説明

非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送方法

【課題】送電コイルと受電コイルの配置による共振系の周波数応答特性の変化に対応して、伝送電力の低下を抑制する。
【解決手段】送電コイル5及び共振用容量6により構成された送電側共振器3を有する送電装置1と、7受電コイル及び共振用容量8により構成された受電側共振器4を有する受電装置2とを備え、送電コイルと受電コイルの結合による磁界共鳴を介して送電装置から受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送装置。送電側共振器の共振用容量は可変コンデンサにより構成され、可変コンデンサの容量を制御する共振周波数調整回路11を備え、共振周波数調整回路は、電力伝送に際して、送電側共振器と受電側共振器で構成される伝送共振系の共振周波数特性を、可変コンデンサの容量を変化させることにより調整して、共振周波数特性のピークを送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の周波数に一致させるように制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電コイルと受電コイル間の電力の伝送を、磁界共鳴を介して非接触(ワイヤレス)で行う非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を伝送する方法として、電磁誘導(数100kHz)による電磁誘導型、電界または磁界共鳴を介したLC共振間伝送による電界・磁界共鳴型、電波(数GHz)によるマイクロ波送電型、あるいは可視光領域の電磁波(光)によるレーザ送電型が知られている。この中で既に実用化されているのは、電磁誘導型である。これは簡易な回路(トランス方式)で実現可能であるなどの優位性はあるが、送電距離が短いという課題もある。
【0003】
そこで、最近になって近距離伝送(〜2m)が可能な電界・磁界共鳴型の電力伝送が注目を浴びてきた。このうち、電界共鳴型の場合、伝送経路中に手などを入れると、人体が誘電体であるため、エネルギーを熱として吸収して誘電体損失を生じる。これに対して磁界共鳴型の場合、人体がエネルギーをほとんど吸収せず、誘電体損失を避けられる。この点から磁界共鳴型に対する注目度が上昇してきている。
【0004】
図10は、従来の磁界共鳴を利用して送電装置101から受電装置102へ電力を伝送する非接触電力伝送装置の構成例の概略を示した正面図である。送電装置101は、ループコイル103と共鳴コイル104を組み合わせた送電コイル105を備え、受電装置102は、ループコイル106と共鳴コイル107を組み合わせた受電コイル108を備えている。送電装置101のループコイル103には高周波電力ドライバー109が接続され、交流電源(AC100V)110の電力を送電可能な高周波電力に変換して供給する。受電装置102のループコイル106には、整流器111を介して負荷(例えば充電池)112が接続されている。
【0005】
ループコイル103は、高周波電力ドライバー109から供給される電気信号により励起され、電磁誘導により共鳴コイル104に電気信号を伝送する誘電素子である。共鳴コイル104はループコイル103から出力された電気信号に基づいて磁界を発生させる。この共鳴コイル104は、共振周波数f0=1/{2π(LC)1/2}(Lは送電側の共鳴コイル104のインダクタンスで、Cは浮遊容量を示す)において磁界強度が最大となる。共鳴コイル104に供給された電力は、磁界共鳴により受電装置102の共鳴コイル107に非接触で伝送される。伝送された電力は、共鳴コイル107から電磁誘導によりループコイル106へ伝送され、整流器111により整流されて負荷112に供給される。共鳴コイル104と共鳴コイル107の共振周波数は、同一に設定される。
【0006】
このような非接触で電力を送受電する場合、送電コイル105に対して受電コイル108が適正に載置されていないと、効率良く電力を伝送することができない場合が多い。また、携帯機器に受電装置102が設けられ、2次電池が搭載される場合には、受電コイル108と2次電池パックとの間に電磁波の影響を少なくするためにシールド材(電波吸収体含む)が挿入されていることが多い。このようなケースでは、携帯機器の受電コイル108が設置された面の裏表を間違って載置した時には、送電コイル105と受電コイル108との間にシールド材が介在することになり、伝送効率が大幅に低下し電力伝送が困難になる。そこで、特許文献1には、電力を供給する送電側の機器に対して受電側の機器のコイル設置面が正しく送電機器側に対向しているか否かを検出する表裏検出部(磁気センサ使用)を設け、対向していない場合には使用者に通知するようにした充電システムが開示されている。
【0007】
また、距離が離れた装置間で電力を伝送するエネルギー供給装置の例が、特許文献2に開示されている。特許文献2に開示された装置は、被験者が飲み込んだカプセル型内視鏡に、被験者の外部から電力を供給するものであり、被験者の外部に巻かれたコイルから、カプセル内のコイルに電磁誘導で電力を供給する。この装置は、複数のコイルからの給電を切換えることにより、体内を移動するカプセルの位置に対して好適な電力伝送を行うように構成されている。ただし、給電効率を上げるために磁界共鳴を利用することは記載されていない。
【0008】
この特許文献2のような体外からの電力供給において、受電側に共振回路を設けて伝送効率を上昇させることが特許文献3に記載されている。特許文献3の装置では、複数の受電側機器にそれぞれ別個の共振周波数を割り当てておき、送電側である体外に巻かれたコイルへ供給する供給電力の周波数を変更することにより、選択的に受信側機器に電力を供給する。同文献では、電力供給側のコイルとコンデンサからなる共振回路において、例えばコンデンサを容量可変とし、容量を変化させることにより供給周波数を変更する構成が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−207017号公報
