説明

非水系分散体及びその製造方法並びに静電写真用液体現像剤

【課題】非水系溶媒に分散されており、この溶媒に対して高い親和性を有する重合体ブロックと、低い親和性を有する重合体ブロックとを備えるカルボキシル基含有ブロック共重合体を含有する非水系分散体を効率的を製造する方法、並びに、この非水系分散体を用いて得られ、電着性、転写特性及び分散安定性に優れた静電写真用液体現像剤を提供する。
【解決手段】非水系溶媒において、下記一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤の存在下、炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜100質量%含むビニル系単量体[x]、及び、このビニル系単量体[x]と異なる組成を有するビニル系単量体[y]のいずれか一方を重合し、その後、他方のビニル系単量体を重合し、非水系分散体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系分散体及びその製造方法並びに静電写真用液体現像剤に関する。本発明の非水系分散体は、静電写真用液体現像剤の原料として好適である。
【背景技術】
【0002】
静電写真用液体現像剤は、カーボンブラック、ニグロシン、アルカリブルー等の有機又は無機の顔料あるいは染料からなる着色剤と、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン、合成ゴム等の重合体とを、石油系脂肪族炭化水素等の高絶縁性且つ低誘電率の有機液体中で混合して得られたトナー粒子、及び、金属セッケン、レシチン等の荷電調整剤等が配合されてなるものである。
特許文献1には、高絶縁性液体中にトナー粒子を分散してなる静電写真用液体現像剤において、トナー粒子を形成する樹脂分の一部又は全部が、重合体部分の任意の部位にヒドロキシル基を有するラジカル重合性マクロモノマーとジカルボン酸無水物を反応させて得られる、カルボキシル基含有マクロモノマー及びその他のラジカル重合性単量体を共重合させてなるグラフト共重合体である静電写真用液体現像剤が開示されている。
また、特許文献2には、トナー粒子を形成する樹脂が、高絶縁性液体に不溶な幹ポリマーと、高絶縁性液体に可溶で且つスルホ基、カルボキシル基、アミノ基、ホスホ基、フェノール性水酸基及びピリジル基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する枝ポリマーとからなるグラフト共重合体であって、枝ポリマーにおけるスルホ基、カルボキシル基、アミノ基、ホスホ基、フェノール性水酸基及びピリジル基から選ばれる少なくとも1種の極性基の量が該枝ポリマー1g当たり0.02meq以上であるグラフト共重合体から主としてなる静電写真用液体現像剤が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−35697号公報
【特許文献2】特開2001−134021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載の方法により得られたグラフト共重合体は、反応機構の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、即ち、多分散度が大きく、例えば、3以上となる傾向にあった。また、従来法では、原料仕込み比率に対しグラフト側鎖本数や構成単量体組成比の異なる高分子の混合物が得られ、広い組成分布を有するものであった。このように広い分布を有するグラフト共重合体を含有する非水系分散体はその分散性能に限界があり、例えば、10〜30質量%といった比較的低濃度スラリーしか得られない場合があった。また、この分散体を用いて得られる静電写真用液体現像剤によると、安定した電着強度、転写特性等が得られない場合があった。
本発明の目的は、顔料等の着色剤を非水系溶媒に分散する場合に、この溶媒に対して高い親和性を有する重合体ブロックと、非水系溶媒に対して低い親和性及び着色剤等への吸着性等を有する重合体ブロックとを備えるカルボキシル基含有ブロック共重合体を含有する非水系分散体、そのブロック共重合体の多分散度を2以下と、より小さく制御しつつ、効率的に非水系分散体を製造する方法、及び、この非水系分散体を用いて得られ、電着性、転写特性及び分散安定性に優れた静電写真用液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、非水系溶媒において、特定の構造を有するリビングラジカル重合開始剤を用いて、特定のビニル系単量体を少なくとも2段階で重合することにより、非水系溶媒に対して高い親和性を有する重合体ブロックと、低い親和性を有する重合体ブロックとを備え、多分散度が2以下であるカルボキシル基含有ブロック共重合体を、20質量%を超える高濃度で含有する非水系分散体が得られたことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示される。
1.カルボキシル基を有するブロック共重合体が非水系溶媒に分散されてなる非水系分散体の製造方法であって、非水系溶媒において、下記一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤の存在下、下記ビニル系単量体[x]及び[y]のいずれか一方を重合し、その後、他方のビニル系単量体を重合することを特徴とする非水系分散体の製造方法。
[x]炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜100質量%含むビニル系単量体
[y]上記ビニル系単量体[x]と異なる組成を有するビニル系単量体
【化1】

[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であり、Rは炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、Rは−(CH−、mは0〜2であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。]
2.上記ビニル系単量体[x]が、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;及び芳香族ビニル化合物、から選ばれる少なくとも1種を含む上記1に記載の非水系分散体の製造方法。
3.上記ビニル系単量体[y]が、炭素数1〜3の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;及び芳香族ビニル化合物、から選ばれる少なくとも1種である上記1に記載の非水系分散体の製造方法。
