説明

非同種スイッチ領域を介して、ヒト抗体の特定のアイソタイプを産生するためのトランスジェニック動物

【課題】実質的に任意の所望の抗原での免疫化に応答して所望のアイソタイプのトランスジェニック動物における完全ヒト抗体の提供。
【解決手段】動物中のヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子は所望の重鎖アイソタイプをコードするエキソンを含むヒト定常領域遺伝子セグメントを含み、異なる重鎖アイソタイプの定常領域由来のスイッチ領域に作動可能に連結される。このさらなる定常領域セグメントはスイッチ領域およびヒト定常領域コードセグメントを含み、この定常領域コードセグメントは、スイッチ領域に作動可能に連結され、このスイッチ領域は、通常会合してしない。該導入遺伝子において、非同種スイッチ領域は、定常領域コードセグメントとは異なる種由来のスイッチ領域であり、該スイッチ領域および膜エキソンは、ヒトγ−2定常領域を含み得、そして分泌定常領域エキソンは、ヒトγ−1またはヒトγ−4定常領域由来である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
モノクローナル抗体(mAb)の発見[G.KohlerおよびC.Milstein,Nature 256:495−497(1975)]の四半世紀後、それらの治療有用性は、最終的に現実化されつつある。モノクローナル抗体は、いまや、移植、癌、感染性疾患、心血管疾患および炎症における治療薬として認可されている。多くのモノクローナル抗体は、広い範囲の疾患徴候を処置するための後期段階の臨床試験中にある。結果として、mAbは、現在開発中の薬物の最も大きなクラスのうちの1つを代表する。
【0002】
mAbの有用性は、それらの複合体標的の特異的認識、続いてその標的への高親和性結合から生じる。異なるCHアイソタイプは異なるエフェクター機能を有するので、mAbアイソタイプを所望のエフェクター機能に合わせることが望ましい。例えば、エフェクター機能を有する定常領域を有するmAb(例えば、ヒトIgG1)が、標的細胞に対して補体依存性細胞傷害性または抗体依存性細胞傷害性を指向させるために使用され得る。あるいは、エフェクター機能を本質的に欠損する定常領域を有するmAb(例えば、ヒトIgG2またはIgG4)が、リガンドに結合し、そしてこのリガンドを中和することによるか、またはレセプター結合部位をブロックすることによるかのいずれかにより、シグナル伝達をブロックするために使用され得る。
【0003】
モノクローナル抗体についての多くの治療適用は、慢性疾患(例えば、自己免疫もしくは癌)については特に、繰り返し投与を必要とする。マウスは免疫化のために好都合であり、そしてほとんどのヒト抗原を異物として認識するので、治療能を有するヒト標的に対するmAbは、代表的には、マウス起源であった。しかし、マウスmAbは、ヒト治療薬として固有の欠点を有する。それらは、mAbの治療レベルを維持するためにより頻繁な投薬を必要とする。なぜなら、これは、ヒトにおいてヒト抗体よりも短い循環半減期であるからである。より批判的には、マウス免疫グロブリンの繰り返し投与により、ヒト免疫系がマウスタンパク質を異物として認識し、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を生じる可能性が生まれる。よくても、HAMA応答は、繰り返し投与の際にマウス抗体の迅速なクリアランスを生じ、治療薬を無用のものとする。HAMA応答は、重篤なアレルギー性反応を引き起こし得るとも、より考えられる。効力および安全性を減じるこの可能性により、マウスmAbの免疫原性を減少させるための多数の技術の開発に至った。
【0004】
マウスで生成された抗体の免疫原性を減少させるために、ヒト化として今や公知であるプロセスにおいてマウスタンパク質配列をヒトタンパク質と置換する種々の試みがなされた。第一のヒト化試みは、組換え抗体を構築するために分子生物学技術を利用した。例えば、ハプテンに特異的なマウス抗体由来の相補性決定領域(CDR)が、ヒト抗体フレームワークに移植されて、CDR置換物を生じた。新規な抗体は、CDR配列により運搬される結合特異性を保持した。[P.T.Jonesら、Nature 321:522−525(1986)を参照のこと]。ヒト化の次のレベルは、ヒト定常領域(例えば、γ1)とマウスVH領域全体(HuVnp)とを組み合わせることを包含した。[S.L.Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.,81,pp.6851−6855(1984)を参照のこと]。このようなキメラ抗体は、30%より多くの異種配列をなお含むが、これは、時には、全体的に異種の抗体と比べて、わずかに免疫原性が低いだけである。[M.Bruggemannら、J.Exp.Med.,170,pp.2153−2157(1989)]。
【0005】
続いて、ヒト免疫グロブリン遺伝子をマウスに導入し、これによりヒト配列を有する抗体を用いて抗原に対して応答し得るトランスジェニックマウスを作出する試みが行われた。[Bruggemannら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 86:6709−6713(1989)を参照のこと]。これらの試みは、利用可能なクローニングビヒクルによって安定に維持され得るDNAの量によって制限されると考えられた。結果として、多くの研究者らは、限定数のV領域遺伝子を含むミニ遺伝子座を生成すること、および天然または生殖細胞の配置に対して比較されるように遺伝子間で空間的間隔を変化させることに集中した。[米国特許第5,569,825号(Lonbergら)(1996)を参照のこと]。これらの研究は、マウスにおいてヒト配列抗体を生成することが可能であるが、しかし抗体治療薬についての要求の増大を満たすために、これらのトランスジェニック動物から結合特異性およびエフェクター機能(アイソタイプ)の十分な多様性を得ることに関して重大な障害が残ることを示した。
さらなる多様性を提供するために、ヒトIg遺伝子座の大きな生殖細胞フラグメントをトランスジェニック哺乳動物に付加する研究が、実施されている。例えば、ヒトゲノムの再配置されていない生殖細胞ならびにヒトCμおよびCδ定常領域において見出される同じ間隔で配置されるヒトV、D、およびJ領域遺伝子の大部分が、酵母人工染色体(YAC)クローニングベクターを用いてマウスに導入された。[PCT特許出願WO94/02602(Kucherlapatiら)を参照のこと]。ヒトγ−2定常領域をコードする配列およびクラススイッチ組換えに必要な上流配列を含む22kbのDNAフラグメントが、前述の導入遺伝子に対して後の方に付加された。さらに、ヒトゲノムの再配置されていない生殖細胞で見出される続けて同じ間隔でまた配置されるVκ、Jκ、およびCκ領域遺伝子を含むヒトκ遺伝子座の一部が、YACを用いてマウスに導入された。遺伝子標的化が、マウスIgHおよびκ軽鎖免疫グロブリン遺伝子座を不活性化するために使用され、そしてこのようなノックアウト株が上記トランスジェニック株と交配され、ヒトV、D、J、Cμ、Cδ、およびCγ2定常領域、ならびに全てが不活性化マウス免疫グロブリンバックグラウンド上にあるヒトVκ、Jκ、およびCκ領域遺伝子を有するマウスの系統を生成した。[PCT特許出願WO94/02602(Kucherlapatiら)を参照のこと;Mendezら、Nature Genetics 15:146−156(1997)もまた参照のこと]。
【0006】
内因性遺伝子座の遺伝子標的化およびトランスジェニック株の交配と組み合わせたクローニングベクターとしての酵母人工染色体は、抗体多様性の問題に対する1つの解決を提供した。いくつかの利点が、このアプローチによって得られた。1つの利点は、YACが数百キロ塩基のDNAを宿主細胞に移入するために使用され得ることであった。従って、YACクローニングビヒクルの使用は、ヒトIg重鎖領域および軽鎖領域全体の実質的な部分をトランスジェニック動物に含ませ、これにより、ヒトにおいて利用可能な潜在的多様性のレベルを達成することを可能にする。このアプローチの別の利点は、多数のV遺伝子が、マウス免疫グロブリン産生が不足したマウスにおいて全B細胞発達を回復することを示したことである。このことは、これらの再構成マウスが、任意の所定の免疫原に対するげっ歯類ヒト抗体応答を惹起させるために必須の細胞を提供されることを確実にする。[PCT特許出願WO94/02602(Kucherlapatiら);L.GreenおよびA.Jakobovits、J.Exp.Med.188:483−495(1998)を参照のこと]。さらなる利点は、配列が、酵母において高頻度の相同組換えを利用することにより欠失され得るか、またはYACに挿入され得ることである。これは、YAC導入遺伝子の容易な操作を提供する。
【0007】
上述のように、ヒト抗体を生成する哺乳動物の生成のために存在するいくつかのストラテジーがある。特に、「ミニ遺伝子座」アプローチ(GenPharm International,Inc.およびMedical Research Councilの研究によって代表される)、Ig遺伝子座の大きくかつ実質的に生殖細胞のフラグメントのYAC導入(Abgenix, Inc.(旧Cell Genesys)の研究によって代表される)、ならびに微細胞(microcell)融合の使用を介する全体または実質的に全体の遺伝子座の導入(キリンビール株式会社の研究によって代表されるような)がある。
【0008】
最少座(minilocus)アプローチにおいて、内因性Ig座が、そのIg座由来の断片(個々の遺伝子)の封入(inclusion)を介して模倣される。従って、1つ以上のVH遺伝子、1つ以上のDH、1つ以上のJH遺伝子、mu定常領域、および第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)が、動物への挿入のための構築物に形成される。このアプローチは、以下において記載され、以下の研究に関連される:米国特許第5,545,807号(Suraniら)、ならびに米国特許第5,545,8065号、同第5,625,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、同第5,770,429号、同第5,789,650号、および同第5,814,318号(LonbergおよびKayの各々)、米国特許第5,591,669号(KrimpenfortおよびBerns)、米国特許第5,612,205号、同第5,721,367号、同第5,789,215号(Bernsら)、ならびに米国特許第5,643,763号(ChoiおよびDunn)、ならびにGenPharm International米国特許出願番号07/574,748(1990年、8月29日出願)、同07/575,962(1990年8月31日出願)、同07/810,279(1991年12月17日出願)、同07/853,408(1992年3月18日出願)、同07/904,068(1992年6月23日出願)、同07/990,860(1992年12月16日出願)、同08/053,131(1993年4月26日出願)、08/096,762(1993年7月22日出願)、08/155,301(1993年11月18日出願)、08/161,739(1993年12月3日出願)、08/165,699(1993年12月10日出願)、08/209,741(1994年3月9日出願)(これらの開示が本明細書中により参考として援用される)。また、欧州特許第0 546 073 B1、国際特許出願番号WO 92/03918、同WO 92/22645、同WO 92/22647、同WO 92/22670、同WO 93/12227、同WO 94/00569、同WO 94/25585、WO 96/14436、同WO 97/13852、および同WO 98/24884を参照のこと(これらの開示は、その全体が本明細書により参考として援用される)。さらに、Taylorら、「A transgenic mouse that expresses a diversity of human sequence heavy and light chain immunoglobulins」Nucleic Acids Research 20:6287−6295(1992)、Chenら、「Immunoglobulin gene rearrangement in B−cell deficient mice generated by targeted deletion of the JH locus」International Immunology 5:647−656(1993)、Tuaillonら、「Analysis of direct and inverted DJH rearrangements in a human Ig heavy chain transgenic minilocus」J.Immunol.154:6453−6465(1995)、Choiら、「Transgenic mice containing a human heavy chain immunoglobulin gene fragment cloned in a yeast artificial chromosome」Nature Genetics 4:117−123(1993)、Lonbergら、「Antigen−specific human antibodies from mice comprising four distinct genetic modifications」Nature 368: 856−859(1994)、Taylorら、「Human immunoglobulin transgenes undergo rearrangement,somatic mutation and class switching in mice that lack endogenous IgM」International Immunology 6: 579−591(1994)、Tuaillonら、「Analysis of direct and inverted DJF rearrangements in a human Ig heavy chain transgenic minilocus」J.Immunol.154:6453−6465(1995)、およびFishwildら、「High−avidity human IgG monoclonal antibodies from a novel strain of minilocus transgenic mice」Nature Biotech.14:845−851(1996)を参照のこと(これらの開示は、それらの全体が本明細書により参考として援用される)。
【0009】
YAC導入と関連して、Greenら、Nature Genetics 7:13−21(1994)は、ヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の、それぞれの245kbおよび190kbのサイズの生殖系列構造(configuration)フラグメントを含むYACの生成(これはコア可変領域配列およびコア定常領域配列を含んでいた)を記載する(同上)。Greenらの研究は、メガべースの大きさの、ヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座のそれぞれの生殖系列構造YACフラグメントの導入を介して、およそ80%を越えるヒト抗体レパートリーの導入に及び、XenoMouseTMマウスを産生した。Mendezら、Nature Genetics 15:146−156(1997)ら、GreenおよびJakobovits J.Exp.Med.188:483−495(1998)、および米国特許出願番号08/759,620(1996年12月3日出願)を参照のこと(この開示が参考として本明細書に参考として援用される)。このようなアプローチは、さらに以下で議論され、そして描写される(delineated):米国特許出願番号07/466,008(1990年1月12日出願)、同07/610,515(1990年11月8日出願)、同07/919,297(1992年7月24日出願)、同07/922,649(1992年7月30日出願)、同08/031,801(1993年3月15日出願)、同08/112,848(1993年8月27日出願)、同08/234,145(1994年4月28日出願)、同08/376,279(1995年1月20日出願)、同08/430,938(1995年4月27日出願)、同08/464,584(1995年6月5日出願)、同08/464,582(1995年6月5日出願)、同08/463,191(1995年6月5日出願)、同08/462,837(1995年6月5日出願)、08/486,853(1995年6月5日出願)、同08/486,857(1995年6月5日出願)、同08/486,859(1995年6月5日出願)、同08/462,513(1995年6月5日出願)、同08/724,752(1996年10月2日出願)、および同08/759,620(1996年12月3日出願)。また、Mendezら、Nature Genetics 15:146−156(1997)ならびにGreenおよびJakobovits J.Exp.Med.188:483−495(1998)を参照のこと。また、欧州特許第EP 0 463 151 B1(1996年6月12日特許公報公開)、国際特許出願番号WO 94/02602(1994年2月3日公開)、国際特許出願番号WO 96/34096(1996年10月31日公開)、およびWO 98/24893(1998年6月11日公開)も参照のこと。上記引用される特許、出願、および参考文献の各々の開示は、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
【0010】
微小核体融合アプローチと関連して、ヒト染色体の一部または全体が、欧州特許出願番号EP 0 843 961 A1(この開示が本明細書に参考として援用される)に記載されるように、マウスに導入され得る。このアプローチを使用して、かつヒトIg重鎖遺伝子座を含むマウスは、一般に、1つより多く、かつ潜在的に全てのヒト定常領域遺伝子を保有する。従って、このようなマウスは、多数の異なる定常領域を有する特定の抗原に結合する抗体を産生する。従って、特定のエフェクター機能について所望の定常領域を予め選択する方法は存在しない。
【0011】
また、トランス染色体(transchromosome)は、有糸分裂および無糸分裂で不安定である。結果として、ヒトIgH、ヒトIgΚまたは両方のトランス染色体のいずれかは、80%に近い頻度で失われる。これは、マウスIgλ mAbおよびハイブリドーマ不安定性の異常に高い回復を生じる。
【0012】
抗体の、インビトロでのアイソタイプスイッチについての技術が存在する。IgG1アイソタイプのみを産生するトランスジェニックマウスから産生される抗体、複数のIgGアイソタイプを産生するトランスジェニックマウスから産生される抗体、またはファージディスプレイ技術から産生される抗体が、所望の抗原特異性および親和性を有し得るが、所望のエフェクター機能を有し得ない。この場合において、少なくとも、重鎖の可変領域、および最もあり得るのが抗体の軽鎖全体が、クローン化されなければならない。
【0013】
クローニングのための方法は、ライブラリーからのゲノムDNAの回復、ライブラリーからのcDNAの回復、特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用したゲノムDNAの回復、ならびに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーおよび鋳型としてcDNA(RT−PCR)を使用するPCRを含む。各方法(特に、PCRに基づく方法)は、クローンが、抗体コード配列の信頼できる複製を確認するために配列決定されることを要する。次いで、重鎖の可変領域は、DNA連結を介して、所望の定常領域遺伝子に作動可能に連結されなければならない。
次いで、操作されたVH−CH遺伝子は、発現制御領域(例えば、プロモーターエンハンサーおよびポリアデニル化部位)に作動可能に連結されなければならない。このような発現構築物はまた、抗体のIg軽鎖のために必要とされ得る。
【0014】
発現構築物は、操作されたmAbの分泌形態を産生するために、転写および翻訳のために適切な宿主細胞中に安定にトランスフェクトされなければならない。
代表的に、少なくとも、広範なスクリーニングが、さらなる実験および後の製造のために、十分なレベルのmAbを発現する細胞株のクローンを見出すために、実施されなければならない。おそらく、DNA増幅のような方法論は、上昇された、抗体発現構築物のコピー数、およびその結果の、mAbの発現レベルに対して使用されなければならない。
【0015】
最終的に、再操作されたmAbは、それが、所望の質を保持し、そして所望の機能(特異性、親和性、およびエフェクター機能の存在または非存在を含む)を有することを確認するために試験されなければならない。アイソタイプの切り換えのための他の技術が存在するが、mAbアイソタイプを再操作するためのこのような全てのプログラムは、分子生物学および組織培養における実験法および専門知識を必要とし、そして労働集約型で、遅く、高価であり、そして発行され、係属する知的所有権により包含され、たとえライセンスが利用可能でも、追加の費用を必要とする。従って、あるアイソタイプから別のアイソタイプへのmAbの再操作は、専門知識、過度の金銭の出費を必要とし、そして前臨床および臨床試験のためのモノクローナル抗体の開発を遅らせる。
【0016】
所望のCγアイソタイプを有するmAbを産生する技術を有することは、抗体を再操作するための必要性を経験的に取り除く。3つの異なるXenoMouse系統(各々は、Cγ2、Cγ4、またはCγ1のみを作製し得る)を有することによって、トランスジェニックマウスは、棚(shelf)から引き抜かれ得、次いで、所望の親和性、抗原特異性および所望のアイソタイプを有するmAbならびに所望のエフェクター機能を先験的に有するmAbを産生するために免疫化され得る。これは、モノクローナル抗体ベースの治療の開発のための効率およびユーザー親睦を増加させる。分子生物学または抗体操作における専門知識は必要とされない。抗原特異的mAbは、莫大なお金と時間の出費を伴わずに、予備臨床研究に直接必要とされ得、これは、開発コストを減少させ、そして治療mAbの開発のためのタイムライン(time line)を加速させる。
【0017】
本発明は、所望の特異性に加えて、抗体を使用する治療目的に適合するトランスジェニックマウスから、予め選択されたヒト抗体アイソタイプを入手する問題を解決することに関する。
【発明の概要】
【0018】
(発明の要旨)
本発明は、本発明の1つの局面において、任意の実質的に所望される抗原を用いる免疫化に応じて所望のアイソタイプの高い親和性の完全なヒト抗体を産生し得るトランスジェニック非ヒト動物を提供することによって、上記に言及される問題を解決する。上述のトランスジェニック非ヒト動物は、それらの体細胞および生殖細胞系列において、再配列の際に、所望のアイソタイプの完全なヒト免疫グロブリン重鎖をコードする再配列されていないヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子を有する。
【0019】
上述の動物におけるヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子は、所望の重鎖アイソタイプをコードするエキソンを含むヒト定常領域遺伝子セグメントを含み、異なる重鎖アイソタイプ(すなわち、非同種スイッチ領域)の定常領域に由来するスイッチセグメントに作動可能に連結される。
【0020】
上述のトランスジェニック非ヒト動物はまた、その体細胞および生殖細胞系列において、ヒト免疫グロブリン軽鎖導入遺伝子を有する。好ましい実施形態において、トランスジェニック非ヒト動物の内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子座は、非活性化され、その結果、その動物は、内因性の重鎖または軽鎖を産生し得ない。特に好ましい実施形態において、非ヒトトランスジェニック動物はマウスである。
【0021】
別の局面において、本発明は、再配列の際に、所望のアイソタイプのヒト重鎖をコードする、再配列されていないヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子を提供する。本発明の導入遺伝子は、少なくとも、ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座の第1のDセグメント遺伝子から始まり、Jセグメント遺伝子およびその遺伝子座のCμを通って定常領域遺伝子までずっと続くヒト第14染色体のDNA配列と同一であるDNA配列を含む。本発明の導入遺伝子において、上述のDNAフラグメントは、さらなる定常領域セグメントに作動可能に連結されて、そしてさらなる定常領域セグメントへのアイソタイプスイッチを可能にする。このさらなる定常領域セグメントは、スイッチ領域コードセグメントおよびヒト定常領域コードセグメントを含み、ここで、この定常領域コードセグメントは、それが正常に結合されないスイッチ領域(すなわち、非同種スイッチ領域)に作動可能に連結される。本発明の導入遺伝子において、上述のDNAフラグメントおよび定常領域セグメントは、少なくとも1つのヒトVセグメント遺伝子と作動可能に連結される。本発明の1つの実施形態において、導入遺伝子は、酵母人工染色体(YAC)である。
【0022】
本発明の導入遺伝子において、非同種スイッチ領域は、その定常領域コードセグメントとは異なる種に由来するスイッチ領域であり得る。1つの実施形態において、非同種スイッチ領域は、ヒトγ、αまたはε定常領域をコードするヒト定常領域コードセグメントに作動可能に連結されたマウススイッチ領域である。好ましい実施形態において、このスイッチ領域は、マウスγ−1スイッチ領域である。より好ましい実施形態において、このスイッチ領域は、マウスγ−1スイッチ領域であり、そしてヒト定常領域コードセグメントは、γ−1またはγ−4定常領域をコードする。特に好ましい実施形態において、この導入遺伝子は、yH2Bm酵母人工染色体(YAC)またはyH2CmYACである。
【0023】
別の実施形態において、その非同種スイッチ領域および定常領域コードセグメントの両方は、ヒト配列であり、非同種スイッチ領域は、定常領域コードセグメントとは異なるアイソタイプのヒト定常領域に由来する。好ましい実施形態において、スイッチ領域は、ヒトγ−2スイッチ領域および定常領域コードセグメントは、γ−2以外のアイソタイプである。より好ましい実施形態において、本発明の導入遺伝子は、ヒトγ−2スイッチ領域およびヒトγ−1またはヒトγ−4定常領域コードセグメントを含む。特に好ましい実施形態において、その導入遺伝子は、yHG1 YACまたはyHG4 YACである。
【0024】
さらなる別の実施形態において、本発明の導入遺伝子は、ヒト非同種スイッチ領域およびヒト定常領域コードセグメントを含み、ここで、そのスイッチ領域および定常領域コードセグメントの膜エキソンは、同じヒト定常領域アイソタイプに由来し、そして分泌された定常領域エキソンは、異なるアイソタイプに由来する。本発明の導入遺伝子はまた、ヒト非同種スイッチ領域およびヒト定常領域コードセグメントを含み得、ここでそのスイッチ領域は、1つのアイソタイプに由来し、分泌された定常領域エキソンは、第2のアイソタイプに由来し、そして膜定常領域エキソンは、さらに第3のアイソタイプに由来する。
【0025】
好ましい実施形態において、このスイッチ領域および膜エキソンは、ヒトγ−2定常領域に由来する。特に好ましい実施形態において、スイッチ領域および膜エキソンは、ヒトγ−2定常領域に由来し、そして分泌された定常領域エキソンは、ヒトγ−1またはヒトγー4定常領域に由来する。好ましい実施形態において、この導入遺伝子は、yHG1/2YACまたはyHG4/2YACである。
【0026】
別の実施形態において、本発明の任意の前述の導入遺伝子は、複数の異なるヒトVH遺伝子を含む。好ましい実施形態において、導入遺伝子は、少なくとも50%のヒト生殖系列VH遺伝子を含む。別の実施形態において、この導入遺伝子は、少なくとも40の異なるヒトVH遺伝子を含む。好ましくは、この導入遺伝子は、少なくとも66の異なるヒトVH遺伝子を含む。最も好ましくは、この導入遺伝子は、ヒト重鎖遺伝子座のヒトVH領域全体を含む。別の実施形態において、導入遺伝子は、十分な数の異なるヒトVH遺伝子を含み、その結果、その導入遺伝子は、接合部の多様性または体細胞変異事象を考慮せずに、少なくとも1×105の異なる機能的ヒト免疫グロブリン重鎖配列の組み合わせをコードし得る。さらなる別の実施形態において、その導入遺伝子におけるヒトVH遺伝子の数は、この導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスにおける野生型マウスのB細胞集団の少なくとも50%を産生するのに十分である。
【0027】
本発明の導入遺伝子は、マウス3’エンハンサー(非同種スイッチ領域を含む定常領域の3’に位置する)をさらに含む。1つの実施形態において、このマウス3’エンハンサーは、およそ0.9kbコア領域のネイティブエンハンサーである。代替的実施形態において、その3’エンハンサーは、そのコア領域を含むおよそ4kb領域のマウスエンハンサーである。さらなる別の実施形態において、その導入遺伝子は、マウス主要エンハンサー遺伝子座を含む。
【0028】
別の局面において、本発明は、本発明のトランスジェニック非ヒト動物を作製するための方法を提供する。その方法に従って、再配列されていないヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子は、その体細胞および生殖細胞系列に導入遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト動物を作製するために、非ヒト動物の生殖系列に導入される。ヒト重鎖トランスジェニック動物をヒト免疫グロブリン軽鎖導入遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト動物と交配することは、本発明のヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト動物を産生する。上述のトランスジェニック非ヒト動物のいずれかが、完全なヒト抗体を産生し、そして内因性抗体を産生し得ないトランスジェニック非ヒト動物を作製するために、不活性化された重鎖遺伝子座および/または軽鎖遺伝子座を有する動物と交配され得る。
【0029】
1つの実施形態において、本発明の導入遺伝子が、胚性幹(ES)細胞内に導入され、次いで胚盤胞に挿入される。次いで、本発明の導入遺伝子を含むES細胞を有する胚盤胞が、キメラ非ヒト動物を作製するために非ヒト動物の子宮内に外科的に挿入される。キメラ動物を交配させて、本発明の導入遺伝子の生殖系列伝達を達成させ、本発明の導入遺伝子を含む体細胞および生殖細胞系列を有するトランスジェニック、非ヒト動物を作製する。従って、本発明のさらなる局面は、本発明の導入遺伝子を含むES細胞およびその細胞のいくつかまたは全てにおいて導入遺伝子を有する非ヒト動物である。
【0030】
さらなる別の局面において、本発明は、本発明のトランスジェニック非ヒト動物における目的の抗原に特異的な高い親和性の完全なヒト抗体の所望のアイソタイプを産生するための方法を提供する。本発明に従って、本発明のトランスジェニック非ヒト動物を、その動物のB細胞による抗体の産生を誘導する条件下において、目的の抗原と接触させる。所望のアイソタイプの高い親和性の完全なヒト抗原特異的抗体は、トランスジェニック非ヒト動物の血流から収集され得る。
【0031】
あるいは、本発明の方法に従って、抗体産生B細胞が、動物から収集され得、そして抗体の連続的産生のために当該分野で公知の任意の手段によって不死化され得る。1つの実施形態において、B細胞をマウス骨髄腫細胞株と融合して、抗体分泌ハイブリドーマを作製する。そのようなハイブリドーマをスクリーニングし、高い親和性の完全なヒト抗原特異的抗体を分泌するハイブリドーマを選択し得る。
【0032】
さらなる局面において、本発明は、本発明のトランスジェニック動物から収集された抗体産生B細胞に由来するハイブリドーマを提供する。
【0033】
本発明の抗体はまた、所望の抗体を発現するB細胞の発現によるもの、クローン化されたヒト免疫グロブリン遺伝子によるもの、ファージディスプレイによるもの、または当該分野において公知の任意の他の方法によるものであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、yH1CおよびyH2Bm(またはyH2Cm)酵母人工染色体(YAC)の概略図である。
【図2】図2は、yH1CおよびyHG1酵母人工染色体(YAC)の概略図である。
【図3】図3は、yH1CおよびyHG1/2酵母人工染色体(YAC)の概略図である。
【図4】図4は、yH1CおよびyHG4/2酵母人工染色体(YAC)の概略図である。
【図5】図5は、yH1C YACをyHG1 YACおよびyHG4 YACに更新(retrofitting)するための標的化ベクター(TV1およびTV4)の概略図である。
【図6】図6は、yH1C YACをyHG1/2YACおよびyHG4/2YACに更新するための標的化ベクターの構築物を例示する。
【図7】図7は、yH1C YACをyHG1/2YACおよびyHG4/2YACに更新するための標的化ベクター(TV G1/2およびTV G4/2)の概略図である。
【図8】図8は、yH3B YAC(クローン Z 70.17.1)と融合されたESクローンのサザンブロット分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
本発明は、所望のアイソタイプのヒト免疫グロブリン重鎖の産生のための新規な導入遺伝子、および胚性幹(ES)細胞ならびに導入遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト動物に関する。本発明はまた、そのようなトランスジェニック非ヒト動物を作製するための方法および本発明のトランスジェニック動物において目的の抗原に応じて所望のアイソタイプの完全ヒト抗原を産生するための方法に関する。
【0036】
本発明の導入遺伝子およびトランスジェニック非ヒト動物は、種々のアイソタイプまたはクラスの完全ヒト抗体の産生の際に有用である。そのような抗体の治療的使用のために、個々の抗体アイソタイプの異なるエフェクター機能は、特定のアイソタイプの使用が所望の治療効果を達成することを可能にする。従って、目的の抗原で免疫化した後に、単一アイソタイプの抗体を産生するトランスジェニック非ヒト動物の系統を作製することが所望される。
【0037】
本明細書中に記載される本発明がより完全に理解され得るために、以下の詳細な説明が示される。その説明において、以下の用語が使用される:
(遺伝子領域)−特定のポリペプチド鎖を産生するか、または選択する際に関与するDNA;プロモーター、エンハンサー、定常遺伝子の前にある任意のスイッチ領域ならびに前述のコード領域および後述のコード領域の上流および下流、および介在配列(例えば、コードセグメントまたはエキソン間のイントロン)を含む。
【0038】
(遺伝子セグメント)−多エキソン遺伝子(例えば、免疫グロブリン重鎖定常領域)におけるコードセグメント。例えば、ヒト免疫グロブリン重鎖γ定常領域の分泌化形態についての遺伝子は、4遺伝子セグメント:CH1、H、CH2、およびCH3を含む。
【0039】
(生殖系列構造)−任意の体細胞遺伝子再配置が生じる前の、免疫グロブリン遺伝子セグメントの配列および間隔。
【0040】
(クレノウフラグメント)−酵素ポリメラーゼIの大きなフラグメント(通常、E.coliに由来する)。このフラグメントは、いずれの5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性も含まず、そしてポリメラーゼ活性のみを有する。それは、平滑末端を生成するために、DNA分子の末端充填のために使用され得る。
【0041】
(ライブラリー)−DNAベースのベクター(例えば、細菌におけるプラスミド、E.coliにおけるλバクテリオファージ、E.coliにおけるP1バクテリオファージ、E.coliにおける細菌人工染色体、Saccharomyces cerevisiaeにおける酵母人工染色体、培養細胞における哺乳動物人工染色体、体細胞ハイブリッドにおける哺乳動物染色体フラグメント)上で通常に増殖されるクローン化されたDNAフラグメントの混合物。
【0042】
(リンカー)−制限部位およびより大きなDNA分子に付加され得る他の特性(例えば、所望のポリペプチドをコードするDNAフラグメントのクローニングを促進させることおよび/または所望のポリペプチドをコードするDNAフラグメントの部分の戻し組込み(build back)をすること)を含むように設計される合成DNAフラグメント。
【0043】
(ライブラリーのスクリーニング)−ライブラリーにおいて、クローン化されたDNAの特定の配列について検索するプロセス。
【0044】
(無菌(sterile)の転写物)−必要とされる体細胞遺伝子セグメント再配置またはクラススイッチ組換えに翻訳されないと考えられるIg遺伝子座から産生される転写物。IgMを産生するB細胞またはプレB細胞において、例えば、細胞がどのアイソタイプにスイッチ、そして産生するかを潜在的に示唆するCH遺伝子に対応する生殖系列mRNA転写物が存在し得る。
【0045】
(ベクター)−外来DNAを宿主に輸送するために使用されるDNA分子およびその宿主内で複製されるDNA分子、その宿主を形質転換するために使用されるDNA分子。入手可能なベクターとしては、ウイルス(原核生物および真核生物)、細菌プラスミドまたは人工染色体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
(酵母人工染色体(YACS))−酵母染色体のエレメントから構成されるクローニングビヒクルであり、これは、ベクターがインビボで酵母細胞において複製されて、そして維持されることを可能にする。酵母エレメントとしては、動原体、自律増殖(autonomous replication)配列、一対の末端小粒、酵母選択マーカー、および通常の細菌複製起点ならびに細菌におけるYACベクターアームの複製および選択のための選択マーカーが挙げられる。少なくとも2000kbまでのDNAインサートが、YACを使用して、クローン化され、そして維持され得る。
【0047】
(XENOMOUSEの発生)
XenoMouseは、マウスIgH遺伝子座およびIgκ遺伝子座を不活性化しており、そして機能的メガベースサイズのヒトIgHおよびIgκ導入遺伝子について遺伝子組換えされたマウスである。XenoMouseの作製および特徴付けが記載されている[Mendezら、Genomics 26:294−307(1995);Mendezら、Nature Genetics、15、146−156頁(1997);Greenら、Nature Genetics 7:13−21(1994);国際特許出願WO94/02602、Kucherlapatiら、1994年2月3日公開を参照のこと]。より詳細には、マウス胚性幹細胞における相同組換え、次に、変異の生殖系列伝達そして引続く両方の不活性化された遺伝子座についてホモ接合性であるマウス(DIマウス)を作製するための交配によって、マウスIgHおよびIgκ遺伝子座の重要なエレメントの欠失が存在している。そのようなマウスは、マウスIgH鎖およびIgκ鎖を作製し得ず、そして骨髄におけるB細胞発生をproB/preB−I段階にて停止させることを示す。[Greenら、Nature Genetics、7、13−21頁(1994);GreenおよびJakobovits,J.Exp.Med.,188:483(1988)]。ヒトIgHおよびIgκ遺伝子座(酵母人工染色体上にクローン化されている)を、酵母スフェロプラスト−ES細胞融合を介してES細胞内に導入した[Jakobovitsら、Nature 362:255−258(1993)]。生殖系列伝達そして引続くDIバックグランドへの交配後、ヒトIgHおよびIgκ YAC導入遺伝子(yH1CおよびyK2)は、それらのマウス対応物の代わりに機能的に用いられ得、そしてB細胞発生を支持し得た。さらに、これらのマウスは、完全なヒトIgMκ抗体およびIgG2κ抗体を産生し、そして最終的には、治療的可能性を有する抗原特異的な、高い親和性である、完全ヒトIgG2κモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成した。