【特許文献2】特開2009−125099号公報
【特許文献3】特開2009−268181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ただし、特許文献3では、送電側の共振回路と受電側の共振回路について、コイル間の相互インダクタンスによる影響、すなわち、2つの共振系が結合した場合の双峰特性に起因する問題点(後述する)は考慮されていない。これは、特許文献3が対象とする体外の給電用コイルとカプセル内の受電コイルでは、両コイルの直径が大幅に違い結合係数が非常に小さく、相互インダクタンスによる影響は考慮する必要が無かったためと考えられる。このことは、特許文献3では、受電側の共振回路での共振周波数は変化しないものとして説明されていることから明白である。
【0011】
しかし、大電力の伝送の場合、送電側及び受電側のコイルを大きくし、また、ある程度近い距離に配置する必要がある。そのため、結合係数も大きくなり、相対的な配置関係に応じて共振特性が変化する現象が生じ、共振周波数が固定されていることを前提とした構成を取ることは意味がなくなる。
【0012】
一方、上述のように、電磁誘導や磁界共鳴を利用して非接触で電力を送受電する場合、送電コイルに対して受電コイルが適正に配置されていないと、効率良く電力を伝送することができない場合が多い。すなわち、図10の構成で、4つのコイルが間隔をおいて並べられた形態が示されているように、送電側の共鳴コイル104と受電側の共鳴コイル107の共振周波数が同じで且つ高効率に電力伝送するためには、配置上の特定の条件を満足する必要があるからである。
【0013】
従って、種々の配置状態で電力伝送を行えるように、例えば、小型化のためにループコイル103を共鳴コイル104に密着させて配置する等の、実用化に際して望ましい構成を選択することは困難である。何故ならば、特定の距離まで共鳴コイル104と共鳴コイル107とが離れて互いの結合係数が小さく、更に、ループコイル103による伝送のための結合も空間的に調整して配置する必要があるためである。
【0014】
以下、結合係数が大きい場合の問題点について、図7〜図9Bを参照して説明する。図7は、左側に配置された送電側共振器と、右側に配置された受電側共振器の2つの共振器を有する共振系の一例を示す。
【0015】
送電側共振器は、送電コイル5、及び送電側の共振用容量である可変容量(以下、共振用バリコン6と略記する)、及び抵抗21から構成され、特定の周波数を発生する高周波電源22が接続されている。抵抗21は、場合によっては高周波電源22の出力抵抗としても作用する。受電側共振器は、受電コイル7、受電側の共振用容量8、及び抵抗23を含む。抵抗23は、説明によっては負荷抵抗としても作用する。24は結合係数であり、送電コイル5と受電コイル7が結合していることを示す。
【0016】
このような2つの共振回路をもつ回路を複共振回路と呼び、ラジオの複同調回路ではラジオ局間の分離度の向上等のために、従来から高周波回路の信号処理に利用されてきた。ただし、信号処理においては信号自体の電力が小さかったので、このような共振系を利用して、大きな電力を伝送すること、まして、2つの共振回路を離間させて、離れた距離から電力を伝送することに関しては、近年までは、クローズアップされてこなかった。
【0017】
図7において、磁力線25は、送電コイル5と受電コイル7が結合しており、それぞれを共通な磁力線25が、各コイル5、7に鎖交していることを模式的に表している。このように鎖交する場合は磁界エネルギーを共有していると考えられ、送電コイル5で発生したエネルギーは受電コイル7を通じて受電側へと伝送できる。なお、コイルであるので、エネルギーの仲介に磁力線が利用されることが主であるが、コイル間には電場も形成されており、電気力線が互いを結んでおりコンデンサとしてエネルギーを伝送できることも勿論である。しかし、磁界による電力伝送が主であるので、磁界による挙動について説明する。
【0018】
図7の結合係数24により相互インダクタンスが現れ、それを等価回路で書き直すと図8の様に表すことができる。実際には、例えば、高周波電源22と抵抗23はDC的に直結していないが、交流的には図8のように書き表わせる。
【0019】
この等価回路において、24bは相互インダクタンスであり、結合係数24を決めれば、或いは送電コイル5と受電コイル7の配置等を決めれば決まる量である。また、新たなインダクタンス5c、7cは、インダクタンス5c=(送電コイル5単体のインダクタンス−相互インダクタンス24b)、インダクタンス7c=(受電コイル7単体のインダクタンス−相互インダクタンス24b)、となるインダクタンス分を持つ。
【0020】
以下、簡単のため、送電側と、受電側の容量が同一であり、
(1)インダクタンス5c=インダクタンス7c、
(2)共振用バリコン6のキャパシタンス=共振用容量8のキャパシタンス、
(3)抵抗21の抵抗値=抵抗23の抵抗値、であり無視できるほどに小さく、
(4)高周波電源22は理想的な電源であり、インピーダンスは0であるものとする。
【0021】
このような複共振回路では相互インダクタンスが大きく、結合係数が1に近い場合、2つの共振状態で共振する。一つは共振電流が相互インダクタンス24bを経由する共振モードであり、その共振電流の経路を26a、26bで示す。もう一つは相互インダクタンス24bを経由しない共振モードであり、その共振電流の経路を27で示す。
【0022】
先ず、相互インダクタンス24bを経由しない経路27の系では、2つの容量6、8の直列成分と2つのインダクタンス5c、7cの直列成分が繋がれた共振回路となる。共振用バリコン6のキャパシタンス=C、送電コイル5cのインダクタンス=L,相互インダクタンス24b=M、とすると、インダクタンス5c=L−Mとなる。この場合の共振周波数f2は、下記の式(1)で表わされる。
f2=1/{2×π×(2C×(L−M)/2)1/2
=1/{2π(C・(L−M))1/2} (1)
