説明

非接触電力伝送装置の電源装置

【課題】保護素子部分でのロスを低減し、しかも受電側への電力伝送を中断せずにスイッチング素子の損傷を防止する。
【解決手段】非接触電力伝送装置の電源装置としての高周波電源11は、直流電源15と、直流電源15に第1のインダクタ16を介して接続されたスイッチング素子17を有する増幅部18とを備えている。増幅部18にはスイッチング素子17に切替手段22を介して並列に接続可能で、切替手段22を介してスイッチング素子17に並列に接続された状態ではスイッチング素子17に過大な電圧が印加されるのを防止する保護素子23が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送装置の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給電装置により出力される電力を車両に搭載されたバッテリに非接触で充電する車両用ワイヤレス充電システムとして、電磁誘導による非接触の充電方式が提案されている。この非接触充電システムでは、給電装置から車両に電力を送信(送電)する際に、送信した電力が車両側の受電装置で反射する場合があり、この反射波が給電装置へ伝達されると、給電装置より送信する電力信号が増幅され、発振現象が発生するという欠点がある。これを防止するため、送信する交流電力が反射により増幅された場合に、これを検知して交流電力の出力を停止することが可能な車両用ワイヤレス充電システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、非接触電力伝送で車両に搭載されたバッテリを充電するシステムとして、磁場共鳴を利用して電力を伝送する充電システムも提案されている。磁場共鳴を利用したシステムでは、給電装置は高周波電源及び一次側コイルを備え、車両側の受電装置は二次側コイル、整流器及び充電器を備えている。磁場共鳴を利用して電力伝送を効率良く行うためには、給電側(一次側)と受電側(二次側)との共鳴系の共鳴状態を適切な状態にする必要がある。ところが、共鳴系の共鳴状態は一次側コイルと二次側コイルとの距離によって変化し、その距離は車両が充電のために停止した停止位置や車両の状況(積載状況やタイヤの空気圧等)によって変化する。そこで、高周波電源と一次側コイルとの間に整合器を設け、充電に先立って整合器を調整して共鳴系の共鳴状態を適切な状態に調整した後、給電装置から電力伝送を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−68634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用ワイヤレス充電システムでは、給電装置から送信する交流電力が反射により増幅された場合に、これを検知して交流電力の出力を停止するため、交流電力の異常な増大を防止することができる。しかし、異常が回復するまで給電装置からの電力伝送を行うことはできない。
【0006】
また、後者の磁場共鳴で電力伝送を行う充電システムの場合、給電装置からの電力伝送に先立って整合器を調整して共鳴系の共鳴状態を適切な状態に調整するため、整合器の調整終了後は、適切な共鳴状態で電力伝送を行うことができる。しかし、整合器の整合調整時には高周波電源の出力インピーダンスの変動が大きくなり、高周波電源に使用されているスイッチング素子に過大な電圧が印加されてスイッチング素子の損傷を招く虞がある。給電装置に特許文献1のように、反射電力検出手段を設け、整合器の整合調整時に反射電力が予め設定された値以上になると整合を停止するようにすれば、スイッチング素子の損傷を防止することはできる。しかし、整合器の整合調整完了までに時間がかかるという問題がある。また、整合器の整合調整完了後、給電装置からの電力伝送時に一時的に反射電力が増大した場合も電力伝送を停止する必要がある。
【0007】
スイッチング素子と並列に保護素子を接続し、高周波電源の出力インピーダンスの変動が大きくなったときにスイッチング素子に過電圧がかかるのを防止することが考えられる。しかし、保護素子が存在することにより、保護素子部分でのロスが発生し高周波電源の効率が低下する。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、保護素子部分でのロスを低減し、しかも受電側への電力伝送を中断せずにスイッチング素子の損傷を防止することができる非接触電力伝送装置の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、非接触電力伝送装置の電源装置であって、直流電源と、前記直流電源に接続されたスイッチング素子を有する増幅部とを備え、前記増幅部には前記スイッチング素子に切替手段を介して並列に接続可能で、前記切替手段を介して前記スイッチング素子に並列に接続された状態では前記スイッチング素子に過大な電圧が印加されるのを防止する保護素子が設けられている。