4.上記ブロック共重合体の重量平均分子量が、4,000〜40,000である上記1乃至3のいずれかに記載の非水系分散体の製造方法。
5.上記非水系溶媒が、炭素数8以上の炭化水素を含む上記1乃至3のいずれかに記載の非水系分散体の製造方法。
6.上記1乃至5のいずれかに記載の非水系分散体の製造方法により得られたことを特徴とする非水系分散体。
7.上記1乃至5のいずれかに記載の非水系分散体の製造方法により得られたことを特徴とする静電写真用非水系分散体。
8.上記7に記載の静電写真用非水系分散体と、着色剤と、荷電調整剤とを用いて得られたことを特徴とする静電写真用液体現像剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の非水系分散体の製造方法によれば、非水系溶媒に対して高い親和性を有する重合体ブロックと、非水系溶媒に対して低い親和性及び着色剤等への吸着性等を有する重合体ブロックとを備え、多分散度が2以下であるカルボキシル基含有ブロック共重合体を、20質量%を超える高濃度で含有する非水系分散体を効率的に製造することができる。得られた非水系分散体は、高絶縁性溶剤中での分散安定性に優れ、帯電性にも優れることから、電気泳動を利用した技術に好適である。
また、本発明の静電写真用液体現像剤は、この非水系分散体を用いて得られたものであることから、電着性、転写特性及び分散安定性に優れ、電子写真装置等に好適であり、油性インクジェットプリンター用インク、孔版印刷用インクバインダーインク等にも適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを意味する。また、本発明において、ビニル系単量体[x]及びビニル系単量体[y]は、いずれも、重合性不飽和化合物によるものであるばかりでなく、官能基を有する重合性不飽和化合物と、この官能基と反応する官能基を有し、且つ、重合性不飽和結合を有しない化合物とからなるものであってもよい。
【0008】
1.非水系分散体及びその製造方法
本発明の非水系分散体の製造方法は、カルボキシル基を有するブロック共重合体が非水系溶媒に分散されてなる非水系分散体の製造方法であって、非水系溶媒において、下記一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤の存在下、下記ビニル系単量体[x]及び[y]のいずれか一方を重合し(以下、「第1重合工程」という)、その後、他方のビニル系単量体を重合する(以下、「第2重合工程」という)ことを特徴とする。
[x]炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜100質量%含むビニル系単量体
[y]上記ビニル系単量体[x]と異なる組成を有するビニル系単量体
【化2】

[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であり、Rは炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、Rは−(CH−、mは0〜2であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。]
【0009】
重合に用いられる非水系溶媒としては、直鎖状若しくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、これら炭化水素における1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されてなるハロゲン置換体、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。これらのうち、高絶縁性の脂肪族炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、イソデカン、デカリン、ドデカン、イソドデカンや、「アイソパーE」、「アイソパーG」、「アイソパーH」及び「アイソパーL」(以上、エクソン社製商品名)、「シェルゾール70」及び「シェルゾール71」(以上、シェルオイル社製商品名)等が好ましい。特に好ましい溶媒は、炭素数8以上の炭化水素である。
本発明においては、第1重合工程及び第2重合工程を、同じ反応系において連続的に進めることができ、同じ非水系溶媒を用いて、カルボキシル基含有ブロック共重合体を製造することができる。尚、第1重合工程及び第2重合工程において、互いに異なる非水系溶媒を用いることもできる。
【0010】
また、リビングラジカル重合開始剤は、上記一般式(1)で表されるニトロキシド化合物である。このリビングラジカル重合開始剤を用いることにより、反応系において、安定なニトロキシフリーラジカルを生成させ、これにより、末端が不活性状態にあるものと、活性状態にあるものとが平衡状態のまま、重合成長し、多分散度が調節されたリビング重合体ブロックを迅速に得ることができる。
尚、上記一般式(1)における置換基R〜Rは、上記の通りであるが、Rが水素原子である場合、ビニル系単量体[x]及び[y]として、カルボキシル基を有する単量体を用いることなく、カルボキシル基(−COOH)を有するブロック共重合体を製造することができる。
【0011】
重合に用いられるビニル系単量体[x]は、非水系溶媒に対して高い親和性を有する重合体ブロックを形成するものであり、炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜100質量%、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%含む。この(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合が高いビニル系単量体[x]を用いると、非水系溶媒に対してより高い親和性を有する重合体ブロックを得ることができる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキルエステルのアルキル部分が炭素数4〜30の炭化水素基である化合物であり、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。尚、これらの化合物において、炭化水素基に含まれる1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されていてもよい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
