引き出して、短時間で復旧することができる。
また、この出願に係る発明の断線した電車線路用架空線の復旧装置によれば、ばね式張力バランサ51の復旧を引出装置1により迅速に行い、断線して引き離された架空線Mの引き寄せ、接続を引き寄せ装置31により迅速に行うことにより、断線した電車線路用架空線の復旧作業を少ない作業人員で、短時間に迅速に行うことができる。
またこの出願に係る発明の断線した電車線路用架空線の復旧方法によれば、上記断線した架空線の復旧装置を用いて、架空線の復旧作業を小人員で、しかも短時間に迅速に行うことができる。
以上、添付図面の符号を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ばね式張力バランサへ装着した状態の引出装置の正面図である。
【図2】図1の引出装置の側面図である。
【図3】図1の引出装置の平面図である。
【図4】図1の引出装置における取付部材の正面図である。
【図5】図4の取付部材の側面図である。
【図6】図1の引出装置における油圧シリンダの正面図である。
【図7】図1の引出装置における連結部材の平面図である。
【図8】断線したちょう架線の復旧工事の概略を示す説明図である。
【図9】断線した電車線路用架空線の復旧装置における引き寄せ装置の正面図である。
【図10】図9の引き寄せ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。ちょう架線、き電ちょう架線、トロリ線等の電車線路用の架空線は、所定径間の両端において、ばね式張力バランサ51を介して支持構造物に引留められる。ばね式張力バランサ51は、基端側が支持構造物の高所に係止される外筒52と、この外筒52内に入れ子式に嵌挿され先端が外筒52の先端側へ突出するように配置される内筒53とを備える。外筒52は、ばねを内蔵し、このばねにより内筒53を外筒の基端側へ引き込む方向に付勢する。ばね式張力バランサ51は、軸線をほぼ水平に向けて支持構造物の高所に設置され、内筒53の先端側に接続されるちょう架線、き電ちょう架線、トロリ線等の電車線路用架空線が温度変化等により伸縮しても、ばねの弾性により当該架空線に一定の張力を付与する。
【0009】
引出装置1は、高所の設置位置にあるばね式張力バランサ51に装着され、それの内筒53の先端側を外筒52の先端側から所定位置まで引き出す作業を行うための装置である。
【0010】
引出装置1は、ばね式張力バランサ51の外筒52に懸架される取付部材2と、この取付部材2に支持される一対の圧力シリンダとしての油圧シリンダ3と、油圧シリンダ3のロッド4を内筒53の先端側に結合する連結部材5と、油圧ホース7を介して油圧シリンダ3に油圧を供給するように、地上に配置される油圧装置6とを具備する。油圧シリンダ3は、軸線を外筒52の軸線と平行に向け、ロッド4を外筒52の先端方向へ突出させるように、外筒52の両側に装着される。各部材は、ばね式張力バランサ51が設置された高所まで、梯子作業で個別に持ち上げ、ばね式張力バランサ51上へ組み付け、使用済み後は取り外して回収することができる。
【0011】
取付部材2は、外筒52の先端側の外周上部に掛け止められる掛止部材8と、外筒52の先端面に当接する当接部材9とを具備する。掛止部材8は、下方に開放した切欠リング状で、外筒52の先端側の外周に着脱自在に嵌合する形状である。当接部材9は、掛止部材8の先端面に固着された板状部材からなり、掛止部材8の先端に内側および外側のフランジを形成する。すなわち、当接部材9は、掛止部材8の先端から半径方向内側に張り出して外筒52の先端に当接する当接部10と、半径方向外側に張り出して油圧シリンダ3を支持する一対のシリンダ支持部11とを具備する。シリンダ支持部11は、外筒52の水平方向の直径延長線上に相対向するように配置され、外縁から外筒52の半径方向内方へ水平に向かう切り込み12と、切り込み12に連続してその終端を形成する円弧状の凹部である受け座部13とを有する。受け座部13の外周部は先端面側が座刳りされている。支持部11は、油圧シリンダ3の反力を受けて後方へ座屈しないようにリブ11aで補強されている。
【0012】
油圧シリンダ3は、当接部材9の受け座部13に着脱自在に嵌合する円錐面を持ったフランジ14を具備する。ロッド4は、先端にクレビス15を具備する。
【0013】
取付部材2の後方において外筒52の外周上部に掛け止められるシリンダ受け部材16は、油圧シリンダ3の中間部を支持する。シリンダ受け部材16は、外筒52の外周に跨るように円弧状に湾曲した取付部17と、その両端からU字状に湾曲して立ち上がった支持部18とを具備する帯板状部材である。油圧シリンダ3の中間部は、支持部18に載せ受けられる。
【0014】