【0010】
この発明では、保護素子が切替手段を介してスイッチング素子と並列に接続された状態では、スイッチング素子に過大な電圧が印加されることが防止される。したがって、保護素子がスイッチング素子と並列に接続されている状態では、非接触電力伝送装置の電源装置でスイッチング素子が駆動されている状態で電源装置の出力インピーダンスの変動が大きくなっても、スイッチング素子に過電圧が印加されることはない。そして、出力インピーダンスの変動が大きくなる状態あるいは出力インピーダンスの変動が大きな状態が継続する場合以外の状態では、保護素子がスイッチング素子に並列に接続された状態を解除することにより、保護素子部分でのロスが低減される。したがって、保護素子部分でのロスを低減し、しかも受電側への電力伝送を中断せずにスイッチング素子の損傷を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スイッチング素子はインダクタを介して前記直流電源に接続されている。この発明においても、請求項1に記載の発明と同様な効果が得られる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記保護素子はツェナーダイオードである。したがって、スイッチング素子に並列に接続された状態ではスイッチング素子に過大な電圧が印加されるのを防止する機能を有する保護素子を入手し易い。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記電源装置は前記増幅部に整合器が接続された状態で使用され、前記切替手段は前記整合器による整合が行われる前に前記保護素子を前記スイッチング素子に並列に接続された状態に切り替え、整合が終了した後、前記保護素子の前記スイッチング素子に並列に接続された状態を解除する。
【0014】
非接触電力伝送装置を車両に搭載されたバッテリの充電システムに適用した場合、非接触充電システムを構成する給電装置の一次側コイルと、受電側の二次側コイルとの距離が車両の停止位置や車両の状況(積載状況やタイヤの空気圧等)によって変化する。そのため、電源装置は増幅部に整合器が接続された状態で使用され、充電に先立って共鳴系の入力インピーダンスと、電源装置の出力インピーダンスとが整合するように整合器による整合が行われる。整合器による整合を行う場合は電源装置の出力インピーダンスの変動が大きくなる場合があるが、この発明では、保護素子は整合が行われる前に切替手段によりスイッチング素子と並列に接続され、整合が終了した後、スイッチング素子に接続された状態が解除される。したがって、反射電力等の検出に基づいてスイッチング素子に過電圧が印加される状態か否かを判断して切替手段の切り替えを行う場合に比べて、適切な切り替えを行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保護素子部分でのロスを低減し、しかも受電側への電力伝送を中断せずにスイッチング素子の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態の共鳴型非接触充電システムの構成図。
【図2】別の実施形態の給電側設備の構成図。
【図3】別の実施形態の給電側設備の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を車載バッテリを充電するための共鳴型非接触充電システムに具体化した一実施形態を図1にしたがって説明する。
図1に示すように、共鳴型非接触電力伝送装置としての共鳴型非接触充電システムは、給電側設備(送電側設備)10と、移動体としての車両に搭載された移動体側設備(受電側設備)30とで構成されている。
【0018】
給電側設備10は、電源装置としての高周波電源11と、高周波電源11の出力部に接続された整合器12と、一次側コイル13と、制御手段としての電源側コントローラ14とを備えている。一次側コイル13は、図示しない一次コイルと一次側共鳴コイルとで構成され、一次コイルが整合器12を介して高周波電源11に接続されている。一次コイルは、一次側共鳴コイルに電磁誘導で結合され、高周波電源11から一次コイルに供給された交流電力が電磁誘導で一次側共鳴コイルに供給される。