次に、相互インダクタンス24bを経由する経路26a、または経路26bでは、2つの経路の挙動は全く同じとなり、送電コイル5と共振用バリコン6の結合部の電圧挙動と、受電コイル7と共振用容量8の結合部の電圧挙動は全く同一となるので、この2つの結合部を接続したものと考えることが出来る。その場合、共振周波数としては、共振用バリコン6と共振用容量8を並列接続にしたものと、インダクタンス5cとインダクタンス7cを並列接続したものと、相互インダクタンス24bの、3つの部品を直列接続した共振系となる。その共振周波数f1は、下記の式(2)で表わされる。
【0023】
f1=1/{2×π×(2C×((L−M)/2+M))1/2
=1/{2π(C・(L+M))1/2} (2)
2つの共振系が離れていて結合係数k=0の場合のそれぞれの周波数特性は、同一の素子値をもつので、高周波電源22から見た回路の共振周波数f0は、下記の式(3)で表わされる。
【0024】
f0=1/{2π(C・L)1/2} (3)
受電系も同じ共振周波数をもつ。これを、図9Aに模式的に示す。横軸は周波数、縦軸は応答であり、例えば抵抗に発生する電圧の絶対値により得られる。同図で、実線は送電系の周波数特性であり、受電系の周波数特性も同じなので破線で模式的に示した。
【0025】
図9Aでは、高周波電源22から見た周波数応答は1つのピークを持つ単峰特性となるが、結合係数が1に近くなれば相互インダクタンスの影響が大きくなる。その場合、図9Bに示す周波数特性のように、2つの峰を持つ双峰特性となる。これは、先に算出した周波数f1、f2にそれぞれ位置する2つのピーク28a、29aを持つ。
【0026】
即ち、送電コイル5と受電コイル7を接近させると結合係数が0ではなくなり、相互インダクタンスMの影響が出現し双峰特性となり、元々の共振周波数f0から離れた2点でピークを持つ。逆に、コイル間の距離を離す等により結合係数が減少すれば、2つのピークが接近し単峰特性となる。更に距離が離れて、結合係数が減少すれば、単峰特性のままではあるが、磁力線の鎖交数が減っていくので電力を伝送する量が減少し、遂には電力伝送が不可となる。
【0027】
このように、送電コイル5と受電コイル7を近付けると双峰特性となるため、高周波電源22から元々のf0の周波数で電力を供給しても、その周波数は共振周波数ではなくなっており、応答が低下するため、伝送電力は低下することとなる。これは、コイル間の距離によって送電側からの電力供給の効率が変化することを意味する。これに対して、高周波電力の周波数は一定であるため、共振点から離れているので高効率の電力伝送が出来ない。しかし、法規により、高周波電力の周波数の可変は困難である。
【0028】
そこで、本発明は、送電コイルと受電コイルの配置による共振系の周波数応答特性の変化に対応して、伝送電力の低下を抑制することが可能な非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の非接触電力伝送装置は、基本構成として、送電コイル及び共振用容量により構成された送電側共振器を有する送電装置と、受電コイル及び共振用容量により構成された受電側共振器を有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイルの結合による磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の第1構成の非接触電力伝送装置は、上記基本構成において、前記送電側共振器の前記共振用容量は可変コンデンサにより構成され、前記可変コンデンサの容量を制御する共振周波数調整回路を備え、前記共振周波数調整回路は、電力伝送に際して、前記送電側共振器と前記受電側共振器で構成される伝送共振系の共振周波数特性を、前記可変コンデンサの容量を変化させることにより調整して、前記共振周波数特性のピークを前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の周波数に一致させるように制御を行うことを特徴とする。
【0031】
本発明の第2構成の非接触電力伝送装置は、上記基本構成において、前記送電側共振器の前記共振用容量は初期調整用コンデンサにより構成され、前記送電側共振器と前記受電側共振器で構成される伝送共振系の共振周波数特性のピークが、電力伝送に際して、前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の周波数に一致するように、前記初期調整用コンデンサの容量が設定されていることを特徴とする。
【0032】
本発明の非接触電力伝送方法は、送電コイル及び共振用容量により構成された送電側共振器を有する送電装置と、受電コイル及び共振用容量により構成された受電側共振器を有する受電装置とを用い、前記送電コイルと前記受電コイルの結合による磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する方法であって、前記送電側共振器の前記共振用容量を可変コンデンサにより構成し、電力伝送に際して、前記送電側共振器と前記受電側共振器で構成される伝送共振系の共振周波数特性を、前記可変コンデンサの容量を変化させることにより調整して、前記共振周波数特性のピークを前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の周波数に一致させるように制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、送電コイルと受電コイルの配置によりと周波数応答特性が変化し伝送電力が低下することがあっても、共振用可変コンデンサを調整して周波数応答特性自体をシフトさせ、高周波電力の固定された周波数に周波数応答特性のピークを移動させることができる。これにより、伝送電力を上昇させることが可能となり、配置依存性の少ない、使い勝手の優れた装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態1における非接触電力伝送装置の構成を示す模式図
【図2】同非接触電力伝送装置の動作を説明するための回路図
【図3】実施の形態2における非接触電力伝送装置の動作を説明するための回路図