上記ビニル系単量体[x]に含まれる他の単量体としては、芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、アミド基、アルコキシル基、シアノ基等の官能基を有する重合性不飽和化合物等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン等が挙げられる。尚、上記化合物に含まれる1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されてなる、ハロゲン化スチレン等を用いることもできる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
ヒドロキシル基を有する重合性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルにε−カプロラクトンを付加して得られた化合物(例えば、商品名「プラクセル」、ダイセル化学工業社製)等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、4−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、p−ビニルベンジルアルコール等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記ビニル系単量体[x]が、ヒドロキシル基を有する重合性不飽和化合物、好ましくはヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む場合、必要に応じて、無水コハク酸、無水フタル酸、無水シトラコン酸、無水メチルコハク酸、無水アセチルリンゴ酸等のジカルボン酸無水物を含んでもよい。ヒドロキシル基を有する重合性不飽和化合物及びジカルボン酸無水物により、ブロック共重合体におけるカルボキシル基を形成する場合、ジカルボン酸無水物の使用量(モル数)は、通常、重合性不飽和化合物に含まれるヒドロキシル基のモル数以下である。ジカルボン酸無水物の使用量が、重合性不飽和化合物に含まれるヒドロキシル基と等量であれば、これらの化合物によって、カルボキシル基のみを有する重合体ブロックが得られる。一方、ジカルボン酸無水物の使用量が、重合性不飽和化合物に含まれるヒドロキシル基より少ないと、通常、これらの化合物によって、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を有する重合体ブロックが得られる。
【0014】
カルボキシル基を有する重合性不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
酸無水物基を有する重合性不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
アミノ基を有する重合性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−tert−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル、4−アミノスチレン、4−ジメチルアミノスチレン、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、(メタ)アクリルアミン、N−メチル(メタ)アクリルアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
アミド基を有する重合性不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
アルコキシル基を有する重合性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)プロピル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
シアノ基を有する重合性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1−シアノエチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4−シアノブチル、(メタ)アクリル酸6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8−シアノオクチル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記ビニル系単量体[x]に含まれる他の単量体は、好ましくは、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;及び芳香族ビニル化合物、から選ばれる少なくとも1種である。他の単量体の含有量は、上記ビニル系単量体[x]の全量に対して、通常、90質量%以下、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0〜70質量%、更に好ましくは0〜50質量%、特に好ましくは0〜20質量%である。
尚、上記ビニル系単量体[x]は、炭素数1〜3の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでもよいが、その場合、ビニル系単量体[x]の全量に対して、通常、50質量%以下、好ましくは0〜40質量%である。
【0021】
一方、ビニル系単量体[y]は、上記ビニル系単量体[x]と異なる組成を有するビニル系単量体である。即ち、このビニル系単量体[y]を構成する化合物が、上記ビニル系単量体[x]を構成する化合物と同一であっても、その含有割合が異なれば、使用可能である。このビニル系単量体[y]は、非水系溶媒に対して低い親和性及び着色剤等への吸着性等を有する重合体ブロックを形成するものである。例えば、このビニル系単量体[y]を用いてなる重合体、顔料等を含有する静電写真用液体現像剤においては、このビニル系単量体[y]に由来する重合体ブロックの、顔料等への吸着性が改良される。
【0022】
上記ビニル系単量体[y]としては、好ましくは、炭素数1〜3の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;及び芳香族ビニル化合物、から選ばれる少なくとも1種である。本発明においては、炭素数1〜3の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましく、その含有量は、上記ビニル系単量体[x]の全量に対して、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%である。