【0048】
(yH1C導入遺伝子)
ヒトIgH導入遺伝子、yH1Cは、66VH、全てのDエレメント、全てのJエレメント、CμおよびCδ、全ての調節エレメントから、全てが生殖細胞系列の構成で、構成される。酵母における相同組換えを使用することによって、yH1Cの3’末端は、ヒトγ2遺伝子(そのスイッチ調節エレメントを含む)およびマウス3’エンハンサーエレメントを含む4kbのフラグメントを含む22kbのフラグメントを添付されている(Mendezら、Nature Genitics 15:146−156(1997)(この開示は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。YACの左側のアームは、酵母選択マーカー(ADE2)、哺乳動物選択マーカーについての発現カセットを保有し、そしてYACの右側のアームは、薬剤(G418)に対する耐性をコードする、酵母選択マーカー(LYS2)および哺乳動物選択マーカー(Neo)についての発現カセットを保有する。後者は、そのポリモーター(MMT(マウスメタロチオニン))が、おそらく、ES細胞において非機能的であるので、ES細胞において非機能的である。他の細胞型において、まれではあるが、通常の生理学的条件下で、MMTプロモーターは、非常に低レベルでのみ転写を駆動し、そしてより高いレベルの転写のために重金属(例えば、Cd)を必要とする。実際、この構築物でトランスフェクトされたES細胞は、低レベルのG418にでさえ、決して、耐性とはならなかった。
【0049】
(B細胞発生)
B細胞の発生は、骨髄において、D遺伝子とJ遺伝子との間の欠失組換えとともに、開始する。その結果、V遺伝子は、スプライスされたVDJCμ転写物を産生するVDJ(これは、転写された)を作製するために、DJと再結合する。その転写物が、インフレームである場合、μ鎖は、翻訳の際に合成される。同様に、かつ一般に、VHDJHの組換えおよびμ鎖と代理軽鎖との成功した対形成の後、Ig軽鎖遺伝子座は、それらのV遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントを再編成する。骨髄における成功したB細胞の発生は、細胞表面上に、IgMκまたはIgMλを発現するB細胞を生じる。マウスにおいて、B細胞の95%は、IgMκを発現し;ヒトにおいて、B細胞の約60%がIgMκを発現する。
【0050】
B細胞を産生するこれらのIgMは、初期免疫レパートリーを形成し、そして外来抗原の認識についての免疫監視機構を機能させる。マウスまたはヒトにおいて、B細胞を生成するこれらのIgMは、結果的に、IgMからIgGまたはIgA、あるいはIgEアイソタイプへのアイソタイプクラススイッチを受け得る。クラススイッチの頻度は、免疫応答の間に増加する。マウスおよびヒトは、各々、IgGの4つの異なるアイソタイプに対する遺伝子を有する。それらは、マウスにおける、IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3であり、そしてヒトにおけるIgG1、IgG2、IgG3、IgG4である。ヒトは、2つのIgAアイソタイプ(IgA1およびIgA2)および1つのIgEアイソタイプを有する。マウスにおいて、平均して、それぞれ、6500、4200および1200μg/mlのIgG1、IgG2aおよびIgG2B、ならびに260μg/mlのIgAが存在する。ヒトにおいて、全IgGの中で、約70%はIgG1であり、18%はIgG2であり、8%はIgG3であり、そして3%はIgG4である。ヒトにおける全IgAにおいて、約80%はIgA1であり、そして20%はIgA2である。
【0051】
(抗体のエフェクター機能)
異なるアイソタイプは、異なるエフェクター機能を有する。機能におけるこのような差異は、種々の免疫グロブリンアイソタイプについての個別の3次元構造に反映される(P.M.Alzariら、Annual Rev.Immunol.6:555−580(1988))。例えば、ヒトIgG1およびIgG3アイソタイプは、補体媒介溶解または抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)に関連し、そしてIgG2およびIgG4は、既知のエフェクター機能をほとんど有さないか、または有さない。(SnapperおよびF.D.Finkelman、Fundamental Immunology、第3版、837−863頁)。異なるエフェクター機能は、異なるIgGアイソタイプに関連するので、従って、最適な医療的利点を作り出すために、mAbのアイソタイプおよびその結合特異性を選択することが可能であることが所望される。例えば、mAbが、サイトカイン応答を中和するか、またはレセプターの活性をブロックすることが所望される場合、フェクター機能を欠如するmAb(例えば、IgG2またはIgG4)が、所望され得る。一方、mAbの細胞表面上の抗原への結合を介する細胞の死滅が、所望される場合、その特定のエフェクター機能(ADCCまたはCMLのいずれか)を有するmAb(例えば、IgG1)が、所望される。従って、完全なヒトモノクローナル抗体の産生のために操作されたトランスジェニックマウスが、得られるモノクローナル抗体のアイソタイプを制御するために、所望される。この場合において、所望のヒト抗体アイソタイプのみを産生する特定のトランスジェニックマウス系統を免疫化することによって、特定の抗体アイソタイプを選択し得る。このようなマウスは、任意の得られた抗原特異的IgG mAbが、所望のエフェクター機能を有することを確実にする。このことは、定常領域を変化させるために、抗体遺伝子の引く続く再操作を不可能にし、可変領域の単離(クローニング)およびVH領域の所望のCH遺伝子への連結を含む。
【0052】
本発明の1つの実施形態において、yH1CヒトIgH YAC上の単独のCγ遺伝子(Cγ2)は、別のCH遺伝子によって置き換えられる。例えば、完全なヒトCγ2遺伝子を保有する22kbのグラグメントの代わりに、ヒトCH遺伝子を保有する他の挿入物が、Mendezらの標的化ベクターにクローニングされ得る(Mendezら、Nature Genetics 15:146−156(1997)を参照のこと)。ヒトCγ1〜4遺伝子は配列決定されており、そしてヒトゲノムDNAのバクテリオファージλライブラリ−から単離され得、そしてその後、約20〜25kbのEcoRIフラグメント上に回収され得る(J.W.Ellisonら、Nucleic Acids Res.,13:4071−4079(1982);J.Ellisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:1984−1985(1982);S.Huckら、Nucleic Acids Res.,14:1779−1789(1986);J.Ellisonら、DNA、1:11−18(1981)(これらの開示は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。同様に、マウスCγ1、Cγ2a、Cγ2b、およびCγ3についての配列は、すべて公知である(H.Hayashidaら、EMBO Journal、3:2047−2053(1984)(この開示は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0053】
(クラススイッチ)
IgMからのIgG、IgAまたはIgEへのクラススイッチ組換え(CSR)は、Cδを除く全てのIgH定常領域遺伝子の5’を提供する、縦列の直接反復スイッチ領域の間で起こる欠失組換え事象を介して、媒介される。スイッチ領域は、Iプロモーター、Iエキソンおよび逆方向反復配列に隣接する一連の直接反復から構成されることが知られている。エンハンサーおよびサイトカイン応答配列は、Iプロモーターの付近の領域にあることが知られている。マウスCγ1遺伝子における、下流の逆方向反復の3’のすぐ後に位置する、少なくとも1つの転写エンハンサーが、仮定されている(J.P.Manisら、J.Exp.Med.188:1421−1431(1998))。iEm(JHとCmとの間に位置するエンハンサー)もまた、必要とされる。転写は、Iプロモーターで開始し、そしてIエキソンを介して、C遺伝子に末端まで進行する。この転写物は処理されて、CH遺伝子にスプライスされたIエキソンを有する非コード無菌転写物を得る。スイッチ領域を介する転写は、クラススイッチ組換えを必要とする。ヒトおよびマウスSμおよびSγ領域は配列決定されており、これらの配列は、Genbankデータベースから公的に利用可能である。
【0054】
マウスにおいて、リンフォカインと活性化因子との異なる組み合わせは、IgMから個々のCH遺伝子へのクラススイッチに対する大いに異なる効果を有する。例えば、インビトロにおけるLPSおよびインターロイキン−4の組み合わせは、IgG1およびIgEへのクラススイッチを誘導し、そしてIgG2bおよびIgG3へのスイッチを抑制する。CSRに影響する他のリンフォカインには、IL−5、TGF−β、インターフェロン−γが挙げられるが、これらに限定されない。これらのリンフォカインは、例えば、二次リンパ組織の胚中心中の、抗原提示T細胞および抗原提示小胞樹状細胞のようなヘルパー細胞によって、インビボで分泌される。これらのリンフォカインは、CSRの前に、それらの対応するCH遺伝子の転写を、おそらく対応するIプロモーターの活性化を介して調節する。例えば、マウスCγ1 IプロモーターにおけるIL−4応答エレメントは、マッピングされている(Rothmanら、Int.Immunol 2、621−627頁(1990))。ヒトスイッチ領域のリンフォカイン応答性は、未だ、マウスの応答性と同じ程度に、十分に特徴付けされいない。しかし、異なるヒトスイッチ(S)領域はまた、異なるリンフォカインおよび活性化因子に対する異なる応答を有し得る。このことは、部分的に、ヒト血清におけるIgGサブクラスの異なるレベルの原因であり得る。
【0055】
(非同種スイッチ)
リンフォカインおよび他の活性化因子に対するマウスおよびヒトのS領域それぞれの実際かつ可能な示差的な応答性の観点において、ヒト抗体産生トランスジェニックマウスにおけるCSRを制御する異種スイッチ領域を有することが所望される。例えば、Igγ1は、マウスにおけるIgGの最も豊富なクラスである。CSRは、ヒトSμ領域からマウスSγ1領域に起こり得ることもまた知られている(Taylorら、Int.Immunol,6,579−591頁)。分子生物学の標準的なツールおよび十分に特徴付けられたクローニングされたマウスSγ1配列(MowattおよびDunnick、J.immuno.,136;2674−2683頁(1986)、Genbank登録番号 M12389)を使用して、ヒトCHコード配列(例えば、ヒトCγ1)に機能的に連結された、マウスSγ1を有するDNAベクターを操作することが可能である。ヒトCHコード配列の下流には、マウス3’エンハンサーを包含する配列が含まれる。m3’E配列は、4kbのXbalフラグメントであり得るか、または900bpのStu Iフラグメントであり得、これらの両方は、コアDNAse I高感受性部位(HS1、2)を包含する(Dariavachら、Eur.J.Immunol.21,1499−1504頁(1991);Pettersonら、Immunobiol.,189,236−248頁(1997))。yH1Cに相同性である5’および3’隣接領域および適切な選択マーカーを有することによって、このようなベクターは、酵母においてインビボで組換えられ、yH1C上のヒトCγ2遺伝子を置き換え得る。この様式で操作されるYACは、yH1CのVH、DH、JH、Cμ、およびCδの全てをインタクトに保持するが、キメラCH遺伝子を有する:マウスSγ1エレメントは、ヒトIgMから下流ヒトCHコード配列へのスイッチを制御する。
【0056】
別の実施形態において、ヒトCγ2コード配列(CH遺伝子の分泌形態および膜結合形態についてのエキソンの全てを含む)は、別のヒトCH遺伝子によって置き換えられる。このようにして、ヒトSγ2配列は、Cμから下流CH遺伝子へのCSRを制御する。hSg2配列は、yH1Cにおいて安定であるが、他のヒトS配列(それらのいくつかは、S反復のより長いタンデムアレイを有する)は、安定性が低くあり得ることが知られている。ヒトCγ2遺伝子を有するトランスジェニックマウスにおけるCSRは、効率的であり、そしてヒトIgG2の高い血清レベルを生成し、そして完全ヒトIgG2mAbの効率的な産生を生じることもまた知られている。従って、それらの有利な安定性および抗原チャレンジに対するインビボ応答を有するヒトSγ2を保持するが、CSRが別のアイソタイプ(例えば、Cγ1またはCγ4のいずれか)について起こるように操作することは、好ましくあり得る。このことを達成するために、以下のエレメントを有するベクターが、構築される:例えば、ヒトSγ2とヒトCγ2コードエキソン1との間に位置する5’側の相同性領域(homology)、Cγ2以外のヒトCH遺伝子、マウス3’エンハンサー、酵母選択マーカー、およびYACアームにおける3’標的化相同性領域。このようなベクターはyH1Cを保有する酵母に導入され、そして標的組換え体が選択され、そしてスクリーニングされる。これらの例において、多くのバリエーションが、当業者によって作製され得、そしてこれらの例は、これらが、異種S領域によって駆動されるCSRを有するトランスジェニックマウスの末端に達するためのみの手段であることを示すことを意味しないことが、理解されるべきである。
【0057】
(エンハンサーの役割)
S領域に加えて、他のシス調節エレメントは、CSRに対して必要とされるか、または必要とされ得ることが知られている。iEmについての要求が、言及されている。また、IgGの通常のレベルの発現のために必要とされるエンハンサーが、マウスSγ1の3’逆方向反復とCH1エキソンとの間に存在すると仮定されている。このエンハンサーは、マウスおよびヒトにおける他のCH遺伝子において保存され得、そしてこの間隔は、異種スイッチ配列を介して、CSRについて設計された任意のベクターにおいて保持されるべきである。(Elenichら、J.Immunol.157,176−182(1996);Cunninghamら、Int.Immunol.,10,1027−1037頁(1998))。マウスおよびヒトにおけるCα遺伝子のエンハンサー3’のクラスターもま、重要である。マウスにおいて、Cαの下流の40kbの領域には、4つのエンハンサーエレメンが含まれ、これらの顕著な特徴は、Dnase I高感受性部位(HS)である。これらのエンハンサーは、5’から3’への順序である:HS3a、4kb、Cαの下流;HS1、2(文献および本明細書中でm3’Eとして公知)、15kb、Cαの3’;HS3b、25kb、Cαの3’;およびHS4、約30kb、Cαの3’;HS1、2、HS3a、およびHS3bは、活性化されたB細胞および形質細胞における発現を高める。HS4は、B細胞発生の過程にわたって活性であるが、yH1C YACがHS4を欠き、そしてなおマウスにおける効率的なB細胞発生を支持するならば、明らかに不必要である。従って、これらのエレメントは、転写を増加させるために相乗的に作用し得、そしてマウスおよびヒトにおけるIgH遺伝子座のための遺伝子座制御領域(LCR)を形成すると仮定されている。個々のHSユニットの機能のいくらかの重複性が存在するという仮説が立てられている。これらのエレメントの損なわれていない活性は、CSRのために必要とされ得るが、HS1、2およびHS3aは、別々に、不要なCSRである(J.P.Manisら、J.Exp.Med.188:1421−1431(1998)を参照のこと)。
【0058】
HS1、2(3’E)は、このセットの最初に発見されたエンハンサーであった。HS1、2部位および転写因子(例えば、AP−1)についてのコンセンサス結合ドメインに相同な配列は、900bpのStu−Iフラグメント上で分離され得る。(Dariavichら、Eur.J.Immunol.,21,1499−1504頁(1991);Genbank登録番号X62778)。マウスにおける3’Eは、ラットの3’Eとは逆方向に配向され、このことは、他のエンハンサーと同様に、その機能は、配向非依存性であることを示唆する。しかし、3’Eは、プロモーターから離れて配置される場合、位置依存活性を有し、そして転写をより有効的に増加させることが示されている。Gene,136,349−353頁(1993)。ヒトCg2遺伝子の3’に位置するHS1、2を有する900bpのStuIフラグメントを包含する4kbのXbaIフラグメントは、トランスジェニックマウスにおけるCSRおよび高レベルの発現を支持しうる(Mendezら、Nature Genetics 15:146−156(1997)を参照のこと)。
【0059】
強力なプロモーター(PGK)のマウスIgH3’LCRへの挿入は、いくつかのIgGアイソタイプ(IgG2a、IgG3、IgG2b)へのクラススイッチおよび他のもの(IgG1、IgA)のより低い発現を抑止し得る。不思議なことだが、プロモーターおよびその発現遺伝子はまた、LCRの制御下に入る:PGK駆動発現構築物は、下方制御され、そして活性化B細胞に上方制御され得る(J.P.Manisら、J.Exp.Med.188:1421−1431(1998))。従って、構築物3’を有し、そしてマウス3’Eコア構築物(900bpのStuI)に隣接した強力な構成的プロモーター(PGK)によって駆動されるβ−gal発現構築物を保有するYAC遺伝子において、PGK−β−gal構築物の夾雑物の欠失を有するES細胞ゲノムに組み込まれているYACについてスクリーニングすることは有利であり得る。これは、β−galについてのプライマーを使用するPCRによって達成され得るか、またはβ−gal遺伝子を用いてプローブされるサザンブロットによって達成される。
【0060】
(免疫グロブリン膜エキソン)
各IgHアイソタイプおよびクラスの2つの形態、分泌形態(s)および膜形態(m)は、B細胞によって作製され得る。Ig(s)およびIg(m)は、IgH転写物の代替のスプライシングを介して合成される。2つの膜エキソンは、各ヒトIgG遺伝子のCH3エキソンの2kbの下流にある。膜エキソンによってコードされるものは、疎水性膜貫通配列および短い、およそ3アミノ酸の細胞質テールである。CH3からの第一の膜エキソンへの代替のスプライシングは、膜結合IgGを生じる。膜結合Igは、B細胞中の他のタンパク質(例えば、とりわけ、Igα、IgβおよびCD45)と相互作用して、シグナル伝達し得るB細胞レセプター(BCR)と呼ばれる複合体を形成する。細胞外環境(例えば、可溶性または抗原提示細胞)中にあるIgGのV領域による、抗原の結合は、シグナル伝達に導き得る。BCRによるこのシグナル伝達は、B細胞の活性化ならびに最終的に、二次免疫応答における効率的な親和性変異および胚中心形成に導く。
【0061】
さらに、BCRのIgによる抗原の結合は、ヘルパー細胞への提示のための、MHC分子による抗原フラグメントの内在化、操作、および提示に導き得る。明らかに、機能的BCRの効率的なアセンブリは、効率的な一次および二次免疫応答のために必要とされる。
【0062】
ヒトIgG1膜エキソンは、BCRPの他の成分と十分に複合体化するわけではなく、マウスのキメラBCRと同程度には、シグナル伝達するわけではないキメラBCRを生じる。G.Pluschkeら、J.Immunolog.Methods,215,27−37頁(1998)。IgG1の分泌形態および膜形態をコードする全てのヒトエキソンを有するヒトIgG1構築物は、マウスIgG2a遺伝子座に挿入され、その結果、マウスCγ2aエキソンが、置き換えられ、そしてヒトコードエキソンに対するCSRは、マウスSγ2a領域の制御下にあった。キメラヒトIgG1(マウスVDJ−ヒトIgG1)は、マウスIgG2aよりも100倍低いレベルで発現され、そして抗原特異的mAbは、回収されなかった。従って、マウスSγ2aによって駆動されるクラススイッチが生じるが、正常な免疫応答は、妥協された。あるいは、分泌ヒトIgG1をコードするエキソンは、マウスIgG1の分泌形態をコードするエキソンのみを置き換えるために、使用されてきている。この構築物は、キメラIgG1重鎖遺伝子を生成し、このキメラIgG1重鎖遺伝子は、分泌IgG1についての全てのヒトエキソンを含むが、インタクトな下流のマウス膜エキソンを有する。クラススイッチは、マウスSγ1領域によって駆動されている。膜結合Igは、マウスV−ヒトγ1 CH1−CH3−マウスCγ1(mem)である。このトランスジェニックマウスにおいて、ヒトIgG1の血清レベルは、正常な未処理のマウスにおけるマウスIgG1と同じである。従って、マウスSγ1は、効率的なクラススイッチを駆動し得、そしてマウスIgG1膜エキソンは、少なくともヒトγ1 CH1−CH3エキソンとともに機能し得る。本発明者らは、抗原特異的mAbの産生についてマウスを試験しなかった。先の構築物におけるように、得られたIgG1 mAbは、キメラである:マウスVDJは、機能的に、ヒトCγ1の分泌形態に連結された。
【0063】
これらの結果が与えられると、ヒトCγ1エキソンのインタクトなセット(これらは、Cγ1の分泌形態および膜形態の両方をコードし、そしてヒトIgH遺伝子座(VH、DH、JH、CδおよびSγ領域)に機能的に連結される)は、完全に機能的なBCRをもたらすわけではない膜結合ヒトIgG1の非効率的なアセンブルのために、最適以下で機能し得る。従って、ヒトCγ1膜エキソンを、機能的BCRに効率的にアセンブルすることが知られている別のアイソタイプ由来のものと置き換えることは、好ましくあり得る。このようなエキソンは、マウスCγ1エキソンまたは他のマウスC膜領エキソンを含み得る。あるいは、ヒトCγ2膜エキソンは、マウスのBCRにおいて十分に機能することが期待される。なぜなら、XenoMouse G2は、高レベルの分泌IgG2を有し、そして高い親和性の抗原特異的mAbを効率的に産生するからである。従って、ヒトCγ2膜エキソンは、ヒトCγ1 CH1−CH3エキソンに機能的に連結され得る。膜エキソンについての配列は、公知である(hγ1については、X52847;hγ2については、AB006775)。
【0064】
(ベクター構築)
1つの実施形態では、CH1−CH3エキソンのみをyH1C YAC中に導入するための標的化ベクターが生成される。ヒトCH1−CH3ならびにイントロンおよび隣接するDNAの全ての配列が利用可能であり[J.W.Ellisonら,Nucleic Acids Res.,13:4071−4079(1982);J.Ellisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:1984−1985(1982);S.Huckら,Nucleic Acids Res.,14:1779−1789(1986);J.Ellisonら,DNA,1:11−18(1981)を参照のこと(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)]、全ての制限部位が電子的にマッピングされることおよび標的化ベクターが構築されることを可能にする。1つのこのようなベクターは、ヒトCγ2 CH1エキソンの上流の5’相同性、酵母におけるポジティブ/ネガティブ選択マーカー(URA3)についての発現構築物、5’標的化相同性の直接反復、ヒトCγ1エキソンCH1−CH3を含む配列、および3’標的化相同性を含む。このベクターは、yH1Cを保有する酵母中にトランスフェクトされ、そして相同な組換え体は、ウラシルを欠くプレート上でポジティブに選択され、次いで、サザンブロットハイブリダイゼーションによってスクリーニングされるかまたはPCRによってヒトCγ2 CH1−CH3エキソンの喪失およびヒトCγ1 CH1−CH3の付随した獲得について試験される。一旦同定されると、URA3遺伝子の欠失は、5’−フルオロウラシルを用いて選択され得る。このような喪失は、酵母中の直接的な反復配列の間での効率的な染色体内組換えに起因して高い頻度(10-4〜10-5)で生じると予想される。URA3遺伝子の欠失は、クラススイッチ組換えについておよび抗体の発現について機能的な配置で完全にヒトIgHを回復させる。このような操作を達成するための他のストラテジーが存在することが明らかである。また、他のヒトCγ遺伝子(例えば、ヒトCγ4)をヒトCγ2遺伝子座中に操作する動機付けが存在し得る。
【0065】
(CRE−LOX媒介クラススイッチ)
CRE−lox系は、予め規定された部位への、DNAの標的化された挿入を可能にする。P1バクテリオファージから誘導されると、CREレコンビナーゼは、loxP部位間のDNA内またはDNA間の組換えを駆動する[B.Sauerら,New Biologist 2:441−449(1990);S.Fukushigeら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:7905−7909(1992);Y.−R.Zouら,Current Biol.,4:1099−1103(1994)]。lox P部位(配列:TA ACT TCG TAT AGC ATA CAT TAT ACG AAG TTA TA(配列番号1))は、yH YACのDNA中に導入される。この配列は、S領域(例えば、Sg2)の下流の3’逆方向反復の3’側に、そして下流のCg遺伝子(例えば、Cg1)のCH1エキソンのスプライスアクセプター配列の5’側に配置される。lox P部位は、酵母中で相同組換えを介してYAC中に直接挿入され得る。またはlox P部位は、より大きな標的化ベクター(例えば、本明細書に上記で記載される標的化ベクター)中に組み込まれ得る。この部位をこのようなYAC標的化ベクター中に組み込んだ場合、loxP部位は、標的化相同性(例えば、5’標的化相同性)を増幅するために用いられるPCRプライマーに導入され得るか、または連結されたオリゴヌクレオチドとしてインビトロで挿入され得る。2つのloxP部位の間の相同組換えは方向依存性であるので、第1のloxP部位をYAC中に挿入する方向に注意することが重要である。
【0066】
第2の段階では、代替的Cγ遺伝子の挿入のためのプラスミドベクターが生成される。このベクターのコアでは、導入されるCg遺伝子および導入を可能にするloxP部位を保有するカセットである:このカセットは、YAC中でと同じ5’−3’方向のlox P部位で始まり、YAC上のCgの上流のlox P挿入部位に対応するCH1の上流のDNAが続き、そして生殖系列配置に続き、CH1を通り(CH1エキソンスプライスアクセプターはインタクトなままである)、第2の膜エキソンの3’側のポリアデニル化部位の下流を通る。例えば、約7kb Hind IIIフラグメントは、全てのヒトCg遺伝子について必要とされるDNAの全てを捕捉する。あるいは、転写および翻訳(非翻訳領域、ポリアデニル化部位)について適切な3’シグナルを含むCH1−CH3エキソンのみを用いて、分泌形態のmAbのみを作製し得る。あり得る読み過し転写をなくすために、真核生物転写ターミネーター配列は、ベクターにおいてCH遺伝子の下流に付加され得る。形質転換体の選択を容易にするために、選択マーカー(例えば、ピューロマイシンまたはハイグロマイシン)についての発現カセットが、CH遺伝子の下流に付加され得る。
【0067】
一旦ハイブリドーマが、lxoP部位を用いて操作されたyHトランスジーンを保有するトランスジェニックマウスから生成されると、CRE−lox媒介クラススイッチは、環化された挿入ベクターと精製されたCREレコンビナーゼまたはCRE発現ベクターのいずれかとを、例えば、エレクトロポレーションまたはリポフェクションによって、同時トランスフェクトすることによって誘導され得る。同時トランスフェクトされた細胞では、CREは、遺伝子座への新規のCH遺伝子の挿入を媒介し、ここで、CREは、所望のmAb特異性をコードする上流のVHDJHに対してシスで転写およびスプライシングされる。転写ターミネーターは、下流のCH遺伝子へと転写し続けるのを妨げる。ベクターが選択マーカーを有するならば、トランスフェクトされたハイブリドーマは、適切な薬物を用いて選択され得、次いで、プールされ得るかまたは個々のクローンが所望の新規のアイソタイプのmAbについてのELISAによってスクリーニングされ得る。ベクターが選択マーカーを欠くならば、トランスフェクトされたハイブリドーマのプールは、ELISAによってスクリーニングされ得、そして所望のアイソタイプを産生するハイブリドーマは、プールからサブクローニングされ得る。置換CH遺伝子が膜結合型IgHをコードするならばまた、ハイブリドーマは、フローサイトメトリーによってスクリーニングおよび選別され得る。
【0068】
いくつかの例では、一方のアイソタイプが1つの活性(例えば、ADCCまたはCML)を有し、そして他方のアイソタイプがエフェクター機能を欠くが、同一の抗原結合特徴(例えば、エピトープ特異性および親和性)を有して、単一抗原特異的mAbの2つの異なるアイソタイプを保有することが好適であり得る。
この目的は、重鎖および軽鎖の可変領域の分子クローニング、次いで、適切な定常領域に対するこれらの機能的連結、続いてmAbの産生のための細胞内へのトランスフェクションによって達成され得る。しかし、このプロセスは、労力および時間がかかり得る。あるいは、上記のCRE−loxプロセスを用いて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ中でインビボで効率的にクラススイッチされ得る。
【0069】
(マウス系統)
以下のマウス系統は、本明細書中に記載および/または利用される:
(二重不活化(DI)系統)
DI系統のマウスは、機能的内因性マウスIgを産生しないマウスである。好ましい実施形態では、DIマウスは、不活化されたマウスJH領域および不活化されたマウスCκ領域を保有する。この系統の構築は、他の箇所で広範囲に議論されている。例えば、DI系統の作製のために利用される技術は、1990年1月12日に出願された米国特許出願第07/466,008号、1990年11月8日に出願された同第07/610,515号、1992年7月24日に出願された同第07/919,297号、1993年3月15日に出願された同第08/031,801号、1993年8月27日に出願された同第08/112,848号、1994年4月28日に出願された同第08/234,145号、1996年10月2日に出願された同第08/724,752号に詳細に記載される。1996年6月12日に特許許可公開された欧州特許第EP 0 463 151 B1号、1994年2月3日に公開された国際特許出願第WO 94/02602号、1996年10月31日に公開された国際特許出願第WO 96/34096号および1996年4月29日に出願されたPCT出願第PCT/US96/05928号もまた参照のこと。上記の引用された特許および特許出願の各々の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。DIマウスは、非常に未成熟なB細胞発達を保有する。このマウスは、成熟B細胞を産生せず、プロB細胞しか産生しない[GreenおよびJakobovits,J.Exp.Med.,188,483−495頁(1998)]。
【0070】
(XenoMouse I系統)
XenoMouse I系統の設計、構築および分析は、Greenら,Nature Genetics,7:13−21(1994)において詳細に考察された。このようなマウスは、DIバックグラウンドに対してヒトIgMκ抗体を産生した。このマウスは、ほとんどまたは全くB細胞の発達を有さないDI系統のマウスと比較した場合に、改善されたB細胞機能を示した。XenoMouse I系統のマウスは、抗原投与に対してかなり大きい免疫応答を上昇させた(mount)とはいえ、B細胞のそれらの産生は、野生型マウスのほんの20%〜25%のみであり、そしてこれらは抗原に対する制限された応答を有した。
両方の特徴は、それらの制限されたV遺伝子レパートリーに関連するようである。
【0071】
(L6系統)
L6系統は、内因性マウスIgのDIバックグラウンドに対するヒトIgMκ抗体を産生するマウスである。L6マウスは、挿入されたヒト重鎖および挿入されたヒトκ軽鎖を含む。L6系統は、二重不活化バックグラウンドに対して重鎖挿入物を含むマウス(L6H)と、二重不活化バックグラウンドに対してκ軽鎖挿入物を有するマウス(L6L)との交配を通して作製される。重鎖挿入物は、VH6−1で始まり、そしてVH3−65で終わり、そして主なD遺伝子クラスター(約32)、JH遺伝子(6)、介在性エンハンサー(Em)、Cμおよび約25kb過ぎたCδを通って含めて約66個のVHセグメントを含む、生殖系列の配置にある、YAC由来のインタクトな約970kbのヒトDNA挿入物を含む。軽鎖挿入物yK2は、Vκ-B3で始まり、そしてVκ-Op11で終わる、約32個のVκ遺伝子を含む、YAC由来のインタクトな約800kbのヒトDNA挿入物を含む。この800kbの挿入物は、Vκ-Lp-13で始まり、そしてVκ-Lp-5で終わる、約100kbの欠失を含む。しかし、このDNAは、Vκ-Lp-13から100kbの過ぎたVκ-Op-1までの生殖系列配置にあり、そしてまたJκ遺伝子、イントロンおよび3’エンハンサー、定常Cκ遺伝子およびKdeを含む[Mendezら,Nature Genetics,15,146−156頁(1997)]。さらに、L6マウスは、ヒトκ軽鎖の優勢な発現、成熟B細胞の大きな集団および正常なレベルのIgMκヒト抗体を示す[GreenおよびJakobovits,J.Exp.Med.,188,483−495頁(1998)]。
【0072】
(XenoMouse IIa系統:)
XenoMouse IIaマウスは、DIバックグラウンドに対して生殖系列配置のメガ塩基サイズのヒトIg遺伝子座を備え、その結果、このマウスは、機能的内因性Igを産生しない、第2世代のXenoMouseTM系統を表す。本質的に、このマウスは、L6系統に対して構築が等価であるが、そのスイッチ配列および調節配列の全体、ならびにマウス3’エンハンサーをシスにおいて有するヒトCγ2遺伝子をさらに含む。このマウスは、約1020kbの重鎖遺伝子座および約800kbのκ軽鎖遺伝子座を含み、これらは、重鎖遺伝子(約66VH)およびκ軽鎖遺伝子(約32Vκ)、ヒト重鎖定常領域遺伝子(μ、δおよびγ)およびκ定常領域遺伝子(Cκ)、ならびに主な同定された調節エレメントの全てを含む、大多数のヒト可変領域遺伝子を含む。これらのマウスは、そのゲノムに含まれた全ての範囲の可変遺伝子を利用し得ることが示されている。さらに、これらのマウスは、効率的なクラススイッチおよび体細胞性高変異(hypermutation)、ヒトκ軽鎖の優勢な発現、成熟B細胞の大きな集団、ならびに正常レベルのIgMκおよびIgGκヒト抗体を示す。このようなマウスは、ヒトIL−8、ヒトEGFレセプター(EGFR)およびヒト腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を含めた複数の免疫原に対する種々のヒト抗体応答を上昇させ、最終的に、ナノモル未満の親和性を有する抗原特異的で完全にヒトのmAbを生じる。この最後の結果は、XenoMouseTMを、任意の所望の特異性で広範な範囲の抗原に対する高い親和性の、完全にヒトの治療的mAbの迅速な単離のための優れた供給源として決定的に実証する。
【0073】
上記の序論から理解されるように、XenoMouse II系統は、成熟B細胞発達を受け、そして強力な成体ヒト様免疫応答を抗原投与に対して上昇させるようである。L6系統はまた、成熟B細胞発達を受けるようである。XenoMouse II系統の場合、著しく異なったB細胞発達プロフィールが観察される。この相違に起因して、動物に導入される可変領域配列の量および複雑さは、B細胞成熟および発達の誘導、ならびに成体ヒト様免疫応答の生成に必須であるようである。従って、ヒト抗体を産生する系統の有用性に加えて、この系統は、正常な免疫応答におけるヒト抗体の産生および機能、ならびに自己免疫疾患および他の障害に特有な異常な応答を研究する際の貴重なツールを提供する。
【0074】
(可変領域−定量的多様性)
抗体の特異性(すなわち、広範な範囲の抗原に対して、そして実際に抗原上の広範な範囲の独立したエピトープに対する抗体を産生する能力)は、重鎖(VH)およびκ軽鎖(Vκ)ゲノム上の可変領域遺伝子に依存すると予測される。ヒト重鎖ゲノムは、約95個のVH遺伝子を含み、そのうちの41個は、免疫グロブリン分子のヒト重鎖の可変領域をコードする機能的遺伝子である。さらに、ヒト軽鎖ゲノムは、約40個のVκ遺伝子をその近位末端に含み、そのうちの25個は、免疫グロブリン分子のヒトκ軽鎖の可変領域をコードする機能的なものである。本発明者らは、抗体の特異性が、可変軽鎖および可変重鎖をコードする複数の遺伝子を含めることによって増強され得ることを実証した。
【0075】
本発明に従って提供されるのは、ヒトIg遺伝子座のかなりの部分を有する、好ましくはヒト重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝子座の両方を含む、トランスジェニックマウスである。それゆえ、好ましい実施形態では、10%を超えるヒトVH遺伝子およびVκ遺伝子が利用される。より好ましくは、約20%、30%、40%、50%、60%を超える、またはさらに70%以上のVHおよびVκ遺伝子が利用される。好ましい実施形態では、それぞれ、ヒトVκ軽鎖ゲノムの近位領域由来の32個の遺伝子および/またはヒトIgH遺伝子座のVH部分由来の66個の遺伝子を含む重鎖構築物および軽鎖構築物が利用される。認識されるように、遺伝子は、順序通りに、すなわち、ヒトゲノム中で見出される順序で、もしくは順序が狂って、すなわち、ヒトゲノム中に見出される順序以外の順序で、またはそれらの組み合わせでのいずれかで含まれ得る。従って、例証として、この遺伝子座のヒトVH領域またはヒトVκ領域のいずれかの完全に順序通りの部分が利用され得るか、またはVHゲノムもしくはVκゲノムのいずれかにおける種々のV遺伝子が、全体的な順序通りの配置は保持しながらもスキップされ得るか、またはVHゲノムもしくはVκゲノムのいずれかの内のV遺伝子が並べ換えられ得るなどである。好ましい実施形態では、ヒト遺伝子座全体は、ヒトにおいて見出されるような、実質的に生殖系列配置でマウスゲノム中に挿入される。いずれにせよ、VHゲノムおよびVκゲノム由来の多様な配置の遺伝子を含むことによって、増強された抗体特異性、そして最終的には増強された抗体親和性をもたらすことが予想され、そして本明細書中に記載される結果は、そのことを実証する。
【0076】
このようなマウスは好ましくは、ヒトDH領域全体、ヒトJH領域全体およびヒトμ定常領域をさらに含み、そしてさらなるアイソタイプの抗体のコーディングおよび生成のための他のヒト定常領域をさらに備え得る。このようなアイソタイプは、γ1、γ2、γ3、γ4、α、εおよびδをコードする遺伝子、ならびに他の定常領域コード遺伝子を適切なスイッチ配列および調節配列とともに含み得る。認識され、そして以下でより詳細に考察されるように、種々のスイッチ配列および調節配列は、任意の特定の定常領域選択に関連して利用され得る。
【0077】
以下の表は、N付加、欠失または体細胞性変異事象を考慮することなく、ランダムなV−D−Jの連結およびκ軽鎖との組み合わせに厳密に基づく、ヒトにおいて可能である抗体組み合わせの多様性を示す。これらの考慮に基づいて、ヒトにおいて任意の特定のアイソタイプについての7×105を超える可能な抗体の組み合わせが存在する。
【0078】
【表1】

