説明

非接触電力伝送装置

【課題】漏れ磁束の発生を抑え、1つの送電装置で必要とする電力の異なる複数の電子機器の充電に対応可能とすることを目的とする。
【解決手段】送電コイルから受電コイルに対して電磁誘導により電力の供給を行なう非接触電力伝送装置において、略同心円状に配置した複数の送電コイル11、12を備え、受電コイル21の外形に一番近い外形の送電コイルと、その内側の送電コイルのみを駆動する。これにより、1つの送電装置で外形の異なる受電コイルに対して電力伝送を行うときでも、漏れ磁束の発生を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
異なる受電装置に対して電力伝送を行うのに適した非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラ、ノートパソコンなどの電子機器に対して非接触で電力を伝送する方式が普及してきている。このような電子機器には、充電器としてそれぞれ専用の送電装置が必要であり、1つの送電装置で複数の電子機器に対応することが求められている。
【0003】
特許文献1では、それぞれの電子機器に応じた充電条件を設定し、送電装置内の送電コイルに印加する電圧や周波数を変化させることで、1つの送電装置で複数の電子機器の充電に対応可能とする方法が提案されている。また、1つの充電条件に対して、受電コイルのコイル線の直径、コイル長、巻き数などを選定することにより、電子機器に応じて最適な電力を方法が提案されている。一般に、電子機器は小型化することが求められているため、必要とする電力が小さい場合には、受電コイルの外形をより小さくすることが必要となる。
【0004】
送電コイルおよび受電コイルの一例を図7に示す。図7(a)は送電コイルおよび受電コイルの断面図、図7(b)は送電コイルの斜視図である。送電コイル51と受電コイル61が対向して配置されている。磁束71が、送電コイル51と受電コイル61とに鎖交し、送電側から受電側に電力が伝送される。送電コイル51と受電コイル61が対向する面の反対側の面には、それぞれ磁性シート53、63が貼り付けられており、不要輻射を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−44884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器における必要とする電力が小さいほど、送電コイル51の外形に対して、受電コイル61の外形が小さくなり、送電コイル51から発生する漏れ磁束が増加してしまう。そのため、受電コイル61の近傍に金属ケースや金属部品が配置されていると、発熱やノイズの原因となってしまう。
【0007】
本発明はこのような問題を考慮してなされたものであり、外形の異なる受電コイルに対して電力伝送を行うときにも漏れ磁束の発生を抑え、1つの送電装置で必要とする電力の異なる複数の電子機器の充電に対応可能とする非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような目的を達成するため、送電コイルから受電コイルに対して電磁誘導により電力の供給を行なう非接触電力伝送装置において、略同心円状に配置した複数の送電コイルを備え、受電コイルの外形に一番近い外形の送電コイルと、その内側の送電コイルのみを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、1つの送電装置で外形の異なる受電コイルに対して電力伝送を行うときでも、漏れ磁束の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る送電コイルおよび第1の受電コイル
【図2】本発明の第1の実施形態に係る送電コイルおよび第2の受電コイル
【図3】本発明の第1の実施形態に係る送電装置および受電装置の回路図
【図4】本発明の第2の実施形態に係る送電コイルおよび第1の受電コイル
【図5】本発明の第2の受電コイルの変形例
【図6】本発明の変形例の第2の受電コイルを備えた受電装置の回路図
【図7】従来の送電コイルおよび受電コイル
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る送電コイルについて説明する。図1(a)は送電コイルおよび第1の受電コイルの断面図、図1(b)は送電コイルの斜視図である。送電コイル11と12は、略同心かつ同一平面に配置されている。外側に位置する送電コイル12はリング状に形成されている。各送電コイル11、12と第1の受電コイル21が対向する面の反対側の面には、それぞれ磁性シート13、23が貼り付けられており、不要輻射を抑制している。各磁性シート13、23の大きさは、それぞれ送電コイル12、第1の受電コイル21と同じ大きさかそれ以上のものを用いる。
【0012】