【図4】実施の形態3における非接触電力伝送装置の動作を説明するための回路図
【図5】実施の形態4における非接触電力伝送装置の動作を説明するための回路図
【図6】実施の形態5における非接触電力伝送装置の動作を説明するための回路図
【図7】送電コイルと受電コイル間の磁界共鳴を介した非接触電力伝送装置の挙動を説明するための回路図
【図8】同非接触電力伝送装置の挙動を説明する等価回路図
【図9A】同非接触電力伝送装置における2つの共振系が離れている場合の挙動を説明する特性図
【図9B】同非接触電力伝送装置における双峰特性の挙動を説明する特性図
【図9C】本発明の非接触電力伝送装置の挙動を説明する特性図
【図10】従来例の非接触電力伝送システムの構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の非接触電力伝送装置は、上記構成を基本として、以下のような態様を取ることができる。
【0036】
すなわち、第1構成の装置において、前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の大きさに対応する消費電力パラメータを検出する電力検出回路を更に備え、前記共振周波数調整回路は、検出された前記消費電力パラメータに基づき前記電力伝送用の高周波電力が極大となるように前記可変コンデンサの容量を制御する構成とすることができる。
【0037】
これは、前記共振周波数調整回路により調整することで、複数の共振回路が結合している系にて共振状態に到達すると、共振系に共振電流が流れ高周波電力が消費されるため、電力検出回路の検出信号による制御が可能であることに基づく。
【0038】
また、上記いずれかの構成の装置において、前記送電コイルが互いに接続された複数の部分送電コイルに分割され、複数の前記部分送電コイルは相互間に受電空間を形成するように互いに対向して配置され、前記受電空間に前記受電コイルが配置されている構成とすることができる。
【0039】
また、中継コイルと共振用容量で構成され電力伝送を中継する中継用共振器を備え、前記送電コイルと前記中継コイルは相互間に受電空間を形成するように互いに対向し電磁的に結合するように配置され、前記受電空間に前記受電コイルが配置されている構成とすることができる。
【0040】
また、複数の前記受電装置と複数の前記中継用共振器を備え、複数の前記中継コイルどうしが対向して形成する受電空間にも、前記受電コイルが配置されている構成とすることができる。
【0041】
本発明の第1構成の非接触電力伝送方法は、以下のような態様を取ることができる。
【0042】
すなわち、前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の大きさに対応する消費電力パラメータを検出し、検出された前記消費電力パラメータに基づき前記電力伝送用の高周波電力が極大となるように前記可変コンデンサの容量を制御してもよい。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0044】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置の構成を示すブロック図である。この非接触電力伝送装置は、送電装置1と受電装置2とを備え、送電装置1に含まれる送電側共振器3から受電装置2に含まれる受電側共振器4に、非接触で電力を伝送するように構成されている。
【0045】
送電側共振器3は、送電コイル5及び共振用可変コンデンサ(以下、共振用バリコンと称する)6からなり、受電側共振器4は、受電コイル7及び共振用容量8からなる。なお、図1において、図7と同一の参照番号が付された構成要素は、同一の機能を有する構成要素である。例えば、送電コイル5及び共振用バリコン6は、図1ではブロックで記載され、図7では回路記号で記載されている表記の相違があるが、同一の機能を有する要素である。受電コイル7及び共振用容量8も同様である。
【0046】
送電装置1において、送電コイル5(送電側共振器3)には、伝送用の高周波電力を発生させる高周波電力発生回路9が接続されている。高周波電力発生回路9は、通常、固定周波数f0の高周波電力を発生させる。高周波電力発生回路9には、電力検出回路10が接続されている。電力検出回路10は、高周波電力発生回路9で消費される電力に対応する消費電力パラメータを検出する回路である。電力検出回路10による検出出力は共振周波数調整回路11に供給され、共振周波数調整回路11は、検出される消費電力パラメータに基づき、高周波電力発生回路9で消費される電力が極大になるように、共振用バリコン6の容量値を調整する。
【0047】
消費電力パラメータとしては、高周波電力発生回路9が送電側共振器2に供給した電力、或いは、高周波電力発生回路9内で電力を生成する回路、例えば高周波電力増幅アンプ、或いは、電力を発生させるスイッチング回路に供給される直流電流の電流値等を用いることができる。消費電力パラメータの検出値の大きさは、高周波電力発生回路9で消費される電力の大きさに対応する。
【0048】
受電装置2においては、図示は省略するが、受電コイル7に対向して2次コイルが配置され、受電側共振器4で発生した高周波電力が2次コイルにより取り出される。2次コイルを介して取り出された高周波電力は検波回路12に供給されて、高周波電力から直流電力に変換されて出力端子13から出力される。
【0049】
上記構成によれば、共振周波数調整回路11により、電力伝送に際して、送電側共振器3と受電側共振器4で構成される共振系(以下、伝送共振系と称する)の共振周波数特性のピークを、高周波電力発生回路9が供給する電力伝送用の高周波電力の周波数に一致させる制御が行われる。すなわち、電力検出回路10で検出される消費電力パラメータが最大になるように共振用バリコン6を調整することは、伝送共振系の共振周波数特性のピークを、電力伝送用の高周波電力の周波数に一致させることに対応する。
【0050】