【0019】
高周波電源11は、直流電源15と、直流電源15にインダクタとしての第1のインダクタ16を介して接続されたスイッチング素子17を有する増幅部18とを備えている。直流電源15は、電源側コントローラ14からの指令に基づいて任意の直流電圧を供給可能な電源装置である。直流電源15は、例えば、図示しない交流の商用電源を整流する整流回路と、整流回路の直流出力を任意の直流電圧に変換するDC−DCコンバータとから構成される。また、この実施形態では増幅部18としてE級アンプが設けられている。
【0020】
E級アンプは、第1のインダクタ16及びスイッチング素子17の他に第2のインダクタ19、第1のコンデンサ20、第2のコンデンサ21を備えている。第2のインダクタ19及び第1のコンデンサ20は直列に接続されている。スイッチング素子17としてMOSFETが使用され、MOSFETのドレインに第1のインダクタ16を介して直流電源15のプラス側出力端子が接続されている。第2のインダクタ19は第1のコンデンサ20に接続された側と反対側が第1のインダクタ16とMOSFETのドレインとの接合点とに接続されている。第1のコンデンサ20の第2のインダクタ19に接続された側と反対側が増幅部18の出力側となる。第2のコンデンサ21はスイッチング素子17と並列に接続されている。
【0021】
移動体側設備30は、二次側コイル31と、整流器32と、充電器33と、充電器33に接続されたバッテリ(二次電池)34と、車両側コントローラ35とを備えている。二次側コイル31は、図示しない二次コイルと二次側共鳴コイルとで構成され、二次コイルが整流器32に接続されている。二次コイルは、二次側共鳴コイルに電磁誘導で結合され、共鳴により一次側共鳴コイルから二次側共鳴コイルに供給された交流電力が電磁誘導で二次コイルに供給される。整流器32、充電器33及びバッテリ34は負荷を構成する。整合器12、一次側コイル13、二次側コイル31及び負荷(整流器32、充電器33、及びバッテリ34)により共鳴系が構成される。
【0022】
増幅部18にはスイッチング素子17に切替手段22を介して並列に接続可能で、切替手段22を介してスイッチング素子17に並列に接続された状態ではスイッチング素子17に過大な電圧が印加されるのを防止する機能を有する保護素子23が設けられている。切替手段22には電源側コントローラ14からの指令信号によりオン、オフする切替スイッチが使用されている。保護素子23にはツェナーダイオードが使用されている。
【0023】
電源側コントローラ14は、切替手段22に指令信号を送り、保護素子23がスイッチング素子17に並列に接続された状態と、スイッチング素子17に並列に接続された状態が解除された状態とに切り替える。電源側コントローラ14は、移動体側設備30への給電、即ち電力伝送に先立って整合器12の整合を行うとともに、整合を行う前に切替手段22を保護素子23がスイッチング素子17に並列に接続された状態に切り替え、整合が終了した後、保護素子23がスイッチング素子17に並列に接続された状態を解除する。
【0024】
なお、電源側コントローラ14と、車両側コントローラ35とは図示しない無線通信装置を介して通信可能になっており、電源側コントローラ14は通信により車両側コントローラ35から充電要求信号や充電完了信号を受信する。
【0025】
次に前記のように構成された共鳴型非接触充電システムの作用を説明する。
車両に搭載されたバッテリ34に充電を行う場合には、車両が給電側設備10の近くの所定位置に停止した状態でバッテリ34への充電が行われる。車両が所定位置に停止した後、車両側コントローラ35は、電源側コントローラ14に充電要求信号を送信する。
【0026】
磁場共鳴を利用して電力伝送を効率良く行うためには、給電側(一次側)と受電側(二次側)との共鳴系の共鳴状態を適切な状態、即ち、共鳴系の入力インピーダンスと高周波電源11の出力インピーダンスとを整合する必要がある。ところが、共鳴系の共鳴状態は一次側コイル13と二次側コイル31との距離によって変化し、その距離は車両が充電のために停止した停止位置や車両の状況(積載状況やタイヤの空気圧等)によって変化する。そのため、車両が充電停止位置に停止した状態において、共鳴系の共鳴状態が適切な状態にあるとは限らない。
【0027】