尚、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキルエステルのアルキル部分が炭素数1〜3の炭化水素基である化合物であり、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等が挙げられる。尚、これらの化合物において、炭化水素基に含まれる1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されていてもよい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
尚、上記ビニル系単量体[y]は、炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでもよいが、その場合、ビニル系単量体[y]の全量に対して、通常、50質量%以下、好ましくは0〜40質量%である。
【0024】
本発明の非水系分散体の製造方法では、第1重合工程において、リビングラジカル重合開始剤の存在下、ビニル系単量体[x]及び[y]のいずれか一方を重合して重合体(以下、「重合体(P)」という)を得た後、第2重合工程において、通常、同じ反応系で、重合体(P)の存在下、他方のビニル系単量体を重合する。
第1重合工程において、リビングラジカル重合開始剤並びにビニル系単量体[x]又は[y]によって、カルボキシル基を有する重合体(P)を形成する場合には、第2重合工程において、ビニル系単量体[y]又は[x]が、更にカルボキシル基を形成してもよいし、形成しなくてもよい。従って、第2重合工程において用いるビニル系単量体は、第1重合工程において用いたリビングラジカル重合開始剤及びビニル系単量体の種類によって、適宜、選択される。
また、第1重合工程において、リビングラジカル重合開始剤並びにビニル系単量体[x]又は[y]が、カルボキシル基を有しない重合体(P)を形成する場合には、第2重合工程において、カルボキシル基を形成するように、ビニル系単量体[y]又は[x]の構成成分が、適宜、選択される。
【0025】
第1重合工程において、ビニル系単量体[x]を用いる場合には、重合溶媒として、高絶縁性の脂肪族炭化水素が好適に用いられ、このビニル系単量体[x]を重合した場合には、通常、重合体(P)が重合溶媒に溶解した重合溶液が得られる。その後、第2重合工程において、ビニル系単量体[y]を重合すると、重合体(P)のリビング末端から、このビニル系単量体[y]に由来する重合体ブロックが形成され、重合溶媒(非水系溶媒)に不溶であり、且つ、この非水系溶媒に分散されたカルボキシル基含有ブロック共重合体が得られる。
一方、第1重合工程において、ビニル系単量体[y]を用いる場合には、重合溶媒として、芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類等が好適に用いられ、このビニル系単量体[y]を重合した場合には、通常、重合体(P)が重合溶媒に溶解した重合溶液が得られる。次に、第2重合工程において、ビニル系単量体[x]を重合すると、重合体(P)のリビング末端から、このビニル系単量体[x]に由来する重合体ブロックが形成される。その後、上記重合溶媒を留去させ、高絶縁性の脂肪族炭化水素等の非水系溶媒に置換し、この非水系溶媒に不溶であり、且つ、この非水系溶媒に分散されたカルボキシル基含有ブロック共重合体が得られる。
【0026】
上記ビニル系単量体[x]及び[y]の好ましい組合せは、以下に示される。
(1)ビニル系単量体[x]が、炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、ビニル系単量体[y]が、炭素数1〜3の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、且つ、ビニル系単量体[x]及びビニル系単量体[y]の使用割合が、それぞれ、15〜70質量%及び30〜85質量%、好ましくは20〜65質量%及び35〜80質量%である(但し、両者の合計を100質量%とする)態様。
(2)ビニル系単量体[x]が、炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99質量%、好ましくは80〜98質量%と、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;アルコキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;及びシアノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルから選ばれた少なくとも1種の重合性不飽和化合物1〜50質量%、好ましくは2〜20質量%と(但し、これらの合計を100質量%とする)からなり、ビニル系単量体[y]が、炭素数1〜3の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、且つ、ビニル系単量体[x]及びビニル系単量体[y]の使用割合が、それぞれ、15〜70質量%及び30〜85質量%、好ましくは20〜65質量%及び35〜80質量%である(但し、両者の合計を100質量%とする)態様。
(3)ビニル系単量体[x]が、炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、ビニル系単量体[y]が、炭素数1〜3の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99質量%、好ましくは55〜95質量%と、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;アルコキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;及びシアノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルから選ばれた少なくとも1種の重合性不飽和化合物1〜50質量%、好ましくは5〜45質量%と(但し、これらの合計を100質量%とする)からなり、且つ、ビニル系単量体[x]及びビニル系単量体[y]の使用割合が、それぞれ、20〜70質量%及び30〜80質量%である(但し、両者の合計を100質量%とする)態様。