連結部材5は、直交杆19とストッパ20とを具備する。直交杆19は、内筒53の先端に設けられたクレビス54の二股部間を貫通して内筒53の軸線直交方向に伸びるように装着される。ストッパ20は、直交杆19をクレビス54に対して抜け止めするための部材である。直交杆19は、中央にストッパ20が係合する凹部21を有すると共に、両端に油圧シリンダのロッド4との結合部22を有する。ストッパ20は、クレビス54の二股部を直交杆19と直交する方向に貫通してクレビス54に嵌め込まれ、ピン20aで抜け止めされる。ストッパ20が、クレビス54の内側で直交杆19の凹部21に係合するので、直交杆19はクレビス54に対して抜け止めされる。直交杆19の結合部22は、ロッド4のクレビス15に受け入れられ、ピン23で相互結合される。
【0015】
油圧装置6から油圧ホース7、逆止弁24を介して油圧シリンダ3に油圧が供給されると、ロッド4が突出し、直交杆19を介して張力バランサ51の内筒53を外筒52の先端側へ所定寸法引き出す。この引出寸法を調整することにより、現在気温における架空線の標準長さに対応させる。なお、油圧に代え、空気圧、水圧等の他の圧力装置を用いることができる。
【0016】
以上説明した引出装置1は、種々の目的に使用できる汎用性を持つが、以下に説明する引き寄せ装置31と組み合わせることにより、図8に示すように、断線したきちょう架線の復旧装置を構成することができる。
【0017】
図8において、トロリ線Tは、2条のき電ちょう架線Mの下に、ハンガHによって吊られている。トロリ線Tとき電ちょう架線M(以下「ちょう架線」という)は、それぞれ所定径間の両端(一端側のみ図示した。)で、ばね式張力バランサ51を介して支持構造物である電柱P1に引留められている。2条のちょう架線Mが何らかの原因で断線し、切断端部M1,M2が地上に垂れ下がっている。
【0018】
図8ないし図10に示すように、引き寄せ装置31は、ちょう架線の一方の切断端部M1に引留め金具32、ヨーク33を介して接続される第1の二連滑車34と、ちょう架線の他方の切断端部M2に引留め金具32、ヨーク33を介して接続される第2の二連滑車35とを具備する。ロープ36の一端が、第1の二連滑車34の枠34aに係止され、中間が第1および第2の二連滑車34,35間に掛け回され、他端側が電柱P2に係止された張線器37に掛けられる。なお、ロープ36の一端は、構築物等に係止することもできる。
【0019】
引出装置1と引き寄せ装置31からなるちょう架線の復旧装置を用いて断線したちょう架線を復旧する工法を説明する。
【0020】
まず、電柱P1上で、断線したちょう架線Mの両端を引留めている一対のばね式張力バランサ51の一方の外筒52に、引出装置1の取付部材2とシリンダ受け部材16を掛け止め、これに、外筒52の両側に沿って平行に一対の油圧シリンダ3を支持する。連結部材5を構成する直交杆19の中央部をばね式張力バランサの内筒のクレビス54に係止し、両端部を一対の油圧シリンダのロッド4に接続する。油圧シリンダ3に油圧を供給して内筒53の先端側を標準位置まで外筒52から引き出す。油圧を停止しても、逆止弁24により引き出し位置は保持される。
【0021】
次いで、ちょう架線の両切断端部M1,M2間に引き寄せ装置31を装着し、両切断端部M1,M2を引き寄せることにより、張力をとりながら、ちょう架線Mを標準架高まで引き上げる。さらに張力をとり、図示しない他方の張力バランサの内筒を標準位置まで引き出す。両切断端部M1,M2間にロープ38を接続し、張線器37を緩めてロープ38に張力を負担させる。ロープ38は軽量で、高所作業でも容易に取り扱うことができる。次いで、滑車34,35を取り外し、両切断端部M1,M2間に、ロープ38の外側から通電用線材である接続用の線条39を接続する。線条39の接続後、切断端部M1,M2の余長部分を切断し、復旧作業が完了する。事後の本復旧までの間、ロープ38が張力を負担し、接続用の線条39には張力がかからない。
【0022】
この工法により、復旧作業時間の大幅な短縮、作業員の大幅削減、高所作業の大幅減少が図れ、また軌陸車の導入が不要となった。なお、本発明はちょう架線Mに限らず、電車線路用に架設される他の各種の架空線に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 引出装置
2 取付部材
3 油圧シリンダ(圧力シリンダ)
4 ロッド
5 連結部材
6 油圧装置
7 油圧ホース
8 掛止部材
9 当接部材
10 当接部
11 シリンダ支持部
11a リブ
12 切り込み
13 受け座部
14 フランジ
15 クレビス
16 シリンダ受け部材
17 取付部
18 支持部
19 直交杆
20 ストッパ
20a ピン
21 凹部
22 結合部
23 ピン
24 逆止弁
31 引き寄せ装置
32 引留め金具
33 ヨーク
34 二連滑車
34a 枠
35 二連滑車
36 ロープ
37 張線器
38 ロープ