【0079】
本発明の好ましい実施形態に関連して、約34個の機能的VH遺伝子および18個の機能的Vκ遺伝子をDH遺伝子、JH遺伝子およびJκ遺伝子の完全な相補体を有するマウス中に含むことによって、抗体産生の可能な多様性は、4.2×105個の異なる抗体の桁である。上記のように、このような算出は、N付加も体細胞性変異事象も考慮しない。それゆえ、本発明によるマウス(例えば、L6系統およびXenoMouse II系統)が、かなりの抗体多様性を提供することが認識される。好ましい実施形態では、マウスは、N付加または体細胞性変異事象を計上することなく、2×105を超える異なる重鎖V−D−Jの組み合わせおよびκ軽鎖V−Jの組み合わせを生じる能力を有するように設計される。
【0080】
(可変領域−定性的多様性)
定量的多様性に加えて、V−遺伝子の定量的選択(すなわち、多数の多様なV−遺伝子)および/またはV−遺伝子の定性的選択(すなわち、特定のV−遺伝子の選択)は、本明細書中で本発明者らが「定性的多様性」と呼ぶものにおいて役割を果たすようである。「定性的多様性」とは、本明細書中で使用される場合、V−D−J再編成における多様性をいい、ここで結合部の多様性および/または体細胞突然変異(somatic nutation)事象が導入される。重鎖再編成の間、特定の酵素(RAG−1、RAG−2、およびおそらく他の酵素)は、抗体遺伝子のコード領域を表すDNAの切断についての原因である。末端のデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Tdt)活性(これは、V−D遺伝子エキソンとD−J遺伝子エキソンとの間のヌクレオチドのN末端付加の原因である)は、アップレギュレートされる。類似の酵素および他の酵素(SCIDおよび他のDNA修復酵素)は、これらのコードセグメントの結合部で起こる欠失の原因である。結合部の多様性は、N付加事象および相補性決定領域3(CDR3)の形成の両方をいう。理解されるように、CDR3は、D領域にわたって位置し、そしてV−DおよびV−J結合部事象を含む。従って、D−J再編成およびV−D再編成の両方の間のN付加および欠失は、CDR3多様性の原因である。
【0081】
N付加およびCDR3付加によって作製される結合部の多様性は、抗体の特異性を発生するという明確な役割を果たす。
【0082】
本発明に従って、再編成されたV−D−J遺伝子配列は、予想された成人ヒトN付加長に匹敵するN付加長を示す。さらに、CDR3配列に対応するオープンリーディングフレーム(ORF)にわたるアミノ酸配列は、予想された成人ヒトCDR3長に匹敵するCDR3長を示す。このようなデータは、定量的可変領域多様性および/または定性的可変領域多様性が、ヒト様結合部多様性を生じることを示す。このような結合部多様性は、よりいっそうのヒト様抗体特異性をもたらすことが予想される。
【0083】
(可変領域−親和性)
本発明者らは、可変領域の包含の増大と抗体の特異性との間の直接的な因果関係を結論的に実証したわけでないが、このような多様性を提供することを通して、広範な多数の抗原に対する免疫応答を上昇させるマウスの能力が可能でありかつ増強されるということがありそうであり、そしてこのことが予想される。さらに、このようなマウスは、個々の抗原または免疫原上の広範な多数のエピトープに対する免疫応答を上昇させるために、より備えができているようである。本発明者らのデータから、本発明に従って産生される抗体はまた、増強された親和性を有するようである。このようなデータは、本発明に従うマウスとXenoMouse I株との間の比較、ならびにGenPharm InternationalおよびMRCの公開された結果の考慮を包含する。XenoMouse I株に関連して、上述のように、このようなマウスは、サブノーマルなB細胞産生および抗原に対する限られた応答のみを有する。このような結果は、部分的に、限定されたV−遺伝子のレパートリーに関連するようである。同様に、GenPharm InternationalおよびMRCによって報告された結果は、多様な抗原に対する限定された応答を示す。
【0084】
特定の理論または本発明の操作の様式に束縛されることを望まないが、増強された親和性は、V−領域の多数および複雑さの供給から生じるように見えるようである。本発明者らのデータから、より多くの数の供給および/またはV−遺伝子配列の性質の選択は、結合部の多様性(N付加および領域3(「CDR3」多様性)を決定する相補性の形成)を増強し、これは、成人ヒト様免疫応答に代表的であり、そして抗体の親和性の成熟において実質的な役割を果たしている。このような抗体は、親和性の増強をもたらす体細胞突然変異事象においてより有効でありかつより効率的であることもまた、可能性がある。結合部の多様性および体細胞突然変異事象の各々は、以下でさらに詳細に議論される。
【0085】
親和性に関して、複数のVH遺伝子およびVκ遺伝子の使用(すなわち、Vκ軽鎖ゲノムの近位領域上の32の遺伝子およびゲノムのVH部分上の66遺伝子の使用)を通して誘導された抗体親和性速度および定数は、約0.50×10-6よりも大きな結合速度(M-1-1でのka)、好ましくは2.00×10-6よりも大きな結合速度、そしてより好ましくは、約4.00×10-6よりも大きな結合速度;約1.00×10-4より大きな解離速度(S-1でのkd)、好ましくは約2.00×10-4よりも大きく、そしてより好ましくは約4.00×10-4よりも大きく;そして約1.00×10-10より大きな解離定数(Mで)、好ましくは約2.00×10-10よりも大きく、そしてより好ましくは約4.00×10-10よりも大きい。
【0086】
好ましくは、このようなマウスはさらに、機能的に内因性の免疫グロブリンを産生しない。このことは、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子座の不活化(すなわち、ノックアウト)を通して好ましい実施形態において達成される。例えば、好ましい実施形態において、マウス重鎖J領域およびマウスκ軽鎖J領域ならびにCκ領域が、この領域を置換または欠失させる相同組換えベクターの使用を通して不活化される。
【0087】
(可変領域−B細胞発生)
B細胞発生は、Klaus B Lymphocytes(IRL Press(1990))およびT.Honjoら、Immunoglobulin Genes(Academic Press Ltd.San Diego,CA(1998))の第1章〜第3章に概説されている。一般的には、哺乳動物において、血球(B細胞およびT細胞を含む)発生は、共通の多能性幹細胞から生じる。次いで、リンパ球は、共通のリンパ球前駆細胞から進化する。初期の妊娠期間に続いて、B細胞の開始は、肝臓から骨髄にシフトする。B細胞の開始は、哺乳動物の生涯を通じて骨髄に残る。
【0088】
B細胞のライフサイクルにおいて第1の一般的に認識可能な細胞は、プロプレB細胞であり、これは骨髄において見出される。このような細胞は、重鎖のV−D−J再編成を開始するが、まだタンパク質を作らない。次いでこの細胞は、大きく、迅速に分裂する、プレB細胞Iに進化する。この細胞は、細胞質性のμ細胞である。次いで、このプレBI細胞は分裂を停止し、縮み、そして軽鎖V−J再編成を受け、プレB細胞IIになる。この細胞は、髄を未成熟なB細胞のままにする表面IgMを発現する。出現する未成熟のB細胞の大部分は、表面のIgDを発生および産生することを継続する。このことは、脾臓に主に存在する、完全に成熟した免疫応答性末梢B細胞としての分化および発生の完了を示す(HardyおよびRolink、Ann.NY.Acad.Sci.、764、19〜24頁(1995);RolinkおよびMelchers、Immunol.Lett.、54、157〜161頁、(1996))。しかし、デルタ定常領域を除去し、そしてなお、免疫応答性細胞を得ることが可能である。
【0089】
B細胞分化および発生は、表面マーカーの使用を通してモニタリングおよび/または追跡され得る。例えば、B220抗原は、プレB細胞IまたはIIに対する比較において成熟B細胞上で比較的な量で発現され得る。従って、B220+でありかつ表面IgM+(μ+)である細胞は、成熟B細胞の存在を決定するために使用され得る。さらに、細胞は、表面IgD発現(δ+)についてスクリーニングされ得る。別の抗原である、熱安定性抗原は、プレB細胞Iによって、そして後の発生段階において発現され得る。
【0090】
【表2】