(4)ビニル系単量体[x]が、炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99質量%、好ましくは55〜95質量%、より好ましくは55〜90質量%と、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;アルコキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;及びシアノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルから選ばれた少なくとも1種の重合性不飽和化合物1〜50質量%、好ましくは5〜45質量%、より好ましくは10〜45質量%と(但し、これらの合計を100質量%とする)からなり、ビニル系単量体[y]が、炭素数1〜3の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99質量%、好ましくは55〜99質量%、より好ましくは55〜90質量%と、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;アルコキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;及びシアノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルから選ばれた少なくとも1種の重合性不飽和化合物1〜50質量%、好ましくは1〜45質量%、より好ましくは10〜45質量%と(但し、これらの合計を100質量%とする)からなり、且つ、ビニル系単量体[x]及びビニル系単量体[y]の使用割合が、それぞれ、20〜70質量%及び30〜80質量%である(但し、両者の合計を100質量%とする)態様。
尚、上記態様(1)においては、リビングラジカル重合開始剤として、上記一般式(1)における置換基Rが水素原子であるニトロキシド化合物を用いる。また、上記態様(2)〜(4)において、(メタ)アクリル酸、及び、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ、を用いない場合にも、リビングラジカル重合開始剤として、上記一般式(1)における置換基Rが水素原子であるニトロキシド化合物を用いる。これにより、第2重合工程後に、このニトロキシド化合物に由来するカルボキシル基を重合体に残存させることができる。
そして、上記態様(2)〜(4)において、(メタ)アクリル酸、及び、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ、の少なくとも一方を用いる場合には、その構造が限定されることなく、上記一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤を用いることができる。即ち、これらの単量体を用いることによって、カルボキシル基を有するブロック共重合体を得ることができるので、上記一般式(1)においてカルボキシル基を有するニトロキシド化合物を用いなくてもよい。但し、置換基Rが水素原子であるニトロキシド化合物を用いることもできる。
【0027】
上記のように、本発明の非水系分散体の製造方法では、各重合工程における所定のビニル系単量体を、順次、反応系に添加するのみで、第1重合工程及び第2重合工程を、連続して行うことができることから、上記リビングラジカル重合開始剤は、通常、第1重合工程における反応系においてのみ用いればよく、重合途中で補充しなくてもよい。このリビングラジカル重合開始剤の使用量は、第1重合工程におけるビニル系単量体の使用量を100質量部とした場合に、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは2〜30質量部である。
また、第1重合工程及び第2重合工程における重合温度は、いずれも、好ましくは80℃〜150℃、より好ましくは100℃〜130℃である。
【0028】
本発明の非水系分散体の製造方法により得られるカルボキシル基含有ブロック共重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算で、好ましくは4,000〜40,000であり、より好ましくは4,000〜20,000である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、即ち、多分散度は、好ましくは2以下、より好ましくは1.1〜1.9、更に好ましくは1.2〜1.5である。
そして、本発明により得られたカルボキシル基含有ブロック共重合体の濃度は、非水系分散体に対して、通常、20質量%を超える高濃度である。
【0029】
2.静電写真用非水系分散体
本発明の静電写真用非水系分散体は、上記本発明の非水系分散体の製造方法により得られたものであり、静電写真用液体現像剤の調製に用いられる非水系分散体である。
この非水系分散体は、非水系溶媒に対して高い親和性を有する重合体ブロックと、低い親和性及び着色剤等への吸着性等を有する重合体ブロックとを備えるカルボキシル基含有ブロック共重合体が分散されてなるものであり、その含有量は、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。尚、このカルボキシル基含有ブロック共重合体の好ましい構成は、ビニル系単量体[x]及び[y]の好ましい組合せを示した上記態様(1)〜(4)に基づくものであり、好ましい物性は、上記の通りである。
【0030】
3.静電写真用液体現像剤
本発明の静電写真用液体現像剤は、上記本発明の静電写真用非水系分散体と、着色剤と、荷電調整剤とを用いて得られたものである。必要に応じて、荷電特性の強化あるいは画像特性の改良等のために、高級アルコール、フッ化アルコール、ポリエーテル、オレフィン系ワックス、シリコーン系オイル等の他の成分が併用されて得られたものであってもよい。従って、本発明の静電写真用液体現像剤は、少なくとも、カルボキシル基含有ブロック共重合体と、着色剤と、荷電調整剤と、非水系溶媒とを含有し、必要に応じて、更に、上記他の成分を含有する。
【0031】
本発明の静電写真用液体現像剤におけるカルボキシル基含有ブロック共重合体の含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。この含有量であれば、電着性、転写特性及び分散安定性に優れる。
【0032】