従って、送電コイル5と受電コイル7の配置により周波数応答が変化し伝送電力が低下することがあっても、周波数応答特性自体をシフトさせて、高周波電力の固定した周波数に周波数応答特性のピークを移動させることができる。これにより、伝送電力の低下を抑制することが可能となる。伝送共振系の周波数特性の特性曲線がピークの部分で、伝送される電力値や電流値がピークとなるので、最大値制御により、最も電力伝送量が増大するからである。
【0051】
伝送される電力値は、高周波電力発生回路9で消費される電流、電力に対応しているので、上記構成のように、例えば電流値をモニターしておき、その電流値を最大にするように制御すればよい。このように、共振周波数の調整は最大点追跡制御により行うことになり、制御回路を、マイコン等を利用して構成する場合は、これに従って制御ソフトを作成しインプリメントすれば、共振周波数調整の制御を行う装置を容易に構築できる。
【0052】
図2は、上記構成の非接触電力伝送装置の動作を説明するための回路図である。図1、図7の構成要素と同一の要素については、同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを省略する。また、図1に示した電力検出回路10及び共振周波数調整回路11については、図示を省略する。図示はされていないが、電力検出回路10及び共振周波数調整回路11の動作により、共振用バリコン6は上述のように容量値が制御されるものとする。
【0053】
図2に於いて、磁力線14、14aは、送電コイル5と受電コイル7が結合していることを模式的に示したものである。この磁力線14、14aの鎖交数により、結合係数k、或いは相互インダクタンスMが変化し、送電側共振器3と受電側共振器4で構成される伝送共振系の周波数特性に双峰特性が現れることは上述した。
【0054】
共振周波数調整回路11(図1参照)は共振用バリコン6を調整し、図9Cに示すように、双峰特性の周波数の低いピーク28aを高周波側に移動させて、周波数f0に一致したピーク28bとなるように制御する。これにより、周波数f0での共振を得て、伝送電力の極大化を図ることが出来る。
【0055】
すなわち、共振用バリコン6のキャパシタンスを変更して、例えば減少させると、共振周波数f1を求めた上述の式(2)におけるCが減少し、共振周波数f1が高くなる。即ち周波数特性全体が高周波側へ移動する。この移動を移動量30で示すように制御することにより、高周波電力発生回路9の元々のピーク28aを、ピーク28bのように周波数f0に一致させる。これにより、伝送共振系は周波数f0でピークを持つようになり、周波数f0で共振することとなる。従って、送電コイル5と受電コイル7で共振する共振電流も増大し極大となるので、電力の伝送量も極大となり伝送効率が向上する。
【0056】
このような制御を行えば、種々の配置により双峰特性のピーク点が何処にあっても、共振用バリコン6により双峰特性全体をずらして、高周波電力発生回路9の発振周波数f0にピークを合わせることが可能となり、好適な電力伝送が可能となる。
【0057】
この双峰特性は2つのコイルの結合の程度で変化するので、電力伝送の開始や、伝送電力の変化や、一定周期毎、等を調整開始の開始点として、共振用バリコン6を調整すればよい。たとえば、受電側共振器4が、送電側共振器3から遠ざかる4Xで示す位置に移動した場合、磁力線の鎖交数が減少し、結合係数kが減少するので双峰特性のピーク間の距離が短くなり、周波数f1、f2の値も変化するので、それに応じて共振用バリコン6を制御する。
【0058】
なお、共振用バリコン6の容量制御は、一旦全ての可変範囲をサーチして、最大点に容量値を設定してもよいが、ウォブリング制御を行うことが望ましい。すなわち、その後の結合係数等の変化の追従のためには、一定の容量の変化、即ち、ウォブリングを起こして電力値や電流値の増大する変化方向を検知し、極大点の方向に容量を制御するウォブリング制御を行う。それにより、伝送電力の変動を少なくしつつ、よりスムーズに最大点制御が行うことができる。このような制御方法を実施するための回路等の構成は、周知の技術に基づいて容易に構築できるので、詳細な説明は省略する。
【0059】
<実施の形態2>
図3は、実施の形態2における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置の構成を示す回路図である。本実施の形態では、実施の形態1における送電コイル5が二つに分割されて、部分送電コイル5a、5bとなっており、相互に対面させて配置されている。部分送電コイル5a、5bの間に受電コイル7が配置される。なお、同図に於いて、実施の形態1で説明した構成要素と同一の参照符号を付したものは、同一の作用を持つ構成要素である。但し、図3では、本実施の形態の特徴を示す構成及び作用の理解に必要な要素のみを示し、図1に示した要素のうち一部の要素の図示が省略されている。
【0060】
分割された部分送電コイル5a、5bの間を通る磁力線15、15aが、模式的に表されている。2つの部分送電コイル5a、5bには同一の共振電流が流れるので、コイルの巻き線の方向を、磁力線15、15aの向きに合わせて構成しておく。また、このように分割する場合は、二つのコイル間の配線によるインダクタンス増加分などもあるので各送電コイルのインダクタンスを減少させるように構成し、送電側の共振周波数を分割前と同様に保つようにする。
【0061】
本実施の形態でも、2つの共振器3、4からなる伝送共振系のピークを、図1で示した共振周波数調整回路11により、高周波電力発生回路9が発生する電力伝送用の高周波電力の周波数f0に移動させることにより、実施の形態1と同様に伝送電力を最大にすることができる。
【0062】
なお、2つのコイルを接続する場合に、図3では直列に接続するように示したが、2つのコイルを並列に接続してもよい。その場合、2つのコイルを並列接続したものとコンデンサで共振回路を構成するので、2つのコイルには同位相の共振電流が流れる。従って、コイルの巻き線方向は同一方向で同一位相の磁界が出来るようにしておくことは言うまでもない。また、並列接続であるため、直列接続の場合に比べてインダクタンスが減少するので、共振用のコンデンサの値を増大させておく必要があるが、制御方法等は上述と同様であるので詳細は省略する。