電源側コントローラ14は、充電要求信号を確認しても、直ちに移動体側設備30へバッテリ34の充電のための給電(電力伝送)を開始せずに、整合器12に共鳴系の入力インピーダンスと高周波電源11の出力インピーダンスとの整合作業を行わせる。しかし、整合器12の整合調整時には高周波電源11の出力インピーダンスの変動が大きくなり、高周波電源11に使用されているスイッチング素子17に過大な電圧が印加されてスイッチング素子17の損傷を招く虞がある。
【0028】
電源側コントローラ14は、整合器12による整合作業が開始される前に、切替手段22にオンとなる指令信号を出力し、切替手段22により保護素子23がスイッチング素子17に並列に接続される状態に切り替えられる。この状態で整合器12により共鳴系の入力インピーダンスと高周波電源11の出力インピーダンスとの整合作業が行われる。保護素子23が切替手段22を介してスイッチング素子17と並列に接続された状態では、スイッチング素子17に対する印加電圧が保護素子23であるツェナーダイオードのツェナー電圧(降伏電圧)以下になるため、スイッチング素子17に過大な電圧が印加されることが防止される。電源側コントローラ14は整合器12による整合動作が終了した後、切替手段22に指令信号を送り、切替手段22をオフ状態に切り替えて保護素子23がスイッチング素子17に並列に接続された状態を解除する。その後、移動体側設備30へバッテリ34の充電のための給電(電力伝送)を開始する。
【0029】
共鳴系の入力インピーダンスと高周波電源11の出力インピーダンスとの整合が行われた後は、充電中にスイッチング素子17に過電圧が印加される状態になるほど高周波電源11の出力インピーダンスが大きく変動することはないため、保護素子23がスイッチング素子17に並列に接続された状態になくても問題は生じない。また、充電中、保護素子23がスイッチング素子17に並列に接続されていないため、保護素子23の部分でのロスが低減される。
【0030】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)非接触電力伝送装置の電源装置としての高周波電源11は、直流電源15と、直流電源15に第1のインダクタ16を介して接続されたスイッチング素子17を有する増幅部18とを備えている。増幅部18にはスイッチング素子17に切替手段22を介して並列に接続可能で、切替手段22を介してスイッチング素子17に並列に接続された状態ではスイッチング素子17に過大な電圧が印加されるのを防止する保護素子23が設けられている。したがって、保護素子23部分でのロスを低減し、しかも受電側への電力伝送を中断せずにスイッチング素子17の損傷を防止することができる。
【0031】
(2)保護素子23としてツェナーダイオードが使用されている。したがって、スイッチング素子17に並列に接続された状態ではスイッチング素子17に過大な電圧が印加されるのを防止する機能を有する保護素子23を入手し易い。
【0032】
(3)高周波電源11は増幅部18に整合器12が接続された状態で使用され、切替手段22は整合器12による整合が行われる前に保護素子23をスイッチング素子17に並列に接続された状態に切り替え、整合が終了した後、保護素子23がスイッチング素子17に並列に接続された状態を解除する。したがって、反射電力等の検出に基づいてスイッチング素子17に過電圧が印加される状態か否かを判断して切替手段22の切り替えを行う場合に比べて、適切な切り替えを行うことができる。
【0033】
(4)増幅部18としてE級アンプが使用されている。E級アンプは、E級アンプを構成するコンデンサ、インダクタの回路定数およびスイッチング素子に入力される高周波信号のデューティサイクルを調整することによって、スイッチング素子17での損失度合いを低減でき、理論上他のアンプよりも高効率で高周波電力を出力できるという利点がある。
【0034】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 保護素子23をスイッチング素子17に並列に接続する状態と、スイッチング素子17に並列に接続された状態を解除する切替手段22の切替動作を電源側コントローラ14からの指令で行う代わりに、手動で行う構成にしてもよい。例えば、車両が充電位置に停止した状態で充電要求を確認した作業員が、整合器12に整合作業を行わせる指令を行う前に切替手段22にオン指令を行う指令装置を操作する構成にしたり、切替手段22として手動操作のよる切替スイッチを設けてもよい。
【0035】