上記着色剤は、特に限定されるものではなく、従来、公知の無機顔料、有機顔料、染料等を使用することができる。これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。例えば、カーボンブラック;アルミニウム等の金属;磁性酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物等の無機顔料や、アセト酢酸アリールアミド系モノアゾ黄色顔料(ピグメントイエロー1、同3、同74、同97、同98等);イミダゾロン系モノアゾ黄色顔料(ピグメントイエロー181等);アセト酢酸アリールアミド系ジスアゾ黄色顔料(ピグメントイエロー12、同13、同14、同17等);黄色染料(ソルベントイエロー19、同77、同79、ディスパースイエロー164等);赤色又は紅色顔料(ピグメントレッド48、同49:1、同53:1、同57、同57:1、同81、同122、同5、同146等);赤色系染料(ソルベントレッド49、同52、同58、同8等);銅フタロシアニン及びその誘導体からなる青色系染顔料(ピグメント・ブルー15:3、15:4など);緑色顔料(ピグメントグリーン7、同36等)、ビクトリアブルー(C.I.42595)、スピリットブラック(C.I.50415)、オイルブルー(C.I.74350)、アルカリブルー(C.I.42770A)、ファーストスカーレット(C.I.12315)、ファーストスカイブルー(C.I.74200)、ニグロシン(C.I.50415)等のほか、表面処理した顔料、例えば、ニグロシンで染色したカーボンブラック等を用いることもできる。
本発明の静電写真用液体現像剤における着色剤の含有量は、カルボキシル基含有ブロック共重合体の含有量を100質量部とした場合に、通常、5〜30質量部、好ましくは10〜25質量部である。尚、上記着色剤は、上記カルボキシル基含有ブロック共重合体に含浸及び/又は付着し、両者によって複合粒子(トナー粒子)を形成していることが好ましい。このような形態とするために、例えば、静電写真用非水系分散体及び着色剤を含む配合物を、十分に混合・撹拌する方法等が適用される。
【0033】
また、上記荷電調整剤は、特に限定されるものではなく、従来、公知のものを用いることができる。例えば、ナフテン酸、オクテン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸の金属塩類;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸等のスルホコハク酸エステルの金属塩類;油溶性スルホン酸金属塩類;リン酸エステルの金属塩類;アビエチン酸もしくは水素添加アビエチン酸の金属塩類;アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩類;芳香族カルボン酸あるいはスルホン酸の金属塩類;ポリオキシエチル化アルキルアミン等の非イオン性界面活性剤;レシチン、アマニ油等の油脂類;多価アルコールの有機酸エステル類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の静電写真用液体現像剤における荷電調整剤の含有量は、カルボキシル基含有ブロック共重合体の含有量を100質量部とした場合に、好ましくは0.05〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜2.0質量部である。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0035】
1.カルボキシル基を有する重合体を含む非水系分散体の製造
実施例1−1(ブロック共重合体を含む非水系分散体の製造)
オイルジャケットを備えた耐圧式攪拌槽型ガラス反応器に、アクリル酸ラウリル(以下、「LA」ともいう)47部、下記式(2)で表されるリビングラジカル重合開始剤3部、及び、「アイソパーG」(商品名、エクソン社製)34部を仕込んだ。その後、反応器内を、窒素ガスを用いたバブリングにより、十分に脱気した。次いで、ジャケット温度を120℃とし、反応系を撹拌しながら、重合を開始し、反応液の温度が120℃に保たれるようジャケット温度を調整した。重合開始から4時間後、LAの重合率を測定したところ、97%であった。また、反応液より一部サンプリングした重合体のGPC測定(標準ポリスチレンを使用)を行ったところ、Mn=6,300、Mw=7,900、Mw/Mn=1.25であった。
【化3】

【0036】
次に、アクリル酸エチル(以下、「EA」ともいう)100部、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」ともいう)50部、及び、「アイソパーG」560部を混合し、窒素ガスを用いたバブリングにより十分に脱気した混合液を得た。そして、この混合液の全量を、攪拌下の上記反応系に添加し、120℃で重合した。重合の進行とともに、反応液は白濁し、分散系となっていることが確認された。混合液を添加してから4時間後、重合を終了し、ブロック共重合体(A1)を含む非水系分散体を得た。LAの重合率は100%、EAの重合率は97%、MMAの重合率は99%であった。ブロック共重合体(A1)のGPC測定を行ったところ、Mn=24,000、Mw=31,200、Mw/Mn=1.30であった。また、ブロック共重合体(A1)の固形分濃度は25%、酸価は固形分換算で2.2(mgKOH/g)であった。
【0037】
実施例1−2(ブロック共重合体を含む非水系分散体の製造)
オイルジャケットを備えた耐圧式攪拌槽型ガラス反応器に、LA47部、メタクリル酸ヒドロキシエチル(以下、「HEMA」ともいう)1部、無水コハク酸0.8部、上記式(2)で表されるリビングラジカル重合開始剤3部、及び、「アイソパーG」34部を仕込んだ。その後、反応器内を、窒素ガスを用いたバブリングにより、十分に脱気した。次いで、ジャケット温度を120℃とし、反応系を撹拌しながら、重合を開始し、反応液の温度が120℃に保たれるようジャケット温度を調整した。重合開始から4時間後、LA及びHEMAの重合率を測定したところ、それぞれ、97%及び98%であった。また、反応液より一部サンプリングした重合体のGPC測定を行ったところ、Mn=6,500、Mw=8,200、Mw/Mn=1.26であった。
【0038】
次に、EA100部、MMA48部、及び、「アイソパーG」560部を混合し、窒素ガスを用いたバブリングにより十分に脱気した混合液を得た。そして、この混合液の全量を、攪拌下の上記反応系に添加し、120℃で重合した。重合の進行とともに、反応液は白濁し、分散系となっていることが確認された。混合液を添加してから、4時間後に重合を終了し、ブロック共重合体(A2)を含む非水系分散体を得た。LAの重合率は100%、HEMAの重合率は100%、EAの重合率は97%、MMAの重合率は99%であった。ブロック共重合体(A2)のGPC測定を行ったところ、Mn=24,500、Mw=33,100、Mw/Mn=1.35であった。また、ブロック共重合体(A2)の固形分濃度は25%、酸価は固形分換算で4.5(mgKOH/g)であった。