【0091】
*導入遺伝子上にδ遺伝子の機能的コピーの存在を仮定している。
【0092】
B細胞マーカー(例えば、上記で言及したようなマーカー)の使用を通して、B細胞の発生および分化がモニタリングおよび評価され得る。
【0093】
本発明者らは、DIマウス(重鎖V−D−J再編成または軽鎖V−J再編成を受けないマウス)が、成熟B細胞を産生しないことを以前に実証した。実際、このようなマウスは、プロプレB細胞の産生で停止しており、そしてB細胞は骨髄から末梢組織(脾臓を含む)に移動しない。従って、B細胞発生および抗体産生の両方は、完全に停止する。同じ結果が、重鎖のみが不活化されたマウスにおいても見られた。B細胞発生および分化が、骨髄において停止した。
【0094】
本発明者らのXenoMouseI株は、機能的で、いくぶん成熟したB細胞を生成した。しかし、骨髄および末梢組織の両方におけるB細胞の数は、野生型マウスと比較して有意に減少した。
【0095】
対照的に、本発明者らのXenoMouseII株およびL6株は、予想に反して、ほぼ完全なB細胞再構築物を保有する。従って、本発明に従って、本発明者らは、可変領域遺伝子の定量的包含および定性的包含を通して、B細胞分化および発生が非常に再構築され得ることを実証した。B細胞分化および発生の再構築は、免疫系の再構築を示す。一般的に、B細胞再構築は、野生型コントロールに対して比較される。従って、本発明の好ましい実施形態において、挿入されたヒト可変領域を有するマウスの集団は、野生型マウスの集団と比較した場合、約50%よりも高い再構築を保有する。
【0096】
(XenoMouseによるアイソタイプスイッチ)
本明細書中で詳細に議論されるように、予想されるように、XenoMouseIIマウスは、ヒト導入遺伝子によってコードされるmuアイソタイプから、その導入遺伝子によってコードされるγ−2アイソタイプへの、効率的かつ有効なアイソタイプスイッチを受ける。上述のように、本発明に従うマウスはさらに、さらなるアイソタイプの生成のために他のヒト定常領域を備え得る。このようなアイソタイプには、γ1、γ2、γ3、γ4、α、β、ε、δ、および他の定常領域をコードする遺伝子が含まれ得る。代替的な定常領域は、同じ導入遺伝子(すなわち、ヒトmu定常領域から下流)上に含まれ得るか、または代替的に、このような他の定常領域は、別の染色体上に含まれ得る。このような他の定常領域が、導入遺伝子をコードするヒトmu定常領域を含む染色体と同じ染色体上に含まれる場合、他のアイソタイプ(単数および複数)へのシススイッチが達成され得ることが理解される。他方、このような他の定常領域が、導入遺伝子をコードするmu定常領域を含む染色体とは異なる染色体上に含まれる場合、他のアイソタイプ(単数および複数)へのトランススイッチが達成され得る。このような再編成は、広範な多数の抗原に対する抗体の産生のためのマウスの設計および構築における途方もなく大きな可撓性を可能にする。
【0097】
定常領域は、公知のスイッチおよびそれらに付随する調節配列を有することが理解される。マウスおよびヒトの定常領域遺伝子のすべては、1989年までに配列決定および公開された。Honjoら、「Constant Region Genes of the Immunoglobulin Heavy Chain and the Molecular Mechanism of Class Switching」、Immunoglobulin Genes(Honjoら編、Academic Press(1989))を参照のこと、この開示は、本明細書によって参考として援用される。例えば、米国特許出願番号07/574,748(この開示は、本明細書によって参考として援用される)において、ヒトγ−1定常領域のクローニングは、先行技術からの既知の配列情報に基づいて予測された。再編成されていない、スイッチされていない遺伝子において、全体のスイッチ領域は、第1のγ−1定常エキソンの5’末端からの5kb未満で開始する配列中に含まれることが示された。従って、スイッチ領域はまた、Ellisonら、Nucleic Acids Res.10:4071−4079(1982)において開示された5’5.3kb HinfIIIフラグメント中に含まれた。同様に、Takahashiら、Cell 29:671−679(1982)もまた、Ellisonにおいて開示されたフラグメントがスイッチ配列を含み、そしてこのフラグメントは、7.7kbのHindIII〜BamHIフラグメントとともに、重鎖アイソタイプスイッチ導入遺伝子構築に必要であるすべての配列を含むに違いないことを報告した。
【0098】
従って、選択するいかなるヒトの定常領域も、過度の実験なしに本発明に従ってマウスに容易に組込み得ることが理解され得る。このような定常領域は、ナイティブなスイッチ配列(すなわち、それぞれ、ヒトのγ1、γ2、γ3、またはγ4のスイッチを伴うヒトのγ1、γ2、γ3、またはγ4定常領域)に付随し得るか、または他のスイッチ配列(すなわち、ヒトγ2スイッチを伴うヒトγ4定常領域)に付随し得る。種々の3’エンハンサー配列(いくつか例を挙げれば、例えば、マウス、ヒト、またはラット)もまた、使用され得る。同様に、他の調節配列もまた、含まれ得る。
【0099】
インビボでのアイソタイプスイッチの1つの代替として、および/またはそれに加えて、B細胞が「キメラ」抗体の分泌についてスクリーニングされ得る。例えば、L6マウスは、完全なヒトIgM抗体を産生することに加えて、マウス定常領域(例えば、種々のγ(すなわち、マウスIgG1、2、3、4)など)に結合された完全ヒト重鎖V、D、J領域を有する抗体を産生する。このような抗体は、それら自体の的確さにおいて非常に有用である。例えば、ヒト定常領域は、当該分野で周知のインビトロアイソタイプスイッチ技術を通して、抗体上に含まれ得る。あるいは、および/または、さらに、マウス定常領域をほとんど含まないかまたは全く含まない、このような抗体のフラグメント(すなわち、F(ab)およびF(ab’)2フラグメント)が調製され得る。
【0100】
上記に議論したように、抗体産生に対する最も重要な因子は、所望の抗原または抗原上のエピトープに対する特異性である。その後、抗体のクラスが、治療的な必要性に従って重要になる。換言すれば、抗体の治療的指標は、特定のアイソタイプまたはクラスを提供することによって増強されるのであろうか。この疑問の考慮は、補体結合の問題などを惹起し、次いで、抗体の特定のクラスまたはアイソタイプの選択をさせる。γ定常領域は、抗体の親和性成熟を補助する。しかし、導入遺伝子上のヒトγ定常領域の包含は、このような成熟を達成するために必要ではない。むしろ、このプロセスは、muコードされた導入遺伝子上でトランススイッチされるマウスγ定常領域と共に、同様に進行するようである。
【実施例】
【0101】
(実施例1:マウスγ1−ヒト γ4またはマウスγ1−ヒト γ1のためのYACベクター)
ヒトγ2スイッチエレメントおよびヒトCH γ2エキソンを、マウスγ1スイッチエレメントおよびヒトCγ1エキソンまたはヒトCγ4エキソンのいずれかで置換するために、親のYAC yH1Cを標的化するための置換ベクターを調製した(図1)。このベクターを、pMuShu1およびpMuShu4として設計した(図5)。このベクターを、pACYC177として公知の低コピー数クローニングベクターを使用して構築した。このベクターpACYC177は、New England Biolabs,Inc.,Beverly,MAから利用可能であり、そしてその配列は、配列登録番号Genebank #X06402の下で、Genbank配列データベースにおいて見出され得る。複製の低コピー数起点は、E.coli中で増殖させた場合に、プラスミドDNAの望ましくない再編成または欠失を妨害するために有用である。
【0102】
第1の工程は、標的化するベクターについて必要とされるエレメントを適応させるために、pACYC177中にリンカーを導入することであった。このリンカーは、以下の制限部位を含んだ:NheI−SalI−SmaI−NotI−EcoRI−XbaI−SacI−BamHI。
【0103】
このリンカーのヌクレオチド配列(配列番号2)を以下に示す:
5’−cta gtc gac aaa tat tcc ccg ggc ggc cgc tta cgt atg aat tca gcg cgc ttc tag aac tcg agt gag ctc。
【0104】
このリンカーの相補鎖のヌクレオチド配列(配列番号3)を以下に示す:
5’−gat cga gct cac tcg agt tct aga agc gcg ctg aat tca tac gta agc ggc cgc ccg ggg aat att tgt cga。
【0105】
(制限酵素)
もし他に記述がなければ、全ての制限酵素は、New England Biolabs Inc.(Beverly,MA)から購入された。さらに、全ての制限消化条件は、以下の条件に従って、標準化された:1μgのDNAを、20μlの適切な制限緩衝液中で、5ユニットの制限酵素を1時間かけて使用することで消化した。制限緩衝液は、特定の酵素について製造業者によって特定化され、そしてこの組成物は、New England Biolabs Inc.(Beverly,MA)の商品カタログで提供される。
【0106】
リンカーを導入するために、pACYC177を、製造業者の指示に従って制限酵素NheI/BamHIで消化した。上に示されるようなリンカーは、アガロースゲルで単離され、そしてGeneclean kit(Bio 101) (Vista,CA)を使用して精製したpACYC177の2208bpフラグメントで連結される。この工程により、NheIおよびBamHI制限部位を含むベクターの必須でない領域のみを除去した。
【0107】
次の工程は、酵母URA3遺伝子を、プロモータおよびYACを含む酵母細胞の選択のための標的といてコード配列を用いて導入し得る。プロモータおよびコード配列を含むURA3遺伝子のDNA 1971bpフラグメントは、pTAC4から得られた。これは、American Type Culture Collection(ATCC)カタログ番号67379(Manassas,VA)から利用可能であり、そしてこの配列は、寄託番号#UO1086を使用してGenebankから得られ得る。URA3フラグメントはまた、標的化のために十分な3’相同体を提供する。このプラスミドpYAC4を、製造業者の指示に従って、制限酵素(SalIおよびMscI)で消化した。同様にベクターとリンカーの組合せ(pACYCI77/リンカー)を、製造業者の指示に従ってSalIおよびSmaIで消化した。続いて、この2つの制限酵素ヌクレオチドで消化したDNA pACYC177およびURA3を、共に連結しさせ、Int2を生成した。
【0108】
次の工程により、製造業者の指示に従って、XbaIおよびSacIでInt2をまず消化することでβガラクトシダーゼ遺伝子(βGal)を導入し得た。
このβGal遺伝子を、Cell Genesys,Inc.(Foster City,CA)から入手可能なベクターpGK β Galからクローニングした。このDNA pGK β Galを、制限酵素(XbaIおよびSacI)で消化した。pGK β Gal由来の線状化Int2および2553kbフラグメントを共に連結させ、Int3と呼ばれる次の中間体を産生した。
【0109】
上のβGal発現構築物は、不完全である。βGalの欠損部位は、pGKβGalプラスミドを制限酵素(SacIおよびNcoI)で消化することによって得られる。pGKβgal消化由来の1165kbフラグメントを、アガロースゲル電気泳動によって単離した。ここで、このフラグメントを、エチジウムブロミド染色ゲルから切除し、そしてGeneclean kit(Bio 101)(Vista,CA)を上記のように精製した。同様に、Int3を、製造業者の指示に従って、制限酵素SacIで消化した。この線状化Int3を、アガロースゲル電気泳動により単離した。pGKβgal由来の1165bpフラグメントおよびこの線状化Int3を、酵素T4DNAリガーゼ(New England Biolabs,Inc.から市販)を使用して共に連結させた。このDNAフラグメントを再単離し、次いで、末端を平滑末端化するためにKlenowフラグメントで処理した。SacI平滑末端に平滑末端化連結する、線状化DNAを、酵素(NcoI)を使用して環状にし、Int4を産生する。
【0110】
(5’相同体の導入)
標的化組換えのための5’ホモログの領域を、3’末端の助けによりA−287−C10 YACの配列から単離し、そしてプラスミドppKMlcへ優先的にクローン化した(Mendezら,NaLure Genetics 15:146−156(1997)を参照のこと)。A287−C10 YMCを、ヒトVH6遺伝子のPCRプライマーを使用する、Washington University human YAC library(Washington University,St.Louis,MO)からのDNAプールをスクリーニングすることによって単離した。A287−C10 YMCの単離および特徴付けを、1994年2月3日に刊行された国際特許出願WO94/02602(Kucherlapatiら)に詳細に記載した。この開示は、本明細書中で参考として援用されている。
【0111】
Int4を、制限酵素(NotIおよびSnaBI)で消化し、次いで以下のようなCalf Intestineホスファターゼで処理した:制限消化反応20μl中のDNA1μg、5ユニットのCalf Intestineホスファターゼ(New England Biolabs.,Beverly,MA)。酵素およびDNAを、30℃で30分間インキュベートし、次いで、さらに30分間65℃で加熱し、ホスファターゼを変性させた。このベクターppKMlcを、制限酵素(EcoRI)で消化し、次いでKlenowフラグメントで処理して、EcoRI部位を除去するために平滑末端を作製した。線状化ppKMlcを、製造業者の指示に従って、制限酵素NotIで単離および消化した。約1kb5’相同体のフラグメントを、単離した。次に、1kbフラグメントを、NotIおよびSnaBIで消化したInt4と共に連結した。このDNA調製物を、Int5と呼ぶ。
【0112】
γ1およびγ4CH1、ヒンジ、CH2、およびCH2およびCH3コードエキソン、膜貫通エキソンおよび下流の配列の約3kb(それぞれ約7kb)を、pBR322由来の2つの中間体DNAを介して、組換えベクターに導入した。
【0113】
第1に、pBR322を、HindIIIで消化し、Calf Intestineホスファターゼ(CIP)で処理し、そしてP1クローン♯1737(G1)由来のγ1配列を含む、約7kbHindIIIフラグメントと連結した。P1ファージクローンをGenome Systems,Inc.(St.Louis,MO)から購入した。この結果、中間体プラスミドpCG12を得た。
【0114】
第2中間体を、制限酵素(HindIIIおよびBamHI)でpBR322を消化することによって構築した。この3986kbフラグメントを、Calf Intestineホスファターゼで処理し、そしてGenome Systems,Inc.(St Louis,MO)から購入したBACクローン#176E10由来のヒトγ4配列を含む約7kbのHindIII/BamHIフラグメントで連結した。この中間体プラスミドをpCG43を呼ぶ。
【0115】
標的化ベクターの構築物を完成させるために、新規なリンカーを、Int5のXbaI制限部位にクローン化した。このリンカーは、以下の制限部位を有した:XbaI・kill−Mfel−SspI−HindIII−SnaBI−BclI−XhoI−MluI−Xba・kill。その部位にクローン化されたリンカーを有するInt5を、Int6と呼ぶ。このリンカー配列番号4を、以下に示す:
5’cta ggc aat tga taa tat taa gct tta cgt atc tga tca tcc tcg aga cgc gtg相補鎖配列(配列番号5):
5’cgt taa cta tta taa ttc gaa atg cat aga cta gta gga gct ctg cgc acg atc。
【0116】
このリンカーは、以下のInt6において得られた:
A287−SnaBI(ex)−EcoRI−BssHII−XbaI(ex)−MfeI−HingIII−Bc1I−XhoI−M1uI−pGK−β Gal。
【0117】
制限部位XbaI・killは、特定のXbaI部位を、大きなDNAへの連結の際に排除されることを示す。このリンカーは、容易に消化されるので、その結果、このリンカーは、XbaI部位に連結し得るが、この部位は、連結を切り抜けられない。リンカーを含む特定のXbaI部位を、リンカーを第1にクローン化することによって決定し、次いで、以下の組みの制限酵素の各々でDNAを消化した:NotIおよびHindIII;XbaIおよびSphI;ならびにMlulおよびSphI。このリンカーの導入により、1つのXbaI部位を除去する。Int6のリンカーの位置を、新しく誘導したHindIII部位とInt5に存在したNotI部位との間の距離によって決定した。
【0118】
(マウスγ1スイッチ領域のクローン化)
プラスミドEH10は、University of Michiganから得られ、そしてこれは、HindIII/EcoRIフラグメント上のマウスのγ1スイッチ領域を含む、BR3222ベースのプラスミドである(M.R. Mowattら,J.Innunol.136:2647−2683(1983))。このプラスミドを、制限酵素(EcoRIおよびHindIII)で消化し、そしてマウスγ1スイッチを含む10kbのフラグメントを、上記のように単離し、そして精製した。
【0119】
(pMSL4の構築物)
pMSL1の構築物は、3つの方法の連結を含む。第1のエレメントは、上記のようにEH10を消化するEcoRIおよびHindIIIから単離したマウスγ1スイッチを含む10kbのフラグメントであった。第2のエレメントは、BamHIおよびEcoRIで消化されたpBR322であった。最終のエレメントは、約7kbのHindIIIおよびBamHIフラグメント上のヒトγ4を含む、pBR322ベースのプラスミド(pCG43)であった。3つの全ては、pMSL4を生成するために共に連結される。
【0120】
(pMSL1の構築)
pMSL1の構築物はまた、3つの方法の連結を含む。第1のエレメントは、上記のようにEH10を消化するEcoRIおよびHindIIIから単離したマウスγ1スイッチを含む10kbのフラグメントであった。第2のエレメントは、BamHIおよびEcoRIで消化されたpBR322であった。最終のエレメントは、ヒトγ1の約7kbフラグメントを含むpBR322ベースのプラスミドpCG12であり、これは、HindIII kill−HamHIリンカーを7kbフラグメントの3’末端上のHindIII部位に導入することによって改変された。このようにして、改変したプラスミドは、BamHIおよびHind IIIと共に2重で消化した後、7kbのHindIII/BamHIフラグメントを放出する。続いて、フラグメントを3ピースの連結に使用する。
【0121】
(マウスの3’エンハンサー)
本発明者らは、pIBにクローン化したマウス3’エンハンサー(HSIg2)を含むpIBγ2の4kb標的化ベクターのMIuIフラグメント由来のStuI制限消化により、エンハンサーの0.9kbのコア部分を単離した(M.J.Mendezら,Nature Genetics,15:146−156(1997))。
【0122】
本発明者らは、Int6を、制限酵素XhoIで消化し、続いて、Klenowフラグメントで処理し、平滑末端を作製した。本発明者らは、得られた線状化Int6をマウス3’エンハンサーの0.9kbのStuIフラグメントで連結し、Int7を作製した。本発明者らは、EcoRIを使用してサンプルクローンで制限消化を実施することによってクローン化反応を確認した。さらに、本研究者らは、NcoI;NcoIおよびHindIII;ならびにHindIIIおよびPvuIIおよび0.9bp StuIフラグメントの公知の制限地図で消化することによるフラグメントの所望の起点を確認した。
【0123】
本発明者は、別のリンカーをプラスミドInt7に導入した。本発明者らは、MfeIおよびSnaBI(2重消化)でInt7を消化し、続いて、Calf Instestineホスファターゼで処理した。次に、本発明者らは、連結反応を実施し、そして中間体Int8を作製することによって以下のリンカーを導入した。リンカーInt7によって挿入される制限部位は、以下のようであった:MfeI・kill−HindIII−SnaBI−BclI−BglII−Bam HI−Bg1II−NheI・kill。さらに、MfeI・killは、MfeI部位が、大きなDNAへの連結で排除されたことを示した。
【0124】
このリンカーのヌクレオチド配列(配列番号6):
5’aat taa gct tgt acg tac tga tca aga tct gga tcc aga tct。
【0125】
相補鎖のヌクレオチド配列(配列番号7):
5’aga tct gga tcc aga tct tga tca gta cgt aca agtt。
【0126】
(標的化ベクター)
完全標的化ベクターを、制限酵素(SceIおよびHindIII)でInt8を消化することによって構築し、続いて、Calf Intestineホスファターゼで処理した。このプラスミドpMSL1およびpMSL4を、制限酵素(SceIおよびHindIII)で部分的に消化した。17kbのフラグメントを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により単離した。精製した17kbフラグメントを、Int8で連結し、図5に示されるような最終標的化ベクターを作製した。
【0127】
(実施例2)
(yH1C YACのγ1またはγ4構築物の標的化)
TV1またはTV4ベクター(5μgDNA)を、制限酵素(NotI)で消化することによって線状化した(図5)。このDNAをフェノール抽出によって精製し、続いてフェノール/クロロホルム抽出によって精製した。次いで、DNAをエタノールで沈殿させ、次いで、LiAc形質転換プロトコールを使用してyHIc YACを含む酵母クローンの形質転換に使用した(Schiestl,R.H.ら,Curr.Genet.16,339−346(1989)を参照のこと)。形質転換物をSC−URA寒天培地プレート上にプレート化し、そしてコロニーが現れてくるまで(すなわち、約5〜6日間)、22℃でインキュベートした。SC−URAプレートは、酵母の増殖のための培地を含み、この酵母は、ウラシルを含まないので、ウラシル自体を産生し得る酵母コロニーのために選択する。同様に、SC−LYSプレートは、酵母の増殖のための培地を含み、この酵母は、リジンを含まず、リジン自体を産生し得る酵母コロニーのために選択する。得られたコロニーをSC−URAプレートおよびSC−LYSプレート上に再び収集し(遺伝子試験のため)、LYSマーカーの欠損について調べた。SC−URA上で増殖しそしてSC−LYS上で増殖しない唯一のクローンを、YPDA培地中、22℃で48時間かけて増殖させた。YAC DNAを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離および分析し、所望のアイソタイプ置換が予想通りに生じるかどうかを評価した。この場合、ヒトγ1またはγ4CHエキソンが、ヒトγ2CHコードエキソンで置換されるべきである(図1)。ここで使用される酵母培地は、BIO 101(Vista,CA)から得られる捕捉物から調製された。
【0128】
このアッセイに使用するためのPCRプライマーは、以下の通りであった:
HGI:5’cac acc gcg gtc aca tgg c (配列番号8)
HG3:5’cta ctc tag ggc acc tgt cc (配列番号9)。
【0129】
PCR反応は、以下の35サイクルからなる:1サイクルにおき、94℃で15秒間、続いて60℃で45秒間、次いで72℃で90秒間。HG1プライマーは、コンセンサスヒトCγ1、Cγ2、Cγ4アライメント上のヌクレオチド181に配置された。そしてプライマーHG3は、このアライメントのヌクレオチド994に配置された。これらのプライマーは、Cγ1、Cγ2、およびCγ4アイソタイプ由来のDNAを増幅する。
【0130】
ヒトCγ遺伝子において制限部位多型に起因して、テンプレートDNAの特定のアイソタイプは、DNAフラグメントの独特のセットを得るために、PCR産物の制限消化により決定され得る。例えば、この制限酵素PvuIIは、Cγ2DNAがPCR産物のテンプレートである場合、PCR産物を621bpおよび196bpの2つのフラグメントに制限するが、Cγ1またはCγ4がテンプレートである場合、この産物を切断しない。同様に、この制限酵素Eco47IIIは、Cγ1が得られる場合、PCR産物を438bpおよび379bpの2つのフラグメントへ制限する。最後に、この制限酵素Bg1IIは、Cγ4が得られる場合、PCR産物を686bpおよび125bpの2つのフラグメントへ制限する。この方法において、IgGの全3種類のイソタイプが識別され得る。
【0131】
特徴付けの次のレベルにおいて、正確な遺伝子および所望のIgGイソタイプを示す全ての酵母クローンを、サザンブロットアッセイによってさらにスクリーニングした(J. Sambrookら Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第9章,31−45頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))。各クローンについてDNAの5μgの試料を、制限酵素(HindIII、EcoRIおよびBam HI)で一晩消化した。置換ベクター上で起点標的として役立つyHIC YAC DNAをプロトコールとして使用した。この消化したDNAを、0.8%のアガロースゲル上で分離し、エチジウムブロマイドで染色し、撮影し、次いでナイロン膜上で移動させた(Gene Screen Hybridization Membrane,NEN Life Sciences)。次に、YAC候補物を、以下のIg遺伝子由来のハイブリダイゼーションプローブを使用するサザンブロットでチェックした:D,mu,J,Δ,マウス3’エンハンサー,Cgl,4,V1−6(M.J.Mendezら,Genomics 26,294−307(1995);M.J Mendezら,Nature genetics第15巻,146〜156 (1997)(V3プローブ)を参照のこと)。
【0132】
以下のプローブを、サザンブロットに使用した:
HG1:CAC ACC GCG GTC ACA TGG C (配列番号8);
HG3:CTA CTC TAG GGC ACC TGT CC (配列番号9)。
これらのプライマーは、γ1,2,および4に対して約820bpフラグメントを増幅する。いずれも、非常に相同性である場合にプローブとして使用され得る。
【0133】
VH5を増幅するために、以下のプライマーを使用した:
VH5A:5’GTC GAC GGG CTC GGG GCT GGT TTC TCT(配列番号10)
VH5B:5’GGG CCC TGA TTC AAA TTT TGT GTC TCC(配列番号11)。
【0134】
HPRTのために以下のプライマーを使用した:
REP3:5’CTG GAG TCC TAT TGA CAT CGC C (配列番号12)
REP4:5’GGT TCT TTC CGC CTC AGA AGG (配列番号13)。
【0135】
そして最後にCmuを増幅するために以下のプライマーを使用した:
Jm1:5’GCT GAC ACG TGT CCT CAC TGC (配列番号14)
Jm4:5’CCC CAG TTG CCC AGA CAA CGG (配列番号15)。
【0136】
最後に、本発明者らは、CHEFゲルパルス−フィールドゲル電気泳動を使用するYACの一般構造の完全な状態を確認した(CHEF DR−II,Bio Rad Life Sciences,Hercules,CA)。
【0137】
本発明者らは、yH2BmとしてYACコードCγ1およびyH2CmとしてYACコードヒトCγ4を消化した。
【0138】
(実施例3)
(yHIC YACをγ1(TV G1)およびy4(TV G4)にレトロフィッティングするためのベクターの構築)
yH1C YACをyHG1およびyHG4にレトロフィット(retrofit)する標的化ベクターを調製するためのベクター構築は、図6に概略的に示される。この標的化ベクターは、New England Biolabs Inc.(Veverly、MA)から入手可能なpACYC177(Genebank #X06402)の骨格上に構築した。本発明者らは、リンカーをpACYC177に導入して、マウス3’エンハンサーのクローニングを促進した。本発明者らは、このリンカーを含むpACYC177をInt9と称した。このリンカー中の制限酵素クローニング部位の配置は、以下の通りである:HindIII−SalI−MluI−PacI−FseI−HindIII。リンカーヌクレオチド配列(配列番号16)を以下に示す。
【0139】
5’agc ttg tcg aca cgc gtt taa tta agg ccg gcc a
相補鎖のヌクレオチド配列(配列番号17):
5’ agc ttg gcc ggc ctt aat taa acg cgt gtc gac a
本発明者らは、yHIC標的化ベクターからマウス3’エンハンサーを約4kb MluIフラグメントとしてクローン化した。4kb エンハンサーフラグメントは、上で示されるリンカーで修飾されたpACYC177のMluIにクローン化され、そしてDNAは、Int 10と称される。マウス3’エンハンサーの適切な配置は、制限酵素NgoMIおよびEagIで予測クローンを消化することにより決定した。
【0140】
(5’相同性領域の増幅)
5’相同性の領域は、pIBγ2標的化ベクターの関連部分のPCR増幅により得られた[M.R.Mowattら、J.Immunol.136:2647〜2683(1983)]。5’相同性領域を増幅するために使用されるプライマーのヌクレオチド配列は、以下である(Genebank登録番号M12389を参照のこと):
プライマー1:5’tgg tgg ccg aga agg cag gcc a(配列番号18)
プライマー2:5’ccg cgg gca tgc aac ttc gta taa tgt atg cta tac gaa gtt att gtg gga cag agc tgg gcc cag g(配列番号19)
プライマー2は、SacIIおよびSphI部位、ならびにlox pエレメントを含む。5’相同性領域を、以下のPCR条件を使用して、PCR増幅した:94℃で3秒間、続いて55℃で30秒、次いで72℃で60秒を20サイクル。次いで、この領域を、TA−TOPOベクターにクローニングした後、配列決定した。TA−TOPOは、Invitrogen,Inc.(Carlsbad,CA)から入手可能である。
【0141】
5’相同性配列決定のためのプライマーを以下に示す:
配列1:gtc tgg ccc ctc tgc tgc(配列番号20)
配列2:cac cca taa aag gct gga(配列番号21)
逆配列1:acg gct cat gcc cat tgg(配列番号22)
逆配列2:tag tga gtg ggc ctg act(配列番号23)。
【0142】
本発明者らは、得られた配列を、ヒトスイッチγ2配列(Genebank #U39934)と比較して、これが同一であることを決定した。
【0143】
(γ4コード領域および3’相同性領域のクローニング)
本発明者らは、制限酵素SacIIを使用して、プラスミドpCG43の部分酵素消化を行うことにより、ヒトγ4コードエキソンおよび3’相同性領域を得た。次いで、本発明者らは、制限酵素BamHIを用いてプラスミドpGS43を消化し、そして本発明者らは、精製した約7kbのフラグメントを、5’相同性を含むTAベクターにクローン化した。本発明者らは、この中間体組換えDNA分子を、IntI G4と称した。
【0144】
IntI G4を、BamHIで消化し、子ウシ腸ホスファターゼで処理し、次いでベクターをアガロースゲル電気泳動を使用して単離した。この単離したベクターを、前に記載されるように、pIB γ2由来の3.4kb BamHIフラグメントに連結した。挿入物の配置は、二重消化物のNotI/hindIIIにより決定した。HindIII部位は、消化後のフラグメントのサイズにより決定されるように、3.4kb BamHIフラグメントの5’末端にあることが決定された。
【0145】
次に、本発明者らは、pACYC177/エンハンサープラスミド中のリンカーの配向を決定する必要があった。これは、SmaI、および以下の二次酵素、SalI、MluI、PacIおよびFseIの各々のうちの1つを使用して、pACYC177/リンカーの二重消化のパネルを調製することにより、行った。リンカーの配向は、得られたフラグメントのサイズにより決定した。
【0146】
pACYC177/エンハンサープラスミド中の制限部位の位置は、以下のとおりである:ClaI/SmaI(pACYC177)−HindIII−FseI−PacI−MluI−((エンハンサー:PstI−PvuII−EcoRI−NcoI−NheI−ApaI))−MluI−SalI)−PfmlI(pACYC177)。
【0147】
次の工程は、URA3遺伝子をpACYC177/エンハンサープラスミドにクローン化することであった。この目的は、標的化ベクターを、選択可能な酵母マーカー、ならびに相同組換えを誘導する3’相同性とレトロフィットすることである。URA3遺伝子をクローン化するために、Int2(実施例1に記載される、本来のTV1およびTV4について構築される)を、SacII/SalIを使用して消化した。同様に、pACYC177/エンハンサープラスミドを、SacII/SalIで消化した。Int2の消化による3.8kbフラグメント、およびpACYC177/エンハンサー由来の5kbフラグメントを、アガロースゲル電気泳動で単離し、そして一緒に連結した。得られたプラスミドは、pACYC177骨格中に、エンハンサーおよびURA3遺伝子を含む。次に工程は、2つ以上のリンカーを、クローン化された3.4kb Mab HIフラグメントを有するInt1 G4に導入することであった。得られた中間体を、Int2 G4と称した。
【0148】
リンカーは、以下のとおりである:NotIkill−FseI−NotIkill、およびリンカー配列:
GGCCATGGCCGGCCAT(配列番号24)
TACCGGCCGGTACCGG(配列番号25)
第2のリンカーは、以下の制限部位を有した:
BamHI−KpnI−EcoRV−MfeI−FseI−SfiI−BamHIkill:
【0149】
【化1】