○ 保護素子23をスイッチング素子17に並列に接続する状態に切替手段22を切り替える時期を整合器12による整合作業と関係なく、高周波電源11の出力インピーダンスが大きく変動してスイッチング素子17に過電圧が印加されるほど悪くなったときに行うようにしてもよい。例えば、図2に示すように、高周波電源11に一次側コイル13からの反射電力を検出する反射電力検出手段24を設ける。そして、反射電力検出手段24の検出信号に基づいて、反射電力が予め設定された値以上になると保護素子23をスイッチング素子17に並列に接続する状態に切替手段22を切り替えるようにしてもよい。この場合は、整合器12による整合作業の有無に拘らず、反射電力が予め設定された値未満であれば、保護素子23は増幅部18から切り離された状態に保持されるため、保護素子23が増幅部18に接続されることによるロスが無くなる。
【0036】
○ 保護素子23をスイッチング素子17に並列に接続する状態に切替手段22を切り替える時期を、一定時間電源装置(高周波電源11)の出力インピーダンスの変動が大きな状態が継続する場合にしてもよい。
【0037】
○ 高周波電源11の出力ラインにインピーダンス測定器を接続してもよい。そして、電源側コントローラ14は、インピーダンス測定器の検出信号に基づいて高周波電源11の出力インピーダンスの変動が大きくなった場合、保護素子23をスイッチング素子17に並列に接続する状態に切替手段22を切り替えるようにしてもよい。
【0038】
○ インピーダンス測定器に代えてVSWR測定器(電圧定在波比測定器)を設けてもよい。そして、電源側コントローラ14は、VSWR測定器の検出信号に基づいて電圧定在波比が予め設定された値を超えると、保護素子23をスイッチング素子17に並列に接続する状態に切替手段22を切り替えるようにしてもよい。
【0039】
○ 図3に示すように、効率重視出力用回路25と耐圧重視出力用回路26とが第1の切替スイッチS1を介して第1のインダクタ16とスイッチング素子17との接合点に切替可能に接続され、第2の切替スイッチS2を介して整合器12に切替可能に接続された構成を採用してもよい。効率重視出力用回路25は、第2のインダクタ19a及び第1のコンデンサ20aの直列回路と、スイッチング素子17に並列に接続される第2のコンデンサ21aとを備えている。耐圧重視出力用回路26は第2のインダクタ19b及び第1のコンデンサ20bの直列回路と、スイッチング素子17に並列に接続される第2のコンデンサ21bとを備えている。第2のインダクタ19a、第1のコンデンサ20a及び第2のコンデンサ21aは効率重視の定数となるものが使用され、第2のインダクタ19b、第1のコンデンサ20b及び第2のコンデンサ21bは耐圧重視の定数となるものが使用される。
【0040】
そして、電源側コントローラ14は、高周波電源11の出力インピーダンスの変動が小さな状態では、高周波電源11が効率重視出力用回路25を使用して出力を行う状態に第1の切替スイッチS1及び第2の切替スイッチS2を切り替え制御する。また、高周波電源11の出力インピーダンスの変動が大きな状態では、高周波電源11が耐圧重視出力用回路26を使用して出力を行う状態に第1の切替スイッチS1及び第2の切替スイッチS2を切り替え制御する。したがって、高周波電源11の出力インピーダンスが安定しているときは効率重視出力用回路25を介して効率良く出力され、高周波電源11の出力インピーダンスが不安定なときは耐圧重視出力用回路26を介して出力され、スイッチング素子17の損傷が防止される。高周波電源11の出力インピーダンスの変動が大きいか否かの判断は、前述のように整合作業中か否か、反射電力の状態あるいは出力インピーダンスの状態により判断される。
【0041】
○ 共鳴型非接触給電システムが、給電側設備10と移動体側設備30との間で非接触給電を行うためには、一次コイル、一次側共鳴コイル、二次コイル及び二次側共鳴コイルの全てが必須ではなく、少なくとも一次側共鳴コイル及び二次側共鳴コイルを備えていればよい。即ち、一次側コイル13を一次コイル及び一次側共鳴コイルで構成する代わりに、一次側共鳴コイルを整合器12を介して高周波電源11に接続し、二次側コイル31を二次コイル及び二次側共鳴コイルで構成する代わりに、二次側共鳴コイルを整流器32に接続してもよい。しかし、一次コイル、一次側共鳴コイル、二次コイル及び二次側共鳴コイルの全てを備えた構成の方が、共鳴状態に調整するのが容易で、一次側共鳴コイルと二次側共鳴コイルとの距離が大きくなった場合でも共鳴状態を維持し易い。
【0042】
○ 保護素子23はツェナーダイオードに限らず、スイッチング素子17に対して並列に接続された状態でスイッチング素子17に対して過電圧が印加されるのを防止する機能を有する素子であればよい。
