説明

静電容量方式タッチパネル電極用積層体

【課題】静電容量方式タッチパネル用電極の基材として用いた際に、透明導電膜のパターンが見え難く、優れた視認性を得ることができる積層体を提供すること。
【解決手段】透明基材の少なくとも片面に、ハードコート層、高屈折率層、および低屈折率層がこの順序で積層された積層体であって、高屈折率層は、樹脂成分に、酸化チタン粒子および酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有し、厚みが20nm以上、70nm以下であり、屈折率が1.72以上であり、低屈折率層は、厚みが10nm以上、50nm以下であり、屈折率が上記高屈折率層の屈折率よりも0.26以上低い、静電容量方式タッチパネル電極用積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式タッチパネルの電極に用いられる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
入力位置を検出するための透明タッチパネルの構成は、従来から種々検討されているが、一例として静電容量方式の透明タッチパネルが知られている。静電容量方式とは、例えば、特許文献1に記載のごとく、それぞれ所定のパターン形状を有する透明導電膜を備えた一対の透明面状体の間に誘電体層が介在されて構成されており、指などが操作面に触れると、人体を介して接地されることによる静電容量の変化を利用して、タッチ位置を検出することができるというものである。
【0003】
このような透明タッチパネルは、液晶表示装置やCRTなどの表面に装着して用いられるが、静電容量方式の透明タッチパネルにおいては、透明面状体に形成された透明導電膜のパターン形状が目立ってしまい、視認性の低下を招いていた。その対策として、例えば特許文献2〜5の報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−173238号公報
【特許文献2】特開2010−76232号公報
【特許文献3】特開2010−208169号公報
【特許文献4】特開2011−37258号公報
【特許文献5】特開2011−44145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2〜5では、いずれも近年要求されている、透明導電膜のパターン形状に係る視認性の要求については、不十分である。
そこで本発明は、静電容量方式タッチパネル用電極の基材として用いた際に、透明導電膜のパターンが見え難く、優れた視認性を得ることができる積層体を提供することを目的とする。
【0006】
また、高屈折率層の屈折率を高くするためには、高屈折率層中において高屈折率粒子が占める体積割合を増やすことが好ましいが、その反面バインダー成分が少なくなる等によって、ハードコート層と高屈折率層との間の密着性が低くなるという問題がある。
そこで本発明は、上記目的に加えて、ハードコート層と高屈折率層との密着性に優れた、静電容量方式タッチパネル電極用積層体を提供することを、望ましい目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を達成するために、以下の構成を採用するものである。
1.透明基材の少なくとも片面に、ハードコート層、高屈折率層、および低屈折率層がこの順序で積層された積層体であって、
高屈折率層は、樹脂成分に、酸化チタン粒子および酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有し、厚みが20nm以上、70nm以下であり、屈折率が1.72以上であり、
低屈折率層は、厚みが10nm以上、50nm以下であり、屈折率が上記高屈折率層の屈折率よりも0.26以上低い、
静電容量方式タッチパネル電極用積層体。
2.高屈折率層における粒子の含有量が、高屈折率層の体積に対して、20体積%以上、50体積%以下である、上記1に記載の静電容量方式タッチパネル電極用積層体。
3.ハードコート層表面における水接触角が70〜90度、n−ドデカン接触角が20度以下である、上記1または2に記載の静電容量方式タッチパネル電極用積層体。
4.低屈折率層の厚み斑が15%以下であり、かつ高屈折率層の厚み斑が15%以下である、上記1〜3のいずれか1項に記載の静電容量方式タッチパネル電極用積層体。
5.透明基材の片面に、ハードコート層、高屈折率層、および低屈折率層がこの順序で積層された積層体であって、
透明基材の他方の面に、アンチブロッキング層を有し、該アンチブロッキング層が、平均粒径0.01μm以上、1μm以下の粒子を、アンチブロッキング層の質量を基準として0.01質量%以上、10質量%以下含有する、
上記1〜4のいずれか1項に記載の静電容量方式タッチパネル電極用積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、静電容量方式タッチパネル電極用として用いた際に、透明導電膜のパターンが見え難く、優れた視認性を得ることができる積層体を提供することができる。
また本発明の好ましい態様によれば、さらにハードコート層と高屈折率層との密着性に優れた、静電容量方式タッチパネル電極用積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の積層体は、透明基材の少なくとも片面に、ハードコート層、高屈折率層、および低屈折率層がこの順序で積層された積層体である。
以下、本発明の積層体を構成する各構成成分について説明する。
なお、以下において、透明基材の製膜機械軸方向を縦方向または長手方向またはMDと呼称する場合がある。また、該製膜機械軸方向と透明基材の厚み方向とに垂直な方向を横方向または幅方向またはTDと呼称する場合がある。
【0010】
[透明基材]
本発明における透明基材は、本発明の目的を阻害しない範囲において特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスチレン(PS)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリアクリル(PAC)、ポリアミド(PA)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂等からなる透明樹脂フィルム(透明樹脂板および透明樹脂シートを含む。)を挙げることができる。これら透明樹脂フィルムの中でも、透明性等の光学特性、機械特性、耐熱性、価格のバランスが良いという観点から、ポリエステルからなるものが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートからなる透明樹脂フィルムが好ましく、さらにこれらからなる一軸配向もしくは二軸配向透明樹脂フィルムが好ましい。
【0011】
また、本発明における透明基材としては、ガラス板等の透明無機基材を挙げることもできる。
透明基材の厚みは特に限定はされないが、静電容量方式タッチパネル用電極として適した剛性があり、かつハンドリング性が良好であるという観点から、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは75μm以上であり、また、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは188μm以下、特に好ましくは130μm以下である。
【0012】
透明基材の屈折率は、1.60以上、1.75以下であることが好ましい。ここで透明基材の屈折率は、板状またはシート状またはフィルム状等の透明基体面内における任意の一方向の屈折率と、かかる任意の一方向と透明基体面内で直交する方向の屈折率との平均の屈折率である。好ましくは、縦方向と横方向の屈折率の平均値である。屈折率をかかる範囲とすることによりハードコート層形成時の干渉斑抑制効果に優れる。屈折率が低すぎると干渉斑低減効果が低くなる。かかる観点から、さらに好ましくは1.63以上、特に好ましくは1.65以上である。他方、高すぎても干渉斑低減効果が低くなる。かかる観点からは、さらに好ましくは1.73以下、特に好ましくは1.70以下である。透明基材の屈折率は、それを構成する材料や添加剤の選択、また延伸配向させる際は、その延伸条件を調整することにより、容易に調整することができる。例えば、上記屈折率を達成する透明基材として、二軸延伸PETフィルムや二軸配向PENフィルムを好ましく挙げることができる。
【0013】
また、本発明における透明基材は、ハードコート層との密着性を向上したり、ハードコート層形成時の干渉斑を抑制したりする等の目的において、後述するアンカー層を有することが好ましい。
【0014】
[ハードコート層]