【0150】
リンカー1を導入する目的は、最後のクローニング工程のためのFseIを提供することならびにNotI部位の1つのを排除することであった。さらに、これは特有のNotI部位を有する最終標的化ベクターを残し、これは、形質転換前にこの標的化ベクターを線状化するために使用した。第2のリンカーを使用して、yH1C YACの完全下流領域を回復するために必要な最後のフラグメント、1.5kbのBamHI/EcoRIフラグメントをクローン化した。
【0151】
リンカー2を、Bam HIを用いる部分消化により導入した。IntI G4(クローン化された3.4kb BamHIフラグメントを有する)を、BamHIで部分的に消化し、そして部分消化物を13kbフラグメントとしてアガロースゲルで単離した。この13kbフラグメントを、子ウシ腸ホスファターゼで処理し、そしてリンカーに連結した。このリンカーの位置およびその配向(これが3.4BamHIフラグメントの3’末端においてBamHIを修正したか否か)は、MfeIおよびNotIでクローンを消化(二重消化)することにより決定した。MfeI部位は、リンカーと共に導入され、そしてNotI部位はベクター中に存在する。相対的なフラグメントのサイズにより、リンカーの位置および配向を同定し得る。リンカーとレトロフィッティングされたプラスミドは、ここでは、Int3 G1およびInt3 G4である。
【0152】
次の工程は、pIBγ2プラスミドのBamHI/EcoRI二重消化により得た1.5kb フラグメントをInt3 G4プラスミドにクローン化することである。この1.5kbフラグメントを、Int3 G4のBamHI部分消化物/MfeI消化物にクローン化した。これは指向性クローニングであったため、配向決定はこの工程で必要なかった。得られたプラスミドをInt4 G4と称した。
【0153】
次の工程は、制限部位NotIkill−FseI−NotIKillでリンカーを導入することであった。Int4 G4をNotIで消化し、子ウシ腸ホスファターゼで処理し、アガロースゲルで単離し、そしてリンカーと連結した。得られたプラスミドをInt5 G4と称した。また、この工程でリンカーの配向を決定する必要はなかった。結果として、特有のNotI部位は排除され、そして1つのFseI部位が加わった。FseI部位の導入の目的は、5’相同性領域から1.5kbフラグメントにわたるフラグメントのpACYC177/エンハンサー/URA3プラスミドへのクローニングを可能にすることである。
【0154】
最終のクローニング工程は、Int5 G4のFseIでの部分消化、続いてアガロースゲルによる13kbフラグメントの単離、およびpACYC177/エンハンサー/URA3の特有のFseI部位への連結であった。この挿入物の配向は、NotI/FseIを用いる二重制限消化により決定した。最終の標的化ベクターをTV G4と称した。
【0155】
ヒトCγ1コードエキソンおよび3’相同性領域とyH1C YACをレトロフィッティングするTVG1標的化ベクターを構築するために、本発明者らは、TV G4の構築のための上記の手順を使用した。本発明者らは、プラスミドpCT12からCγ1コードエキソンおよび3’相同性領域を得た。
【0156】
(実施例4)
(非同種スイッチのためのyH1C YACを標的化するための標的化ベクターTV G1/2およびTV G4/2の構築)
次に、本発明者らはベクター、TV G1/2を構築し、これは5kbのヒトスイッチγ2領域DNAの下流に結合したヒトγ1CHコードエキソンのキメラ構築物を有する(図3)。さらに、このベクターは、γ1CHコードエキソンの3’に位置するヒトγ2膜貫通エキソンを含む(図3)。このベクターはpACYC177ベクターに基づき、New England Biolabs(Beverly、MA)から入手可能である。本発明者らは、以下の手順を使用して、このベクターを構築し、これをTB G1/2と称した:
1. 第1に、5μgのpIBγ2を制限酵素HindIIIおよびBamHIで消化し、そして6.5kbフラグメントをアガロースゲルで単離した。湖のベクターPIBγ2は、2つのEcoRI制限酵素部位に隣接したγ2を有するヒトゲノムDNAを含み、以前はにyH1Cを生成するために使用された。次いで、6.5kbフラグメントをpCRTM2.1ベクター(Invitrogen,Inc.(Carlsbad,CA))に連結した。pCR2.1は、1μgのプラスミドをBamHI/HindIIIで消化し、そして子ウシ腸ホスホターゼで処理し、そしてアガロースゲルで単離することによって調製した。
【0157】
2. 得られたプラスミド(6.5kbフラグメント+pCRTM2.1ベクター)を、制限酵素XmnIを用いる部分消化に供し、次いで制限酵素HindIIIを用いる消化に供した。XmnIを用いる消化はγ2終止コドンの75bp上流で起こる。従って、γ1/γ2キメラ遺伝子の4番目のエキソンは、初期に、2つの3’γ2膜エキソンに加えて、γ2の75bpを含む。γ1およびγ2のコード領域は、この75bp領域にわたって同一であり、効果はない。
【0158】
3. 次に、5μgのpCG12を制限酵素HindIIIおよびXmnIで消化し、そして1.7kbフラグメントをアガロースゲル電気泳動により単離した。ベクターpCG12(これは実施例1に記載される)は、約7kbのヒトγ1を含む。
【0159】
4. pCG12から得られるγ1のコード配列のほとんどを含む1.7kb HindIII/XmnIフラグメントを、工程2に記載されるHindIII/XmnIで部分消化したベクター(6.5kbフラグメント+pCRTM2.1ベクター)に連結した。
【0160】
5. 得られるプラスミドは、膜貫通エキソンを含むγ2の下流領域に結合したγ1のコード領域のキメラ配列を含む。本発明者らは、Eco47IIIを用いて制限消化することによって、プラスミドの組成を確証した。
【0161】
6. 実施例3に記載されるクローン化された5’相同性を有するpCRTM2.1ベクターを、SacIIおよびBamHIで消化した。同様に、本発明者らは、工程5に記載されるプラスミドを、SacIIおよびBamHIで消化(二重消化)し、そして約5kbフラグメントをこのプラスミドから5’相同性を有するpCR2.1ベクターにクローン化した。次いで、本発明者らは、得られたベクターをSacIIおよびSacIIで消化し、そして実施例5に記載されるベクターから得られたこの部位のフラグメントにクローン化した。本発明者らは、SphI消化物によって、このSacII挿入物の配向を決定した。得られたプラスミドは、pCR2.1ベクターの5’相同性の領域から下流にキメラγ1/γ2CHエキソンを含んだ。本発明者らはこのベクターをTA G1/2と称し、このベクターはTAクローニングベクターとして公知の、pCR2.1から誘導され、そしてキメラγ1/γ2CHエキソンを含むことを示す。
【0162】
7. 本発明者らは、工程6に記載されるクローン化された5’相同性を有するpCRTM2.1ベクターを、以下のように、酵母選択性マーカー遺伝子、URA3にレトロフィッティングした:
a. 本発明者らは、Int2(実施例1に記載される)をSalIで消化することによってURA3遺伝子を得た。SalI消化の産物を、Klenowフラグメントとのさらなる反応に供し、平滑末端を作製する。これらの産物を、SacIで連続して消化する。
【0163】
b. 工程6で産生したpCRTM2.1ベクターを、BamHIで消化し、次いでKlenowフラグメントで平滑末端化し、そしてさらにSacIで消化した。
【0164】
c. 7(a)で得られたURA3遺伝子を、7(b)のように、調製されたpCRTM2.1ベクターに連結した。得られたベクターは、NotI部位(一方はInt2におけるリンカー由来であり、他方はpCR2.1中に本来存在する)が隣接したURA3遺伝子の下流を有する5’相同性領域を含む。
【0165】
8. 本発明者らはNotIフラグメントを工程7で産生したプラスミドから切除し、そしてこれをInt1(TV1および4のクローニングのためにも使用される)のNotI部位にクローン化した。本発明者らは、このNotIフラグメントの正確な配向を、EcoRI消化物を使用することによって決定した。得られたプラスミド(本発明者らはInt3を消化した)は、低コピー起源バックグランド(pACYC177)中にURA3遺伝子の下流を有する5’相同性領域を有する。
【0166】
9. G1/2キメラYACに対する最終標的化ベクターの構築を終了するため、本発明者らは、pCR2.1バックグラウンド(工程6で産生される)内にクローン化された5’相同性およびG1/2キメラIgG定常領域を有するベクターを、EcoRI制限酵素で部分消化し、続いてSacI制限酵素で再切断した。本発明者らは、5’相同性領域およびキメラg1/2 IgG定常領域を含む8Kbフラグメントを単離し、それをInt3のEcoRIおよびSacI部位にクローン化し、これによりTV G1/2標的化ベクターが生じた。本発明者らは指向性クローニングによりフラグメントを導入したため、挿入物の配向を決定する必要はなかった。
【0167】
あるいは、工程7の後、本発明者らは、5’相同性およびURA3遺伝子を、XbaIで消化することによって、工程7で記載されるプラスミドから除去した。次いで、本発明者らは、5’相同性およびURA3遺伝子を、工程6に記載されるプラスミドのXbaI部位にクローン化し、図7に示されるTV G1/2ベクターを産生した。
【0168】
本発明者らは、いくらか改変した上記の手順を使用してTV G4/2標的化ベクターを構築し、これは、5kbのヒトスイッチγ2領域DNAおよびヒトγ2CHコードエキソンの上流に連結したヒトγ4コードエキソンを有するキメラ構築物を有する。
【0169】
工程1で産生されたプラスミドを、制限酵素XmnIを用いる部分消化に供し、続いて制限酵素HindIIIで消化した。XmnIによる消化はγ2終止コドンの75bp上流で起こる。従って、γ4/γ2キメラ遺伝子の4番目のエキソンは、初期に75bpのγ2を、2つの3’γ2膜エキソンに加えて含む。この領域において、γ4とγ2との間の単一の塩基対の差違が存在し、これは単一のアミノ酸の変化を生じる。これを修正するために、本発明者らはClontech Laboratories Inc.(Palo Alto、CA)製のDirected Mutagenesis Kitを使用して、ヒトγ2遺伝子において、CからTの特定部位の突然変異誘発を行う。
【0170】
本発明者らは、以下の2つの合成オリゴヌクレオチドを使用して修復を行う:
一方は、配列をγ2からγ4にスイッチするために必要なヌクレオチドを置換し、そしてpCR2.1ベクター中のNotI部位を排除する補助的なオリゴヌクレオチドは、キメラG4/2 7kbフラグメントをクローン化する。
【0171】
CをTで置換するために、本発明者らは以下のオリゴヌクレオチドを使用する:
【0172】
【化2】