39 接続用線条(通電用線材)
51 ばね式張力バランサ
52 外筒
53 内筒
54 クレビス
M ちょう架線(き電ちょう架線)
M1 切断端部
M2 切断端部
P1 電柱(支持構造物)
P2 電柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばねを内蔵し基端側が支持構造物の高所に係止される外筒と、この外筒内に入れ子式に嵌挿され先端が外筒の先端側へ突出するように配置され前記ばねにより外筒の基端側へ引き込む方向に付勢される内筒とを備え、内筒の先端側に接続される電車線路用架空線が温度変化等により伸縮しても、ばねの弾性により当該架空線に一定の張力を付与するばね式張力バランサの当該内筒の先端側を高所の設置位置において所定位置まで外筒の先端側から引き出す作業を行うための装置であって、
前記外筒に離脱可能に懸架される取付部材と、この取付部材に離脱可能に支持され軸線を外筒の軸線と平行に向けロッドを外筒の先端方向へ突出させる一対の圧力シリンダと、前記ロッドを前記内筒の先端側に離脱可能に結合する連結部材と、圧力ホースを介して前記圧力シリンダに圧力を供給するように地上に配置される圧力装置を具備することを特徴とする電車線路用架空線のばね式張力バランサの引出装置。
【請求項2】
前記取付部材は、前記外筒の外周上部に離脱可能に掛け止められる掛止部材と、外筒の先端面に当接する当接部材とを具備し、
前記圧力シリンダは、前記当接部材に離脱可能に支持されることを特徴とする請求項1に記載の電車線路用架空線のばね式張力バランサの引出装置。
【請求項3】
前記外筒の外周上部の前記取付部材より基端側に掛け止められ、両端で前記一対の圧力リンダを支持するシリンダ受け部材をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の電車線路用架空線のばね式張力バランサの引出装置。
【請求項4】
前記連結部材は、前記内筒の先端に設けられたクレビスを貫通して内筒の軸線直交方向に伸びるように装着され両端に前記圧力シリンダのロッドが結合される直交杆と、この直交杆をクレビスに対して抜け止めするためのストッパとを具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の電車線路用架空線のばね式張力バランサの引出装置。
【請求項5】
請求項1に記載のばね式張力バランサの引出装置と、断線して引き離された電車線路用架空線の切断端部相互を引き寄せるための引き寄せ装置との組み合わせからなり、
前記引き寄せ装置は、前記架空線の一方の切断端部に接続される第1の滑車と、当該架空線の他方の切断端部に接続される第2の滑車と、第1、第2の滑車間に掛け回され、地上に係止された張線器により牽引されて両滑車を引き寄せるロープとを具備することを特徴とする断線した電車線路用架空線の復旧装置。
【請求項6】
前記滑車の枠には、1または2以上の引留め金具が連結されたヨークが接続されており、前記引留め金具により1または2以上の電車線路用架空線を同時に引き寄せ可能に構成されることを特徴とする請求項5に記載の断線した電車線路用架空線の復旧装置。
【請求項7】
請求項5に記載の断線した電車線路用架空線の復旧装置を用いて当該架空線を復旧する方法であって、
断線した前記架空線の両端を引留めている一対のばね式張力バランサの一方の外筒に前記取付部材を掛け止めるステップと、
この取付部材に、前記外筒の両側に沿って平行に一対の圧力シリンダを支持するステップと、
前記連結部材の中央部を前記張力バランサの内筒の先端部に係止するステップと、
前記連結部材の両端部を前記一対の圧力シリンダのロッドに接続するステップと、
前記圧力シリンダに圧力を供給して内筒の先端側を所定位置まで外筒から引き出すステップと、
前記架空線の両切断端部間に前記引き寄せ装置を装着し、断線した当該架空線の両側を引き寄せることにより、他方の前記張力バランサの内筒を所定位置まで引き出すステップと、
他方の前記張力バランサの内筒を所定位置まで引き出した後、前記架空線の両切断端部間をロープで接続するステップと、
前記架空線の両切断端部間をロープで接続した後、前記引き寄せ装置を取り外すことにより、ロープに当該架空線の張力を負担させるステップと、
前記引き寄せ装置を取り外した後、前記架空線の両切断端部間を接続用線材で接続するステップと、
を含むことを特徴とする断線した電車線路用架空線の復旧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−173545(P2010−173545A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20125(P2009−20125)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)