本発明の積層体は、上述の透明基材の少なくとも片面に、ハードコート層を有する。かかるハードコート層を有することにより、透明基材表面の傷を抑制することができる。また、透明基材から析出する低分子成分(例えば、透明基体がポリエステルからなる透明樹脂フィルムである場合は、ポリエステルのオリゴマー成分等)を抑制することができる。さらに、ハードコート層表面が平滑であることにより、その上に形成する高屈折率層および低屈折率層の厚み斑を良好にすることができる。
【0015】
本発明におけるハードコート層は、静電容量方式タッチパネル電極用として用いる際に、工程でのすり傷防止および熱処理時のオリゴマー析出防止のために、適度な硬度を有することが好ましく、厚みは、かかる適度な硬度を達成すべく選択することが好ましい。
【0016】
ハードコート層の厚みは、かかるハードコート層の硬度が鉛筆硬度で好ましくはH以上、さらに好ましくは2H以上、特に好ましくは3H以上を確保できる程度の厚みであれば特に制限されない。すなわち、かかる厚みは、好ましくは0.5μm以上である。厚みを厚くすることで硬度が硬くなる傾向にあり、また、凝集破壊による傷だけでなく塑性変形である凹みも目立ち難くなる傾向にある。さらに、透明基材表面の凹凸を覆い隠し、ハードコート層表面をより平滑にすることができる。かかる観点から、ハードコート層の厚みは、さらに好ましくは0.8μm以上、特に好ましくは1.2μm以上である。他方、ハードコート層の厚みが厚すぎると、ハードコート層の硬化時等、熱がかかる際において、ハードコート層が収縮し、フィルムがカールしやすくなる傾向にある。また、過剰な厚みは裁断性に劣り加工時に割れ等が発生しやすくなったり、生産性に劣ったりする傾向にある。かかる観点から、ハードコート層の厚みは、好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下、特に好ましくは1.7μm以下である。
【0017】
本発明において、ハードコート層の屈折率は、1.45以上、1.75以下であることが好ましい。かかる範囲とすることにより透明性および干渉斑低減の向上効果に優れる。屈折率が低すぎると、透明基材との屈折率差が大きくなり干渉斑低減の向上効果が低くなる。かかる観点から、さらに好ましくは1.48以上、特に好ましくは1.50以上である。他方、高すぎると基材との屈折率差が大きくなり干渉斑低減の効果が低くなるとともに、色相が黄色くなる傾向となる。かかる観点からは、さらに好ましくは1.70以下、特に好ましくは1.67以下である。かかる屈折率は、所望の屈折率になるように、既知の屈折率の無機粒子や有機粒子を添加することにより容易に調整することができる。
【0018】
本発明においては、高屈折率層や低屈折率層を均一に塗布し、これらの厚み斑を低減するために、ハードコート層表面の粗さは、中心面平均粗さ(Ra)で、好ましくは1.0nm以下、さらに好ましくは0.8nm以下である。また、10点平均粗さ(Rz)で、好ましくは10nm以下、さらに好ましくは8nm以下である。
【0019】
(放射線硬化性樹脂1)
本発明においては、上記ハードコート層は、主たる成分として、熱硬化性樹脂や放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂より形成されてなる。本発明においては、ハードコート層の硬度の観点や、得られる積層体の平坦性の観点から、放射線硬化性樹脂が好ましく、中でも紫外線硬化性樹脂が好ましい。本発明におけるハードコート層は、主たる成分として以下の放射線硬化性樹脂(放射線硬化性樹脂1と呼称する場合がある。)よりなることが好ましい。なお、ここで「主たる成分として」とは、ハードコート層の質量を基準として、50質量%以上、好ましくは80質量%以上であることを意味する。
【0020】
放射線硬化性樹脂は、放射線により架橋し、硬化させることができるモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。本発明における放射線硬化性樹脂1としては、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができ、かつ透明性の向上効果を高くすることができるという観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマー等の多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを表わす。
【0021】
かかる多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であるが、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有することが好ましく、そのような態様とすることによって、放射線硬化性樹脂の架橋反応が進行しやすくなり、表面硬度の向上効果を高くすることができる。なお、本発明における多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基以外の他の重合性官能基を含有してもよい。なお、ここで「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を表わす。
【0022】
分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート)、メラミン(メタ)アクリレート等のモノマー、およびこれらのうち少なくとも1種からなる2〜20量体程度のオリゴマー、これらのうち少なくとも1種からなるポリマーを挙げることができる。このような多官能(メタ)アクリレート化合物は、一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0023】
多官能(メタ)アクリルオリゴマー/ポリマーの繰り返し単位数は、特には制限されないが、例えば数平均分子量で150〜1000000、好ましくは1000〜500000であることが好ましく、塗布外観の向上効果を高くすることができる。数平均分子量が150に満たない場合や、1000000を超える場合は、粘度が低すぎたり高すぎたりする傾向にあり、塗布外観の向上効果が低くなる傾向にある。
【0024】
以上のような、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えばアロニックスM−400、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、TO−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成製)、KAYARD D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上、日本化薬製)、ニカラックMX−302(三和ケミカル社製)等の市販品として入手することができる。
【0025】
(ハードコート層表面における接触角)
本発明におけるハードコート層は、その上に設ける高屈折率層との密着性を向上し、それにより後工程における加工性や、静電容量方式タッチパネルの耐久性を向上できるという観点から、その表面における水接触角が70〜90度、かつn−ドデカン接触角が20度以下であることが好ましい。水接触角が低すぎる場合は、水分が吸着しやすくなり、塗工斑が発生しやすくなる傾向にあるため、その部分の密着性が低下する傾向にある。他方高すぎる場合は、塗工時にはじきやすくなるために密着性が低下する傾向にある。また、高屈折率層を塗工する際の濡れ性に劣る傾向にある。また、n−ドデカン接触角が高すぎる場合は、塗工時にはじきやすくなるために密着性が低下する傾向にある。また、高屈折率層を塗工する際の濡れ性に劣る傾向にある。このような観点から、ハードコート層表面における接触角は、水接触角が75〜88度、かつn−ドデカン接触角が15度以下であることがさらに好ましく、水接触角が80〜87度、かつn−ドデカン接触角が10度以下であることが特に好ましい。
上記のようなハードコート層表面における接触角の態様を達成するには、例えば以下の放射線硬化性樹脂2を用いる方法を挙げることができ、本発明において好ましい。
【0026】
(放射線硬化性樹脂2)
