説明

面防具

【課題】 面防具本体に着脱できる内輪ユニットを備え、これが汗等で汚れた場合でも容易に洗濯することができて衛生を確保でき、かつ、内輪ユニットを装着する際に、適正な装着位置に位置決めし易く、強固で安定した装着状態を得ることができる面防具の提供。
【解決手段】 面防具本体1と、内輪ユニット2を備え、面防具本体には内輪ユニットを支えるための保持ユニット3が取り付けられ、この保持ユニットを構成する内輪受け部材30と天受け部材31と地受け部材32に対して、内輪ユニットを構成する内輪部材20と天部材21と地部材22がそれぞれ面ファスナによって着脱可能に装着され、かつ内輪ユニットの装着状態で、保持ユニットの内部に内輪ユニットが嵌合状態に納まった2重構造になるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に剣道を行う際に着用するほか、長刀や柔剣道等を行う際に着用する面防具に関する。
【背景技術】
【0002】
剣道等で用いられる面防具は、着用者の顔面前面に位置する面金と、この面金に取り付けられ着用者の頭部を覆って保護する面布団と、上記面金及び/又は面布団の内側に取り付けられ着用者の顔面周縁全体に当接して衝撃を緩和させる内輪と、着用者の額部に当接するように前記内輪の内側上部に取り付けられた天部材と、着用者の顎部に当接するように前記内輪の内側下部に取り付けられた地部材とを備え、また通常は、面金の下部に着用者の喉部を保護する顎垂れを備えている。
そして、この面防具を構成する面布団、内輪、天部材、地部材は竹刀等の打撃による衝撃を緩和するために、分厚く形成されているのが通常である。
【0003】
このような面防具を着用して激しく動き回ると大量の汗をかき、その汗は面布団や内輪に吸収され、また、汗を吸収した面布団や内輪は乾燥し難く濡れたままになることが多く、しかも洗濯機による洗濯も困難であるため、湿り気、雑菌の繁殖、臭い等どうしても不衛生になってしまう。
【0004】
従来、着用者の顔面周縁部全体に当接するように環状に形成された内輪部材と、着用者の額部に当接するように前記内輪の内側上部に取り付けられた天部材と、着用者の顎部に当接するように前記内輪の内側下部に取り付けられた地部材と、着用者の喉部を保護するように内輪部材の外面下部に取り付けられた顎垂れを一体に形成した内輪ユニットと、を備え、この内輪ユニットを面ファスナによって面防具本体に着脱可能に装着できるようにした剣道の面が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭49−86166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の剣道の面は、確かに内輪ユニットを備え、これを面防具本体に着脱可能に装着できるため、内輪ユニットが汗等で汚れた場合には、これを面防具本体から取り外せば容易に洗濯することができ、衛生面での問題を解決することはできる。
【0007】
しかしながら、従来の内輪ユニットは、内輪部材の左右の外面を面防具本体の面布団の左右内面に止着具(面ファスナ)によって直接に装着させる構造である。
このように、内輪ユニットを面布団の内面に直接に装着させるものでは、内輪ユニットの装着に際し、これを適正な装着位置に保持させるための手段が設けられていないため、内輪ユニットが適正な装着位置から円周方向や奥行き方向等に位置ズレしてしまう。
【0008】
このため、面防具を着用した際に、内輪ユニットと顔面とがフィットせず、着用に違和感が生じて着用者の集中力に影響を及ぼしたり、又、喉部となる内輪部材の下部については面布団への取り付けができないため装着が不安定になったりするなど、面防具としての機能が損なわれてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、面防具本体から取り外すことができる内輪ユニットを備えることで、これが汗等で汚れた場合でも容易に洗濯することができて衛生を確保できるようにする。
その上で、内輪ユニットを装着する際に、適正な装着位置に位置決めし易く、又、強固で安定した装着状態を得ることができるようにした面防具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の面防具は、以下の構成とした。
即ち、本発明の面防具は、
着用者の顔面前面に位置する面金(10)と、着用者の頭部を被覆して保護するように前記面金(10)に取り付けられた面布団(11)と、着用者の喉部を保護するように面金(10)の下部に取り付けられた顎垂れ(12)を備えた面防具本体(1)と、
着用者の顔面周縁部全体に当接するように環状に形成された内輪部材(20)と、着用者の額部に当接するように前記内輪部材(20)の内側上部に取り付けられた天部材(21)と、着用者の顎部に当接するように前記内輪部材(20)の内側下部に取り付けられた地部材(22)と、が一体に形成された内輪ユニット(2)と、を備え、
前記面防具本体(1)には前記内輪ユニット(2)を支えるための保持ユニット(3)が前記面防具本体(1)の面金(10)及び/又は面布団(11)の内面に取り付けられ、