【0063】
本実施の形態によれば、二つに分割した部分送電コイル5a、5bを配置することにより、その間の磁力線15、15aをほぼ平行に保つことができる。それにより、2つの部分送電コイル5a、5b間では、距離の変化や配置の変化への依存が少ない非接触電力伝送システムを構築できる。これについて、以下に説明する。
【0064】
図3の様に2つのコイルを対向させて配置し、ほぼ平行に保った磁力線の中では、受電コイル7が移動してもそのコイルに鎖交する磁力線の本数の変化が少なくなる。その為、相互インダクタンスの変化が少なくなり、それにより結合係数の変化が抑えられて双峰特性の形の変化も少なくなる。従って、距離の変化や配置の変化への依存性が少なくなり、バリコン6の変化も少なくて済むようになる。
【0065】
ただし、これは、受電側コイル7の面が、部分送電コイル5a、5bの面と平行に近く保ちつつ移動した場合であり、受電側コイル7の面が磁力線と直交する場合は磁力線の鎖交がなくなり、結合係数が0となり電力伝送が不可となることは言うまでない。このような場合は、受電側共振器4を磁界中に置いた際に、受電側コイル7の面が送電側コイルと対面するように受電側共振器4の外部形状を調整することにより、これを避けることが可能である。
【0066】
以上の様なことから、距離の変化や配置の変化による依存性が少なくなれば、一度、共振用バリコン6を調整して共振状態が得られた後は、受電コイル7の位置を動かしても共振用バリコン6の可変量を少なくできることが判る。更には、コイル径の設定や移動範囲制限を設ければ、最初にバリコン6の容量を調整するのみで、後は無調整化できることも可能である。
【0067】
<実施の形態3>
図4は、実施の形態3における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置の構成を示す回路図である。同図に於いて、上述の各実施の形態で説明した構成要素と同一の参照符号を付したものは、同一の作用を持つ構成要素である。但し、図4では、本実施の形態の特徴を示す構成及び作用の理解に必要な要素のみを示し、図1に示した要素のうち一部の要素の図示が省略されている。
【0068】
本実施の形態では、実施の形態2と同様に、送電コイル5を二つの部分送電コイル5a、5bに分割する。そして、磁力線15、15aが形成された中に、それぞれに部分受電コイル7a,7bを有する複数の受電側共振器4a、4bを配置する。
【0069】
それぞれの受電側共振器4a、4bは、磁力線15、15aがほぼ平行に保つたれる中に配置されるため、距離の変化や配置の変化への依存が少ない特性となり、複数の受電側共振器に対する良好な非接触電力伝送システムを構築できる。
【0070】
また、受電コイル7aの径を送電コイル5aの径より小さく構成すれば、部分送電コイル5a、5bとの結合係数を低く抑えことができるので、全体の共振系に対する影響を抑えることが出来る。従って、複数の受電側共振器が配置されても、共振用バリコン6の動作量を抑えることが出来るので、制御しやすい非接触電力伝送システムを構築できる。
【0071】
以上のように、磁界を利用した電力伝送の場合は、受電コイルが複数あっても、互いに鎖交していればどの受電コイルにも電力伝送が可能となり、これを利用してより実用的な電力伝送システムを構築可能となる。
【0072】
<実施の形態4>
図5は、実施の形態4における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置の構成を示す回路図である。同図に於いて、上述の各実施の形態で説明した構成要素と同一の参照符号を付したものは、同一の作用を持つ構成要素である。但し、図5では、本実施の形態の特徴を示す構成及び作用の理解に必要な要素のみを示し、図1に示した要素のうち一部の要素の図示が省略されている。
【0073】
実施の形態2、3では、送電コイル5を二つに分割して、磁力線がほぼ平行に保たれるように構成し、距離の変化や配置の変化への依存が少ない複数の受電側共振器に対する非接触電力伝送システムを示した。これに対して、本実施の形態は、他の構成により同様の効果を得るための方法に関するものである。
【0074】
共振回路を複数持つ系で、互いに共振する場合、受電側にQの高い共振回路を配置すれば、共振回路の共振用容量の中に電界として、或いは、共振コイルから発せられる外部の磁力線に磁界として、相互にエネルギーを蓄えることにより、外部に強い磁界を継続的に発生できる。
【0075】
図5の構成では、受電側共振器4を挟んで送電側共振器3の反対側に、送電側共振器3とは接続されていない中継用共振器16が配置される。中継用共振器16は、共振コイル17、及び共振用容量18により構成される。送電コイル5に共振電流が流れて磁界が発生し、その磁力線19、19aが共振コイル17と鎖交すると、2つの共振器による複同調回路となる。
【0076】
この場合、2つの共振器の共振条件を満たすと、即ち、先に説明したように共振用バリコン6を調整して、高周波電力発生回路9の発生する高周波の周波数f0に周波数特性のピーク移動させるように調整すると、中継用共振器16の共振用容量18と共振コイル17で構成される共振回路に共振電流が流れ、磁力線19、19aが発生する。
【0077】
このような磁界の中に、受電側共振器4を配置すると、図3に示した実施の形態2の場合と全く同様な挙動を示し、受電側共振器4の位置や場所によらず電力の伝送が可能である。しかも、図3のような部分送電コイル5a、5bを接続する配線は不要であり、使い勝手を向上させつつ低コスト化が可能となり、良好な非接触電力伝送システムを構築できる。
【0078】
<実施の形態5>
図6は、実施の形態5における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置の構成を示す回路図である。同図に於いて、上述の各実施の形態で説明した構成要素と同一の参照符号を付したものは、同一の作用を持つ構成要素である。但し、図6では、本実施の形態の特徴を示す構成及び作用の理解に必要な要素のみを示し、図1に示した要素のうち一部の要素の図示が省略されている。