かかる放射線硬化性樹脂2は、前述の放射線硬化性樹脂1における多官能(メタ)アクリレートポリマーの主鎖もしくは側鎖に(ポリ)アルキレングリコール成分が共重合された構造を形成しうる(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化性樹脂である。かかる(ポリ)アルキレングリコール成分は、繰り返し構造を有さずにモノ(アルキレングリコール)であってもよいし、繰り返し構造を有してオリゴ(アルキレングリコール)あるいはポリ(アルキレングリコール)であってもよい。(ポリ)アルキレングリコール成分の具体例としては、(ポリ)エチレングリコールや(ポリ)プロピレングリコール等を好ましく例示することができ、中でも(ポリ)エチレングリコールが好ましい。(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化性樹脂の好ましい態様としては、(ポリ)アルキレングリコール成分の両末端に(メタ)アクリロイル基を官能基として有する化合物を含む態様(ハードコート層の形成時において、かかる化合物が架橋反応により架橋し、硬化する。)が挙げられる。また、硬化後に多官能(メタ)アクリレート成分と(ポリ)アルキレングリコール成分とがランダム共重合、または特に好ましくはブロック共重合した構造を形成しうるものも好ましく挙げられる。なお、ここで「多官能(メタ)アクリレート成分」とは、上述の多官能(メタ)アクリレート化合物における多官能(メタ)アクリレートモノマーに由来するポリマー中のモノマーユニットを表わす。
【0027】
(ポリ)アルキレングリコール成分は、数平均分子量が、好ましくは46〜1000000、さらに好ましくは60〜500000である。数平均分子量が上記数値範囲にあると、ハードコート層表面における水接触角およびn−ドデカン接触角を、本発明が好ましく規定する範囲とすることが容易となる。数平均分子量が高すぎる場合は、水接触角が高くなる傾向にある。また、ハードコート層を形成するための塗液(以下、HC剤と呼称する場合がある。)の粘度が高くなる傾向にあるため、塗工が困難となる傾向にある。また、極性の低い溶剤に溶けにくくなる傾向にあるため、HC剤の扱いが困難となる傾向にある。
【0028】
(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量は、多官能(メタ)アクリレート成分の質量に対して、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量が上記範囲にあると、ハードコート層表面における水接触角とn−ドデカン接触角とを、本発明が好ましく規定する範囲とすることが容易となる。(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量を増やすと、水接触角は小さくなる傾向にあるが、n−ドデカンの接触角にはあまり大きな影響を及ぼさない。そのため、(ポリ)アルキレングリコール成分を用いる方法によると、ハードコート層に界面活性剤を添加するのみでは得られない水接触角の範囲とn−ドデカン接触角の範囲の組み合わせを得ることができる。
【0029】
以上のような放射線硬化性樹脂2の数平均分子量は、好ましくは100〜1000000、さらに好ましくは1000〜500000である。数平均分子量が150に満たない場合や、1000000を超える場合は、粘度が低すぎたり高すぎたりする傾向にあり、塗布外観の向上効果が低くなる傾向にある。
上記のような態様を有する(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化性樹脂は、市販品を用いることもでき、かかる市販品としては、例えばKZ6404(JSR株式会社製)、ルシフラールG−004(日本ペイント工業製)、ビームセット1460(荒川化学工業製)等が挙げられる。
【0030】
上述したような接触角の調整は、ハードコート層表面の濡れ性を調整し得る界面活性剤のような独立した添加剤の単純な添加によっては達成できない。すなわち、ハードコート層に界面活性剤を添加した場合は、塗工・硬化後のハードコート層表面には界面活性剤の親水基と疎水基とが混在してしまうため、水に対する濡れ性と油(n−ドデカン)に対する濡れ性とが同時に低くなってしまい、すなわち水接触角とn−ドデカン接触角とが同時に高くなってしまう。一方、界面活性剤を添加していない一般的なアクリル系のハードコート層は、n−ドデカン接触角は適度に低く好ましいが、水接触角が低すぎる。このように、従来通常のハードコート層やそれに界面活性剤を添加したものでは、本発明が好ましく規定する接触角の範囲を実現できず、すなわち優れた密着性が得られない。一方、上述したような(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化性樹脂を用いる方法においては、(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量を増やして水接触角を低くしても、n−ドデカン接触角にはあまり影響を及ぼさない。この特性を利用して、調整することにより、上記のような水接触角およびn−ドデカン接触角を同時に達成することが可能となる。
【0031】
[高屈折率層および低屈折率層]
(高屈折率層)
本発明における高屈折率層は、ハードコート層と低屈折率層との間に配置されている。
かかる高屈折率層は、屈折率が1.72以上、好ましくは1.74以上の層であり、これにより視認性に優れる。なお、屈折率の上限は、上に形成される透明導電層(例えばITO)の屈折率を超えない範囲が好ましく、例えば2.0以下が好ましい。
【0032】
高屈折率層は、樹脂成分に、酸化チタン粒子および酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有している。ここで酸化チタン粒子および酸化ジルコニウム粒子は、高屈折率層において好ましい屈折率等を勘案して、結晶形態としては任意に選択することができる。酸化チタン粒子としては、好ましくは屈折率2.5〜2.7であり、また好ましくは比重3.9〜4.5である。酸化ジルコニウム粒子としては、好ましくは屈折率2.0〜2.4であり、また好ましくは比重5.6〜6.0である。
【0033】
金属酸化物粒子の含有量は、金属酸化物粒子の種類や大きさ、および高屈折率層を構成する他の構成成分の屈折率等に応じて、層の屈折率が上記範囲となるような量を適宜選択すればよいが、高屈折率層の体積に対して20体積%以上であることが好ましい。このような含有量とすることによって、高屈折率層の屈折率を上記範囲としやすくなる。かかる観点から、含有量は、25体積%以上がさらに好ましい。他方、含有量が多すぎると膜の強度が低下する傾向にあるため、かかる観点からは、金属酸化物粒子の含有量は例えば50体積%以下が好ましく、40体積%以下がより好ましい。
【0034】
かかる金属酸化物粒子の平均粒径は特に限定されないが、高屈折率層の層厚みを均一にする観点から、1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。また、40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、25nm以下がさらに好ましい。また、粒径や種類の異なる粒子を2種類以上併用してもよい。
【0035】
金属酸化物粒子は、上述した好ましい添加量の程度に多量に添加するにあたっては、粒度分布が狭いことが好ましい。粒度分布が狭いと、それにより凝集等を原因とする2次粒子の生成を抑制することができ、高屈折率層の屈折率を上記範囲とするために金属酸化物粒子の含有量を多くしたとしても、良好な分散状態で塗布・層形成しやすくなり、均一な膜を得やすくなる。かかる粒度分布としては、粒径のメジアン径D50に対して、好ましくはD90≦D50×3、D10≧D50/3を満たす範囲、さらに好ましくはD90≦D50×2、D10≧D50/2を満たす範囲である。
【0036】
高屈折率層における樹脂成分としては、従来塗布層のバインダー樹脂成分として公知の樹脂等を採用することができる。中でも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリエステル変性アクリル樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂成分が好ましい。また本発明においては、耐擦傷性および密着性の向上効果に優れるという観点から、樹脂成分として、ハードコート層の項において上述した硬化性樹脂を採用することが特に好ましい。かかる硬化性樹脂の態様としては、好ましい態様も含めて、ハードコート層の項で述べた態様と同様である。
【0037】
(低屈折率層)
本発明における低屈折率層は、高屈折率層の上に配置され、タッチパネルの電極とする際に、さらにこの上にITO等からなる透明導電層が設けられる層である。
かかる低屈折率層の屈折率は、高屈折率層の屈折率よりも0.26以上低いことが必要である。このような態様とすることにより視認性に優れる。かかる屈折率差は大きい方が視認性に優れる傾向にあり、かかる観点から、低屈折率層の屈折率は、高屈折率層の屈折率よりも、好ましくは0.27以上低いこと、さらに好ましくは0.28以上低いことである。他方、屈折率差が大きすぎると、屈折率を調整するための成分(例えばシリカ粒子等)の頻度が多くなる傾向にあり、密着性の向上効果が低くなる。そのため、屈折率差は0.45以下であることが好ましい。