内側に位置する送電コイル11と外側に位置する送電コイル12は、第1の受電コイル21の外形に応じて個別に制御される。まず、図1に示すように、第1の受電コイル21の外形と送電コイル12の外形が略同一の場合について説明する。送電コイル11、12と第1の受電コイル21は、それぞれの中心軸が一致するように配置されている。送電コイル11の巻線面上に第1の受電コイル21が配置されている。他方、送電コイル12の巻線面上に第1の受電コイル21は配置されていない。このような場合に送電コイル12を駆動すると、第1の受電コイル21の周辺に送電コイル12による漏れ磁束が発生してしまう。そのため、このような第1の受電コイル21に対して電力伝送を行うときには、送電コイル11のみを駆動し、送電コイル12は駆動しない。
【0013】
次に、第1の受電コイル21の外形を大きくした場合について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る送電コイルおよび第2の受電コイルを示す。図2(a)は送電コイルおよび第2の受電コイルの断面図、図2(b)は送電コイルの斜視図である。図2に示す送電コイルは、図1に示す送電コイルと同一である。第2の受電コイル21’は、第1の受電コイル21より外形を大きくしたもので、より大きな電力を受電することができる。第2の受電コイル21’の外形は、送電コイル12の外形と略同一となっている。送電コイル11、12と第2の受電コイル21’は、それぞれの中心軸が一致するように配置されている。各送電コイル11、12の巻線面上に第2の受電コイル21’が配置されている。このような第2の受電コイル21’に対して電力伝送を行うときには、両方の送電コイル11、12を駆動することで、より大きな電力を伝送することができる。
【0014】
次に、送電コイル11、12の制御部について説明する。図3に本発明の第1の実施形態に係る送電装置および受電装置の回路図を示す。
【0015】
送電装置10は、送電コイル11、12、駆動回路15、スイッチング素子16、ホール素子17および共振コンデンサ18、19を備える。駆動回路15には、直流電源Vinより直流電圧が供給されている。駆動回路15は、フルブリッジ構成としたインバータであり交流電力を出力する。駆動回路15の出力部には、送電コイル11と共振コンデンサ18が直列接続されている。それと並列に、送電コイル12と共振コンデンサ19とスイッチング素子16が直列接続されている。ホール素子17は送電コイル12の近傍に配置されている。例えば、送電コイル12の外周の辺りにホール素子17を配置する。図1に示すように、送電コイル11と12は略同心円状に配置されており、外側に位置する送電コイル12に対して、切り替え用のスイッチング素子16が設けられている。スイッチング素子16の一例として、2つのN型MOSFETを逆直列接続して構成することで、損失を少なくすることができる。
【0016】
受電装置20は、第2の受電コイル21’、整流回路25、永久磁石27および共振コンデンサ28を備える。永久磁石27は、第2の受電コイル21’の近傍に配置されている。例えば、受電コイル21’の外周の辺りに永久磁石27を配置し、送電装置10に受電装置20を載置したときに、永久磁石27から発生する磁束をホール素子17が検出できるようにする。共振コンデンサ28は第2の受電コイル21’と並列に接続されており、その出力は整流回路25を介して、二次電池などの負荷に供給される。
【0017】
次に、スイッチング素子16の動作について説明する。送電コイル12に第2の受電コイル21’が近接すると、ホール素子17が永久磁石27の磁束を検出する。すると、ホール素子17の検出信号Sgによって、スイッチング素子16はオンに切り替わり、駆動回路15から送電コイル12に交流電力が供給される。そして、図2に示すように、両方の送電コイル11、12から、第2の受電コイル21’に対して電力伝送される。
【0018】
他方、図1に示す例では、第1の受電コイル21の外形が内側の送電コイル11と略同一であるため、外側の送電コイル12を駆動する必要がない。このような第1の受電コイル21に対して電力伝送を行うときには、受電装置20内に永久磁石27を設けなければよい。すると、ホール素子17は、永久磁石27の磁束を検出できないため、スイッチング素子16はオフのままになり、送電コイル11のみが駆動される。このように、受電コイルの形状に合わせて駆動する送電コイルを決定できるため、送電コイルから発生する漏れ磁束を抑えることができる。
【0019】
本実施形態では、内側と外側に送電コイルを2つ設けたが、3つ以上となるよう構成してもよい。その場合、駆動回路の出力部に送電コイルと共振コンデンサとスイッチング素子を必要な数だけ追加して直列接続し、各送電コイルの近傍にスイッチング素子を切り替えるためのホール素子を同じ数だけ設ければよい。そして、受電装置側には、駆動する送電コイルに応じて、対応するホール素子と対向する位置に永久磁石を設ける。これにより、より多様な外形を有する受電コイルに対応することができる。また、駆動回路15としてフルブリッジ回路を用いたが、ハーフブリッジ回路を用いてもよい。