【0079】
図5に示した実施の形態4では、2つの共振系で互いに共振する場合に、受電側に共振器のQの高い共振系を配置すれば、共振器の共振用容量内、或いは、外部の磁力線に相互にエネルギーを蓄えることにより、同図に示すような磁力線19、19aが共振動作中は保持されることを説明した。本実施の形態は、更に多くの共振系を設置し、互いに共振関係に置くことにより、複数の平行な磁力線が保たれる領域を創出する構成に関するものである。
【0080】
図6の構成では、中継用共振器16a、16bが追加されている。中継用共振器16a、16bはそれぞれ、共振コイル17a、17b、共振用容量18a、18bにより構成される。磁力線20、20a、20bが共振コイルに鎖交する。
【0081】
この構成では、送電コイル5に対して、共振コイル17、17a、17bが配置されている。先ず、送電コイル5と共振コイル17を対面して配置し、次に、共振コイル17aと共振コイル17bを対面して配置し、更に2つの組どうしを結合するように配置することにより、磁力線20、20a、20bにより互いに結合し、共振させ、電力の伝送を行わせるものである。
【0082】
元々、送電コイル5から発せられた磁力線は、各共振コイルを鎖交し、かつ、共振用バリコン6を調整することにより、高周波電力発生回路9からの高周波の周波数f0で共振を開始する。
【0083】
このように、送電コイル5と、共振コイル17、17a、17bの間で磁力線が鎖交し、結合して共振することにより、磁界中におかれた部分受電コイル7a,7bにも鎖交し、配置された複数の受電側共振器にも電力が伝送される。
【0084】
このような構成により、各コイル間の配線が不要で、また、受電側共振器の配置の自由度もある、低コストで使い勝手の良好な非接触電力伝送システムを構築できる。
【0085】
以上の各実施の形態に関して説明した構成に基づき、別の観点からの低コスト化や簡略化を達成するための改良について、以下に説明する。
【0086】
先ず、上述の各実施の形態では、可変コンデンサの調整により共振状態になれば、共振電流が流れて消費電力が増大するので、消費電力パラメータを検出する回路の出力に基づき調整、制御するように構成されている。これに対して、他の検出方法により構成することも可能である。一例としては、マイクロ波工学等でよく使用されている、いわゆるSパラメータの基本となる反射電力や透過電力の観点から共振状態を判断する検出方法を用いることができる。例えば、反射電力を観測し、反射電力が大きい場合は共振系に電力が供給されていないものと判断する。その結果、反射電力を最小にするように可変コンデンサを調整すれば、共振が発生して電力伝送効率を向上させることが出来る。
【0087】
但し、このような反射電力を測定する為には、方向性結合器を使用するのが一般的であり、マイクロ波工学では特性インピーダンスが50Ωの系での測定が主に行われる。
【0088】
しかし、電力の伝送を考える場合、高周波電力発生回路では出来るだけ出力インピーダンスの低い素子を用いて、回路でのロスを低くする必要がある。その為、通常、回路の出力インピーダンスは非常に低いものとなり、方向性結合器を構成する場合、反射電力の測定回路を含め、ロスの少ない回路設計が求められることになる。
【0089】
さらに、方向性結合器を使う場合、正確な検出値を得ようとするほど、入力電力、出力電力、反射電力等のポートではインピーダンス整合を取る必要があり、それによる電力ロスが増大し、高効率な電力伝送に適したシステムとは言い難くなる。
【0090】
これに対し、高周波電力発生回路の消費電力を測定することは、通常、直流である回路の電源電圧、電流を測定すればよく、安価な回路構成で且つ電力損失が少なく、更には高精度な測定が可能となる。従って、上述の実施の形態の消費電力パラメータを計測する構成によれば、電力損失が少ない計測制御回路で電力伝送回路を制御できることとなり、低コストで高効率な無線電力伝送システムに好適となる。
【0091】
<実施の形態6>
実施の形態6における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置は、図3等に示した装置の要素を一部変更することにより構成されるので、図示は省略する。
【0092】
実施の形態2から実施の形態5に於いて、共振コイルの互いの面が平行であることを前提として磁力線の模式図を示したが、このような磁力線の中では、受電側共振器の距離の変化や位置の変化による結合係数の変化が少なくなる。従って、共振用バリコン6の代わりに、初期調整用コンデンサを設け、最初に初期調整用コンデンサを調整しておけば、毎回の電力伝送開始に於いて、共振用バリコン6による自動調整の必要が無くなる。
【0093】
すなわち、送電側共振器と受電側共振器で構成される伝送共振系の共振周波数特性のピークが、電力伝送に際して、送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の周波数に一致するように、初期調整用コンデンサの容量が設定された構成とすることができる。
【0094】
この為には、平行な磁力線の中に受電側共振器を配置するような構造上の工夫が必要となるが、例えば、送電用コイル5と共振コイル17、或いは部分送電コイル5aと部分送電コイル5bを箱の両側に配置して、その中に受電側コイルが入るような構造とすれば容易に実現できるので、詳細についての記述は省略する。
【0095】
初期調整用コンデンサとしては、半固定のトリマーコンデンサを使用することができる。あるいは、コンデンサ自体を追加変更できる搭載場所を確保し、非接触電力伝送装置を製造する場合のバラツキ等を調整するために必要な容量分と共に、コンデンサを選択し搭載してもよい。これらの具体的な値等は、共振コイルや設置精度に依存して変化するインダクタンスやキャパシタンス、結合係数等で変化するが、それに適合させるための調整は、周知の技術の範囲で可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、磁界共鳴による電力伝送を、受電装置の配置が変化しても、或いは受電装置が小さい場合においても良好かつ安定に電力伝送できるので、携帯電話や補聴器等の小型機器、TVや電気自動車などへの非接触電力伝送に好適である。