【0038】
上記屈折率差を満たす低屈折率層の屈折率としては、好ましくは1.35以上、さらに好ましくは1.39以上であり、好ましくは1.47以下、さらに好ましくは1.46以下である。このような屈折率とすることで、視認性の向上効果を高くすることができる。
上記のような低屈折率層としては、例えば樹脂成分にシリカ粒子を含有する層、樹脂成分にフッ素樹脂を含有する層等、樹脂成分に低屈折率成分を含有する層を挙げることができる。かかる態様において、層を構成する樹脂成分としては、高屈折率層の項において上述した樹脂成分を用いることができる。また、耐擦傷性の観点から、樹脂成分として、ハードコート層の項において上述した硬化性樹脂を採用することが特に好ましい。かかる硬化性樹脂の態様としては、好ましい態様も含めて、ハードコート層の項で述べた態様と同様である。
【0039】
また、他の低屈折率層の構成として、シリコーン樹脂層等、低屈折率成分からなる層を挙げることができる。
低屈折率層が、樹脂成分に低屈折率成分を含有する層である場合は、かかる低屈折率成分の含有量は、樹脂である場合はその種類、粒子である場合はさらにその大きさ、および他の構成成分(例えば層を構成する樹脂成分等)の屈折率等に応じて、層の屈折率が上記範囲となるような量を適宜選択すればよいが、例えば、低屈折率層の質量に対して10質量%以上、60質量%以下が好ましい。このような含有量とすることによって、低屈折率層の屈折率を上記範囲としやすくなる。かかる観点から、含有量は、30質量%以上がさらに好ましい。他方、含有量が多すぎると膜の強度が低下する傾向にあるため、かかる観点からは、微粒子の含有量は、好ましくは55質量%以下である。
【0040】
かかる微粒子の平均粒径は特に限定されないが、均一な膜厚を得る観点から、1nm以上が好ましく、3nm以上がさらに好ましい。また、50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。また、粒径や種類の異なる粒子を2種類以上併用してもよい。
【0041】
(厚み)
本発明においては、上記高屈折率層を厚み20nm以上、70nm以下で有し、かつ上記低屈折率層を厚み10nm以上、50nm以下で有する。かかる構成により、視認性を向上することができ、低屈折率層の上にパターニングされた導電層のパターンが見え難くなる。高屈折率層および低屈折率層の厚みは、厚すぎても薄すぎても視認性が低下する傾向にあるため好ましくない。このような観点から、高屈折率層の厚みは、好ましくは22nm以上であり、また好ましくは60nm以下である。また、低屈折率層の厚みは、好ましくは20nm以上である。
【0042】
また、高屈折率層の厚み斑は、15%以下であることが好ましい。このような厚み斑とすることによって視認性の向上効果を高くすることができる。厚み斑が悪いと視認性の向上効果は低くなる。また、低屈折率層の厚み斑を悪化させてしまう。かかる観点から、高屈折率層の厚み斑は、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは7%以下である。
【0043】
また、低屈折率層の厚み斑は、15%以下であることが好ましい。このような厚み斑とすることによって視認性の向上効果を高くすることができる。厚み斑が悪いと視認性の向上効果は低くなる。かかる観点から、低屈折率層の厚み斑は、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは7%以下である。
上記においては、高屈折率層の厚み斑と低屈折率層の厚み斑が、いずれも同時に上記範囲にあることが特に好ましい。これにより視認性の向上効果をさらに高くすることができる。
【0044】
[アンチブロッキング層]
本発明の積層体としては、透明基材の片面に、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層がこの順序で積層され、透明基材の他方の面に、アンチブロッキング層を有する態様を、好ましい態様として挙げることができる。かかる構成とすることにより、積層体のハンドリング性を高くすることができる。
アンチブロッキング層としては、好ましくは主たる構成成分としてハードコート層の項において上述した硬化性樹脂からなり、そこに粒子を含有している態様が好ましい。なお、硬化性樹脂としては、好ましい態様も、上記ハードコート層の項で述べた態様と同様である。
【0045】
かかる粒子の態様としては、目的の効果を奏することができれば特に限定されず、有機粒子であってもよいし、無機粒子であってもよい。有機粒子としては、シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、スチレン樹脂をアクリルで表面処理したコアシェル型粒子などの有機高分子粒子等が挙げられる。また無機粒子としては、球状シリカ粒子、アルミナ粒子、炭酸カルシウム粒子等が挙げられる。中でも、透明性を維持することができるという観点から、バインダー樹脂との屈折率が0〜0.05以内であるものを好適に用いることができる。粒子としては、脱落し難い等の観点から有機粒子が好ましく、さらに、バインダー樹脂とほぼ同じ屈折率をもつアクリル樹脂粒子が好ましい。
【0046】
また、粒子の平均粒径は、0.01μm以上、1μm以下が好ましく、ハンドリング性により優れ、また透明性をより維持しやすくなる。かかる観点から、平均粒径は、0.05μm以上がさらに好ましく、0.08μm以上が特に好ましい。また、0.5μm以下がさらに好ましく、0.12μm以下が特に好ましい。
【0047】
アンチブロッキング層における上記粒子の含有量は、アンチブロッキング層の質量を基準として、0.1質量%以上、30質量%以下が好ましく、ハンドリング性により優れ、また透明性をより維持しやすくなる。かかる観点から、含有量は、1.0質量%以上がさらに好ましく、5.0質量%以上が特に好ましい。また、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
アンチブロッキング層の厚みは、透明性と滑り性の観点から、好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上、また、好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは4.0μm以下である。
【0048】
[アンカー層]
本発明の積層体においては、透明基材とハードコート層との間、および/または、透明基材とアンチブロッキング層との間に、これらの密着性を向上したり、干渉斑を抑制したりする目的でアンカー層を有する態様が好ましい。
アンカー層は、主に、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル変性アクリル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。特に好ましくは、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂である。
アンカー層は、膜の強度や密着性を向上するために、架橋剤を含有することが好ましい。かかる架橋剤としては、特に好ましくはオキサゾリン基を有するアクリルポリマーが挙げられる。
【0049】
また、滑性を調整したり、干渉斑をより見え難くしたりする目的において、平均粒径10〜500nm程度の粒子を添加することができる。かかる粒子としては、有機粒子、無機粒子、有機無機複合粒子が挙げられる。粒子の添加は、透明性の観点から、平均粒径の大きいものと小さいものとを併用することが好ましい。
アンカー層の厚さは、乾燥膜厚で好ましくは0.01〜0.3μm、より好ましくは0.02〜0.25μm、さらに好ましくは0.05〜0.1μmである。アンカー層の厚さが薄過ぎると、密着性に劣る傾向にあり、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、透明性の向上効果が低くなったりする傾向にある。
【0050】
[透明導電層]
本発明の積層体を静電容量方式タッチパネルの電極用として用いる際には、積層体における低屈折率層の上に透明導電層を設ける。かかる透明導電層を構成する材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系等の金属酸化物を例示すことができ、これら2種以上を複合して形成してもよい。
【0051】