【0020】
スイッチング素子16は、ホール素子17が永久磁石27の磁束を検出することによりオフからオンに切り替えられているが、スイッチング素子16の切り替え信号の生成は、この方法に限定されない。例えば、ID認証の備わった送受電システムの場合、受電装置20から専用のID信号を送電装置10に送信し、送電装置10がその信号を受信したときに、スイッチング素子16をオフからオンに切り替えるようにしてもよい。これらの方法に限らず、外形の異なるそれぞれの受電コイルに応じて、駆動する送電コイルを適切に選択できるのであれば、どのような方法を用いてもよい。
【0021】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る送電コイルについて説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係る送電コイルおよび第1の受電コイルを示す。なお、第1の実施形態と同じ機能を有する部位には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0022】
図4に示すように、本実施形態は、第1の実施形態の送電コイルと比較して、内側の送電コイル11と外側の送電コイル12の間に磁性体14が追加して設けられている点が異なる。この磁性体14を追加することにより、送電コイル11と12の間の結合を弱めている。これにより、各送電コイル11と12を同時に駆動したときに、送電コイル11、12間の相互インダクタンスの影響により、共振周波数が低下することを抑えることができる。よって、送電コイル11、12と共振コンデンサ18、19の動作時にも安定動作する。送電コイル11と12との間の結合を弱めることで、駆動電流が低下することを防ぐことができ、伝送電力を増加させることができる。また、外側の送電コイル12を駆動しない場合、磁性体14は送電コイル11により発生する磁束がコイルの側面方向に広がるのを抑制する。
【0023】
磁性シート13、23および磁性体14は、それぞれ磁性材料であればなんでもよい。例えば、磁性シート、フェライトコア、アモルファスコアなどを用いてもよい。また、磁性シート13と磁性体14とを一体成型してもよい。
【0024】
次に、図5に第2の受電コイルの変形例を示す。送電コイル11、12と同様に、複数の受電コイルを同心円状に設けたものである。送電コイル11、12と受電コイル21、22は、それぞれの中心軸が一致するように配置されている。内側の受電コイル21は内側の送電コイル11と、外側の受電コイル22は外側の送電コイル12と、略同一の外形形状となっている。そのため、送電コイル11の巻線面上に内側の受電コイル21が、送電コイル12の巻線面上にない外側の受電コイル22が配置される。図2に示した例と同様に、両方の送電コイル11、12を駆動することで、より大きな電力を伝送することができる。
【0025】
図6は、図5に示した変形例の第2の受電コイルを備えた受電装置の回路図である。各受電コイル21、22は各整流回路25を介して並列に接続されている。このような構成にすることで、同じ出力電流を得る場合に1つの受電コイルを用いた場合と比較して、各整流回路25に流れる電流が半分になる。そのため、各整流回路25内のダイオードの順電圧降下が低い状態での動作が可能となる。よって、ダイオードにおける損失が低減し、効率を改善することができる。
【0026】
上記第1、第2の実施形態では、受電コイルの外形が内側もしくは外側の送電コイルの外形と略同一の場合について述べたが、受電コイルと複数の送電コイルのいずれかとの外形形状が異なる場合もある。このような場合には、受電コイルの直径や面積に応じて駆動する送電コイルを決定してもよい。受電コイルの直径が内側の送電コイルの直径より小さい場合、内側の送電コイルのみを駆動する。受電コイルの直径が外側の送電コイルの直径より大きい場合、内側および外側の送電コイルを駆動する。受電コイルの直径が内側の送電コイルの直径より大きく、外側の送電コイルの直径より小さい場合、例えば、受電コイルの直径が内側と外側の送電コイルのどちらの直径に近いかで駆動する送電コイルを決定する。受電コイルの直径が内側の送電コイルの直径に近い場合、内側の送電コイルのみを駆動する。受電コイルの直径が外側の送電コイルの直径に近い場合、内側および外側の送電コイルを駆動する。
【0027】
送電コイルを3つ以上用いる場合には、受電コイルの外形に一番近い外形の送電コイルと、その内側の送電コイルのみを駆動するようにしてもよい。例えば、受電コイルの直径と一番近い直径を有する送電コイルとその内側の送電コイルのみを駆動する方法が考えられる。上述したように、受電コイルの面積に応じて駆動する送電コイルを選択してもよい。いずれの条件においても、受電コイルの外形に一番近い外形の送電コイルが一番内側の送電コイルであった場合には、その送電コイルのみを駆動することになる。