【0173】
太字のT残基は、もとのプラスミドにおいてCを置換する。
【0174】
第2のオリゴヌクレオチド(NotI部位を排除する)は、以下である:
【0175】
【化3】

【0176】
このオリゴは、NotI部位(太字で示される)を含み、ここでGは、Aで置換され、この部位を切断する。本発明者らは、プラスミドの対を配列決定して、正確なヌクレオチドが置換されたことを確認する。
【0177】
(実施例5)
(標的化ストラテジー)
本発明者らは、上記ベクターTV1、TV4、TV G1、TV G4、TVG 1/2およびTV G4/2を線状化し、そしてこれらを使用して、yH1C YACを有する酵母細胞培養物を、酢酸リチウム形質転換によって、形質転換した。本発明者らは、引き続いて、これらの線状化したベクターを使用して、上記のようにyH1C上の標的化遺伝子を置換して、新たなYACであるyH2Bm、yH2Cm、yHG1、yHG4、yHG1/2およびyHG4/2を、それぞれ産生した(図1〜4)。本発明者らは、形質転換後に酵母細胞をSC−URA培地上でプレートし、URA3マーカーの取り込みについて選択した。本発明者らは、パルスフィールドゲル電気泳動を使用して、全ての得られたクローンを、YAC完全性について検査した。さらに、本発明者らは、サザンブロットによってクローンを分析し、構造および同一性を確認した。
【0178】
yHG1/2の場合には、得られるYACにおけるURA3遺伝子は、5’相同配列に隣接し、本発明者らは、この遺伝子を、以下のように除去した。
【0179】
本発明者らは、yHG1/2 Yacを含む酵母培養物を、5FOA(URAに対するネガティブ選択)を含む寒天プレート上にプレートした。本発明者らは、得られる5FOA耐性クローンを、上に概説するように、パルスフィールドゲルおよびサザンブロットによって、完全性について検査した。
【0180】
本発明者らは、上記ストラテジーに従って、TVG1ベクターおよびTV G4/2ベクターを使用して、それぞれyHG1 YACおよびyHG4/2 YACを産生する。
【0181】
(実施例6)
(yH2BM YACのES細胞への導入)
本発明者らは、YACであるyH2BMを、以下に詳細に記載するように、酵母スフェロプラスト融合を介して、マウス胚性幹(ES)細胞に導入した。[B.Birrenら、Genome Analysis:A Laboratory Manual、第3巻、Cloning Systems、「Chapter 5: Introduction of YACs into mammalian cells by spheroplast fusion」、548−550頁、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、NYを参照のこと]。yH2BM含有酵母細胞を、0.15mg/mlのザイモリアーゼ(zymolase) 20Tを使用して、スフェロプラストした。yH2BMスフェロプラストを、HPRT欠損E 14.TG3B1マウスES細胞と融合させ、これを以下に記載するように培養した[Tsudaら、Genomics 42:413−421(1997)を参照のこと]。HAT選択を、融合の48時間後に開始した。HPRTポジティブES細胞クローンを、1クローン/15〜20×106融合細胞の頻度で選択した。21のHAT耐性コロニーを、ゲノム分析のために増殖させ、そしてサザンブロット分析およびCHEFブロット分析によって、YAC完全性について分析した。ES細胞単独と酵母スフェロプラスト単独とを融合させるコントロール実験においては、コロニーが検出されなかった。
【0182】
詳細な手順は、以下の通りである。
【0183】
(酵母スフェロプラストの産生)
過剰の酵母細胞を調製した。なぜなら、50%までが、スフェロプラスト手順の間に失われるからである。5×107のES細胞を融合するためには、約5×109の酵母細胞が必要である。
【0184】
本発明者らは、選択培地(SC−)にフリーザーストックを接種し、約5×106細胞/mlの出発接種物を得た。本発明者らは、培養物中の細胞密度を、血球計を使用して決定した。本発明者らは、250rpmで振盪しながら23℃で一晩、細胞を増殖させた。インキュベーションもまた、14℃または18℃で実施して、YACの安定性を増加させ得る。30℃での培養は、YACにおけるいくらかのIg遺伝子セグメントの欠失を生じ得る。午前中に、培養物密度は2×107細胞/mlであった。本発明者らは、YPDA(リッチ)培地で1×107細胞/mlに希釈し、そして2〜3時間インキュベートした。この段階における培養物密度は、2×107細胞/mlを超えるべきではない。なぜなら、指数関数的に増殖する酵母が、効率的かつ完全なスフェロプラストのために必要であるからである。
【0185】
本発明者らは、所望の量の培養物(5×109細胞を提供するため)を、滅菌した50ml試験管に注ぎ、1000〜1200g(Jouan GR4−22遠心機で2300〜2500rpm)で室温で5〜10分間遠心分離し、そして上清を処分した。あるいは、大量の細胞を、大型のコニカル遠心管内でペレット化し得る。
【0186】
本発明者らは、20mlの滅菌H2Oを、酵母細胞の各試験管に添加し、ボルテックスによって(またはピペットで)これらの細胞を再懸濁させ、上記のようの遠心分離し、そして上清を処分した。次いで、本発明者らは、20mlの1Mソルビトールを酵母細胞の各試験管に添加し、ボルテックスによって(またはピペットで)これらの細胞を再懸濁させ、上記のように遠心分離し、そして上清を処分した。本発明者らは、これらの細胞を、1:500の希釈の新たに追加した2−メルカプトエタノールを含むSPE緩衝液(1Mソルビトール、10mMリン酸ナトリウム、10mM EDTA)に再懸濁させて、最終細胞濃度を5×108細胞/mlとした。
【0187】
本発明者らは、10μlの先の細胞懸濁物を、90μlの5%(w/v)SDSと混合し、そして別の10μlの細胞懸濁物を、90μlの1Mソルビトールと混合した。本発明者らは、各混合物の細胞濃度を、血球計で決定した。前段落からの酵母細胞懸濁物を、30℃に暖める。酵母細胞懸濁物の各1mlに対して、1.5μlの100mg/mlのZymolyase−20T(ICN)のストックを添加する。本発明者らは、30℃で静置してインキュベートした。5分間の間隔で、10μlの細胞懸濁物を、90μlの5%(w/v)SDSと混合し、そして細胞濃度を血球計で決定する。本発明者らは、SDS処理の存在下において残る細胞の数の減少をモニタリングした(ソルビトールの存在下での初期細胞濃度と比較した)。
【0188】
細胞の95%がSDSに溶解するとすぐに、サンプルを200〜300g(Jouan GR4−22遠心機で1000〜1200rpm)で室温で5分間遠心分離し、そして上清を注意深く注いで除去した(ペレットは非常に緩く、そしていくらかの細胞は失われる)。スフェロプラスト(ザイモリアーゼを添加した後の工程)のための全時間は、代表的に、5〜20分間である。
【0189】
本発明者らは、スフェロプラストを、反転または注意深いピペット採取によって、20mlのSTC緩衝液(0.98Mソルビトール、10mM Tris、10mM CaCl2)に穏やかに再懸濁させ、このサンプルを200〜300g(Jouan GR4−22遠心機で1000〜1200rpm)で室温で5分間遠心分離し、そして上清を注意深く注いで除去した。本発明者らは、この手順を1回繰り返した。本発明者らは、スフェロプラストを、2.5×108細胞/mlでSTCに再懸濁させ、これを工程14で使用するまで、室温(または氷上)で維持した。
【0190】
(ES細胞との融合)
本発明者らは、2.5×108のスフェロプラストを含む1mlのスフェロプラスト懸濁物を、15mlの試験管に移し、そして1mlを200〜300g(Jouan GR4−22遠心機で1000〜1200rpm)で室温で5分間、遠心分離した。本発明者らは、長いガラスピペットでゆっくりと吸引することによって、全ての上清を除去した。試験管を半水平位置にして、本発明者らは、1mlのES細胞(5×106細胞/ml)を、スフェロプラストペレットを乱すことなく、穏やかに添加した。スフェロプラスト:ES細胞の比は、25:1〜50:1で変動し得る。
【0191】
本発明者らは、以下のような手順で、ES細胞を調製した:本発明者らは、100mmのプレートあたり6×106ES細胞の出発密度、および標準ED培地(DMEM高グルコース、100ユニット/ペニシリンのml、100μg/ストレプトマイシンのml、2mMのL−グルタミン、100μmの2−メルカプトエタノール、1000ユニット/マウス白血病阻害因子[ESGROTM]、および熱で不活化した15%のウシ胎仔血清)を用いて、マウス一次フィーダーでコーティングしたプレートで、ESの培養を開始した。48時間の標準的な増殖条件の後に、本発明者らは、この培養物をトリプシン処理し、そして得られた細胞を使用して、100mmプレートあたり107ES細胞でのゼラチンコーティングしたプレート上での培養を開始した。本発明者らは、16〜24時間、増殖を続けさせた。融合の4時間前に、本発明者らは、ESプレート上の培地を新たな培地に交換した。融合の直前に、本発明者らは、これらの細胞をトリプシン処理し、室温で無血清ES培地で3回洗浄し、そして5×106細胞/mlで無血清ES培地中に再懸濁させた。
【0192】
本発明者らは、混合したスフェロプラスト/ES細胞サンプルを、300g(Jouan GR4−22遠心機で1200rpm)で室温で3分間、遠心分離し、そして長いガラスピペットで、全ての培地を注意深く吸引して除去した。
【0193】
本発明者らは、試験管を穏やかに叩いて、細胞ペレットを緩め、そしてP1000チップを使用して、10mMのCaCl2を含む0.5mlの50%(w/v)PEG 1500(pH 8.0;例えば、Boeringer Mannheim 783641)(37℃に予め暖めた)をゆっくりと添加した。この溶液を添加する間に、本発明者らは、これらの細胞を、ピペットチップで穏やかに混合した。一旦、全ての溶液を添加したら、本発明者らは、この細胞懸濁物を一回、ゆっくりとピペットで吸い上げ、そして下げた。本発明者らは、この細胞懸濁物を、室温で90秒間インキュベートした。本発明者らは、5mlの無血清ES培地を、試験管の底部からピペットで吸い上げることによって、ゆっくりと添加した。本発明者らは、細胞を室温で30分間インキュベートし、そして30分後に、この細胞懸濁物を、300g(Jouan GR4−22遠心機で1200rpm)で室温で3分間遠心分離し、そして長いガラスピペットを用いて、全ての培地を注意深く吸引除去した。
【0194】
本発明者らは、これらの細胞を、10mlの標準ES培地に再懸濁させ、そしてサンプル全体(約5×106ES細胞)を、100mmのマウス一次フィーダーで被覆したプレート上で、プレートした。最初の試みが、多すぎるコロニーの発生を生じる場合には、各100mmのプレートにプレートするサンプルの量を下げるよう調節する必要があり得る。
【0195】
本発明者らは、これらのプレートを、標準的なES細胞増殖条件下で一晩インキュベートし、次いで培地を新たなES培地と交換した。
【0196】
48時間の培養に続いて(スフェロプラスト融合の後)、本発明者らは、適切な選択条件下(すなわち、YACに存在する特定の哺乳動物選択マーカーにより指図される)で増殖を開始させた。本発明者らは、培地を2日ごとに交換した。
本発明者らは、標準的な手順による増殖のために、ESコロニーを拾い、そしてマウス一次フィーダーでコーティングしたプレート上でプレートした。本発明者らは、代表的に、スフェロプラスト融合後10〜15日間、ESコロニーを観察した。
【0197】
ここで、yH2Bm含有酵母と融合したES細胞由来の7つのES細胞クローン(表3において1〜7と呼ばれる)は、インサート全体にまたがるプローブにより検出される、予測された全てのEcoRIおよびBamHI yH2フラグメントを含むことがわかった。表3に示すように、以下のヒト遺伝子が、トランスジェニックマウス発生の前に、ES細胞ゲノムにおいて、ES細胞DNAの特徴付けの一部として、検出された:全ての異なるVHファミリーVH1、VH2、VH3、VH4、VH5、およびVH6が、検出可能であった;ヒトDH、およびJH;ヒトCμおよびCδ定常領域;マウススイッチγ1(mSγ1)およびヒトCγ1 CHエキソン。
【0198】
【表3】

【0199】
(実施例7)
(yH2BM YACを含むES細胞の、マウスへの導入)
YAC yH2BM DNAを含むES細胞からキメラマウスを作製するために、本発明者らは、胚盤胞をミクロインジェクションし、続いて交配させた。本発明者らは、YAC yH2BM DNAを含むES細胞を、実施例5に記載するように単離し、そしてキメラマウスの作製のために増殖させた。次いで、本発明者らは、yH2BM保有ES細胞クローンを、マウスC57B1/6胚盤胞にミクロインジェクションした[B.Hoganら、「Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual」、Section D、Introduction of New Genetic Information、「Injection of Cells into the Blastocyst」188−196頁(1986)(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY)を参照のこと]。キメラの子を、皮膚の色により同定した。
【0200】
【表4】

【0201】
表4は、7種の異なるyH2BM含有ES細胞株を使用してのトランスジェニックマウスの作製に関するデータを要約する。7のクローンのうちの5つを、マウス生殖細胞系に伝達させた。
【0202】
(実施例8)
(yH2BM YAC DNAを含むマウスとyK2:DIマウスとの交配)
内因性抗体の非存在下でヒト抗体を産生するマウスを作製するために、本発明者らは、yK2トランスジェニックマウスを、二重に不活化した(DI)マウス株と交配させた。DIマウス株は、遺伝子標的化した不活化したマウスの重鎖およびκ軽鎖の遺伝子座に関して同型接合であり、従って、抗体産生を欠く[Jakobovitsら、Nature 362:255−258(1993);Greenら、Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照のこと]。本発明者らは、yK2トランスジェニック株の1つであるJ23.1を、DIマウスと交配させて、同型接合の不活化したマウスの重鎖およびκ鎖のバックグラウンドでyK2 YACに対して半接合または同種接合のマウスを作製した(yK2;DI)。yH2BM YACに対して半接合の新たなXenoMouseを発生させるための交配スキームを、以下に示す。XenoMouseの雄性とXenoMouseの雌性との引き続く交配は、yH2BMおよび/またはyK2に対して半接合または同種接合のいずれかである、XenoMouse子孫を与える。これらの子孫から、いずれもyH2BMとyK2との両方に対して同種接合である雄性および雌性を交配させて、XenoMouse yH2BMの真の交配株を得る。
【0203】
【表5】

【0204】
本発明者らは、サザンブロット分析によって、XenoMouse H2BM株におけるヒト重鎖およびκ鎖YACの完全性を確認した。分析した全てのXenoMouse H2BM株において、yH2BMは、複数の世代にわたって、明らかな欠失も再配列もなしに、変化せずに伝達された。
【0205】
(実施例9)
(フローサイトメトリー分析)
Xenomouse H2BMトランスジェニックマウスをさらに特徴付けるために、末梢血液および脾臓リンパ球を、8〜10週齢のマウスおよびコントロールから単離した。これらの細胞を、Lympholyte M(Accurate)(San Diego、CA)で精製し、そして精製した抗マウスCD32/CD16 Fcレセプター(Pharmingen、01241D)(San Diego、CA)で処理して、Fcレセプターへの非特異的結合をブロックした。次いで、これらの細胞を、種々の抗体で染色し、そしてFACStarPLUS(Becton Dickinson、CELLQuestソフトウェア)で分析した。XenoMouse H2BM細胞を染色するために使用した抗体のパネルは、以下を含んだ:シトクロム(Cychrome)(Cyc)抗B220(Pharmingen、01128A);フルオレセインイソチオシアネート(FITC)抗ヒトIgM(Pharmingen、34154X);FITC抗マウスIgM(Pharmingen、02204D)。
【0206】
3つの異なるXenoMouse H2BM株からの4匹の動物由来のリンパ球を評価し、そして以下の表5に示すように、フローサイトメトリーを使用して野生型B6/129マウスと比較した。
【0207】
株XM−2BM−1、XM−2BM−2およびXM−2BM−6は、野生型マウスと比較して、B細胞区画において、約60〜80%の再構成を示した(表5)。yH2BM YAC DNAを有するトランスジェニックマウスは、ヒト抗体および免疫系の有意な発達を示す。
【0208】
【表6】

【0209】
(実施例10)
(非免疫マウスにおけるヒト抗体の血清レベル)
非免疫マウス血清中のヒト抗体の測定のためのELISAを実行した。免疫アッセイにおけるより詳細な情報および手順について、E.Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,第14章,「Immunoassay」,553−614頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1988)を参照のこと。ヒト免疫グロブリンの濃度を、以下の捕捉抗体:マウス抗ヒトIgM(CGI/ATCC,HB−57)(Manassas,VA)を使用して、測定した。ELISA実験において使用された検出抗体は、マウス抗ヒトIgGl−HRP(Southern Biotechnology,9050−05)(Birmingham,AL)、マウス抗ヒトIGM−HRP(Southern Biotechnology,9020−05)(Birmingham,AL)であった。ヒトIgの定量のために使用される標準は、ヒトIgMκ(Cappel,13000)(Costa Mesa,CA)およびヒトIgG1(Calbiochem 400126)(San Diego,CA)であった。
【0210】
表6において示されるように、XenoMouse H2BMマウスは、免疫の非存在下において、ヒトIgMおよびヒトIgGの両方の有意なベースラインレベルを生成した。
【0211】
【表7】

【0212】
(実施例11)
(免疫およびハイブリドーマ生成)
6匹の8〜10週齢のXenoMiceH2BMの群を、10μgの組換えヒトIL−8、5μg TNF−αまたはCEM細胞(CD147について)のいずれかを用いて、尾の根元の皮下に(または他の投与の経路(腹腔内、フットパッドなど))免疫した。この抗原を、一次免疫のためにフロイント完全アジュバントにおいて、およびさらなる免疫のためにフロイント不完全アジュバントにおいて、乳化する。動物免疫に関するより詳細な情報および手順について、以下を参照のこと:E.Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,第5章,「Immunizations」53−138頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1988)。免疫を、3〜4週間の間隔で、少なくとも3回のブースター免疫(ブースト)のために実施した。
【0213】
モノクローナル抗体を作製する場合、マウスは、融合の4日前に、PBS中の抗原または細胞の最終注射を受ける。モノクローナル抗体を作製する詳細な情報および手順については、以下を参照のこと:E.Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,第6章,「Monoclonal Antibodies」,139−244頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1988)。免疫マウス由来のリンパ節のリンパ球を、非分泌骨髄腫NSO細胞株[S.Rayら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:5548−5551(1994)]またはP3−X63−Ag8.653骨髄腫細胞を用いて融合し、そして以前に記載されたように[G.Galfreら,Methods Enzymol.73:3−46(1981)]HAT選択に供する。
【0214】
表7は、上記実施例6〜8に従って産生され、かつ組換えヒトIL−8細胞、5μgTNF−α細胞またはCEM細胞(CD147について)を用いて免疫されたトランスジェニックは、ヒトIgG1モノクローナル抗体を生成したことを示す。
【0215】
(実施例12)
(抗体特異性およびアイソタイプの評価)
本発明者らは、トランスジェニックマウスが、抗原特異的抗体を産生しているか否かの決定のために、ELISAを実施した(表7)。本発明者らは、記載されるように[Coliganら,Unit 2.1,「Enzyme−linked immunosorbent assays」Current Protocols in Immunology(1994)]、抗原特異的抗体を捕捉するために組換えヒトIL−8、CD147およびTNF−αを使用して、マウス血清およびハイブリドーマ上清から単離される抗体の、抗原特異性ならびにアイソタイプを決定した。本発明者らは、以下の捕捉抗体:ウサギ抗ヒトIgG(Southern Biotechnology,6145−01)を使用して、ヒト免疫グロブリンの濃度を測定した。ELISA実験において使用される検出抗体は、マウス抗ヒトIgG1−HRP(Caltag,MH1015)(Burlingame,CA)マウス抗ヒトIGM−HRP(Southern Biotechnology,9020−05)、およびヤギ抗ヒトκ−ビオチン(Vector,BA−3060)であった。ヒトおよびマウスIgの定量のために使用される標準は、ヒトIgG1(Calbiochem,400122)、ヒトIgMκ(Cappel,13000)、ヒトIgG2κ(Calbiochem,400122)、マウスIgGK(Cappel 55939)、マウスIgMκ(Sigma,M−3795)、およびマウスIgG4λ(Sigma,M−9019)である。
【0216】
表7はさらに、上記実施例6〜8に従って産生され、かつ組換えヒトIL−8、5μgのTNF−αまたはCEM細胞(CD147について)を用いて免疫されたトランスジェニックマウスが、抗原特異的であり、かつ予測されたアイソタイプを有する、ヒトIgG1モノクローナル抗体を産生した。
【0217】
【表8】