静電容量方式タッチパネル電極においては、透明導電層は、パターニングされる。すなわち、例えば平行に延びる複数の帯状導電部の集合体として形成される。そして、このような透明導電層を有する電極2枚を積層する。その際、各電極における帯状導電部は、互いに直交するように配置される。そして、透明導電層は、導電性インクなどからなる引き廻し回路を介して外部の駆動回路に接続される。なお、透明導電層膜のパターン形状は、上記に限定されず、指などの接触ポイントを検出可能である限り、任意の形状とすることが可能である。例えば、複数の菱形状導電部が直線状に連結された構成とし、各電極における菱形状導電部の連結方向が互いに直交し、且つ、平面視において上下の菱形状導電部が重なり合わないように配置してもよい。
【0052】
透明導電層の厚みは、通常5〜50nm程度である。透明導電層のパターン形状を目立ちにくくして視認性を向上させる観点からは、透明導電層の厚みはできる限り薄いことが好ましいが、薄くなりすぎると抵抗値が高くなり、必要な導電性が得られなくなることや、膜の良好な結晶性が得られ難くなりその結果必要な耐久性を得ることが困難になる。かかる観点から、好ましくは10〜30nm程度である。
【0053】
[積層体の製造方法]
以下、本発明の積層体を製造する方法について説明する。
(透明基材)
本発明において透明基材としては、従来公知の方法で製造されたものを用いることができる。例えば二軸配向ポリエステルフィルムとしては、従来公知の方法により、溶融押出したシートを、逐次または同時に二軸方向に延伸し、配向せしめ、熱固定したフィルムを用いることができる。
【0054】
(アンカー層)
アンカー層は、アンカー層を形成するための塗液(水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液を含む。以下、アンカー剤と呼称する場合がある。)を、透明基材のアンカー層を形成したい面に塗布、乾燥、必要に応じて硬化して形成することができる。かかるアンカー剤には、必要に応じて、前記各構成成分以外の他の成分、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、架橋剤を添加することができる。
かかるアンカー剤の固形分濃度は、通常、20質量%以下が好ましいが、特に1〜10質量%であることが好ましい。この割合が1質量%未満であると、透明基材への塗れ性が不足することがあり、一方20質量%を超えると塗液の安定性やアンカー層の外観が悪化することがあり好ましくない。
アンカー剤の塗布は、任意の段階で実施することができるが、透明基材の製造過程で実施する、いわゆるインラインコーティングが好ましい。これによりさらに密着性に優れる。
【0055】
また、アンカー剤を透明基材に塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理として透明基材表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは塗液に界面活性剤を添加することが好ましい。かかる界面活性剤は、透明基材への塗液の濡れを促進する機能や塗液の安定性を向上させるものであり、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤の添加量は、塗液中に、0.01〜2質量%含まれていることが好ましい。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。
塗液のウェット塗布量は、アンカー層の厚さが前記範囲となるような量とすればよい。
【0056】
(ハードコート層)
ハードコート層は、ハードコート層を形成するための塗液(ハードコート剤(HC剤))を、透明基材のハードコート層を形成したい面に塗布し、加熱乾燥し、硬化することにより得ることができる。
【0057】
本発明におけるHC剤は、溶媒に、上述の硬化性樹脂および任意成分を添加し、混合した溶液である。各成分の添加にあたっては、粉体等の固体として添加してもよいし、固体を適当な溶媒を用いて溶液あるいは分散体の態様としたものを添加してもよい。HC剤に用いられる溶媒は、特に限定はされないが、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、セカンダリーブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類等を用いることができ、HC剤の分散性が良好となり、ハードコート層の外観が良好となる。中でも、溶解性が良好であるという観点から、ケトン類が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが特に好ましい。HC剤の固形分濃度としては、1〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、このような態様とすることによって、塗り斑等の欠点を低減することができる。
【0058】
HC剤を塗布する方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法等を好ましく挙げることができる。これらの塗布方法によって、透明基材上にHC剤を塗布し、ハードコート塗膜(HC塗膜)を形成し、得られたHC塗膜を加熱乾燥する。加熱乾燥の条件としては、50〜150℃で10〜180秒間加熱することが好ましく、50〜120℃で20〜150秒間加熱することがさらに好ましく、50〜80℃で30〜120秒間加熱することが特に好ましい。加熱乾燥後、紫外線照射または電子線照射によりHC塗膜を硬化する。紫外線照射の場合、その照射量は、好ましくは10〜2,000mJ/cm、さらに好ましくは50〜1,500mJ/cm、特に好ましくは100〜1,000mJ/cmである。かくしてハードコート層を形成することができる。
【0059】
(高屈折率層)
高屈折率層は、高屈折率層を形成するための塗液(以下、高屈折率剤(HR剤)と呼称する場合がある。)をハードコート層上に塗布し、乾燥、硬化させることによって形成することができる。かかる塗布においては、上記HC剤を塗布する方法と同様の方法を採用できる。
【0060】
高屈折率剤の塗布に際しては、塗液中の粒子の固形分濃度を0.1質量%以上、1.0質量%以下にすることが好ましい。これにより、粒子の2次凝集抑制の効果を高くすることができる。かかる観点から、さらに好ましくは、0.3質量%以上であり、また、さらに好ましくは0.8質量%以下である。また、塗液の全固形分濃度を好ましくは0.5質量%以上、2.0質量%以下にすることが好ましく、粒子の2次凝集抑制の効果を高くすることができる。かかる観点から、さらに好ましくは0.7質量%以上であり、また、さらに好ましくは1.5質量%以下である。さらに、ウェットでの塗工量を、好ましくは2g/m以上、10g/m以下のように、薄く塗布することにより、塗液を塗布して得られた塗膜の乾燥速度を早くすることが可能となり、塗布から乾燥までの間における粒子の再凝集(2次凝集)抑制の効果を高くすることができる。これらによって、均一な膜を形成しやすくなり、金属酸化物粒子の含有量を多くすることが容易となり、本願発明が規定する屈折率を有する高屈折率層を、塗布法によって得やすくなる。かかる観点から、さらに好ましくは4g/m以上であり、また、さらに好ましくは8g/m以下である。
【0061】
また、表面が平滑なハードコート層上に塗布することにより、高屈折率層の厚み斑を低減することができる。
なお、本発明においては、高屈折率層の形成にあたって、上記のようなウェット製膜法も、またはドライ製膜法も、いずれの方法も採用できるが、ウェット製膜法が好ましい。
スパッタ方式等のドライ製膜法を採用すると、系を真空状態にする必要があるため時間がかかることに加えて、厚い膜を得るためには、加工速度を、例えば数m/分のごとく非常に遅くする必要があり、これらのことから生産性が低い。
【0062】
一方、上記のごとく塗布法等のウェット製膜法を採用することにより、加工速度は、例えば数十m/分のごとく非常に早くすることが可能となり、生産性を大幅に向上することができる。今後のスマートフォンに代表される静電容量方式タッチパネルの需要増を考慮すると、それに用いる電極用基材等の部材としては、ウェット製膜法でないと、生産性の観点から供給が困難になる可能性がある。よって市場においては、ウェット製膜法によっても優れた特性を有する、静電容量方式タッチパネル電極用部材が望まれている。
【0063】
(低屈折率層)
低屈折率層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライ製膜法、または塗布法等のウェット製膜法により形成できる。ドライ製膜法においては、低屈折率層を構成する材料をターゲットとして、従来公知の方法を採用して行えばよい。また、ウェット製膜法においては、ゾル−ゲル法によってもよいし、屈折率を調整するための成分を含有する、低屈折率層を形成するための塗液(以下、低屈折率剤(LR剤)と呼称する場合がある。)を塗布し、乾燥、硬化させることによって形成することができる。かかる塗布においては、上記HC剤を塗布する方法と同様の方法を採用できる。また、塗液の全固形分濃度、塗液中の粒子の固形分濃度およびウェット塗工量については、上記HR剤の場合と同様であり、粒子の2次凝集抑制の効果を高くすることができる。