【0039】
実施例1−3(ブロック共重合体を含む非水系分散体の製造)
オイルジャケットを備えた耐圧式攪拌槽型ガラス反応器に、EA100部、MMA45部、下記式(3)で表されるリビングラジカル開始剤3部、及び、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)300部を仕込んだ。その後、反応器内を、窒素ガスを用いたバブリングにより、十分脱気した。次いで、ジャケット温度を120℃とし、反応系を攪拌しながら、重合を開始し、反応液の温度が120℃に保たれるようジャケット温度を調整した。重合開始から4時間後、EA及びMMAの重合率を測定したところ、それぞれ、98%、99%及び99%であった。また、反応液より一部サンプリングした重合体のGPC測定を行ったところ、Mn=19,500、Mw=23,600、Mw/Mn=1.21であった。
【化4】

【0040】
次に、LA47部、メタクリル酸(以下、「MAA」ともいう)5部、及び、「アイソパーG」200部を混合し、窒素ガスを用いたバブリングにより十分に脱気した混合液を得た。そして、この混合液の全量を、攪拌下の上記反応系に添加し、120℃で重合した。混合液を添加してから4時間後、重合を終了し、ブロック共重合体(A3)が溶解する重合溶液を得た。LA及びMAAの重合率は、それぞれ、99%及び99%であった。ブロック共重合体(A3)のGPC測定を行ったところ、Mn=26,400、Mw=35,100、Mw/Mn=1.33であった。また、酸価は固形分換算で16.3(mgKOH/g)であった。
【0041】
その後、上記重合溶液を攪拌しながら、ジャケット温度50℃に保持し、真空下に加熱した。これにより、MEKを留去しながら、「アイソパーG」300部に置換し、更に「アイソパーG」を追加、濃度調整をすることで、固形分濃度25%の安定なブロック共重合体(A3)の白色分散体を得た。
【0042】
実施例1−4(ブロック共重合体を含む非水系分散体の製造)
オイルジャケットを備えた耐圧式攪拌槽型ガラス反応器に、LA60部、MAA4部、上記式(3)で表されるリビングラジカル重合開始剤3部、及び、「アイソパーG」60部を仕込んだ。その後、反応器内を、窒素ガスを用いたバブリングにより、十分に脱気した。次いで、ジャケット温度を120℃とし、反応系を撹拌しながら、重合を開始し、反応液の温度が120℃に保たれるようジャケット温度を調整した。重合開始から4時間後、LA及びMAAの重合率を測定したところ、それぞれ、97%及び98%であった。また、反応液より一部サンプリングした重合体のGPC測定(標準ポリスチレンを使用)を行ったところ、Mn=8,800、Mw=11,600、Mw/Mn=1.31であった。
【0043】
次に、MMA47部、EA84部、ジメチルアミノエチルアクリレート2部、及び、「アイソパーG」540部を混合し、窒素ガスを用いたバブリングにより十分に脱気した混合液を得た。そして、この混合液の全量を、攪拌下の上記反応系に添加し、120℃で重合した。重合の進行とともに、反応液は白濁し、分散系となっていることが確認された。混合液を添加してから4時間後、重合を終了し、ブロック共重合体(A4)を含む非水系分散体を得た。LA、MAA、EA、MMA及びジメチルアミノエチルアクリレートの重合率は、それぞれ、100%、98%、97%、99%及び99%であった。ブロック共重合体(A4)のGPC測定を行ったところ、Mn=26,400、Mw=35,100、Mw/Mn=1.33であった。また、ブロック共重合体(A4)の固形分濃度は25%、酸価は固形分換算で13.0(mgKOH/g)であった。
【0044】
比較例1−1(グラフト共重合体を含む非水系分散体の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート2個、ガス導入管及び温度計を装備するガラスフラスコに、「アイソパーG」60部を仕込み、加熱して、90℃とした。その後、反応系を窒素ガス雰囲気とし、撹拌しながら、ラウリルメタクリレート(以下、「LMA」ともいう)72部及びHEMA16部を滴下し、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という)0.9部及び3−メルカプトプロピオン酸1.5部を用いてラジカル重合を行い、片末端にカルボキシル基を有する重合体を得た。尚、LMA、HEMA及び「アイソパーG」は、使用前にモレキュラーシーブを用いて脱水しておいたものを使用した。
次いで、上記重合体を含む重合溶液に、テトラブチルアンモニウムブロマイド(触媒)1部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(重合禁止剤)0.1部及びグリシジルメタクリレート2.2部を加えて、105℃で4時間反応させることにより、末端にラジカル重合性二重結合を有する重合体(以下、「ヒドロキシル基含有マクロモノマー」という)を得た。このヒドロキシル基含有マクロモノマーのGPC測定を行ったところ、Mn=6,900であった。また、ヒドロキシル基含有マクロモノマーの水酸基価は固形分換算で78mgKOH/gであった。
【0045】
その後、上記ヒドロキシル基含有マクロモノマーを含む重合溶液を80℃に保ち、その中に無水コハク酸12部を添加し、撹拌しながら4時間加熱し、カルボキシル基含有マクロモノマーを得た。このとき、触媒として、ヒドロキシル基含有マクロモノマーの製造時に用いたテトラブチルアンモニウムブロマイドをそのまま利用した。反応初期には、反応液中に無水コハク酸の粒が浮遊しているのが見えたが、反応の進行とともに液中に不溶物は無くなった。得られたカルボキシル基含有マクロモノマーのGPC測定を行ったところ、Mn=7,600であった。
【0046】