【0043】
○ 整流器32は充電器33に内蔵されていてもよい。
○ 移動体としての車両は運転者を必要とする車両に限らず無人搬送車でもよい。
○ 共鳴型非接触充電システムは、車両に搭載されたバッテリ34に対して非接触充電を行うシステムに限らない。例えば、船舶や自走式のロボット等の移動体に装備されたバッテリ、あるいは携帯電話機や携帯用パソコン等の携帯用の電子機器に装備されたバッテリに対して非接触充電を行うシステムであってもよい。
【0044】
○ 共鳴型非接触給電システムは共鳴型非接触充電システムに限らず、ロボット等の移動体に装備され、使用中に段階的に負荷が変化する電気機器に対して電力を供給する装置に適用してもよい。
【0045】
○ 共鳴型非接触給電システムは、動力源としては非接触電力伝送を受けずに通常の電力で駆動されるコンベア等の移送手段により定められた作業位置に移動され、かつ定電力で駆動されるモータを負荷として備えた装置に移動体側設備30を装備した構成としてもよい。
【0046】
○ 直流電源15は、増幅部18としてのE級アンプに所望の電圧の直流を供給する構成としてDC−DCコンバータではなく、他の昇圧回路や降圧回路を備えていてもよい。
○ 直流電源15は、交流商用電源以外の交流電源を整流して直流とする構成に限らず、商用交流電力や太陽光発電等で発電された電力を充電しておく二次電池(蓄電池)を電源としてE級アンプに所望の電圧の直流を供給する構成であってもよい。
【0047】
○ 電源装置は高周波電源11に限らず、所謂高周波電源といわれる周波数より低い周波数の交流電力を出力するものであってもよい。
○ 一次側コイル13が一次コイルと一次側共鳴コイルとで構成され、二次側コイル31は、二次コイルと二次側共鳴コイルとで構成された共鳴型非接触充電システムに限らず、一次側共鳴コイルと二次側共鳴コイルがない、即ち共鳴型でない非接触充電システムに適用してもよい。
【0048】
○ 整合器を二次側に設けてもよい。
○ スイッチング素子17がインダクタ(第1のインダクタ16)を介さずに直流電源15に接続される構成としてもよい。
【0049】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記増幅部はE級アンプである。
【0050】
(2)請求項1〜請求項4及び前記技術的思想(1)のいずれか1項に記載の発明において、前記非接触電力伝送装置は移動体に搭載された移動体設備のバッテリに非接触で充電を行う非接触充電システムである。
【符号の説明】
【0051】
11…電源装置としての高周波電源、12…整合器、15…直流電源、16…インダクタとしての第1のインダクタ、17…スイッチング素子、18…増幅部、22…切替手段、23…保護素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触電力伝送装置の電源装置であって、
直流電源と、前記直流電源に接続されたスイッチング素子を有する増幅部とを備え、前記増幅部には前記スイッチング素子に切替手段を介して並列に接続可能で、前記切替手段を介して前記スイッチング素子に並列に接続された状態では前記スイッチング素子に過大な電圧が印加されるのを防止する保護素子が設けられていることを特徴とする非接触電力伝送装置の電源装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子はインダクタを介して前記直流電源に接続されている請求項1に記載の非接触電力伝送装置の電源装置。
【請求項3】
前記保護素子はツェナーダイオードである請求項1又は請求項2に記載の非接触電力伝送装置の電源装置。
【請求項4】
前記電源装置は前記増幅部に整合器が接続された状態で使用され、前記切替手段は前記整合器による整合が行われる前に前記保護素子を前記スイッチング素子に並列に接続された状態に切り替え、整合が終了した後、前記保護素子の前記スイッチング素子に並列に接続された状態を解除する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の非接触電力伝送装置の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115908(P2013−115908A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259350(P2011−259350)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】