本発明においては上記高屈折率層の場合と同様の観点から、ウェット製膜法が好ましい。
【0064】
(アンチブロッキング層)
アンチブロッキング層は、HC剤の代わりに、アンチブロッキング層を形成するための塗液(以下、アンチブロッキング剤(AB剤)と呼称する場合がある。)を用いる以外は、上述したハードコート層と同様にして形成することができる。なお、ここでAB剤は、溶媒に、上述の硬化性樹脂、粒子、および任意成分を添加し、混合した溶液である。
【0065】
(透明導電層)
透明導電層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法や、CVD法を例示できる。
また、透明導電層のパターニングは、透明基材にハードコート層、高屈折率層および低屈折率層を介して形成された透明導電層の表面に、所望のパターン形状を有するマスク部を形成して、露出部分を酸液などでエッチング除去した後、アルカリ液などによりマスク部を溶解させて、行うことができる。このように透明導電層のパターニングをエッチングにより行う方法は、不要な透明導電層を除去することができる一方、ハードコート層、及び高屈折率層、低屈折率層は全て残存させることができる。但し、パターニングの方法はこれに限定されるものではなく、他の公知の方法で行ってもよい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。
【0067】
(1)各層の屈折率
Metricon社製のレーザー屈折率計プリズムカプラ、モデル2010を用い、633nmの波長を用いて測定を行った。
フィルムの面内屈折率の平均は、フィルムのMD方向での面内屈折率とTD方向での面内屈折率との平均値として求めた。
各層の屈折率は、各層を形成するための塗液をガラス板に乾燥、硬化後に1μm厚みとなるように塗工し、70℃で1分乾燥後、200mJ/cmでUV硬化して形成した膜について、上記と同様にレーザー屈折率計で測定した。
【0068】
(2)各層の厚みおよび厚み斑
反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)を用いて、各層の波長300〜800nmにおける反射率を測定した。
アンカー層の膜厚は、上述の反射スペクトルの干渉波形からピークバレー法を用いてフィッティングさせることにより算出した。
ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層の膜厚は、上述の反射率測定値について代表的な屈折率の波長分散の近似式としてn−k Cauchyの分散式を引用し、スペクトルの実測値とフィッティングさせることにより求めた。
各層の厚み斑は、幅方向に1cmピッチ、長手方向に5cmピッチで、少なくとも10点について膜厚を測定し、平均値、最大値、最小値を求め、(最大値−最小値)/平均値×100の値を厚み斑(単位:%)とした。
【0069】
(3)粒子の含有量(体積%)
層を構成する樹脂成分の密度(アクリル系樹脂成分の場合は、密度1.2g/cmとする。)と重量、および粒子の密度と重量から、計算により求めた。
【0070】
(4)接触角
(4−1)水の接触角
ハードコート層表面に5mmの高さから0.2mLの蒸留水をシリンジにてゆっくりと滴下し、30秒間放置後、その接触角(ハードコート層表面と液滴の接線が成す角)をCCDカメラで観察して測定した。同様の操作を5回繰り返し、平均値を用いた。
(4−2)n−ドデカンの接触角
ハードコート層表面に5mmの高さから0.2mLのn−ドデカンをシリンジにてゆっくりと滴下し、15秒間放置後、その接触角(ハードコート層表面と液滴の接線が成す角)をCCDカメラで観察して測定した。同様の操作を5回繰り返し、平均値を用いた。なお、接触角が5度以下の領域においては、接触角の数値を正確に求めることができないため、接触角が5度以下であるという結果を以って、測定値とした。
【0071】
(5)視認性評価(透明導電層のパターンの見え難さの評価)
黒い板の上に、サンプルを透明導電層が上になるように置き、目視によりパターン部と非パターン部の判別ができるかどうかについて、下記基準により評価した。
◎:パターン部と非パターン部との判別がほとんどできない。
○:パターン部と非パターン部とをわずかに判別できる。
×:パターン部と非パターン部とをはっきり判別できる。
【0072】
(6)密着性評価(ハードコート層とその上の層との密着性の評価)
JIS D0202における基盤目付着性試験方法に準拠して、クロスハッチピールテストを実施した。
5:剥離面積が10%未満 (極めて良好)
4:剥離面積が10%以上20%未満 (良好)
3:剥離面積が20%以上30%未満 (やや良好)
2:剥離面積が30%以上40%未満 (不良)
1:剥離面積が40%を超える (極めて不良)
【0073】
(7)中心面平均粗さ(Ra)、10点平均粗さ(Rz)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetro Proにより中心面平均粗さ(Ra)および10点平均粗さ(Rz)を求めた。
【0074】
(8)粒子の平均粒径および粒度分布
島津製作所製CP―50型セントリフュグルパーティクルサイズアナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径を読み取り、この値をD50として上記平均粒径とする。さらに10、90マスパーセントに相当する粒径を読み取り、この値をそれぞれD10,D90として、D50に対するD10,D90それぞれの割合(D10/D50およびD90/D50)を求め、粒度分布を評価した。
【0075】
(9)干渉斑
三波長蛍光灯を使用して照度1200luxでサンプルから約50cm離れた距離から、反射光で検査実施し、下記の基準で判定する。
◎:干渉縞が見えない
○:干渉縞がわずかに見えるが、目立たない
△:干渉縞が見え、目立つ
×:干渉縞がはっきりと見える
【0076】
[透明基材]
透明基材として、両面に易接着層を有する厚さが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム製、KEL86W−100μm)を用いた。
【0077】
[製造例1:ハードコート(HC)剤1の調製]
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを主成分とし、グリコール成分として繰り返しエチレングリコール単位を2.7質量%含有する放射線硬化型樹脂組成物(商品名:ビームセット1460、荒川化学工業製、固形分濃度80質量%)をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分濃度30質量%のHC剤1を得た。
【0078】
[製造例2:ハードコート(HC)剤2の調製]
ウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする放射線硬化型樹脂組成物(商品名:ビームセット575CB、荒川化学工業製、固形分濃度70質量%)に、界面活性剤(商品名:KP−341、信越化学工業製、固形分濃度80質量%)を、放射線硬化型樹脂組成物の固形分100質量%に対して、界面活性剤の固形分が0.25質量%となるように添加し、さらにMEKで希釈することで固形分濃度30質量%のHC剤2を得た。
【0079】
[製造例3:アンチブロッキング(AB)剤の調製]
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを主成分とし、グリコール成分として繰り返しエチレングリコール単位を2.7質量%含有する放射線硬化型樹脂組成物(商品名:ビームセット1460、荒川化学工業製、固形分濃度80質量%)に、アクリルフィラー(平均粒径0.1μm、屈折率1.52、綜研化学製、MP−300)を、放射線硬化型樹脂組成物とアクリルフィラーの固形分質量比率(放射線硬化型樹脂組成物:アクリルフィラー)が90:10となるように添加し、次いでMEKで希釈し、固形分濃度45質量%のAB剤を得た。
【0080】
[製造例4:高屈折率(HR)剤1の調製]
平均粒径20nmの酸化チタン粒子(屈折率2.4、比重4.5、D90/D50=1.5、D10/D50=0.8)を、MEKに固形分濃度が1質量%となるように添加し、ビーズミルを使用して再分散させたスラリー液1を調製した。