次に、撹拌機、還流冷却器、滴下ロート2個、ガス導入管及び温度計を装備するガラスフラスコに、上記カルボキシル基含有マクロモノマーを含む重合溶液31.4g(固形分20g)と、MEK42.0gとを仕込み、80℃に昇温した。その後、反応系の攪拌下、一方の滴下ロートから、MMA26.4g及びEA53.6gからなる混合液を、他方の滴下ロートから、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、「V−65」という)1.00gをMEK18.0gに溶解してなる重合開始剤溶液を、それぞれ、3時間及び2時間かけて滴下しながら、グラフト重合を行った。滴下終了後、「V−65」0.5部をMEK9部に溶解してなる重合開始剤溶液9.0gを2時間かけて滴下し、更に、重合を1時間行い、カルボキシル基含有グラフト共重合体(B1)を得た。このカルボキシル基含有グラフト共重合体(B1)のGPC測定を行ったところ、Mn=27,500、Mw=9,000、Mw/Mn=3.06であった。次いで、重合溶液中のMEKを真空留去し、「アイソパーG」を添加し、カルボキシル基含有グラフト共重合体(B1)の濃度が25%である非水系分散体を得た。
【0047】
2.静電写真用液体現像剤の調製及び評価
上記実施例1−1〜1−4及び比較例1−1により得られた非水系分散体を用いて、静電写真用液体現像剤を調製し、下記評価を行った。
(1)電着性
電極間距離を200μmとした一対の透明電極を装備した電解槽に、静電写真用液体現像剤を入れ、透明電極に直流電圧(200V)を約20秒間印加し、電着膜の定着性の評価及び過剰イオン電流の測定を行った。
電着膜の定着性における判定基準は以下の通りである。
○:良好であった
△:一部剥がれた
×:すぐ剥がれた
また、過剰イオン電流における判定基準は以下の通りである。
◎:電圧印加後に残留電圧が全く確認されなかった
○:印加開放後に微弱電圧が確認された
×:印加開放後に電圧が確認された
(2)転写特性
マスター画像を転写印刷処理し、外観及びトナー汚れを目視で確認した。判定基準は以下の通りである。
○:鮮明に転写された
△:微かな転写欠損が見られた
×:転写欠損と汚れが見られた
(3)着色粒子の分散安定性
静電写真用液体現像剤を、透明容器に収容し、60℃で1ヶ月間放置し、外観を目視観察した
○:変化が無かった
△:一部分離相が目視確認された
×:完全に相分離していた
【0048】
実施例2−1
実施例1−1により得られた非水系分散体100部と、トリアリールメタン系色素である「ビクトリアブルーB」4部とからなる混合物を、80℃で4時間攪拌し、着色粒子を含む青色分散体を得た。そして、この青色分散体100gに対して、荷電調整剤であるナフテン酸ジルコニウム0.16g及び高級アルコール「FOC−1400」(商品名、日産化学社製)47gを添加した後、3リットルの「アイソパーG」で希釈し、静電写真用液体現像剤を得た。この静電写真用液体現像剤について、各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
実施例2−2〜2−4及び比較例2−1
実施例1−2〜1−4及び比較例1−1により得られた非水系分散体を用いた以外は、上記実施例2−1と同様にして、静電写真用液体現像剤を調製し、各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の非水系分散体は、共重合体の分散安定性に優れ、帯電性にも優れることから、電気泳動を利用した技術に好適である。
また、本発明の静電写真用液体現像剤は、電着性、転写特性及び分散安定性に優れることから、電子写真装置、油性インクジェットプリンター用インク、孔版印刷用インクバインダーインク等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するブロック共重合体が非水系溶媒に分散されてなる非水系分散体の製造方法であって、
非水系溶媒において、下記一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤の存在下、下記ビニル系単量体[x]及び[y]のいずれか一方を重合し、その後、他方のビニル系単量体を重合することを特徴とする非水系分散体の製造方法。
[x]炭素数4〜30の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜100質量%含むビニル系単量体
[y]上記ビニル系単量体[x]と異なる組成を有するビニル系単量体
【化1】

[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であり、Rは炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、Rは−(CH−、mは0〜2であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。]
【請求項2】
上記ビニル系単量体[x]が、(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;及び芳香族ビニル化合物、から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の非水系分散体の製造方法。
【請求項3】
上記ビニル系単量体[y]が、炭素数1〜3の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びジカルボン酸無水物の組合せ;アミノ基を有する重合性不飽和化合物;アミド基を有する重合性不飽和化合物;及び芳香族ビニル化合物、から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水系分散体の製造方法。
【請求項4】
上記ブロック共重合体の重量平均分子量が、4,000〜40,000である請求項1乃至3のいずれかに記載の非水系分散体の製造方法。
【請求項5】
上記非水系溶媒が、炭素数8以上の炭化水素を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の非水系分散体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の非水系分散体の製造方法により得られたことを特徴とする非水系分散体。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の非水系分散体の製造方法により得られたことを特徴とする静電写真用非水系分散体。
【請求項8】
請求項7に記載の静電写真用非水系分散体と、着色剤と、荷電調整剤とを用いて得られたことを特徴とする静電写真用液体現像剤。

【公開番号】特開2010−24270(P2010−24270A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184224(P2008−184224)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】