【0028】
本発明は複数の送電コイルを略同心、同一平面上に配置し、外形の異なる受電コイルに対して、駆動する送電コイルを適切に選択して制御している。具体的には、受電コイルの外形に一番近い外形の送電コイルと、その内側の送電コイルのみを駆動することを特徴としている。言い換えると、送電コイルに接続されたスイッチング素子を切り替えることで、駆動する送電コイルの巻線面の形状を受電コイルの巻線面の形状にできるだけ合わせるように制御している。これにより、1つの送電コイルにおいて、駆動周波数を変化させることなく、必要とする電力の異なるさまざまな受電コイルに対して、電力伝送を行うことができる。その際に、送電コイルから発生する漏れ磁束を抑制することができる。特に、受電コイルの外形といずれかの送電コイルの外形とを略同一にすることで、より漏れ磁束の発生を抑制することが可能となる。
【0029】
なお、送電コイルの巻線面の形状は円形であったが、他の形状に変更してもよい。例えば、四角形や三角形などの多角形状など、任意の形状とすることができる。また、一例として、内側に円形の送電コイル、外側に四角形の送電コイルを配置するなど、異なる形状の送電コイルを組み合わせて配置してもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 送電装置
11、12 送電コイル
13 磁性シート
14 磁性体
15 駆動回路
16 スイッチング素子
17 ホール素子
18、19 共振コンデンサ
20 受電装置
21、21’ 、22 受電コイル
23 磁性シート
25 整流回路
27 永久磁石
28 共振コンデンサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルから受電コイルに対して電磁誘導により電力の供給を行なう非接触電力伝送装置において、
略同心円状に配置した複数の送電コイルを備え、
受電コイルの外形に一番近い外形の送電コイルと、その内側の送電コイルのみを駆動することを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記受電コイルは、前記複数の送電コイルの内いずれかと外形が略同一であることを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記複数の送電コイルは、第1の送電コイルと、前記第1の送電コイルの外側に配置された第2の送電コイルからなり、
前記受電コイルの外形が前記第2の送電コイルの外形より前記第1の送電コイルの外形に近い場合には、前記第1の送電コイルのみを駆動し、
前記受電コイルの外形が前記第1の送電コイルの外形より前記第2の送電コイルの外形に近い場合には、前記第1の送電コイルおよび前記第2の送電コイルを駆動することを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記受電コイルの外形は、前記第1の送電コイルの外形もしくは前記第2の送電コイルの外形と略同一であり、
前記受電コイルの外形が前記第1の送電コイルと略同一のときには前記第1の送電コイルのみを駆動し、前記受電コイルの外形が前記第2の送電コイルと略同一のときには前記第1の送電コイルおよび前記第2の送電コイルを駆動することを特徴とする請求項3に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
前記受電コイルは、略同心円状に配置されるとともに並列に接続された第1の受電コイルと第2の受電コイルからなり、前記第1の受電コイルの外形は前記第1の送電コイルの外形と、前記第2の受電コイルの外形は前記第2の送電コイルの外形と略同一であることを特徴とする請求項3に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
前記複数の送電コイルは並列に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項7】
前記複数の送電コイルの間に磁性体を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の非接触電力伝送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60812(P2012−60812A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202852(P2010−202852)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)