【0218】
(実施例13)
(ES細胞へのyH2CM YACの導入)
本発明者らは、実施例6に詳細に記載されるような酵母スフェロプラスト融合によるマウス胚性幹(ES)細胞へ、YAC、yH2CMを導入した[B.Birrenら,Genome Analysis:A Laboratory Manual,第3巻,Cloning Systems,第5章:「Introduction of YACs into mammalian cells by spheroplast fusion」,548−550頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,NYを参照のこと]。一般に、1.5mg/mlのジモラーゼ(zymolase)20Tを使用して、スフェロプラスト化した。yH2CMスフェロプラストを、以下に記載されるように、培養されたHPRT欠損E14.TG3B1マウスES細胞と融合した[Jakobovitsら,Nature 362:255−258(1993);Greenら,Nature Genetics 7:13−21(1994);E.Robertson in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells,71−112頁,IRL,Oxford(1987)を参照のこと]。HAT選択を、融合48時間後に開始した。HPRT−陽性ES細胞クローンを、1クローン/15〜20×106融合細胞の頻度で選択した。HAT耐性コロニーを、ゲノム分析のために増殖し、そしてサザンブロット分析およびCHEFブロット分析により、YACの完全性について分析した。ES細胞および酵母スフェロプラストの偽(mock)融合によるコントロール実験において、コロニーを検出しなかった。
【0219】
yH2CM含有酵母を用いたES細胞融合由来のES細胞クローン(表8においてクローン1〜10として言及さる)は、挿入物全体にわたるプローブにより検出される全ての予測されるEcoRIフラグメントおよびBamHI yH2フラグメントを含んだ。表8に示されるように、本発明者らは、トランスジェニックマウス産生の前にES細胞DNAの特徴付けの一部としてES細胞ゲノムにおいて以下のヒト遺伝子を検出した:全ての異なるVHファミリーを検出し得る:VH1、VH2、VH3、VH4、VH5、およびVH6;ヒトDH、およびJH;ヒトCμ、およびCδ定常領域;マウススイッチγ1(mSγ1)エキソンおよびヒトCγ4 CHエキソン。
【0220】
【表9】

【0221】
(実施例14)
(マウスへのyH2CM YACを含むES細胞の導入)
YAC yH2CM DNAを含むES細胞由来のキメラマウスを産生するために、胚盤胞の微量注入を実施し、次に交配した。YAC yH2CM DNAを含むES細胞を、実施例16に記載されるように単離し、そしてキメラマウスの産生のために増殖した。次に、yH2CM保有ES細胞クローンを、マウスC57B1/6胚盤胞へ微量注入した[B.Hoganら,「Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual」、Section D,Introduction of New Genetic Information,「Injection of Cells into the Blastocyst」188−196頁,(1986)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)を参照のこと]。キメラの子孫を、毛色より同定した。
【0222】
【表10】

【0223】
表9は、9つの異なるyH2CMを含むES細胞株を使用して、トランスジェニックマウスを産生するためのデータを要約した。9つのクローンのうち2つを、マウスの生殖細胞系列を介して伝達した。
【0224】
(実施例15)
(yK2:DIマウスを用いてyH2CM YAC DNAを含むマウスを交配する)
内因性抗体の非存在下においてヒト抗体を生成したマウスを産生するために、yK2トランスジェニックマウスを、二重不活性化(DI)マウス系統を用いて以前に交配した。DIマウス系統は、遺伝子標的化−不活性化された(targeted−inactivated)マウス重鎖およびκ鎖の遺伝子座がについてホモ接合性であり、従って、抗体産生において欠損があった[Jakobovitsら,Nature 362:255−258(1993);Greenら,Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照のこと]。yK2トランスジェニックマウス系統の1つ(J23.1)は、DIマウスを用いて交配され、ホモ接合性の不活性化マウス重鎖およびκ鎖のバックグラウンド(yK2;DI)において、yK2 YACについてヘミ接合性またはホモ接性マウスを産生した。yH2CM YACについてヘミ接合性である、新しいXenomouseを産生するための交配スキームを、以下に示す。XenoMouseの雌とのXenoMouseの雄の引き続く交配は、yH2CMおよび/またはyK2についてのヘミ接合性またはホモ接合性のいずれかのXenoMouseの子孫を産生する。これらの子孫から、雄および雌(これらの両方が、yH2CMおよびyK2についてホモ接合性である)の交配は、XenoMouseのH2CMの真の交配系統を産生する。
【0225】
(XenoMouseのH2CM交配スキーム)
【0226】
【表11】

【0227】
XenoMouseのH2CM系統におけるヒト重鎖およびκ鎖YACの完全性を、サザンブロット分析により確認した。分析された全てのXenoMouse H2CM系統において、yH2CMを、明らかな欠失または再配置を有さず、複数の世代を介して変更せず伝達した。
【0228】
(実施例16)
(フローサイトメトリー分析)
XenomouseのH2CMトランスジェニックマウスをさらに特徴付けるため、末梢血および脾臓リンパ球を8〜10週齢のマウスおよびコントロールから単離した。細胞を、リンパ球M(Accurate)(San Diego,CA)において精製し、そして精製された抗マウスCD32/CD16 Fcレセプター(Pharmingen,01241D)(San Diego,CA)を用いて処理して、Fcレセプターに対する非特異的結合をブロックした。次に、細胞を、種々の抗体を用いて染色し、そしてFACStarPLUS(Becton Dickinson,CELLQuest software)において分析した。XenoMouseH2CM細胞を染色するために使用される抗体の表としては、以下が挙げられる:Cychrome(Cyc)抗−B220(Pharmingen,01128A);蛍光イソチオシアネート(FITC)抗ヒトIgM(Pharmingen,34154X);FITC抗マウスIgM(Pharmingen,02204D)。
【0229】
2つの異なるXenoMouseH2CM系統からの二つの動物由来のリンパ球を、以下の表10に示されるようなフローサイトメトリーを用いて評価し、そして野生型B6/129マウスと比較した。
【0230】
系統XM2Cm−2ホモは、B細胞画分において80〜100%の再構築について示した(表10)。yH2CM YAC DNAを有するトランスジェニックマウスは、有意なヒト抗体および免疫系の発生を示す。コントロール129×B6、DI、Xenomouse 2aヘテロ接合性およびホモ接合性を、yH2CM YACについてヘテロ接合性およびホモ接合性のマウスと比較した。
【0231】
【表12】

【0232】
(実施例17)
(非免疫マウス中のヒト抗体の血清レベル)
非免疫マウス血清中のヒト抗体の測定のためにELISAを行った。イムノアッセイについてのより詳細な情報および手段については、E.Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、第14章、「Immunoassay」、553−614頁、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(1988)を参照のこと。ヒト免疫グロブリンの濃度を、以下の捕捉抗体を使用して測定した:マウス抗ヒトIgM(CGI/ATCC、HB−57)(Manassas、VA)。ELISA実験において使用した検出抗体は、マウス抗ヒトIgG4−HRP(Southern Biotechnology、9050−05)(Birmingham、AL)、マウス抗ヒトIGM−HRP(Southern Biotechnology、9020−05)(Birmingham、AL)であった。ヒトIgの定量のために使用したスタンダードは、以下であった:ヒトIgMKκ(Cappel、13000)(Costa Mesa、CA)およびヒトIgG1(Calbiochem 400126)(San Diego、CA)。
【0233】
表11に示されるように、15〜30行のXenomouse H2CMは、免疫不在下で有意な基線レベルのヒトIgMおよびIgG4の両方を産生した。
【0234】
【表13】

【0235】
(実施例18)
(免疫およびハイブリドーマ生成)
6匹の8〜10週齢のXenoMouse H2CMのグループを、10μgの組換えヒトIL−6またはIL−8のいずれかを用いて、尾の基部で皮下的に免疫した。抗原は、一次免疫については完全フロイントアジュバント中に、そしてさらなる免疫については不完全フロイントアジュバント中に乳化する。動物免疫についてのより詳細な情報および手段については、E.Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、第5章、「Immunization」、53−138頁、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(1988)を参照のこと。免疫は、少なくとも3回の追加免疫(ブースト)について3〜4週間隔で行う。
【0236】
モノクローナル抗体を作製する場合、これらのマウスは、融合の4日前に、PBS中の抗原または細胞の最終注射を受ける。モノクローナル抗体の作製についてのより詳細な情報および手段については、E.Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、第6章、「Monoclonal Antibodies」、139−244頁、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(1988)を参照のこと。免疫したマウス由来のリンパ節リンパ球を、非分泌性骨髄腫NSO細胞株[S.Rayら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:5548−5551(1994)]またはP3−X63−Wg8.653骨髄腫細胞と融合し、そして以前の記載[G.Galfreら、Methods Enzymol.73:3−46(1981)]のようにHAT選択に供した。
【0237】
表12は、上記実施例14〜16に従って作製しそして組換えヒトIL−6またはIL−8で免疫したトランスジェニックマウスが、ヒトIgG4モノクローナル抗体を産生したことを示す。
【0238】
(実施例19)
(抗体特異性およびアイソタイプの評価)
本発明者らは、ELISAを行い、トランスジェニックマウスが、抗原特異的抗体を産生しているか否かを決定した(表12)。本発明者らはまた、産生されるヒト抗体アイソタイプを決定した(表12)。抗原特異性およびアイソタイプの決定を、その抗原特異的抗体を捕捉するために組換えヒトIL−6またはIL−8を使用して、記載[Coliganら、Unit2.1、「Enzyme−linked immunosorbent assays」、Current protocols in immunology(1994)]のようにマウス血清およびハイブリドーマ上清から単離した抗体に対して行った。ヒトおよびマウス免疫グロブリンの濃度を、以下の捕捉抗体を使用して測定した:ウサギ抗ヒトIgG(Southern Biotechnology、6145−01)。ELISA実験で使用した検出抗体は、マウス抗ヒトIgG1−HRP(Caltag、MH1015)(Burlingame、CA)、マウス抗ヒトIGM−HRP(Southern Biotechnology、9020−05)、およびヤギ抗ヒトκビオチン(Vector、BA−3060)であった。ヒトIgおよびマウスIgの定量に使用したスタンダードは、以下であった:ヒトIgG1(Calbiochem、400122)、ヒトIgMκ(Cappel、13000)、ヒトIgG2K(Calbiochem、400122)、マウスIgGκ(Cappel 55939)、マウスIgM(Sigma、M−3795)、およびマウスIgG4λ(Sigma、M−9019)。
【0239】
表12はさらに、上記実施例14〜16に従って作製しそして組換えヒトIL−6またはIL−8で免疫したトランスジェニックマウスが、抗原特異的かつ予測されたアイソタイプのヒトIgG4モノクローナル抗体を産生したことを示す。
【0240】
【表14】

【0241】
(実施例20)
(yHG1/2 YACのES細胞への導入)
本発明者らは、実施例6に記載のような酵母スフェロプラスト融合によって、マウス胚性幹(ES)細胞にYAC、yHG1/2を導入した[B.Birrenら、Genome Analysis:A Laboratorry Manual、第3巻、Cloning Systems、第5章:「Introduction of YACs into mammalian cells by spheroplast fusion」、548−550頁、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、NYを参照のこと]。一般的に、yHG1/2含有酵母細胞を、0.15mg/mlのザイモリアーゼ20Tを使用してスフェロプラスト化した。このyHG1/2スフェロプラストを、HPRT欠損E14.TG3B1マウスES細胞と融合し、この細胞を、記載のように培養した[Jakobovitsら、Nature 362:255−258(1993);Greenら、Nature Genetics 7:13−21(1994);E.Robertson in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells、71−112頁、IRL、Oxford(1987)を参照のこと]。HAT選択を、融合後48時間で開始した。HPRT陽性ES細胞クローンを選択した。HAT耐性コロニーを、ゲノム分析のために拡大し、そしてサザンブロット分析およびCHEFブロット分析によってYAC完全性について分析した。コントロール実験は、ES細胞のみおよび酵母スフェロプラストのみの「偽」融合体であった。
【0242】
本発明者らは、yHG1/2含有酵母細胞とのES細胞融合体由来の4つのES細胞コロニーを、その挿入物全体にわたるプローブを使用するサザンブロットを使用して試験し、これらのクローンが、予期されるEcoRI、HindIIIおよびBamHI yH2フラグメントを全て含むか否かを決定した。本発明者らは、4つ全てのES細胞クローンが、インタクトなYACを含むことを見い出した。本発明者らは、トランスジェニックマウス生成前に、ES細胞DNAの特徴付けの部分としてこのES細胞ゲノム中の以下のヒト遺伝子を検出した:全ての異なるVHファミリー(VH1、VH2、VH3、VH4、VH5、およびVH6);ヒトDHおよびJH;ヒトCμおよびCδ定常領域;ヒトスイッチγ2(hSγ2)およびヒトCγ1Cnエキソン(図8および表13を参照のこと)。
【0243】
【表15】

【0244】
(実施例21)
(yHG1/2 YACを含有するES細胞のマウスへの導入)
YAC yHG1/2 DNAを含有するES細胞からキメラマウスを生成するために、本発明者らは、胚盤胞マイクロインジェンクション(微量注入)を使用し、その後、育種させた。本発明者らは、実施例6に記載のようなYAC yHG1/2 DNAを含有するES細胞を単離し、そしてキメラマウスの生成のために拡大した。次に、本発明者らは、yHG1/2保有ES細胞クローンを、マウスC57B1/6胚盤胞に微量注入した[B.Hoganら、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、第D節、Introduction of New Genetic Information、「Injection of Cells into the Blastocyst」、188−196頁、(1986)(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harobor、NY)を参照のこと]。
【0245】
(実施例22)
(yHG1/2 YAC DNAを含有するマウスのyK2:DIマウスとの交配(breeding))
内因性抗体の非存在下でヒト抗体を産生するマウスを生成するために、yK2トランスジェニックマウスを、二重不活化(double‐inactivated)(DI)マウス系統と先ず交配させる。このDIマウス系統は、遺伝子標的化−不活化されたマウス重鎖およびκ鎖の遺伝子座についてホモ接合性であり、従って、抗体産生において欠損性である[Jakobovitsら、Nature 362:255−258(1993);Greenら、Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照のこと]。yK2トランスジェニックマウス系統の1つである、J23.1を、DIマウスと交配し、ホモ接合性の不活化したマウス重鎖およびκ鎖のバックグラウンド上にyK2 YACについて半接合性またはホモ接合性のマウスを生成する(yK2:DI)。yHG1/2 YACについて半接合性である新しいXenomouseを生成するための交配スキームを、以下に示す。その後の雄性XenoMouseの雌性XenoMouseに対する交配は、yHG1/2および/またはyK2について半接合性またはホモ接合性のいずれかである、XenoMouse子孫を産生する。これらの子孫から、yHG1/2およびyK2の両方について両方がホモ接合性である雄および雌の交配は、XenoMouse HG1/2の真の交配系統を産生する。
【0246】
(XenoMouse yHG1/2育種スキーム)
【0247】
【表16】

【0248】
XenoMouse H2CM系統中のヒト重鎖およびκ鎖YACの完全性を、サザンブロット分析によって確かめる。分析した全てのXenoMouse HG1/2M系統において、yHG1/2は、明らかな欠失または再編成を伴わずに、複数の世代を通して変化されずに遺伝されている。
【0249】
(実施例23)
(フローサイトメトリー分析)
Xenomouse HG1/2トランスジェニックマウスをさらに特徴付けるために、末梢血および脾臓リンパ球を、8〜10週齢のマウスおよびコントロールから単離する。これらの細胞は、Lympholyte M(Accurate)(San Diego、CA)上で精製し、そして精製抗マウスCD32/CD16Fcレセプター(Pharmingen、01241D)(San Diego、CA)で処理し、Fcレセプターへの非特異的結合をブロックする。次に、これらの細胞を種々の抗体で染色し、そしてFACStarPLUS(Becton Dickinson、CELLQuest software)上で分析する。XenoMouse HG1/2M細胞を染色するために使用した抗体のパネルは、以下を含む:シトクロム(Cyc)抗B220(Pharmingen、01128A);フルオレセインイソチオシアネート(FITC)抗ヒトIgM(Pharmingen、24154X);FITC抗マウスIgM(Pharmingen、02204D)。
【0250】
異なるXenoMouse H2G1/2M系統由来の4匹の動物由来のリンパ球を、フローサイトメトリーを使用して、評価しそして野生型B6/129マウスと比較する。
【0251】
yHG1/2 YAC DNAを有するトランスジェニックマウスは、有意なヒト抗体および免疫系の発生を示す。ヘテロ接合性およびホモ接合性のコントロール129×B6、DI、XenoMouse 2aを、yHG1/2 YACに対してヘテロ接合性およびホモ接合性のマウスと比較する。
【0252】
(実施例24)
(非免疫マウス中のヒト抗体の血清レベル)
非免疫マウス血清中のヒト抗体の測定のためにELISAを行う。イムノアッセイについてのより詳細な情報および手段については、E.Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、第14章、「Immunoassay」、553−614頁、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(1988)を参照のこと。ヒト免疫グロブリンの濃度を、以下の捕捉抗体を使用して測定する:マウス抗ヒトIgM(CGI/ATCC、HB−57)(Manassas、VA)。ELISA実験において使用した検出抗体は、マウス抗ヒトIgG1−HRP(Southern Biotechnology、9050−05)(Birmingham、AL)、マウス抗ヒトIGM−HRP(Southern Biotechnology、9020−05)(Birmingham、AL)である。ヒトIgの定量のために使用したスタンダードは、以下である:ヒトIgMκ(Cappel、13000)(Costa Mesa、CA)およびヒトIgG1(Calbiochem 400126)(San Diego、CA)。
【0253】
(実施例25)
(免疫およびハイブリドーマ生成)
6匹の8〜10週齢のXenoMouse yHG1/2の群を、10μgの選り抜きの抗原を用いて、尾の根元の皮下に(または他の投与の経路(腹腔内、フットパッドなど))免疫する。この抗原を、一次免疫のためにフロイント完全アジュバントにおいて、およびさらなる免疫のためにフロイント不完全アジュバントにおいて、乳化する。動物免疫に関するより詳細な情報および手順について、以下を参照のこと:E.Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,第5章,「Immunizations」53−138頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1988)。免疫を、3〜4週間の間隔で、少なくとも3回のブースター免疫(ブースト)のために実施した。
【0254】
モノクローナル抗体を作製する場合、マウスは、融合の4日前に、PBS中の抗原または細胞の最終注射を受ける。モノクローナル抗体を作製する詳細な情報および手順については、以下を参照のこと:E.Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,第6章,「Monoclonal Antibodies」,139−244頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1988)。免疫マウス由来のリンパ節のリンパ球を、非分泌骨髄腫NSO細胞株[S.Rayら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:5548−5551(1994)]またはP3−X63−Ag8.653骨髄腫細胞を用いて融合し、そして以前に記載されたように[G.Galfreら,Methods Enzymol.73:3−46(1981)]HAT選択に供する。
【0255】
(実施例26)
(抗体特異性およびアイソタイプの評価)
本発明者らは、トランスジェニックマウスが、抗原特異的抗体を産生しているか否かを決定するために、ELISAを実施した。本発明者らはまた、産生されたヒト抗体アイソタイプを決定する。本発明者らは、抗原特異的抗体を捕捉するために抗原を使用して、記載されるように[Coliganら,Unit 2.1,「Enzyme−linked immunosorbent assays」Current Protocols in Immunology(1994)]、マウス血清およびハイブリドーマ上清から単離される抗体における、抗原特異性ならびにアイソタイプの決定を実施した。ヒトおよびマウスの免疫グロブリンの濃度は、以下の捕捉抗体:ウサギ抗ヒトIgG(Southern Biotechnology,6145−01)を使用して、測定する。ELISA実験において使用される検出抗体は、マウス抗ヒトIgG1−HRP(Caltag,MH1015)(Burlingame,CA)、マウス抗ヒトIGM−HRP(Southern Biotechnology,9020−05)、およびヤギ抗ヒトκ−ビオチン(Vector,BA−3060)である。ヒトおよびマウスIgの定量のために使用される標準は、ヒトIgG1(Calbiochem,400122)、ヒトIgMK(Cappel,13000)、ヒトIgG2K(Calbiochem,400122)、マウスIgGK(Cappel 55939)、マウスIgMK(Sigma,M−3795)、およびマウスIgG4λ(Sigma,M−9019)である。
【0256】
上記実施例20〜22に従って産生され、かつ抗原を用いて免疫されたトランスジェニックマウスは、抗原特異的であり、かつ予測されたアイソタイプを有する、ヒトIgG1モノクローナル抗体を産生する。
【0257】
(実施例27)
(ES細胞へのyHG4 YACの導入)
本発明者らは、実施例6に詳細に記載されるような酵母スフェロプラスト融合によるマウス胚性幹(ES)細胞へ、YAC、yHG4を導入した[B.Birrenら,Genome Analysis:A Laboratory Manual,第3巻,Cloning Systems,第5章:「Introduction of YACs into mammalian cells by spheroplast fusion」,548−550頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,NYを参照のこと]。一般に、酵母細胞を含むyHG4を、1.5mg/mlのジモラーゼ(zymolase)20Tを使用して、スフェロプラスト化した。yHG4スフェロプラストを、以下に記載されるように培養されたHPRT欠損E14.TG3B1マウスES細胞と融合した[Jakobovitsら,Nature 362:255−258(1993);Greenら,Nature Genetics 7:13−21(1994);E.Robertson in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells,71−112頁,IRL,Oxford(1987)を参照のこと]。HAT選択を、融合48時間後に開始した。HPRT−陽性ES細胞クローンを、選択した。HAT耐性コロニーを、ゲノム分析のために増殖し、そしてサザンブロット分析およびCHEFブロット分析により、YACの完全性について分析した。コントロール実験は、ES細胞単独および酵母スフェロプラスト単独の偽(mock)融合を含んだ。
【0258】
本発明者らは、クローンが全ての予測されたEcoRIおよびBamHI yH2フラグメントを含むか否かを測定するために、挿入物全体にわたるプローブを用いたサザンブロットを使用して、yHG4含有酵母とのES細胞融合に由来する8個のES細胞クローンを調べた。本発明者らは、yHG4 YACが、全ての8個のクローンにおいてインタクトであるいことを見出した。本発明者らは、トランスジェニックマウス産生の前にES細胞DNAの特徴付けの一部としてES細胞ゲノムにおいて以下のヒト遺伝子を検出した:全ての異なるVHファミリー(VH1、VH2、VH3、VH4、VH5、およびVH6);ヒトDH、およびJH;ヒトCμ、およびCδ定常領域;ヒトスイッチγ2(hSγ2)およびヒトCγ4 CHエキソン。
【0259】
(実施例28)
(マウスへのyHG4 YACを含むES細胞の導入)
YAC yHG4 DNAを含むES細胞由来のキメラマウスを産生するために、胚盤胞の微量注入を使用し、次に交配した。本発明らは、実施例6に記載するような、YAC yHG4 DNAを含むES細胞を単離し、そしてキメラマウスの産生のために増殖した。次に、本発明者らは、yHG4保有ES細胞クローンを、マウスC57B1/6胚盤胞へ微量注入した[B.Hoganら,「Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual」、Section D,Introduction of New Genetic Information,「Injection of Cells into the Blastocyst」188−196頁,(1986)(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)を参照のこと]。本発明者らは、キメラの子孫を、毛色より同定した。
【0260】
生殖細胞系列の伝達を得た。本発明者らは、ヒトV6に対して特異的なプライマーを使用したPCRにより、yHG4トランスジェニックマウスを同定した。
【0261】
(実施例29)
(yK2:DIマウスを用いてyHG4 YAC DNAを含むキメラマウスまたはトランスジェニックマウスを交配する)
内因性抗体の非存在下においてヒト抗体を生成したマウスを産生するために、yK2トランスジェニックマウスを、二重不活性化(DI)マウス系統を用いて以前に交配した。DIマウス系統は、遺伝子標的化−不活性化されたマウス重鎖およびκ鎖遺伝子座についてホモ接合性であり、従って、抗体産生において欠損がある[Jakobovitsら,Nature 362:255−258(1993);Greenら,Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照のこと]。yK2トランスジェニックマウス系統の1つ(J23.1)は、DIマウスを用いて交配され、ホモ接合性の不活性化マウス重鎖およびκ鎖のバックグラウンド(yK2;DI)において、yK2 YACについてヘミ接合性またはホモ接性のマウスを産生した。yHG4 YACについてヘミ接合性である、新しいXenoMouseを産生するために使用される交配スキームを、以下に示す。ヘミ接合性XenoMouseの雌とのヘミ接合性XenoMouseの雄の引き続く交配は、yHG4および/またはyK2についてホモ接合性であるXenoMouseの子孫を産生する。これらの子孫から、雄および雌(これらの両方が、yHG4およびyK2についてホモ接合性である)の交配は、XenoMouse G4の真の交配系統を産生する。
【0262】
(XenoMouseのG4交配スキーム)
【0263】
【表17】