次いで、上記製造例1で得られたHC剤1を固形分濃度1質量%となるようにMEKで希釈した塗液を準備し、そこに上記で得られたスラリー液1を10ml/秒の速度でゆっくり添加した後、さらにMEKを加えて、
放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が0.3質量%、
酸化チタン粒子の固形分濃度が0.4質量%である
HR剤1(固形分濃度0.7質量%)
を得た。
この塗液中の酸化チタン粒子の固形分濃度は非常に薄いため、酸化チタン粒子の分散状態は非常に良好であった。
【0081】
[製造例5:高屈折率(HR)剤2の調製]
平均粒径10nmの酸化ジルコニウム粒子(屈折率2.1、比重5.8、D90/D50=2.0、D10/D50=0.7)を、MEKに固形分濃度が2質量%となるように添加し、ビーズミルを使用して再分散させたスラリー液2を調製した。
次いで、上記製造例1で得られたHC剤1を固形分濃度1質量%となるようにMEKで希釈した塗液を準備し、そこに上記で得られたスラリー液2を10ml/秒の速度でゆっくり添加した後、さらにMEKを加えて、
放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が0.4質量%、
酸化ジルコニウム粒子の固形分濃度が1.0質量%である
HR剤2(固形分濃度1.4質量%)
を得た。
この塗液中の酸化ジルコニウム粒子の固形分濃度は非常に薄いため、酸化ジルコニウム粒子の分散状態は非常に良好であった。
【0082】
[製造例6:高屈折率(HR)剤3の調製]
酸化チタン粒子のMEKスラリーとして、上記製造例4で得られたスラリー液1を用いた。
次いで、上記製造例1で得られたHC剤1を固形分濃度1質量%となるようにMEKで希釈した塗液を準備し、そこにスラリー液1を10ml/秒の速度でゆっくり添加した後、さらにMEKを加えて、
放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が0.4質量%、
酸化チタン粒子の固形分濃度が0.3質量%である
HR剤3(固形分濃度0.7質量%)
を得た。
この塗液中の酸化チタン粒子の固形分濃度は非常に薄いため、酸化チタン粒子の分散状態は非常に良好であった。
【0083】
[製造例7:高屈折率(HR)剤4の調製]
平均粒径10nmの酸化ジルコニウム粒子(屈折率2.1、比重5.8、D90/D50=2.0、D10/D50=0.7)を、MEKに固形分濃度が4質量%となるように添加し、ビーズミルを使用し再分散させたスラリー液3を調製した。
次いで、上記製造例1で得られたHC剤1を固形分濃度1質量%となるようにMEKで希釈した塗液を準備し、そこに上記で得られたスラリー液3を10ml/秒の速度でゆっくり添加し、さらにMEKを加えて、
放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が0.6質量%、
酸化ジルコニウム粒子の固形分濃度が1.5質量%である
HR剤4(固形分濃度2.1質量%)
を得た。
この塗液中の酸化ジルコニウム粒子の固形分濃度は高く、酸化ジルコニウム粒子の分散状態はあまり良好でなかった。
【0084】
[製造例8:高屈折率(HR)剤5の調製]
酸化チタン粒子のMEKスラリーとして、上記製造例4で得られたスラリー液1を用いた。
次いで、上記製造例1で得られたHC剤1を固形分濃度1質量%となるようにMEKで希釈した塗液を準備し、そこにスラリー液1を10ml/秒の速度でゆっくり添加した後、さらにMEKを加えて、
放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が0.53質量%、
酸化チタン粒子の固形分濃度が0.71質量%である
HR剤5(固形分濃度1.23質量%)
を得た。
この塗液中の酸化チタン粒子の固形分濃度は非常に薄いため、酸化チタン粒子の分散状態は非常に良好であった。
【0085】
[製造例9:高屈折率(HR)剤6の調製]
酸化チタン粒子のMEKスラリーとして、上記製造例4で得られたスラリー液1を用いた。
次いで、上記製造例1で得られたHC剤1を固形分濃度1質量%となるようにMEKで希釈した塗液を準備し、そこにスラリー液1を10ml/秒の速度でゆっくり添加した後、さらにMEKを加えて、
放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が0.33質量%、
酸化チタン粒子の固形分濃度が0.37質量%である
HR剤6(固形分濃度0.7質量%)
を得た。
この塗液中の酸化チタン粒子の固形分濃度は非常に薄いため、酸化チタン粒子の分散状態は非常に良好であった。
【0086】
[製造例10:低屈折率(LR)剤1の調製]
平均粒径5nmの単分散のシリカ粒子(屈折率1.4、比重1.1)を、MEKに固形分濃度が1.5質量%となるように添加し、ビーズミルを使用し再分散させたスラリー液4を調製した。
次いで、上記製造例1で得られたHC剤1を固形分濃度1.5質量%となるようにMEKで希釈した塗液を準備し、そこに上記で得られたスラリー液4を10ml/秒の速度でゆっくり添加し、
放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が0.75質量%、
シリカ粒子の固形分濃度が0.75質量%である
LR剤1(固形分濃度1.5質量%)
を得た。
この塗液中のシリカ粒子の固形分濃度は非常に薄いため、シリカ粒子の分散状態は非常に良好であった。
【0087】
[製造例11:低屈折率(LR)剤2の調製]
シリカ粒子のMEKスラリーとして、上記製造例10で得られたスラリー液4を用いた。
次いで、上記製造例1で得られたHC剤1を固形分濃度1.5質量%となるようにMEKで希釈した塗液を準備し、そこにスラリー液4を10ml/秒の速度でゆっくり添加し、
放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が1.0質量%、
シリカ粒子の固形分濃度が0.5質量%である
LR剤2(固形分濃度1.5質量%)
を得た。
この塗液中のシリカ粒子の固形分濃度は非常に薄いため、シリカ粒子の分散状態は良好であった。
【0088】
[製造例12:低屈折率(LR)剤3の調製]
シリカ粒子のMEKスラリーとして、上記製造例10で得られたスラリー液4を用いた。
次いで、上記製造例1で得られたHC剤1を固形分濃度1.5質量%となるようにMEKで希釈した塗液を準備し、そこにスラリー液4を10ml/秒の速度でゆっくり添加し、
放射線硬化型樹脂組成物の固形分濃度が0.47質量%、
シリカ粒子の固形分濃度が0.47質量%である
LR剤3(固形分濃度0.94質量%)を得た。
この塗液中のシリカ粒子の固形分濃度は非常に薄いため、シリカ粒子の分散状態は非常に良好であった。
【0089】
[実施例1]
(ハードコート層の形成)
透明基材の片面に、上記製造例1で得られたHC剤1を用いて、リバースグラビア塗工方式で、得られるハードコート層の厚みが1.5μmとなるように塗工し、70℃×2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射しハードコート層を形成した。
【0090】
(アンチブロキング層の形成)
次いで、ハードコート層を形成した透明基材の、上記ハードコート層を形成した面とは反対側の面に、上記製造例3で得られたAB剤を用いて、リバースグラビア塗工方式で、得られるアンチブロッキング層の厚みが3.0μmになるように塗工し、70℃×2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射しアンチブロッキング層を形成した。
【0091】
(高屈折率層の形成)
次いで、上記で形成したハードコート層の上に、上記製造例4で得られたHR剤1を用いて、リバースグラビア塗工方式で、得られる高屈折率層の厚みが30nmとなるように塗工し、70℃×2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射し高屈折率層を形成した。
【0092】
(低屈折率層の形成)
さらに、上記で形成した高屈折率層の上に、上記製造例10で得られたLR剤1をMEKで固形分濃度1質量%に希釈した塗液を用いて、リバースグラビア塗工方式で、得られる低屈折率層の厚みが40nmとなるように塗工し、70℃×2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射し低屈折率層を形成し、積層体を得た。
【0093】
(透明導電層の形成)