この保持ユニット(3)を構成する内輪受け部材(30)と、天受け部材(31)と、地受け部材(32)に対して、前記内輪ユニット(2)を構成する内輪部材(20)と、天部材(21)と、地部材(22)がそれぞれ面ファスナ(2a、2b、2c)、(3a、3b、3c)によって着脱可能に装着され、
かつ前記内輪ユニット(2)の装着状態で、前記保持ユニット(3)の内部に内輪ユニット(2)が嵌合状態に納まった2重構造になるように形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の面防具は、面防具本体(1)と、内輪ユニット(2)と、保持ユニット(3)と、を備え、面防具本体(1)に保持ユニット(3)を取り付け、この保持ユニット(3)に対して内輪ユニット(2)を着脱可能に装着させた構成である。
即ち、内輪ユニット(2)の装着状態で、前記保持ユニット(3)の内部に内輪ユニット(2)が嵌合状態に納まった2重構造になるように形成される。
【0012】
このように、内輪ユニットを保持ユニットから取り外すことができるため、この内輪ユニットが汗等で汚れた場合でも容易に取り外して洗濯することができ、衛生を確保することができる。
【0013】
又、使用後に内輪ユニットを取り外しておけば、面防具本体に汗等の水分が伝播して染み込むのを防ぐことができるし、内輪ユニットが古くなれば、その内輪ユニットのみ作り替えれば足りるため、買い替えの費用負担を軽減できる。
【0014】
特に、本発明は面防具本体に保持ユニットを取り付けている点に特徴がある。
内輪ユニットは着脱可能であるため、使用時には面防具本体に装着させる必要があるが、このとき、内輪ユニットを面防具本体に直接に装着させるのではなく、面防具本体に取り付けた保持ユニットの内部に嵌合状態に納まった2重構造になるように装着させるものである。
【0015】
このように保持ユニットを設けることによって、この保持ユニットを内輪ユニットを装着させる際のガイド部材として利用することができる。
即ち、保持ユニットの内部に内輪ユニットが丁度に納まるように嵌め込んでいけば、それだけで内輪ユニットを適正な位置に装着させることができ、顔面とのフィット感が得られ、着用に違和感を生じさせることがない。
【0016】
内輪ユニットを装着した状態では、保持ユニットの内部に内輪ユニットが嵌合状態に納まった2重構造になるため、内輪として必要な緩衝性を得ながら安定よく強固に装着させることができる。
特に、喉部となる内輪部材の下部についても内輪受け部材によって支えることができるため、従来の内輪ユニットを面防具本体に直接に装着させるものと異なり、より安定よく強固に装着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例である剣道用面防具を示す断面図。
【図2】内輪ユニットを取り外した状態の剣道用面防具を背面側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施例の剣道用面防具は、面防具本体1と、内輪ユニット2、保持ユニット3とを主要な構成として備えている。
【0019】
前記面防具本体1は、着用者の顔面前面に位置する面金10と、着用者の頭部を被覆して保護するように前記面金10に取り付けられた面布団11と、着用者の喉部を保護するように面金10の下部に取り付けられた顎垂れ12を備えている。
【0020】
前記面金10には、その周縁部に取り付けられた面渕皮15を介して面布団11が取り付けられ、かつ顎渕皮16を介して及び顎垂れ12が取り付けられている。
【0021】
面金10は鉄やチタン合金等の金属により形成され、ほぼ顔面の輪郭に沿うように縦方向が長い楕円形の座金17を有し、この座金17の中央で上部と下部とを垂直方向に連結する筋金18と、筋金18を水平方向に貫通して左右の座金17に到達する複数の横金19とが取り付けられている。
【0022】
前記座金17の顔面側の全周には藁に帯状の木綿布等を巻き付けて環状に形成した藁束13が沿着され、この藁束13と共に前記座金17の周囲を布材14で巻き付けている。
【0023】
面布団11は頭部を覆う幅で帯状に形成された木綿布等からなり、全面に刺子が施されている。この面布団11は、前記藁束13の外周面に面金10の上部から両側部にかけて縫い付けられ、両端部は垂れ下がっている。
【0024】
次に、内輪ユニット2は着用者の顔面周縁部全体に当接するように輪に形成された内輪部材20と、着用者の額部に当接するように前記内輪部材20の内側上部に取り付けられた天部材21と、着用者の顎部に当接するように前記内輪部材20の内側下部に取り付けられた地部材22と、が一体に形成されている。
【0025】
前記内輪部材20は、顎部分を除く部分の幅が通常の内輪に比べ広幅(約3cm広い)に形成され、これにより顎の動きを妨げることなく顔面に対して十分に密着させることができるようにしている。
【0026】