【0264】
XenoMouseのG4系統におけるヒト重鎖およびκ鎖YACの完全性を、サザンブロット分析により確認した。分析された全てのXenoMouse G4系統において、yHG4を、明らかな欠失または再配置を有さず、複数の世代を介して変更せず伝達した。
【0265】
(実施例30)
(フローサイトメトリー分析)
XenoMouseのG4トランスジェニックマウスをさらに特徴付けるため、末梢血および脾臓リンパ球を、8〜10週齢のマウスおよびコントロールから単離する。細胞を、リンパ球M(Accurate)(San Diego,CA)において精製し、そして精製された抗マウスCD32/CD16 Fcレセプター(Pharmingen,01241D)(San Diego,CA)を用いて処理して、Fcレセプターに対する非特異的結合をブロックする。次に、細胞を、種々の抗体を用いて染色し、そしてFACStarPLUS(Becton Dickinson,CELLQuest software)において分析する。XenoMouse G4細胞を染色するために使用される抗体の表としては、以下が挙げられる:Cychrome(Cyc)抗−B220(Pharmingen,01128A);蛍光イソチオシアネート(FITC)抗ヒトIgM(Pharmingen,34154X);FITC抗マウスIgM(Pharmingen,02204D)。
【0266】
3つの異なるXenoMouse G4系統からの4つの動物由来のリンパ球を、フローサイトメトリーを用いて評価し、そして野生型B6/129マウスと比較した。
【0267】
G4 YAC DNAを有するトランスジェニックマウスは、有意なヒト抗体および免疫系の発生を示す。コントロール129×B6、DI、XenoMouse 2aヘテロ接合性およびホモ接合性を、G4 YACについてヘテロ接合性およびホモ接合性のマウスと比較する。
【0268】
(実施例31)
(非免疫マウスにおけるヒト抗体の血清レベル)
非免疫マウス血清中のヒト抗体の測定のためのELISAを実行する。免疫アッセイにおけるより詳細な情報および手順について、E.Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,第14章,「Immunoassay」,553−614頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1988)を参照のこと。ヒト免疫グロブリンの濃度を、以下の捕捉抗体:マウス抗ヒトIgM(CGI/ATCC,HB−57)(Manassas,VA)を使用して、測定した。ELISA実験において使用された検出抗体は、マウス抗ヒトIgGl−HRP(Southern Biotechnology,9050−05)(Birmingham,AL)、マウス抗ヒトIGM−HRP(Southern Biotechnology,9020−05)(Birmingham,AL)である。ヒトIgの定量のために使用される標準は、ヒトIgMκ(Cappel,13000)(Costa Mesa,CA)およびヒトIgG1(Calbiochem 400126)(San Diego,CA)である。
【0269】
(実施例32)
(免疫およびハイブリドーマ生成)
6匹の8〜10週齢のXenoMice yHG4の群を、10μgの抗原を用いて、尾の根元の皮下に(または他の投与の経路(腹腔内、フットパッドなど))免疫した。この抗原を、一次免疫のためにフロイント完全アジュバントにおいて、およびさらなる免疫のためにフロイント不完全アジュバントにおいて、乳化する。動物免疫に関するより詳細な情報および手順について、以下を参照のこと:E.Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,第5章,「Immunizations」53−138頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1988)。免疫を、3〜4週間の間隔で、少なくとも3回のブースター免疫(ブースト)のために実施した。
【0270】
モノクローナル抗体を作製する場合、マウスは、融合の4日前、PBS中の抗原または細胞の最終注射を受ける。モノクローナル抗体を作製する詳細な情報および手順については、以下を参照のこと:E.Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,第6章,「Monoclonal Antibodies」,139−244頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1988)。免疫マウス由来のリンパ節のリンパ球を、非分泌骨髄腫NSO株[S.Rayら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:5548−5551(1994)]またはP3−X63−Ag8.653骨髄腫を用いて融合し、そして以前に記載されたように[G.Galfreら,Methods Enzymol.73:3−46(1981)]HAT選択に供する。
【0271】
(実施例33)
(抗体特異性およびアイソタイプの評価)
トランスジェニックマウスが、抗原特異的抗体を産生しているか否かの決定のために、ELISAを実施する。産生されたヒト抗体アイソタイプを確認することがさらに所望される。抗原特異性およびアイソタイプの決定を、抗原特異的抗体を捕捉するための組換え抗原を使用して、記載されるように[Coliganら,Unit 2.1,「Enzyme−linked immunosorbent assays」Current Protocols in Immunology(1994)]、マウス血清およびハイブリドーマ上清から単離される抗体において実施した。以下の捕捉抗体:ウサギ抗ヒトIgG(Southern Biotechnology,6145−01)を使用して、ヒトおよびマウスの免疫グロブリンの濃度を測定した。ELISA実験において使用される検出抗体は、マウス抗ヒトIgG1−HRP(Caltag,MH1015)(Burlingame,CA)マウス抗ヒトIGM−HRP(Southern Biotechnology,9020−05)、およびヤギ抗ヒトκ−ビオチン(Vector,BA−3060)であった。ヒトおよびマウスIgの定量のために使用される標準は、ヒトIgG1(Calbiochem,400122)、ヒトIgMκ(Cappel,13000)、ヒトIgG2κ(Calbiochem,400122)、マウスIgGκ(Cappel 55939)、マウスIgMκ(Sigma,M−3795)、およびマウスIgG4λ(Sigma,M−9019)である。
【0272】
上記実施例27〜29に従って産生され、かつ抗原を用いて免疫されるトランスジェニックマウスは、抗原特異的でかつ予測されるアイソタイプを有するヒトIgG4モノクローナル抗体を産生する。
【0273】
(生物学的材料)
以下の生物学的材料を、上記実施例と関連して開示および議論し、そして本発明に従って利用され得かつ調製され得る材料の例示である。
・ppKM1C(yH1C標的ベクター)
・p1B(標的ベクター)
・TV1(yH2Bmを作製する、yH1Cを標的化するためのmSg1−hCg1プラスミドDNAベクター)
・TV4(yH2Cmを作製する、yH1Cを標的化するためのmSg1−hCg4プラスミドDNAベクター)
・TV G1(yHG1を作製する、yH1Cを標的化するためのhCg1プラスミドDNAベクター)
・TV G4(yHG4を作製する、yH1Cを標的化するためのhCg1プラスミドDNAベクター)
・yH2Cm(mSg1−hCg4 YAC)(_においてATCCに寄託され、そして登録番号_を有する)
・yH2Bm(mSg1−hCg1 YAC)(_においてATCCに寄託され、そして登録番号_を有する)
・yHG1(hSg2−hCg1 YAC)
・yHG4(また、yH3Cとして言及される)(hSg2−hCg4 YAC)(_においてATCCに寄託され、そして登録番号_を有する)
・yH3B(また、yHG1/2として言及される)(hSg2−hCg1−hCg2(TM) YAC)(_においてATCCに寄託され、そして登録番号_を有する)
・ES−yH2Cmクローン1
・ES−yH2Cmクローン2
・ES−yH2Bmクローン1
・ES−yH2Bmクローン2
・ES−yH2Bmクローン3
・ES−yH2Bmクローン4
・ES−yH2Bmクローン5
・ES−yH2Bmクローン6
・ES−yH2Bmクローン7
・ES−yH2Bmクローン8
・ES−yH2Bmクローン9
(参考としての援用)
本明細書中に列挙される全ての参考文献(特許、特許出願、学術論文、教科書など)、および本明細書中に列挙された参考文献(それらが、すでに、その全体が参考として援用されてはいない程度の)は、その全体が、参考として援用される。さらに、以下の参考文献(このような参考文献に列挙される参考文献を含む)もまた、その全体が、参考として援用される。
【0274】
【表18】
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入遺伝子であって、該導入遺伝子は、Dセグメント遺伝子由来の、ヒト第14染色体上の免疫グロブリン重鎖遺伝子座の近接領域のDNA配列を含むDNAフラグメントを含み、Jセグメント遺伝子および該遺伝子座の定常領域遺伝子Cμを介して連続しており、ここで、該DNAフラグメントは、少なくとも1つのヒトVセグメント遺伝子の作動可能に連結され、そしてここで、該DNAフラグメントは、さらに、さらなる定常領域遺伝子に作動可能連結され、該さらなる定常領域遺伝子は、非同種スイッチ領域に作動可能に連結されたヒト定常領域コードエキソンを含む、導入遺伝子。
【請求項2】
請求項1に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒト定常領域コードエキソンは、以下からなる群から選択されるヒト定常領域をコードする、導入遺伝子:ヒトγ定常領域、ヒトα定常領域、およびヒトε定常領域。
【請求項3】
請求項2に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒト定常領域コードエキソンは、ヒトγ定常領域をコードする、導入遺伝子。
【請求項4】
請求項3に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトγ定常領域が、γ−1定常領域である、導入遺伝子。
【請求項5】
yH2Bm酵母人工染色体(YAC)である、請求項4に記載の導入遺伝子。
【請求項6】
請求項3に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトγ定常領域が、γ−2定常領域である、導入遺伝子。
【請求項7】
請求項3に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトγ定常領域が、γ−3定常領域である、導入遺伝子。
【請求項8】
請求項3に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトγ定常領域が、γ−4定常領域である、導入遺伝子。
【請求項9】
yH2Cm酵母人工染色体(YAC)である、請求項8に記載の導入遺伝子。
【請求項10】
請求項2に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒト定常領域コードエキソンが、ヒトα定常領域をコードする、導入遺伝子。
【請求項11】
請求項10に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトα定常領域が、α−1定常領域である、導入遺伝子。
【請求項12】
請求項10に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトα定常領域が、α−2定常領域である、導入遺伝子。
【請求項13】
請求項2に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒト定常領域コードエキソンが、ヒトε定常領域をコードする、導入遺伝子。
【請求項14】
請求項1に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントが、複数のヒトVH遺伝子に、作動可能に連結される、導入遺伝子。
【請求項15】
請求項14に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントは、少なくとも50%のヒト生殖細胞系列VH遺伝子に作動可能に連結される、導入遺伝子。
【請求項16】
請求項14に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントが、少なくとも40の異なるヒトVH遺伝子に作動可能に連結される、導入遺伝子。
【請求項17】
請求項14に記載の導入遺伝子であって、前記DNAフラグメントが、十分な数の異なるヒトVH遺伝子と作動可能に連結されて、その結果、該導入遺伝子が、接合部多様性または体細胞変異事象を考慮することなく、V(D)J組換えを介して、少なくとも1×105の異なる機能的ヒト免疫グロブリン重鎖配列をコードし得る、導入遺伝子。
【請求項18】
請求項14に記載の導入遺伝子であって、ここで、ヒトVH遺伝子の数が、該導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスにおける野生型マウスのB細胞集団の少なくとも50%を産生するのに十分である、導入遺伝子。
【請求項19】
導入遺伝子であって、該導入遺伝子は、Dセグメント遺伝子由来の、ヒト第14染色体上の免疫グロブリン重鎖遺伝子座の連続領域のDNA配列を含むDNAフラグメントを含み、Jセグメント遺伝子および該遺伝子座の定常領域Cμを介して連続しており、ここで、該DNAセグメントは、少なくとも1つのヒトVセグメント遺伝子に作動可能に連結され、そしてここで、該DNAセグメントは、さらに、さらなる定常領域遺伝子に作動可能に連結され、該さらなる定常領域遺伝子は、ヒトスイッチ領域およびヒト定常領域コードエキソンを含み、ここで、該ヒトスイッチ領域および該ヒト定常領域コードエキソンは、異なるアイソタイプ由来である、導入遺伝子。
【請求項20】
請求項19に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトスイッチ領域が、ヒトCγ2スイッチ領域である、導入遺伝子。
【請求項21】
請求項20に記載の導入遺伝子であって、ここで、該前記ヒト定常領域コードエキソンは、以下からなる群から選択されるヒト定常領域をコードする、導入遺伝子:ヒトγ−1定常領域、ヒトγ−3定常領域、ヒトγ−4定常領域、ヒトα−1定常領域、ヒトα−2定常領域およびヒトε定常領域。
【請求項22】
請求項21に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒト定常領域コードエキソンは、ヒトγ−1定常領域をコードする、導入遺伝子。
【請求項23】
yHG1酵母人工染色体(YAC)である、請求項22に記載の導入遺伝子。
【請求項24】
請求項21に記載の導入遺伝子であって、ここで、該ヒト定常領域コードエキソンが、ヒトγ−4定常領域をコードする、導入遺伝子。
【請求項25】
yHG4酵母人工染色体(YAC)である、請求項24に記載の導入遺伝子。
【請求項26】
請求項19に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントが、複数のヒトVH遺伝子に、作動可能に連結される、導入遺伝子。
【請求項27】
請求項19に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントは、少なくとも50%のヒト生殖細胞系列VH遺伝子に作動可能に連結される、導入遺伝子。
【請求項28】
請求項19に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントが、少なくとも40の異なるヒトVH遺伝子に作動可能に連結される、導入遺伝子。
【請求項29】
請求項19に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントが、十分な数の異なるヒトVH遺伝子と作動可能に連結されて、その結果、該導入遺伝子が、接合部多様性または体細胞変異事象を考慮することなく、V(D)J組換えを介して、少なくとも1×105の異なる機能的ヒト免疫グロブリン重鎖配列をコードし得る、導入遺伝子。
【請求項30】
請求項19に記載の導入遺伝子であって、ここで、ヒトVH遺伝子の数が、該導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスにおける野生型マウスのB細胞集団の少なくとも50%を産生するのに十分である、導入遺伝子。
【請求項31】
導入遺伝子であって、該導入遺伝子は、Dセグメント遺伝子由来の、ヒト第14染色体上の免疫グロブリン重鎖遺伝子座の連続領域のDNA配列を含むDNAフラグメントを含み、Jセグメント遺伝子および該遺伝子座の定常領域Cμを介して連続しており、ここで、該DNAセグメントは、少なくとも1つのヒトVセグメント遺伝子に作動可能に連結され、そしてここで、該DNAセグメントは、さらに、さらなる定常領域遺伝子に作動可能に連結され、該さらなる定常領域遺伝子は、ヒトスイッチ領域、ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソンおよびヒト膜エキソンを含み、ここで、該ヒトスイッチ領域および該ヒト膜エキソンは、同じアイソタイプ由来であり、そして該ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソンは、該ヒトスイッチ領域および該ヒト膜エキソンとは異なるアイソタイプである、導入遺伝子。
【請求項32】
請求項31の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトスイッチ領域および前記ヒト膜エキソンは、ヒトγ−2配列である、導入遺伝子。
【請求項33】
請求項32に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソンは、以下からなる群から選択されるヒト定常領域をコードする、導入遺伝子:ヒトγ−1定常領域、ヒトγ−3定常領域、ヒトγ−4定常領域、ヒトα−1定常領域、ヒトα−2定常領域およびヒトε定常領域。
【請求項34】
請求項33に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソンが、ヒトγ−1定常領域をコードする、導入遺伝子。
【請求項35】
yHG1/2酵母人工染色体(YAC)である、請求項34に記載の導入遺伝子。
【請求項36】
請求項31に記載の導入遺伝子であて、ここで、前記ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソンが、ヒトγ−4定常領域をコードする、導入遺伝子。
【請求項37】
yHG4/2酵母人工染色体(YAC)である、請求項36に記載の導入遺伝子。
【請求項38】
請求項31に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントが、複数のヒトVH遺伝子に、作動可能に連結される、導入遺伝子。
【請求項39】
請求項31に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントは、少なくとも50%のヒト生殖細胞系列VH遺伝子に作動可能に連結される、導入遺伝子。
【請求項40】
請求項31に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントが、少なくとも40の異なるヒトVH遺伝子に作動可能に連結される、導入遺伝子。
【請求項41】
請求項31に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記DNAフラグメントが、十分な数の異なるヒトVH遺伝子と作動可能に連結されて、その結果、該導入遺伝子が、接合部多様性または体細胞変異事象を考慮することなく、V(D)J組換えを介して、少なくとも1×105の異なる機能的ヒト免疫グロブリン重鎖配列をコードし得る、導入遺伝子。
【請求項42】
請求項31に記載の導入遺伝子であって、ここで、ヒトVH遺伝子の数が、該導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスにおける野生型マウスのB細胞集団の少なくとも50%を産生するのに十分である、導入遺伝子。
【請求項43】
請求項1、19および31のいずれか1項に記載の導入遺伝子であって、さらに、マウス3’エンハンサーを含む、導入遺伝子。
【請求項44】
請求項43に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記3’エンハンサーが、マウス生殖細胞系列3’エンハンサーの約0.9kbのコアフラグメントである、導入遺伝子。
【請求項45】
請求項43に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記3’エンハンサーが、マウス生殖細胞系列3’エンハンサーの約4kbのフラグメントである、導入遺伝子。
【請求項46】
請求項43に記載の導入遺伝子であって、ここで、前記3’エンハンサーが、遺伝子座制御領域である、導入遺伝子。
【請求項47】
請求項1〜46にいずれか1項に記載の導入遺伝子を含む、非ヒト胚性幹(ES)細胞。
【請求項48】
請求項47に記載の胚性幹(ES)細胞であって、該胚性幹細胞が、マウスES細胞である、胚性幹細胞。
【請求項49】
トランスジェニック非ヒト動物およびその子孫であって、ここで、体細胞および生殖細胞が、請求項1〜46のいずれか1項に記載の導入遺伝子を含む、トランスジェニック非ヒト動物およびその子孫。
【請求項50】
ヒト免疫グロブリン軽鎖導入遺伝子を、さらに含む、請求項49に記載のトランスジェニック非ヒト動物およびその子孫。
【請求項51】
前記動物が、マウスである、請求項49または50に記載のトランスジェニック非ヒト動物およびその子孫。
【請求項52】
不活性化内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座および軽鎖遺伝子座をさらに含む、請求項49または50に記載のトランスジェニック非ヒト動物および子孫。
【請求項53】
前記動物が、マウスである、請求項52に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項54】
トランスジェニック非ヒト動物およびその子孫を作製するための方法であって、該トランスジェニック非ヒト動物およびその子孫の体細胞および生殖細胞は、請求項1〜46のいずれか1項に記載の導入遺伝子を含み、そして該トランスジェニック非ヒト動物およびその子孫は、目的の抗原での免疫化に続いて、該目的の抗原に特異的な所望のアイソタイプの高い親和性の、完全ヒト抗体を産生する方法であり、該方法は、以下:
(a)該導入遺伝子を、胚性幹細胞に導入する工程;
(b)該胚性幹細胞から、該導入遺伝子を含む生殖細胞を含む、トランスジェニック非ヒト動物を作製する工程;および
(c)トランスジェニック非ヒト動物およびその子孫を作製するために必要とされる場合に、該トランスジェニック非ヒト動物を交配する工程であって、ここで、該トランスジェニック非ヒト動物およびその子孫は、目的の抗原での免疫化の後に、該目的の抗原に特異的な所望のアイソタイプの高い親和性の、完全ヒト抗体を産生する、工程、
を包含する、方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法であって、ここで、前記トランスジェニック非ヒト動物が、マウスである、方法。
【請求項56】
所望のアイソタイプの高い親和性の、完全ヒト抗体を産生するための方法であって、ここで、該抗体は、目的の抗原に特異的であって、該方法は、請求項49〜53に記載のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物を、目的の抗体に接触させて、該動物のB細胞における抗体産生を誘導する工程、および該抗体を回収する工程を、包含する、方法。
【請求項57】
目的の抗原で免疫化された、請求項49〜53にいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物から収集された、抗体産生B細胞。
【請求項58】
不死化されている、請求項57に記載のB細胞。
【請求項59】
請求項56に記載の方法であって、ここで、前記抗体は、前記トランスジェニック非ヒト動物の血流から収集される、方法。
【請求項60】
請求項56に記載の方法であって、ここで、前記抗体が、請求項58に記載の不死化されたB細胞から収集される、方法。
【請求項61】
請求項56に記載の方法であって、ここで、前記抗体が、請求項57に記載のB細胞から単離されたDNAでトランスフェクトされた宿主細胞から収集される、方法。
【請求項62】
導入遺伝子であって、該導入遺伝子は、ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座のDセグメント遺伝子由来の、ヒト第14染色体のDNA配列と同一のDNA配列を含むDNAフラグメントを含み、Jセグメント遺伝子および該遺伝子座のCμを介する定常領域遺伝子を介して連続しており、ここで、該DNAフラグメントは、少なくとも1つのヒトVセグメント遺伝子に作動可能に連結され、そしてここで、該DNAフラグメントは、さらに、さらなる定常領域に作動可能に連結され、該さらなる定常領域は、以下:
(1)ヒトスイッチ領域;
(2)ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソンを含む領域;および
(3)ヒト膜エキソンを含み、ここで、該ヒトスイッチ領域、該ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソンを含む領域、および該ヒト膜領域エキソンは、異なるアイソタイプ由来である、導入遺伝子。
【請求項63】
導入遺伝子であって、該導入遺伝子は、ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座のDセグメント遺伝子由来の、ヒト第14染色体のDNA配列と同一のDNA配列を含むDNAフラグメントを含み、Jセグメント遺伝子および該遺伝子座のCμを介する定常領域遺伝子を介して連続しており、ここで、該DNAフラグメントは、少なくとも1つのヒトVセグメント遺伝子に作動可能に連結され、そしてここで、該DNAフラグメントは、さらに、さらなる定常領域に作動可能に連結され、該さらなる定常領域は、ヒトスイッチ領域、ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソン、および非ヒト膜エキソンを含み、ここで、該ヒトスイッチ領域、該ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソンを含む領域、および該非ヒト膜領域エキソンは、同じアイソタイプ由来であるか、または異なるアイソタイプ由来である、導入遺伝子。
【請求項64】
導入遺伝子であって、該導入遺伝子は、ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座のDセグメント遺伝子由来の、ヒト第14染色体のDNA配列と同一のDNA配列を含むDNAフラグメントを含み、Jセグメント遺伝子および該遺伝子座のCμを介する定常領域遺伝子を介して連続しており、ここで、該DNAフラグメントは、少なくとも1つのヒトVセグメント遺伝子に作動可能に連結され、そしてここで、該DNAフラグメントは、さらに、さらなる定常領域に作動可能に連結され、該さらなる定常領域は、非ヒトスイッチ領域、ヒトCH1、Cヒンジ、CH2およびCH3エキソン、および非ヒト膜エキソンを含み、ここで、該非ヒトスイッチ領域および該非ヒト膜領域エキソンは、同じ種由来である、導入遺伝子。
【請求項65】
請求項1〜64のいずれか1項に記載の導入遺伝子であって、ここで、loxP部位が、スイッチ領域の3’およびCH1エキソンの5’に挿入される、導入遺伝子。
【請求項66】
インビトロで、クラス−スイッチを受けるハイブリドーマの産生のための、loxP部位および定常領域をコードするDNAからなる、DNAベクター。
【請求項67】
インビトロで、クラス−スイッチを受けるハイブリドーマを産生のための方法であって、該方法は、請求項65に記載の導入遺伝子、請求項66に記載のベクター、およびCREリコンビナーゼをハイブリドーマに導入する工程、を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−87594(P2011−87594A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272134(P2010−272134)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【分割の表示】特願2001−502667(P2001−502667)の分割
【原出願日】平成12年6月8日(2000.6.8)
【出願人】(398005777)アムジェン フレモント インク. (40)
【Fターム(参考)】