得られた積層体の低屈折率層上に、アルゴンガス98%と酸素ガス2%とからなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム97質量%、酸化スズ3質量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、透明導電層としての、厚さ22nmの酸化インジウムスズ(ITO)膜(屈折率2.00)を形成して、透明導電性フィルムを得た。
【0094】
(透明導電層のエッチングによるパターン化)
上記で得られた透明導電性フィルムの透明導電体層に、ストライプ状にパターン化されているフォトレジストをスクリーン印刷により塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5%の塩酸(塩化水素溶液)に、1分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行い、その後フォトレジストを除去した。
上記のエッチングを行った後で、140℃で90分間の加熱処理を行って、ITO膜の結晶化を行い、パターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0095】
[実施例2]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・高屈折率層の形成に際して、上記製造例5で得られたHR剤2を用いて、得られる高屈折率層の厚みが55nmとなるように塗工した。
・低屈折率層の形成に際して、上記製造例10で得られたLR剤1をMEKで固形分濃度0.6質量%に希釈した塗液を用いて、得られる低屈折率層の厚みが25nmとなるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0096】
[実施例3]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・高屈折率層を形成するに際して、上記製造例4で得られたHR剤1をMEKで固形分濃度0.6質量%となるようにに希釈した塗液を用いて、得られる高屈折率層の厚みが22nmとなるように塗工した。
・低屈折率層を形成するに際して、上記製造例10で得られたLR剤1をMEKで固形分濃度1.2質量%となるように希釈した塗液を用いて、得られる低屈折率層の厚みが48nmとなるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0097】
[実施例4]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・ハードコート層を形成するに際して、HC剤1の代わりに、上記製造例2で得られたHC剤2を用いた。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0098】
[実施例5]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・高屈折率層の形成に際して、上記製造例8で得られたHR剤5を用いて、得られる高屈折率層の厚みが53nmとなるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0099】
[実施例6]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・低屈折率層の形成に際して、上記製造例12で得られたLR剤3を用いて、得られる低屈折率層の厚みが25nmとなるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0100】
[実施例7]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・高屈折率層の形成に際して、上記製造例9で得られたHR剤6を用いて、得られる高屈折率層の厚みが30nmとなるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0101】
[実施例8]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・低屈折率層を形成するに際して、上記製造例10で得られたLR剤1をMEKで固形分濃度1.3質量%となるように希釈した塗液を用いて、得られる低屈折率層の厚みが50nmとなるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0102】
[比較例1]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・高屈折率層を形成するに際して、上記製造例6で得られたHR剤3を用いて、得られる高屈折率層の厚みが30nmとなるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0103】
[比較例2]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・低屈折率層を形成するに際して、上記製造例11で得られたLR剤2をMEKで固形分濃度1.0質量%となるように希釈した塗液を用いて、得られる低屈折率層の厚みが60nmとなるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0104】
[比較例3]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・高屈折率層を形成するに際して、上記製造例7で得られたHR剤4を用いて、得られる高屈折率層の厚みが85nmになるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
【0105】
[比較例4]
実施例1において、以下を変更する以外は同様にして、積層体を得た。
・高屈折率層を形成するに際して、上記製造例4で得られたHR剤1をMEKで固形分濃度0.4質量%となるように希釈した塗液を用いて、得られる高屈折率層の厚みが15nmとなるように塗工した。
次いで、実施例1と同様にしてITO膜を有する透明導電性フィルム、および透明導電層をパターン化してパターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
上記で得られたフィルムについて、評価結果を表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
TiO:酸化チタン粒子
ZrO:酸化ジルコニウム粒子
SiO:シリカ粒子
アクリル:アクリルフィラー
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の積層体は、静電容量方式タッチパネルの電極用として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも片面に、ハードコート層、高屈折率層、および低屈折率層がこの順序で積層された積層体であって、
高屈折率層は、樹脂成分に、酸化チタン粒子および酸化ジルコニウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有し、厚みが20nm以上、70nm以下であり、屈折率が1.72以上であり、
低屈折率層は、厚みが10nm以上、50nm以下であり、屈折率が上記高屈折率層の屈折率よりも0.26以上低い、
静電容量方式タッチパネル電極用積層体。
【請求項2】
高屈折率層における粒子の含有量が、高屈折率層の体積に対して、20体積%以上、50体積%以下である、請求項1に記載の静電容量方式タッチパネル電極用積層体。
【請求項3】
ハードコート層表面における水接触角が70〜90度、n−ドデカン接触角が20度以下である、請求項1または2に記載の静電容量方式タッチパネル電極用積層体。
【請求項4】
低屈折率層の厚み斑が15%以下であり、かつ高屈折率層の厚み斑が15%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電容量方式タッチパネル電極用積層体。
【請求項5】
透明基材の片面に、ハードコート層、高屈折率層、および低屈折率層がこの順序で積層された積層体であって、
透明基材の他方の面に、アンチブロッキング層を有し、該アンチブロッキング層が、平均粒径0.01μm以上、1μm以下の粒子を、アンチブロッキング層の質量を基準として0.01質量%以上、10質量%以下含有する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電容量方式タッチパネル電極用積層体。

【公開番号】特開2013−97562(P2013−97562A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239537(P2011−239537)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】