又、内輪部材20は、内部に芯材を入れた綿を木綿の袋体の内部に詰めて縫合したもので、外面の左右2ヶ所に雌の面ファスナ2a、2aが芯材と一緒に縫い付けられている。
【0027】
前記天部材21及び地部材22は半円形の木綿袋の内部に芯材を入れ、その外面に雌の面ファスナ2b、2cを芯材と共に縫合し、芯材の反対面にクッション性を高めるための多い目の綿を入れて閉じたものである。
天部材21は前記内輪部材20の内側上部に縫合により取り付けられ、地部材22は前記内輪部材20の内側下部に縫合により取り付けられるもので、この際、より美しく内輪部材20に取り付けることができるように縁取りをしている。
【0028】
尚、前記内輪ユニット2を構成する内輪部材20、天部材21、地部材22の厚みは通常の約2/3程度に形成されている。
【0029】
次に、保持ユニット3は前記内輪ユニット2を支えるためのもので、内輪受け部材30と、天受け部材31と、地受け部材32によって構成され、前記面防具本体1の面金10及び/又は面布団11の内面に取り付けられている。
【0030】
前記内輪受け部材30は生皮を木綿で包んで輪にしたものを縫い固め、内面の左右2ヶ所に前記雌の面ファスナ2a、2aと対をなす雄の面ファスナ3a、3aが縫い付けられている。
又、この内輪受け部材30の外面下部には前記顎垂れ12の背後に位置して用心垂れ33が取り付けられている。
【0031】
前記天受け部材31及び地受け部材32は半円形の木綿袋の内部に芯材を入れ、その外面に雄の面ファスナ3b、3cを芯材と共に縫合し、芯材の反対面にクッション性を高めるための多い目の綿を入れて閉じたものである。
【0032】
尚、前記保持ユニット3を構成する内輪受け部材30、天受け部材31、地受け部材32の厚みは通常の約1/3程度に形成され、この保持ユニット3と前記内輪ユニット2とを重ねた厚みが通常の厚みになるように形成している。
【0033】
そして、前記保持ユニット3の内輪受け部材30、天受け部材31、地受け部材32に対して、前記内輪ユニット2を構成する内輪部材20と、天部材21と、地部材22がそれぞれ面ファスナ2a、2b、2c、3a、3b、3cによって着脱可能に装着され、その装着状態で前記保持ユニット3の内部に内輪ユニット2が嵌合状態に納まった2重構造になるように形成されている。
【0034】
以上のように、本発明によれば、面防具本体1(保持ユニット3)から取り外すことができる内輪ユニット2を備えているため、これが汗等で汚れた場合でも容易に洗濯することができて衛生を確保することができる。
特に、保持ユニット3を備えているため、内輪ユニット2を装着する際に、適正な装着位置に位置決めし易く、又、強固で安定した装着状態を得ることができ、面防具を取り扱う剣道、長刀、柔剣道等の防具製造業で有効に利用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 面防具本体
10 面金
11 面布団
12 顎垂れ
2 内輪ユニット
20 内輪部材
21 天部材
22 地部材
2a 面ファスナ
2b 面ファスナ
2c 面ファスナ
3 保持ユニット
30 内輪受け部材
31 天受け部材
32 地受け部材
3a 面ファスナ
3b 面ファスナ
3c 面ファスナ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔面前面に位置する面金(10)と、着用者の頭部を被覆して保護するように前記面金(10)に取り付けられた面布団(11)と、着用者の喉部を保護するように面金(10)の下部に取り付けられた顎垂れ(12)を備えた面防具本体(1)と、
着用者の顔面周縁部全体に当接するように環状に形成された内輪部材(20)と、着用者の額部に当接するように前記内輪部材(20)の内側上部に取り付けられた天部材(21)と、着用者の顎部に当接するように前記内輪部材(20)の内側下部に取り付けられた地部材(22)と、が一体に形成された内輪ユニット(2)と、を備え、
前記面防具本体(1)には前記内輪ユニット(2)を支えるための保持ユニット(3)が前記面防具本体(1)の面金(10)及び/又は面布団(11)の内面に取り付けられ、
この保持ユニット(3)を構成する内輪受け部材(30)と、天受け部材(31)と、地受け部材(32)に対して、前記内輪ユニット(2)を構成する内輪部材(20)と、天部材(21)と、地部材(22)がそれぞれ面ファスナ(2a、2b、2c)、(3a、3b、3c)によって着脱可能に装着され、
かつ前記内輪ユニット(2)の装着状態で、前記保持ユニット(3)の内部に内輪ユニット(2)が嵌合状態に納まった2重構造になるように形成されていることを特徴とする面防具。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−22311(P2013−22311A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161154(P2011−161154)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(511178991)