【符号の説明】
【0097】
1 送電装置
2 受電装置
3 送電側共振器
4 受電側共振器
5 送電コイル
5a、5b 部分送電コイル
5c、7c インダクタンス
6 共振用バリコン
7 受電コイル
7a、7b 部分受電コイル
8、18、18a、18b 共振用容量
9 高周波電力発生回路
10 電力検出回路
11 共振周波数調整回路
12 検波回路
13 出力端子
14、14a、15、15a、19、19a、20、20a、20b、25 磁力線
16、16a、16b 中継用共振器
17、17a、17b 共振コイル
21、23 抵抗
22 高周波電源
24 結合係数
24b 相互インダクタンス
26a、26b、27 経路
28a、28b、29a、29b ピーク
30 移動量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイル及び共振用容量により構成された送電側共振器を有する送電装置と、
受電コイル及び共振用容量により構成された受電側共振器を有する受電装置とを備え、
前記送電コイルと前記受電コイルの結合による磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送装置において、
前記送電側共振器の前記共振用容量は可変コンデンサにより構成され、
前記可変コンデンサの容量を制御する共振周波数調整回路を備え、
前記共振周波数調整回路は、電力伝送に際して、前記送電側共振器と前記受電側共振器で構成される伝送共振系の共振周波数特性を、前記可変コンデンサの容量を変化させることにより調整して、前記共振周波数特性のピークを前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の周波数に一致させるように制御を行うことを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の大きさに対応する消費電力パラメータを検出する電力検出回路を更に備え、
前記共振周波数調整回路は、検出された前記消費電力パラメータに基づき前記電力伝送用の高周波電力が極大となるように前記可変コンデンサの容量を制御する請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
送電コイル及び共振用容量により構成された送電側共振器を有する送電装置と、受電コイル及び共振用容量により構成された受電側共振器を有する受電装置とを備え、
前記送電コイルと前記受電コイルの結合による磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送装置において、
前記送電側共振器の前記共振用容量は初期調整用コンデンサにより構成され、
前記送電側共振器と前記受電側共振器で構成される伝送共振系の共振周波数特性のピークが、電力伝送に際して、前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の周波数に一致するように、前記初期調整用コンデンサの容量が設定されていることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記送電コイルが互いに接続された複数の部分送電コイルに分割され、複数の前記部分送電コイルは相互間に受電空間を形成するように互いに対向して配置され、前記受電空間に前記受電コイルが配置されている請求項1または2に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
中継コイルと共振用容量で構成され電力伝送を中継する中継用共振器を備え、
前記送電コイルと前記中継コイルは相互間に受電空間を形成するように互いに対向し電磁的に結合するように配置され、
前記受電空間に前記受電コイルが配置されている請求項1または2に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
複数の前記受電装置と複数の前記中継用共振器を備え、
複数の前記中継コイルどうしが対向して形成する受電空間にも、前記受電コイルが配置されている請求項5に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項7】
送電コイル及び共振用容量により構成された送電側共振器を有する送電装置と、受電コイル及び共振用容量により構成された受電側共振器を有する受電装置とを用い、前記送電コイルと前記受電コイルの結合による磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送方法において、
前記送電側共振器の前記共振用容量を可変コンデンサにより構成し、
電力伝送に際して、前記送電側共振器と前記受電側共振器で構成される伝送共振系の共振周波数特性を、前記可変コンデンサの容量を変化させることにより調整して、前記共振周波数特性のピークを前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の周波数に一致させるように制御を行うことを特徴とする非接触電力伝送方法。
【請求項8】
前記送電コイルに供給される電力伝送用の高周波電力の大きさに対応する消費電力パラメータを検出し、
検出された前記消費電力パラメータに基づき前記電力伝送用の高周波電力が極大となるように前記可変コンデンサの容量を制御する請求項6に記載の非接触電力伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−85350(P2013−85350A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222796(P2011−222796)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)